特許第5792760号(P5792760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5792760-吸気音導入装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792760
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】吸気音導入装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/12 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   F02M35/12 D
   F02M35/12 B
   F02M35/12 J
   F02M35/12 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-61942(P2013-61942)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185602(P2014-185602A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2014年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】土谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】関 崇史
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0147116(US,A1)
【文献】 特開2007−056841(JP,A)
【文献】 特開2007−332915(JP,A)
【文献】 特開2012−255452(JP,A)
【文献】 特開2009−030451(JP,A)
【文献】 特開2012−107581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンの吸気音を車室内に導入する吸気音導入装置であって、
前記エンジンの前記吸気系から分岐する分岐路と、
前記分岐路における吸気音の吸気脈動によって振動する振動体と、
前記振動体の振動を前記車室に伝達する通路とを備え、
前記通路に、該通路に連通するレゾネータが設けられ
前記振動体と、該振動体を囲む筐体とを備えるサウンドクリエータが設けられ、
前記筐体内には、前記分岐路に連通する導入路と、該導入路の車室側に配置された前記振動体と、前記導入路と前記筐体との間に形成された空間部とが設けられ、
前記レゾネータは、前記筐体の前記空間部のうち前記振動体よりも車室側の空間部に連通して前記筐体の外側に設けられている
ことを特徴とする吸気音導入装置。
【請求項2】
前記通路には、前記振動体よりも車室側から延びて前記車室に連通する連通路が設けられ、
前記連通路には、該連通路に連通する前記レゾネータが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の吸気音導入装置。
【請求項3】
前記レゾネータは、吸気音により前記筐体内に形成される振動の腹に対応する位置に配設されている
ことを特徴とする請求項に記載の吸気音導入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンの吸気音を車室内に導入するための吸気音導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スポーティ感の演出のために車両に搭載されたエンジンの吸気音を車室内に導入する吸気音導入装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された吸気音導入装置(文献では車両用吸気音伝達装置)は、エンジンの吸気管から分岐された伝達管と、伝達管の内部に設けられ伝達管内を伝わる吸気音の吸気脈動によって振動する振動体と、伝達管の下流側端部に接続されて通路断面積が上流側から下流側に向かって単調に変化するように係止された共鳴管(文献では共鳴体)とを有して構成されている。
【0003】
この吸気音導入装置は、共鳴管によって吸気音を所望の周波数に共鳴させることができ、好ましい音を大きくして車室内に伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−30451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吸気音導入装置は、吸気音のうち不要な高周波成分の音(例えば、エンジンのバルブ音や高速で伝達される吸気音等)を小さくすることができない。このため、車室内に伝達される吸気音には不要な音が混じり、車室内に好ましい音を伝達することができない虞がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、不要な音を小さくして車室内に好ましい音を伝達可能な吸気音導入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、車両に搭載されたエンジンの吸気音を車室内に導入する吸気音導入装置であって、エンジンの吸気系から分岐する分岐路と、分岐路における吸気音の吸気脈動によって振動する振動体と、振動体の振動を車室に伝達する通路とを備え、通路に、該通路に連通するレゾネータが設けられ、振動体と、該振動体を囲む筐体とを備えるサウンドクリエータが設けられ、筐体内には、分岐路に連通する導入路と、該導入路の車室側に配置された振動体と、導入路と筐体との間に形成された空間部とが設けられ、レゾネータは、筐体の空間部のうち振動体よりも車室側の空間部に連通して筐体の外側に設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の通路には、振動体よりも車室側から延びて車室に連通する連通路が設けられ、連通路には、該連通路に連通するレゾネータが設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のレゾネータは、吸気音により筐体内に形成される振動の腹に対応する位置に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係わる吸気音導入装置によれば、上記特徴を有することで、不要な音を小さくして車室内に好ましい音を伝達可能な吸気音導入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係わる吸気音導入装置の側面側の概略構成図を示す。
図2】本発明の他の実施の形態に係わる吸気音導入装置の側面側の概略構成図を示す。
図3】筐体に対するレゾネータの取付位置を説明するための説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の吸気音導入装置の好ましい実施の形態を図1図3に基づいて説明する。
【0014】
吸気音導入装置20は、図1(概略構成図)に示すように、車両1のエンジン室3内に設けられている。エンジン室3には、エンジンEGに燃焼用空気を供給するための吸気管5が、エアクリーナACを介してエンジンEGに接続されている。吸気管5の一端部はエンジン室3の前端部に開口して支持され、吸気管5の他端部はエンジンEGに接続されている。吸気管5は合成樹脂等により円筒状に形成されている。吸気管5のエアクリーナACよりも車室側5aには、車両1の車室7内の運転者に吸気音を伝達するための吸気音導入装置20が接続されている。
【0015】
吸気音導入装置20は、吸気管5から分岐する分岐管21と、分岐管21に連通するサウンドクリエータ30と、サウンドクリエータ30を介して分岐管21と車室7内とを連通する連通管50と、連通管50に連通して設けられたレゾネータ60とを有してなる。分岐管21は、一端部が吸気管5のエアクリーナACよりも車室側5aに設けられた開口部5bに接続され、分岐管21の他端側が車室7側へ延びた状態でエンジン室3内に配設されている。分岐管21は合成樹脂等により円筒状に形成されている。
【0016】
サウンドクリエータ30は、分岐管21の車室側の端部に接続された導入管31と、導入管31の車室側の端部に設けられた振動体33と、導入管31を囲む筐体35とを有してなる。振動体33は、合成樹脂製又はゴム製のシート状の振動膜であり、分岐管21及び導入管31内を伝わる吸気音の吸気脈動によって振動する。筐体35は箱状に形成され、筐体35の一端側には前側孔部35aが設けられ、筐体35の他端側には後側孔部35bが設けられている。
【0017】
前側孔部35aには導入管31の吸気管側の端部が開口した状態で支持され、導入管31の車室側の端部は後側孔部35bに対して内側に所定距離を有して対向配置されている。前側孔部35aは導入管31の外側形状と略同じ円形状に形成されて、前側孔部35aから音漏れがないように前側孔部35aに導入管31が挿入されている。導入管31の周りには筐体35によって囲まれた空間部37が形成されている。この空間部37は、振動体33の振動を音源とする音振動に含まれる複数の周波数が気柱振動によって共鳴可能な大きさを有している。後側孔部35bは振動体33と略同じ大きさを有して円形状に形成され、振動体33から発生する吸気脈動を連通管50に通す。なお、振動体33の振動を車室7に伝達するための空間部37及び連通路50を併せて、以下、通路51と記す。
【0018】
通路51のうち振動体33よりも車室側の連通管50には、レゾネータ60が接続されている。レゾネータ60は、連通管50に接続された筒状の首部61と、首部61の他端側に接続されて内部に空間部63aを有して箱状に形成された胴部63とを有してなる。レゾネータ60は、特定の周波数の吸気音がレゾネータ60にあたると、首部61の内側の孔61aの部分で吸気音の運動が激しくなって摩擦損失し、その周波数を中心とした吸音効果が生じる。本実施例では、レゾネータ60は、不要な高周波成分の音(例えば、エンジンEGのバルブ音や高速で伝達される吸気音等)に対して吸音効果が生じるように形成されている。
【0019】
このように構成された吸気音導入装置20は、エンジンEGの駆動に伴い吸気管5を通じて外気が吸入されると、エンジンEGの回転数に応じた周波数の吸気脈動が吸気管5内に発生する。この吸気脈動は、吸気管5から分岐管21を通じて振動体23に伝達される。このため、振動体23はエンジンEGの回転数に応じた周波数で振動する。従って、サウンドクリエータ30内では振動体23の振動を音源とする音声振動が生成される。そして、この音声振動のうちの複数の周波数が筐体25の気柱振動によって共鳴して連通管50に伝達される。
【0020】
ここで、連通管50に伝達された音声振動のうち高周波成分の音は、レゾネータ60によって吸音される。このため、吸気音のうち不要な高い周波数成分の音、例えば、エンジンEGのバルブ音や高速で伝達される吸気音等の音を小さくすることができる。このため、連通管50から車室7内に伝わる吸気音には、不要な高周波成分の音が含まれないので、車室7内に好ましい吸気音を伝達することができる。また、レゾネータ60は、不要な高い周波数成分の音を吸音するが、好ましい音の周波数帯には作用しないので、好ましい音の周波数帯の音量が低下することはない。また、レゾネータ60は共鳴作用によって連通管50に伝わる吸気音の吸気脈動を増幅化可能に形成されることで、サウンドクリエータ30の容量を減少させて小型化することができる。
【0021】
なお、前述した実施例では、サウンドクリエータ30よりも車室側に接続された連通管50にレゾネータ60を設けた場合を示したが、図2に示すように、サウンドクリエータ30の筐体25の外側にレゾネータ60を設けてもよい。筐体25は、高周波成分の音Shが筐体25の空間部27内で共鳴可能な形状に形成されている。レゾネータ60は、振動体33よりも車室側の筐体25の外側に設けられて筐体25内の空間部27に連通している。
【0022】
レゾネータ60の筐体25に対する取付位置を、図3を参照しながら説明する。図3は、例えば、横軸Lが筐体25の音の伝達方向長さを示している。図3に示すように、レゾネータ60は、共鳴する吸気音Skの振動の腹hに対応する位置に配置される。このため、レゾネータ60によって共鳴する吸気音Skを効果的に吸音することができる。
【0023】
このため、吸気音のうち不要な高い周波数成分の音、例えば、エンジンEGのバルブ音や高速で伝達される吸気音等の音を小さくすることができ、連通管50を介して車室7内に好ましい吸気音を伝達することができる。
【0024】
なお、前述した実施例では、分岐管21及び連通管50は断面が円形状に形成されたものを記載したが、これに限るものではなく、三角状、矩形状、多角形状のいずれかでもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 車両
5 吸気管(吸気系)
7 車室
20 吸気音導入装置
21 分岐管(分岐路)
30 サウンドクリエータ
33 振動体
35 筐体
37 空間部(通路)
50 連通管(通路)
51 通路
60 レゾネータ
EG エンジン
AC エアクリーナ(吸気系)
図1
図2
図3