特許第5792991号(P5792991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5792991-誘導発熱ローラ装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5792991
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】誘導発熱ローラ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/14 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   H05B6/14
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-102692(P2011-102692)
(22)【出願日】2011年5月2日
(65)【公開番号】特開2012-234715(P2012-234715A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】北野 孝次
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幸三
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−269442(JP,A)
【文献】 特公昭51−047812(JP,B1)
【文献】 特開2009−008333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に支持されたローラ本体と、
前記ローラ本体の内部に配置され、当該ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、
前記ローラ本体及び前記誘導発熱機構の間に形成される概略筒状をなす隙間部に霧状の冷却媒体を流通させる冷却機構と、
前記ローラ本体の内部に残留する液状の冷却媒体を前記ローラ本体外部に排出する液状媒体排出機構とを備え
前記液状媒体排出機構が、
前記隙間部の下部に吸引口が設けられて前記ローラ本体外部に延出された液状媒体排出管と、
前記ローラ本体外部において前記液状媒体排出管上に設けられて前記吸引口から液状の冷却媒体を吸引する吸引ポンプと、
前記隙間部に残留する液状の冷却媒体の液面を検知する液面センサとを備えており、
前記液面センサにより得られる検知信号により前記液状の冷却媒体の液面が所定以上となった場合に、前記吸引ポンプが前記吸引口から液状の冷却媒体を吸引するものである誘導発熱ローラ装置。
【請求項2】
前記液面センサが、前記隙間部の下部に配置されて、当該下部における前記誘導発熱機構の外側周面下端と前記ローラ本体の内側周面下端との間における液状の冷却媒体の液面を検知するものである請求項1記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項3】
前記液状媒体排出機構が、
前記吸引ポンプを制御するポンプ制御部をさらに備え、
前記ポンプ制御部が、前記吸引ポンプを所定時間起動した後に停止させる、又は、前記液面センサにより得られる検知信号により前記液状の冷却媒体の液面が所定以下となった場合に、前記吸引ポンプを停止させる請求項1又は2記載の誘導発熱ローラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関し、特に冷却性能の優れた誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばプラスチックフィルム、紙、布、不織布、合成繊維、金属箔等のシート材又はウェブ材、線(糸)材等の連続材の連続熱処理工程等には、回転するローラ本体の内部に誘導発熱機構を配置し、これによりローラ本体の周壁部を誘導電流によって発熱させる誘導発熱ローラ装置が用いられている。
【0003】
そして近年、例えば連続材の種類を変更することに伴うローラ本体による加熱温度の変更を短時間で行う要請がある。また、延伸処理工程の終了後において、安全衛生上の観点から、ローラ本体の温度が一定温度以下に低下しなければ、作業者がその場から離れることができない。このようなことからローラ本体を可及的短時間で冷却する必要がある。
【0004】
さらに、誘導発熱ローラ装置を連続材の加熱に用いるだけでなく、冷却に用いる場合もあり、誘導発熱ローラ装置に冷却機能を持たせる必要がある。
【0005】
このように誘導発熱ローラ装置に冷却機能を持たせたものとしては、特許文献1に示すように、ローラ本体の周壁内に中心軸方向に沿って、且つ周方向に等間隔に複数の冷却媒体通路を設け、当該冷却媒体通路内に冷却媒体を循環させることによって、ローラ本体を冷却させるものが考えられている。
【0006】
しかしながら、冷却媒体通路に冷却媒体を循環させるためには、外部から冷却媒体をローラ本体又はその端部に一体的に設けた軸部(ジャーナル部)を介して供給する必要があり、ローラ本体又はそのジャーナル部は回転体であるため、ロータリジョイント又はメカニカルシールといった回転シール機構が必要となる。そうすると、いずれも接触シール機構で構成されているためにシール部の摩耗や熱的劣化や化学的劣化の進行に伴い冷却媒体の漏洩といった不具合が避けられない。また、そのような不具合を回避するためには、前記回転シール機構の保守又は交換を定期的に行わなければならない。当然、それらの保守又は交換のためには誘導発熱ローラ装置を停止しなければならないし、保守又は交換には費用も発生してしまう。
【0007】
一方で、接触シール機構を用いない構成としては、特許文献2に示すように、ローラ本体の内部に冷却媒体を導入する冷媒導入機構と、当該冷媒導入機構により導入された冷却媒体をローラ本体の内周壁に向かって水滴状に散布する冷媒散布機構と、を備え、散布された冷却媒体がローラ本体の内周壁に接触して気化する際の気化潜熱(気化熱)によってローラ本体を冷却するものが考えられている。そして、冷媒散布機構は、軸方向に沿ってローラ本体の内周壁における一端部から他端部に亘って延設された吐出管を有し、当該吐出管の側壁に設けられた吐出口から冷却媒体を水滴状に散布するものである。このような構成であれば、ローラ本体の内部に静止状態に保持された誘導発熱機構の一部に冷媒導入機構及び散布機構を設けることによって、回転シール機構が一切不要であり、冷却媒体の漏洩や、保守、交換といった煩雑さを防止できる。
【0008】
しかしながら、冷却媒体を直接ローラ本体の内周壁に散布するものであるため、冷却媒体の中に含まれる不純物又は非蒸発成分がローラ本体の内周壁に堆積してしまう。
【0009】
具体的には、例えば冷媒が水の場合には、炭酸カルシウム成分等の不純物や非蒸発成分がローラ本体の内周壁に堆積したり、溶存塩素成分のためにローラ本体が腐食したり、当該部位に錆を発生させてしまう。例えば冷却媒体が有機オイルであれば、熱分解した炭化物がローラ本体の内周壁に堆積する。また、冷却媒体が化学的に腐食を起こす成分を含む場合には、散布されたローラ本体の内周壁が腐食して減肉してしまう。
【0010】
また、冷媒散布機構の吐出管は微細な孔を通じて冷却媒体が散布されるように構成されているため、冷却媒体に含まれる塵等が微細な孔に詰まり、散布機構が目詰まりしてしまうことがあり、誘導発熱ローラ装置を分解して吐出管等を交換しなければならないという問題がある。
【0011】
さらに、誘導発熱ローラ装置では連続材を加熱する目的で加熱ローラとして使用する場合と、連続材を冷却する目的で冷却ローラとして使用する場合とが交互に発生する場合がある。この場合、冷却ローラとして使用した後に加熱ローラとして使用する場合には、冷媒散布機構の吐出管内に滞留している冷却媒体がローラ本体からの伝熱により加熱されて、場合によっては沸騰を起こす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−353588号公報
【特許文献2】特開2003−269442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような状況下において、本願発明者は、ローラ本体と誘導発熱機構との間にミスト状の冷却媒体を流通させることを考えている。
【0014】
しかしながら、ローラ本体と誘導発熱ローラ装置との間にミスト状の冷却媒体を供給した場合に、ローラ本体の内部に液状の冷却媒体が残留してしまうという問題が生じることが分かった。そして、残留した液状の冷却媒体が、誘導発熱機構の誘導コイルに接すると誘導コイルの絶縁劣化等の不具合が生じてしまう、又は誘導発熱機構が腐食してしまう等の問題が考えられる。
【0015】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、ローラ本体に回転シール機構を設ける必要が無く、ローラ本体の腐食を抑制しながらもローラ本体を冷却するとともに、ローラ本体内に液状の冷却媒体が残留することを防止することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち本発明に係る誘導発熱ローラ装置は、回転自在に支持されたローラ本体と、前記ローラ本体の内部に配置され、当該ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、前記ローラ本体及び前記誘導発熱機構の間に形成される概略筒状をなす隙間部に霧状の冷却媒体を流通させる冷却機構と、前記ローラ本体の内部に残留する液状の冷却媒体を前記ローラ本体外部に排出する液状媒体排出機構とを備え、前記液状媒体排出機構が、前記隙間部の下部に吸引口が設けられて前記ローラ本体外部に延出された液状媒体排出管と、前記ローラ本体外部において前記液状媒体排出管上に設けられて前記吸引口から液状の冷却媒体を吸引する吸引ポンプと、前記隙間部に残留する液状の冷却媒体の液面を検知する液面センサとを備えており、前記液面センサにより得られる検知信号により前記液状の冷却媒体の液面が所定以上となった場合に、前記吸引ポンプが前記吸引口から液状の冷却媒体を吸引するものであることを特徴とする。
【0017】
このようなものであれば、霧状の冷却媒体をローラ本体内に導入することにより、霧状の冷却媒体がローラ本体の内周壁に接触して蒸発するときの気化潜熱及び霧状の冷却媒体が隙間部で温度上昇するときの顕熱並びに気化蒸発するときの潜熱によりローラ本体及び誘導発熱機構を冷却することができる。また、霧状の冷却媒体を用いているので、ローラ本体に接触する冷却媒体を少なくすることができ、ローラ本体内壁の腐食、不純物の堆積等を抑制することができる。さらに、ローラ本体の内部に残留する液状の冷却媒体を排出することから、ローラ本体の内部に液状の冷却媒体が溜まり誘導発熱機構の誘導コイルに液状の冷却媒体が接触して絶縁劣化する、また誘導発熱機構が腐食する等の問題を解決することができる。
【0018】
前記液状媒体排出機構が、前記隙間部の下部に吸引口が設けられて前記ローラ本体外部に延出された液状媒体排出管と、前記ローラ本体外部において前記液状媒体排出管上に設けられて前記吸引口から液状の冷却媒体を吸引する吸引ポンプとを有することが望ましい。これならば、ローラ本体の外部に設けた吸引ポンプによりローラ本体内に残留する液状の冷却媒体を排出させることができ、ローラ本体内部の構成を簡単化することができる。
【0019】
前記吸引ポンプが、前記冷却機構により前記隙間部に霧状の冷却媒体を流通させている間、前記吸引口から液状の冷却媒体を吸引するものであることが望ましい。
【0020】
前記液状媒体排出機構が、前記隙間部に残留する液状の冷却媒体の液面を検知する液面センサを備えており、前記液面センサにより得られる検知信号により前記液状の冷却媒体の液面が所定以上となった場合に、前記吸引ポンプが前記吸引口から液状の冷却媒体を吸引するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した本発明によれば、霧状の冷却媒体をローラ本体及び誘導発熱機構の間に形成される概略筒状をなす隙間部に供給することによってローラ本体を冷却するようにしているので、ローラ本体に回転シール機構を設ける必要が無く、ローラ本体の腐食を抑制しながらも、ローラ本体を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の断面図。
図2】同実施形態の液状媒体排出管及び温度センサの配置を示す図。
図3】変形実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る誘導発熱ローラ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100は、例えばプラスチックフィルム、紙、布、不織布、合成繊維、金属箔等のシート材又はウェブ材、線(糸)材等の連続材の連続熱処理工程等において用いられるものである。
【0025】
具体的にこのものは、図1に示すように、回転自在に支持された中空円筒状のローラ本体2と、このローラ本体2内に収容される誘導発熱機構3と、を備えている。
【0026】
ローラ本体2の両端部には、ジャーナル41がOリング等のシール部材S1を介して取り付けられている。このシール部材S1により後述の霧状又は液状の冷却媒体が外部に漏洩することを防止している。また、ジャーナル41は、中空の駆動軸42と一体に構成されており、駆動軸42は、転がり軸受等の軸受51を介して機台52に回転自在に支持されている。そして、ローラ本体2は、例えばモータ等の回転駆動機構(不図示)により外部から与えられる駆動力によって回転されるように構成されている。
【0027】
誘導発熱機構3は、円筒形状をなす円筒状鉄心31と、当該円筒状鉄心31の外側周面に巻装された誘導コイル32とから構成されている。円筒状鉄心31の両端部にはそれぞれ、支持軸6が取り付けられている。この支持軸6は、それぞれ駆動軸42の内部に挿通されており、転がり軸受等の軸受7を介して駆動軸42に対して回転自在に支持されている。これにより、誘導発熱機構3は、回転するローラ本体2の内部において、ローラ本体2に対して静止状態に保持される。誘導コイル32には、リード線L2が接続されており、このリード線L2には、交流電圧を印加するための交流電源Vが接続されている。なお、支持軸6の外面と駆動軸42の内面との間には、オイルシール又はラビリンスシール等のシール機構S2が設けられており、霧状の冷却媒体が外部に漏洩しないように構成している。
【0028】
このような誘導発熱機構3により、誘導コイル32に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体2の側周壁21を通過する。この通過によりローラ本体2に誘導電流が発生し、その誘導電流でローラ本体2はジュール発熱する。
【0029】
しかして本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、ローラ本体2及び誘導発熱機構3を冷却するための冷却機構8及びローラ本体2内に残留する液状の冷却媒体を排出する液状媒体排出機構9を備えている。
【0030】
この冷却機構8は、図1に示すように、霧状の冷却媒体をローラ本体2及び誘導発熱機構3の間に形成される概略筒状をなす隙間部Xの軸方向一端部から導入するとともに、隙間部Xの軸方向他端部から冷却媒体をローラ本体2外部に排出することにより、ローラ本体2及び誘導発熱機構3を冷却するものである。なお、軸方向とは、図1の矢印に示すように紙面左右方向である。
【0031】
具体的にこのものは、霧状の冷却媒体を生成するミスト生成装置81と、ミスト生成装置81に圧縮空気を供給する圧縮空気供給回路82と、ミスト生成装置81に冷却媒体である水を供給する冷却媒体供給回路83と、前記ミスト生成装置81からの霧状の冷却媒体を隙間部Xの軸方向一端部から導入する冷却媒体導入路84と、前記隙間部Xを通過した冷却媒体を軸方向他端部から外部に導出するための冷却媒体導出路85と、を備えている。
【0032】
隙間部Xは、気密性を有するものであり、主として、ローラ本体2の内周壁面と誘導発熱機構3の外側周面とにより形成される概略円筒状の隙間X1、および、ローラ本体2の両端部に設けられたジャーナル41の内面と誘導発熱機構3の軸方向端面とにより形成される概略円環状の隙間X2からなる。
【0033】
ミスト生成装置81は、圧縮空気供給回路82からの圧縮空気と冷却媒体供給回路83からの水とを混合して霧状(ミスト状)の冷却媒体を生成するものである。この霧状の冷却媒体は、噴射された直後に気化蒸発しない程度の粒径であって、且つ、空気とともに運搬される過程で重力で落下したり、流路の屈曲部において壁面に衝突して液化しない程度の粒径である。具体的に霧状の冷却媒体は、30〜100μmの範囲の粒径を有するものである。
【0034】
圧縮空気供給回路82は、圧縮空気源821と、一端が圧縮空気源821に接続され、他端がミスト生成装置81に接続される圧縮空気配管822と、当該圧縮空気配管822上に設けられ、ミスト生成装置81への圧縮空気の供給、停止を制御する開閉弁823と、を備えている。
【0035】
冷却媒体供給回路83は、貯水タンク831と、一端が貯水タンク831に接続され、他端がミスト生成装置81に接続される冷却媒体配管832と、当該冷却媒体配管832上に設けられ、ミスト生成装置81に供給される冷却媒体の流量を調整する流量調整弁833と、当該流量調整弁833の下流に設けられ、ミスト生成装置81への冷却媒体の供給、停止を制御する開閉弁834と、を備えている。
【0036】
冷却媒体配管832上に設けられた流量調整弁833は、ローラ本体2の周壁に埋設された温度センサ2Tの検出信号を受け付けて誘導コイル32に印加する電圧を制御する制御部Cから、ローラ本体2の周壁温度を示す温度信号を増幅器Aを介して電流信号として検知し、冷却媒体の流量を調整する。これにより、ローラ本体2の周壁温度に応じて、無段階に霧状の冷却媒体の供給量を調整できるように構成し、ローラ本体2の冷却速度、冷却性能を容易に調整できる。なお、温度センサ2Tからの検出信号は回転トランス10により制御部Cに出力される。
【0037】
冷却媒体導入路84は、誘導発熱機構3の他端部に設けられた支持軸6(以下、この支持軸を6Bとする。)の内部に設けられた配管84Tと円筒状鉄心32及び他端部に設けられた支持軸6(以下、この支持軸を6Aとする。)に形成された孔により構成されている。具体的に冷却媒体導入路84は、他方の支持軸6Bから、誘導発熱機構3の内部を通って一方の支持軸6Aの基端部まで延設されており、当該支持軸6Aの基端部において貫通孔61Hにより、冷却媒体導入路84の下流側開口が隙間部Xの軸方向一端部に連通されている。なお、配管84Tにおける支持軸6Bの外部に位置する端部に、ミスト生成装置81の吐出口81sが配管84T内部を向くように取り付けられる。このようにミスト生成装置81を、目詰まり等の不具合時に誘導発熱ローラ装置100から容易に着脱できる位置に設けている。なお、配管84Tとミスト生成装置81とはシール構造(不図示)を介して着脱可能に取り付けられている。
【0038】
また冷却媒体導入路84は、支持軸6Aの基端部(誘導発熱機構3側の端部)において複数の貫通孔61Hを介して隙間部Xと連通している。この貫通孔61Hが冷却媒体導入路84の下流側開口を形成している。この貫通孔61Hは、隙間部Xの軸方向一端部(本実施形態では隙間X2)に配置されており、支持軸6Aにおいてラジアル方向に複数個等間隔に形成されている。
【0039】
冷却媒体導出路85は、誘導発熱機構3の他端部に設けられた支持軸6の内部に沿って設けられた冷却媒体導出管85Tにより構成されている。この冷却媒体導出管85Tは、支持軸6Bの内部に中心軸にそって形成された中空部内に挿入して設けられ、支持軸6Bの基端部(誘導発熱機構3側の端部)において隙間部Xを向いて開口しており、当該開口が冷却媒体導出路85の上流側開口となる。そして、この上流側開口は、隙間部Xの軸方向他端部(本実施形態では隙間X2)に配置されている。なお、支持軸6Bの中空部内には、前述した誘導コイル32に接続されるリード線L2も設けられる。
【0040】
また、支持軸6B外部における冷却媒体導出管85T上に、隙間部Xを減圧する減圧装置86が設けられている。この減圧装置86は、冷却媒体導出管85T上流側の空気を吸引して外部に排出することによって隙間部X内を減圧する。これにより、隙間部Xが減圧されて、隙間部Xに導入された霧状の冷却媒体が蒸発し易くして、ローラ本体2を冷却し易くすると共に、気化した冷却媒体がローラ本体2の内周壁及び誘導発熱機構3上で結露しにくくすることができる。また、減圧装置86によって霧状の冷却媒体が隙間部Xを所定の流速で通過するように構成している。具体的には、隙間部Xにおける霧状の冷却媒体の流速が0.3m/s以上とすることによって、高い熱伝導率を得ることができ、ローラ本体の冷却効率を大幅に構造させることができる。
【0041】
また、上記のとおり霧状の冷却媒体を隙間部Xに供給することから、隙間部Xを形成する部材表面、具体的にはローラ本体2の内周壁面、ジャーナル41の内面及び支持軸6の外周面に防錆処理を施している。また、誘導発熱機構3の外側周面には、冷却媒体による電気故障を防止するために防水膜Fが、略全体に亘って設けられている。この防水膜Fは、ローラ本体2内部のミスト濃度により決定される露点温度と、冷却動作時における誘導発熱機構3との関係で結露が懸念される場合に必要となるが、誘導発熱機構3の温度が前記露点温度以上であることが明らかな場合は省略可能である。
【0042】
次に液状媒体排出機構9について説明する。
【0043】
この液状媒体排出機構9は、ローラ本体2の内部に残留した液状の冷却媒体(以下、残留水ともいう。)をローラ本体2外部に排出するものであり、液状の冷却媒体を排出するための液状媒体排出管91と、この液状媒体排出管91上に設けられる吸引ポンプ92と、ローラ本体2内部の液状の冷却媒体の液面を検知する液面センサ93と、この液面センサ93からの検出信号により前記吸引ポンプ92を制御するポンプ制御部94とを有する。
【0044】
液状媒体排出管91は、隙間部Xの下部に先端開口である吸引口91aが配置されるとともにローラ本体2の外部に延出するように設けられている。具体的に液状媒体排出管91は、図1に示すように、一方の支持軸6Aから隙間部Xの軸方向一端部(本実施形態では隙間X2)内に導入されており、その吸引口91aは、図2に示すように、隙間部Xの最下端部に配置されて、当該最下端部における誘導発熱機構3の外側周面下端と、ローラ本体2の内側周面下端との間に配置されている。また液状媒体排出管91は、図1に示すように、一方の支持軸6A及び円筒状鉄心31の内部及び他方の支持軸6Bを通ってローラ本体2の外部に延出するように設けられている。
【0045】
吸引ポンプ92は、ローラ本体2外部において液状媒体排出管91上に設けられて吸引口91aから残留水を吸引するものであり、後述するポンプ制御部94により制御される。
【0046】
液面センサ93は、他方の支持軸6Bから隙間部Xの軸方向他端部(本実施形態では隙間X2)に導入されており、図2に示すように、隙間部Xの最下端部に配置されて、当該最下端部における誘導発熱機構3の外側周面下端とローラ本体2の内側周面下端との間における残留水の液面を検知するものである。具体的に液面センサ93は、ローラ本体2内部において、誘導発熱機構3の誘導コイル32に接触しない高さの残留水の液面を検知する。なお、液面センサ93としては、例えばフロート式、超音波式、静電容量式、光学式又は圧力式のものを用いることが考えられる。
【0047】
ポンプ制御部94は、例えばリレー回路からなるものであり、前記液面センサ93からの検知信号により、ローラ本体2内部の残留水の液面が所定の上限値以上と判断した場合に、吸引ポンプ92に起動信号を出力して、吸引ポンプ92を起動させるものである。なお、ここで所定の上限値とは、残留水が誘導発熱機構3の誘導コイル32に接触しない範囲で設定された液面高さである。また、制御部94は、吸引ポンプ92を起動した後に所定時間吸引ポンプ92が起動した後に吸引ポンプ92を停止させる、あるいは液面センサ93により得られる検知信号が所定の下限値以下となった場合に、吸引ポンプ92を停止させる等が考えられる。なお、ここで所定の下限値とは、例えば残留水がローラ本体2内に実質的に無くなる程度である。
【0048】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100によれば、霧状の冷却媒体をローラ本体2内に導入することにより、霧状の冷却媒体がローラ本体2の内周壁に接触して蒸発するときの気化潜熱及び霧状の冷却媒体がローラ本体2内で温度上昇するときの顕熱並びに気化蒸発するときの潜熱によりローラ本体2又は誘導発熱機構3を冷却することができる。そして、霧状の冷却媒体をローラ本体2及び誘導発熱機構3の間に形成される概略筒状をなす隙間部Xの軸方向端部から導入するとともに、隙間部Xの軸方向端部から冷却媒体をローラ本体2外部に排出することにより、隙間部X全体に霧状の冷却媒体を行き渡らせることができる。また、霧状の冷却媒体を用いているので、ローラ本体2に接触する冷却媒体を少なくすることができ、ローラ本体2内壁の腐食、不純物の堆積等を抑制することができる。
【0049】
また、液面センサ93により所定の上限値となった場合に吸引ポンプを起動させてローラ本体2の内部に残留する液状の冷却媒体を排出することから、ローラ本体2の内部に液状の冷却媒体が溜まり誘導発熱機構3の誘導コイル32に液状の冷却媒体が接触して絶縁劣化する等の問題を解決することができる。
【0050】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0051】
例えば前記実施形態では液面センサを用いて残留した液状の冷却媒体の液面を検知して吸引ポンプの起動タイミングを制御しているが、図3に示すように、液面センサを用いることなく構成しても良い。つまり、冷却機構8により隙間部Xに霧状の冷却媒体を流通させている間、常時液状媒体排出管91の吸引口91aから液状の冷却媒体を吸引するようにしても良い。これならば、液面センサの構成を省略することができる。また液状の冷却媒体を常時排出していることから誘導コイルが液状の冷却媒体に接触することを可及的に防止することができる。
【0052】
また、前記実施形態では、配置スペースの観点から、軸方向一端部の隙間X2に液状媒体排出管91の吐出口91aを配置し、軸方向他端部の隙間X2に液面センサ93を配置しているが、それらを同一の隙間X2に配置しても良い。
【0053】
前記実施形態では、両持ち型の誘導発熱ローラ装置に適用した場合について説明したが、いわゆる片持ち型の誘導発熱ローラ装置に適用することもできる。
【0054】
加えて、前記実施形態では、隙間部に霧状の冷却媒体を供給するものであったが、誘導発熱機構内部に配管を設け、当該配管内に霧状の冷却媒体を流通させることによって誘導発熱機構を優先的に冷却できるように構成しても良い。これにより、誘導コイルを構成する電線や鉄心の性能の劣化を防止することができる。
【0055】
さらにその上、前記実施形態では、霧状の冷却媒体を隙間部の軸方向一端部から導入し、軸方向他端部から排出するように構成しているが、隙間部の軸方向一端部から導入して、同じ軸方向一端部から排出するようにしても良い。
【0056】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
100・・・誘導発熱ローラ装置
2 ・・・ローラ本体
3 ・・・誘導発熱機構
X ・・・隙間部
8 ・・・冷却機構
9 ・・・液状媒体排出機構
91 ・・・液状媒体排出管
91a・・・吸引口
92 ・・・吸引ポンプ
93 ・・・液面センサ
図1
図2
図3