(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被塗布物に前記液体を放出する複数のノズルを備え、前記ノズルは前記被塗布物に対向する面において千鳥状に配列されている、請求項1又は2に記載の静電塗布装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗布液を被塗布物の所望の箇所に選択的に塗布するためには、ノズルの動作を制御することや、塗布物にマスキングをすることが行われている。しかし、ノズルの動作を制御するためには、電源回路及びリレースイッチ等の複雑な電気制御回路を必要とする。また、塗布物にマスキングをすることは、マスクの配置及び除去の工程が必要となる。そのため、より容易に塗布液を被塗布物の所望の箇所に選択的に塗布することが望まれている。
【0005】
本発明は上記課題を考慮してなされたものであり、より容易に液体を被塗布物の所望の箇所に選択的に塗布することができる静電塗布装置及び静電塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被塗布物に液体を放出するノズルと、ノズルと対向するように配置され、被塗布物を支持する対向電極と、ノズルと対向電極との間に電圧を印加する電源と、液体に磁場を印加することにより液体の運動を制御する磁場印加部とを備えた静電塗布装置である。
【0007】
この構成によれば、被塗布物に液体を放出するノズルと、ノズルと対向するように配置され、被塗布物を支持する対向電極と、ノズルと対向電極との間に電圧を印加する電源とを備えた静電塗布装置において、液体に磁場を印加することにより液体の運動を制御する磁場印加部をさらに備える。磁場による液体の運動の制御は極めて容易であるため、より容易に液体を被塗布物に選択的に塗布することができる。
【0008】
この場合、磁場印加部は、ノズルの中の液体に、ノズルの液体を放出する方向と反対方向の成分を有する磁場を印加することにより、ノズルからの液体の放出を中止させることが好適である。
【0009】
この構成によれば、磁場印加部は、ノズルの中の液体に、ノズルの液体を放出する方向と反対方向の成分を有する磁場を印加することにより、ノズルからの液体の放出を中止させる。これにより、より容易に被塗布物や対向電極の不要な部位に液体が塗布されることを防止することができる。
【0010】
この場合、磁場印加部は、被塗布物及び対向電極のいずれかに配置されているものとできる。
【0011】
この構成によれば、磁場印加部は、被塗布物及び対向電極のいずれかに配置されている。そのため、被塗布物又は対向電極の磁場印加部が配置されている箇所にノズルが位置したときには、ノズルからの液体の放出が中止される。これにより、ノズルを制御しなくとも、容易に被塗布物や対向電極の不要な部位に液体が塗布されることを防止することができる。
【0012】
または、磁場印加部は、ノズルに配置されているものとできる。
【0013】
この構成によれば、磁場印加部は、ノズルに配置されている。このため、ノズルを制御しなくとも、ノズルからの液体の放出を中止されることができ、容易に被塗布物や対向電極の不要な部位に液体が塗布されることを防止することができる。
【0014】
一方、磁場印加部は、ノズルから放出された液体に、ノズルの液体を放出する方向と垂直な成分を有する磁場を印加することにより、液体の方向を制御することが好適である。
【0015】
この構成によれば、磁場印加部は、ノズルから放出された液体に、ノズルの液体を放出する方向と垂直な成分を有する磁場を印加することにより、液体の方向を制御する。これにより液体に作用するローレンツ力によって、より容易に被塗布物に選択的に液体を塗布することができる。
【0016】
この場合、磁場印加部は、被塗布物及び対向電極のいずれかに配置され、液体に磁場印加部から遠ざかる方向への力が働く向きの成分を有する磁場を液体に印加することが好適である。
【0017】
この構成によれば、磁場印加部は、被塗布物及び対向電極のいずれかに配置され、液体に磁場印加部から遠ざかる方向への力が働く向きの成分を有する磁場を液体に印加する。これにより、被塗布物や対向電極の液体の塗布が不要な部位に磁場印加部が配置されることにより、容易に被塗布物や対向電極の不要な部位に液体が塗布されることを防止することができる。
【0018】
また、磁場印加部は、ノズルに配置されていることが好適である。
【0019】
この構成によれば、磁場印加部は、ノズルに配置されている。このため、ノズルを制御しなくとも、ノズルから放出された液体に、液体が放出された方向に垂直な力を与えて、液体の方向を容易に制御することができる。
【0020】
この場合、磁場印加部は、ノズルの液体を放出する方向と垂直な第1の面内に、ノズルから放出された液体を間に挟んで互いに対向する一対の第1のN極の磁極と、ノズルから放出された液体を間に挟んで互いに対向する一対の第1のS極の磁極とを有し、ノズルの液体を放出する方向と垂直な第2の面内に、ノズルから放出された液体を間に挟んで第1のN極の磁極とは異なる方向に互いに対向する一対の第2のN極の磁極と、ノズルから放出された液体を間に挟んで第1のS極の磁極とは異なる方向に互いに対向する一対の第2のS極の磁極とを有し、第1のN極の磁極、第1のS極の磁極、第2のN極の磁極及び第2のS極の磁極のそれぞれから、ノズルから放出された液体に、ノズルの液体を放出する方向と垂直な成分を有する磁場を印加することが好適である。
【0021】
この構成によれば、磁場印加部は、第1のN極の磁極、第1のS極の磁極、第2のN極の磁極及び第2のS極の磁極により形成される2段の4重極磁石を有する。このため、ノズルから放出された液体の方向を変更自在な他に、ノズルから放出された液体を収束及び拡散自在となる。
【0022】
また、被塗布物に液体を放出する複数のノズルを備え、ノズルは被塗布物に対向する面において千鳥状に配列されていることが好適である。
【0023】
複数のノズルを備えた場合は、ノズルから放出される液体の液滴が同じ極性の電荷を帯びるため、複数の液滴が互いに反発し合い、液滴同士の距離が必要以上に拡がってしまうことがある。しかしながら、ノズルそれぞれが被塗布物に対向する面において千鳥状に配列されていることにより、ノズルから放出された複数の液滴が互いに反発し合い、液滴同士の距離が必要以上に拡がってしまうことを防止することができる。
【0024】
また、本発明は、被塗布物に液体を放出するノズルと、ノズルと対向するように配置され、被塗布物を支持する対向電極との間に電源より電圧を印加することにより、塗布物に液体を塗布する静電塗布方法であって、磁場印加部により液体に磁場を印加することにより液体の運動を制御しつつ、塗布物に液体を塗布する静電塗布方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の静電塗布装置及び静電塗布方法によれば、より容易に液体を被塗布物に選択的に塗布することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る静電塗布装置及び静電塗布方法について詳細に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の静電塗布装置100Aは、ノズル部10A、対向電極20、電源装置30、液体供給部40、対向電極移動部50及び磁場印加部60Aを備える。静電塗布装置100Aのノズルを構成するノズル部10Aは、基板SB等の被塗布物に塗布液等の液体を放出する。ノズル部10Aは、例えば、全て又は一部が例えばステンレス等の導電性材料から成り、内面の全て又は一部が導電性の壁で形成されている。ノズル部10Aの先端は、内径が数十〜百μm程度の1本の毛細管とされる。ノズル部10Aの先端の毛細管は電源装置30に接続される。ノズル部10AはラインL1により液体供給部40から塗布液等の液体を供給される。なお、本実施形態では、ノズル部10Aは、液体を放出する複数本の毛細管を備えたものとすることもできる。また、ノズル部10Aの材質は、ガラスであっても良い。
【0029】
対向電極20は、対向電極20はノズル部10Aと対向するように配置されている。対向電極20は、ノズル部10Aと対向する側に平面を有する平板状をなす。対向電極20は、ノズル部10Aと対向する側の平面において基板SB等の被塗布物を支持するステージとなる。対向電極20Aは、ノズル部10Aの液体が放出される軸線の延長線上に配置されている。対向電極20は、ノズル部10Aから離間されている。ノズル部10Aと基板SBとの距離は、特に限定されないが、例えば、10〜60mm程度とすることができる。対向電極20は導電性を有する。対向電極20は電源装置30に接続される。対向電極20は、対向電極移動部50により、基板SBの表面に平行な方向に移動させられる。対向電極20は、アース線38により接地されている。
【0030】
本実施形態では、対向電極20のノズル部10Aと対向する側の平面であって、塗布が終了する位置である基板SBのエッジEの近傍に、磁石支持部61により支持された磁場印加部60Aを備えている。磁場印加部60Aは、ノズル部10Aと対向する側にN極を向けて配置された永久磁石である。したがって、磁場印加部60Aは、ノズル部10Aの液体を放出する方向と反対方向の磁場をノズル部10Aの中の液体に印加する。磁場印加部60Aの磁束密度は、例えば、200〜500[mT]程度にすることができる。
【0031】
なお、磁場印加部60Aは、電磁石により構成することもできる。磁場印加部60Aを電磁石で構成した場合は、電磁石に供給する電流の大きさを制御することで、磁場印加部60Aが発生する磁場の磁束密度を制御することができる。この場合の磁場印加部60Aの磁束密度も、例えば、200〜500[mT]程度に制御することができる。また、もし、基板SBに液体の塗布が不要な部位がある場合には、磁場印加部60Aは、被塗布物である基板SBの液体の塗布が不要な部位に配置されていても良い。
【0032】
対向電極移動部50は、対向電極20をノズル部10Aに対して、相対的に移動させる。具体的には、例えば、被塗布物が基板SBである場合には、対向電極20は、基板SBの表面に対して平行な面内で直交する二軸の方向にそれぞれ独立して移動させられる。これにより、基板SB上の所望の部分に、塗布液等の液体を塗布させることができる。また、対向電極移動部50は、基板SBの表面に対して垂直な方向にも、ノズル部10Aに対して対向電極20を移動させるようにできることが好ましい。これにより、ノズル部10Aの先端と、基板SBの表面との距離を調節することができる。
【0033】
液体供給部40は、ラインL10を介してノズル部10Aにレジスト溶液、塗布液等の液体を供給する。液体供給部40は、レジスト溶液、塗布液等の液体を貯留する槽41と、槽41からラインL10を介してノズル部に液体を供給するポンプ42とを有する。ポンプ42が密閉状態にある槽41に空気を供給することにより、ラインL10を介して液体がノズル部10Aに供給される。なお、液体供給部40は、必ずしもポンプ42により液体を供給するものでなくとも良い。例えば、液体供給部40は、エアパルス方式のディスペンサーにより構成することができる。エアパルス方式のディスペンサーは、一定時間に電磁弁を開閉することにより、レギュレータを通して減圧した一定圧力のN
2等のガスを液体材料を封入したシリンジなどの容器に導き、液体材料を押し出す装置である。
【0034】
本実施形態では、液体供給部40は、例えば、レジスト溶液をノズル部10に対して供給する。レジスト溶液とは、ノボラック樹脂などの樹脂、ナフトジアジドなどの感光剤、及び、PGMEA(propylene glycol methyl ether acetate)などの溶媒を含む混合物である。レジスト溶液の好ましい粘度の範囲は、5〜1000mPa・sである。レジストとしては、例えば、ナガセケムテックス株式会社製NPR3510が挙げられる。
【0035】
電源装置30は、ノズル部10Aと対向電極20との間に電圧を印加する。電源装置30が印加する電圧は通常は直流であり、例えば、パルス状に供給することが好ましい。ノズル部10Aと対向電極20との間に印加される電圧は特に限定されないが、本実施形態では、5〜20kVとすることができる。電圧は、対向電極20に対して、ノズル部10A側がプラスと成るように印加することが好ましい。
【0036】
以下、本実施形態の静電塗布装置100Aの動作及び静電塗布装置100Aを用いた静電塗布方法について説明する。
【0037】
まず、対向電極20上に、被塗布物となる基板SBが載置される。電源装置30により、ノズル部10Aの先端の毛細管と対向電極20との間に電圧が印加される。また、ポンプ42が駆動されて、槽41内の液体がラインL10を介してノズル部10Aに供給される。液体には、ノズル部10Aにより電荷が与えられて帯電させられる。
【0038】
図2に示すように、ノズル部10Aから放出される液体は円錐状のテイラーコーンを形成する。テイラーコーンの頂部では、液体の溶媒が蒸発することで液体中の電荷密度が高くなり、イオン間反発が生じる。この反発力が液体の表面張力よりも大きくなると、ノズル部10Aの先端の毛細管から液体が噴霧され、帯電した液滴Mとなって飛散する。この帯電した液滴Mは、溶媒が蒸発することでレイリー分裂を繰り返す。対向電極移動部50は、対向電極20を移動方向Dに向けて移動させる。これにより、対向電極20に支持された基板SBの全面に液体が塗布される。
【0039】
図3に示すように、対向電極移動部50により対向電極20が移動させられ、対向電極20に配置された磁場印加部60Aとノズル部10Aとが対向する位置になると、磁場印加部60Aの磁場により、ノズル部10Aからの液体の放出は中止させられる。磁場印加部60Aの磁束密度が十分大きい場合には、電源装置30は、ノズル部10Aと対向電極20との間に電圧を印加したままであっても、ノズル部10Aからの液体の放出は中止させられる。なお、ノズル部10Aの液体を放出する方向と反対方向の成分を有する磁場を印加することにより、ノズル部10Aからの液体の放出が中止させられる原理についての詳細は明らかではないが、ノズル部10A中を移動する電荷を帯びた液体に磁場印加部60Aからの磁場によるローレンツ力が作用することにより、ノズル部10Aからの液体の放出が中止すると考えられる。
【0040】
本実施形態では、基板SBに液体を放出するノズル部10Aと、ノズル部10Aと対向するように配置され、基板SBを支持する対向電極20と、ノズル部10Aと対向電極20との間に電圧を印加する電源装置30とを備えた静電塗布装置100Aにおいて、液体に磁場を印加することにより液体の運動を制御する磁場印加部60Aをさらに備える。磁場による液体の運動の制御は極めて容易であるため、より容易に液体を基板SBに選択的に塗布することができる。
【0041】
また、磁場印加部60Aは、ノズル部10Aの中の液体に、ノズル部10Aの液体を放出する方向と反対方向の成分を有する磁場を印加することにより、ノズル部10Aからの液体の放出を中止させる。これにより、より容易に基板SBや対向電極20の不要な部位に液体が塗布されることを防止することができる。
【0042】
また、磁場印加部60Aは、対向電極20及び基板SBのいずれかに配置されている。そのため、対向電極20又は基板SBの磁場印加部60Aが配置されている箇所にノズル部10Aが位置したときには、ノズル部10Aからの液体の放出が中止される。これにより、ノズル部10Aを制御しなくとも、容易に基板SBや対向電極20の不要な部位に液体が塗布されることを防止することができる。したがって、基板SBのエッジEや対向電極20を洗浄する工程が不要となる。
【0043】
静電塗布法では、一度に塗布する面積を大きくするために複数のノズルが同時に用いられることがある。しかし、ノズルからの塗布液の放出を所望のタイミングで止めるためには、電源装置又はリレースイッチが必要となる。複数のノズルを同時に用いる場合には、ノズルの個数に相当する個数の電源装置又はリレースイッチが必要となる。そのため、複雑な電気制御回路が必要となっている。
【0044】
一方、本実施形態では、ノズル部10Aを制御するために、複雑な電気制御回路が必要でないため、特に、ノズル部10Aが液体を放出する複数の毛細管を有している場合に有用である。
【0045】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
図4に示すように、本実施形態の静電塗布装置100Bでは、上記第1実施形態の対向電極20に配置されていた磁場印加部60Aに替えて、ノズル部10Aの液体を放出する毛細管の周囲を囲繞するように磁場印加部60Bが配置されている。磁場印加部60Bは、電磁石制御部62から供給される電流により、ノズル部10Aの液体を放出する方向と反対方向の磁場をノズル部10Aの中の液体に印加する。磁場印加部60Bの磁束密度は、例えば、200〜500[mT]程度にすることができる。なお、本実施形態では、磁場印加部60Bを永久磁石により構成することもできる。この場合は、ノズル部10Aから液体を放出させる際には、磁場印加部60Bをノズル部10Aの近傍から避退させ、ノズル部10Aから液体を中止させる際には、磁場印加部60Bをノズル部10Aの近傍に配置することができる。
【0046】
図5に示すように、上記第1実施形態と同様にして、ノズル部10Aから液滴Mが噴霧される。ノズル部10Aから液体が放出されているときには、磁場印加部60Bには電磁石制御部62から電流が供給されておらず、磁場印加部60Bは磁場を発生しない。
図6に示すように、静電塗布を終了するタイミングになると、磁場印加部60Bには電磁石制御部62から電流が供給され、磁場印加部60Bは、磁力線Bがノズル部10Aの液体を放出する方向と反対方向となる磁場をノズル部10A内の液体に印加する。上記第1実施形態と同様に、磁場印加部60Bの磁場により、ノズル部10Aからの液体の放出は中止させられる。磁場印加部60Bの磁束密度が十分大きい場合には、電源装置30は、ノズル部10Bと対向電極20との間に電圧を印加したままであっても、ノズル部10Aからの液体の放出は中止させられる。
【0047】
本実施形態では、磁場印加部60Bは、ノズル部10Aに配置されている。このため、ノズル部10Aを制御しなくとも、ノズル部10Aからの液体の放出を中止されることができ、容易に基板SBや対向電極20の不要な部位に液体が塗布されることを防止することができる。特に本実施形態では、磁場印加部60Bは、電磁石制御部62から供給される電流で制御される電磁石であるため、任意のタイミングでノズル部10Aからの液体の放出を中止でき、利便性が向上する。
【0048】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
図7及び
図8に示すように、本実施形態の静電塗布装置100Cでは、ノズル部10Cは、液体を放出するノズルとなる複数のマルチノズル10MAを有している。複数の毛細管であるマルチノズル10MAは、対向電極20の移動方向Dと直交するように配置され、基板SBの一方のエッジEから他方のエッジEに至る範囲に液体を放出できるようにされている。ノズル部10Cの材質等は、上記第1実施形態のノズル部10Aと同様にできる。
【0049】
本実施形態では、磁場印加部60Cは、ノズル部10Cから放出された液体に、ノズル部10Cの液体を放出する方向と垂直な成分を有する磁場を印加することにより、液体の方向を制御する。磁場印加部60Cは対向電極20に配置され、液体に磁場印加部60Cから遠ざかる方向への力が働く向きの成分を有する磁場を液体に印加する。
【0050】
図8に示すように、本実施形態では、基板SBの移動方向Dに平行な両方のエッジEの近傍に複数の磁場印加部60CがエッジEに沿って列を成すように配置されている。基板SBの移動方向Dに向かって左側の磁場印加部60Cは、移動方向DにS極を向けて配置された複数個の永久磁石である。基板SBの移動方向Dに向かって右側の磁場印加部60Cは、移動方向DにN極を向けて配置された複数個の永久磁石である。基板SBの移動方向Dに向かって左側の磁場印加部60Cは、基板SBの移動方向Dに向かって左側のエッジEにおいて、移動方向Dに向かう磁力線Bを有する磁場を発生する。基板SBの移動方向Dに向かって右側の磁場印加部60Cは、基板SBの移動方向Dに向かって右側のエッジEにおいて、移動方向Dの反対側に向かう磁力線Bを有する磁場を発生する。
【0051】
これにより、
図9に示すように、テイラーコーン状の液滴M又はテイラーコーン状になる前の液滴Mに対して、液滴Mが磁場印加部60C及び磁場印加部60Cの近傍のエッジEから離れる方向のローレンツ力Fが働く。テイラーコーン状の液滴M又はテイラーコーン状になる前の液滴Mには、ノズル部10C及び対向電極20によるクーロン力と、磁場印加部60Cによるローレンツ力Fとが付与される。液滴Mが持つ表面張力や、クーロン力及びローレンツ力Fのバランスを調整することで、液体は基板SBのエッジEで囲まれた範囲内にのみ塗布され、対向電極20には塗布されないようにすることができる。
【0052】
なお、磁場印加部60Cは、電磁石により構成することもできる。磁場印加部60Cを電磁石で構成した場合は、電磁石に供給する電流の大きさを制御することで、磁場印加部60Cが発生する磁場の磁束密度を制御することができる。この場合の磁場印加部60Cの磁束密度も、例えば、200〜500[mT]程度に制御することができる。また、もし、基板SBに液体の塗布が不要な部位がある場合には、磁場印加部60Cは、被塗布物である基板SBの液体の塗布が不要な部位に配置されていても良い。
【0053】
また、ノズル部10Cの複数の毛細管は、必ずしも、対向電極20の移動方向Dと直交する直線上に配置されている必要は無い。例えば、
図10の平面図に示すように、ノズル部10Cの基板SBに液体を放出するノズルとなる複数のマルチノズル10MBは、基板SBに対向する面において、対向電極20の移動方向Dと直交する方向に沿って千鳥状に配列されていても良い。基板SBに対向する面において、マルチノズル10MBが千鳥状に配列されていることにより、マルチノズル10MBから放出される同じ極性の電荷を帯びた複数の液体の液滴が互いに反発し合い、液滴同士の距離が必要以上に拡がってしまうことを防止することができる。
【0054】
静電塗布法において、被塗布物の一部を選択的に塗布する場合には、被塗布物をポリテトラフルオロエチレン等の樹脂により作製されたマスクを被塗布物に配置し、静電塗布を行うことが一般的である。しかし、樹脂のマスクを用いた場合には、静電塗布を行う環境によって帯電状態が変化するため、被塗布物を部分的に塗布するための条件を設定することが難しい。
【0055】
一方、本実施形態では、磁場印加部60Cは、ノズル部10Cから放出された液体に、ノズル部10Cの液体を放出する方向と垂直な成分を有する磁場を印加することにより、液体の方向を制御する。これにより、より容易に基板SBに選択的に液体を塗布することができる。
【0056】
また、磁場印加部60Cは、対向電極20及び基板SBのいずれかに配置され、液体に磁場印加部60Cから遠ざかる方向へのローレンツ力Fが働く向きの成分を有する磁場を液体に印加する。これにより、基板SBや対向電極20の液体の塗布が不要な部位に磁場印加部60Cが配置されることにより、容易に基板SBや対向電極20の不要な部位に液体が塗布されることを防止することができる。したがって、マスキングや、基板SBのエッジEや対向電極20を洗浄する工程が不要となる。また、帯電した液滴Mは、磁場印加部60Cに対して全て反発することになるため、磁場印加部60Cが液体に接触することがなく、磁場印加部60Cの洗浄や交換の必要が無い。
【0057】
従来の静電塗布法では、一度に塗布する面積を大きくするために複数のノズルが同時に用いられた場合には、ノズルの個数に相当する個数の電源装置又はリレースイッチが必要となる。そのため、複雑な電気制御回路が必要となっている。一方、本実施形態では、ノズル部10Cのマルチノズル10Mを制御するために、複雑な電気制御回路が必要でないという利点を有する。
【0058】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態について説明する。
図11及び
図12に示すように、本実施形態の静電塗布装置100Dでは、対向電極20は、ノズル部10Aと対向する側の平面において、円盤状のウェーハWを支持している。上記第3実施形態と同様に、本実施形態の磁場印加部60Dは、ノズル部10Aから放出された液体に、ノズル部10Aの液体を放出する方向と垂直な成分を有する磁場を印加することにより、液体の方向を制御する。磁場印加部60Dは対向電極20に配置され、液体に磁場印加部60Dから遠ざかる方向への力が働く向きの成分を有する磁場を液体に印加する。
【0059】
図12に示すように、ウェーハWの円形をなすエッジEの近傍に、複数の磁場印加部60Dが、ウェーハWを囲繞し、且つエッジEに沿って列をなすように配置されている。複数の磁場印加部60Dそれぞれは、エッジEの時計回りの方向にS極を向けて配置された複数個の永久磁石である。これにより、磁場印加部60Dは、ウェーハWのエッジEにおいて、時計回りの方向に向かう磁力線Bを有する磁場を発生する。
【0060】
これにより、上記第3実施形態と同様に、ノズル部10Aから放出された液体に対して、液体が磁場印加部60D及び磁場印加部60Dの近傍のエッジEから離れる方向のローレンツ力が働く。これにより、液体はウェーハWのエッジEで囲まれた範囲内にのみ塗布され、対向電極20には塗布されないようにすることができる。
【0061】
なお、磁場印加部60Dは、電磁石により構成することもできる。磁場印加部60Dを電磁石で構成した場合は、電磁石に供給する電流の大きさを制御することで、磁場印加部60Dが発生する磁場の磁束密度を制御することができる。また、もし、ウェーハWに液体の塗布が不要な部位がある場合には、磁場印加部60Dは、被塗布物であるウェーハWの液体の塗布が不要な部位に配置されていても良い。
【0062】
本実施形態では、円盤状の被塗布物であるウェーハWに対しても、上記第3実施形態と同様の作用効果を奏する。そのため、マスキングや、ウェーハWのエッジEや対向電極20を洗浄する工程が不要となる。
【0063】
(第5実施形態)
以下、本発明の第5実施形態について説明する。
図13及び
図14に示すように、本実施形態の静電塗布装置100Eでは、ノズル部10Aを囲繞するように、4重極磁石を構成する磁場印加部60Eを備える。磁場印加部60Eは、ノズル部10Aから放出された液体に、ノズル部10Aの液体を放出する方向と垂直な成分を有する磁場を印加することにより、液体の方向を制御する。
【0064】
磁場印加部60Eは、ノズル部10Aの液体を放出する方向と垂直な第1の面である第1面S1内に、ノズル部10Aから放出された液体を間に挟んで互いに対向する一対の第1のN極の磁極である第1N極磁極63Nと、ノズル部10Aから放出された液体を間に挟んで互いに対向する一対の第1のS極の磁極である第1S極磁極63Sとを有する。
【0065】
本実施形態では、第1面S1において、一対の第1N極磁極63Nの互いに対向する方向と、一対の第1S極磁極63Sの互いに対向する方向とが、互いに直交するように第1N極磁極63N及び第1S極磁極63Sは配置されている。一対の第1N極磁極63Nと一対の第1S極磁極63Sとは、4重極レンズ制御部65から電流を供給されることにより、磁力を発生させる電磁石である。
【0066】
また、磁場印加部60Eは、ノズル部10Aの液体を放出する方向と垂直な第2の面である第2面S2内に、ノズル部10Aから放出された液体を間に挟んで第1N極磁極63Nとは異なる方向に互いに対向する一対の第2のN極の磁極である第2N極磁極64Nと、ノズル部10Aから放出された液体を間に挟んで第1S極磁極63Sとは異なる方向に互いに対向する一対の第2のS極の磁極である第2S極磁極64Sとを有する。一対の第2S極磁極64Sと一対の第2N極磁極64Nとは、4重極レンズ制御部65から電流を供給されることにより、磁力を発生させる電磁石である。
【0067】
本実施形態では、第2面S2において、一対の第2N極磁極64Nの互いに対向する方向と、一対の第2S極磁極64Sの互いに対向する方向とが、互いに直交するように第2N極磁極64N及び第2S極磁極64Sは配置されている。また、互いに平行な第1面S1及び第2面S2において、一対の第1N極磁極63Nと一対の第2S極磁極64Sとが互いに対応する位置に配置され、一対の第1S極磁極63Sと一対の第2N極磁極64Nとが互いに対応する位置に配置されている。第1N極磁極63N、第1S極磁極63S、第2N極磁極64N及び第2S極磁極64Sの磁束密度は、例えば、200〜500[mT]程度に制御することができる。
【0068】
第1面S1の平面視である
図15に示すように、領域P1では電流が紙面の奥側から手前側に流れ、領域P2では紙面の手前側から奥側に流れる。正の電荷を持った液体の液滴Mが紙面の手前側から奥側に移動すると、y軸の方向には液滴Mを収束させる方向のローレンツ力Fが働き、x軸の方向には液滴Mを拡散させる方向のローレンツ力Fが働く。第2面S2では、逆に、y軸の方向には液滴Mを拡散させる方向のローレンツ力Fが働き、x軸の方向には液滴Mを収束させる方向のローレンツ力Fが働く。
【0069】
液滴Mが持つ表面張力や、ノズル部10A及び対向電極20により付与されるクーロン力や、磁場印加部60Eの第1N極磁極63N、第1S極磁極63S、第2N極磁極64N及び第2S極磁極64Sにより発生するローレンツ力Fのバランスが調整される。これにより、液滴Mを
図16に示すように収束させたり、
図17に示すように拡散させたり、
図18に示すように、液滴Mの方向を自在に変化させることができる。
【0070】
本実施形態では、磁場印加部60Eは、ノズル部10Aに配置されている。このため、ノズル部10Aを制御しなくとも、ノズル部10Aから放出された液体に、液体が放出された方向に垂直なローレンツ力Fを与えて、液体の方向を容易に制御することができる。
【0071】
また、本実施形態では、磁場印加部60Eは、第1N極磁極63N、第1S極磁極63S、第2N極磁極64N及び第2S極磁極64Sにより形成される2段の4重極磁石を有する。このため、ノズル部10Aから放出された液体の方向を変更自在な他に、ノズルから放出された液体を収束及び拡散自在となる。
【0072】
一般的にノズルの内径は数十〜百μmが主流である。しかし、このような内径のノズルでは、一つの被塗布物の塗布を完了するまでの時間を短くすることに限界がある。そこで、一つの被塗布物の塗布を完了するまでの時間を短くするために、ノズルから放出される塗布液の流量を増やす目的でノズルの内径を太くすると、ノズルの中の塗布液のメニスカスから吐出する塗布液が一定の場所から出なくなる可能性があり、塗布が不安定になる可能性がある。
【0073】
一方、本実施形態では、例えば、内径が数十〜百μmの毛細管からなるノズル部10Aを用いている場合でも、液滴Mを拡散させることにより、一つの被塗布物の塗布を完了するまでの時間を短くすることができる。
【0074】
尚、本発明の実施形態の静電塗布装置及び静電塗布方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の実施形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【解決手段】基板SBに液体を放出するノズル部10Aと、ノズル部10Aと対向するように配置され、基板SBを支持する対向電極20と、ノズル部10Aと対向電極20との間に電圧を印加する電源装置30とを備えた静電塗布装置100Aにおいて、液体に磁場を印加することにより液体の運動を制御する磁場印加部60Aをさらに備える。磁場による液体の運動の制御は極めて容易であるため、より容易に液体の運動を制御することができる。