特許第5792822号(P5792822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5792822毛幹の内部領域を化学修飾するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792822
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】毛幹の内部領域を化学修飾するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20150928BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20150928BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20150928BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   A61K8/46
   A61K8/22
   A61Q5/06
   A61K8/36
【請求項の数】16
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-539016(P2013-539016)
(86)(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公表番号】特表2013-545753(P2013-545753A)
(43)【公表日】2013年12月26日
(86)【国際出願番号】US2012021787
(87)【国際公開番号】WO2012100006
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2013年5月9日
(31)【優先権主張番号】11151374.3
(32)【優先日】2011年1月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11194638.0
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス フローア
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−518106(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/014763(WO,A1)
【文献】 米国特許第03472243(US,A)
【文献】 特開平04−208214(JP,A)
【文献】 特開昭53−038634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛幹の内部領域を化学修飾する方法であって、
(i)前記毛髪に、過酸化物、過硫酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択される酸化剤を含有する酸化性調合物を塗布する工程と、
(ii)前記工程(i)後、前記毛髪から湿気を除去する工程と、
(iii)前記工程(ii)後、前記毛髪に、1重量%〜15重量%のモノマーを含むモノマー組成物を塗布する工程であって、前記モノマーが、アクリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択され、前記モノマー組成物が、2.5〜6のpHを有し、前記モノマーが、毛幹の前記内部領域に浸透する、工程と、
(iv)前記工程(iii)後、前記モノマーを毛幹の前記内部領域内で重合させる工程と
を含む、毛幹の前記内部領域を化学修飾する方法。
【請求項2】
前記モノマー組成物を前記毛髪上に時間xにわたって残留させる工程であって、前記時間xが1分〜120分である工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノマー組成物をヘアスタイリスト及び/又は消費者に提供する工程を更に含み、前記ヘアスタイリスト及び/又は消費者が、前記モノマー組成物を前記毛髪に塗布する前に前記モノマー組成物を第2の調合物と予混合する必要がない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤が、過酸化物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記時間xが5分〜100分である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記時間xが20分〜60分である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記毛髪に前記酸化性調合物を塗布してから前記毛髪から湿気を除去するまでの間に前記酸化性調合物を前記毛髪上に時間yにわたって残留させることであって、前記時間yが1分〜120分である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記時間yが3分〜20分である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化性調合物が美容的に許容可能な担体を更に含み、前記毛髪から湿気を除去する工程が、前記毛髪に吸収材料を塗布して湿気を前記毛髪から前記吸収材料に移動させる工程であって、前記湿気が前記美容的に許容可能な担体を含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記モノマー組成物及び/又は前記酸化性調合物が、カチオン及びアニオンを更に含み、前記カチオンは、電荷密度が0.05電荷/ピコメートル以上の無機カチオンからなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記モノマー組成物が増粘手段を更に含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記増粘手段が、非イオン性濃化剤、アニオン性濃化剤、カチオン性濃化剤、両性濃化剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される増粘剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記増粘剤が少なくとも1種の多糖類を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記増粘剤が少なくとも1種のヘテロ多糖を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記時間xの間、前記毛髪を少なくとも70%の相対湿度に露出させ、該露出は前記モノマー組成物の塗布後1時間以内に行われ、前記露出を10〜90分持続させる、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
毛幹の密度及び/又は毛幹の弾性の増加のための、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様において、毛幹の内部領域を化学修飾する方法が提供されている。本方法は、毛髪に酸化性調合物を塗布する工程と、毛髪から湿気を除去する工程と、毛髪にモノマー組成物を塗布する工程であって、モノマー組成物が分子量500g/mol以下のエチレン性モノマー及び美容的に許容可能な担体を含む、工程と、を含む。第2の態様においては、第1の態様に従う方法を含む塗布指示書と、モノマー組成物と、を含んで構成されるキットが提供されている。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアスタイルは、毛髪を少なくとも部分的にコーティングして、毛髪繊維の表面に作用するポリマー及び他の成分を含む、スタイリング製品を使用することによって行われてきた。この手法には幾つかの難点がある。時間の経過、高い環境湿度、過剰な運動などによってヘアスタイルが損なわれることにより、消費者は一日を通じてヘアスタイルを回復させる必要性を感じることがある。これには、更なるスタイリング製品を塗布する必要がしばしば生ずる。従来のスタイリング製品の効果は、コンディショニング剤も塗布された毛髪に塗布される場合にも損なわれる可能性がある。更に、毛髪の表面に物質を塗布すると、毛髪の自然な感触及び外観が損なわれ、くすんだ外観及び/又はごわごわした、あるいは不快な感触となってしまう場合がある。更にまた、毛髪の種類によっては、従来のスタイリング製品及びトリートメントでは所望の髪型を全く実現できないこともあり得る。
【0003】
毛髪にダメージがある、細い、薄い、又は軟弱な髪の消費者、特にヘアドライヤーを使用する消費者は、毛髪のボリュームアップ及びハリの改善を望んでいる。これらの消費者は、髪の濃さ(すなわち毛髪のボリューム)、弾力、及びハリの改善を実感できると共に他人にもそうしたイメージなどを与え得るヘアスタイル、トリートメント及び製品を求めている。髪の動き及び感触を高めることも、これらの消費者によって切望されている。したがって、消費者に、ボリュームアップ、毛髪の感触の良さ、しなやかさ、質感、見かけ上の健やかさ、更には髪型の整え易さをそれぞれ同時に改善できるようにさせたいという要望も存在する。これらの消費者がバックコーミング、広範なブロー乾燥、ムース製品及び/又はヘアスプレーの必要なしに、前述の利益を享受できるようにする必要がある。
【0004】
また、カーリーヘア及び/又は乱れがちな髪及び/又は縮れ毛の消費者、とりわけヘアストレートナーを利用する消費者が調髪をかなり自在に行えるようにする必要もある。これらの消費者は、これまでよりも整髪が容易になりかつ/又はカールの付き易くなったことを実感できると共に他人にもそうしたイメージを与え得るようなヘアスタイル、トリートメント及び製品を求めている。言い換えると、髪全体にまとまりがあり、髪型が極めてシャープで、艶々して健康そうに見えるということである。これらの消費者が、ボリュームを抑えて毛幹を真っ直ぐにすることで、外見のシャープさを完璧化することを望む場合もある。これらの消費者が頼ることのできる手段は一般的に、スタイリングジェル及び/又はスタイリングムースの塗布といった従来手段を利用することである。よって、こうした消費者がこれらの従来手段に訴えなくても前述の利益を享受できるようにする必要性が生じている。
【0005】
毛幹の内部領域を化学修飾するための方法及び組成物は、当該技術分野では周知のものである。例えば、米国特許出願公開第2008/0210253A1号を参照されたい。前記方法は、特定のモノマーを含む第1の組成物を毛髪に塗布する工程と、反応開始剤を含む第2の組成物をその毛髪に塗布する工程と、を含み得るものである。前記方法によれば、毛髪を何度も洗い、かつ/又は濡らした後に毛幹の剛性が増し、水分及び/又は湿度の負の効果(すなわち、耐湿性)が低減した結果、縮れ毛及び/又は軟弱さが軽減され得、並びに、前記方法によれば、スタイリング製品の塗布量が少なくて済み、かつ/又はより長時間にわたってスタイルを保持することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0210253A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記方法は毛幹に対して満足な結果を与えるものであるが、更に向上した性能、有効性及び/又は効率につながる方法が常に求められている。性能向上に関しては、所望のヘア形状の保持性及びヘアスタイルの持続性の向上に対する具体的なニーズが存在する。効率に関しては、毛幹内へのモノマーの浸透性を高め、かつ/又は、例えば毛幹の内部構造内のポリマー鎖の長さを大きくするなど、モノマーの重合性を高めることが求められている。更にまた、利益の持続時間が長くなるようにトリートメントの持続性を改善する必要がある。また、例えば、活性成分及び/又は組成物/調合物/工程の所要数を減らしても同程度の性能が得られるように、本方法の有効性を増強する必要もある。更に、塗布工程を、訓練を受けた理髪師が遂行できるように、又は消費者が自宅で自身の毛髪に対して遂行できるように、簡素化する必要がある。加えて、毛髪タイプが異なる消費者間の最終的な結果のばらつきを減らし、結果を確実に予測し易くできるようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は毛幹の内部領域を化学修飾する方法に関し、該方法は、
(i)毛髪に酸化性調合物を塗布する工程と、
(ii)毛髪から湿気を除去する工程と、
(iii)毛髪にモノマー組成物を塗布する工程であって、前記モノマー組成物が分子量500g/mol以下のエチレン性モノマー及び美容的に許容可能な担体を含む、工程と、を含む。
【0009】
第2の態様において、本発明は、
(a)第1の態様に従う方法を含む塗布指示書、
(b)モノマー組成物、を含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】プロトン核磁気共鳴分光法(1H−NMR)で測定したモノマーの経時的消失を示す図。
図2】Al3+カチオン類を含有するモノマー組成物が利用されたとき、及びSr2+カチオン類を含有するモノマー組成物が利用されるときに形成されるポリマーの分子量(ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)での測定値)を示す図。
図3A】ミクロオートラジオグラフィで検出された毛髪束中の14C−3−SPAの図。
図3B】ミクロオートラジオグラフィで検出された毛髪束中の14C−3−SPAの図。
図3C】ミクロオートラジオグラフィで検出された毛髪束中の14C−3−SPAの図。
図3D】ミクロオートラジオグラフィで検出された毛髪束中の14C−3−SPAの図。
図3E】ミクロオートラジオグラフィで検出された毛髪束中の14C−3−SPAの図。
図4A】ミクロオートラジオグラフィで検出された毛髪束中の14C−3−SPAの図。
図4B】ミクロオートラジオグラフィで検出された毛髪束中の14C−3−SPAの図。
図4C】ミクロオートラジオグラフィで検出された毛髪束中の14C−3−SPAの図。
図4D】ミクロオートラジオグラフィで検出された毛髪束中の14C−3−SPAの図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の全ての実施形態では、特に記述のない限り、全ての百分率は、組成物全体の重量によるものである。全ての比率は、特に記述のない限り、重量比である。全ての範囲は、包含的であり、かつ組み合わせ可能である。有効数字の数は、表示された量に対する限定を表すものでも、測定値の精度に対する限定を表すものでもない。
【0012】
全ての数値的な量は、特に指示のない限り、用語「約」によって修飾されることが理解されよう。特に指示がない限り、全ての測定は、25℃において周囲条件で実施されるものと理解され、「周囲条件」とは、約1気圧及び相対湿度約50%における条件を意味する。列挙される成分についてのこうした重量は全て活性レベルに基づいたものであり、特に断らない限り、市販の物質に含有される可能性のある担体又は副生成物は含まれない。
【0013】
本明細書では、「含む」とは、最終結果に影響を及ぼさない、他の工程及び他の成分を追加し得ることを意味する。この用語は、用語「〜からなる」及び用語「本質的に〜からなる」を包含する。本発明の組成物、方法、使用法、キット、及びプロセスは、本明細書で説明される、本発明の必須要素及び制約、並びに本明細書で説明される、追加成分若しくは任意成分、構成要素、工程、又は制約のいずれをも含み、それらからなり、本質的にそれらからなることができる。
【0014】
用語「実質的に含まない」とは、本明細書で使用するとき、組成物及び/又は調合物全体の、約1重量%未満、好ましくは約0.8重量%未満、より好ましくは約0.5重量%未満、更により好ましくは約0.3重量%未満、最も好ましくは約0重量%を意味する。
【0015】
「毛髪」とは、本明細書で使用するとき、頭皮の毛、顔面の毛、及び身体の毛を含めた、哺乳類の毛を意味し、より好ましくは、ヒトの頭部及び頭皮上の毛を意味する。「毛幹」とは個々の毛髪のストランドを意味し、「毛髪」なる用語と互換可能に用い得る。
【0016】
本明細書において使用するところの「毛幹の内部領域」とは、角皮の内側部分及び角皮の下及び角皮の下を含む毛幹のあらゆる非表面部分を意味する。「非表面部分」とは、外部環境と直接接触しない毛髪の部分を意味するものとして理解することができる。
【0017】
本明細書において使用するところの「頭皮の近位」とは、伸ばした、すなわちほぼ真っ直ぐとした毛幹の、毛髪の末端よりも距離的に頭皮に近い部分を意味する。したがって、毛髪の約50%は頭皮の近位と見なされ、毛髪の約50%は頭皮の遠位と見なされる。「頭皮の近位z cm」とは、一方の端点が頭皮上、又は頭皮に直接隣接する位置にあり、他方の端点が、伸ばした、すなわちほぼ真っ直ぐとした毛髪の長さに沿って「z」cmとなる位置にあるような、毛髪に沿った距離「z」のことを意味する。
【0018】
「美容的に許容可能な」とは、本明細書で使用するとき、説明される組成物、処方、又は成分が、過度の毒性、不適応性、不安定性、及びアレルギー反応性などを伴わず、ヒトのケラチン組織と接触させて使用するために好適であることを意味する。本明細書で説明され、ケラチン組織に直接適用するという用途を有する全ての組成物及び調合物は、美容的に許容可能であるよう制限される。
【0019】
本明細書において使用するところの「誘導体」とは、これらに限定されるものではないが、特定の化合物のアミド誘導体、エーテル誘導体、エステル誘導体、アミノ誘導体、カルボキシル誘導体、アセチル誘導体、及び/又はアルコール誘導体を含む。
【0020】
本明細書において使用するところの「モノマー」とは、反応開始剤の存在下で重合可能な個別の重合していない状態の化学的部分を意味する。
【0021】
本明細書において使用するところの「エチレン性モノマー」とは、オレフィン性の炭素−炭素二重結合(C=C)を含み、反応開始剤の存在下で重合可能な化学種を意味する。
【0022】
本明細書において用いられている「ポリマー」は、2つ以上のモノマーの重合によって形成される化学物質を意味する。本明細書で使用するとき、用語「ポリマー」は、モノマーの重合、並びに天然ポリマーによって作製される全ての材料を含むべきである。1種類だけのモノマーから作製されるポリマーは、ホモポリマーと称される。ポリマーは、少なくとも2つのモノマーを含む。2種以上の異なる種類のモノマーから作製されるポリマーは、コポリマーと称される。異なるモノマーの分布は、統計的に又はブロックごとに計算することができ、両方の可能性は、本発明には好適である。特に明記される場合を除いて、本明細書で使用するとき、用語「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマーを含む、いかなる種類のポリマーが含まれる。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「ヘアスタイリングポリマー」は、表面上に膜を形成する毛髪を固定するポリマーを意味する。毛髪の文脈の中では、この表面は、個々の毛髪繊維又はその複数の毛髪繊維の表面である。ポリマーは、接合部を形成するために、それらを一緒に接着させ、これが、保持効果を提供する架橋結合である。同時に、これらの接合部は、ユーザに毛髪の保持及びボリューム効果を提供する「ヘアネット」を形成する。接合部のネットが、有効に形成されるとき、保持及びボリューム効果が、一日中続き、環境湿度への良好な耐性を提供することができる。
【0024】
用語「分子量」又は「M.Wt.」は、本明細書で使用するとき、特に記述のない限り、数平均分子量を指す。
【0025】
全ての百分率は、特に明記しない限り、重量で計算される。
【0026】
本明細書において使用するところの「化学修飾する」、又はその文法的な等価表現は、モノマー及び/又は架橋剤及び/又はポリマーなどの化学的部分が、例えばケラチン蛋白質、別の毛髪成分、及び/又は別のモノマー若しくは架橋剤、又はポリマーなどの第2の化学的部分と安定的に結合することを意味する。
【0027】
本明細書において使用するところの「別々にパッケージングされた」とは、1つの組成物又は調合物が第2の組成物又は調合物と物理的に接触、又は混合することを防止する任意のパッケージングの形態を意味する。「別々にパッケージングされた」とは、個々の組成物/調合物が別々の容器にパッケージングされているか、あるいは組成物/調合物同士が物理的に接触しないように1個の容器に分割されていることを意味し得る。
【0028】
本明細書において使用するところの「相対湿度」とは、空気中に運ばれる水蒸気の量を意味する。本明細書において「高い相対湿度」とは、周囲条件におけるよりも高い相対湿度、すなわち少なくとも約70%を指す。本明細書において使用するところの「環境湿度」とは、本発明の方法が完了した後に消費者が曝露され得る相対湿度に関する。環境湿度の一例としては、天候状態によるものがある。本明細書において使用するところの「環境湿度耐性」とは、環境湿度の悪影響に効果的に耐える毛髪の性質に関する。
【0029】
本明細書で使用される際、「多価カチオン」とは、+2〜+7の正味イオン電荷を有する元素を意味する。
【0030】
「安定的に付着する」とは、いったん形成されると、濡れ、洗浄、スタイリング、及び他の種類の毛髪処理を経ても不変である、共有結合及び非共有結合形態の両方の化学結合を含むと理解される。広くは、安定的に付着した化学部位は、毛髪を損傷する、又は実質的に破壊することなく毛髪から除去され得ない。
【0031】
本明細書で使用される際、「改善されたスタイル保持力及び/又は持続性」とは、本発明の組成物が毛髪に塗布された後に形成された、形状化された、及び/又は得られたヘアスタイルが、組成物が塗布されていない同一の毛髪と比較して、より長い時間維持されることを意味する。
【0032】
本明細書で使用される際、「ボリュームの改善された外観」とは、毛髪が、発明の組成物が塗布された後、組成物が塗布される前と比較して、視覚的に著しくより優れたボリューム、すなわち、頭皮とヘアスタイルの最外層との間の距離、及び/又は個々の毛髪間の距離を呈することを意味する。
【0033】
本明細書において用いられている「耐湿性の改善」は、毛髪が本発明の組成物を塗布された後、組成物が塗布される前と比較して水蒸気(すなわち、約50%を超える相対湿度)に露出されたときに、ボリューム減、髪型の乱れ、縮れ毛の増加といった視覚的に目立つ影響を呈し得ないことを意味する。
【0034】
本明細書で用いられている「キット」は、複数の構成要素を含むパッケージユニットを意味する。キットの例としては、例えば、第1の組成物、及び別々にパッケージングされた第2の組成物が挙げられる。別のキットは、第1の組成物と、エネルギー送達装置と、を含み得る。別のキットは、3つの異なる種類の別々にパッケージングされた組成物と、ヘアスタイリング用具と、を含み得る。更なるキットは、方法を含む塗布指示書と、組成物/調合物と、を含み得る。
【0035】
本明細書で使用される際、「別々にパッケージ化された」とは、第1の組成物が第2の組成物と物理的に接触する、又は混ざることを防ぐ、パッケージングのいずれかの形状を意味する。「別々にパッケージングされた」とは、個々の組成物が別々の容器にパッケージングされているか、あるいは組成物同士が物理的に接触しないように1個の容器に分割されていることを意味し得る。
【0036】
本明細書で使用される際、「用具」とは、組成物の毛髪への塗布及び/又は毛髪の取り扱いを容易にするために使用される道具を意味する。用具の例には、櫛、有向送達のための手段(例えば、塗布器又はチューブ)、毛髪を覆うもの(例えば、ビニール袋、シャワーキャップ等)、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される際、「エネルギー送達装置」とは、毛髪及び頭皮を含むケラチン組織にエネルギーを送達するために使用される、いずれかの装置を意味する。「エネルギーの送達」とは、ケラチン組織の表面が、毛幹及び/又は毛包を含む組織の所望の層に浸透し得る、エネルギー送達装置から放出されるエネルギーに曝露されることを意味する。エネルギーには、光、熱、音(超音波を含む)、電気エネルギー、磁気エネルギー、電磁気エネルギー(ラジオ波及びマイクロ波を含む)の形のエネルギー、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0038】
第1の態様において、本発明は毛幹の内部領域を化学修飾する方法に関し、
(i)毛髪に酸化性調合物を塗布する工程と、
(ii)毛髪から湿気を除去する工程と、
(iii)前記毛髪にモノマー組成物を塗布する工程であって、前記モノマー組成物が分子量500g/mol以下のエチレン性モノマー及び美容的に許容可能な担体を含む、工程と、を含む。
【0039】
発明者らは、互いに互換性のある特徴の、特定の組み合わせを慎重に選択し、それらの間の相互作用の結果として毛幹の内部領域を化学修飾することによって性能を向上させる方法を案出し、上述のニーズを叶えた。本発明の特に重要な利益としては、毛髪の種類が異なる消費者間での本発明の効果のばらつきが低減されること、及び本発明の適用プロセスが単純化されることが挙げられる。
【0040】
理論に束縛されるものではないが、消費者の毛髪には様々なタイプがあり、例えば毛髪のダメージがひどい消費者もいれば、毛髪にダメージのない消費者もいる場合があると考えられる。更に、それぞれの毛髪タイプは、エチレン性不飽和モノマーのラジカル重合を開始する必要のある反応開始剤の腐食を触媒する、レベルの異なる酸化還元活性種を包含すると考えられる。そのような酸化還元活性種は、毛髪中に存在する(例えば、水道水由来の)残留量の金属(例えばFe、Co)である場合もあれば、毛幹の成分となる蛋白質であるシステイン、すなわち、ケラチン内に見つかるアミノ酸である場合もあり得る。それらの酸化還元活性がヒトの毛髪において存在するレベルは、それぞれの消費者間で毛髪のダメージ度に応じて異なる場合がある。ラジカル重合で製造されるポリマーの分子量が初期ラジカル濃度の二乗根に反比例することは、ポリマーの科学において十分に確立されている。したがって、消費者の毛髪中の酸化還元活性種の濃度の変動は、毛髪内に生成されるポリマーの分子量の変動につながり、このような分子量の変動はその洗浄の速さと相関すると考えられる。酸化還元活性種の濃度が高くなると、より低分子のポリマーが毛髪内に生成されるようになり、結果として洗浄の速さが低下し、逆もまた同じで、酸化還元活性種の濃度が低くなると、より高分子のポリマーが毛髪内に生成されるようになり、結果として洗浄の速さが上昇する。プロのヘアスタイリストであれば毛髪の肉眼的な損傷レベルを判別できる場合があるが、これは或る程度このダメージ量と相関する場合があり、各消費者のヘアタイプに合わせてあつらえた方法及び組成物を提供することは非効率でありかつ費用対効果も芳しくない。結果的に、本発明において具体化されているように、モノマー組成物の塗布前に毛髪に酸化性調合物を塗布すると性能が向上するという驚くべき発見が、発明者らによって為された。この酸化工程によって、ヘアタイプ間で酸化還元活性種の濃度が正規化されると考えられる。同様に、還元工程によってもそれぞれのヘアタイプのばらつきを減らすことができるが、ただし、同時に、反応開始剤濃度を有意に下げることによって初期ラジカル濃度を低く維持する必要も生じてくる。ただし、反応開始剤濃度は、現実的な塗布条件下では取り扱い不可能なレベルにまで下げる必要がある。
【0041】
モノマー組成物の塗布前に還元工程を行う必要性が慣例的によく教示されてきたが、ジスルフィド架橋を減らし角皮を開く目的では必ずしもこの還元工程が必要ないという驚くべき発見も、発明者らによって為された。モノマー組成物の塗布前に還元工程を使用せずに本発明に従いヘアをトリートメントすると、大きな利益が得られる。
【0042】
また、モノマー組成物はすぐに使える形態で消費者及び/又はスタイリストに提供できることも発見された。換言すれば、モノマー組成物を毛髪に塗布する際、事前に少なくとも1種の他の調合物/組成物(例えば、反応開始剤、塩、酸化剤、酸、塩基、又は触媒を含む組成物)と混合する必要がないということである。このため、毛髪に本発明を適用する方法は、塗布時間の短縮、運搬労力、二酸化炭素排出量、及びコスト効率の点で有意な改善となる。
【0043】
本発明は、毛幹の内部領域を化学修飾するための組成物及び方法に関し、より好ましくは毛幹の内部領域にポリマーを形成するための組成物及び方法に関する。理論に束縛されるものではないが、毛幹外部表面上のポリマーを洗い落とし易くなる一方で、毛幹内部(例えば、角皮の下側)のポリマーに対する保護が改善され、それゆえに、実質的に耐久性が高まるであろうと考えられる。本明細書に詳述されている図1及び図2に例証されるように、ポリマーは本発明に利用されている活性物質を介して形成される。
【0044】
第1の態様、他の態様、及び他の関連する構成要素による方法の特徴は、以降本明細書中で詳細に記述されている。
【0045】
本発明の方法は、本明細書に記述されている(i)と(ii)と(iii)とを含み、それらは(i)、次いで(ii)、その後に(iii)という特定の順序を示す。
【0046】
本発明の方法は、酸化性調合物を毛髪に塗布する工程を含む。酸化性調合物は酸化剤を含む。酸化剤は、過酸化物、好ましくは過酸化水素;過硫酸塩、好ましくはカリウム過硫酸塩又はナトリウム過硫酸塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択され得る。本明細書に記載されている別の1つの以上の組成物又は調合物は、少なくとも1種の酸化剤を含み得る。或る実施形態においては、モノマー組成物は酸化剤を含有しない。或る実施形態においては、酸化性調合物は毛髪着色剤を実質的に含まないか、酸化染料及び/又は直接染料を実質的に含まない。
【0047】
酸化剤は、組成物/調合物全体の約0.01重量%〜約15重量%の量で存在し得る。過硫酸塩酸化剤を使用する場合、粉末形態であってよく、毛髪に塗布する前に液体として即時に混合できる。組成物/調合物中の過硫酸塩の最終的な量は、組成物/調合物全体の約0.5重量%〜約2重量%、より好ましくは0.8重量%〜約1.2重量%であり得る。酸化剤が過酸化物である場合、この過酸化物は組成物又は調合物全体の約0.5重量%〜約5重量%、好ましくは約1重量%〜約4重量%、より好ましくは約1.3重量%〜約3重量%、最も好ましくは約1.5重量%〜約3重量%の量で存在してもよい。
【0048】
或る実施形態においては、毛髪に酸化性調合物を塗布してから毛髪から湿気を除去するまでの間に酸化性調合物を毛髪上に時間yにわたって残留させ、時間yは約1分〜約120分、好ましくは約2分〜約45分、より好ましくは約3分〜約20分、最も好ましくは約4分〜約10分である。
【0049】
酸化性調合物が過酸化物を含有する場合、この酸化性調合物は、pHを安定させるための緩衝液系を含み得る。好適な緩衝液は、キレート化剤としても作用し得る。過酸化物は遷移金属による開裂に感応するため、水道水中に微量に存在し得る遷移金属(例えば、パイプ由来の銅又は鉄)のキレート化は、重要である。緩衝液系の不在下では、遷移金属が過酸化物を開裂して不活性化し得る。
【0050】
典型的な緩衝液系は、強酸及びその弱共役塩基、又は弱塩基及びその共役酸を含む。好適な緩衝液系の例は、リン酸及びリン酸二ナトリウムである。緩衝液系のもう1つの例は、クエン酸及び水酸化ナトリウムである。或る実施形態において、モノマー組成物は緩衝液系を含む。
【0051】
本発明の方法は、毛髪から湿気を除去する工程を含む。或る実施形態において、毛髪から湿気を除去する工程は、毛髪に吸収材料を塗布して湿気を毛髪から吸収材料に移動させる工程を含み、この湿気は美容的に許容可能な担体を含有する。吸収材料は、タオル、吸収紙、及びこれらの組み合わせからなる群から選択できる。或る実施形態において、毛髪から湿気を除去する工程は、水分を毛髪から蒸発させる工程を含み、この水分は美容的に許容可能な担体を含有する。或る実施形態において、毛髪から湿気を除去する工程は、酸化性調合物が毛髪からしたたり落ちないようにタオルドライする工程を含む。或る実施形態において、毛髪から湿気を除去する工程は、毛髪から表面の酸化性調合物を除去する工程を含む。或る実施形態において、毛髪から湿気を除去する工程は、毛髪から酸化性調合物を洗い落とす工程を含まない。毛髪から湿気を除去する工程は、時間zにわたって持続し得、時間zは約1分〜約120分、好ましくは約2分〜約45分、より好ましくは約3分〜約20分、最も好ましくは約4分〜約10分である。
【0052】
本発明の方法は、毛髪にモノマー組成物を塗布する工程を含む。このモノマー組成物は、分子重量が約500g/mol以下のエチレン性モノマーを含む。或る実施形態において、前記エチレン性モノマーが、メサコン酸、2−ペンテン酸、チグリン酸、チグリン酸エステル、フラン−3−アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、マレアミド酸、3−アミノクロトン酸、クロトン酸エステル、イタコン酸無水物、トリメチルシリルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、N−ビニルアセトアミド、2−アセトアミドアクリル酸、ビニルスルホン酸、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、ビニルプロピオネート、ビニルアニソール、ビニルクロトネート、メチル3−ヒドロキシ−2−メチレンブチレート、メタクリロイル−L−リシン、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、2−アクリルアミドジグリコール酸、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、N−イソプロピルメタクリルアミド、2−アミノエチルメタクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム塩、[2−(アクリロイルオキシ)エチル]−トリメチルアンモニウム塩、アルキルアセトアミドアクリレート、スルホアルキル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、並びにこれらの塩、異性体、誘導体及び混合物からなる群から選択される。モノマー組成物は、前述の族から選択される少なくとも1種のエチレン性モノマーを唯一のエチレン性モノマーとして含む。或る実施形態において、エチレン性モノマーは、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、及び塩類、誘導体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。或る実施形態において、存在する唯一のエチレン性モノマーは、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、及び塩類、誘導体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。或る実施形態において、唯一のエチレン性モノマーは、3−スルホプロピルアクリレートである。或る実施形態において、エチレン性モノマーは、3−スルホプロピルアクリレートカリウム塩として組成物に添加される3−スルホプロピルアクリレートである。
【0053】
別の実施形態において、エチレン性モノマーは、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、アクリル酸カルシウム、モノエタノールアミンアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2,5−ブチルアミノエチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カリウム、メタクリル酸カルシウム、モノエタノールアミンメタクリレート、2−N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−エポキシブチルメタクリレート、2−t−ブチルアミノエチルメタクリレート、2−エチル(2−ジエチルアミノ)メタクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、イタコン酸(及びその塩類)、ビニルピリジン、レソルシノール、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0054】
モノマーは重合前に毛幹中に浸透する必要があるため、エチレン性モノマーの分子量は重要である。大きいモノマー及び/又は巨大モノマーは、毛幹中に浸透しにくい。或る実施形態において、エチレン性モノマーは、分子量が約50g/mol〜約500g/mol、好ましくは約75g/mol〜約400g/mol、より好ましくは約100g/mol〜約400g/mol、更により好ましくは約150g/mol〜約300g/molである。或る実施形態において、エチレン性モノマーは分子量が約50g/mol以上、好ましくは約75g/mol以上、より好ましくは約100g/mol以上、及び更により好ましくは150g/mol以上であり、かつ約500g/mol以下、より好ましくは約400g/mol以下、更により好ましくは約300g/mol以下である。
【0055】
エチレン性モノマーは、モノマー組成物全体の約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約1重量%〜約15重量%、より好ましくは約5重量%〜約14重量%、更により好ましくは約7重量%〜約13重量%、最も好ましくは約11重量%〜約12.5重量%の量で存在してもよい。
【0056】
或る実施形態においては、モノマー組成物中に2種以上の別々のエチレン性モノマーが存在する。結果として得られるポリマーは、コポリマーであり得る。
【0057】
或る実施形態において、モノマー組成物は、酸化剤及び/又は反応開始剤を実質的に含まない。別の実施形態において、モノマー組成物は、過酸化物、好ましくは過酸化水素;過硫酸塩、好ましくは過硫酸カリウム又は過硫酸ナトリウム;並びにこれらの混合物からなる群から選択される酸化剤を実質的に含まない。別の実施形態において、モノマー組成物はα−メチレンラクトン化合物を実質的に含まない。
【0058】
別の実施形態において、モノマー組成物はすぐに使える形態であり、「すぐに使える形態」とは、毛髪に塗布する前に予混合を必要としないことを意味する。別の実施形態において、モノマー組成物は還元剤、遷移金属のうちの少なくとも1つを実質的に含まない。
【0059】
第1の態様によれば、本発明の方法は、時間xを1分〜120分としてモノマー組成物を毛髪上に期間xにわたって残留させる工程と、毛髪をすすぎ洗いする工程と、毛髪を洗浄する工程のうちのいずれか1つ以上を更に含み得る。時間xは約5分〜約100分、より好ましくは約10分〜約90分、最も好ましくは約20分〜約60分であり得る。
【0060】
本明細書に記載の組成物若しくは調合物又はその複数は、美容的に許容可能な担体を含む。組成物若しくは調合物(例えば、モノマー組成物又は酸化性調合物)は、美容的に許容可能な担体を、組成物又は調合物全体の約60重量%〜約99.9重量%、あるいは約70重量%〜約95重量%、あるいは約80重量%〜約90重量%含有し得る。使用に適する美容的に許容可能な担体としては、例えば、トニック及びゲルの調合に使用されるものが挙げられる。美容的に許容可能な担体は、水;揮発性シリコーン、アミノ系若しくは非アミノ系シリコーンガムなどのシリコーン;C2〜C10のアルカン、アセトン、メチルエチルケトン、揮発性のC1〜C12の有機アルコール;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルなどのC1〜C20の酸とC1〜C8のアルコールとのエステル;ジメトキシエタン、ジエトキシエタン;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールなどのC10〜C30の脂肪アルコール;ラウリン酸及びステアリン酸などのC10〜C30の脂肪酸;ラウリルジエタノールアミドなどのC10〜C30の脂肪アミド;C10〜C30の脂肪アルキル安息香酸エステルなどのC10〜C30の脂肪アルキルエステル、ヒドロキシプロピルセルロース、及びこれらの混合物などの有機化合物を含んでいてもよい。或る実施形態において、担体は水、脂肪族アルコール類、揮発性有機アルコール類、及びこれらの混合物を含む。最も好ましい実施形態では、担体は水である。
【0061】
モノマー組成物は、毛幹に浸透するのに好適な分子量を有する架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤の目的は、モノマーを毛髪に、モノマーを他のモノマーに、ポリマーを他のポリマーに共有結合的に結合することにある。
【0062】
架橋剤の分子量は、約500g/mol以下、好ましくは約100g/mol〜約500g/mol、より好ましくは約100g/mol〜約400g/mol、更により好ましくは約150g/mol〜約400g/molであり得る。
【0063】
架橋剤は、1,4−ビスアクリロイルピペラジン、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリ−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]フォスフェート、N,N’−ビス(アクリロイル)シスタミン、N,N−ジアリルアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0064】
或る実施形態において、エチレン性モノマーの重量%と架橋剤の重量%の比率(すなわち、エチレン性モノマー:架橋剤)は、約50:1〜約10:1、あるいは約40:1〜約10:1、あるいは約20:1〜約10:1である。
【0065】
本発明は、毛幹の内部領域を化学修飾するための組成物に関する。或る実施形態において、化学修飾は、毛幹の内部領域にポリマーを形成する工程、毛幹の内部領域をポリマーで修飾する工程、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。或る実施形態において、発生する重合はフリーラジカル重合である。
【0066】
或る実施形態において、本明細書に記載されていてかつ本発明によって提供される性能上の恩恵の少なくとも1つは、約15回の洗浄を経た後でも依然として、少なくとも約40%の消費者に、好ましくは少なくとも約45%の消費者に、より好ましくは少なくとも約50%の消費者に、更により好ましくは少なくとも約55%の消費者に、最も好ましくは少なくとも約60%の消費者に、最適には少なくとも約65%の消費者に、より最適には少なくとも約70%の消費者に感知される。或る実施形態において、消費者は日常的に毛髪をスタイリングする細い及び/又は軟弱な毛髪、日常的に毛髪をスタイリングする濃く及び/又は乱れがちな髪の消費者からなる群から選択される。
【0067】
本明細書に記載の組成物若しくは調合物又はその複数は、毛幹の内部領域に浸透しないモノマーを更に含み得、本明細書中では以降、このモノマーを非浸透モノマーと呼ぶ。非浸透の理由としては、疎水性、難溶性であること、分子量が過大(すなわち、約500グラム/モル超)であること、更には、毛幹に到達する前に重合する可能性のある高反応性のモノマーでもあることが挙げられる。よって、そのような非浸透モノマーが毛幹の内部領域を化学修飾する能力のないことは暗に示される。ただし、非浸透モノマーは毛幹の外部表面を化学修飾する能力を有する場合があり、この修飾は複数回の洗浄/シャンプーに耐える能力を有し得る。この外部修飾によって、本発明の利益が増強される可能性がある。非浸透モノマーは、シアノアクリレートの化学的性質を有するもの及び反応性シリコーン類を包含する。そのような非浸透モノマーとしては、米国特許第7357921B2号、米国特許第7780742号、米国特許第7740664号に開示されているものが挙げられる。
【0068】
本明細書に記載の組成物若しくは調合物又はその複数は、増粘剤及び増粘系からなる群から選択される増粘手段を更に含んでいてもよい。組成物がジェル、クリーム、ローション剤、乳濁液などの形態である場合、粘度が重要となる。これは、粘度によって、毛髪から組成物が滑り落ちるのを防げるためである。ただし、粘度が下がると、活性物質が毛幹の内部領域に浸透/拡散し易くなる。組成物がジェルの形態であるときに25℃かつ1rpmにてBrookfield Viscosimeter RVDV III Ultra CP 52で測定される粘性は、好ましくは約500mPa・s〜約7000mPa・s、より好ましくは約ましくは約1000mPa・s〜約5000mPa・s、更により好ましくは約1500mPa・s〜約4500mPa・s、最も好ましくは約1900mPa・s〜約4000mPa・sである。
【0069】
増粘剤は非イオン性濃化剤、カチオン性濃化剤、アニオン性濃化剤、両性濃化剤、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る、好ましくは非イオン性濃化剤、アニオン性濃化剤、及びこれらの混合物である。増粘剤は、組成物全体の約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.2重量%〜約5.0重量%の量で組成物中に存在していてもよい。
【0070】
重合エチレン性モノマーに備わるアニオン性の化学的性質上、典型的に、モノマー組成物としては、非イオン性濃化剤、若しくはアニオン性濃化剤(又はこれらの混合物)が好ましい。非イオン性濃化剤、又はアニオン性濃化剤は、生成ポリマーと直接に相互作用することが少なく、このため、不溶性の錯体又は析出物が形成されることも少ない。また、増粘手段は、必要なpHにて安定していることが好ましく、エチレン性モノマーの活性レベルに実質的に影響を及ぼさない。増粘剤は、架橋ポリマーであってもよいし、又は非架橋ポリマーであってもよい。
【0071】
或る実施形態において、増粘剤は疎水性修飾のポリアクリレートポリマーである。そのような疎水性修飾のポリアクリレートポリマーは、少なくとも1種の塩を添加して組成物/調合物を生成した場合、特に好適である。モノマー組成物は、モノマー組成物全体の約0.5重量%〜約1.5重量%の疎水性修飾のポリアクリレートポリマーを含んでいてもよい。好適な疎水性修飾のポリアクリレートポリマーとしては、Ultrez(登録商標)20/21(供給元:Lubrizol)及びPermulen(登録商標)TR1(供給元:Lubrizol)などのアクリレート/C10〜C30アルキルアクリレートコポリマー、Aculyn(登録商標)28(供給元:Rohm & Haas)などのアクリレート/ベヘネス−25メタクリレートコポリマー、Structure(登録商標)3001又は2001(供給元:Akzo Nobel)などのアクリレート/セテス−20イタコネートコポリマーが挙げられる。
【0072】
或る実施形態において、増粘剤は非架橋会合増粘ポリマーである。モノマー組成物は、モノマー組成物全体の約0.5重量%〜約3重量%の非架橋会合増粘ポリマーを含んでいてもよい。好適な会合増粘剤としては、ポリウレタン−30、例えばLuvigelSTAR(登録商標)(供給元:BASF)などのポリウレタン系ポリマーが挙げられる。また、EO−PO−ブロックコポリマー、例えばPluronics(登録商標)(供給元:BASF)も有用であり得る。
【0073】
或る実施形態において、増粘剤は少なくとも1種の多糖類、好ましくは少なくとも1種のヘテロ多糖を含有する。モノマー組成物中に存在する全多糖類は、モノマー組成物全体の約0.2重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約4重量%であり得る。好適な多糖類及びヘテロ多糖類としては、デンプン及びその誘導体、例えば、リン酸を有するモノエステル類若しくはジエステル類、セルロース系及びその誘導体、キサンタンガム、カラゲナンが挙げられる。好適なヘテロ多糖類としては、Keltrol(登録商標)T(供給元:Kelco)、及びNatrosol(登録商標)250 HHR(供給元:Herkules)などのキサンタンガムが挙げられる。或る実施形態において、ヘテロ多糖類は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、カラゲナン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。キサンタンガム及びこれらの混合物は、モノマー組成物全体の約0.2重量%〜約1.5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約0.9重量%の量で存在する。デンプン及びこれらの混合物は、モノマー組成物全体の約3重量%〜約4重量%の量で存在する。好適なデンプンは、Structure(登録商標)XL(供給元:National Starch)などのヒドロキシプロピルデンプンである。或る実施形態において、モノマー組成物は2つの異なるヘテロ多糖増粘剤を含む。
【0074】
或る実施形態においては、増粘系が使用される。増粘系は、上記定義の増粘剤を用いてもよい。代替的に又は追加的に、増粘系は生成物に内部構造を提供する非ポリマー系を含む。非ポリマー系は、好ましくは、硫酸ラウリルエーテル類と塩化ナトリウムとを含む界面活性剤系、液体結晶系(例えば脂肪族アルコールとカチオン界面活性剤とを含んで製造されるカチオン性コンディショナー)、油中水(w/o)型乳濁液、水中油(o/w)型乳濁液、無機増粘系(例えばベントナイト、モンモリロナイト)からなる群から選択される。別の実施形態において、増粘系はポリマー系の増粘剤又はポリマー系の濃化剤を含まない。
【0075】
或る実施形態において、本明細書に記載の組成物若しくは調合物又はその複数はカチオンで含んでいてもよく、このカチオンは電荷密度が約0.05電荷/ピコメートル以上、好ましくは約0.052電荷/ピコメートル以上の無機カチオンからなる群から選択される。或る実施形態において、無機カチオンは金属である。或る実施形態において、カチオンは電荷密度が約0.04電荷/ピコメートル以下、好ましくは約0.05電荷/ピコメートル未満の無機カチオンから選択できる。或る実施形態において、このカチオンは、電荷密度が約0.050電荷/ピコメートル〜約0.090電荷/ピコメートル、好ましくは約0.052電荷/ピコメートル〜約0.080電荷/ピコメートル、より好ましくは最大約0.070電荷/ピコメートル、更により好ましくは最大約0.060電荷/ピコメートル、最も好ましくは最大約0.053電荷/ピコメートルの無機カチオンからなる群から選択される。
【0076】
本発明のモノマー組成物及び/又は酸化性調合物中に電荷密度が約0.05電荷/ピコメートル以上の無機カチオンを配合すると、結果として高い性能が得られる。理論に束縛されるものではないが、無機カチオンは正の電荷をもつため、エチレン性モノマーが非重合であるときに、又はポリマーの単位であるときは重合後に、複数のアニオン性エチレン性モノマーに結合できると考えられる。例えば、無機カチオンは、同時にアニオン性電荷を運ぶ2つ以上の異なるポリマー鎖に結合できる。そのような結合効果の利益としては、エチレン性モノマー及びポリマーの隔離が増して相互に近接し、結果としてポリマー鎖及び/又は隣接するポリマー鎖セグメントのイオン架橋結合が長くなることが挙げられる。電荷密度が高い無機カチオンは、負に帯電した結合部位における電荷密度が低い他のいずれのカチオンにも結合して駆逐できる。
【0077】
イオンの電荷密度を、電荷をイオン半径で除算して計算すると、1ピコメートルあたりの電荷密度が求められる。例えば、Sr2+の場合、イオン半径は127pmで、電荷は2である。結果的に、1ピコメートルあたりの電荷は0.0157電荷/pmである。イオン半径表の目録(Tables of ionic radii tables)は、一般の無機化学教科書、例えばAtkins P.W.,Physical Chemistry,6th Edition,2001に記載されている。常金属のイオン半径は表Iに記載されている。
【0078】
【表1-1】
【0079】
【表1-2】
【0080】
理論に束縛されるものではないが、カチオンが電子を失う又は獲得する能力が低下すると他のヘアトリートメントの化学作用による好ましくない酸化還元反応(永久酸化染毛、半永久酸化染毛、毛染め、毛髪の脱色、又は毛髪の永久ウェーブなど)が起こりにくくなると考えられる。無機カチオンが、酸化状態「0」以外の2つの酸化状態においてのみ存在できる金属、より好ましくは酸化状態「0」以外の1つの酸化状態においてのみ存在できる金属から選択される場合、好ましくない酸化還元反応が発生する可能性は低下する。例えば、銅はCu0、Cu1+及びCu2+の全部で3つの異なる酸化状態においてのみ存在できる。例えば、マンガンはMn0、Mn2+、Mn3+及びMn4+の全部で4つの異なる酸化状態においてのみ存在できる。例えば、アルミニウムはAl0及びAl3+の全部で2つの異なる酸化状態においてのみ存在できる。或る実施形態において、無機カチオンは少なくとも2+、より好ましくは少なくとも3+の電荷を有する。或る実施形態において、無機カチオンは遷移金属ではない。或る実施形態において、無機カチオンは過酸化水素を開裂する能力を有する金属ではない。好ましい実施態様においては、無機カチオンはAl3+である。
【0081】
カチオンとモノマーのモル比(すなわち、カチオン:モノマー)は、約1:10〜約2:1、好ましくは約1:5〜約3:2、より好ましくは約1:2〜約1:1、更により好ましくは約1:3〜約1:1であり得る。エチレン性モノマーを塩の形態でモノマー組成物中に添加する場合、カチオンのモル量は、エチレン性モノマーの対イオンのモル量を超過することが望ましい。
【0082】
カチオンは、モノマー組成物、酸化性調合物、フィニッシング調合物、及び/又はこれらの組み合わせで存在し得る。或る実施形態において、モノマー組成物及び/又は酸化性調合物は更にカチオンを含み、このカチオンは電荷密度が約0.04電荷/ピコメートル以下、好ましくは約0.05電荷/ピコメートル未満の無機カチオンからは選択されない。或る実施形態において、モノマー組成物及び/又は酸化性調合物は更にカチオン及びアニオンを含み、このカチオンは電荷密度が0.05電荷/ピコメートル以上の無機カチオンからなる群から選択される。或る実施形態において、酸化性調合物はカチオンを含み、このカチオンは、電荷密度が約0.05電荷/ピコメートル以上の無機カチオンからなる群から選択され、かつ酸化性調合物全体の約0.001重量%〜約2重量%、好ましくは約0.01重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.04重量%〜約0.2重量%の量で存在する。
【0083】
或る実施形態において、組成物若しくは調合物又はその複数はアニオンを含んでいてもよい。アニオンは、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、塩化物、クエン酸塩、乳酸塩、ギ酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。好適なアニオンは、硫酸塩、スルホン酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、アニオンは硫酸塩である。
【0084】
或る実施形態において、カチオン対アニオンのモル比(カチオン:アニオン)は約1:5〜約5:1、好ましくは約1:4〜約3:1、最も好ましくは約2:3〜約3:2である。無機金属カチオンはAl3+、アニオンは硫酸塩であり、カチオン対アニオンのモル比は約2:3である。アニオンは、モノマー組成物、酸化性調合物、フィニッシング調合物、又はこれらの組み合わせで存在し得る。
【0085】
或る実施形態において、本明細書に記載の組成物若しくは調合物又はその複数は、塩を添加して生成してもよい。或る実施形態において、本明細書に記載の組成物若しくは調合物又はその複数は塩を含む。塩は電荷密度が約0.05電荷/ピコメートル以上のアニオン及びカチオンを含んでいてもよい。或る実施形態において、塩はエチレン性モノマーを含んでいてもよい。
【0086】
本発明の組成物及び調合物のpHを毛髪に直接塗布する場合、ヒト毛髪に塗布するのに好適なpHでなければならず、つまり、組成物及び調合物が美容的に許容可能なものである必要がある。更にまた、本組成物又は調合物の全ての成分を確実に溶解かつ安定させるには、本発明のpHが好適である必要がある。モノマー組成物はpHが約2.0〜約9.0であってもよい。或る実施形態において、pHは約2.5〜約7.5、好ましくは約4.0〜約7.0、より好ましくは約4.0〜約6.9である。或る実施形態において、pHは約4.5〜約6.7、好ましくは約5.0〜約6.6、より好ましくは約5.2〜約6.5、更により好ましくは約5.3〜約6.5、最も好ましくは約5.5〜約6.5、任意選択的に約5.5〜約6.0である。或る実施形態において、本組成物はpHが約7.0以上である。
【0087】
本明細書に記載の組成物若しくは調合物又はその複数は、反応開始剤を含んでいてもよい。好適な反応開始剤としては、ペルオキシ硫酸塩、過酸化物、過酸、過ホウ酸塩、ペルオキシエステル類、ペルオキシ二硫酸塩ナトリウム、ベンゾイルペルオキシド、ペルオキシ酢酸、アゾ反応開始剤、及びこれらの混合物が挙げられる。酸化状態「0」以外に全部で3つの酸化状態において存在する遷移金属触媒又は金属反応開始剤は、本発明に適していない。好ましくは、モノマー組成物は、酸化状態「0」以外にも全部で3つの酸化状態で存在できる遷移金属触媒又は金属反応開始剤の作用を実質的に受けず、より好ましくは、モノマー組成物は、酸化状態「0」以外にも全部で2つの酸化状態で存在できる遷移金属触媒又は金属反応開始剤の作用を実質的に受けない。或る実施形態においては、頭皮の近位に前記装置を当てることによって、エネルギー送達装置を介して反応開始剤が毛髪に供給される。好適な反応開始剤は光エネルギーを含んでいてもよい。
【0088】
本発明のモノマー組成物でのトリートメント後は、フィニッシング組成物を毛髪に塗布できる。フィニッシング組成物はヘアコンディショニング剤を含んでいてもよい。ヘアコンディショニング剤は、典型的には、毛髪を柔軟にする又は傷んだ毛髪を修復するカチオン性ポリマーである。コンディショニングポリマーは、一般に、毛髪上に滑らかで、粘着性ではない膜を提供する。典型的には、コンディショニングポリマーは、カチオン性であるが、非イオン性、双極性及び両性であってもよい。ヘアコンディショニング剤はまた、油性及び/又はaシリコーン化合物であってもよい。特許出願国際公開第2009/107062 A2号パンフレットには、本明細書に記載されているフィニッシング調合物として好適であり得るコンディショニング剤及びカチオン性ポリマーが開示されている。同様に本明細書の組成物に用いるのに適している可能性があるのは、Procter & Gamble Companyにより米国特許第5,674,478号及び第5,750,122号に記載されているコンディショニング剤である。また、本明細書に用いるのに適している可能性があるのは、米国特許第4,529,586号(Clairol)、同第4,507,280号(Clairol)、同第4,663,158号(Clairol)、同第4,197,865号(L’Oreal)、同第4,217,914号(L’Oreal)、同第4,381,919号(L’Oreal)、及び同第4,422,853号(L’Oreal)に記載されているコンディショニング剤である。
【0089】
或る実施形態において、フィニッシング調合物は酸化剤を含む。酸化剤は、フィニッシング調合物全体の約0.01重量%〜約15重量%の量で存在していてもよい。
【0090】
本明細書に記載の組成物若しくは調合物又はその複数は、ジスルフィド結合を還元し毛幹への浸透を改善するうえで有用であり得る還元剤を含んでいてもよい。適した還元剤の例には、チオグリコール酸ナトリウム、無水チオ硫酸ナトリウム、粉末メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ尿素、亜硫酸アンモニウム、チオグリコール酸、チオ乳酸、チオ乳酸塩アンモニウム、モノチオグリコール酸グリセリル、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリセロール、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、ジチオグリコール酸ジアンモニウム、チオグリコール酸ストロンチウム、チオグリコール酸カルシウム、亜鉛ホルムスルホキシレート、チオグリコール酸イソオクチル、D/L−システイン、チオグリコール酸モノエタノールアミン、ホスフィン類、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
還元性調合物は還元剤を含み、還元性調合物は他の組成物又は調合物とは別々にパッケージされ得る。還元性調合物は、還元性調合物全体の約1重量%〜約12重量%、あるいは約4重量%〜約10重量%、あるいは約8重量%〜約10重量%の還元剤を含んでいてもよい。
【0092】
本明細書に記載の組成物若しくは調合物又はその複数が、1種以上の公知の任意成分を更に含んでいてもよく、一方、任意選分が本明細書に記述される必須成分と物理的かつ化学的に適合するか又はさもなければ製品安定性、審美感若しくは性能を過度に損なわないという条件では、ヘアケア製品又はパーソナルケア製品での使用に効果的である。このような任意成分の非限定的な例については、いずれもその全容を本明細書に援用するInternational Cosmetic Ingredient Dictionary,Ninth Edition,2002、及びCTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Tenth Edition,2004に開示されている。そのような任意選択成分の非限定的な実施例の幾つかは、以下に開示されている通りであり、可塑剤、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、又は非イオン性物質であり得る)、中和剤、推進体、ヘアコンディショニング剤(例えば、シリコーン流体、脂肪族エステル類、脂肪族アルコール類、長鎖炭化水素、カチオン性界面活性剤、その他)、緩和剤、潤滑油、及び浸透剤(種々のラノリン化合物、ビタミン、蛋白質、防腐剤、色素、染料、漂白剤、還元薬剤、及び他の着色剤など)、遮光剤、ゲル化剤、毛髪若しくは皮膚をトリートメントするための生理活性化合物(例えば、フケ防止活性物質、毛髪成長活性物質)、粘土を含む非ポリマー系の濃化剤、並びに香水を包含する。
【0093】
油性化合物は皮膚及び/又は頭皮にエチレン性モノマーが浸透するのを促進し得るが、それは好ましくない。或る実施形態において、モノマー組成物は油性化合物を実質的に含まない。別の実施形態において、モノマー組成物及び酸化性調合物は油性化合物を実質的に含まない。
【0094】
本発明のモノマー組成物は、種々の製品形態をとることができ、ジェル、乳濁液、クリーム、スプレー、ローション又はムースからなる群から選択される形態であり得る。好ましい形態はジェル、クリーム若しくはローションであり、より好ましくはジェルであり、最も好ましくはモノマー組成物は、乳濁液の外観を有するジェルの形態である。酸化性調合物は、ジェル、乳濁液、クリーム、スプレー、ローション、ムースの形態であり得る。酸化性調合物にとって最も好ましい形態は、ローションである。
【0095】
第1の態様によれば、毛髪にモノマー組成物を塗布する前に、毛髪に酸化性調合物を塗布する工程を行う。
【0096】
或る実施形態において、本方法はモノマー組成物をヘアスタイリスト及び/又は消費者に提供する工程を含み、ヘアスタイリスト及び/又は消費者はモノマー組成物を毛髪に塗布する前にモノマー組成物を第2の調合物と予混合する必要がない。第2の調合物は、還元性調合物、pH調整調合物、塩調合物、反応開始剤調合物、酸化性調合物、触媒調合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択でき、好ましくは、塩調合物、酸化性調合物、反応開始剤調合物、及びこれらの混合物である。
【0097】
或る実施形態においては、時間xの間、毛髪を熱に曝す。或る実施形態においては、毛髪を少なくとも70%の相対湿度に露出させ、露出はモノマー組成物の塗布後1時間以内に行われ、露出を約10〜約90分持続させる。前記相対湿度を塗布するための手段としては、例えば、Hairspa ION(Wella製,Darmstadt,Germany)、Electronic Master Ionic Action(Muster製)、Blitz Super Electronic Ozono(Ceriotti製)、Beautivap Digital Ozon and Ozono Energy(Artem製)、Mega Ozono(MediaLine製)、Mod.370(bmp製)、Steam Machine(REM製)、Micro Mist(SD200NIW製)、及びBelmaster(BM−975)(Takara Belmont製)が挙げられる。好適な装置については、欧州特許出願公開第1871194号に述べられている。
【0098】
第1の態様に従う方法は、ヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物を毛髪に供給し塗布する工程を更に含んでいてもよい。これに加えるかあるいはこれに代えて、この工程は毛髪にスタイリング効果を与える用具を提供し、利用する工程を含んでもよい。ヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物は、ヘアケア及び/又はヘアスタイリング活性成分、及び本明細書において述べるような美容的に許容可能な担体を含んでいてもよい。前記ヘアケア及び/又はヘアスタイリング活性剤は、毛髪固定ポリマー類、コンディショニング剤(特にカチオン性ポリマー)、クレンジング剤(特に界面活性剤)、濃化剤、グロッシング剤、光沢付与剤、染料又は着色剤、光沢又は着色粒子、シリコーン、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。ヘアケア及び/又はヘアスタイリング組成物は、ワックス、ジェル、ヘアスプレー、ムース、コンディショニング組成物(特にリーブインコンディショニング組成物)、フィニッシングスプレー、グロッシング又は光沢付与製品、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。用具は、ブロードライヤー、フラットアイロン、櫛、ブラシ、カーラー、カーリングトング、電気カーリング装置、ホイル、ハサミ、クリップ、ヘアバンド、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0099】
別の実施形態において、本発明は毛幹の内部領域を化学修飾する方法に関し、
(i)酸化性調合物を毛髪に塗布する工程であって、この酸化性調合物が酸化性調合物全体の約1重量%〜約4重量%の過酸化水素を含む工程と、
(ii)毛髪から湿気を除去する工程と、
(iii)モノマー組成物を毛髪に塗布する工程であって、このモノマー組成物が、分子重量が約500g/mol以下のエチレン性モノマーと、美容的に許容可能な担体と、アニオンと、カチオンとを含み、このカチオンが電荷密度が約0.05電荷/ピコメートル以上の無機カチオンからなる群から選択される。
【0100】
別の実施形態において、本発明は毛幹の内部領域を化学修飾する方法に関し、
(i)毛髪に酸化性調合物を塗布する工程であって、この酸化性調合物が酸化性調合物全体の約1重量%〜約4重量%の過酸化水素と、アニオンと、カチオンとを含み、このカチオンが電荷密度が約0.05電荷/ピコメートル以上の無機カチオンからなる群から選択される工程と、
(ii)毛髪から湿気を除去する工程と、
(iii)毛髪にモノマー組成物を塗布する工程と、を含み、このモノマー組成物は、分子量が約500g/mol以下のエチレン性モノマーをモノマー組成物全体の約5重量%〜約14重量%と、美容的に許容可能な担体と、を含む。
【0101】
別の実施形態においては、化学修飾後に、前記毛髪が、スタイル保持性の改善、スタイル持続性の改善、ボリュームの外観の改善、耐湿性の改善、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの効果を呈する。
【0102】
別の実施形態において、化学修飾の後、毛髪は毛幹の密度及び/又は毛幹の弾性の増加を呈する。
【0103】
第2の態様において、本発明は、
(a)第1の態様に従う方法を含む塗布指示書と、
(b)モノマー組成物と、を含むキットに関する。
【0104】
或る実施形態において、キットは第1の態様に従う酸化性調合物を更に含み、この酸化性調合物はモノマー組成物とは別々にパッケージされている。別の実施形態は、
(a)第1の態様に従う方法を含む塗布指示書と、
(b)第1の態様に従うモノマー組成物を含む製品と、
(c)酸化性調合物全体の約0.01重量%〜約15重量%の酸化剤を含む酸化性調合物を含んで構成される製品と、
(d)モノマー組成物及び酸化性調合物とは異なる調合物を含有する製品であって、この調合物が、酸化性調合物、フィニッシング調合物、還元性調合物、ヘアスタイリング調合物、フィニッシング調合物、コンディショニング調合物、シャンプー調合物、染色調合物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるヘアトリートメント剤である製品と、を含むキットに関する。
【0105】
第2の態様の別の実施形態は第2の態様に従うキットに関し、このキットは
(e)用具と、
(f)装置と、のうちの1つ以上を更に含む。
【0106】
別の態様は第2の態様に従うキットの使用に関し、毛幹の密度及び/又は毛幹の弾性を増加させることを目的とする。
【0107】
別の態様はモノマー組成物の使用に関し、毛幹の密度及び/又は毛幹の弾性を増加させることを目的とし、このモノマー組成物は、分子量が約500g/mol以下のエチレン性モノマーと、美容的に許容可能な担体と、を含む。上のモノマー組成物の前記説明は本態様に準用し得る。
【0108】
別の態様によれば、本発明は、本明細書に記載の組成物又は調合物のうちの少なくとも1つを含む商品、又はその複数、並びに組成物及び/又は調合物に関連する情報伝送に、更に関連し得る。情報伝送は、本発明による少なくとも1つの組成物及び/又は調合物を収容する包装に直接又は間接的に付属される印刷材料であってもよい。あるいは、情報伝送は、ヘアスタイリング用具及び/又は組成物及び/又は調合物と関連する電子メッセージ又は同報メッセージであってもよい。情報伝送には、組成物及び/又は調合物を使用する前の人の外観と同じ人が組成物及び/又は調合物を使用した後の外観とを比較する画像を含めてもよい。
【0109】
更なる態様によれば、本発明は、本明細書に記載されている酸化性調合物及びモノマー組成物を具備するキットの市場取引方法を含み、この市場取引方法は、キットを消費者に入手可能にする工程と、組成物が、限定はされないが、ヘアボリュームの外見の向上、毛髪の水分耐性の向上、スタイリングの容易さの向上、及び/又はヘアスタイルの保持力の向上を含む1つ以上の利益を、毛髪に提供し得るという情報伝達を消費者に対して行う工程と、を含む。例には、スタイルの終日保持力、カールの付き易さ、コシ及び/又はハリの改善、直毛をカールする能力、及び/又はカールした毛髪を直毛にする能力が挙げられる。
【0110】
1H−NMR分析
水性媒体中でのエチレン性モノマーのフリーラジカル重合のキネティクスは、1H−NMRを使用して追跡できる。例えば、カリウム3−スルホプロピルアクリレートの重合は、下記の反応Xに示す通りである。
【0111】
【化1】
【0112】
変換元の判定は、残留(非重合)エチレンモノマーの信号を、反応の開始前に反応混合物に添加される基準物質の信号と比較することによって、及び/又はポリマー及びエチレン性モノマーから生じる信号と比較することによって、実施してもよい。トリエチレングリコール及びベンゼンスルホン酸ナトリウムは、不活性基準物質として使用できる。変換は、積算(integrals)を比較して導き出される。不活性基準物質が添加されたら、方程式Aに従って変換の計算ができる。
【0113】
【数1】
式中、imonoはエチレン性モノマーからの信号の積算であり、nH,monoはエチレン性モノマーからの信号中のH原子の数であり、Xmonoはモルの反応開始前エチレン性モノマーの量(モル数)であり、irefは基準からの信号の積算であり、nH,refは基準からの信号中のH原子の数であり、Xrefはモルの基準の量である。
【0114】
残留エチレン性モノマーの信号を、エチレン性モノマーの信号とポリマーの信号との組み合わせと比較することによって変換の計算を行う場合、方程式Bを利用できる。
【0115】
【数2】
式中、imonoはエチレン性モノマーからの信号の積算であり、nH,monoはエチレン性モノマーからの信号中のH原子の数であり、icombはエチレン性モノマー及びポリマーからの結合信号の積算であり、nH,combはエチレン性モノマー及びポリマーからの結合信号の中のH原子の数である。
【0116】
シリコーン共栓付きの丸いフラスコ中で、18mlの適切な溶媒(塩の添加あり若しくはなしの緩衝液、又は超高純度の脱塩水)に、エチレン性モノマー及び添加剤(該当する場合)を溶解するという実験的手順を使用してもよい。pH 5.8にて実験に利用できる緩衝液は、以下のように調製された。119.2mgのNaH2PO4及び141.9mgのNa2HPO4を110mlの超高純度水に溶解し、希釈されたリン酸を添加してpHを5.8の最終的な値に調整する。数mlの同じ溶媒中に、所望量の反応開始剤を溶解する(反応混合物の総重量が25.0gになるように、正確な溶媒量を個別に調整する)。コンタクト温度計を用い、油浴によって反応温度を調整する。反応開始剤溶液をシリンジで反応混合物に移すことによって、反応が開始される。反応開始剤を使用しない場合には、反応前に開始材料入りのフラスコを油浴させないでおくため、油浴に接触した時点が開始点と見なされる。特定の時点で、3.0mlのサンプルをシリンジで採る。反応を中止する場合は、これらのサンプルを直接、空気に曝し、0.100gのヒドロキノンを添加する。サンプルを別々に凍結乾燥し、1H−NMR分光法で分析して、変換の測定を行う。
【0117】
一例を挙げると、3−スルホプロピルアクリレートカリウム塩の構造は下記の式Iに示す通りであり、式中、H1は、NMRで分析できる水素原子の位置を示す。
【0118】
【化2】
【0119】
6.5〜6.4ppm(百万分の一)での信号は、残留エチレン性モノマーにおけるH1原子に一致する。3.8〜3.6ppmでの信号は、トリエチレングリコール中の12H原子に一致する。4.4〜4.2ppmでの信号は、結合信号に一致する。
【0120】
図1は、この技術を利用したエチレン性モノマー種からポリマー種への変換を示す。「C」で標識されるy軸はエチレン性モノマーのモルを基準とした変換率(パーセンテージ)を示し、「t」で標識されるx軸は時間(min)を示す。「Sr」で標識される実験では、モノマー組成物は、SrCl2を5.0重量%含む。「Al」で標識される実験では、モノマー組成物は、2.4重量%のAl2(SO43x 18(H2O)、すなわち、硫酸アルミニウム十八水和物を含む。酸素の存在下、20℃かつpH 5.8にて反応開始剤としてNa228を1.0重量%利用し、この反応開始剤と1:1のモル比のシステイン塩酸塩127mgを使用し、エチレン製モノマーとして3−スルホプロピルアクリレート2.00gを使用して、両方の実験を実行し、その際、毛髪の不在下にて基準物質としてC65SO3Naを利用した。
【0121】
図1から引き出せる結論としては、そのようなほぼ全てのエチレン性モノマーが変換されること、アルミニウムカチオン及びストロンチウムカチオンを含む組成物を比較したときに反応速度則において僅かな差異しか生じないように重合が起こることが挙げられる。
【0122】
GPC解析
エチレンモノマーを重合した結果として得られるポリマーの分子重量は、ルーチンGPCで水性(アニオン性)溶液にて求めることができる。GPC設備には、1チャンネルの脱ガスシステム[WGE−Dr.Bures]、アイソクラチックポンプ[P 1000(Spectra Physics)]、GPC液0.1mol/lの1.0ml/分のフラックス速度でのNaNO3オートサンプラAS 1000(Spectra Physics)、サンプリング100μl、PSS SUPREMAカラム(1)Guard(8×50mm)、(2)Suprema 3000 A(8×300mm;10μm)、(3)Suprema 1000 A(8×300mm;10μm)、(4)Suprema 100 A(8×300mm;10μm)、カラムオーブンK−7(TECHLAB GmbH,Germany)[T=30℃]、UV−Detector UV 2000(Spectra Physics)、RI−Detector Refractometer SEC−2010(WGE Dr.Bures,Germany)が含まれる。Pullulan−Standardsに準拠して分子量0.3〜710kDaの範囲で検定を実施した。PSS製ソフトウェアWinGPC Unityを使用して、データ解析を行った。
【0123】
GPCデータを図2に示す。文字「a」で表されるx軸はダルトン(Da)の分子重量である。文字「b」で表されるy軸は強度である。I=発明に従う(ダッシュマーカー)、C=比較、すなわち、発明に従わない(クロスマーカー)。結果として得られるポリマーの分子量は初期ラジカル濃度の二乗根と反比例する(つまり、その意味では基は反応開始剤で活性化されたエチレン性モノマーである)ことは、当該技術分野において公知である。したがって、GPCデータから信頼のおける結論を得るためには、エチレン性モノマー消費の反応速度則を理解することが重要である。よって、出願人は1H−NMRを利用してエチレン性モノマー変換の反応速度則を理解している。図2から引き出せる結論には、アルミニウムカチオンを含むモノマー組成物が、ストロンチウムカチオンを含むモノマー組成物と比較して高分子量のポリマーを生じることが含まれる。
【0124】
14C−実験:パートI
この調査の目的は、毛髪内部で起こる3−スルホプロピルアクリレート(3−SPA)の重合反応を調査することであった。本発明者らは、14C−放射標識バージョン(標識C−原子:★)の3−SPAを使用した。
【0125】
【化3】
【0126】
手順:正確に20束の毛髪繊維を二重に漂白する。束を正規の3−SPA又は14C−標識バージョンのいずれか一方でトリートメントする。トリートメントの種類は、本方法に準じ、つまり、(1)10分間のプレトリートメント用の調合物(2%のH22)、(2)「タオル」ドライ(ペーパーティッシュ)、(3)3−SPAの水溶液又はヘアトリートメント調合物を用いた30分間のトリートメント、(4)任意選択的に水ですすぐ。特定の毛髪束ごとの正確な手順は、以下のように行われる。
【0127】
【表2】
【0128】
ミクロオートラジオグラフィで14C−3−SPAの検出を行った。毛髪束を1.5cmの長さに切断し、暗室内で束の断面を写真乳剤ハロゲン化銀に4週間にわたって露出した。写真フィルムを現像し、これらの写真を、顕微鏡を使用して確認した。ベータ粒子を介して、ハロゲン化銀をメタリックシルバーに変換し、このメタリックシルバーは、黒色点として観測できる。結果を下表及び図3に示す。
【0129】
【表3】
【0130】
解釈及び考察:標識された3−SPAでトリートメントされた全ての毛髪束に、放射性物質が毛髪角皮だけでなく皮質の大部分にも浸透したことが明らかに示された。ほとんどの場合、広範囲に均一な(環状の)分散も見られる。銀粒子は高濃度であるが、それにも増して確証的であるのは、拡散通路の外側半分に集積することである。全ての写真は、皮質の外部部分における集積の偏好を示すが、束Dを除けば、内側皮質領域内に一種の境界線さえも見える。これは、銀粒子が表す浸透挙動は、人為産物でなく3−SPAモノマーの(例えば、切断処理(cutting process)による)ものであることが確かであることを強力に暗示している。図3の上の写真からは、すすぎ洗いが結果に影響しないことは然程明瞭に判らない。しかしながら、当技術の専門家の見方では、すすぎ工程は毛髪内部の放射能に極低い影響を及ぼすにすぎないということである。これはまた、本発明によるトリートメントが表面的な影響を及ぼすにすぎないことも暗示している。
【0131】
14C−実験:パートII
手順:パートIに準じる。ただし、(1)によるプレトリートメントは任意選択的に水でもよく、モノマー組成物のトリートメント時間(工程[3])を24時間に増やし、かつすすぎ(4)を常に実施する。
【0132】
特定の毛髪束ごとの正確な手順は、以下の通り実施された。
【0133】
【表4】
【0134】
ミクロオートラジオグラフィで、毛髪束中の14C−3−SPAを検出した。結果を下表及び図4に示す。
【0135】
【表5】
【0136】
解釈及び考察:実験によると、H22を用いたプレトリートメントのあらゆるケースにおいて角皮及び皮質の両方に放射活性が確認され、一方、水のみを用いプレトリートメントしたケースでは、角皮には放射活性を発見できなかったのに対して、皮質には放射活性が発見されることが判った。他のインビトロ実験からは、モノマーのみならずポリ−3−SPAも水溶性であることが明らかになった。ただし、いったん乾燥したポリマーを溶解する場合、乾燥モノマーの溶解にかかる時間(数秒)よりもかなり長い(数時間)を要する。したがって、これらのデータは、洗浄耐性の差異が重合レベルに起因することを示唆している。H22によるプレトリートメントを施されなかった各サンプルの毛髪繊維20本はいずれも洗浄によって角皮領域の放射活性を失ったのに対して、他の全てのサンプルは放射活性を維持した。
【0137】
毛髪密度データ
「付加」量、すなわち、トリートメント後の毛髪重量の変化率(%)を測定する。トリートメントの前後で、各ヘアピースを化学天秤で秤量し、差をパーセント(%)で計算する。両方の秤量において、毛髪を乾燥状態とする。2.5cmのヘアピース20本をパーマしてトリートメント前に2回漂白された。次いで、2%のH22を含む酸化性調合物を5分間塗布する。続いて、モノマー組成物を45℃にて30分間塗布し、ここで、モノマー組成物は12%の3−SPAを含むものとする。その次に、ヘアピースを中性シャンプーで洗浄してから、2%のH22を含むフィニッシング調合物を塗布する。ヘアピースを風乾して秤量する。この付加量実験の結果、平均重量が2.93%増加したことが判った。
【0138】
同様に、個々の毛髪繊維の直径をレーザーマイクロメーターで測定する。ヨーロッパ系人の毛髪の同じバッチから単一毛髪繊維25本を採取し、それらの直径を本発明に係るトリートメントの前後で測定する。繊維をトリートメント前に2回漂白する。2%のH22を含む酸化性調合物を塗布し、次に(12%の3−SPA含有の)モノマー組成物を塗布して、2%のH22を含むフィニッシング調合物を塗布する。繊維ごとに繊維長に沿って複数の位置で径を測定した。そのような径測定値を繊維ごとに平均したところ、平均最小径は約60マイクロメートル、平均最大小径は約86マイクロメートルであった。更にまた、25本の全繊維の平均も計算する。これらの実験の結果、未処置の毛髪繊維と比較した平均毛髪径の減少は極僅かであった。未処置繊維の平均径が73.2マイクロメートル(標準偏差16.7マイクロメートル)であったのに対して、処置後の繊維の平均径は73.0マイクロメート(標準偏差16.6マイクロメートル)である。
【0139】
解釈及び考察:付加量が増加した一方で毛髪径に若干減少があったことから、毛髪繊維の密度が増加したと結論づけられる。
【0140】
消費者及びスタイリストのデータ
本発明の試験は、消費者を対象とする。消費者は、それらのニーズに応じて選択される。消費者セグメント1は、毛髪が現時点で細くて軟弱なため、ハリの改善、ボリュームアップ、濃い髪を望んでいる消費者で構成されている。消費者セグメント2は、毛髪が現時点で太くて乱れがちなため、きちんと整髪された外観の髪を望んでいる消費者で構成されている。
【0141】
試験において、各消費者の上半分の頭髪には本発明によるトリートメントを施し、下半分の頭髪には本発明によらないトリートメントを施した。あらゆるケースにおいて、湿潤した毛髪にトリートメントを塗布する。試験の終了時には、消費者及びスタイリストの両者からのフィードバックを集めて、両半分を比較する。各消費者の頭半分に適用可能な方法を、下の表IIと題した表に示す。
【0142】
【表6】
【0143】
この調査では、合計47人の消費者に本発明の方法1を実施した。そのうちの26人は消費者セグメント1からの消費者、21人は消費者セグメント2からの消費者である。合計20人の消費者に本発明の方法1を実施した。そのうちの10人は消費者セグメント1からの消費者、10人は消費者セグメント2からの消費者である。合計27人の消費者に本発明の方法2を実施した。そのうちの16人は消費者セグメント1からの消費者、11人は消費者セグメント2からの消費者であった。
【0144】
サロンに来訪した消費者に上記方法を適用した直後に、例えば「自分の髪に合うか?」などの毛髪についての様々な質問を尋ねる。消費者は、質問ごとに「完全に合う(Completely agree)」、「ほとんど合う(mostly agree)」、「どちらでもない(neither agree nor disagree)」、「ほとんど合わない(mostly disagree)」、「全く合わない(completely disagree)」の5つの別個の解答を選択する必要がある。これらの質問について、頭半分ごとに「完全に合う」又は「ほとんど合う」と答えた消費者のパーセンテージを計算する。トリートメントによる利益(すなわち、期待どおりかどうか)について更なる質問を尋ねる。この質問に関しては、5点の評価尺度も使用して、「期待以上」、「期待どおり」、又は「ほぼ期待を満たす」のいずれかを回答した消費者のパーセンテージを計算する。サロン来訪の直後に回答が得られた上記質問の結果は、下表IIIで確認できる。
【0145】
【表7】
【0146】
トリートメントの4週間後に、同じ消費者に同様の質問を尋ねた。トリートメントの4週間後の上述した質問の結果は、下表IVで確認できる。
【0147】
【表8】
【0148】
トリートメント後の4週目は毎日髪を整えるように、消費者に依頼する。消費者は毎日、トリートメント前と今の毛髪の状態の違いに注目するかどうかを述べる必要がある。同様に、日ごとに毛髪の感じ(例えば、艶、ボリューム感など)をより詳しく書き留めるよう義務づけた。特定回数だけ洗浄した後もトリートメントによる利益が依然として認められる消費者のパーセンテージを計算する。これらのデータを下表Vに示す。
【0149】
【表9】
【0150】
更にまた、消費者フィードバックの総合分析を実施した。トリートメントの直後、及びトリートメントの4週間後に、トリートメントの総合評価も行うよう消費者に依頼する。この質問に回答するには「優良(excellent)」、「非常に良い(very good)」、「良い(good)」、「あまり良くない(not so good)」、「悪い(poor)」の中から1つを選択する必要がある。この質問に「優良」、「非常に良い」、「良い」と回答した消費者の数を、「総合評価」のパーセンテージを計算する際に使用した。消費者の回答に関する要約、及びトリートメントが消費者の期待を満たしたかどうかについては、下表VIで確認できる。
【0151】
【表10】
【0152】
更に、消費者に対するトリートメントの効力について、スタイリストに意見を尋ねる。各スタイリストに、7点の評価尺度を使用して各基準に反応するように依頼し、スタイリストは+3、+2、+1、0、−1、−2、−3の評価の中から1つを選択できる。この調査の結果を下表VIIに示す。
【0153】
【表11】
凡例:*=本発明の方法が比較対照用の方法よりも有意に優れていることが、結果から判る。^=本発明の方法が比較対照用の方法よりも有意に劣ることが、結果から判る。==本発明の方法が比較対照用の方法と同等であることが、結果から判る。
【0154】
これらの消費者及びスタイリストのデータから引き出された結論としては、本発明に従う方法を用いると、本発明によらない比較対照用の方法を用いた場合よりも性能が向上するという点が挙げられる。
【実施例】
【0155】
【表12】
【0156】
相1及び相2を別々に作製してから混合する。相1の成分を混合し、80℃まで加熱して、サリチル酸を溶解する。次いで、相1を撹拌し、40℃まで冷却した。その後、相2を作製し、相1と混合して、5分間撹拌する。
【0157】
酸化性調合物を髪に塗布した後、毛髪をタオルドライして毛髪から湿気を除去する。その後、モノマー組成物を毛髪に塗布する。
【0158】
【表13】
凡例:1=Cellosize(登録商標)HEC QP−4400H(供給元:Dow Europe GmbH)、2=Keltrol(登録商標)CG−T(供給元:CP Kelco A HUBER COMPANY)、3=Genapol(登録商標)C−100(供給元:Clariant Produkte GmbH(Deutschland))、4=Cremophor(登録商標)EL(供給元:BASF The Chemical Company)、5=3−スルホプロピルアクリレートカリウム塩(供給元:Raschig)。
【0159】
相1及び相2を別々に作製してから混合する。3−スルホプロピルアクリレートカリウム塩を含まない相3を40℃まで加熱して形成してから、他の2つの相と混合する。最後に、塩を加えて、最終的なモノマー組成物を10分間撹拌する。
【0160】
【表14】
凡例:上記に準ずる。6=Natrosol(登録商標)250 HHR(Herkules)。
【0161】
相1及び相2を別個に作製する。相1(ただし、ギ酸を除く)を2分間撹拌して作製し、次いで、撹拌しながら50℃まで加熱して、ヒドロキシエチルセルロースを膨張させる。溶液を30℃未満に冷却した後、相1のpHがpH 2.5に達するまでギ酸を添加した。相2を作製するために、まず、溶液が形成されるまで、2−フェノキシエタノール及びp−ヒドロキシ安息香酸メチルエステルを混合する。次いで、40℃のコセス−10を溶液に添加して撹拌する。最終的な相2は、後でPEG−35ヒマシ油及び芳香剤中で混合することによって作製される。続いて、相2を相1に添加してから、3−スルホプロピルアクリレートカリウム塩を添加して、結果として得られたモノマー組成物5分間混合する。
【0162】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきでない。むしろ、特に断らない限り、そのような寸法はそれぞれ、記載された値及びその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D