特許第5792875号(P5792875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5792875
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】焙煎装置
(51)【国際特許分類】
   A23N 12/08 20060101AFI20150928BHJP
   A23F 5/04 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   A23N12/08 A
   A23F5/04
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-150560(P2014-150560)
(22)【出願日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年2月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390006600
【氏名又は名称】ユーシーシー上島珈琲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中桐 理
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−531645(JP,A)
【文献】 特許第4726008(JP,B2)
【文献】 特開2007−143550(JP,A)
【文献】 特開昭63−273464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 12/08
A23F 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆の焙煎を行う焙煎機と、
前記焙煎機へ熱風を送り出すための熱風炉と、
前記熱風炉から前記焙煎機へと熱風を送り込むための流路を形成する送り込み経路と、
前記焙煎機を通過した熱風を排出させる排出経路と、を備えた焙煎装置であって、
前記送り込み経路に水分を補充するための加湿手段と、
この加湿手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、豆の乾燥工程において前記加湿手段を非動作とし、乾燥工程に続く焙煎工程において前記加湿手段を動作させて、水分を焙煎機に送り込むように制御することを特徴とする焙煎装置。
【請求項2】
前記送り込み経路と前記排出経路とをバイパスするバイパス経路を備え、
前記制御手段は、焙煎工程終了後に、熱風の流路を前記バイパス経路へと切り替えるように制御することを特徴とする請求項1に記載の焙煎装置。
【請求項3】
豆の焙煎を行う焙煎機と、
前記焙煎機へ熱風を送り出すための熱風炉と、
前記熱風炉から前記焙煎機へと熱風を送り込むための流路を形成する送り込み経路と、
前記焙煎機を通過した熱風を前記熱風炉へと戻す循環経路と、
前記送り込み経路から分岐した分岐経路と、を備えた焙煎装置であって、
前記送り込み経路に水分を補充するための加湿手段と、
この加湿手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、豆の乾燥工程において前記加湿手段を非動作とし、乾燥工程に続く焙煎工程において前記加湿手段を動作させて、水分を焙煎機に送り込むように制御することを特徴とする焙煎装置。
【請求項4】
前記送り込み経路と前記循環経路とをバイパスするバイパス経路を備え、
前記制御手段は、焙煎工程終了後に、熱風の流路を前記バイパス経路へと切り替えるように制御することを特徴とする請求項に記載の焙煎装置。
【請求項5】
前記制御手段は、焙煎工程において、前記分岐経路を第1開度で開放し、焙煎工程終了後に前記分岐経路を第1開度よりも大きな第2開度で開放するように制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の焙煎装置。
【請求項6】
豆の焙煎を行う焙煎機と、
前記焙煎機へ熱風を送り出すための熱風炉と、
前記熱風炉から前記焙煎機へと熱風を送り込むための流路を形成する送り込み経路と、
前記焙煎機を通過した熱風を前記熱風炉へと戻す循環経路と、
前記焙煎機を通過した熱風を排出させる排出経路と、
前記送り込み経路から分岐した分岐経路と、を備えた焙煎装置であって、
前記送り込み経路に水分を補充するための加湿手段と、
この加湿手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、豆の乾燥工程において前記加湿手段を非動作とし、乾燥工程に続く焙煎工程において前記加湿手段を動作させて、水分を焙煎機に送り込むように制御することを特徴とする焙煎装置。
【請求項7】
前記送り込み経路と前記循環経路及び/又は前記排出経路とをバイパスするバイパス経路を備え、
前記制御手段は、焙煎工程終了後に、熱風の流路を前記バイパス経路へと切り替えるように制御することを特徴とする請求項6に記載の焙煎装置。
【請求項8】
前記制御手段は、焙煎工程において、前記分岐経路を第1開度で開放し、焙煎工程終了後に前記分岐経路を第1開度よりも大きな第2開度で開放するように制御することを特徴とする請求項6又は7に記載の焙煎装置。
【請求項9】
前記制御手段は、豆の乾燥工程において、前記排出経路を開いて前記循環経路を閉じ、焙煎工程において、前記排出経路を閉じて前記循環経路を開き、焙煎工程終了後に再び、前記排出経路を開いて前記循環経路を閉じるように制御することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の焙煎装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー豆等の豆の焙煎を行う焙煎機と、前記焙煎機へ熱風を送り出すための熱風炉と、前記熱風炉から前記焙煎機へと熱風を送り込むための流路を形成する送り込み経路と、を備えた焙煎装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒー豆の焙煎装置として、例えば、下記特許文献1,2に開示される装置が知られている。コーヒー豆等の豆の焙煎を行う場合には、まず、焙煎機に豆が投入され乾燥工程が行われる。乾燥を行うために、熱風炉が設けられており、焙煎機に熱風を送り込む。これにより、豆に含まれていた水分が蒸発し、生豆の状態では水分含有量が12%程度であったものが、4〜5%程度まで減少する。またコーヒー豆の温度も160℃程度まで上昇し、表面の色も薄茶色に変化する。ここまでが乾燥工程であり、水分の含有量以外に品質の変化は特に生じない。
【0003】
乾燥工程に引き続き、さらに温度が上昇していき、焙煎工程に移るが、約190℃になると水分3%となる第1焙煎工程と、約210℃になると水分1〜2%の第2焙煎工程とに分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4732777号
【特許文献2】特許第3617906号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる焙煎工程に関して、本発明の発明者は次のような課題を見出した。豆を加熱して焙煎していくと、豆の一番外側が焼けるものと考えていたが、実際に豆を切断して内部を観察してみると、必ずしもそうではないことが判明した。生豆では、約12%の水分を含んでいるが、表面よりも中心の方が水分量は高くなっている。焙煎工程が進んでいくと、まず外側が乾燥していき、組織が固化していく。そこにさらに熱が加わっていくと、内部に溜まっている水分が蒸発しようとするので、内圧が高まっていく。これにより、外側よりも内部の方が温度が高くなり、外側よりも内部の方がよく炒られる状態になる。これがコーヒー豆の嫌な臭い(刺すような強い苦み)の原因になっていると考えられる。
【0006】
190℃〜210℃ぐらいになると、内圧の高まりによりコーヒー豆が音を立ててはじけるという現象が生じる。このような現象は、コーヒー豆全体に均一に熱が伝わらないことに起因している。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、豆全体に熱が均一に伝わるようにして、豆の急激な膨張を抑えて、品質の良い豆の焙煎を行うことのできる焙煎装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る焙煎装置は、
豆の焙煎を行う焙煎機と、前記焙煎機へ熱風を送り出すための熱風炉と、前記熱風炉から前記焙煎機へと熱風を送り込むための流路を形成する送り込み経路と、前記焙煎機を通過した熱風を排出させる排出経路と、を備えた焙煎装置であって、
前記送り込み経路に水分を補充するための加湿手段と、この加湿手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、豆の乾燥工程において前記加湿手段を非動作とし、乾燥工程に続く焙煎工程において前記加湿手段を動作させて、水分を焙煎機に送り込むように制御することを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成による焙煎装置の作用・効果は、次の通りである。熱風炉にて発生した熱風を送り込み経路を介して焙煎機に送る。焙煎機に送り込まれた熱風は、排出経路を介して排出される。これにより、焙煎機に投入された豆に対して乾燥工程とそれに引き続く焙煎工程が実施される。送り込み経路に水分を補充するための加湿手段が設けられており、乾燥工程では動作しないが、焙煎工程において水分を焙煎機に向けて供給する。これにより次のような作用・効果を奏する。
【0010】
乾燥工程において水分量は4〜5%に減少しており、さらに焙煎工程において水分量は1〜2%にまで減少する。この豆に含まれる水分は、豆の外側から内部へ熱を伝える役割を果たす。また、水分により組織の軟化を促進し、内部で発生する蒸気を外部に出しやすくし、豆の膨張作用を助ける。そして炒り豆の表面と内部の焙煎度の均一化を図る。これにより、豆内部での急激な温度上昇と圧力上昇による膨張を抑えて、品質の良い豆の焙煎を行うことができる。
【0011】
なお、前述の特許文献1には、コーヒーの焙煎豆の水蒸気による処理方法が開示される。しかし、乾燥工程と焙煎工程において加湿手段の動作の制御を行うことに関しては開示されていない。
【0012】
本発明において、前記送り込み経路と前記排出経路とをバイパスするバイパス経路を備え、
前記制御手段は、焙煎工程終了後に、熱風の流路を前記バイパス経路へと切り替えるように制御することが好ましい。
【0013】
かかるバイパス経路を設けることで、焙煎工程終了後に、熱風を焙煎機内の回転ドラムを通過させず、あるいは焙煎機自体を通過させず、バイパス経路を経由して排出経路へと導くことができる。これにより、焙煎工程の終了した豆に過剰な熱風を加える事無く、次の工程(例えば、冷却工程)に移行させることができる。
【0014】
上記課題を解決するため本発明に係る別の焙煎装置は、
豆の焙煎を行う焙煎機と、前記焙煎機へ熱風を送り出すための熱風炉と、前記熱風炉から前記焙煎機へと熱風を送り込むための流路を形成する送り込み経路と、
前記焙煎機を通過した熱風を前記熱風炉へと戻す循環経路と、前記送り込み経路から分岐した分岐経路と、を備えた焙煎装置であって、
前記送り込み経路に水分を補充するための加湿手段と、この加湿手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、豆の乾燥工程において前記加湿手段を非動作とし、乾燥工程に続く焙煎工程において前記加湿手段を動作させて、水分を焙煎機に送り込むように制御することを特徴とするものである。
【0015】
かかる構成による焙煎装置の作用・効果は、次の通りである。熱風炉にて発生した熱風を送り込み経路を介して焙煎機に送る。焙煎機に送り込まれた熱風は、循環経路を介して再び熱風炉に戻される。これにより熱効率を上げて、燃料のランニングコストを軽減するものである。なお、送り込み経路から分岐した分岐経路が設けられており、循環経路を経由して戻ってくる風量と、熱風炉において新たに取り込む風量とが加算されるので、それを分岐経路から一部排出するようにして、全体の風量が増加しないように調整する。以上の構成により、焙煎機に投入された豆に対して乾燥工程とそれに引き続く焙煎工程が実施される。
【0016】
送り込み経路に水分を補充するための加湿手段が設けられており、乾燥工程では動作しないが、焙煎工程において水分を焙煎機に向けて供給する。これにより奏する作用・効果は、前述のとおりである。これにより、豆内部での急激な温度上昇と圧力上昇による膨張を抑えて、品質の良い豆の焙煎を行うことができる。
【0017】
本発明において、前記送り込み経路と前記循環経路とをバイパスするバイパス経路を備え、
前記制御手段は、焙煎工程終了後に、熱風の流路を前記バイパス経路へと切り替えるように制御することが好ましい。
【0018】
かかるバイパス経路を設けることで、焙煎工程終了後に、熱風を焙煎機内の回転ドラムを通過させず、あるいは焙煎機自体を通過させず、バイパス経路を経由して循環経路へと導くことができる。これにより、焙煎工程の終了した豆を次の工程(例えば、冷却工程)に移行させることができる。
【0019】
本発明に係る前記制御手段は、焙煎工程において、前記分岐経路を第1開度で開放し、焙煎工程終了後に前記分岐経路を第1開度よりも大きな第2開度で開放するように制御することが好ましい。
【0020】
焙煎工程においては、分岐経路を第1開度(例えば、半開)で開放し、循環経路を経由して戻ってくる風量と、新たに取り込まれる風量との総量を調整する。また、焙煎工程が終了すると、分岐経路を第1開度よりも大きな第2開度(例えば、全開)で開放する。これにより、熱風を分岐経路から排出させることができる。
【0021】
上記課題を解決するため本発明に係る更に別の焙煎装置は、
豆の焙煎を行う焙煎機と、前記焙煎機へ熱風を送り出すための熱風炉と、前記熱風炉から前記焙煎機へと熱風を送り込むための流路を形成する送り込み経路と、
前記焙煎機を通過した熱風を前記熱風炉へと戻す循環経路と、前記焙煎機を通過した熱風を排出させる排出経路と、前記送り込み経路から分岐した分岐経路と、を備えた焙煎装置であって、
前記送り込み経路に水分を補充するための加湿手段と、この加湿手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、豆の乾燥工程において前記加湿手段を非動作とし、乾燥工程に続く焙煎工程において前記加湿手段を動作させて、水分を焙煎機に送り込むように制御することを特徴とするものである。
【0022】
かかる構成による焙煎装置の作用・効果は、次の通りである。熱風炉にて発生した熱風を送り込み経路を介して焙煎機に送る。焙煎機に送り込まれた熱風は、循環経路を介して再び熱風炉に戻されるか、排出経路を介して排出される。循環させることにより熱効率を上げて、燃料のランニングコストを軽減するものである。なお、送り込み経路から分岐した分岐経路が設けられており、循環経路を経由して戻ってくる風量と、熱風炉において新たに取り込む風量とが加算されるので、それを分岐経路から一部排出するようにして、全体の風量が増加しないように調整する。以上の構成により、焙煎機に投入された豆に対して乾燥工程とそれに引き続く焙煎工程が実施される。
【0023】
送り込み経路に水分を補充するための加湿手段が設けられており、乾燥工程では動作しないが、焙煎工程において水分を焙煎機に向けて供給する。これにより奏する作用・効果は、前述のとおりである。これにより、豆内部での急激な温度上昇と圧力上昇による膨張を抑えて、品質の良い豆の焙煎を行うことができる。
【0024】
本発明において、前記送り込み経路と前記循環経路及び/又は前記排出経路とをバイパスするバイパス経路を備え、
前記制御手段は、焙煎工程終了後に、熱風の流路を前記バイパス経路へと切り替えるように制御することが好ましい。
【0025】
かかるバイパス経路を設けることで、焙煎工程終了後に、熱風を焙煎機内の回転ドラムを通過させず、あるいは焙煎機自体を通過させず、バイパス経路を経由して排出経路へと導くことができる。これにより、焙煎工程の終了した豆を次の工程(例えば、冷却工程)に移行させることができる。
【0026】
本発明に係る前記制御手段は、焙煎工程において、前記分岐経路を第1開度で開放し、焙煎工程終了後に前記分岐経路を第1開度よりも大きな第2開度で開放するように制御することが好ましい。
【0027】
焙煎工程においては、分岐経路を第1開度(例えば、半開)で開放し、循環経路を経由して戻ってくる風量と、新たに取り込まれる風量との総量を調整する。また、焙煎工程が終了すると、分岐経路を第1開度よりも大きな第2開度(例えば、全開)で開放する。これにより、熱風を分岐経路から排出させることができる。
【0028】
本発明に係る前記制御手段は、豆の乾燥工程において、前記排出経路を開いて前記循環経路を閉じ、焙煎工程において、前記排出経路を閉じて前記循環経路を開き、焙煎工程終了後に再び、前記排出経路を開いて前記循環経路を閉じるように制御することが好ましい。
【0029】
乾燥工程においては、循環経路を閉じて熱風は排出経路を介して排出する。乾燥工程では、豆に含まれる水分が蒸発して、かなりの量の水分が経路に取り込まれるが、水分を含む熱風を循環させると、乾燥工程における効率が低下する。そこで、乾燥工程では熱風を排出経路を介して排出して、乾燥工程を効率よく行う。乾燥工程に続く焙煎工程では、熱風を循環させて熱効率を高めるそして、焙煎工程が終了すると、再び、排出経路を開いて熱風を排出させる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態に係る焙煎装置の構成を示す模式図
図2】第2実施形態に係る焙煎装置の構成を示す模式図
図3】第3実施形態に係る焙煎装置の構成を示す模式図
図4】時間の経過と温度・焙煎度・水分量の変化を示すグラフ
図5】加湿機配置の別実施形態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に係る焙煎装置の好適な実施形態を図面を用いて説明する。まず第1実施形態〜第3実施形態の構成と動作を簡単に説明する。
【0032】
<第1実施形態の構成>
まず、第1実施形態に係る焙煎装置Aの構成を図1の模式図により説明する。この焙煎装置Aは、コーヒー豆の焙煎を行う為の装置である。熱風炉1は、熱風を送り出すための装置であり、取り込まれた空気をバーナー1aにより燃焼してファンにより熱風を送り出す。送り込み経路2は、熱風を焙煎機3に向けて送り出すための経路(熱風供給ダクト)である。焙煎機3には、生のコーヒー豆が投入されて、この焙煎機3の中で乾燥工程と焙煎工程が行われる。焙煎機には炒り豆の温度を検知する温度センサーが取り付けられており、この温度センサーにより設定温度(160℃)に達したとき制御手段に信号を送る。温度センサーに基づく制御は、他の実施形態も同様である。
【0033】
焙煎機3を通過した熱風は、排出経路5(排出ダクト)を介して排出される。排出経路5の途中にはサイクロン20と排気ブロワー21が設けられている。サイクロン20は、排気熱風に含まれる異物等を濾過して除去する。排気ブロワー21は、排気されてきた熱風を不図示の脱臭装置へと送り出す。バイパス経路6は、送り込み経路2からの熱風を焙煎機3を通過させず、排出経路5へとバイパスさせる。排出経路5には経路の開閉を行うためのダンパー5aを有する。バイパス経路6も同様にダンパー6aを有する。
【0034】
また、焙煎装置Aの動作を制御するための不図示の制御手段(コンピュータ等で構成)が設けられる。特に、加湿機4やダンパー5a,6aの開閉の作動制御を行う。また、前述の温度センサーの検知結果に基づいて、乾燥工程が終わったものと判断し、加湿機4の動作を開始する。制御手段は、その他の機構部分についても作動制御を行う。
【0035】
<第1実施形態の動作>
(1)乾燥工程では、焙煎機3に熱風が送り込まれる。このときバイパス経路6のダンパー6aは閉鎖した状態であり、排出経路5のダンパー5aは開放した状態である。これにより、送り込み経路2を介して送り込まれた熱風は焙煎機3に取り込まれた後、排出経路5から排出されて脱臭装置へと送り込まれる。また乾燥工程では加湿機4は動作させない。温度センサーにより焙煎機4の回転ドラム内の炒り豆温度が160℃になったことが検出されると、乾燥工程が終了したものと判断し、焙煎工程に移行する。
【0036】
(2)温度センサーの検出結果に基づき、焙煎工程に移行する。焙煎工程では、加湿機4を動作させて、水分を焙煎機3に向けて供給する。加湿機4は、例えば、平均粒径が200μ以下の微霧を発生するノズルを備えている。炒り豆温度が160℃以上になった時点から、5分以内で所定の加湿を完了するように、加湿機4のノズルが選定されている。ダンパー5a,6aは、乾燥工程と同じ状態に設定される。水分供給の作用・効果の詳細については後述する。
【0037】
(3)焙煎工程が終了すると、ダンパー6aを開放するとともに、ダンパー5aを閉鎖する。これにより、熱風は焙煎機3には送り込まれず、バイパス経路6を介して排出経路5へとバイパスされる。これにより、焙煎工程が終了したコーヒー豆がさらに加熱されて焙煎度が必要以上に進行しないようにしている。
【0038】
<第2実施形態の構成>
第2実施形態に係る焙煎装置Aの構成を図2の模式図により説明する。熱風炉1、送り込み経路2、焙煎機3、加湿機4については第1実施形態と同じである。送り込み経路2の途中が分岐して分岐経路8が設けられる。分岐経路8には、経路を開閉するためのダンパー8aが設けられる。分岐流路8は、不図示の脱臭装置に接続されている。
【0039】
焙煎機3を通過した熱風は、循環経路7へと送出される。循環経路7の途中にはサイクロン20と排気ブロワー21が設けられている。これらサイクロン20と排気ブロワー21は、第1実施形態と同じ機能を有する。循環経路7により、熱風は熱風炉1に戻ってくる。バイパス経路6は、送り込み経路2からの熱風を焙煎機3を通過させず、循環経路7へとバイパスさせる。循環経路7には経路の開閉を行うためのダンパー7aを有する。バイパス経路6も同様にダンパー6aを有する。
【0040】
また、焙煎装置Aの動作を制御するための不図示の制御手段が設けられる。特に、加湿機4やダンパー6a,7a,8aの開閉の作動制御を行う。制御手段は、その他の機構部分についても作動制御を行う。
【0041】
<第2実施形態の動作>
(1)乾燥工程では、焙煎機3に熱風が送り込まれる。このときバイパス経路6のダンパー6aは閉鎖した状態であり、循環経路7のダンパー7aは開放した状態である。これにより、送り込み経路2を介して送り込まれた熱風は焙煎機3に取り込まれた後、循環経路7から再び熱風炉1へと送り込まれる。また乾燥工程では加湿機4は動作させない。循環経路7を通過する熱風は、サイクロン20と排気ブロワー21を通過する。
【0042】
熱風を循環させることで、熱効率を上げて、燃料のランニングコストを軽減する。熱風を循環させると、新たに取り込む空気との総和が大きくなるので分岐経路8のダンパー8aを半開に設定して、一部の空気を排出させる。
【0043】
(2)焙煎工程では、加湿機4を動作させて、水分を焙煎機3に向けて供給する。ダンパー6a,7a,8aは、乾燥工程と同じ状態に設定される。
【0044】
(3)焙煎工程が終了すると、ダンパー6aを開放するとともに、ダンパー7aを閉鎖する。これにより、熱風は焙煎機3には送り込まれず、バイパス経路6を介して循環経路7へとバイパスされる。これにより、焙煎工程が終了したコーヒー豆がさらに加熱されて焙煎度が必要以上に進行しないようにしている。
【0045】
さらに、焙煎工程が終了すると、排出経路8のダンパー8aを半開から全開に設定変更する。これにより、循環される熱風は、排出経路8から排出されて脱臭装置へと送り込まれる。
【0046】
<第3実施形態の構成>
第3実施形態に係る焙煎装置Aの構成を図3の模式図により説明する。熱風炉1、送り込み経路2、焙煎機3、加湿機4については第1、第2実施形態と同じである。送り込み経路2の途中が分岐して分岐経路8が設けられる。分岐経路8には、経路を開閉するためのダンパー8aが設けられる点は、第2実施形態と同じである。分岐流路8は、不図示の脱臭装置に接続されている。
【0047】
焙煎機3を通過した熱風は、循環経路7を介して循環されるか、排出経路5を介して排出されて脱臭装置へ送り込まれる。経路の途中にはサイクロン20と排気ブロワー21が設けられている。これらサイクロン20と排気ブロワー21は、第1、第2実施形態と同じ機能を有する。焙煎機3から排気ブロワー21に至るまでの経路は、循環経路7と排出経路5が共用された1つの経路として構成される。排気ブロワー21から先は、循環経路7と排出経路5が別々の経路として構成される。別々に分岐した循環経路7と排出経路5には、それぞれダンパー7b,5bが設けられる。また、共用された経路にもダンパー5a(7a)が設けられる。
【0048】
循環経路7により、熱風は熱風炉1に戻ってくる。バイパス経路6は、送り込み経路2からの熱風を焙煎機3を通過させず、共用の経路へとバイパスさせる。バイパス経路6もダンパー6aを有する。
【0049】
また、焙煎装置Aの動作を制御するための不図示の制御手段が設けられる。特に、加湿機4やダンパー5a(7a),5b,7b,6a,8aの開閉の作動制御を行う。制御手段は、その他の機構部分についても作動制御を行う。
【0050】
<第3実施形態の動作>
(1)乾燥工程では、焙煎機3に熱風が送り込まれる。このときバイパス経路6のダンパー6aは閉鎖した状態であり、共用の排出経路5(循環経路7)のダンパー5aは開放した状態である。また、分岐した循環経路7のダンパー7bは閉鎖させ、分岐した排出経路5のダンパー5bは開放する。
【0051】
これにより、送り込み経路2を介して送り込まれた熱風は焙煎機3に取り込まれた後、分岐した排出経路5を介して脱臭装置へと送られる。乾燥工程では、生豆に含まれている水分が蒸発して、経路に送出されるので、乾燥工程で熱風を循環させると蒸発した大量の水分も循環することになり、乾燥効率が低下する。そこで、乾燥工程では、第1実施形態と同じように熱風をそのまま排出させる。熱風は、サイクロン20と排気ブロワー21を通過する。
【0052】
なお、送り込み経路2から分岐した分岐経路8のダンパー8aは半開に設定しておく。乾燥工程では加湿機4は動作させない。
【0053】
(2)焙煎工程では、加湿機4を動作させて、水分を焙煎機3に向けて供給する。ダンパー5a,6a,8aは、乾燥工程と同じ状態に設定される。また、分岐した循環経路7のダンパー7bは閉鎖から開放状態に設定変更する。さらに分岐した排出経路5のダンパー5bは開放から閉鎖状態に設定変更する。焙煎工程では、熱風を循環させることで、熱効率を上げて、燃料のランニングコストを軽減する。熱風を循環させると、新たに取り込む空気との総和が大きくなるので分岐経路8のダンパー8aは半開のままに設定しておき、一部の空気を排出させる。焙煎機3を通過した熱風は、サイクロン20と排気ブロワー21を通過して、熱風炉1へと戻される。
【0054】
(3)焙煎工程が終了すると、ダンパー6aを開放するとともに、共用経路のダンパー5aを閉鎖する。また、分岐した循環経路7のダンパー7bは開放から閉鎖状態に設定変更するとともに、分岐した排出経路5のダンパー5bは閉鎖から開放状態に設定変更する。これにより、熱風は焙煎機3には送り込まれず、バイパス経路6を介して分岐した排出経路5へとバイパスされる。これにより、焙煎工程が終了したコーヒー豆がさらに加熱されて焙煎度が必要以上に進行しないようにしている。さらに、焙煎工程が終了すると、排出経路8のダンパー8aを半開から全開に設定変更する。
【0055】
<乾燥工程・焙煎工程について>
つぎに、乾燥工程と焙煎工程について説明する。図4は、時間の経過と温度・焙煎度・水分量の変化を示すグラフである。焙煎度はL値(明度)で示される。
【0056】
(1)乾燥工程
焙煎機3の中にコーヒー豆(生豆)を投入する。水分量は11〜12%である。生豆のL値は約60である。豆の温度が160℃になるまで乾燥させると、水分量は5〜6%程度まで減少する。豆の体積膨張は100mgあたり20ml程度である。基本的に、乾燥工程では水分量以外の品質変化は生じない。
【0057】
(2)第1焙煎工程
炒り豆温度はさらに上昇し、200℃まで上昇する。190℃程度で中炒りの豆となる。水分量は3%程度まで減少する。L値は45〜25程度までに急激に変化する。豆の体積膨張は100mgあたり30ml程度である。生成される成分として、刺激臭や甘い香りの原因となるアセトアルデヒドやジアセチルは少なくなり、苦味成分の原因となるピリジンが増加する。
【0058】
(3)第2焙煎工程
炒り豆温度はさらに上昇し、240℃まで上昇する。210℃程度で深煎りの豆となる。水分量は、1〜2%まで減少する。L値は19程度まで低下する。豆の体積膨張は100mgあたり35ml程度である。生成される成分として、酸味や渋味等の刺激成分(酢酸+フルフラール)が減少し、香ばしさや苦味成分(2−メチルフラン、ピリジン)が増加する。
【0059】
<水分供給の効果>
本発明においては、乾燥工程では加湿機を動作させないが、焙煎工程においては加湿機を動作させて、水分を送り込み経路2を介して焙煎機3に送り込む。焙煎工程においては、すでにかなり水分量が減少しているが、それを補給するものである。含有水分量は、加湿機4を動作させることで、図4に示すグラフよりも、0.2〜0.5%程度、増加するものと推定される。
【0060】
水分を供給することの効果は、炒り豆の表面から内部への熱伝達を行いやすくすることである。水分を供給して炒り豆を軟化させて、炒り豆の膨張を促進させることである。炒り豆内部の高温高圧化を緩和し豆全体に均一な焙煎を行うことである。これにより、刺すような強い苦味をなくすことができる。また水溶性の成分(例えば、ウイスキー等の液体)を使用することで、新たな味を作り出すことができる。
【0061】
焙煎豆は、表面よりも内部の方が外側よりも温度が高くなり深く炒られる。焙煎工程においては、外側が先に乾燥していく。豆の表面に近いところから水分が失われるが、中心部に水分が残る。水分が抜けて硬化した表面側のポーラスに守られるように、中心部の残存した水分は密閉した状態で加熱されていく。そして内部では水分が蒸発して高圧となり、さらに高温になっていく。これが刺すような強い苦味の原因となる。
【0062】
焙煎工程から炒り上がりまでの工程で炒り豆から出てくる水分は3〜4%程度であり、炒り豆の内部にまで熱を伝達する水分が不足して、炒り豆の中心部まで熱が届きにくいのが現状である。そこで、加湿機(加湿手段)を設けて水分補給を行うことで、熱伝達を行いやすくし、炒り豆の全体に均一に熱が伝わるようにする。それと共に、組織の軟化を促し、炒り豆の膨張をしやすくする。
【0063】
<加湿機の別実施形態>
図5は、加湿機4の配置の別実施形態を示す。図1図3の実施形態において、加湿機4は送り込み経路2に配置されているが、図5に示すように、熱風炉1や循環経路7に配置してもよい(4x、4yで示す)。かかる構成によっても、送り込み経路2を経由して焙煎機3に水分を供給することができる。また、加湿機4は1カ所だけでなく、複数個所、例えば、送り込み経路2と熱風炉1の双方に設けてもよい。
【0064】
<別実施形態>
経路(ダクト)を開閉するための手段は、ダンパーに限定されるものではない。
【0065】
第3実施形態では、循環経路と排出経路を一部供用しているが、かかる構成に限定されるものではなく、それぞれを独立して設けてもよい。
【0066】
熱風をバイパス経路を介して排出する場合、焙煎機内の回転ドラムをバイパスするようにしてもよいし、焙煎機自体をバイパスするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
A 焙煎装置
1 熱風炉
2 送り込み経路
3 焙煎機
4 加湿機(加湿手段)
5 排出経路
5a,5b ダンパー
6 バイパス経路
6a ダンパー
7 循環経路
7a,7b ダンパー
8 分岐経路
8a ダンパー
【要約】
【課題】豆全体に熱が均一に伝わるようにして、豆の急激な膨張を抑えて、品質の良い豆の焙煎を行うことのできる焙煎装置を提供する。
【解決手段】豆の焙煎を行う焙煎機3と、焙煎機3へ熱風を送り出すための熱風炉1と、熱風炉1から焙煎機3へと熱風を送り込むための流路を形成する送り込み経路2と、焙煎機3を通過した熱風を熱風炉1へと戻す循環経路7と、焙煎機3を通過した熱風を排出させる排出経路5と、送り込み経路2から分岐した分岐経路8と、を備えた焙煎装置であって、送り込み経路2に設けられた加湿手段4と、この加湿手段4を制御する制御手段とを備え、制御手段は、豆の乾燥工程において加湿手段4を非動作とし、乾燥工程に続く焙煎工程において加湿手段4を動作させて、水分を焙煎機3に送り込むように制御する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5