特許第5792837号(P5792837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JOLEDの特許一覧

<>
  • 特許5792837-EL表示装置の製造方法 図000002
  • 特許5792837-EL表示装置の製造方法 図000003
  • 特許5792837-EL表示装置の製造方法 図000004
  • 特許5792837-EL表示装置の製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792837
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20150928BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20150928BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20150928BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150928BHJP
   G09G 3/30 20060101ALI20150928BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H05B33/12 Z
   H05B33/02
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   G09G3/30 H
   G09G3/20 670Q
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-557251(P2013-557251)
(86)(22)【出願日】2012年11月22日
(86)【国際出願番号】JP2012007521
(87)【国際公開番号】WO2013118215
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2014年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-25761(P2012-25761)
(32)【優先日】2012年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】塩田 昭教
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−260857(JP,A)
【文献】 特開2007−207703(JP,A)
【文献】 特開2010−009964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/12
G09G 3/20
G09G 3/30
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に発光層を配置した発光部と、前記発光部の発光を制御する薄膜トランジスタアレイ装置とを備え、RGBの複数個の画素を配置したEL表示パネルを有するEL表示装置の製造方法であって、
前記EL表示パネルの作成後、前記画素のRGBの色毎に予め設定された電圧であって、点灯時のアノード電圧とカソード電圧とは逆バイアス電圧となる電位差を有する前記電圧を各画素に印加することにより、将来滅点となる画素を事前に滅点化する
EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光材料として有機材料を用いたエレクトロルミネッセンス(以下、ELという)素子がマトリックス状に配置されたEL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自ら発光するEL素子を多数配列したEL表示装置は、バックライトが不要で視野角にも制限がないため、次世代の画像表示装置として開発が進められている。
【0003】
EL表示装置において、発光素子であるEL素子は、流す電流量によって輝度を制御する電流発光素子である。EL素子を駆動する方式としては、単純マトリックス方式とアクティブマトリックス方式とがある。前者は画素回路が単純であるものの大型かつ高精細のディスプレイの実現が困難である。このため、近年は、画素回路毎に駆動トランジスタを備えたアクティブマトリックス型のEL表示装置が主流となってきている。
【0004】
駆動トランジスタおよびその周辺回路は、一般にポリシリコンやアモルファスシリコン等を用いた薄膜トランジスタで形成される。薄膜トランジスタは移動度が小さく閾値電圧の経時変化が大きいという弱点があるものの、大型化が容易かつ安価であるために大型のEL表示装置に適している。また、薄膜トランジスタの弱点である閾値電圧の経時変化を画素回路の工夫により克服する方法についても検討されている。
【0005】
この種のEL表示装置を製造する場合、製造工程時に画素内の薄膜トランジスタが静電破壊されたり、損傷を受けたりすることがあるため、その他の表示デバイス同様、製造工程においてパネル検査が実施される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−176966号公報
【発明の概要】
【0007】
本開示は、一対の電極間に発光層を配置した発光部と、発光部の発光を制御する薄膜トランジスタアレイ装置とを備え、RGBの複数個の画素を配置したEL表示パネルを有するEL表示装置の製造方法であって、EL表示パネルの作成後、画素のRGBの色毎に予め設定された電圧を各画素に印加する検査工程を実施し、検査工程において印加される電圧は、点灯時のアノード電圧とカソード電圧とは逆バイアス電圧となる電位差であって、欠陥のある画素を滅点とするための電位差を有する
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は一実施の形態におけるEL表示装置の斜視図である。
図2図2は一実施の形態におけるEL表示装置のピクセルバンクの例を示す斜視図である。
図3図3は一実施の形態におけるEL表示装置の画素回路の回路構成を示す電気回路図である。
図4図4は一実施の形態におけるEL表示装置の複数の画素と各配線との配線構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態におけるEL表示装置の製造方法について、図面を用いて説明する。
【0010】
以下、一実施の形態における薄膜トランジスタアレイ装置及びそれを用いたEL表示装置について、図1図4の図面を用いて説明する。
【0011】
図1図3に示すように、EL表示装置は、下層より、複数個の薄膜トランジスタを配置した薄膜トランジスタアレイ装置1と、下部電極である陽極2、有機材料からなる発光層であるEL層3及び透明な上部電極である陰極4からなる発光部としてのEL素子との積層構造により構成されている。
【0012】
発光部は薄膜トランジスタアレイ装置により発光制御される。
【0013】
EL素子は、一対の電極である陽極2と陰極4との間にEL層3を配置した構成であり、陽極2とEL層3の間には正孔輸送層が積層形成され、EL層3と透明な陰極4の間には電子輸送層が積層形成されている。
【0014】
このEL表示装置は、赤色、緑色、青色に発光する画素5が複数個マトリックス状に配置され、各画素5は、EL素子とそのEL素子の発光制御を行う画素回路6によって構成されている。
【0015】
また、薄膜トランジスタアレイ装置1は、行状に配置される複数のゲート配線7と、ゲート配線7と交差するように列状に配置される複数の信号配線としてのソース配線8と、ソース配線8に平行に延びる複数の電源配線(図1では省略)とを備え、各画素5に接続されている。すなわち、EL表示装置は、ゲート配線7とソース配線8との交点に位置する画素5毎に表示制御を行うアクティブマトリックス方式である。
【0016】
図2に示すように、EL表示装置の各画素5は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のサブ画素5R、5G、5Bによって構成され、これらのサブ画素5R、5G、5Bは、表示面上に複数個マトリクス状に配列されるように形成されている(以下、サブ画素列と表記する)。各サブ画素5R、5G、5Bは、バンク5aによって互いに分離されている。バンク5aは、ゲート配線7に平行に延びる突条と、ソース配線8に平行に延びる突条とが互いに交差するように形成されている。そして、この突条で囲まれる部分(すなわち、バンク5aの開口部)にサブ画素5R、5G、5Bが形成されている。
【0017】
陽極2は、薄膜トランジスタアレイ装置1上の層間絶縁膜上でかつバンク5aの開口部内に、サブ画素5R、5G、5B毎に形成されている。同様に、EL層3は、陽極2上でかつバンク5aの開口部内に、サブ画素5R、5G、5B毎に形成されている。透明な陰極4は、複数のEL層3及びバンク5a上で、かつ全てのサブ画素5R、5G、5Bを覆うように、連続的に形成されている。
【0018】
さらに、薄膜トランジスタアレイ装置1には、各サブ画素5R、5G、5B毎に画素回路6が形成されている。そして、各サブ画素5R、5G、5Bと、対応する画素回路6とは、後述するコンタクトホール及び中継電極によって電気的に接続されている。なお、サブ画素5R、5G、5Bは、EL層3の発光色が異なることを除いて同一の構成である。そこで、以降の説明では、サブ画素5R、5G、5Bを区別することなく、全て画素5と表記する。
【0019】
図3に示すように、画素回路6は、スイッチ素子として動作する薄膜トランジスタ10と、駆動素子として動作する薄膜トランジスタ11と、対応する画素に表示するデータを記憶するキャパシタ12とで構成され、薄膜トランジスタ11のソース電極11s、ドレイン電極11dに直列にEL素子13が接続されている。
【0020】
そして、ゲート配線7は、画素回路6のそれぞれに含まれるスイッチング素子として動作する薄膜トランジスタ10のゲート電極10gに行毎に接続され、ソース配線8は、薄膜トランジスタ10のソース電極10sに列毎に接続されている。一方の電源配線9aは、画素回路6の薄膜トランジスタ11とのドレイン電極11dに列毎に接続され、他方の電源配線9bは、EL素子13に接続されている。
【0021】
薄膜トランジスタ10は、ゲート配線7に接続されるゲート電極10gと、ソース配線8に接続されるソース電極10sと、キャパシタ12及び薄膜トランジスタ11のゲート電極11gに接続されるドレイン電極10dと、半導体膜(図示せず)とで構成される。この薄膜トランジスタ10は、接続されたゲート配線7及びソース配線8に電圧が印加されると、当該ソース配線8に印加された電圧値を表示データとしてキャパシタ12に保存する。
【0022】
薄膜トランジスタ11は、薄膜トランジスタ10のドレイン電極10dに接続されるゲート電極11gと、電源配線9a及びキャパシタ12に接続されるドレイン電極11dと、陽極2に接続されるソース電極11sと、半導体膜(図示せず)とで構成される。この薄膜トランジスタ11は、キャパシタ12が保持している電圧値に対応する電流を電源配線9aからソース電極11sを通じてEL素子13の陽極側に供給する。
【0023】
すなわち、EL素子13のカソード端子には、電源配線9bからカソード電圧Vssが印加され、EL素子13のアノード端子には、薄膜トランジスタ11を介して電源配線9aからアノード電圧Vddが印加されており、それらのアノード電圧Vddとカソード電圧Vssとは、アノード電圧Vdd>カソード電圧Vssの関係になるように設定されている。
【0024】
図4に示すように、RGBの各画素5に接続される各ゲート配線7には、非線形抵抗素子としてESD(静電気)保護素子14が接続され、またRGBの各画素5それぞれのソース配線8R、8G、8Bには、ESD保護素子15が接続されている。
【0025】
なお、図4において、17はゲート配線7の電極端子、18R、18G、18Bはソース配線8R、8G、8Bの電極端子、19a、19bは電源配線9a、9bの電極端子であり、通常の点灯時は電源端子19aにアノード電圧Vddを印加し、電源端子19bにカソード電圧Vssを、Vdd>Vssとなるように印加する。例えば、高圧側のアノード電圧Vdd=10(V)、低圧側のカソード電圧Vss=0(V)を印加し、そして、Rの画素5のみを点灯させる場合は、電極端子18Rを0電位、その他の電極端子18G、18Bにプラスの電位を印加すればよい。
【0026】
このようなEL表示装置において、製造時に画素の欠陥を検査する方法について検討した結果、各画素5に印加されるアノード電圧Vdd、カソード電圧Vssについて、Vdd<Vssとなる逆バイアス電圧を印加し、滅点をスクリーニングすることで、将来発生する欠陥を事前に発見することができることを見出した。
【0027】
また、印加する逆バイアス電圧の電位差を大きくすることにより、滅点の個数が増え、しかもRGB毎にその個数が異なることが判明した。
【0028】
これは、逆バイアス電圧を印加することにより、画素内に異物などが存在する場合に、その異物によって電界が集中し、またEL表示パネルを構成する各構成層の膜厚が薄くなっているところは、リークが発生し、これによりその画素が滅点になるものと考えられる。さらに、RGBのEL層の構成材料の違いにより、RGBの画素毎で滅点になる逆バイアス電圧の電位差の大きさが異なるものと考えられる。
【0029】
具体的な一例としては、高圧側のアノード電圧Vddを0(V)とし、低圧側のカソード電圧Vssとして、10(V)から30(V)の逆バイアス電圧を印加したところ、Gの画素については約20(V)の逆バイアス電圧、Bの画素では約25(V)の逆バイアス電圧、Rの画素では約30(V)の逆バイアス電圧で滅点となるスクリーニング検査が行えることが判明した。
【0030】
すなわち、本開示の製造方法においては、EL表示パネルを作製した後、各画素に、点灯時のアノード電圧とカソード電圧とは逆バイアス電圧となる電位差であって、RGBの色の画素毎にあらかじめ大きさを設定した逆バイアス電圧を印加する検査工程を設けるものである。これにより、将来発生する滅点や暗点をパネル作製後に、事前にスクリーニングすることができ、製品化後に画素欠陥による不良品の発生を少なくすることができ、EL表示装置としての製造時の歩留まりを向上させることができる。
【0031】
以上のように本開示によれば、EL表示パネルを作製した後に、各画素に逆バイアス電圧を印加する検査工程を設けるだけで、将来発生する滅点や暗点を事前にスクリーニングすることができ、製品化後に画素欠陥による不良品の発生を少なくすることができ、EL表示装置の歩留まり向上を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように本開示によれば、EL表示装置の製造歩留まりを向上させる上で有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 薄膜トランジスタアレイ装置
2 陽極
3 EL層
4 陰極
5 画素
6 画素回路
7 ゲート配線
8,8R,8B,8G ソース配線
9a,9b 電源配線
10,11 薄膜トランジスタ
13 EL素子
図1
図2
図3
図4