(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792803
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】電磁石
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20150928BHJP
H01F 7/121 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
H01F7/16 E
H01F7/16 F
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-510510(P2013-510510)
(86)(22)【出願日】2011年3月23日
(65)【公表番号】特表2013-526780(P2013-526780A)
(43)【公表日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】EP2011001428
(87)【国際公開番号】WO2011144272
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2013年8月15日
(31)【優先権主張番号】102010021175.3
(32)【優先日】2010年5月21日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500331909
【氏名又は名称】ハイダック エレクトロニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】パトリック フフス
【審査官】
松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−115221(JP,U)
【文献】
特開2004−324719(JP,A)
【文献】
特開2003−166664(JP,A)
【文献】
実開平04−020207(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16
H01F 7/121
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビン(7)上に位置する界磁巻線(11)と磁気戻り経路の一部を形成するポールピース(23)とを有し、
ポールコア(17)と軸方向に移動可能な磁気ピストン(19)とが、前記ボビン(7)内に設けられ、
前記ポールピース(23)は、前記ポールコア(17)と反対の領域に前記磁気ピストン(19)のために開口部(25)を形成し、
前記磁気ピストンは、前記磁気ピストンを移動させるためにガイドスリーブ(21)によって支持される、電磁石であって、
前記ポールピース(23)は、前記ボビン(7)の軸端に少なくとも部分的に及ぶフランジ部(27)を有し、また、前記フランジ部から軸方向に伸び、前記ボビン(7)内に前記磁気ピストン(19)の縦断面に及ぶ中空シリンダを形成するブッシング部(29)を有し、
前記中空シリンダの内壁と前記磁気ピストン(19)の外周との間に寄生空隙(30)が形成され、
前記磁気ピストン(19)は前記ガイドスリーブ(21)によって滑りばめで支持され、
前記磁気ピストン(19)の作動プランジャが、前記ガイドスリーブ(21)と共に滑りばめの構成要素を形成するガイドウェイ(31)を介して、前記ポールコア(17)によって支持される、
ことを特徴とする電磁石。
【請求項2】
前記ガイドスリーブ(21)は、前記寄生空隙(30)の幅が0.1mmよりも小さいときに前記磁気ピストン(19)が前記中空シリンダに接触しないような厳格な公差を有する前記ポールピース(23)の前記中空シリンダと同軸であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁石。
【請求項3】
前記ポールピース(23)の同一の部分として設計される第2のポールピース(23)が、前記開口部(25)と反対の領域に配置され、前記第2のポールピース(23)は、そのブッシング部(29)を用いて前記中空シリンダ内に取り付けられる前記ポールコア(17)に対して締りばめを形成することを特徴とする、請求項2に記載の電磁石。
【請求項4】
前記巻線(11)を少なくとも部分的に囲む磁気戻りケーシング(13)が、前記該当ポールピース(23)の前記フランジ部(27)への磁気戻り経路を形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁石。
【請求項5】
厳格な装置を形成するために、前記ボビン(7)と前記ポールピース(23)と前記戻りケーシング(13)とは、単一の筐体(1)を形成するプラスチック封入材料(5)を用いて射出成形により封入されることを特徴とする、請求項4に記載の電磁石。
【請求項6】
前記電磁石はスイッチング磁石であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル構造(coil form)上に位置する界磁巻線(field winding)と磁気戻り経路(magnetic return path)の一部を形成するポールピース(pole piece)とを有し、ポールコア(pole core)と軸方向に移動可能な磁気ピストン(magnetic piston)とが、コイル構造内に設けられ、ポールピースは、ポールコアと反対の領域に磁気ピストンのために開口部(aperture opening)を形成し、磁気ピストンは、磁気ピストンを移動するためにポールコアのガイド内に取り付けられる電磁石、特にスイッチング磁石(switching magnet)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁石は、特許文献1から知られている。ポールピースと磁気ピストンとの間の磁気戻り経路は、そのような磁石の動作特性(operating property)にとってかなり重要である。この戻り経路の特性は、磁気ピストンとポールピースとの間の空隙(air gap)の設定に依存する。一般に、磁気ピストンとポールピースとの間の小さな空隙は、ストローク(stroke)上の磁力の増加をもたらす。上述の文書は、磁気ピストンをその端でポールピース上の開口部に隣接するように成形する手段に基づく、空隙の形状設計(geometric design)の多数の解決手段を開示する。これらの解決手段は、ピストンの端部のテーパー面(tapered surface)、又はその端面が開口部を通って完全に伸びないようにピストンの長さを短縮することを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1818951号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術からの公知の解決手段は、動作の振る舞い(operating behavior)に遺憾な点が多い。上述の理由を検討し、本発明の目的は、比較的改善された磁力/ストローク特性(characteristic)により区別される電磁石を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1全体で特定される特徴を有する電磁石を用いて、この目的を達成する。
【0006】
したがって、本発明の本質的な特徴は、電磁石の動作特性の決定的要因である寄生空隙(parasitic air gap)が、寄生空隙が中空シリンダ(hollow cylinder)の内壁とピストンの外周との間に形成されるように、フランジ部(flange part)に結合され、コイル構造の軸端(axial end)に部分的に及ぶポールピースが中空シリンダの構造内のコイル構造に及び、磁気ピストンの縦断面に及ぶブッシング部(bushing part)を形成するように形成されるという事実にある。ブッシング部の中空シリンダの内径とピストンの外径との差は、空隙幅が最適な値に調整され得るように選択される。最新技術に開示される解決手段と対照的に、最適な磁力/ストローク特性の目的が満たされ得るように、ピストンが移動するときに空隙の形状にいかなる変更もない。
【0007】
特に有利な例示の実施形態では、磁気ピストンは、寄生空隙の幅が0.1mmよりも小さいときに磁気ピストンが中空シリンダに接触しないような厳格な公差(tight tolerance)を有するポールピースの中空シリンダに対して同軸度(coaxiality)を有するガイドスリーブ(guide sleeve)上に滑りばめ(sliding fit)で取り付けられる。磁気ピストンとポールピースとの間の接触による摩擦は、磁力/ストローク特性のヒステリシス(hysteresis)の増加をもたらす。したがって、そのような接触は、いかなる場合にも避けなければならない。本発明は、ポールコア内のガイドとガイドスリーブとの厳格な公差の同軸度を提供するので、接触のリスクを受け入れる必要なしに寄生空隙の幅を最小化する可能性がある。
【0008】
特に有利な実施形態では、配置は、第1のポールピースの同一の部分として設計される第2のポールピースが、開口部と反対の領域に配置され、第2のポールピースは、そのブッシング部を用いて中空シリンダ内に取り付けられるポールコアに対して締りばめ(tight fit)を形成するように設定され得る。最終製品が効率的且つ安価に製造され得るように、構造が同一の二つのポールピースの使用は、二倍の数の要素により単価を下げる可能性を提供する。
【0009】
磁気戻り経路の残りの部分の設計に関して、配置は、巻線を少なくとも部分的に囲む磁気戻りケーシング(magnetic return casing)が、該当ポールピースのフランジ部への磁気戻り経路を形成するように有利に設定され得る。そのような例示の実施形態は、小さなサイズに比べて高い磁力により区別される。
【0010】
特に効率的且つ安価な製造は、厳格な装置を形成するために、コイル構造とポールピースと戻りケーシングとが、単一の筐体を形成するプラスチック封入材料(plastic encapsulating compound)を用いて射出成形により封入される例示の実施形態により可能にされる。
【0011】
本発明は、図面に示される例示の一実施形態を用いて、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】例示の実施形態の縦断面図である。筐体内に存在し、電磁石の作動プランジャ(actuating plunger)を用いて作動させられ得るバルブ装置(valve device)は、よりよい概観のために省略されている。
【
図2】
図1に類似の断面図である。ポールコア及び磁気ピストンの組み込みの前に、射出成形によりコイル構造を封入する工程による筐体の製造の状態を示す。
【
図3】
図1の磁気ピストンに隣接する領域の拡大詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、一例を用いて、以下に説明される。筐体1内の電磁石は、筐体1内のバルブチャンバ(valve chamber)3内に配置されるバルブ装置のための作動要素を形成する。このバルブ装置は、本発明の一部ではないため、図面では省略されている。筐体1は、電磁石のコイル構造7と他の構成要素とが射出成形により封入されるプラスチック封入材料5からなる不可欠な構成要素として形成される。
【0014】
射出成形による封入工程での封入材料とコイル構造との間の気密接続(gas tight connection)を保証するために、コイル構造7は、
図3の拡大図により明確に示されるように、射出成形による封入工程でのいわゆる融合端(fused edge)を形成する鋸歯状の縁(serrations)9を備えている。コイル構造7上に存在する界磁巻線11は、そのような電磁石のための従来の方法で磁気戻り経路の一部を形成する戻りケーシング13により囲まれる。この戻りケーシングは、封入材料5内の、巻線11に電流を供給するために用いられる平面プラグ(flat plug)15のように、埋め込まれる。
【0015】
バルブチャンバ3に面する領域に、コイル構造7内に強固に取り付けられたポールコア17が存在する。磁気ピストン19は、コイル構造7の内部のポールコアに対して軸方向に移動され得るように配置される。
図1及び
図3では、磁気ピストン19は、ポールコア17に近接したそのストローク端(stroke end)に示される。このストローク端で、磁気ピストン19と接触し、バルブ装置(図示せず)の制御に用いられる作動プランジャ(詳細に図示せず)を収容できるガイドスリーブ21は、図面内の最も左に存在する。いわゆる「強力な(pushing)」電磁石を含む場合に、ピストンのこの位置は、界磁巻線11の完全に電圧が印加された状態(totally energized state)に対応する。さもなければ、磁気ピストン19は、電流を供給することにより、図示される端から右に移動され得る。
【0016】
戻りケーシング13からコイル構造7の内部への磁気戻り経路の連続のために、同一の部分として構成されるポールピース23が存在する。これらのポールピースのうち、第1のポールピース23は、磁気ピストン19の領域に開口部25を形成する。磁気ピストン19は、この開口部内を移動され得る。各ポールピース23は、コイル構造7の軸端表面(facing axial end)に及び、戻りケーシング13の付近まで及ぶフランジ部27を有する。ブッシング部29は、フランジ部27からコイル構造7の内部に及ぶ。ブッシング部29は、第1のポールピース23でピストン19の縦断面に及び、第2のポールピース23でポールコア17の縦断面に及ぶ中空シリンダを形成する。第2のポールピース23のこの縦断面内で、ポールコア17は、締りばめにより所定の位置に固定される。第1のポールピース23での中空シリンダの内壁は、磁気ピストン19の外周から少し離れて、しかし、空隙幅が0.1mmよりも小さいように小さな寄生空隙30を空けて存在する。例示の本実施形態では、磁気ピストン19の外径とブッシング部29の中空シリンダの内径との差は、例えば、0.07mmである。
【0017】
結果として磁気ピストン19に接触するリスクを負わずにこのように最小化される空隙幅と、より高いヒステリシスをもたらす特徴と、それ故の機能不全(malfunction)とは、磁気ピストン19をそのガイドスリーブ21と共に置換可能にポールコア17上に厳格な公差が課せられる滑りばめで取り付け、ポールピース23のブッシング部29双方の中空シリンダの厳格な公差の同軸度を維持することにより、本発明において確実に実現され得る。この目的は、その過程で
図2に示される製造段階に達する封入工程で、
図2ではまだ覆われていないコイル構造7の内部の較正封入マンドレル(calibrated encapsulating mandrel)(図示せず)を用いることにより達成される。したがって、ポールピース23双方のブッシング部29の中空シリンダ間の同軸度は、0.07mmよりも小さく維持され得る。このように、磁石全体に対する完全な圧密配置(totally pressure tight arrangement)も得られる。さらに、
図1及び
図3は、シリンダ形ガイドブッシング(cylindrical guide bushing)がガイドスリーブ21の外周と磁気ピストン19の内周表面との間に用いられることも示す。しかし、このガイドブッシングは、図示されるように、磁気ピストン19の底部まで完全には継続しない。さらに、ガイドブッシングは、図面に対して右に、ガイドスリーブ21が支持される磁気ピストン19の底部に入る直径の肩状(shoulder-like)の減少により、磁気ピストン19内に保持される。