特許第5792988号(P5792988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792988
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】スカラ型ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20150928BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   B25J9/06 D
   B25J19/00 H
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-96722(P2011-96722)
(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公開番号】特開2012-228733(P2012-228733A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2013年11月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬目 俊文
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−115720(JP,A)
【文献】 特開2003−117876(JP,A)
【文献】 特開2010−280019(JP,A)
【文献】 特開平11−138488(JP,A)
【文献】 特開平03−136789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動軸を水平方向に移動するスカラ型ロボットであって、
前記作動軸の側方を覆うカバー部材と、
前記作動軸を回転させる回転用モータと、
前記カバー部材の上部に配置され、前記作動軸と連動し上下する上部ジャバラ状部材と、
前記カバー部材の下部に配置され、前記作動軸と連動し上下する下部ジャバラ状部材とを有し、
前記カバー部材と前記上部ジャバラ状部材、及び、前記カバー部材と前記下部ジャバラ状部材は、それぞれ連通し、
前記回転用モータは、前記上部ジャバラ状部材と前記下部ジャバラ状部材の間に配置され、
前記作動軸は、前記回転用モータによって駆動されるスプラインシャフトと、前記スプラインシャフトの上端に着脱可能に連結されて前記カバー部材の外部に突出する延長シャフトとで構成され、
前記延長シャフトは、前記カバー部材の上面に形成された上部挿通穴部を貫通して前記カバー部材の外部上方に延びる中継シャフトと、前記中継シャフトの上端に着脱可能に連結され、ハウジングを介して前記上部ジャバラ状部材の上端が固定される連結用シャフトとで構成されていることを特徴とするスカラ型ロボット。
【請求項2】
記上部ジャバラ状部材と前記下部ジャバラ状部材との間で、かつ前記回転用モータと前記作動軸との間に、前記回転用モータの回転速度を減速して前記作動軸に伝達する減速機を設置した請求項1に記載のスカラ型ロボット。
【請求項3】
前記上部ジャバラ状部材を前記作動軸の外周に配置して、前記上部ジャバラ状部材の上端部と前記作動軸の上端部との間に、前記上部ジャバラ状部材に対して前記作動軸を回転可能にして前記上部ジャバラ状部材の上端部と前記作動軸の上端部との間をシールする回転シール機構を設けた請求項1または2に記載のスカラ型ロボット。
【請求項4】
前記下部ジャバラ状部材を前記作動軸の外周に配置して、前記下部ジャバラ状部材の下端部と前記作動軸の下端部との間に、前記下部ジャバラ状部材に対して前記作動軸を回転可能にして前記下部ジャバラ状部材の下端部と前記作動軸の下端部との間をシールする回転シール機構を設けた請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載のスカラ型ロボット。
【請求項5】
前記作動軸を筒状に形成した請求項1ないしのうちのいずれか一つに記載のスカラ型ロボット。
【請求項6】
前記作動軸を移動可能に支持するとともに、前記カバー部材との間に空間部を形成するアームを備え、前記カバー部材と前記アームとからなる空間形成部の上部に前記上部挿通穴を形成して下部に下部挿通穴を形成し、前記作動軸を前記上部挿通穴と前記下部挿通穴とに挿通させた請求項1ないしのうちのいずれか一つに記載のスカラ型ロボット。
【請求項7】
前記アームに上下に貫通する取付用穴と連通孔とを形成して、前記カバー部材を前記取付用穴と前記連通孔とを挟んで前記アームの上下に配置し、前記作動軸を前記取付用穴に挿通させるとともに、前記連通孔を介して前記カバー部材の上部と下部との間で空気が流れるようにした請求項に記載のスカラ型ロボット。
【請求項8】
前記連通孔における空気が流れる部分の断面積を、前記上部挿通穴の内周面と前記作動軸の外周面との間の空気が流れる部分の断面積および前記下部挿通穴の内周面と前記作動軸の外周面との間の空気が流れる部分の断面積よりも大きくした請求項に記載のスカラ型ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に回転可能に設けられたアームの先端で、上下動するとともに軸周り方向に回転する作動軸の上下に、クリーンルーム用、または防塵防滴用のジャバラ状部材を設けたスカラ型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品の実装にスカラ型ロボットが用いられており、このようなスカラ型ロボットの中に、外部の粉塵や水滴などが内部に入ることを防止したり、逆に、内部の粉塵や油滴などが外部に飛散したりすることを防止するために、作動軸の上部や下部とロボット本体のカバーとの間にジャバラ状のカバー部材を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。このスカラ型ロボットは、本体アーム、本体アームに対して水平回転可能な第1アームおよび第1アームに対して水平回転可能な第2アームを備えており、第2アームの先端には、上下動および回転動が可能になったボールねじスプラインが設置されている。また、ボールねじスプラインの上部と下部には、それぞれ帯電防止型ジャバラが設けられており、この帯電防止型ジャバラによって、スカラ型ロボット内または、スカラ型ロボットが設置されるクリーンルーム内のクリーン度が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−138488号公報
【発明の概要】
【0004】
このようなスカラ型ロボットではボールねじスプラインを上下動および回転動させるために、モータが用いられており、このモータは作動により発熱する。そして、この発熱が過剰になると、モータの作動効率が悪くなったり、モータが破損し易くなったりするという問題が生じる。前述した従来のスカラ型ロボットでは、ボールねじスプラインの上下にそれぞれジャバラが設けられており、ボールねじスプラインが上下に移動する際に、第2アームを挟んで上部側と下部側との間で空気が移動する。しかしながら、前述したスカラ型ロボットでは、ボールねじスプラインはタイミングベルトを介してモータの作動により移動するため、モータは上下のジャバラ間から離れた位置に設置されている。このため、モータを上下のジャバラ間で移動する空気で効率的に冷却することはできない。
【0005】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、その目的は、防塵防滴性に優れるとともに、モータの過熱を防止できるスカラ型ロボットを提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係るスカラ型ロボットの構成上の特徴は、作動軸(32)を水平方向に移動するスカラ型ロボット(A,C)であって、作動軸の側方を覆うカバー部材(31,58)と、作動軸を回転させる回転用モータ(34)と、カバー部材の上部に配置され、作動軸と連動し上下する上部ジャバラ状部材(50)と、カバー部材の下部に配置され、作動軸と連動し上下する下部ジャバラ状部材(60)とを有し、カバー部材と上部ジャバラ状部材、及び、カバー部材と下部ジャバラ状部材は、それぞれ連通し、回転用モータは、上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材の間に配置され、作動軸は、回転用モータによって駆動されるスプラインシャフト(32a)と、スプラインシャフトの上端に着脱可能に連結されてカバー部材の外部に突出する延長シャフト(32b,32c)とで構成され、延長シャフトは、カバー部材の上面に形成された上部挿通穴部(31a)を貫通してカバー部材の外部上方に延びる中継シャフト(32b)と、中継シャフトの上端に着脱可能に連結され、ハウジングを介して上部ジャバラ状部材の上端が固定される連結用シャフト(32c)とで構成されていることにある。
【0007】
本発明に係るスカラ型ロボットでは、作動軸の側方を覆うカバー部材の上部に上部ジャバラ状部材を配置して、カバー部材の下部に下部ジャバラ状部材を配置し、上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材との間をカバー部材を介して連通している。そして、回転用モータを上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材との間に配置している。このため、作動軸が上昇するときには、上部ジャバラ状部材が伸長して下部ジャバラ状部材が収縮するため、下部ジャバラ状部材内の空気は、上部ジャバラ状部材側に移動する。また、作動軸が下降するときには、上部ジャバラ状部材が収縮して下部ジャバラ状部材が伸長するため、上部ジャバラ状部材内の空気は、下部ジャバラ状部材側に移動する。
【0008】
これによって、上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材との間で空気の流れが生じ、回転用モータはその流れの中に位置するため効率よく冷却される。このため、回転用モータが過熱されて作動効率が低下したり破損しやすくなったりすることが防止される。また、作動軸の上下に上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材とを設けたため、作動軸が昇降しても上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材との内部全体での体積変化が生じないため、圧力変動も生じなくなる。これによって、上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材とに破損や劣化が生じにくくなる。さらに、本発明によると、作動軸を上下移動可能にしながら回転させることができる。また、本発明では、作動軸における上下移動および軸周り方向に回転するため加工精度が要求され高価につく部分をスプラインシャフトで構成し、作動軸におけるカバー部材の外部に突出する部分を延長シャフトで構成している。このため、スプラインシャフトを延長させてカバー部材の外部に突出させる必要がなくなる。また、延長シャフトとしては、簡単な構成の安価なものを用いることができる。また、延長シャフトはスプラインシャフトに対して着脱可能になっているため、簡単に交換することができる。
【0009】
本発明に係るスカラ型ロボットの他の構成上の特徴は、上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材との間で、かつ回転用モータと作動軸との間に、回転用モータの回転速度を減速して作動軸に伝達する減速機(35)を設置したことにある。本発明によると、回転用モータに加えて、回転用モータの回転速度を減速する減速機も上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材との間に生じる空気の流れで冷却することができる。
【0010】
本発明に係るスカラ型ロボットのさらに他の構成上の特徴は、上部ジャバラ状部材を作動軸の外周に配置して、上部ジャバラ状部材の上端部と作動軸の上端部との間に、上部ジャバラ状部材に対して作動軸を回転可能にして上部ジャバラ状部材の上端部と作動軸の上端部との間をシールする回転シール機構(51,52,53,53d)を設けたことにある。本発明によると、作動軸が軸周り方向に回転しても上部ジャバラ状部材が回転することを防止できるため、ねじれが繰り返し生じることによって上部ジャバラ状部材に破損が生じることを防止できる。また、上部ジャバラ状部材の上端部と作動軸の上端部との間を確実にシールできる。
【0011】
本発明に係るスカラ型ロボットのさらに他の構成上の特徴は、下部ジャバラ状部材を作動軸の外周に配置して、下部ジャバラ状部材の下端部と作動軸の下端部との間に、下部ジャバラ状部材に対して作動軸を回転可能にして下部ジャバラ状部材の下端部と作動軸の下端部との間をシールする回転シール機構(61,62,63,63e)を設けたことにある。本発明によると、作動軸が軸周り方向に回転しても下部ジャバラ状部材が回転することを防止できるため、ねじれが繰り返し生じることによって下部ジャバラ状部材に破損が生じることを防止できる。また、下部ジャバラ状部材の下端部と作動軸の下端部との間を確実にシールできる。
【0014】
本発明に係るスカラ型ロボットのさらに他の構成上の特徴は、作動軸を筒状に形成したことにある。本発明によると、作動軸を中空の筒状に形成しているため、作動軸の内部を配線や配管を収容するために利用することができる。
【0015】
本発明に係るスカラ型ロボットのさらに他の構成上の特徴は、作動軸を移動可能に支持するとともに、カバー部材との間に空間部を形成するアーム(20)を備え、カバー部材とアームとからなる空間形成部の上部に上部挿通穴(31a)を形成して下部に下部挿通穴(58c)を形成し、作動軸を上部挿通穴と下部挿通穴とに挿通させたことにある。本発明によると、作動軸を支持するアームとカバー部材とで空間形成部を構成し、作動軸を挿通させるために、空間形成部に設けた上部挿通穴と下部挿通穴とで、上部ジャバラ状部材と下部ジャバラ状部材との間を連通することができる。
【0016】
本発明に係るスカラ型ロボットのさらに他の構成上の特徴は、アームに上下に貫通する取付用穴(25)と連通孔(69,69a)とを形成して、カバー部材を取付用穴と連通孔とを挟んでアームの上下に配置し、作動軸を取付用穴に挿通させるとともに、連通孔を介してカバー部材の上部と下部との間で空気が流れるようにしたことにある。
【0017】
この場合、上部挿通穴はカバー部材の上部に位置し、下部挿通穴はカバー部材の下部に位置するようになる。そして、カバー部材の上部と下部との間にアームが位置するようになるが、アームに取付用穴を形成することによって、作動軸をカバー部材の上下に貫通させることができる。また、アームの上下にカバー部材を配置することによって、カバー部材の上部と下部との間にアームが位置しても、アームに連通孔を形成することによって、カバー部材の上部と下部とを連通させて空気が流れるようにすることができる。
【0018】
本発明に係るスカラ型ロボットのさらに他の構成上の特徴は、連通孔における空気が流れる部分の断面積を、上部挿通穴の内周面と作動軸の外周面との間の空気が流れる部分の断面積および下部挿通穴の内周面と作動軸の外周面との間の空気が流れる部分の断面積よりも大きくしたことにある。この場合、上部挿通穴の内周面と作動軸の外周面との間の空気が流れる部分の断面積と、下部挿通穴の内周面と作動軸の外周面との間の空気が流れる部分の断面積とは同じか、または連通孔の断面積の方が大きくなるようにしておく。本発明によると、作動軸の昇降に伴う、上部ジャバラ状部材内、カバー部材内および下部ジャバラ状部材内の全体の内部圧力の変化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係るスカラ型ロボットを示した斜視図である。
図2】標準仕様のスカラ型ロボットを示した斜視図である。
図3】作動軸が上昇したときのスカラ型ロボットを示した断面図である。
図4】作動軸が下降したときのスカラ型ロボットを示した断面図である。
図5】上部ジャバラ状部材の取付構造を示した断面図である。
図6】スプラインシャフトと中継シャフトとの連結部を示した断面図である。
図7】上部ジャバラ状部材と連結用シャフトとの連結部を示した断面図である。
図8】下部ジャバラ状部材の取付構造を示した断面図である。
図9】下部ジャバラ状部材と筒状部材との連結部を示した断面図である。
図10】下部ジャバラ状部材と連結用シャフトとの連結部を示した断面図である。
図11】第2アームに設けた連通孔を示した斜視図である。
図12】本発明の第2実施形態に係るスカラ型ロボットの作動軸が上昇した状態を示した斜視図である。
図13】本発明の第2実施形態に係るスカラ型ロボットの作動軸が下降した状態を示した斜視図である。
図14】配線等を作動軸の上端のハウジングに固定した状態を示した斜視図である。
図15】配線等を作動軸の下端から引き出して各装置に接続した状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るスカラ型ロボットを図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係るスカラ型ロボットAを示している。このスカラ型ロボットAは、ベース部10と、第1アーム18と、第2アーム20と、第2アーム20に設けられた昇降回転駆動装置30と、昇降回転駆動装置30の上下に設けられた上部ジャバラ状部材50と下部ジャバラ状部材60とを備えている。このスカラ型ロボットAは、例えば、図2に示した標準仕様のスカラ型ロボットBに、上部ジャバラ状部材50と下部ジャバラ状部材60とを設けて防塵防滴仕様にするとともに、多少の変更を加えたものである。
【0021】
ベース部10は床や台等に固定設置されており、図3および図4に示したように、矩形箱形のケース11と、ケース11内の上部に固定設置されたモータ12と、モータ12の上部に組み付けられケース11の上面部11aに設置された減速機13とを備えている。以下の説明において、上下方向および左右方向は、図3および図4に基づいて記載する。
【0022】
ケース11の上面部11aにおける左側部分に取付用穴11bが形成されており、モータ12と減速機13とは、この取付用穴11bを介して上面部11aに取り付けられている。モータ12は、モータケース12aに軸受を介して回転自在に支持された回転軸12b、回転軸12bの外周に設けられたロータ、ロータの外周に対向して配置されたステータおよび回転検出用レゾルバなどで構成されている。このモータ12は、回転軸12bを上方に向けて突出させるとともに、取付用穴11b内を下方から上方に向かって貫通させて、減速機13の入力部13aに連結されており、モータケース12aを上面部11aの下面に固定することにより、ケース11に組み付けられている。
【0023】
減速機13は、ハーモニックドライブ(登録商標)として知られているもので、詳細は省略するが、モータ12の回転軸12bに連結された入力部13aと、第1アーム18に連結された出力部13bとを備えている。そして、出力部13bの外周にはベアリング14が設けられており、このベアリング14によって、第1アーム18は、ケース11に対して水平面上で回転可能に支持されている。また、モータ12の回転速度は、回転軸12b、入力部13aおよび出力部13bを介して減速されて第1アーム18に伝達される。
【0024】
ケース11の上面部11aの右側部分には、後述するカバー31に向かって延びるフレキシブルチューブ15の一端部が取付部材15aによって固定されている。フレキシブルチューブ15の内部には、各種の配線や吸引用の配管等(以下、配線等16とする。)が収容されている。また、ケース11の右側面部11cの下部には、ケース11内の各種の配線や吸引用の配管等の各端部を、ケース11の外側の配線および配管(以下、配線等17とする。)に接続するための排気継手17aが設けられている。この排気継手17aと、フレキシブルチューブ15内の配線等16は、ケース11内で接続されている。また、右側面部11cにおける排気継手17aの上方部分には、ユーザ配線コネクタ17bが設けられている。
【0025】
第1アーム18は、長円形の板状に形成されている。第1アーム18の下面における右側部分には天井面の高さが低い取付用凹部が形成されており、この取付用凹部に減速機13の出力部13bが固定されている。そして、第1アーム18の上面における左側部分には深さが浅い取付用凹部が形成され、その取付用凹部に、後述する減速機23が固定設置され、この減速機23とモータ22とを介して第2アーム20が取り付けられている。
【0026】
第2アーム20は、第1アーム18よりも長軸方向に長く、厚みが薄い長円形の板状に形成されており、その右側部分には、上下に貫通する取付用穴21が形成されている。そして、モータ22は、回転軸22bを下方に向けて突出させて、取付用穴21内を上方から下方に向かって貫通させ、モータケース22aを第2アーム20の上面に固定させて、第2アーム20に組み付けられている。このモータ22は、前述したモータ12と上下方向の位置が逆になっているが、同機種のもので構成されている。なお、本実施形態においては、第2アーム20で本発明に係るアームが構成される。
【0027】
減速機23も、前述した減速機13と上下方向の位置が逆になっているが、同機種のもので構成されており、モータ22の回転軸22bに連結された入力部23aと第1アーム18に連結された出力部23bとを備えている。減速機23は、モータ22の回転軸22bの回転速度を減速して第1アーム18に伝達する。そして、出力部23bの外周にベアリング24が設けられている。このベアリング24を介して、第2アーム20は、第1アーム18に対して回転可能に支持される。また、モータ22の駆動力は回転軸22b、入力部23aおよび出力部23bを介して第1アーム18に伝達される。第2アーム20の左側部分には、後述する作動軸32を挿通させる取付用穴25が形成されている。
【0028】
昇降回転駆動装置30は、第2アーム20の左側に設けられており、カバー31と、取付用穴25を挿通して垂直に配置された中空の作動軸32と、作動軸32を軸周り方向に回転させる回転装置33と、作動軸32を上下方向に移動させる昇降装置40とを備えている。また、作動軸32は、本体部分を構成するスプラインシャフト32aと、スプラインシャフト32aの上端に連結され、カバー31の上面に形成された円筒形の挿通穴部31aを貫通して外部上方に延びる中継シャフト32bと、中継シャフト32bの上端に連結された連結用シャフト32cと、スプラインシャフト32aの下端に連結された連結用シャフト32dとで構成されている。中継シャフト32bと連結用シャフト32cとで本発明に係る延長シャフトが構成される。また、挿通穴部31aで本発明に係る上部挿通穴が構成される。
【0029】
カバー31は、左側部分が右側部分よりも高くなった段違いの箱状に形成されており、第2アーム20の上面の略全面にわたって設けられている。このカバー31は、スプラインシャフト32a、回転装置33および昇降装置40の第2アーム20よりも上方に位置する部分を左側の高さの高い部分の内部に位置させた状態で、これらのものを周囲と上方から囲っている。また、カバー31の上面における右側部分には上方に突出する有天筒状の突出収容部31bが形成されている。
【0030】
回転装置33は、スプラインシャフト32aが貫通するモータ34と減速機35とを備えている。モータ34は、取付用穴25を貫通して第2アーム20に固定設置されており、モータケース34a内に回転自在に支持された円筒状の回転軸34b、回転軸34bの外周に設けられたロータ、ロータの外周に対向して配置されたステータおよび回転検出用レゾルバなどで構成されている。減速機35は、前述した減速機13,23と同機種のもので構成されており、入力部35aおよび出力部35bを備えている。そして、出力部35bの外周にはベアリング36が設けられている。
【0031】
ベアリング36の外輪には、取付部材37aを介してボールスプラインナット37が連結されている。このボールスプラインナット37の内周面には複数の縦溝が周方向に一定間隔で形成されている。また、スプラインシャフト32aは、外周面に複数の縦溝32e(図11参照)が形成された鋼製の円筒軸からなっており、縦溝32eをボールスプラインナット37の縦溝に噛み合わせて、モータ34、減速機35およびボールスプラインナット37に対して上下移動可能な状態で設置されている。また、スプラインシャフト32aは、下部がボールスプラインナット37、取付部材37aおよびベアリング36を介して第2アーム20に回転自在に支持されており、モータ34の作動により生じる回転を減速機35によって減速されてボールスプラインナット37とともに回転する。
【0032】
スプラインシャフト32aの上端部は、図5に示したように、上下に配置されたベアリング38a,38bによって軸回り方向に回転可能で、かつ上下方向には固定された状態で、昇降装置40に備わった連結部材41に支持されている。昇降装置40は、連結部材41、ボールねじナット42、ボールねじ軸43およびモータ44を備えている。モータ44は、第2アーム20におけるモータ34が取り付けられた部分の右側に固定設置されている。ボールねじ軸43は、モータ44の回転軸に連結され、モータ44の作動により軸周り方向に回転する。
【0033】
そして、ボールねじナット42は、ボールねじ軸43に螺合しており、連結部材41は、ボールねじナット42とスプラインシャフト32aの上端部とを連結している。このため、モータ44の作動により、ボールねじ軸43が軸周り方向に回転すると、ボールねじナット42は、ボールねじ軸43に沿って上下移動し、これによって、スプラインシャフト32aも連結部材41を介して上下移動する。なお、ボールねじ軸43の上端側部分は、カバー31の突出収容部31b内に突出している。
【0034】
スプラインシャフト32aの上端には、ベアリングナット45を介して中継シャフト32bが連結されている。中継シャフト32bは、外径および内径が、スプラインシャフト32aと略同じに設定されたアルミニウム製の筒状部材で構成されており、表面にはアルマイト処理が施されている。これによって、耐食性および耐摩耗性を向上させている。また、図6に示したように、中継シャフト32bの下端部には外部側に突出する連結用のフランジ部46が形成されており、このフランジ部46の下面外周には下方に突出するリング状の突起46aがフランジ部46の周縁部に沿って形成されている。そして、フランジ部46における中継シャフト32bの本体部分と突起46aとの間には、上下に貫通する複数のねじ挿通穴(図示せず)が形成されている。
【0035】
ベアリングナット45は、円筒状のベアリングナット本体45aと、ベアリングナット本体45aの外周上部から円周に沿って外部側に延びるフランジ部45bとからなっている。ベアリングナット本体45aは、内周側にスプラインシャフト32aの上端外周を位置させてねじどうしの螺合によりスプラインシャフト32aに固定されている。フランジ部45bは、フランジ部46の突起46aの内部に嵌め込める大きさに形成されており、上下に貫通する複数のねじ穴(図示せず)がフランジ部46のねじ挿通穴と同じ間隔で形成されている。そして、中継シャフト32bは、突起46aの内部にフランジ部45bを入れ、フランジ部46のねじ挿通穴の上部からねじ47を挿入してそのねじ47をフランジ部45bのねじ穴に螺合させることにより、スプラインシャフト32aに連結されている。また、ベアリングナット45の上端面と、中継シャフト32bの下面との間はOリング47aによってシールされている。
【0036】
中継シャフト32bの上端には、筒状の連結用シャフト32cが連結されており、カバー31の挿通穴部31aと連結用シャフト32cの上部との間に上部ジャバラ状部材50が取り付けられている。図7に示したように、中継シャフト32bの上端部には外部側に突出する連結用のフランジ部48が形成されており、このフランジ部48には、上下に貫通する複数のねじ穴(図示せず)が円周に沿って形成されている。また、連結用シャフト32cは、中継シャフト32bよりも軸方向の長さが短く外径および内径が中継シャフト32bと同じに設定された鋼製の筒状部材で構成されており、表面にはメッキが施されている。
【0037】
この連結用シャフト32cの下端部には外部側に突出する連結用のフランジ部49が形成されており、このフランジ部49の下面外周には下方に突出するリング状の突起49aがフランジ部49の周縁部に沿って形成されている。そして、フランジ部49における連結用シャフト32cの本体部分と突起49aとの間には、上下に貫通する複数のねじ挿通穴が、フランジ部48のねじ穴と同じ間隔で形成されている。連結用シャフト32cは、突起49aの内部にフランジ部48を入れ、フランジ部49のねじ挿通穴の上部からねじ48aを挿入してそのねじ48aをフランジ部48のねじ穴に螺合させることにより、中継シャフト32bに連結されている。また、フランジ部48の上面と、フランジ部49の下面との間はOリング48bによってシールされている。
【0038】
連結用シャフト32cの上部外周には、ベアリング51を介してハウジング52が取り付けられており、連結用シャフト32cの上部外周におけるベアリング51およびハウジング52の上方にはハウジング53が取り付けられている。ベアリング51は、内輪51aを連結用シャフト32cの外周に固定し、外輪51bをハウジング52に固定することによって、連結用シャフト32cに対してハウジング52を上下方向には移動できなく軸周り方向には回転可能にして連結している。ハウジング52は、ベアリング51の上方で、連結用シャフト32cの外周面と間隔をおいた部分から外周側に広がるフランジ状の水平部52aと、水平部52aの下面外周側からベアリング51の外周面に沿って下方に延びるベアリング収納部52bと、水平部52aの上面内周側から上方に延びる固定部52c(後述する端面シール53dが縮んで固定される)とで構成されている。
【0039】
そして、連結用シャフト32cとベアリング51の内輪51aとの間およびベアリング51の外輪51bとハウジング52のベアリング収納部52bとの間は、それぞれOリング51c,51dによってシールされている。また、ベアリング収納部52bの内周面下部には、円周に沿って溝部が形成され、この溝部にサークリップ52dが設置されている。このサークリップ52dによって、ベアリング収納部52b内からベアリング51が抜け出ることが防止される。
【0040】
ハウジング53は、連結用シャフト32cの外周面上端から外周側に広がるフランジ状の水平部53aと、水平部53aの下面内周側から連結用シャフト32cの外周面とハウジング52の固定部52cとの間を下方に延びる摺動支持部53bと、水平部53aの下面外周側からハウジング52の上面外周に向かって下方に延びるシール収納部53cとで構成されている。ハウジング53の内周面はねじどうしの螺合によって、連結用シャフト32cの外周面に固定されており、その双方の境界面にはシール剤が塗布されている。また、水平部53aの下面、シール収納部53c、固定部52cの外周面および水平部52aの上面で囲まれる空間には端面シール53dが設置されている。
【0041】
このため、ベアリング51の内輪51aとハウジング53とは、連結用シャフト32cに固定され、ベアリング51の外輪51bとハウジング52とは、連結用シャフト32cに対して回転可能になっている。そして、ハウジング52が回転する際、端面シール53dは、水平部53aの下面に対して摺動する。また、連結用シャフト32c、ベアリング51、ハウジング52およびハウジング53のそれぞれ接触する部分は、Oリング51c,51d、シール剤および端面シール53dでシールされている。なお、端面シール53dは、接触シールで構成されており、粉塵等が通過することを防止する。
【0042】
上部ジャバラ状部材50は、ウレタン樹脂をジャバラ状に形成した伸縮可能な部材で構成されており、下端部と上端部とにそれぞれ円筒形の固定部50a,50bが形成されている。固定部50aは、図6に示したように、カバー31の挿通穴部31aの外周面を覆っており、その外周にウレタンシート54を介してクランプ部材55が取り付けられている。クランプ部材55は、帯状部55aとねじを備えた締結部55bとで構成されており、ウレタンシート54を介して固定部50aの周囲に帯状部55aを巻き付け、締結部55bで帯状部55aを締め付けることにより、固定部50aを挿通穴部31aの外周面に固定している。
【0043】
固定部50bは、図7に示したように、ハウジング52の外周面を覆っており、その外周にウレタンシート54aを介してクランプ部材56が取り付けられている。クランプ部材56は、クランプ部材55と同様、帯状部56aとねじを備えた締結部56bとで構成されており、ウレタンシート54aを介して固定部50bの周囲に帯状部56aを巻き付け、締結部56bで帯状部56aを締め付けることにより、固定部50bをハウジング52に固定している。また、ウレタンシート54aとハウジング52との間は、上下に間隔をおいて配置されたOリング57a,57bによってシールされている。
【0044】
第2アーム20の下面における左側部分には、図8に示したように、減速機35やボールスプラインナット37を覆う筒状部材58が設けられている。この筒状部材58は、上部が減速機35を覆う大径部58aで構成され、その下方に、ボールスプラインナット37を覆い下方に行くほど細径になった傾斜部58bが形成されている。そして、傾斜部58bの下方に、細径で軸方向の長さも短い連結部58cが形成されている。筒状部材58とカバー31とで本発明に係るカバー部材が構成され、このカバー部材と第2アーム20とで本発明に係る空間形成部が構成される。また、連結部58cで本発明に係る下部挿通穴が構成される。
【0045】
連結部58cの下端開口からは、スプラインシャフト32aの下部が下方に向かって突出している。スプラインシャフト32aの連結部58cの下端開口から突出した部分の下端には、連結用シャフト32dが連結されており、連結部58cと連結用シャフト32dとの間に下部ジャバラ状部材60が取り付けられている。
【0046】
連結用シャフト32dは、上部がスプラインシャフト32aの下端側部分を覆う大径筒状に形成され、下部がスプラインシャフト32aと同程度の外径と内径を備えた小径筒状に形成された段違いの筒状に形成されている。そして、連結用シャフト32dの上端には、図9に示したすり割り締め付け部59が形成されており、このすり割り締め付け部59をボルト59aで締め付けることにより、連結用シャフト32dはスプラインシャフト32aに固定されている。また、連結用シャフト32dの小径筒状部分の上部外周には、図10に示したように、ベアリング61を介してハウジング62が取り付けられており、連結用シャフト32dの外周におけるベアリング61およびハウジング62の下方にはハウジング63が取り付けられている。
【0047】
ベアリング61は、内輪61aを連結用シャフト32dの外周に固定し、外輪61bをハウジング62に固定することによって、連結用シャフト32dに対してハウジング62を上下方向には移動できなく軸周り方向には回転可能にして連結している。ハウジング62は、ベアリング61の下方で、連結用シャフト32dの外周面と間隔をおいた部分から外周側に広がるフランジ状の水平部62a、水平部62aの上面外周側からベアリング61の外周面に沿って上方に延びるベアリング収納部62b、水平部62aの下面内周縁部と下面外周縁部とから一定間隔を保って下方に延びる固定部62c(後述する端面シール63eが縮んで固定される)およびシール収納部62dで構成されている。
【0048】
そして、連結用シャフト32dとベアリング61の内輪61aとの間およびベアリング61の外輪61bとハウジング62のベアリング収納部62bとの間は、それぞれOリング61c,61dによってシールされている。また、ベアリング収納部62bの内周面上部には、円周に沿って溝部が形成され、この溝部にサークリップ62eが設置されている。このサークリップ62eによって、ベアリング収納部62b内からベアリング61が抜け出ることが防止される。
【0049】
ハウジング63は、固定部62cとシール収納部62dとの下端開口を塞ぐようにして連結用シャフト32dの外周面から外周側に広がるフランジ状の水平部63aと、水平部63aの上面内周側から連結用シャフト32dの外周面とハウジング62の固定部62cとの間を上方に延びるベアリング内輪固定部63bと、ベアリング内輪固定部63bの下面の一方から下方に延びたのちに連結用シャフト32dの外周面に沿って両側から円周方向に延びるC形のすり割り締め付け部63cとで構成されている。ハウジング63は、すり割り締め付け部63cをボルト63dで締め付けることにより、連結用シャフト32dに固定されている。また、水平部62aの下面、固定部62c、シール収納部62dおよび水平部63aの上面で囲まれる空間に端面シール63eが設置され、連結用シャフト32dとハウジング63のベアリング内輪固定部63bとの間は、Oリング63fによってシールされている。
【0050】
このため、ベアリング61の内輪61aとハウジング63とは、連結用シャフト32dに固定され、ベアリング61の外輪61bとハウジング62とは、連結用シャフト32dに対して回転可能になっている。そして、ハウジング62が回転する際、端面シール63eは、水平部63aに対して摺動する。また、連結用シャフト32d、ベアリング61、ハウジング62およびハウジング63のそれぞれ接触する部分は、Oリング61c,61d,63fおよび端面シール63eでシールされている。なお、端面シール63eは、前述した端面シール53dと同じ構成をしている。
【0051】
下部ジャバラ状部材60は、上部ジャバラ状部材50と同じ構成をしており、ジャバラ状部分の上端と下端にそれぞれ円筒形の固定部60a,60bが形成されている。固定部60aは、図9に示したように、連結部58cの外周面を覆っており、その外周にウレタンシート64を介してクランプ部材65が取り付けられている。クランプ部材65は、帯状部65aとねじを備えた締結部65bとで構成されており、ウレタンシート64を介して連結部58cの周囲に帯状部65aを巻き付け、締結部65bで帯状部65aを締め付けることにより、固定部60aを連結部58cに固定している。また、ウレタンシート64と連結部58cとの間は、上下に間隔をおいて配置されたOリング66a,66bによってシールされている。
【0052】
固定部60bは、ハウジング62のベアリング収納部62bの外周面を覆っており、その外周にウレタンシート64aを介してクランプ部材67が取り付けられている。クランプ部材67は、クランプ部材65と同様、帯状部67aとねじを備えた締結部67bとで構成されており、ウレタンシート64aを介して固定部60bの周囲に帯状部67aを巻き付け、締結部67bで帯状部67aを締め付けることにより、固定部60bをハウジング62に固定している。また、ウレタンシート64aとハウジング62との間は、上下に間隔をおいて配置されたOリング68a,68bによってシールされている。
【0053】
また、図11に示したように、第2アーム20におけるモータ34が設置された部分の前後にはそれぞれ上下に貫通する長円状の連通孔69が形成され、左側部分には間隔をおいて互いの対向する部分が反対部分よりも幅が大きくなった略楕円形の連通孔69aが形成されている。連通孔69と連通孔69aとの平面視による合計面積は、挿通穴部31aの内周面と中継シャフト32bの外周面との間の部分の平面視による面積および連結部58cの内周面とスプラインシャフト32aの外周面との間の部分の平面視による面積と同じか、それよりもやや大きくなるように設定されている。
【0054】
このため、作動軸32が上昇したときには、下部ジャバラ状部材60が収縮して下部ジャバラ状部材60内の空気は、筒状部材58から連通孔69,69aを通過してカバー31内に入る。同時に、上部ジャバラ状部材50が伸長してカバー31内の空気の一部は、挿通穴部31aの内部を通過して上部ジャバラ状部材50内に入る。また、作動軸32が下降したときには、上部ジャバラ状部材50が収縮して上部ジャバラ状部材50内の空気は、挿通穴部31aの内部を通過してカバー31内に入る。同時に、下部ジャバラ状部材60が伸長してカバー31内の空気の一部は、連通孔69,69aを通過して筒状部材58内に入り、さらに、筒状部材58から下部ジャバラ状部材60内に入る。このように、作動軸32が昇降するときに、下部ジャバラ状部材60、筒状部材58およびカバー31の内部を流れる空気は、モータ34と減速機35との周囲を通過して、モータ34と減速機35を冷却する。
【0055】
なお、図示は省略しているが、連結用シャフト32dの下部には、アダプタを介してハンドが取り付けられる。ハンドには、工具等の作業用具や、チャック、作業アーム、吸引装置等の作業装置や、センサなどが取り付けられる。また、ケース11内の配線等17やフレキシブルチューブ15内を通る配線等16の一部は、モータ12,22,34,44等に接続され、残りの配線等16は、さらに他の接続配線や接続配管を介してハンドに取り付けられる作業装置やセンサに接続される。フレキシブルチューブ15の先端は取付部材15bによってカバー31の右側部分の上面に固定されており、配線等16は、カバー31内で他の接続配線や接続配管に接続されている。
【0056】
また、配線等16,17等の一部は、制御装置(図示せず)や電源に接続されており、スカラ型ロボットAに備わった各装置は、制御装置の制御にしたがって作動する。さらに、ベース部10の排気継手17aには、フレキシブルチューブ15内を通り、カバー31内に連通する配管が接続されており、カバー31内に圧力変動が生じたときには、排気継手17aから空気を放出することにより、カバー31内の圧力が一定になるようにする。なお、カバー31内に圧力変動が生じる場合には、フレキシブルチューブ15内を空気が通過することにより、その圧力変動は解消される。
【0057】
このように構成されたスカラ型ロボットAを、例えば基板等に電子部品を実装する部品実装機として作動させる際には、基板等、電子部品が装着される部材を所定の場所に設置するとともに、電子部品を所定の場所に準備しておく。また、作動軸32の下部のハンドに、吸引装置やセンサ等の装置を装着し、これらの装置に、対応する配線や配管を接続しておく。そして、スイッチ等の操作により、スカラ型ロボットAの作動を開始させる。これによって、ベース部10に対して、第1アーム18がモータ12の回転軸12bを中心として水平面上で回転するとともに、第1アーム18に対して、第2アーム20がモータ22の回転軸22bを中心として水平面上で回転して作動軸32を電子部品の設置場所に移動させる。
【0058】
ついで、モータ34,44の作動により、作動軸32の下端の吸引装置が下降するとともに、軸周り方向に回転して電子部品を所定方向から吸着できるようにする。その状態で、吸引装置の作動により、吸引装置に電子部品が吸着される。つぎに、モータ44の作動により吸引装置が上昇し、モータ12,22の作動により第1アーム18がベース部10に対して、第2アーム20が第1アーム18に対してそれぞれ回転し、吸引装置は基板の所定位置の上方に移動する。ついで、モータ34,44の作動により、吸引装置が下降するとともに、軸周り方向に回転して電子部品を基板の設定位置に位置させる。その状態で、吸引装置による電子部品の吸引を解除して、電子部品を基板上に実装する。この操作を繰り返すことにより、複数の電子部品が順次基板に装着される。
【0059】
このスカラ型ロボットAが作動する際、上部ジャバラ状部材50と下部ジャバラ状部材60とは、作動軸32のカバー31や筒状部材58から外部に突出する部分の周囲を密閉した状態で、作動軸32の昇降にしたがって伸縮する。このため、外部の塵や埃がスカラ型ロボットA内に入ることを防止するとともに、スカラ型ロボットA内の油滴や埃が外部に飛散することを防止する。また、モータ34と減速機35は、作動軸32の昇降によって上部ジャバラ状部材50から下部ジャバラ状部材60の間に生じる空気の流れによって冷却されて、適正な作動状態を維持する。
【0060】
以上のように、本実施形態に係るスカラ型ロボットAでは、作動軸32の上部に上部ジャバラ状部材50を設けるとともに、作動軸32の下部に下部ジャバラ状部材60を設けて、カバー31および筒状部材58の内部を外部から密閉している。そして、カバー31の挿通穴部31aで上部ジャバラ状部材50の内部とカバー31の内部とを連通し、筒状部材58の連結部58cで下部ジャバラ状部材60の内部と筒状部材58の内部とを連通している。さらに、第2アーム20に設けた連通孔69,69aで、カバー31の内部と筒状部材58の内部とを連通している。このため、スカラ型ロボットAの内部と外部との間で粉塵等が出入りすることを防止した状態で作動軸32を昇降させることができる。
【0061】
また、回転装置33のモータ34と減速機35は、上部ジャバラ状部材50と下部ジャバラ状部材60との間に配置されており、この部分には、作動軸32が昇降する際に特に大きな空気の流れが生じる。この空気の流れによって、モータ34と減速機35は効率よく冷却されるため、過熱されて作動効率が低下したり破損しやすくなったりすることが防止される。また、作動軸32の上下に上部ジャバラ状部材50と下部ジャバラ状部材60とを設けるとともに、上部ジャバラ状部材50と下部ジャバラ状部材60を、それぞれカバー31と筒状部材58の内部に連通させたため、作動軸32が昇降してもスカラ型ロボットAの内部全体での体積変化が生じず、圧力変動も生じなくなる。これによって、上部ジャバラ状部材50と下部ジャバラ状部材60とに破損や劣化が生じにくくなる。
【0062】
また、上部ジャバラ状部材50の固定部50aと作動軸32の上端部を構成する連結用シャフト32cとの間に、ベアリング51、ハウジング52,53および端面シール53d等からなる回転シール機構を設けて、作動軸32が軸周り方向に回転しても上部ジャバラ状部材50が回転することを防止している。同様に、下部ジャバラ状部材60の固定部60bと作動軸32の下端部を構成する連結用シャフト32cとの間に、ベアリング61、ハウジング62,63および端面シール63e等からなる回転シール機構を設けている。このため、上部ジャバラ状部材50や下部ジャバラ状部材60に、ねじれが生じることが防止され、ねじれが繰り返し生じて上部ジャバラ状部材50や下部ジャバラ状部材60が破損するといったことを防止できる。
【0063】
さらに、作動軸32におけるカバー31と筒状部材58から突出する部分をアルミ製の中継シャフト32b、鋼製の連結用シャフト32c,32dで構成しているため、加工精度が要求され高価につくスプラインシャフト32aを短くすることができる。また、中継シャフト32bおよび連結用シャフト32dはスプラインシャフト32aに対して着脱可能になり、連結用シャフト32cは、中継シャフト32bに対して着脱可能になっているため、これらの各部材が破損した場合には作動軸32全体を取り替えることなく、破損した部材だけを交換できる。なお、図2に示したスカラ型ロボットBの上部ジャバラ状部材50や下部ジャバラ状部材60を除いた部分の構成については、スカラ型ロボットAと多少異なる部分もあるが、対応する部分に同一符号を記して説明は省略する。また、スカラ型ロボットBでは、カバー31の挿通穴部31aはシール78によって塞がれている。
【0064】
(第2実施形態)
図12および図13は、本発明の第2実施形態に係るスカラ型ロボットCを示している。このスカラ型ロボットCは、前述したスカラ型ロボットAにおけるフレキシブルチューブ15を介して延ばした配線等16に接続される配線および配管70(以下配線等70と記す。)の配置を変更したもので、配線等70の取付構造以外の部分は、スカラ型ロボットAと同じものである。したがって、同一部分には同一符号を記して説明する。
【0065】
このスカラ型ロボットCでは、カバー31の上面が低くなった右側部分から、配線等70が連結用シャフト32cの上端に向かって延びており、この配線等70の基端側部分は、カバー31の上面に設けられた配線コネクタと配管継手とからなる接続部材71によって固定されている。配線等70の基端部は、カバー31内で、フレキシブルチューブ15を介して延びてきた配線等16の対応するものにそれぞれ接続されている。
【0066】
また、第2アーム20の前後の側部の左右方向の中央部分には、カバー31の上面が高くなった部分の右側縁部に沿って延び、上部がカバー31の上面よりもさらに高くなったコ字状のステー72が設けられている。このステー72の上部側部分には、所定間隔をおいて複数のねじ挿通穴72aが形成されている。そして、配線等70は、このステー72の前部の上下に延びる部分に沿って配置され、間隔をおいて複数のナイロンクランプ73とねじ73aとによってステー72のねじ挿通穴72aに固定されている。
【0067】
配線等70の先端側部分は、作動軸32の内部を通って、作動軸32の下端から下方に延びている。また、作動軸32の上端に設けられたハウジング53の上面には、図14に示したように、固定用のステー74が取り付けられており、配線等70は、このステー74によってハウジング53の上面に固定されている。ステー74は、それぞれ間隔をおいて複数のねじ挿通穴が形成された水平片74aと垂直片74bとからなるL形の部材で構成されている。また、ハウジング53の上面には、複数のねじ穴が形成されている。ステー74は、水平片74aをハウジング53上面に位置させて配置され、ねじ74cによってハウジング53に固定されている。
【0068】
そして、配線等70は、2個のナイロンクランプ75とそれぞれ2個のねじ75aとによって垂直片74bに固定されている。また、配線等70における接続部材71とステー74との間の部分の長さは、ハウジング53が、図12に示した移動範囲の上端に位置しているときと、図13に示した移動範囲の下端に位置しているときとの間のストロークと、作動軸32が軸回り方向に回転する際の捻じれを考慮して、作動軸32に追従でき、かつたるみが生じない長さに設定されている。
【0069】
また、作動軸32の下部を構成する連結用シャフト32dには、図15に示したように、アダプタ76を介してハンド76aが取り付けられている。ハンド76aには、工具等の作業用具や、チャック、作業アーム、吸引装置等の作業装置や、センサ76bが取り付けられる。作動軸32内を延びてきた配線等70は、ハンド76aに取り付けられる作業装置やセンサ76bに接続される。なお、配線等70における連結用シャフト32dの下端部とハンド76aやセンサ76bとの間の部分の長さは余裕を持たせる必要がないため、最小限の長さにしておく。また、配線等70は、カバー31内で配線等16に接続されている。このスカラ型ロボットCのそれ以外の部分の構成は前述したスカラ型ロボットAと同一である。
【0070】
このように構成されたスカラ型ロボットCでは、作動軸32内に配線等70を配置しているため、スカラ型ロボットCの作動中に第2アーム20が激しく搖動しても配線等70が第2アーム20の移動の邪魔になることがない。このスカラ型ロボットBのそれ以外の作用効果は、前述したスカラ型ロボットAの作用効果と同様である。
【0071】
また、本発明に係るスカラ型ロボットは、前述した各実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、スカラ型ロボットA,Cを、端面シール53d、63eを用いた防塵防滴仕様のスカラ型ロボットで構成しているが、端面シール53d、63eを除いてクリーン仕様のスカラ型ロボットにすることもできる。クリーン仕様のスカラ型ロボットにした場合には、発塵の可能性がある端面シール53d、63eを除くことにより、通路をつづら折れになるように形成してその抵抗で漏れを防止するいわゆるラビリンス構造になり、塵が外部に放出されることが防止される。
【0072】
さらに、発塵を少なくする場合には、ベアリングの内輪と外輪との間に備わっているシールを非接触にするかこのシールを除くこともできる。この場合でも、カバー31、筒状部材58、上部ジャバラ状部材50および下部ジャバラ状部材60の内部は、吸引により負圧になっているため、塵が外部に放出されることは防止される。また、端面シール53d,63eを省略することによって、ハウジング52,62が回転するときの摩擦を小さくすることができる。
【0073】
さらに、前述した実施形態では、カバー部材をカバー31と筒状部材58とで構成しているが、これらのうちの一方を省略することができる。この場合、カバー31または筒状部材58からなるカバー部材の内部に回転装置33や昇降装置40を設置する。また、カバー31を省略した場合には、取付用穴25で上部挿通穴が構成され、筒状部材58を省略した場合には、取付用穴25で下部挿通穴が構成される。また、第2アーム20に設けた連通孔69,69aを省略して、取付用穴25とモータ34との間に、空気が通過できる隙間を設けてこの隙間で連通孔を構成してもよい。さらに、本発明に係るスカラ型ロボットのそれ以外の部分の構成についても、本発明の技術的範囲内で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0074】
20…第2アーム、25…取付用穴、31…カバー、31a…挿通穴部、32…作動軸、32a…スプラインシャフト、32b…中継シャフト、32c…連結用シャフト、34,44…モータ、35…減速機、50…上部ジャバラ状部材、51,61…ベアリング、52,53,62,63…ハウジング、53d,63e…端面シール、58…筒状部材、58c…連結部、60…下部ジャバラ状部材、69,69a…連通孔、A,C…スカラ型ロボット。
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