特許第5792784号(P5792784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792784
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】誘導電動機のパラメータ推定装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/00 20060101AFI20150928BHJP
   H02P 27/04 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H02P5/408 D
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-215220(P2013-215220)
(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公開番号】特開2014-96977(P2014-96977A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2013年10月16日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0126567
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】593121379
【氏名又は名称】エルエス産電株式会社
【氏名又は名称原語表記】LSIS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ユ アンノ
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−019199(JP,A)
【文献】 特開平01−194883(JP,A)
【文献】 特開2002−300799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 1/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
d軸及びq軸電流指令と誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流から同期座標系上のd軸及びq軸電圧を出力する電流制御部と、前記誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流と前記誘導電動機の回転子速度を用いて回転子の磁束角を計算する磁束角計算部とを備える誘導電動機制御システムにおいて、前記誘導電動機のパラメータを推定する推定装置であって、
前記電流制御部の出力と前記誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流を受信し、あらかじめ設定された回転子抵抗と計算された実際の回転子抵抗の誤差を計算する状態推定器であって、前記状態推定器が電気的に接続された積分制御器は、あらかじめ設定されたように動作し、前記積分制御器は、前記状態推定器から前記誤差を受信して補償抵抗値を計算する、状態推定器と、
前記計算された補償抵抗値が所定の値に達したとき、前記積分制御器の出力から固定子抵抗を演算する演算部とを含み、
前記演算部は、Iをあらかじめ設定されたゲイン値、idse*を同期座標系上のd軸制御電流としたとき、下記式により前記固定子抵抗を演算し、
前記積分制御器の出力は、前記電流制御部及び前記磁束角計算部に反映されて更新される、推定装置。
【数1】
(ここで、Rsは固定子抵抗であり
【数2】
dseは同期座標系上のd軸電流である。)
【請求項2】
d軸及びq軸電流指令と誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流から同期座標系上のd軸及びq軸電圧を出力する電流制御部と、前記誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流と前記誘導電動機の回転子速度を用いて回転子の磁束角を計算する磁束角計算部とを備える誘導電動機制御システムにおいて、前記誘導電動機のパラメータを推定する推定装置であって、
前記電流制御部の出力と前記誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流を受信し、あらかじめ設定された回転子抵抗と計算された実際の回転子抵抗の誤差を計算する状態推定器であって、前記状態推定器が電気的に接続された積分制御器は、あらかじめ設定されたように動作する、状態推定器と、
前記状態推定器から前記誤差を受信して補償抵抗値を計算する積分制御器と、
前記補償抵抗値が所定の値に達したとき、前記積分制御器の出力から固定子抵抗を演算する演算部とを含み、
前記演算部は、Iをあらかじめ設定されたゲイン値、iqse*を同期座標系上のq軸制御電流としたとき、前記補償抵抗値が一定値になったときに適用される下記式により前記固定子抵抗を演算し、
前記積分制御器の出力は、前記電流制御部及び前記磁束角計算部に反映されて更新される、推定装置。
【数3】
(ここで、Rsは固定子抵抗であり
【数4】
qseは同期座標系上のq軸電流である。)
【請求項3】
フラグ入力によって、前記回転子抵抗を推定するか否かを切り替えるスイッチをさらに含む、請求項1又は2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記回転子抵抗の誤差が下記式により演算される、請求項1に記載の推定装置。
【数5】
(ここで、ΔTrは前記回転子抵抗を回転子インピーダンスで除算した値の逆数であり、idseは同期座標系上のd軸電流であり、idse*は同期座標系上のd軸制御電流であり、iqseは同期座標系上のq軸電流であり、iqse*は同期座標系上のq軸制御電流であり、Lsは固定子の自己インダクタンスであり、σはLmを相互インダクタンスとしLrを回転子の自己インダクタンスとしたときの 1−(Lm2/Ls×Lr)であり、
【数6】
において、KIはあらかじめ設定されたゲイン値、iqse*は同期座標系上のq軸制御電流であり、iqseは同期座標系上のq軸電流である。)
【請求項5】
前記積分制御器は、前記回転子抵抗の誤差が実質的にゼロ(零)になるまで動作する、請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記誘導電動機のスリップ周波数が下記式により演算される、請求項5に記載の推定装置。
【数7】
(ここで、Rr^はあらかじめ設定された基準抵抗値、ΔRr_compは補償抵抗値である)
【請求項7】
前記回転子抵抗の誤差が下記式により演算される、請求項2に記載の推定装置。
【数8】
(ここで、ΔTrは前記回転子抵抗を回転子インピーダンスで除算した値の逆数であり、idseは同期座標系上のd軸電流であり、idse*は同期座標系上のd軸制御電流であり、iqseは同期座標系上のq軸電流であり、iqse*は同期座標系上のq軸制御電流であり、Lsは固定子の自己インダクタンスであり、σはLmを相互インダクタンスとしLrを回転子の自己インダクタンスとしたときの 1−(Lm2/Ls×Lr)であり、
【数9】
において、KIはあらかじめ設定されたゲイン値、idse*は同期座標系上のd軸制御電流であり、idseは同期座標系上のd軸電流である。)
【請求項8】
前記積分制御器は、前記回転子抵抗の誤差が実質的にゼロ(零)になるまで動作する、請求項7に記載の推定装置。
【請求項9】
前記誘導電動機のスリップ周波数が下記式により演算される、請求項8に記載の推定装置。
【数10】
(ここで、Rr^はあらかじめ設定された基準抵抗値、ΔRr_compは補償抵抗値である)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電動機のパラメータをリアルタイムに推定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、汎用インバータは、3相電動機の駆動に主に用いられるが、特に、誘導電動機を用いる可変速運転、巻上(ホイスト)負荷、電気自動車の牽引(トラクション)負荷に主に用いられる。
【0003】
誘導電動機のパラメータのうち、固定子抵抗及び回転子抵抗は、負荷の変動による電動機内部の温度変化に応じてその値が変化する。誘導電動機の駆動方法として主に用いられるベクトル制御は誘導電動機のパラメータへの依存度が高いため、回転子抵抗の変動は制御性能の低下を招くという問題があった。
【0004】
以下、図3図5Bを参照して従来の誘導電動機制御システムを説明する。
【0005】
図3は従来の誘導電動機制御システムの構成図である。
【0006】
速度制御部110は、回転子速度指令と実際の回転子速度を受信し、同期座標系上のq軸電流指令を出力する。電流制御部120は、同期座標系上のd軸及びq軸電流指令と実際の電流から同期座標系上のd軸及びq軸電圧を出力する。
【0007】
第1変換部130は、電流制御部120の出力電圧を静止座標系上の電圧に変換し、第2変換部140は、電流センサ190a、190b、190cにより測定された誘導電動機160の相電流を同期座標系上のd軸及びq軸電流に変換する。
【0008】
インバータ150は、誘導電動機160に電圧を印加し、回転子位置検出部170は、誘導電動機160の回転子速度を測定する。また、磁束角計算部180は、回転子位置検出部170により測定された回転子速度と同期座標系上のd軸及びq軸電流を用いて磁束角を計算する。ここで、同期座標系上のd軸電流はd軸電流指令で代替してもよい。
【0009】
図4図3の速度制御部110の詳細構成図である。
【0010】
同図に示すように、速度制御部110は、比例積分制御器111a、111bを用いて、指令速度と実際の速度の差をq軸電流指令として出力する。制限器112は、速度制御部110の出力を制限し、ゲイン部113は、制限器112が動作する際の比例積分制御器111bの発散を防止するためのアンチワインドアップゲインを提供する。
【0011】
図5A及び図5B図3の電流制御部120の詳細構成図であり、図5Aは同期座標系上のd軸電流制御部の構成を示し、図5Bは同期座標系上のq軸電流制御部の構成を示す。
【0012】
同図に示すように、d軸電流制御部は、同期座標系上のd軸電流を制御するために、比例積分制御器121a、121bと、フィードフォワード補償部122とから構成され、q軸電流制御部は、同期座標系上のq軸電流を制御するために、比例積分制御器124a、124bと、フィードフォワード補償部125とから構成される。
【0013】
フィードフォワード補償部122、125は、誘導電動機のモデリングによって多様に構成することができ、ゲイン部123、126は、電流制御部120の出力がインバータ150が合成できる電圧の範囲を外れた場合に比例積分制御器121b、124bの発散を防止するためのアンチワインドアップゲインを提供する。
【0014】
以下、このような従来の誘導電動機制御システムの動作を説明する。
【0015】
図3の第1変換部130は、電流制御部120の出力である同期座標系上の電圧を静止座標系上の電圧に変換するが、これは次のように定義される。
【0016】
【数1】
【0017】
【数2】
【0018】
第2変換部140は、電流センサ190a、190b、190cにより測定された誘導電動機160の相電流から、同期座標系上のd軸及びq軸電流を求めるが、これは次のように定義される。
【0019】
【数3】
【0020】
【数4】
【0021】
【数5】
【0022】
【数6】
【0023】
磁束角計算部180は、第1変換部130及び第2変換部140の角変換のために必要な磁束角を求めるが、間接ベクトル制御を行う場合は次のように求めることができる。
【0024】
【数7】
【0025】
【数8】
【0026】
【数9】
【0027】
ここで、ωslはスリップ周波数、Lrは回転子インダクタンス、Rrは回転子抵抗、Pは極数を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかし、間接ベクトル制御を行う場合、上記数式7を用いてスリップ周波数を求めるためには回転子抵抗が必要であるが、従来の誘導電動機制御システムにおいては、パラメータをリアルタイムに推定しないことから、パラメータの変動に脆弱であるという問題があった。特に、誘導電動機の回転子抵抗は誘導電動機の温度変化に応じてその値が変化するが、電動機の温度は負荷の変動に影響される。このような環境で生じる固定子抵抗の誤差は電流制御性能を低下させるという問題があった。
【0029】
本発明が解決しようとする技術的課題は、誘導電動機のパラメータの変動をリアルタイムに推定することによりベクトル制御性能を向上させる、誘導電動機のパラメータ推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記技術的課題を解決するために、d軸及びq軸電流指令と誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流から同期座標系上のd軸及びq軸電圧を出力する電流制御部と、前記誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流と前記誘導電動機の回転子速度を用いて回転子の磁束角を計算する磁束角計算部とを備える誘導電動機制御システムにおいて、前記誘導電動機のパラメータを推定する本発明の一態様による推定装置は、前記電流制御部の出力と前記誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流を受信し、回転子抵抗の誤差を判別する状態推定器と、前記状態推定器から出力される回転子抵抗と公称(nominal)回転子抵抗の誤差を求める積分制御器と、前記積分制御器の出力から固定子抵抗を演算する演算部とを含み、
前記演算部は、
【数10】
により固定子抵抗を演算し、前記積分制御器の出力は、前記電流制御部及び前記磁束角計算部に反映されて更新されるようにしてもよく、
ここで、Rsは固定子抵抗、
【数11】
は同期座標系上のd軸電流である。
【0031】
また、上記技術的課題を解決するために、d軸及びq軸電流指令と誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流から同期座標系上のd軸及びq軸電圧を出力する電流制御部と、前記誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流と前記誘導電動機の回転子速度を用いて回転子の磁束角を計算する磁束角計算部とを備える誘導電動機制御システムにおいて、前記誘導電動機のパラメータを推定する本発明の他の態様による推定装置は、前記電流制御部の出力と前記誘導電動機に供給される同期座標系上のd軸及びq軸電流を受信し、回転子抵抗の誤差を判別する状態推定器と、前記状態推定器から出力される回転子抵抗と公称回転子抵抗の誤差を求める積分制御器と、前記積分制御器の出力から固定子抵抗を演算する演算部とを含み、
前記演算部は、
【数12】
により固定子抵抗を演算し、前記積分制御器の出力は、前記電流制御部及び前記磁束角計算部に反映されて更新されるようにしてもよく、
ここで、Rsは固定子抵抗、
【数13】
は同期座標系上のq軸電流である。
【0032】
本発明による推定装置は、フラグ入力によって、前記回転子抵抗を推定するか否かを切り替えるスイッチをさらに含んでもよい。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記回転子抵抗の誤差は、
【数14】
により演算されるようにしてもよく、ここで、ΔTrは前記回転子抵抗を回転子インピーダンスで除算した値の逆数である。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記積分制御器は、前記回転子抵抗の誤差が実質的にゼロ(零)になるまで動作するようにしてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記誘導電動機のスリップ周波数は、
【数15】
により演算されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、誘導電動機制御システムにおいて誘導電動機のパラメータをリアルタイムに推定して制御に反映することにより、ベクトル制御性能を向上させるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明が適用される誘導電動機制御システムの一実施形態の構成図である。
図2図1の本発明の推定装置の一実施形態の構成図である。
図3】従来の誘導電動機制御システムの構成図である。
図4図3の速度制御部の詳細構成図である。
図5A図3の電流制御部の詳細構成図であり、同期座標系上のd軸電流制御部の構成を示す図である。
図5B図3の電流制御部の詳細構成図であり、同期座標系上のq軸電流制御部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、様々な変更が可能であり、様々な実施形態を有するが、特定の実施形態を図面に示して詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0039】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい一実施形態を詳細に説明する。
【0040】
図1は本発明が適用される誘導電動機制御システムの一実施形態の構成図である。
【0041】
同図に示すように、本発明が適用される誘導電動機制御システムは、誘導電動機160を制御するためのものであって、速度制御部110、電流制御部120、第1変換部130、第2変換部140、インバータ150、回転子位置検出部170及び磁束角計算部180、並びに本発明の推定装置10を含む。本発明の推定装置10以外の構成要素については、図3を参照して説明した通りであるので、その詳細な説明は省略する。
【0042】
本発明の推定装置10は、同期座標系上のd軸及びq軸電流と電流制御部120の出力電圧を受信し、回転子抵抗の誤差を出力する。推定された回転子抵抗の誤差は、電流制御部120及び磁束角計算部180に反映されて更新される。
【0043】
図2図1の本発明の推定装置10の一実施形態の構成図である。
【0044】
同図に示すように、本発明の推定装置10は、状態推定器11、スイッチ12及び積分制御器13を含む。
【0045】
状態推定器11は、図5A及び図5Bを参照して説明したd軸及びq軸電流制御部120の出力電圧と帰還電流(すなわち、第2変換部140の出力であるd軸及びq軸電流)から、回転子抵抗の誤差を判別する。
【0046】
スイッチ12は、回転子抵抗をリアルタイムに推定するためのフラグにより動作する。すなわち、フラグ入力によって、回転子抵抗を推定するか否かが決定される。フラグ入力は、上位制御システム(図示せず)から受信するようにしてもよい。
【0047】
積分制御器13は、状態推定器11から出力される実際の回転子抵抗と公称回転子抵抗の誤差を求める。
【0048】
以下、本発明の推定装置10の詳細動作を説明する。
【0049】
一般的な座標系上において、誘導電動機160の電圧方程式は下記数式16〜数式19の通りであり、磁束式は下記数式20〜数式23の通りである。
【0050】
【数16】
【0051】
【数17】
【0052】
【数18】
【0053】
【数19】
【0054】
【数20】
【0055】
【数21】
【0056】
【数22】
【0057】
【数23】
【0058】
上記数式16〜数式23から、同期座標系上において、誘導電動機160の電圧方程式は下記数式24〜数式27の通りであり、磁束式は下記数式28〜数式31の通りである。
【0059】
【数24】
【0060】
【数25】
【0061】
【数26】
【0062】
【数27】
【0063】
【数28】
【0064】
【数29】
【0065】
【数30】
【0066】
【数31】
【0067】
回転子磁束と回転子電流を用いて固定子磁束を表すと次の通りである。
【0068】
【数32】
【0069】
【数33】
【0070】
上記数式から回転子の電圧方程式を導くと次の通りである。
【0071】
【数34】
【0072】
【数35】
【0073】
また、誘導電動機160の固定子側の同期座標系上のd軸及びq軸電圧方程式はそれぞれ次の通りである。
【0074】
【数36】
【0075】
【数37】
【0076】
また、間接ベクトル制御が行われ、正常状態で電流制御が行われている場合、電流制御部120の出力はそれぞれ次の通りである。
【0077】
【数38】
【0078】
【数39】
【0079】
ここで、フィードフォワード補償項は次のように定義される。
【0080】
【数40】
【0081】
【数41】
【0082】
【数42】
【0083】
【数43】
【0084】
電流制御部120の電流制御が円滑に行われている場合、次の条件を満たす。
【0085】
【数44】
【0086】
【数45】
【0087】
この場合、インダクタンスが正確であると、d軸及びq軸電流制御部120が正常状態で扱う電圧は次の通りである。
【0088】
【数46】
【0089】
【数47】
【0090】
上記数式46及び数式47をまとめると次の通りである。
【0091】
【数48】
【0092】
【数49】
【0093】
ここで、ΔTrは回転子抵抗を回転子インピーダンスで除算した値の逆数である。上記数式は次のように置き換えることができる。
【0094】
【数50】
【0095】
【数51】
【0096】
上記数式50及び数式51を用いて上記数式48及び数式49の連立方程式を計算すると、次のように回転子抵抗の誤差を求めることができる。
【0097】
【数52】
【0098】
上記数式52により演算された値がゼロ(零)になるまで図2の積分制御器13が動作し、推定された回転子抵抗の誤差は上記数式41及び数式43のフィードフォワード補償と上記数式7のスリップ周波数の計算に連続的に反映されて更新され、下記数式53のようにスリップ周波数が計算される。
【0099】
【数53】
【0100】
【表1】
【0101】
【数54】
【0102】
【数55】
【0103】
従って、固定子抵抗は、下記数式56又は数式57を用いて求めることができる。
【0104】
【数56】
【0105】
【数57】
【0106】
このように、誘導電動機160の回転子抵抗及び固定子抵抗のリアルタイム推定は、電流制御部120のフィードフォワード補償と電流制御部120の比例積分制御器の出力電圧を用いて達成することができる。推定される回転子抵抗及び固定子抵抗は、誘導電動機制御システムにおいて速い応答特性及び大きな制御帯域幅を有する電流制御部により決定されるため、制御性能を向上させることができる。
【0107】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これは例示的なものにすぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者であればこれから様々な変形及び均等な実施形態が可能であることを理解するであろう。よって、本発明の権利範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物により定められるべきである。
【符号の説明】
【0108】
10 推定装置
11 状態推定器
12 スイッチ
13 積分制御器
110 速度制御部
120 電流制御部
130 第1変換部
140 第2変換部
150 インバータ
160 誘導電動機
170 回転子位置検出部
180 磁束角計算部
190a、190b、190c 電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B