特許第5792847号(P5792847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792847
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】リニアモータアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/18 20060101AFI20150928BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20150928BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H02K33/18 B
   H02K33/16 A
   H02K41/03 A
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-24978(P2014-24978)
(22)【出願日】2014年2月13日
(62)【分割の表示】特願2009-293915(P2009-293915)の分割
【原出願日】2009年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-82934(P2014-82934A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2014年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2009-98601(P2009-98601)
(32)【優先日】2009年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】岩城 純一郎
【審査官】 服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−315255(JP,A)
【文献】 特開平11−168869(JP,A)
【文献】 特開2001−347227(JP,A)
【文献】 特開2006−174616(JP,A)
【文献】 実開平07−009081(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/18
H02K 33/16
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向にN極及びS極が着磁される少なくとも一つの永久磁石を有する可動子及び固定子の一方と、
前記可動子及び前記固定子の一方を囲む第一及び第二のコイルが軸線方向に配列される前記可動子及び前記固定子の他方と、を備えるリニアモータアクチュエータにおいて、
前記第一のコイルに発生する推力と前記第二のコイルに発生する推力の位相がずれるように、かつ前記第一及び前記第二のコイルに互いに向かい合い、互いに反対方向を向く推力が発生するタイミングがあるように、前記第一及び前記第二のコイルに位相を異ならせた交流を流し、かつ前記第一及び前記第二のコイルの軸線方向の中心を結んだコイル中心間ピッチと前記可動子及び前記固定子の一方の磁極間ピッチとを一致させることを特徴とするリニアモータアクチュエータ。
【請求項2】
軸線方向にN極及びS極が着磁される少なくとも一つの永久磁石を有する可動子及び固定子の一方と、
前記可動子及び前記固定子の一方を囲む第一及び第二のコイルが軸線方向に配列される前記可動子及び前記固定子の他方と、を備えるリニアモータアクチュエータにおいて、
前記第一のコイルに発生する推力と前記第二のコイルに発生する推力の位相がずれるように、かつ前記第一及び前記第二のコイルに互いに向かい合い、互いに反対方向を向く推力が発生するタイミングがあるように、前記第一及び前記第二のコイルに位相を異ならせた交流を流し、かつ前記第一及び前記第二のコイルの軸線方向の中心を結んだコイル中心間ピッチと前記可動子及び前記固定子の一方の磁極間ピッチとを異ならせることを特徴とするリニアモータアクチュエータ。
【請求項3】
軸線方向にN極及びS極が着磁される第一及び第二の永久磁石が同極同士が向かい合うように間隔を空けて配列される可動子及び固定子の一方と、
前記可動子及び前記固定子の一方を囲む一つのコイルを有する前記可動子及び前記固定子の他方と、
を備えるリニアモータアクチュエータにおいて、
前記第一及び前記第二の永久磁石の内側のS極−S極間ピッチ又は内側のN極−N極間ピッチを前記一つのコイルの軸線方向の長さよりも長くし、
前記一つのコイルに交流を流すことによって、前記可動子が前記固定子に対して移動し、
前記可動子がストロークの一方の端まで移動するとき、前記第一の永久磁石が前記一つのコイルの中に入り、前記可動子がストロークの他方の端まで移動するとき、前記第二の永久磁石が前記一つのコイルの中に入ることを特徴とするリニアモータアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子に対して可動子が一軸方向に相対的に移動するリニアアクチュエータに関し、特に、固定子に対して軸線方向の一方向に相対的に移動し、その後、移動方向を反転させて軸線方向の他方向に移動するストローク式のリニアモータアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のストローク式のリニアモータアクチュエータとして、永久磁石及びコイルを備えるボイスコイルモータが知られている(例えば特許文献1参照)。ボイスコイルモータの作動原理は、フレミングの左手の法則、すなわち、永久磁石が作る磁界の中でコイルに電流を流したときに推力が発生する性質を利用している。コイルに交流の電流を流せば、永久磁石の磁界の範囲内でコイルが一軸方向にストロークする。ボイスコイルモータは、高速運動できかつ安価であるという特徴を有するために、スピーカ、磁気ディスクのヘッド駆動、サーボ弁のスプール駆動等様々な用途に応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−154314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ボイスコイルモータには、永久磁石が作る磁界の範囲からボイスコイルが飛び出したとき、ボイスコイルを制御できなくなるという本質的な問題がある。永久磁石に対してボイスコイルを高速で移動させたときや、ボイスコイルのストロークを大きくとったとき、慣性によってボイスコイルが永久磁石の磁界の範囲から飛び出すことがある。ボイスコイルが永久磁石から半分以上飛び出すと、ボイスコイルに元に戻るような電流を流しても、ボイスコイルを制御することが困難になる。
【0005】
この問題を解決するために、従来のボイスコイルモータにおいては、ボイスコイルにばねやコーン紙等の弾性体を取り付け、弾性体の復元力を利用してボイスコイルが永久磁石の磁界の範囲に戻るようにしていた。
【0006】
しかし、機械的な弾性体の復元力を利用して戻す場合、ボイスコイルの振動周波数が弾性体の固有振動数に近づき、共振すると、ボイスコイルの振動が不安定になる。このため、弾性体が共振しない周波数で振動させる必要があり、使用できる周波数が限られるという問題がある。また、固定子と可動子を弾性体で連結すると、振動方向以外の力に対しても弾性体がたわむので脆弱な構造にならざるをえないという問題もある。
【0007】
本発明は、従来のリニアモータアクチュエータの上記の課題を解決するためになされたものであり、機械的な弾性体の復元力を利用しなくても、可動子をストロークさせることができるリニアモータアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、軸線方向にN極及びS極が着磁される少なくとも一つの永久磁石を有する可動子及び固定子の一方と、前記可動子及び前記固定子の一方を囲む第一及び第二のコイルが軸線方向に配列される前記可動子及び前記固定子の他方と、を備えるリニアモータアクチュエータにおいて、前記第一のコイルに発生する推力と前記第二のコイルに発生する推力の位相がずれるように、かつ前記第一及び前記第二のコイルに互いに向かい合い、互いに反対方向を向く推力が発生するタイミングがあるように、前記第一及び前記第二のコイルに位相を異ならせた交流を流し、かつ前記第一及び前記第二のコイルの軸線方向の中心を結んだコイル中心間ピッチと前記可動子及び前記固定子の一方の磁極間ピッチとを一致させることを特徴とする。
【0009】
本発明の第二の態様は、軸線方向にN極及びS極が着磁される少なくとも一つの永久磁石を有する可動子及び固定子の一方と、前記可動子及び前記固定子の一方を囲む第一及び第二のコイルが軸線方向に配列される前記可動子及び前記固定子の他方と、を備えるリニアモータアクチュエータにおいて、前記第一のコイルに発生する推力と前記第二のコイルに発生する推力の位相がずれるように、かつ前記第一及び前記第二のコイルに互いに向かい合い、互いに反対方向を向く推力が発生するタイミングがあるように、前記第一及び前記第二のコイルに位相を異ならせた交流を流し、かつ前記第一及び前記第二のコイルの軸線方向の中心を結んだコイル中心間ピッチと前記可動子及び前記固定子の一方の磁極間ピッチとを異ならせることを特徴とする。
【0010】
本発明の第三の態様は、軸線方向にN極及びS極が着磁される第一及び第二の永久磁石が同極同士が向かい合うように間隔を空けて配列される可動子及び固定子の一方と、前記可動子及び前記固定子の一方を囲む一つのコイルを有する前記可動子及び前記固定子の他方と、を備えるリニアモータアクチュエータにおいて、前記第一及び前記第二の永久磁石の内側のS極−S極間ピッチ又は内側のN極−N極間ピッチを前記一つのコイルの軸線方向の長さよりも長くし、前記一つのコイルに交流を流すことによって、前記可動子が前記固定子に対して移動し、前記可動子がストロークの一方の端まで移動するとき、前記第一の永久磁石が前記一つのコイルの中に入り、前記可動子がストロークの他方の端まで移動するとき、前記第二の永久磁石が前記一つのコイルの中に入ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第一の態様によれば、第一及びの第二のコイルに発生する推力の位相がずれるので、第一のコイルに例えば正弦波の推力を出力させ、第二のコイルに例えば余弦波の推力を出力させることができる。第一及び第二のコイルに可動子を押し引きする力を同時に作用させることができるので、ストロークの端部付近に移動して減速域に入った可動子に早めにブレーキをかけることができ、可動子を確実に振動させることができる。
【0012】
本発明の第二の態様によれば、第一及びの第二のコイルに発生する推力の位相がずれるので、第一のコイルに例えば正弦波の推力を出力させ、第二のコイルに例えば余弦波の推力を出力させることができる。第一及び第二のコイルに可動子を押し引きする力を同時に作用させることができるので、ストロークの端部付近に移動して減速域に入った可動子に早めにブレーキをかけることができ、可動子を確実に振動させることができる。さらに、可動子の移動中に、第一及び第二の永久磁石が第一及び第二のコイルの中に入っている量が変化するので、第一及び第二のコイルに発生する推力をさらに多様に変化させることができる。この結果、低い周波数から高い周波数まで追従性よく、可動子を振動させることができる。
【0013】
本発明の第三の態様によれば、第一及び前記第二の永久磁石の外側のN極−N極間ピッチ又は外側のS極−S極間ピッチをコイルの軸線方向の長さよりも長くし、可動子がストロークの一方の端まで移動するとき、第一の永久磁石が前記コイルの中に入り、可動子がストロークの他方の端まで移動するとき、第二の永久磁石が前記コイルの中に入るようにするので、ストロークの端での復元力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のリニアモータアクチュエータ(ダブルコイルタイプ)の基本構成図
図2】可動子の作動の原理図(コイルの個数:永久磁石の個数=2:2)
図3】可動子の作動の原理図(コイルの個数:永久磁石の個数=2:1)
図4】本発明の第一の実施形態のリニアモータアクチュエータ(ダブルコイルタイプ)の断面図
図5】固定子の分解図
図6】コイル中心間ピッチと永久磁石の磁極間ピッチの関係を示す模式図
図7】固定子から可動子を引き抜いた状態を示す断面図
図8】リニアブッシュの斜視図
図9】リニアブッシュの断面図
図10】第一及び第二のコイルの結線図(並列)
図11】第一及び第二のコイルの結線図の他の例
図12】第一及び第二のコイルの結線図(直列)
図13】第一及び第二のコイルに発生する逆起電力を示すグラフ
図14】可動子の動作状態の推力ベクトル図
図15】可動子の静止状態の推力ベクトル図
図16】本発明の第二の実施形態のリニアモータアクチュエータ(ダブルコイルタイプ)の模式図
図17】本発明の第二の実施形態のリニアモータアクチュエータ(ダブルコイルタイプ)の模式図
図18】複数のコイルユニットを並べた例を示す断面図
図19】第一及び第二のコイルの外側を筒状のヨークで囲んだ例を示す断面図
図20】本発明の第三の実施形態のリニアモータアクチュエータ(トリプルコイルタイプ)の模式図
図21】リング磁石と棒状磁石との位置関係を示す斜視図
図22】棒状磁石が移動したときに棒状磁石の働く推力を示す図(図中(a)は棒状磁石が左方向に移動した状態を示す、(b)は中心に位置した状態を示し、(c)は右方向に移動した状態を示す)
図23】一対のリング磁石に対して第一及び第二の永久磁石をずらした状態を示す模式図
図24】可動子の位置と可動子に発生する復元力(発生力)との関係を示すグラフ
図25】第三のコイルの両端部に形成される磁極の変化を示す図
図26】第一ないし第三のコイルの出力を示すグラフ(図中(a)は第一及び第二のコイルの出力の合算を示し、(b)は第三のコイルの出力を示し、(c)は第一ないし第三のコイルの出力の合算を示す)
図27】固定子に一つのコイルを設けたリニアモータアクチュエータ(シングルコイルタイプ)の基本構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて本発明のリニアモータアクチュエータの実施形態を説明する。リニアモータアクチュエータの基本構成、及び作動原理を説明する。リニアモータアクチュエータには、固定子に第一及び第二のコイルを配列したダブルコイルタイプのリニアモータアクチュエータと、一つのコイルを設けたシングルコイルタイプのリニアモータアクチュエータとがある。まず、ダブルコイルタイプのリニアモータアクチュエータについて説明する。
【0016】
図1に示すように、ダブルコイルタイプのリニアモータアクチュエータの固定子2には、軸線を一致させた状態で二つのコイル(第一のコイル1a及び第二のコイル1b)が配列される。第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向の長さは互いに等しい。第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向の中心を結んだコイル中心間ピッチはLC1であり、第一及び第二のコイル1a,1bの外法はLC3であり、第一及び第二のコイル1a,1bの内法はLC2である。第一及び第二のコイル1a,1b間には、コイル間の間隔を空けるためのスペーサ7が介在される。第一及び第二のコイル1a,1bのコイルから構成されるコイルユニットの外側には、スペーサ11及びカラー10を介して案内手段として直動軸受8が設けられる。直動軸受8はブッシュやスプラインであり、可動子4が直線運動するのを案内する。第一及び第二のコイル1a,1b、スペーサ7,11、カラー10は固定子の円筒状のヨーク内に収容される。
【0017】
軸状の可動子4は、第一及び第二のコイル1a,1b内を貫通する。可動子4は、永久磁石の数に応じて三種類4a,4b,4cに分けられる。すなわち、パイプ状のロッド内に中央部永久磁石3cが配置されるタイプ4aと、第一及び第二の永久磁石3a,3bが配置されるタイプ4bと、中央部永久磁石3c、第一及び第二の永久磁石3a,3bが配置されるタイプ4cである。コイルの個数と永久磁石の個数との比は、それぞれ2:1、2:2、2:3になる。いずれの場合でも可動子4を振動させることができる。
【0018】
コイルの個数:永久磁石の個数=2:2とするのが基本である。コイルの個数:永久磁石の個数=2:2とした上で、永久磁石の外側に更に第三及び第四の永久磁石13a,13bを配置したのが図4に示す本発明の第一の実施形態のリニアモータアクチュエータである。
【0019】
まず、コイルの個数:永久磁石の個数=2:2とする例について説明する。図1に示すように、ロッド14の左右両側には、棒状の第一及び第二の永久磁石3a,3bが軸線方向に間隔を空けて配置される。これら第一及び第二の永久磁石3a,3bは、第一及び第二のコイル1a,1bに一対一対応する。第一及び第二の永久磁石3a,3bそれぞれの軸線方向の両端部は、N極及びS極に着磁されている。第一及び第二の永久磁石3a,3bは、同極が対向するように、この例ではN極同士が対向するようにロッド14に配列される。この例では、第一及び第二の永久磁石3a,3bの内側の磁極(N極)が、外側の磁極(S極)よりも第一及び第二のコイル1a,1bの中心に近い。そして、第一及び第二のコイル1a,1bの中心に近い磁極(N極)の磁極間ピッチLM1を、第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向の中心を結んだ中心間ピッチLC1と異ならせている。中心間ピッチLC1と磁極間ピッチLM1との差は、第一及び第二のコイル1a,1bそれぞれのコイルの軸線方向の長さの1/8〜3/8倍に設定される。詳しくは後述するが、第一及び第二のコイル1a,1bに発生する推力の位相を90度程度ずらすためである。各永久磁石3a,3bの軸線方向の長さは各コイル1a,1bの軸線方向の長さよりも短い。
【0020】
なお、第一及び第二の永久磁石3a,3bの外側の磁極が内側の磁極よりも第一及び第二のコイル1a,1bの中心に近い場合(図4参照)、第一及び第二の永久磁石3a,3bの外側の磁極の磁極間ピッチLM2を、第一及び第二のコイル1a,1bの中心間ピッチLC1と異ならせればよい。
【0021】
第一及び第二のコイル1a,1bと第一及び第二の永久磁石3a,3bとの位置関係は、可動子4bが軸線方向の右端まで移動すると、第一の永久磁石3aが第一のコイル1a内に入り、可動子4bが軸線方向の左端まで移動すると、第二の永久磁石3bが第二のコイル1b内に入る関係にある。
【0022】
第一及び第二のコイル1a,1bと第一及び第二の永久磁石3a,3bをこのような位置関係で配列し、第一及び第一のコイル1a,1bに位相を一致させた交流を流すと、第一及び第二のコイル1a,1bに約90度位相がずれた推力が発生する。すなわち、第一のコイル1aに正弦波状の推力が発生し、第二のコイル1bに余弦波状の推力が発生する。第一及び第二のコイル1a,1bに可動子4bを押し引きする力を同時に作用させることができ、すなわち第一及び第二のコイル1a,1bに第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向の反対方向に作用する推力(互いに向かい合ったり、反対方向を向いたりする推力)を同時に作用させるタイミングがあるので、ストロークの端部付近に移動して減速域に入った可動子4bに早めにブレーキをかけることができる。しかも、第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向の中心を結んだコイル中心間ピッチLC1と第一及び第二の永久磁石3a,3bの内側の磁極間ピッチLM1とが異なるので、可動子4bの移動中に、第一及び第二の永久磁石3a,3bが第一及び第二のコイル1a,1bの中に入っている量が変化する。このため、第一及び第二のコイル1a,1bに発生する推力をさらに多様に変化させることができる。
【0023】
可動子4bがストロークの端部付近(例えば図1中左側)に移動し、第一の永久磁石3aのN極が第一のコイル1aから飛び出そうとしても、第二の永久磁石3bが第二のコイル1bに入っている量を大きくすることができる。このため、ストロークの端部付近での復元力を確保することができる。この結果、機械的な弾性体の復元力を利用しなくても、可動子4bを振動させることが可能になる。共振周波数を持つ機械的な弾性体を使用しないので、低い周波数から高い周波数まで追従性よく、可動子を振動させることができる。
【0024】
次に、コイルの個数:永久磁石の個数=2:1とし、可動子4aに一つの中央部永久磁石3cを配置する例について説明する。筒状のロッド14の中央部には円柱状の一つの中央部永久磁石3cが配置される。中央部永久磁石3cは軸線方向に着磁され、すなわちその両端部がN極及びS極に着磁されている。中央部永久磁石3cの軸線方向の長さLM3は、第一及び第二のコイル1a,1bの外法LC3よりも短ければよく、この例では内法LC2の長さよりも短く設定される。このため、中央部永久磁石3cを第一及び第二のコイル1a,1bの中心に配置した状態で、中央部永久磁石3cの軸線方向の外側に第一のコイル1a及び第二のコイル1bが配置される。中央部永久磁石3cの軸線方向の長さは各コイル1a,1bの軸線方向の長さよりも短く設定される。第一及び第二のコイル1a,1bと中央部永久磁石3cとの位置関係は、可動子4aが軸線方向の一端まで移動すると、中央部永久磁石3cの一方の磁極が第一及び第二のコイル1a,1bの一方に入り、可動子4aが軸線方向の他端まで移動すると、中央部永久磁石3cの他方の磁極が第一及び第二のコイル1a,1bの他方に入る関係にある。
【0025】
第一及び第二のコイル1a,1bと中央部永久磁石3cをこのような位置関係で配列し、第一及び第一のコイル1a,1bに位相を一致させた交流を流すと、可動子4aが振動する。
【0026】
コイルの個数:永久磁石の個数=2:3とし、可動子4cに三つの永久磁石が配置されるタイプの可動子4cにおいて、ロッド14の左右両側には円柱状の第一及び第二の永久磁石3a,3bが配置され、ロッド14の中央には円柱状の中央部永久磁石3cが配置される。第一及び第二の永久磁石3a,3bの位置、長さ及び磁極は、上記第一及び第二の永久磁石3a,3bが配置されるタイプの可動子4bと同一である。中央部永久磁石3cの位置、長さ及び磁極は、上記一つの中央部永久磁石3が配置されるタイプの可動子4aと同一である。
【0027】
図2は、コイルの個数:永久磁石の個数=2:2にしたときの、可動子4bの動作原理図を示す。この例では、第一及び第二のコイル1a,1bには、同一の位相の交流が流され、第一及び第二のコイル1a,1bの両端部には、左側から順番に例えばN,S,N,Sの磁極が形成される。第一及び第二の永久磁石3a,3bは、同極が対向するように、左側から順番に例えばS,N,N,Sが形成される。第一のコイル1aの両端部には、NS→ns→SN→sn→NSの順番に磁極が形成される。第二のコイル1bの両端部には、NS→ns→SN→sn→NSの順番に磁極が形成される。ここで、大文字の磁極の磁場は小文字の磁極の磁場よりも強いことを表す。
【0028】
第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向の中心と第一及び第二の永久磁石3a,3bの軸線方向の中心とをほぼ一致させた状態(可動子4bをストロークの中心に配置した状態)で、第一及び第二のコイル1a,1bに同一の位相の交流を流すと、第一のコイル1aの左側に配置される第一の永久磁石3aが第一のコイル1aに反発する。そして、第二のコイル1bの右側に配置される第二の永久磁石3bが第二のコイル1bに吸引される。このため、可動子4bが図中左方向に移動する(S1)。第二の永久磁石3bが第二のコイル1b内に入った状態(S2)で、第二のコイル1bに流れる電流を反転させると、第二の永久磁石3bには第二のコイル1bから大きな反発力が作用し、可動子4bが図中右方向に移動する(S3)。可動子4bがストロークの中心を通過するとき、可動子4bには図中右方向の推力が作用する。第一の永久磁石3aが第一のコイル1a内に入った段階(S4)で第一のコイル1aに流れる電流を反転させると、第一の永久磁石3aには第一のコイル1aから大きな反発力が作用し、可動子4bが図中左方向に移動する(S5)。そして、可動子4bはストロークの中心に戻る。
【0029】
第一の永久磁石3a及び第一のコイル1aから構成される第一のモータ、並びに第二の永久磁石3b及び第二のコイル1bから構成される第二のモータを、互いに向かい合わせ、押し合いながら動作するようにしているので、第一及び第二のモータはそれぞれが自己完結している。このため、第一の永久磁石3a及び第一のコイル1aのN・Sの向きが反対であってもよく、また第二の永久磁石3b及び第二のコイル1bのN・Sの向きも反対であってもよい。
【0030】
図3は、コイルの個数:永久磁石の個数=2:1のときの、可動子4aの動作原理図を示す。第一及び第二のコイル1a,1bには、同一の位相の交流が流される。第一及び第二のコイル1a,1bそれぞれの両端部には、同極が向かい合うように磁極が形成される。すなわち、第一及び第二のコイル1a,1bには、第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向の中心を境にしてN極及びS極が対称に形成される。第一のコイル1aの両端部には、SN→sn→NS→ns→SNの順番に磁極が形成される。第二のコイル1bの両端部には、NS→ns→SN→sn→NSの順番に磁極が形成される。ここで、大文字の磁極の磁場は小文字の磁極の磁場よりも強いことを表す。
【0031】
中央部永久磁石3cは、第一のコイル1a及び第二のコイル1bが発する磁場内に配置されている。可動子4aの中央部永久磁石3cを第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向の中心に位置させた状態で、第一及び第二のコイル1a,1bに同一の位相の交流を流すと、中央部永久磁石3cは第一のコイル1aに吸引され、かつ第二のコイル1bに反発し、図中左方向に移動する(S1)。左方向に移動した中央部永久磁石3cは、さらに第一のコイル1aに吸引され、第一のコイル1a内に入る(S2)。中央部永久磁石3cが第一のコイル1aに入った段階で第一のコイル1aに流れる電流の方向を反転させると、第一のコイル1aから中央部永久磁石3cに大きな反発力が作用し、可動子4aは図中右方向に移動する(S3)。ストロークの中心まで移動した後、第二のコイル1bの吸引力によって第二のコイル1b内に入る(S4)。第二のコイル1bに流れる電流の方向を反転させると、第二のコイル1bから永久磁石に大きな反発力が作用し、永久磁石3cは図中左方向に移動する(S5)。この繰り返しにより可動子4aが振動する。
【0032】
図4は、本発明のダブルコイルタイプのリニアモータアクチュエータの第一の実施形態を示す。リニアモータアクチュエータは、第一及び第二のコイル1a,1bを有する固定子2と、第一及び第二の永久磁石3a,3bを有する可動子4と、を備える。コイルの個数と永久磁石の個数との比は2:2である。
【0033】
固定子2の外形をなす円筒形状のケース5内には、二つの環状のコイル1a,1bが軸線を一致した状態で収納される。ケース5は磁性体であっても非磁性体であってもよい。ケース5を磁性体にすると、第一及び第二の永久磁石3a,3bから発生する磁束がケース5に導かれ、当該磁束が第一及び第二のコイル1a,1bに直交し易くなるので、可動子4に大きな推力を働かせることができる。各コイル1a,1bは両端にフランジを有する筒状のボビン6に巻かれる。ボビン6間には、第一及び第二のコイル1a,1b間に間隔を空けるための非磁性体のスペーサ7が介在される。第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向のコイル長さは実質的に同一である。
【0034】
第一及び第二のコイル1a,1bがコイルユニットを構成する。コイルユニットの軸線方向の外側には、可動子4が直線運動するのを案内する案内手段として二つのリニアブッシュ8が設けられる。各リニアブッシュ8は、止め輪9によってカラー10に固定される。カラー10はケース5の軸線方向の両端部に固定される。一対のリニアブッシュ8の軸線方向の外側には、復帰用永久磁石として、リング形状の一対の反発磁石12a,12bが設けられる。この反発磁石12a,12bは、後述する可動子4の外側永久磁石13a,13bと反発し合う。このため、外部からの力がかかっていないとき、可動子4がストロークの中央の原点で、すなわち可動子4が第一及び第二のコイル1a,1bの軸線方向の中心位置でバランスがとれるようになる。また、反発磁石12a,12bを設けることで、電源をオフにしたときに可動子4が固定子2から抜け落ちるのを防止することができる。特に可動子4を縦に向けて使用するときに有効である。可動子4を原点からずれた所定位置で止めたいときには、左右の反発磁石12a,12bの磁力の大きさを異ならせればよい。
【0035】
図5は、ケース5内に収容されるスペーサ7、コイル1a,1b、リニアブッシュ8及びカラー10の分解図を示す。一対のコイル1a,1b、一対のリニアブッシュ8は、スペーサ7を中心として左右対称に配列される。
【0036】
図4に示すように、可動子4は、パイプ状のロッド14と、ロッド14内に収容される二つの永久磁石3a,3bと、を備える。ロッド14は合成樹脂等の非磁性材料からなる。ロッド14はリニアブッシュ8に支持されていて、ロッド14とボビン6との間には環状の僅かな磁気的なすきまが空く。
【0037】
ロッド14内には、第一及び第二の永久磁石3a,3bがスペーサ15を介して配置される。第一及び第二の永久磁石3a,3bの磁極(N極及びS極)は、ロッド14の軸線方向に一列に配列される。第一及び第二の永久磁石3a,3bは、同極(この実施形態ではS極)が対向するように配置される。第一及び第二の永久磁石3a,3bの軸線方向の長さは実質的に同一である。各コイル1a,1bの軸線方向の長さは各永久磁石3a,3bの軸線方向の長さよりも長い。第一及び第二の永久磁石3a,3bの外側の磁極間ピッチ(N極−N極間ピッチ)は、好ましくは第一及び第二のコイルのコイル中心間ピッチよりもコイル長の1/8〜3/8倍程度長い。
【0038】
図6に示すように、この実施形態では、第一及び第二のコイル1a,1bの中心間の距離LC1と二つの永久磁石3a,3bの外側の磁極間の距離LM2とのずれ量L3は、コイル長さL4の1/4(1/4波長)に設定される。例えばコイル長さが10mm、永久磁石長さが6mm、コイル間のスペーサ長さが6mmのとき、第一及び第二のコイル1a,1bの中心を結んだ距離L1は、LC1=5+6+5=16mmになる。二つの永久磁石3a,3bの外側の磁極間の距離LM2は、コイル長さL4の1/4だけ長い必要があるので、LM2=16+10/4=18.5になる。LC1とLM2のずれ量はコイル長さの1/4に限られることはなく、好ましくはコイル長さの1/8〜3/8の範囲にあればよい。可動子4がストロークの一端に移動するとき、第一の永久磁石3aの磁極(この例ではN極)が第一のコイル1aの軸線方向の中心に近付き、第二の永久磁石3bの磁極(この例ではN極)が第二のコイル1bの軸線方向の中心から遠ざかる。可動子4がストロークの他端に移動するとき、第二の永久磁石3bの磁極(この例ではN極)が第二のコイル1bの軸線方向の中心に近付き、第一の永久磁石3aの磁極(この例ではN極)が第一のコイル1aの軸線方向の中心から遠ざかる。
【0039】
図4に示すように、反発する二つの永久磁石3a,3b間には、スペーサ15が介在される。スペーサ15を介在させることで、スペーサ15から放射状に第一及び第二のコイル1a,1bに作用する磁力線を形成することができる。スペーサ15には、樹脂等の非磁性材料、鉄等の磁性材料のいずれが用いられてもよい。スペーサ15に磁性材料を使用すれば、磁気抵抗が少なくなるのでより多数の磁力線を形成することが可能になる。
【0040】
二つの永久磁石3a,3bの外側には、第三及び第四の永久磁石13a,13bが配置される。第三及び第四の永久磁石13a,13bは、第一及び第二の永久磁石3a,3bに対して同極が対向するように配置される。この実施形態では、第一及び第二の永久磁石3a,3bのN極に第三及び第四の永久磁石のN極が対向している。第一及び第二の永久磁石3a,3bと第三及び第四の永久磁石13a,13bとの間には、反発系の磁力線を形成し易くするためのスペーサ16が介在される。第三及び第四の永久磁石13a,13bを配置することにより、第一及び第二の永久磁石3a,3bの外側の磁極(N極)が発する磁界を強めることができ、可動子4を力強く振動させることができる。
【0041】
第三及び第四の永久磁石13a,13bの軸線方向の長さは、第一及び第二の永久磁石3a,3bの軸線方向の長さよりも長い。外側永久磁石13a,13bの一軸方向の長さを長くすればするほど、二つの永久磁石3a,3bの外側の磁極(N極)に発生する磁界を強めることができ、可動子4を力強く振動させることができる。
【0042】
可動子4のロッド14の両端部は二つの蓋部材17によって塞がれる。二つの蓋部材17は、ロッド14の両端部に固定され、永久磁石3a,3b及び外側永久磁石13a,13bを挟む。
【0043】
図7は、固定子2から可動子4を引き抜いた状態を示す。可動子4と固定子2とは板ばね等の弾性体で連結されておらず、可動子4の一軸方向への直線運動は固定子2のリニアブッシュ8によって案内されるだけである。可動子4を一軸方向へ引き出すと、固定子2から可動子4を完全に分離することが可能になる。
【0044】
図8は可動子4を案内するリニアブッシュ8の斜視図を示し、図9はリニアブッシュ8の断面図を示す。リニアブッシュ8は、金属製の外筒21と、外筒21の内周面を転がり運動する多数のボール22と、多数のボール22を一定の間隔に保持する保持器23と、を備える。固定子2に対して可動子4が移動するのに伴い、多数のボール22が外筒21の内周面と可動子4の外周面との間を転がり運動する。保持器23は円筒形状に形成されると共に、その内周から外周まで貫通する多数の孔23aを有する。この多数の孔23aに多数のボール22が回転可能に保持される。保持器23の軸線方向の長さは、外筒21の軸線方向の長さよりも短い。保持器23は多数のボール22と共に外筒21内を有限ストロークする。
【0045】
リニアブッシュ8を使用することにより、固定子2に対する可動子4の一軸方向の滑らかな直線運動が可能になり、一軸方向以外には高剛性の構造体が実現できる。従来のボイスコイルモータのように可動子4と固定子2を板ばね等の弾性体で連結する必要がないので、ラインナップの容易化、メンテナンスの容易化が可能になる。
【0046】
また、多数のボール22の間隔を一定に保つ保持器23を設けることにより、コイル1a,1bや永久磁石3a,3bの磁力によりボール22同士が吸引するという問題を解決できる。ボール22は磁性体でも非磁性体でもよい。ボール22に磁性体を用いた場合、保持器23のないリニアブッシュ8を使用すると、磁力でボール22同士が吸引し合うので、寿命低下、精度低下、発熱等の問題が起こりうる。ボール22を樹脂、セラミックス等の非磁性体にすれば、ボール22同士が吸引するのを防止できる。
【0047】
リニアブッシュの替わりにボールスプラインを使用すれば、可動子4の回り止めも可能になる。ボールスプラインのボールは磁性体でも非磁性体でもよい。
【0048】
図10ないし図12は、第一及び第二のコイル1a,1bの結線図を示す。図10及び図11は第一及び第二のコイル1a,1bを並列に接続した例を示し、図12は直列に接続した例を示す。図10は、第一及び第二のコイル1a,1bの向かい合う側が同一の極になるように結線された反発系を示し、図11は、第一及び第二のコイル1a,1bの向かい合う側が反対の極になるように結線された吸引系を示す。反発系の配線にしても吸引系の配線にしても、可動子4を振動させることは可能である。
【0049】
図10に示すように、第一及び第二のコイル1a,1bには、交流電源19から図中実線で示す単相交流が流される。第一及び第二のコイル1a,1bに単相交流を流すことによって、可動子4が軸線方向に移動する。可動子4が移動すると、第一の永久磁石3aが発する磁力線が第一のコイル1aを所定の速度で横切り、第二の永久磁石3bが発する磁力線が第二のコイル1bを所定の速度で横切る。このため、第一及び第二のコイル1a,1bには逆起電力が発生する。例えば、可動子4が図中右方向に移動するとき、第一及び第二のコイル1a,1bの両端部には、可動子4の右方向への移動を妨げるような磁極が発生する。この電磁誘導により、第一及び第二のコイル1a,1bには、図中破線で示す逆起電力が発生する。
【0050】
図13は、可動子4を移動させたときに各コイル1a,1bに発生する逆起電力を示す。上述のように、第一及び第二のコイル1a,1bの中心間のピッチと第一及び第二の永久磁石3a,3bの外側の磁極間のピッチは、コイル長さの1/4ずれている。このため、可動子4を移動させたとき、第一及び第二のコイル1a,1bには、90度位相がずれた正弦波状の逆起電力が発生する。第一及び第二のコイル1a,1bの全体に発生する逆起電力は、各コイル1a,1bに発生する逆起電力を合算したものになるので、90度位相をずらすことにより、各コイル1a,1bが発する逆起電力が互いに打ち消し合う。逆起電力の合算値は、各コイルに発生する逆起電力の2倍未満(90度位相がずれたときは√2倍)になる。もし、逆起電力が大きくなると、第一及び第二のコイル1a,1bに流れる電流が減るので、可動子を高速で振動させることができなくなる。本実施形態のように、逆起電力を低減することにより、可動子4を高速で振動させることが可能になる。
【0051】
図14は、動作中の可動子4に働く推力ベクトル、すなわち遅れ角を考慮した推力ベクトルを示す。第一及び第二のコイル1a,1bに位相を一致させた交流を流すと、第一のコイル1aに流れる電流と第一の永久磁石3aの外側の磁極の磁界との相互作用により、可動子4の軸線方向の推力が働く。また第二のコイル1bと第二の永久磁石3bの外側の磁極との間にも、第二のコイル1bに流れる電流と第二の永久磁石3bの外側の磁極の磁界との相互作用により、可動子4の軸線方向の推力が働く。これらの推力が第一及び第二のコイル1a,1bに発生する推力である。モータの場合、推力は遅れ角(=指令角−出力角)が原因で発生する。すなわち、第一及び第二のコイル1a,1bに指令sinωtを入力したとすると、可動子4の出力はsin(ωt+θ)のように角度θの分だけ遅れており、この遅れ角が推力に変換される。
【0052】
図14に示すように、図中NSの文字の大きさは、コイルに発生する磁界の大きさを表す。第一及び第二のコイル1a,1bに所定の周波数の交流を流すと、可動子も同じ周波数で振動する。しかし、駆動周波数にもよるが、可動子の位相は静止状態の位相(図15参照)に比較して、位相角で30〜60度遅れていることが計測で確認されている。図14には、可動子の位置を8つの状態(45度ずつ)に分けた状態が示されている。図14の動作状態の可動子の位相は、図15に示す静止状態の可動子の位相よりも一段階遅れている。
【0053】
図14に示すように、可動子4が原点に位置するとき、第一及び第二のコイル1a,1bから第一及び第二の永久磁石3a,3bには、左方向の推力が発生する(S1)。このため、可動子4は左方向に移動する。可動子4が左方向に移動している間、第一の永久磁石3aが第一のコイル1a内に入っている量、第二の永久磁石3bが第二のコイル1b内に入っている量が変化し、可動子4に与えられる推力の大きさも変化する(S2)。可動子4がストロークの左端まで移動したとき、可動子4には右方向の推力が与えられる。可動子4には第一及び第二のコイル1a,1bからだけでなく、反発磁石12aからも右方向の推力が与えられる。これにより、可動子4は移動方向を反転させ、右方向に移動し始める(S3)。可動子4が右方向に移動し始めた後に、第一及び第二のコイル1a,1bに流れる電流が瞬間的に零になる(S4)。その後、第一及び第二のコイル1a,1bに流れる電流が反転し、第一及び第二のコイル1bから第一及び第二の永久磁石3a,3bに右方向の推力が与えられる(S5)。S5の可動子4に与えられる推力の大きさはS1のときの推力と同一である。その後、可動子4が右方向に移動する。可動子4が右方向に移動している間、第一及び第二の永久磁石3a,3bが第一及び第二のコイル1a,1b内に入っている量が変化し、可動子4に与えられる推力の大きさも変化する(S6)。可動子4がストロークの右端まで移動したとき、可動子4には左方向の推力が与えられる(S7)。可動子4が移動方向を反転させた後に第一及び第二のコイル1a,1bから可動子4に与えられ推力は零になる(S8)。第一及び第二のコイル1a,1bに交流を流し続ける限り、可動子4も同じ周期で振動し続ける。
【0054】
図15は、可動子の静止状態の推力ベクトル図を示す。第一及び第二のコイル1a,1bに一定の大きさの直流を流したと仮定すると、可動子4は第一及び第二のコイル1a,1bに発生する推力がバランスする点で静止する。そして、第一及び第二のコイル1a,1bに流れる電流を変化させると、可動子4は第一及び第二のコイル1a,1bに発生する推力がバランスする点で静止する。このことから、本実施形態のリニアモータアクチュエータは、振動アクチュエータだけでなく、一軸方向に移動する可動子4の位置を制御するアクチュエータとしても使用できることがわかる。第一及び第二のコイル1a,1bの中心間ピッチに対して第一及び第二の永久磁石3a,3bの磁極のピッチをずらし、可動子4に二つの推力ベクトルを作用させることによって、可動子4の位置制御が可能になる。なお、反発磁石12a,12bも可動子4の静止する位置を左右する。
【0055】
図16及び図17は、本発明のダブルコイルタイプのリニアモータアクチュエータの第二の実施形態を示す。第一及び第二のコイル31a,31b間に反発磁石38を配置した点、第一及び第二の永久磁石39a,39bの磁極間ピッチL2を第一及び第二のコイル31a,31bの中心間ピッチL1よりも長くした点(図17参照)が上記第一の実施形態のリニアモータアクチュエータと異なる。その他の構成は上記第一の実施形態のリニアモータアクチュエータと同一である。
【0056】
固定子32には、軸線を一致させた状態で第一及び第二のコイル31a,31bが配列される。第一及び第二のコイル31a,31b間には、可動子34の永久磁石39a,39bと反発し、可動子34をストロークのほぼ中央に戻すリング状の反発磁石38が設けられる。反発磁石38の軸線方向の両端部はN極及びS極に着磁される。この反発磁石38はコイル31a,31b間の間隔を空けるためのスペーサの役割も持つ。第一及び第二のコイル31a,31bから構成されるコイルユニットの外側には、スペーサ35及びカラー36を介して直動軸受37が設けられる。直動軸受37はブッシュやスプラインであり、可動子34が直線運動するのを案内する。
【0057】
第一及び第二のコイル31a,31b間に一つの反発磁石38を設けることで、反発磁石38の個数を減らすことができる。また図18に示すように、推力を上げるためにコイルユニットを複数並べた場合、モジュール化した第一のコイル31a、反発磁石38及び第二のコイル31bを軸線方向に順番に並べればよいので有利になる。さらにコイルユニットの外側に反発磁石が配置されることがないので、外部の鉄部品に反発磁石が吸引されるおそれもなくなる。
【0058】
図17に示すように、可動子34には、第一及び第二の永久磁石39a,39bが軸線方向に間隔を空けて配列される。第一及び第二の永久磁石39a,39bは向かい合う側が異極になるように例えば左側からS極、N極,S極、N極になるように配列される。第一及び第二の永久磁石39a,39bから構成される永久磁石ユニットの軸線方向の両端部は、第一及び第二のコイル31a,31bから構成されるコイルユニットの軸線方向の両端部から飛び出している。
【0059】
図17の下段に示すように、可動子34には一つの中央部永久磁石41を配置してもよい。この中央部永久磁石41の軸線方向の長さは、第一及び第二のコイル31a,31bの内側の距離よりも長く、外側の距離よりも短く設定される。中央部永久磁石41の両端部には、円錐形の鉄等の磁性材料42を配置してもよい。こうすると、中央部永久磁石41の両端部の磁力線が滑らかに減るので、可動子34のストロークを長くしたり、可動子34の動きを滑らかにしたりすることが可能になる。
【0060】
図19は、第一及び第二のコイル31a,31bの外側を鉄等の磁性材料からなる筒状のヨーク43で囲んだ例を示す。ヨーク43には、コイルユニットの軸線方向の両端部を覆う端部壁43aが設けられる。このヨーク43により、磁石ユニットの軸線方向の両端部からヨーク43を通って反発磁石38に向かう磁気回路44が形成されるので、吸引力がより強くなり、可動子34を力強く振動させることができる。
【0061】
図20は、本発明の第三の実施形態のリニアモータアクチュエータ(トリプルコイルタイプ)を示す。固定子50が第一及び第二のコイル51a,51bを有する点、可動子56が第一ないし第四の永久磁石53a,53b,54a,54bを有する点は、第一の実施形態のリニアモータアクチュエータと同一である。固定子50の第一及び第二のコイル51a,51bの間に反発磁石として一対のリング磁石55a,55bを配置している点、及び固定子50の第一及び第二のコイル51a,51bの間にさらに第三のコイル52を配置している点が、第一の実施形態のリニアモータアクチュエータと異なる。
【0062】
一対のリング磁石55a,55bそれぞれは、第一の永久磁石53a又は第二の永久磁石53bを囲む。一対のリング磁石55a,55bそれぞれの軸線方向の長さは、第一及び第二の永久磁石53a,53bの軸線方向の長さよりも短い。可動子56がストロークの中心に位置するとき、一方のリング磁石55aは第一の永久磁石53aの軸線方向の長さの範囲内に位置し、他方のリング磁石55bは第二の永久磁石53bの軸線方向の長さの範囲内に位置する。ただし、一対のリング磁石55a,55bそれぞれの中心は、第一及び第二の永久磁石53a,53bぞれぞれの中心から所定のシフト量ずれている(図23参照)。
【0063】
固定子50の第一及び第二のコイルの51a,51b外側には、スペーサ57、カラー58を介してスプラインナット59及びボールブッシュ60が取り付けられる。可動子56のロッド61の一方の端部には、スプライン溝が形成されるスプラインシャフト62が取り付けられ、他方の端部には、断面が円形状のブッシュ用シャフト63が取り付けられる。スプラインシャフト62及びスプラインナット59は、可動子56を回り止めさせる機能を持つ。ボール同士の接触を防止するために、スプラインナット59及びボールブッシュ60には、ケージが組み込まれる。
【0064】
図21は、一対のリング磁石55a,55bと第一及び第二の永久磁石53a,53bとの位置関係を示す斜視図である。円盤状のリング磁石55a,55bには、軸線方向にS極及びN極が着磁される。第一及び第二の永久磁石53a,53bにも、軸線方向にS極及びN極が着磁される。リング磁石55a,55bのN極S極と第一及び第二の永久磁石53a,53bのN極S極の向きを反対にすると、第一及び第二の永久磁石53a,53bはその軸線方向の中心がリング磁石55a,55bの軸線方向の中心に位置する。
【0065】
図22(a)に示すように、第一及び第二の永久磁石53a,53bをリング磁石55a,55bの中心から左側に移動させると、第一及び第二の永久磁石53a,53bには右方向に復元力が働く。図22(b)に示すように、第一及び第二の永久磁石53a,53bの中心がリング磁石55a,55bの中心に一致すると、バランス状態になり、第一及び第二の永久磁石53a,53bはそのままの位置を保とうとする。図22(c)に示すように、第一及び第二の永久磁石53a,53bをリング磁石55a,55bの中心から右側に移動させると、第一及び第二の永久磁石53a,53bには左方向に復元力が働く。リング磁石55a,55bの軸線方向の両方の磁極を復元する力に利用しているので、体積効率(復元力/体積)を高くすることができる。
【0066】
図23に示すように、一対のリング磁石55a,55bそれぞれの中心を第一及び第二の永久磁石53a,53bそれぞれの中心からずらすことにより、可動子56がストロークの中心に位置するときに予圧がかかった状態にすることができる。図24は、可動子56の位置と可動子56に発生する復元力(発生力)との関係を示す。可動子56に働く復元力は、第一の永久磁石53aに働く復元力と第二の永久磁石53bに働く復元力を合算したものになる。合算することにより、原点付近でも変位に比例した復元力を働かせることができるので、可動子56を原点に戻し易くなることがわかる。また、図23に示すように、一対のリング磁石55a,55bを固定子50の第一及び第二のコイル51a,51bの内側に配置することで、一対のリング磁石55a,55bから外部に磁気が漏れ、異物が吸着される危険性を低減することができる。
【0067】
第一及び第二のコイル間51a,51bに介在される第三のコイル52について説明する。図20に示すように、第一及び第二のコイル51a,51bの間であって、かつ一対のリング磁石55a,55bの間には、第三のコイル52が配置される。一対のリング磁石55a,55bは、同極同士が向かい合うように固定子50に配列されている。
【0068】
図25は、第三のコイル52の両端部に形成される磁極の変化を示す。この図に示すように、第三のコイル52には、第一及び第二のコイル51a,51bと同一位相の交流が流される。第三のコイル52の巻き方向は第一及び第二のコイル51a,51bの巻き方向と反対であり、第三のコイル52の軸線方向の両端部には、第一及び第二のコイル51a,51bとは反対の磁極が形成される。第三のコイル52の巻き方向を第一及び第二のコイル51a,51bの巻き方向と同一にし、逆方向から通電しても第三のコイル52に逆の磁極を形成することができる。第一ないし第三のコイル51a,51b,52に同一の位相の交流を流すと、各コイルの軸線方向の両端部には、図中各ボビン内磁界分布で示すN極及びS極が形成される。固定子全体でみた場合、水平線のハッチングで示す部分の磁界が打ち消し合い、斜線のハッチングで示す部分の磁界が強め合う。このため、コイル51a,51b,52とリング磁石55a,55bの出力が同じだと仮定すると、固定子50全体の磁界の強度は図中固定子内磁界分布に示す状態になる。この固定子内磁界分布により、図25中(a)に示すように、可動子56が左端に移動したときは、可動子56には右方向に復元力が働き、図中(c)に示すように、可動子56が右端に移動したときは、可動子56に左方向に移動させる復元力が働く。第一及び第二のコイル51a,51bの間に第三のコイル52を介在することで、さらに力強く、かつ大きな振幅で可動子56を振動させることができることがわかる。
【0069】
図26は、第一ないし第三のコイルの出力を示す。図中(a)は第一及び第二のコイル51a,51bの出力を示す。この例では、第一及び第二のコイル51a,51bの出力の位相は互いにπ/4ずれている。このため、第一及び第二のコイル51a,51bの出力を合算した値は、第一のコイル51a単独の出力の1.8倍になる。図中(b)は第三のコイル52の出力を示す。第三のコイル52の出力を第一のコイル51aの出力の1.8倍にすることにより、第一及び第二のコイル51a,51bの合算の出力の大きさと第三のコイル52の出力の大きさを一致させることができる。大きさを一致させることで、図中(c)に示すように、第一ないし第三のコイルの合算した出力をきれいな正弦波に近付けることができる。このため、可動子56の時間−変位曲線もきれいな正弦波に近付けることができる。なお、ステレオアンプを使用し、第一及び第二のコイル51a,51bの出力に対して第三のコイル52の出力に位相差を設け、出力のピークを合わせるようにすれば、より効率のよい出力が可能になる。
【0070】
ここで、第三のコイル52の出力を第一のコイル51aの出力の1.8倍にするためには、第三のコイル52のアンペア・ターンを第一のコイル51aの1.8倍にすればよい。すなわち、第三のコイル52に流す電流×巻き数=第一のコイル51aに流す電流×巻き数×1.8にすればよい。
【0071】
例えばコイルに10Vの電圧をかけた場合の出力は、
第三のコイル=1500[T]×111[mA]=166.5[AT]
第一のコイル=第二のコイル=2400[T]×45[mA]=108.0[AT]
出力比(=アンペアターン比)で考えると、166.5/108.0=1.54≒1.8
1.54と1.8の差は、計算上、第一及び第二のコイル51a,51bのインダクタンスを考慮していないために生じている。実際の第一及び第二のコイル51a,51bの出力は108.0[AT]より低い。第三のコイル52に逆の結線をしたところ、上記の出力比で可動子56が動かなかったので、第三のコイル52の出力が第一及び第二のコイル51a,51bの合算した出力とほぼ等しくなることが確認できた。
【0072】
可動子56を振動させる原理上、第一及び第二のコイル51a,51bの中心間ピッチと磁極間ピッチをずらす必要がある。このことから、第一及び第二のコイル51a,51b間には空隙が空き易い。第一及び第二のコイル51a,51b間に第三のコイル52を配置することで、無駄なスペースを減らすことができ、また体積効率(出力/堆積)を上げることができる。さらに、第三のコイル52の出力を第一及び第二のコイル51a,51bの出力よりも大きくすることで、上述のように第一ないし第三のコイル51a,51b,52を合算した出力を正弦波に近付けることができる。
【0073】
図27は、固定子61に一つのみのコイル63を設けたシングルコイルタイプのリニアモータアクチュエータの基本構成を示す。コイル63内の空間を可動子4が貫通する。一つのコイル63の軸線は可動子62の振動に一致する。コイル63の軸線方向の両側には、スペーサ64及びカラー65を介して直動軸受66が設けられる。直動軸受66ブッシュやスプラインであり、可動子62が直線運動するのを案内する。コイル63、スペーサ64、カラー65、直動軸受66は固定子61の円筒状のヨーク内に収容される。
【0074】
可動子62は、パイプ状のロッド68と、ロッド68内に間隔を空けて配置される第一及び第二の永久磁石67a,67bと、を備える。コイル63の個数と永久磁石67a,67bの個数との比は1:2である。第一及び第二の永久磁石67a,67bそれぞれの軸線方向の両端部はN極及びS極に着磁されていて、同極同士(N極同士又はS極同士)が対向するように配列される。第一及び第二の永久磁石67a,67bの内側の距離L4はコイル63の軸線方向の長さL3よりも長い。このため、コイル63の軸線方向の外側に第一及び第二の永久磁石67a,67bが配置される。なお、第一及び第二の永久磁石67a,67bから構成される永久磁石ユニットの軸線方向の一方の端部から他方の端部までの長さL5は、コイル63の軸線方向の長さよりも長ければよく、第一及び第二の永久磁石67a,67bの内側がコイル63の軸線方向の両端部内に入っていてもよい。各永久磁石67a,67bの軸線方向の長さはコイル63の軸線方向の長さよりも短い。コイル63と第一及び第二の永久磁石67a,67bとの位置関係は、可動子62が軸線方向の一端まで移動すると、第一及び第二の永久磁石67a,67bの一方がコイル63内に入り、可動子62が軸線方向の他端まで移動すると、第一及び第二の永久磁石67a,67bの他方がコイル63内に入るという関係にある。
【0075】
コイル63に単相交流を流すと、コイル63の両端部には、SN→sn→NS→ns→SNの順番に磁極が形成される。例えばコイル63の左端部にS極が右端部にN極が形成された場合、コイル63と第一の永久磁石67aが吸引し合い、コイル63と第二の永久磁石67bとが反発し合う。このため、可動子62は図中右方向に移動する。可動子62の図中右方向への移動に伴い、第一の永久磁石67aがコイル63の中に入る。第一の永久磁石67aがコイル63の中に入った段階で、コイル63に流れる電流の方向を反転させると、第一の永久磁石67aとコイル63とが大きな力で反発し合う。このため、可動子62の移動方向が反転し、図中左方向に移動する。可動子62がストロークの中心を過ぎると、コイル63と第二の永久磁石67bとが吸引し合い、第二の永久磁石67bがコイル63の中に入る。この状態で再びコイル63に流れる電流の方向を反転させると、第二の永久磁石67bとコイル63とが大きな力で反発し合うので、可動子62の移動方向が再び反転する。この繰り返しにより可動子62が振動する。
【0076】
コイル63の軸線方向の両端部に、第一及び第二の永久磁石67a,67bを囲み、コイル63に電流を流していない時に、可動子62をストロークの中心に復帰させる一対のリング磁石を配置してもよい。一対のリング磁石の配置及び磁極の向きは、図23及び図25の第三のコイル52の両端部に配置される一対のリング磁石55a,55bと同一にすればよい。一対のリング磁石55a,55bを配置すれば、可動子62を原点に復帰させることができるだけでなく、可動子62を力強く振動させることもできる。
【0077】
本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更可能である。
【0078】
固定子の第一及び第二のコイルに発生させる推力の位相をずらすために、固定子の第一及び第二のコイルに位相を異ならせた交流を流し、第一及び第二のコイルの軸線方向の中心を結んだコイル中心間ピッチと可動子の磁極間ピッチとを一致させてもよい。可動子には一つ以上の永久磁石があればよく、上記第一の実施形態と同様に第一ないし第四の永久磁石を設けてもよい。
【0079】
また、固定子の第一及び第二のコイルに発生させる推力の位相をずらすために、固定子の第一及び第二のコイルに位相を異ならせた交流を流し、第一及び第二のコイルの軸線方向の中心を結んだコイル中心間ピッチと可動子の磁極間ピッチとを異ならせてもよい。可動子には一つ以上の永久磁石があればよく、上記第一の実施形態と同様に第一ないし第四の永久磁石を設けてもよい。
【0080】
可動子は水平方向に配置されるのに限られず、垂直方向に配置してもよい。第一及び第二の永久磁石に第一及び第二のコイルから力を作用させることができれば、可動子に重力が働いたとしても、可動子をストロークさせることができる。
【0081】
可動子の慣性が小さいときは、二つの外側永久磁石や反発磁石を省略しても可動子をストロークさせることができる。可動子の慣性が大きいときは固定子と可動子との間に付加的にばねを設けてもよい。
【0082】
可動子を振動させる場合、第一及び第二のコイルに流す電流は、一定の周期ごとに交互に逆向きに流れる交流であればよい。第一及び第二のコイルには正弦波以外に鋸波、三角波、矩形波等の電圧を印加してもよい。
【0083】
さらに、可動子に第一及び第二のコイルを設け、固定子に第一及び第二の永久磁石を設け、コイル側がストロークするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のリニアモータアクチュエータは、高剛性で高速域まで駆動可能であるから、計測機器、技工機器、自動車、医療機器、ロボット、産業機器、民生機器向けアクチュエータ等の多様な技術分野で利用できる。特に基板テスターのチェックピン、ダイボンダ、ポンプ、ハンドツール、カメラのフォーカス等を駆動するのに好適に用いることができる。大型化すれば制振装置として用いることもできる。
【0085】
本発明のリニアモータは、振動数0〜200Hzの範囲で振幅の大きい振動アクチュエータとして好適に用いることができる。エンコーダを用いて第一及び第二のコイルに流す電流を制御すれば、可動子の位置を制御することもできる。
【符号の説明】
【0086】
1a,31a,51a…第一のコイル、1b,31b,51b…第二のコイル、52…第三のコイル、2,32,50,61…固定子、3a,53a,67a…第一の永久磁石、3b,53b,67b…第二の永久磁石、3c,41…中央部永久磁石、4,34,56,62…可動子、12a,12b…一対の反発磁石(復帰用永久磁石)、13a…第三の永久磁石、13b…第四の永久磁石、38…リング磁石(復帰用永久磁石)、55a,55b…一対のリング磁石(復帰用永久磁石)、61…コイル

図1
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図27