特許第5793020号(P5793020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許57930202,6‐ジヒドロキシ安息香酸の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793020
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/15 20060101AFI20150928BHJP
   C07C 65/05 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C07C51/15
   C07C65/05
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-179735(P2011-179735)
(22)【出願日】2011年8月19日
(65)【公開番号】特開2013-40149(P2013-40149A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243272
【氏名又は名称】本州化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100150681
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 荘助
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100105061
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 喜博
(72)【発明者】
【氏名】保田 佐知子
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−123592(JP,A)
【文献】 特開平10−231271(JP,A)
【文献】 特開平03−223230(JP,A)
【文献】 Jingxi Huagong,2002年,19(10),pp. 596-599
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00−65/42
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシンをアルカリ金属化合物の存在下に二酸化炭素と反応させて、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を製造する方法において、一価フェノールの存在下または非存在下で、レゾルシン及び一価フェノールのモル数の合計(A)と、アルカリ金属化合物のアルカリ金属のモル数(B)の比(A)/(B)が2.2〜100の範囲である2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の製造方法。
【請求項2】
二酸化炭素雰囲気下で、レゾルシン若しくはレゾルシンと一価フェノールの混合物にアルカリ金属化合物を加えて反応させる請求項1に記載の2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の製造方法に関する。さらに詳しくは医農薬中間体や酸化防止剤、キレート剤等として有用な2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の工業的に有利な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の製造方法としては、従来、コルベシュミット反応を応用してレゾルシンをアルカリ金属化合物存在下で二酸化炭素と反応させて製造する方法が知られている。また、生成物は2,6‐ジヒドロキシ安息香酸と2,4‐ジヒドロキシ安息香酸等の異性体混合物として得られ、該混合物から2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を分離することにより2,6‐ジヒドロキシ安息香酸が得られるが、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の生成比率は工業的に満足できるものではない。
【0003】
例えば、特公平6‐80032号(特許文献1)には、特定のアルコール類を溶媒に用いて、アルカリ金属塩又は塩基性化合物の存在下にて、レゾルシンと炭酸ガスから、レゾルシン酸、つまり2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を製造する方法、及びその際にレゾルシンとアルカリ金属化合物を等モル量使用することが記載されている。さらに、得られた2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の収率は高くても50%(アルカリ金属化合物のアルカリ金属に対して25%)、その際の副生成物である2,4‐ジヒドロキシ安息香酸は収率が15%(アルカリ金属化合物のアルカリ金属に対し、7.5%)となるほど生成している。つまり特許文献1に記載の方法によると、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の収率は高くても両者の生成比率は50/15(モル比)と異性体の生成比率は比較的大きいものである。
【0004】
特開平5‐194313号(特許文献2)では、反応で得られた2,6‐ジヒドロキシ安息香酸と2,4‐ジヒドロキシ安息香酸の混合物の分離を、pH=4以上の水溶液中で加熱処理することによって、2,4‐ジヒドロキシ安息香酸のみを熱分解して高純度の2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を単離する方法を開示している。しかしながらこの方法では熱分解が進むと系内がアルカリ性に傾くため、反応液を常に一定のpHに調整しながら熱分解を行わなければ高純度の2,6‐ジヒドロキシ安息香酸は単離できない。
また、そもそも、特許文献2に記載の方法は、反応後の2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の精製工程に相当するのであり、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸自体の収量を増加させることを目的とした方法ではない。
【0005】
また、レゾルシンをアルカリ金属化合物存在下で二酸化炭素と反応を行う際、実施態様において、特許文献1では1MPaの二酸化炭素圧下で、特許文献2では約1.4〜約2.4MPaの二酸化炭素圧下で反応を実施していることから、工業的に実施するには高圧に耐えうる特殊な製造設備を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6‐80032号公報
【特許文献2】特開平5‐194313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、工業的に効率よく2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を製造する方法は知られていない。
本発明の課題は、レゾルシンをアルカリ金属化合物の存在下で二酸化炭素と反応させて2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を製造する方法において、温和な反応条件下で、分離困難な異性体の生成比率が小さく、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を効率良く得ることができる、工業化に適した2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討した結果、レゾルシンをアルカリ金属化合物の存在下で二酸化炭素と反応させて2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を製造する方法において、原料レゾルシンのモル数(A)、または、一価フェノール類が共存する場合は、レゾルシンのモル数(A1)および一価フェノール類のモル数(A2)の合計(A)と、アルカリ金属化合物のアルカリ金属のモル数(B)の比を特定のモル数の比の範囲とすることにより、分離困難な2,4‐ジヒドロキシ安息香酸等の異性体生成比率が低く、また、アルカリ金属化合物のアルカリ金属に対し収率よく2,6‐ジヒドロキシ安息香酸が製造できること、更に、反応は二酸化炭素圧が常圧近辺で容易に進行することを見出し本発明を完成した。
なお、レゾルシンのモル数を(A)とする場合と共に、レゾルシンと一価フェノール類の合計モル数を(A)とする場合がある。レゾルシンのモル数と一価フェノール類のモル数を区別する場合には、レゾルシンのモル数を(A1)とし、一価フェノール類のモル数を(A2)とする。
【0009】
具体的には、
1.レゾルシンをアルカリ金属化合物の存在下に二酸化炭素と反応させて、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を製造する方法において、一価フェノール類の存在下または非存在下で、レゾルシン及び一価フェノール類のモル数の合計(A)と、アルカリ金属化合物のアルカリ金属のモル数(B)の比(A)/(B)が2.2〜100の範囲である2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の製造方法。
2.二酸化炭素雰囲気下で、レゾルシン若しくはレゾルシンと一価フェノール類の混合物にアルカリ金属化合物を加えて反応させる1に記載の2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、反応生成物中の分離困難な2,4‐ジヒドロキシ安息香酸等の異性体生成比率が小さいので、分離操作や異性体を熱分解等で処理する必要もなく、目的物である2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を簡易に収率良く単離することができるし、仮に分離操作を必要としても副生成物である2,4‐ジヒドロキシ安息香酸等の生成量が少ないので、分離操作が容易となる。
さらに、アルカリ金属化合物のアルカリ金属に対し収率よく2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を製造できる。また、反応は常圧近辺の二酸化炭素圧で容易に進行するため耐圧反応容器等の特別な製造装置の必要がなく、工業的に温和な条件において効率よく2,6‐ジヒドロキシ安息香酸が製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明においては、レゾルシンとアルカリ金属化合物を、レゾルシンのモル数(A)をアルカリ金属化合物中のアルカリ金属のモル数(B)に対して(A)/(B)=2.2〜100とし、二酸化炭素と反応させて目的の2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を得る。
本発明において、レゾルシンのモル数(A)とアルカリ金属化合物中のアルカリ金属のモル数(B)との比(A)/(B)は、2.2〜100、好ましくは2.4〜50、特に好ましくは2.5〜10である。レゾルシンをアルカリ金属化合物中のアルカリ金属に対し過剰に用いることにより副生成物である2,4‐ジヒドロキシ安息香酸等の異性体の生成が抑制され、アルカリ金属に対する2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の生成収率が向上する。
【0012】
本発明において使用されるアルカリ金属化合物は特に制限されず、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属重炭酸塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム‐t‐ブトキシド、カリウム‐t‐ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素物などが挙げられる。
【0013】
好ましくは、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属水酸化物であり、また、使用するアルカリ金属の種類としては、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、より好ましくはナトリウム、カリウムであり、特に好ましくはカリウムである。
従って、より好ましいアルカリ金属化合物は、炭酸カリウムまたは水酸化カリウムであり、特に好ましくは炭酸カリウムである。
【0014】
アルカリ金属化合物の使用に際して、その形態は特に制限されないが、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩については固形のまま単独または水溶液で、アルカリ金属水酸化物については固形のまま単独、水溶液またはアルコール溶液で、また、アルカリ金属アルコキシドについてはアルコール溶液で、アルカリ金属水素化物については固形のまま単独で用いられる。
また、アルカリ金属化合物を水溶液又はアルコール溶液として用いる場合は、水およびアルコール類を反応系外に留去しながら反応を行うことが収率の面から好ましい。
【0015】
本発明において、レゾルシンをアルカリ金属化合物の存在下に二酸化炭素と反応させるに際し、さらに一価フェノール類を共存させることができる。一価フェノール類を共存させることにより、レゾルシンのみでの反応に比べ、レゾルシンの使用量が少なくて済むため、反応混合物から目的物を濾別した後の濾液から未反応原料を回収する際に高沸点のレゾルシンの含有量が少なくなり蒸留がしやすくなる。
この場合において、レゾルシンのモル数(A1)と一価フェノール類のモル数(A2)の合計(A)がアルカリ金属化合物中のアルカリ金属のモル数(B)に対して(A)/(B)=2.2〜100とし、二酸化炭素と反応させて目的の2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を得る。
さらに(A)/(B)は、好ましくは2.4〜50、特に好ましくは2.5〜10であり、また、レゾルシンのモル数(A1)と、アルカリ金属化合物のアルカリ金属のモル数(B)の比(A1)/(B)としては、好ましくは0.9〜10、より好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜3である。
【0016】
本発明において用いられる一価フェノールは特に制限されないが、例えば、フェノール、クレゾール等の一価アルキル置換フェノール類、2‐フェニルフェノールまたは3‐フェニルフェノール等のフェニルフェノール類、p‐クミルフェノール等のアラルキルフェノール類が挙げられる。
一価アルキル置換フェノール類において、アルキル基としては1級または2級アルキル基が好ましく、アルキル基の炭素原子数としては1〜4が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましい。また、アルキル基の置換数は1〜3置換が好ましく、1または2置換がより好ましい。具体的には、例えば、o‐クレゾール、m‐クレゾール、p‐クレゾール、2,3,6‐トリメチルフェノール、2,5‐キシレノール、2,6‐キシレノール、2,4‐キシレノール、2‐イソプロピルフェノール、4‐イソプロピルフェノール、4‐プロピルフェノール、4‐ブチルフェノール、o‐sec‐ブチルフェノール、p‐sec‐ブチルフェノール、o‐t‐ブチルフェノール、p‐t‐ブチルフェノール、2,4‐ジ‐t‐ブチルフェノール、2,6‐ジ‐t‐ブチルフェノール等があげられる。
また、融点が100℃以下である一価フェノールが好ましく、特に好ましいのはフェノールである。
【0017】
本発明において、原料の仕込み方法及び反応方法は、通常のコルベシュミット反応で用いられる方法に沿って行うことができ、例えば、レゾルシンとアルカリ金属化合物から常法に従いレゾルシンのアルカリ金属塩を製造し、その後、そこに二酸化炭素をその吸収が認められなくなるまで吹き込むことにより2,6‐ジヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得ることができる。
しかしながら、好ましくは、レゾルシン若しくはレゾルシンと一価フェノール類の混合物を反応温度まで昇温した後、二酸化炭素雰囲気下でアルカリ金属化合物を加えることにより2,6‐ジヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を得る方法が挙げられる。
【0018】
具体的には、例えば、レゾルシン若しくはレゾルシンと一価フェノール類を反応容器に仕込み、系内を二酸化炭素で置換した後、反応温度まで昇温し、二酸化炭素の供給を続けながらアルカリ金属化合物を添加することにより反応を行う。
前記反応において、アルカリ金属化合物の添加方法としては、一括添加、または逐次添加が挙げられるが、このうち逐次添加が好ましい。
【0019】
逐次添加する場合、アルカリ金属化合物を、通常、20分〜10時間かけて、好ましくは30分〜5時間かけて、特に好ましくは40分〜3時間かけて、連続して又は分割して添加する。アルカリ金属化合物の形態としては固形のまま単独で、もしくはアルカリ金属化合物の水溶液又はアルコール溶液の状態で添加してもよい。この際、水及びアルコール類を反応系外に留去しながら反応を行う方が収率の面から好ましい。
【0020】
反応温度は、通常、100〜190℃、好ましくは110〜140℃、特に好ましくは115〜130℃の範囲である。
反応圧力は、反応容器を二酸化炭素で置換した後、反応を通じての系内ゲージ圧が−0.05〜0.5MPa、好ましくは−0.02〜0.2MPa、特に好ましくは0〜0.1MPa(常圧〜微加圧)の範囲である。本発明の方法においては、二酸化炭素の圧力が常圧近辺でも迅速に反応が進行するので、反応容器はオートクレーブ等の加圧反応容器である必要性はない。反応の際、二酸化炭素の導入方法は特に限定されないが、反応系中に導入した二酸化炭素を流通させながら反応を行うことが好ましい。
【0021】
反応に際し、反応溶媒を用いなくてもよいが、反応液の粘度を下げて操作性を改善するために、本発明の効果を損なわない範囲において用いてもよい。
このような反応溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の直鎖状または環状飽和脂肪族炭化水素溶媒などが挙げられる。
このような反応条件下において、反応は、通常、アルカリ金属化合物の添加が終了した後1〜24時間で終了し、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を含む反応混合物を得ることができる。
反応終了後、得られた2,6‐ジヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩および2,6‐ジヒドロキシ安息香酸異性体のアルカリ金属塩等を含む反応液から、公知の方法を用いて、目的物である2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を得ることができる。
【0022】
具体的な方法としては、得られた反応混合物から冷却晶析、貧溶媒を用いた晶析、濾過分離等の通常の固液分離操作等により目的物の2,6‐ジヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を単離した後、該アルカリ金属塩を酸処理して実質的に夾雑物を含まない2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を得る方法、或いは反応混合物を酸処理して2,6‐ジヒドロキシ安息香酸異性体等を含む2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を得、該混合物から冷却晶析、貧溶媒を用いた晶析、濾過分離等の通常の固液分離操作等により実質的に夾雑物を含まない2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を分離する方法を採用できるがどちらの方法でもよい。
【0023】
例えば、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を含む反応終了混合液に水を加えて析出物を溶解後、この水溶液に塩酸または硫酸等の酸性水溶液を添加するか、若しくは、反応終了混合液に水を加えて析出物を溶解した水溶液を直接に塩酸または硫酸等の酸性水溶液に添加することで2,6‐ジヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を2,6‐ジヒドロキシ安息香酸とすることができる。
さらに上記酸処理の際に、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を溶解する溶媒が混在しなければ、酸処理の際に2,6‐ジヒドロキシ安息香酸が析出するのでこれを濾過すれば単離できる。
【0024】
さらに異性体等を分離して高純度の2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を取得するには、公知の方法を用いることができる。
異性体を選択的に分解する方法として、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の反応混合物から2,4‐ジヒドロキシ安息香酸を特定の条件下に選択的に分解する方法(特許文献2)、あるいは、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩および2,6‐ジヒドロキシ安息香酸異性体等のアルカリ金属塩の水溶液に酸を加えpHを4とし生じた不純物を分離した後、pHを1として析出した2,6‐ジヒドロキシ安息香酸を分離する方法(特公平6−80031号公報実施例1)などが挙げられる。
未反応のレゾルシンや一価フェノール類は、反応後、後処理して得られる2,6‐ジヒドロキシ安息香酸(または2,6‐ジヒドロキシ安息香酸のアルカリ金属塩)を濾別後の濾液から、蒸留や抽出など公知の方法で回収し、反応に再利用ができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
レゾルシン55g(0.50モル)を300ml四つ口フラスコに仕込み、二酸化炭素で置換後120℃まで昇温した。120℃、常圧下で二酸化炭素を100ml/min.の速度で流通させながら炭酸カリウム13.8g(Kとして0.20モル)を撹拌しながら40分かけてフラスコ内に添加した。120℃で撹拌下に5時間反応した後、二酸化炭素の流通を停止して反応を終了し、反応終了液に水を加え析出物を溶解した。この反応終了液をサンプリング後、酸処理してからHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析(絶対検量線法)した結果、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸/2,4‐ジヒドロキシ安息香酸/4,6‐ジヒドロキシイソフタル酸生成比率は1/0.10/0.005であり、炭酸カリウムのカリウムに対する2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の存在収率は49.0%であった。
【0026】
実施例2
レゾルシン22g(0.20モル)とフェノール66g(0.70モル)を300ml四つ口フラスコに仕込み、二酸化炭素で置換後120℃まで昇温した。
120℃、常圧下で二酸化炭素を100ml/min.の速度で流通させながら50%炭酸カリウム水溶液27.6g(Kとして0.20モル)を撹拌しながら2時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、トルエン33gを添加し水を留去しながら120℃で撹拌下に14時間反応した後、二酸化炭素の流通を停止して反応を終了し、水を加え析出物を溶解した。この反応終了液を実施例1と同様に処理して、HPLCで分析(絶対検量線法)した結果、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸/2,4‐ジヒドロキシ安息香酸/4,6‐ジヒドロキシイソフタル酸生成比率は1/0.03/0.01であり、炭酸カリウムのカリウムに対する2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の存在収率は65.4%であった。
【0027】
実施例3
レゾルシン55g(0.50モル)を300ml四つ口フラスコに仕込み、二酸化炭素で置換後120℃まで昇温した。120℃、常圧下で二酸化炭素を100ml/min.の速度で流通させながら32%水酸化カリウム水溶液35g(Kとして0.20モル)を撹拌しながら2時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、トルエン38gを添加し水を留去しながら120℃で撹拌下に17時間反応した後、二酸化炭素の流通を停止して反応を終了し、水を加え析出物を溶解した。
この反応終了液を実施例1と同様の操作で処理後、HPLCで分析(絶対検量線法)した結果、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸/2,4‐ジヒドロキシ安息香酸/4,6‐ジヒドロキシイソフタル酸生成比率は1/0.02/0.001であり、水酸化カリウムのカリウムに対する2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の存在収率は53.8%であった。
【0028】
比較例1
レゾルシン50g(0.455モル)、炭酸カリウム62.8g(Kとして0.91モル)、エタノール160g(203ml)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後140℃まで昇温した。140℃で二酸化炭素を吹き込み、1.0MPaのゲージ圧で4時間反応した後、冷却し、水を添加した。この反応終了液を実施例1と同様の操作で処理後、HPLCで分析(絶対検量線法)した結果、2,6‐ジヒドロキシ安息香酸/2,4‐ジヒドロキシ安息香酸/4,6‐ジヒドロキシイソフタル酸生成比率は1/0.25/0.06であり、炭酸カリウムのカリウムに対する2,6‐ジヒドロキシ安息香酸の存在収率は25.9%であった。
【0029】
これら実施例及び比較例の結果によると、本発明において(A)/(B)が2.2〜100の範囲であることにより2,6‐ジヒドロキシ安息香酸をアルカリ金属化合物のアルカリ金属に対し高い収率で得ることができ、(A)/(B)が2.2〜100の範囲ではない場合には、収率は低くなることがわかる。