特許第5792757号(P5792757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792757
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】振動発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   H02N2/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-35586(P2013-35586)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-166049(P2014-166049A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2013年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】597082186
【氏名又は名称】早津 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】早津 輝雄
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−323851(JP,A)
【文献】 特開2003−233894(JP,A)
【文献】 特開2003−047236(JP,A)
【文献】 実開昭62−044399(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3168938(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が通行する道路に振動発電装置を備えた振動発電システムであって、振動発電装置は、天板部,側板部及び底板部から成る箱状基体で構成され、この箱状基体の前記天板部の裏面部には、振動により発電する圧電素子が設けられ、また、前記天板部の表面部には、前記道路の巾方向に所定長さを有する凸部が設けられ、前記凸部は前記道路の長さ方向に複数並設されており、また、前記道路には前記箱状基体の表面部が路面に露出するように該箱状基体を配する凹部が設けられ、この凹部の内周面と前記箱状基体の外周面との間に隙間が設けられ、前記箱状基体は前記凹部内に揺動可能に設けられており、更に、前記凹部の底面部には排水凹部が設けられていることを特徴とする振動発電システム。
【請求項2】
請求項1記載の振動発電システムにおいて、前記箱状基体はアルミ製であることを特徴とする振動発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が通行する道路に設ける振動発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油や石炭などの化石燃料の代替えエネルギーが注目される中、例えば特開平8−14154号のような振動エネルギーを利用して発電する振動発電装置(以下、従来例)が種々提案されている。
【0003】
この従来例は、振動による圧力を圧電素子によって電力に変換する構造であり、例えば車両が通行する道路に設けて、車両が上部を通過した際に生じる振動エネルギーから電気を得るものである。
【0004】
従って、従来例は、太陽光発電や風力発電などの気象状況に左右される発電装置に比して安定的な発電量が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−14154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際には、従来例はいずれも発電能力が低く未だ実用段階には至っていないのが現状である。
【0007】
本発明者は、前述した振動発電装置からより多くの発電量が得られるかについて更なる研究・開発を進め、その結果、極めて商品価値の高い画期的な振動発電システムを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
車両20が通行する道路21に振動発電装置10を備えた振動発電システムであって、振動発電装置10は、天板部1A,側板部1B及び底板部1Cから成る箱状基体1で構成され、この箱状基体1の前記天板部1Aの裏面部1”には、振動により発電する圧電素子2が設けられ、また、前記天板部1Aの表面部1’には、前記道路21の巾方向に所定長さを有する凸部3が設けられ、前記凸部3は前記道路21の長さ方向に複数並設されており、また、前記道路21には前記箱状基体1の表面部1’が路面に露出するように該箱状基体1を配する凹部22が設けられ、この凹部22の内周面と前記箱状基体1の外周面との間に隙間が設けられ、前記箱状基体1は前記凹部22内に揺動可能に設けられており、更に、前記凹部22の底面部には排水凹部23が設けられていることを特徴とする振動発電システムに係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の振動発電システムにおいて、前記箱状基体1はアルミ製であることを特徴とする振動発電システムに係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、前述した従来例に比し、圧電素子を良好に振動させてより多くの発電量が得られることになり、しかも、簡易構造であるから量産性に秀れ且つコスト安であるなど、極めて商品価値の高い画期的な振動発電システムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例に係る振動発電システムの説明図である。
図2】本実施例を示す斜視図である。
図3】本実施例の使用状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0014】
車両20が箱状基体1の表面部1’を通過すると、箱状基体1の天板部1Aが振動し、天板部1Aの裏面部1”に設けた圧電素子2が発電作用を発揮する。
【0015】
この本発明に係る振動発電装置は、天板部1Aの表面部1’に凸部3が設けられており、この凸部3を車両20のタイヤが通過した際には振動が誘発されて天板部1Aが良好に振動する。
【0016】
また、この天板部1Aは内部に空間を有する箱状基体1の一部であり、よって、この箱状基体1の空間内で反響して生じる振動によっても天板部1Aは良好に振動する。
【0017】
以上から、本発明は、圧電素子2を設けた天板部1Aを良好に振動させる構造であるから、前述した従来例に比し、圧電素子2を良好に振動させてより多くの発電量が得られることになる。
【実施例】
【0018】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0019】
本実施例は、車両20が通行する道路21に設ける振動発電装置10であって、この振動発電装置10を複数備えた振動発電システムSである。
【0020】
具体的には、この振動発電システムSは、図1に図示したように道路21に設けられる複数の振動発電装置10と、この各振動発電装置10(圧電素子2)で発電した電力を該振動発電装置10(圧電素子2)から延設される電線24を介して蓄電する蓄電部25とを備えている。
【0021】
尚、この蓄電部25に蓄電された電気は、例えば道路21の脇に設置される照明や電光標識などの電源として利用される。また、道路21での設置については交通量の多い道路が望ましく、設置量を多くして発電所としての役割も果たすことができる。
【0022】
振動発電装置10は、図1,2に図示したように表面部1’が路面に露出するように道路21に埋設され、天板部1A,側板部1B及び底板部1Cから成る箱状基体1で構成されている。
【0023】
箱状基体1は、適宜な金属製の部材(アルミ)で形成した細長箱状体であり、即ち、平面視長方形状の天板部1Aと、前後左右の側板部1Bと、天板部1Aに対向する底板部1Cとで構成され、この各板部1A,1B,1C同士は図示省略の止着手段を介して分離自在に連結されている。
【0024】
尚、箱状基体1は、金属製に限らず、例えば合成樹脂製やFRP製などでも良いが、圧電素子2に振動を伝える素材としては金属が有効と考えられる。
【0025】
また、この箱状基体1は、天板部1A,前後の側板部1B及び底板部1Cの板厚は約5cm、左右の側板部1Bの板厚は約1cm、長さは設置する道路21の巾(本実施例では片側車線の巾)に対応した長さに設定され、巾は約20cm、高さは約20cmに設定されている。
【0026】
尚、箱状基体1の各サイズは適宜設定し得るものである。
【0027】
また、箱状基体1の天板部1Aの裏面部1”には、振動により発電する圧電素子2(ピエゾ素子)が多数設けられている。
【0028】
この圧電素子2は公知構造、即ち、圧電材料(例えば水晶やセラミックなど)を一対の電極で挟んだ構造であり、振動による圧力を電力に変換するものである。
【0029】
尚、この圧電素子2の構造としては、前述した構造の他にも本実施例の特性を発揮する構造であれば適宜採用し得るものである。
【0030】
また、箱状基体1における天板部1Aの表面部1’には凸部3が設けられている。
【0031】
この凸部3は、箱状基体1の長さ方向(道路21の巾方向)に所定長を有する凸条であり、この凸部3は箱状基体1の巾方向(設置する道路21の長さ方向)に2本並設されている。
【0032】
本実施例では、天板部1Aの表面部1’に金属製(ステンレス製)の断面半円形の棒体(半径約2cm)を該棒体の平坦面を表面部1’に当接させた状態で配設して構成されている。この凸部3の高さは、車両20のタイヤ20aが通過した際に天板部1A及び箱状基体1全体を良好に振動させること、運転に支障を来さないこと及びタイヤ20aの負担を低減することのバランスを考慮した高さである(現在の道路21でも、眠気防止のためとして、既にこのような形態が施工されている。)。尚、凸部3の形状や数や高さは適宜設計変更し得るものである。
【0033】
以上の構成から成る振動発電装置10を実際に前述した振動発電システムSとして構築する場合、図1に図示したように複数の振動発電装置10を道路21のセンターラインL位置を境界とした左右の車線(互いに進行方向が反対となる車線R1・R2)夫々に、該道路21の長さ方向(約100mの範囲内)に間隔(約30cm)を介して並設し、この各振動発電装置10から延設される電線24を蓄電部25に接続する。
【0034】
この際、振動発電装置10に係る箱状基体1は、車両20が通行する道路21に揺動可能に埋設される。
【0035】
具体的には、図2,3に図示したように道路21には、箱状基体1を配する凹部22が複数設けられ、この各凹部22の内周面と前記箱状基体1の外周面との間に隙間(約5mm程度)が設けられ、箱状基体1は凹部22内に水平方向(図3中の矢印a方向)及び上下方向(図3中の矢印b方向)に揺動可能に設けられている。
【0036】
また、凹部22の底面部には排水凹部23が設けられている。
【0037】
この排水凹部23は、凹溝23aとこの凹溝23aの中央部に設けられる集水凹部23bとで構成されており、この排水凹部23により、道路21の路面から隙間を通過して流れる雨水や消雪水が排水処理される。
【0038】
尚、前述した振動発電システムSを設置する道路21は交通量の多いところが望ましいのは勿論あり、交通量調査を行った上で設置場所を検討選択する。
【0039】
本実施例は上述のように構成したから、車両20が箱状基体1の表面部1’を通過すると、箱状基体1の天板部1Aが振動し、天板部1Aの裏面部1”に設けた圧電素子2が発電作用を発揮する。
【0040】
この本実施例に係る振動発電装置10は、天板部1Aの表面部1’に凸部3が設けられており、この凸部3を車両20のタイヤ20aが通過した際には振動が誘発されて天板部1Aが良好に振動する。
【0041】
また、この天板部1Aは内部に空間を有する箱状基体1の一部であり、よって、この箱状基体1の空間内で反響して生じる振動によっても天板部1Aは良好に振動する。
【0042】
よって、本実施例によれば、圧電素子2を設けた天板部1Aを良好に振動させる構造であるから、前述した従来例に比し、圧電素子2を良好に振動させてより多くの発電量が得られることになる。
【0043】
また、本実施例は、凸部3は道路21の巾方向に所定長さを有する凸条であるから、より確実に道路21を通行する車両20のタイヤ20aが踏むことによる振動を得られることになる。
【0044】
また、本実施例は、箱状基体1は、車両20が通行する道路21に揺動可能に埋設されているから、より一層天板部1Aを振動させることができる。
【0045】
また、本実施例は、道路21には箱状基体1を配する凹部22が設けられ、この凹部22の内周面と箱状基体1の外周面との間に隙間が設けられ、確実に箱状基体1が凹部22内で揺動可能となる状態が得られることになる。
【0046】
また、本実施例は、道路21の対向車線夫々に振動発電装置10を配設する構造であるから、効率良い発電、即ち、切れ目のない発電が可能となる。
【0047】
また、本実施例は、凹部22の底面部には排水凹部23が設けられているから、例えば道路21から流入する雨水を排水処理して、常に箱状基体1が良好に揺動する状態が得られることになる。
【0048】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0049】
1 箱状基体
1’ 表面
1” 裏面
1A 天板部
1B 側板部
1C 底板部
2 圧電素子
3 凸部
10 振動発電装置
20 車両
21 道路
22 凹部
23 排水凹部
図1
図2
図3