【実施例】
【0062】
実施例1
1.HEMA/PEGMA法による生体吸収性クロスリンカーの合成:
1.1.PLA
・第一工程:
マグネチックスターラーバーを含む乾燥シュレンク中で、ラクチド(2.2232g;0.0154mol)及びヒドロキシエチルメタクリレート(0.75mL;0.0062mol)を、窒素下5mlのトルエン中に溶解した。上記系にSn(Oct)
2(8mg)のトルエン溶液を導入することによって反応を開始した。90℃で20時間の後、5mlのクロロホルムを添加して反応混合物を希釈し、形成されたポリマーを、多量の石油エーテル中で沈殿させることによって精製した。収率94%。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.53(m,CH
3,PLA),1.91(s,CH
3,メタクリレート),4.38(m,CH
2,HEMA),5.17(m,CH,PLA),5.65−6.10(m,CH
2=C)
【0063】
・第二工程:
第一工程で形成されたポリマーを、塩化メタクリロイルと反応させることによって、PLA鎖の末端においてヒドロキシル基によってさらに修飾した。予め形成したポリマー(1.07mmolのOH基、1当量)を、マグネチックスターラー及び滴下漏斗を備えた三口フラスコ中で、無水CH
2Cl
2(2.5ml)中に溶解した。フラスコの内容物を0℃に冷却し、トリエチルアミン(1.5当量;0.0016mol)を添加した。溶液を撹拌し、次いでCH
2Cl
2(2.5ml)中の塩化メタクリロイル(1.5当量;0.0016mol)を溶液に滴下した。撹拌を0℃で1時間続け、次いで室温で一晩継続した。トリエチルアミン塩を濾過により除去し、ポリマーを、多量の石油エーテル中で沈殿させた。収率:95%。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.53(m,CH
3,PLA),1.91(m,CH
3,メタクリレート),4.39(m,CH
2,HEMA),5.17(m,CH,PLA),5.65−6.16(m,CH
2=C)
【0064】
1.2.PGA
・第一工程:
マグネチックスターラーバーを含む乾燥シュレンク中で、グリコリド(0.6g;0.005mol)及びヒドロキシエチルメタクリレート(21mg;0.0016mol)を、窒素下2mlのトルエン中に溶解した。上記系にSn(Oct)
2(5mg)のトルエン溶液を導入することによって反応を開始した。90℃で20時間の後、5mlのクロロホルムを添加して反応混合物を希釈し、形成されたポリマーを、多量の石油エーテル中で沈殿させることによって精製した。収率96%。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.91(s,CH
3,メタクリレート),4.38(m,CH
2,HEMA),4.80(m,CH
2,PGA),5.65−6.09(s,CH
2=C)
【0065】
・第二工程:
第一工程で形成されたポリマーを、塩化メタクリロイルと反応させることによって、PGA鎖の末端においてヒドロキシル基によってさらに修飾した。予め形成したポリマー(1mmolのOH基、1当量)を、マグネチックスターラー及び滴下漏斗を備えた三口フラスコ中で、無水CH
2Cl
2(2ml)中に溶解した。フラスコの内容物を0℃に冷却し、トリエチルアミン(1.5当量;0.0015mol)を添加した。溶液を撹拌し、次いでCH
2Cl
2(2ml)中の塩化メタクリロイル(1.5当量;0.0015mol)を溶液に滴下した。撹拌を0℃で1時間続け、次いで室温で一晩継続した。トリエチルアミン塩を濾過により除去し、ポリマーを、多量の石油エーテル中で沈殿させた。収率:50%。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.90(m,CH
3,メタクリレート),4.40(m,CH
2,HEMA),4.81(m,CH
2,PGA),5.65−6.16(m,CH
2=C)
【0066】
1.3.PLGA
・第一工程:
マグネチックスターラーバーを含む乾燥シュレンク中で、ラクチド(1.18g;8.23mmol)、グリコリド(0.95g;8.23mmol)及びヒドロキシエチルメタクリレート(0.53g;4.1mmol)を、窒素下5mlのトルエン中に溶解した。上記系にSn(Oct)
2(8mg)のトルエン溶液を導入することによって反応を開始した。90℃で20時間の後、5mlのクロロホルムを添加して反応混合物を希釈し、形成されたポリマーを、多量の石油エーテル中で沈殿させることによって精製した。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.49(m,CH
3,PLA),1.92(s,CH
3,メタクリレート),4.44(m,CH
2,HEMA),4.83(m,CH
2,PGA),5.25(m,CH,PLA),5.65−6.10(s,CH
2=C)
【0067】
・第二工程:
第一工程で形成されたポリマーを、塩化メタクリロイルと反応させることによって、PLGA鎖の末端においてヒドロキシル基によってさらに修飾した。典型的な反応では、予め形成したポリマー(8.23mmolのOH基、1当量)を、マグネチックスターラー及び滴下漏斗を備えた三口フラスコ中で、無水CH
2Cl
2(20ml)中に溶解した。フラスコの内容物を0℃に冷却し、トリエチルアミン(1.5当量;12.34mmol)を添加した。溶液を撹拌し、次いでCH
2Cl
2(10ml)中の塩化メタクリロイル(1.5当量;12.34mmol)を溶液に滴下した。撹拌を0℃で1時間続け、次いで室温で一晩継続した。トリエチルアミン塩を濾過により除去し、ポリマーを、多量の石油エーテル中で沈殿させた。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.51(m,CH
3,PLA),1.92(s,CH3,メタクリレート),4.44(m,CH2,HEMA),4.83(m,CH2,PGA),5.25(m,CH,PLA),5.65−6.16(m,CH2=C)
【0068】
合成反応を以下のスキームにまとめる:
【0069】
【化4】
【0070】
2.PEG法による生体吸収性クロスリンカーの合成:
2.1.TEG(PEG n=4)を有するPLA
・第一工程:
マグネチックスターラーバーを含む乾燥シュレンク中で、テトラエチレングリコール(0.139g;0.0007mol)を、窒素下、触媒として第一錫オクトアート(5mg)を使用して、115℃で20時間、d,l−ラクチド(1.032g;0.0072mol)と反応させた。次いで、ポリマーをクロロホルム中に溶解し、多量の石油エーテル中で沈殿させた。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.54(m,CH
3,PLA),3.64(m,CH
2,PEG),4.26(m,CH
2,PEG),5.16(m,CH,PLA)
【0071】
・第二工程:
第一工程で形成されたポリマーを、塩化メタクリロイルと反応させることによって、PLA chNSAIDの末端においてヒドロキシル基によってさらに修飾した。典型的な反応では、予め形成したポリマーを、マグネチックスターラー及び滴下漏斗を備えた三口フラスコ中で、無水CH
2Cl
2(10ml)中に溶解した。フラスコの内容物を0℃に冷却し、トリエチルアミン(1.5当量;0.0018mol)を添加した。溶液を撹拌し、次いでCH
2Cl
2(5ml)中の塩化メタクリロイル(1.5当量;0.0018mol)を溶液に滴下した。撹拌を0℃で1時間続け、次いで室温で一晩継続した。トリエチルアミン塩を濾過により除去し、ポリマーを、多量の石油エーテル中で沈殿させた。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.56(m,CH
3,PLA),1.97(m,CH
3,メタクリレート),3.65(m,CH
2,PEG),4.29(m,CH
2,PEG),5.17(m,CH,PLA),5.64−6.20(m,CH
2=C).
【0072】
2.2.PEG 1500(n=34)を有するPLGA
・第一工程:
マグネチックスターラーバーを含む乾燥シュレンク中で、PEG1500(2.25g;0.0015mol)を、窒素下、触媒として第一錫オクトアート(10mg)を使用して、115℃で20時間、d,l−ラクチド(0.865g;0.006mol)及びグリコリド(0.697g;0.006mol)と反応させた。次いで、ポリマーをクロロホルム中に溶解し、多量の石油エーテル中で沈殿させた。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.55(m,CH
3,PLA),3.64(m,CH
2,PEG),4.25(m,CH
2,PEG),4.84(m,CH
2,PGA),5.20(m,CH,PLA)
【0073】
・第二工程:
第一工程で形成されたポリマーを、塩化メタクリロイルと反応させることによって、PLA chNSAIDの末端においてヒドロキシル基によってさらに修飾した。典型的な反応では、予め形成したポリマーを、マグネチックスターラー及び滴下漏斗を備えた三口フラスコ中で、無水CH
2Cl
2(20ml)中に溶解した。フラスコの内容物を0℃に冷却し、トリエチルアミン(1.5当量;0.0045mol)を添加した。溶液を撹拌し、次いで塩化メタクリロイル(1.5当量;0.0045mol)を溶液に滴下した。撹拌を0℃で1時間続け、次いで室温で一晩継続した。トリエチルアミン塩を濾過により除去し、ポリマーを、多量の石油エーテル/ジエチルエーテル中で沈殿させた。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:1.56(m,CH
3,PLA),1.94(m,CH
3,メタクリレート),3.63(m,CH
2,PEG),4.29(m,CH
2,PEG),4.86(m,CH
2,PGA),5.23(m,CH,PLA),5.64−6.15(m,CH
2=C)
【0074】
合成反応を以下のスキームにまとめる:
【0075】
【化5】
【0076】
3.懸濁重合によるミクロスフェアの合成:
3.1.HEMA/PEGMA法からのPLAクロスリンカーを用いて
88%の加水分解ポリビニルアルコールの0.5%水溶液(90ml)を、100mlのリアクタ中に導入し、窒素雰囲気下で15分間静置した。4.3mlのキシレン中に可溶化したポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(2.77g)、PLAクロスリンカー(0.7g)及び1wt%AIBNを含むモノマー相を、溶液に窒素を15分間通気することによって脱気した。モノマー相を50℃で水相に添加し、所望の直径のモノマー液滴を得るのに適切な速度でプロペラ型のスターラーによって撹拌した。温度を80℃まで上昇させ、5時間撹拌した。混合物を熱時濾過し(filtered hot)、水及びアセトンで洗浄した。このとき、ビーズはフリーズドライであった(Then, beads were freeze dry)。サイズ390±100μm。
【0077】
3.2.HEMA/PEGMA法からのPLGAクロスリンカーを用いて
88%の加水分解ポリビニルアルコールの0.75%水溶液(220ml)を、1000mlのリアクタ中に導入し、窒素雰囲気下で15分間静置した。10mlのトルエン中に可溶化したポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(5.9g;19.6mmol)、PLGAクロスリンカー(1g;1.7mmol)及び1wt%AIBNを含むモノマー相を、溶液に窒素を15分間通気することによって脱気した。モノマー相を50℃で水相に添加し、所望の直径のモノマー液滴を得るのに適切な速度でプロペラ型のスターラーによって撹拌した。温度を80℃まで上昇させ、5時間撹拌した。混合物を熱時濾過し、水及びアセトンで洗浄した。このとき、ビーズはフリーズドライであった。サイズ=246±150μm。
【0078】
3.3.PEG法からのPLAクロスリンカーを用いて
88%の加水分解ポリビニルアルコールの0.5%水溶液(90ml)を、100mlのリアクタ中に導入し、窒素雰囲気下で15分間静置した。4.3mlのキシレン中に可溶化したポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(3.252g)、PLAクロスリンカー(0.36g)及び1wt%AIBNを含むモノマー相を、溶液に窒素を15分間通気することによって脱気した。モノマー相を50℃で水相に添加し、所望の直径のモノマー液滴を得るのに適切な速度でプロペラ型のスターラーによって撹拌した。温度を80℃まで上昇させ、5時間撹拌した。混合物を熱時濾過し、水及びアセトンで洗浄した。このとき、ビーズはフリーズドライであった。サイズ450±100μm。
【0079】
合成反応を以下のスキームにまとめる:
【0080】
【化6】
【0081】
4.分解分析:
50mgの乾燥ミクロスフェアを計量し、37℃又は70℃に維持した個々のバイアル中で、10mlのPBS溶液中に浸漬した。サンプルを所望の時間で取り出し、即座に凍結させて、分解プロセスを停止させた。6個のサンプルを各時点で取り出し、分解しているサンプルにおけるばらつきを測定した。各サンプル溶液のpHを測定し、TAX−T2装置を用いる圧縮方法を使用して、ミクロスフェアの機械的特性を決定した。結果を以下の表に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
5.機械的特性
剛性及び弾性は、所与の血管網における塞栓形成ミクロスフェアの注射可能性及び再分配(repartition)のための主要なパラメータである。
【0084】
以下の表に示すように、本発明のミクロスフェアは、適切な媒体(例えば、生理的食塩水、グルコース溶液、造影剤及びそれらの混合物)中での膨潤の際に、塞栓術の技術的条件に適合し、現在市販されるミクロスフェアと匹敵する剛性及び弾性の機械的性能を示す:シリンジ及びカテーテル(内径がミニ0.7mmのマイクロカテーテル)での注射の間の圧縮に抵抗するような剛性があり、変形後直ぐにその形状を再獲得するような弾性がある。
【0085】
【表2】
【0086】
6.In vivo
上記したように調製したミクロスフェア(P1、クロスリンカーHEMA−PGA、200μm、2g滅菌、サイズ100〜300μm)を、120℃で20分間滅菌し、生理食塩水及びヨード造影剤の混合物(4ml中250mg)中に懸濁し、その先端をブタの腎動脈の小孔中に前もって(prealably)配置したマイクロカテーテルを用いて、1mLシリンジによって腎血流(renal flow)中にゆっくりと注射した。マイクロカテーテルに詰まりはなく、ミクロスフェア懸濁物の手動注射の間、抵抗はなかった。塞栓術の最後に、塞栓形成した区画における動脈の閉塞が、血管造影コントロールで観察された。動物を48時間目に屠殺し、腎臓をサンプリングした。病理顕微鏡試験下で、腎臓中でミクロスフェアを見ることができた。これらは、いくつかの小葉間動脈の血管内腔を完全に塞いでいた。これらはきれいな球状物として見えた。いくつかの炎症細胞がミクロスフェア上に存在した。部分的吸収(約50%)が明らかに見える(空胞の存在)。
【0087】
実施例2
1.イブプロフェンモノマーの合成:
1.1.HEMA−iBu:
以下の反応を実施した:
【0088】
【化7】
【0089】
マグネチックスターラーバーを含む丸底フラスコ中で、イブプロフェン(0.34g;1.65mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.01g;0.09mmol)を、窒素雰囲気下乾燥CH
2Cl
2(4ml)中に可溶化した。ヒドロキシエチルメタクリレート(0.21g;1.65mmol)と、2mlの乾燥CH
2Cl
2中に溶解したジシクロヘキシルカルボジイミド(0.34g;1.65mmol)の混合物とを、0℃で連続して添加した。0℃で24時間の後、混合物を濾過し、粗製生成物をシリカゲルカラムで精製した(シクロヘキサン/酢酸エチル:2/1)。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:0.88(d,CH
3,イソプロピル),1.43(d,CH
3−CH,イブプロフェン),1.85(m,CH
3,メタクリレート+CH−iPr,イブプロフェン),2.44(d,CH
2−フェニル,イブプロフェン),3.75(q,フェニル−CH−COO−,イブプロフェン),4.31(m,CH
2,HEMA),5.59−5.98(m,CH
2=C),7.16(dd,C
6H
4)
【0090】
1.2.GMA−iBu
以下の反応を実施した:
【0091】
【化8】
【0092】
グリシジルメタクリレート(1.348g;9.5mmol)、イブプロフェン(1.955g;9.5mmol)、ヒドロキノン(0.2g)及びピリジン(2ml)を、5mlのDMF中に溶解した。混合物を40℃で真空下6時間振盪した。次いで混合物を冷却し、飽和NaHCO
3水溶液(20ml)中に注いだ。有機相を酢酸エチルで3回抽出し、飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、溶媒を減圧下で留去した。残渣をクロマトグラフィー(酢酸エチル/シクロヘキサン:1/5)で精製した。収率:40%。
CD
3COCD
3中での
1H NMRによる特徴付け:0.89(d,CH
3,イソプロピル),1.51(d,CH
3−CH,イブプロフェン),1.85(m,CH−iPr,イブプロフェン),1.94(s,CH
3,メタクリレート),2.45(d,CH
2−フェニル,イブプロフェン),3.75(q,フェニル−CH−COO−,イブプロフェン),4.08−4.19(m,CH
2−CH(OH)−CH
2),5.60−6.12(m,CH
2=C),7.16(dd,C
6H
4)
【0093】
2.懸濁重合によるミクロスフェアの合成:
以下の反応を実施した:
【0094】
【化9】
【0095】
88%の加水分解ポリビニルアルコールの0.75%水溶液(220ml)を、1000mlのリアクタ中に導入し、窒素雰囲気下で15分間静置した。10mlのトルエン中に可溶化したHEMA−iBu(1.6g;5mmol)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(5.9g;19.6mmol)、PLGAクロスリンカー(1g;1.7mmol)及び1wt%AIBNを含むモノマー相を、溶液に窒素を15分間通気することによって脱気した。モノマー相を50℃で水相に添加し、所望の直径のモノマー液滴を得るのに適切な速度でプロペラ型のスターラーによって撹拌した。温度を80℃まで上昇させ、5時間撹拌した。混合物を熱時濾過し、水及びアセトンで洗浄した。このとき、ビーズはフリーズドライであった。
【0096】
調製されたミクロスフェアの特徴を以下の表にまとめる:
【0097】
【表3】
【0098】
3.イブプロフェンのin vitro放出:
イブプロフェン負荷したミクロスフェア(P6)220mgを、30mlのPBS(pH7.4)を含むバイアル中で懸濁した。バイアルを一定の振盪下で37℃でインキュベートした。時間間隔を空けて、バイアルを10秒間遠心分離し、サンプル(100μl)を、UV及びHPLC分析のために放出培地から引き抜いた。引き抜いた体積を新たな緩衝液で置き換え、再縣濁して、インキュベーションを続行した。
【0099】
【表4】
【0100】
4.In vivo:ヒツジ肩関節におけるミクロスフェア(P8+P9)の関節内注射
ミクロスフェアの移植研究を、ヒツジ肩関節(肩甲上腕関節)で実施した。2種のミクロスフェア(40〜100μm)を注射した:吸収性ミクロスフェア(micosphere)(PEGMMA 300を有するP8−TEG−PLGA6%)及び非吸収性ミクロスフェア(PEGMMA 300を有するP9−PEGジアクリレート(M=575)6%)(これらは炎症性である)。関節内注射の1週間後及び1ヶ月後、吸収性ミクロスフェアによって誘導された滑膜炎症反応を、非吸収性ミクロスフェアで誘発された炎症と比較した。
【0101】
無菌条件で、脱発熱物質化した(depyrogenised)滅菌ミクロスフェアを、生理的血清中に懸濁した。次いで、1mLの無菌シリンジに、乾燥ミクロスフェア50gmに対応する体積のミクロスフェアペレットを充填した。全身麻酔下で、滑液穿刺(ponction)を6頭の成体ヒツジ(3〜4歳)の右肩に実施し、次いで、ミクロスフェアを含むシリンジを、関節腔中に配置した針に取り付けた。ミクロスフェアを、関節空間にゆっくりと注射した。
【0102】
1週間後及び4週間後、動物(1群あたり3頭)を屠殺し、肩から滑液を回収した。肩関節全体を取り出し、10%ホルマリン中で固定した。次いで、滑膜組織を切り取り、顕微鏡観察のためにヘマトキシリン/エオシンで染色した。
【0103】
関節では、注射したミクロスフェアは、滑液中又は関節の滑膜表層(lining)のいずれかに位置した。莢膜の滑膜表層へのミクロスフェアの移動は、細胞増殖を誘導しなかった。吸収性ミクロスフェアに対する滑膜組織の炎症応答を、非吸収性ミクロスフェアによって誘導された炎症と比較した。滑膜表層中に取り込まれたミクロスフェアを囲む細胞を計数した(視野0.1mm
2)。1週間後、253±57細胞が非吸収性ミクロスフェアの周囲で観察されたが、吸収性ミクロスフェアの周囲では、83±15細胞だけしか観察されなかった(p<0.0001)。注射の1ヶ月後、吸収性ミクロスフェアについての98±36細胞と比較して、172±34細胞が非吸収性ミクロスフェアを囲んでいる(p=0.0005)。吸収性ミクロスフェアの周囲に巨細胞が存在しないことにより、これらの吸収性粒子による関節での炎症誘導が低レベルであることが確認され、非吸収性ミクロスフェアではその逆が観察された。
【0104】
滑液では、注射1ヵ月後の時点で、生分解性ミクロスフェアは消失して平坦な断片になり、これはミクロスフェア吸収が生じたことを示す。滑膜内に位置するミクロスフェアに関して、これらは高度に破壊され、空胞化していた。
【0105】
組織学的検査により、吸収性ミクロスフェアが滑膜表層中に移動し、これらの固定化されたミクロスフェアが、顕著な細胞増殖なく、肩関節の滑膜組織によって十分許容されることが示された。さらに、ミクロスフェアの吸収は、炎症応答を誘導しなかった。
【0106】
実施例3
1.HEMA−PLGAクロスリンカー及びヒドロキシル官能基を有するミクロスフェア:
88%の加水分解ポリビニルアルコールの0.5%水溶液(300ml)を、500mlのリアクタ中に導入し、窒素雰囲気下で15分間静置した。14mlのトルエン中に可溶化したポリ(エチレングリコール)メタクリレート(9.45g;17.97mmol)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(5.47g;18.23mmol)、PLGAクロスリンカー(0.9g;1.52mmol)及び1wt%AIBNを含むモノマー相を、溶液に窒素を15分間通気することによって脱気した。モノマー相を50℃で水相に添加し、所望の直径のモノマー液滴を得るのに適切な速度でプロペラ型のスターラーによって撹拌した。温度を80℃まで上昇させ、5時間撹拌した。混合物を熱時濾過し、水及びアセトンで洗浄した。このとき、ビーズはフリーズドライであった。
【0107】
2.HEMA−PLGAクロスリンカー及び酸官能基を有するミクロスフェア:
88%の加水分解ポリビニルアルコールの0.5%水溶液(300ml)を、500mlのリアクタ中に導入し、窒素雰囲気下で15分間静置した。14mlのトルエン中に可溶化したメタクリル酸(2.33g;27.07mmol)、ポリエチレングリコールメタクリレート(8.05g;26.83mmol)、PLGAクロスリンカー(1.32g;2.24mmol)及び1wt%AIBNを含むモノマー相を、溶液に窒素を15分間通気することによって脱気した。モノマー相を50℃で水相に添加し、所望の直径のモノマー液滴を得るのに適切な速度でプロペラ型のスターラーによって撹拌した。温度を80℃まで上昇させ、5時間撹拌した。混合物を熱時濾過し、水及びアセトンで洗浄した。このとき、ビーズはフリーズドライであった。
【0108】
3.PEG1500−PLGAクロスリンカー及び酸官能基を有するミクロスフェア:
200mlのシクロヘキサン中に溶解したSpan80(登録商標)(1%)の溶液を、2000mlのリアクタ中に導入し、窒素雰囲気下で15分間静置した。28mlの水中に可溶化したアクリル酸(2.4g;33.3mmol)、N,N−ジメチルアクリルアミド(4g;40.35mmol)、PEG−PLGAクロスリンカー(3g)及び1wt%アンモニウムペルオキシドジスルフェート(ammonium peroxyde disulfate)を含むモノマー相を、溶液に窒素を15分間通気することによって脱気した。モノマー相を周囲温度で有機相に添加し、所望の直径のモノマー液滴を得るのに適切な速度でプロペラ型のスターラーによって撹拌した。温度を70℃まで上昇させ、2時間撹拌した。混合物を熱時濾過し、水及びアセトンで洗浄した。このとき、ビーズはフリーズドライであった。