【実施例1】
【0017】
本実施例は、シャッタ羽根を一つだけ備えたカメラ用フォーカルプレンシャッタであって、デジタルカメラにだけ採用されるものである。そして、本実施例の説明に用いる
図1は、撮影待機状態における左側約半分を示した平面図であり、
図2は、撮影終了状態を
図1と同様にして示した平面図である。尚、本実施例の説明においては、本実施例のフォーカルプレンシャッタをカメラに組み込んだとき、
図1の手前側が被写体側(即ち、撮影レンズ側)であり、
図1の背面側が撮像素子側であることを前提にして説明するが、周知のように、実際には、
図1の手前側が撮像素子側になり、
図1の背面側が被写体側になることもある。
【0018】
そこで先ず、本実施例の構成を説明する。シャッタ地板1の略中央部には、長方形を横長にした被写体光路用の開口部1aが形成されているが、
図1は、本実施例の左側約半分を示したものであるため、その開口部1aも左側約半分だけが示されている。また、シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて補助地板2が取り付けられており、両者の間に羽根室を構成している。補助地板2は、シャッタ地板1と類似の外形形状をしていて、開口部1aと重なるところに、開口部1aとは一部形状の異なる被写体光路用の開口部2aを有している。そして、本実施例の場合、露光開口は、開口部1aの形状によって決められている。
【0019】
開口部1aの左上方の領域には、円弧状の長孔1bが形成されており、その下方端部には、平面形状が略C字状をした周知のゴム製の緩衝部材3が取り付けられている。また、図示していないが、補助地板2にも、長孔1bと重なるところに、略同じ形状をした長孔が形成されている。
【0020】
シャッタ地板1の被写体側の面には、軸1c,1dが立設され、撮像素子側の面には、軸1e,1fが立設されているが、それらのうち、軸1cと軸1eとは、同心上に立設されている。そして、シャッタ地板1の被写体側に立設されている軸1cには、合成樹脂製の第1駆動部材4と第2駆動部材5とが、個々に回転可能に取り付けられ、軸1dには、ゴム製の緩衝部材6が取り付けられている。
【0021】
第1駆動部材4は、第2駆動部材5よりもシャッタ地板1側に配置されていて、細長い形状をしている。この第1駆動部材4の先端には、シャッタ地板1側の面に駆動ピン4aが設けられているが、その駆動ピン4aは、上記の長孔1bを貫通して、先端を、補助地板2の図示していない長孔に挿入している。また、駆動ピン4aは、根元側の部位の断面が円形をしており、先端側の部位の断面が砲弾形をしている。それらの部位のうち、根元側の部位は、緩衝部材3に当接する部位であり、先端側の部位は、後述するシャッタ羽根に連結する部位である。他方、駆動ピン4aと反対側の面には、図面上では分かりにくい平面形状(長方形の一部と円形の一部を組み合わせた形状)をした所定の厚さの被押動部4bが形成されている。
【0022】
第2駆動部材5は、第1駆動部材4よりも被写体側に配置されていて、全体として扇形をしており、シャッタ地板1側の面には、
図1の左側の縁に沿って細長い形状の押動部5aが形成されている。また、第2駆動部材5の被写体側の面には、ローラー5bが取り付けられているほか、部厚く形成された取付け部5cが設けられている。そして、この第2駆動部材5には、駆動源として、本実施例の場合には、図示していない周知の駆動ばねが掛けられており、撮影時に、駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられるとき、その押動部5aが上記の被押動部4bを押し、第1駆動部材4を時計方向へ回転させるようになっている。尚、本実施例の場合には、駆動源として、ばねを用いているが、モータであっても差し支えなく、このことは、下記の実施例2の場合にも言えることである。
【0023】
第2駆動部材5の取付け部5cには、特許文献1,2に記載されているようにして、鉄片部材7が取り付けられている。周知のように、この鉄片部材7は、軸部7aと、その一端に取り付けられた鉄片部7bと、他端に設けられている頭部7cからなっており、軸部7aは、取付け部5c内の孔に対して、軸方向へ移動可能であるとともに、若干傾き得るようにして取り付けられている。また、取付け部5c内には、図示していない圧縮ばねが配置されていて、鉄片部7bを取付け部5c内から突き出すように付勢している。そのため、頭部7cは、取付け部5cからの抜け止めの役目をしていると同時に、鉄片部7bの突き出し量を規制する役目もしている。尚、鉄片部7bは、図示していない周知の電磁石の鉄芯部材に接触し、吸着される部位である。
【0024】
次に、羽根室内に配置されているシャッタ羽根の構成と、シャッタ地板1に対する取付け構成を説明する。本実施例のシャッタ羽根は、二つのアーム8,9と、3枚の羽根10,11,12とを有している。そこで先ず、二つのアーム8,9は、シャッタ地板1に立設されている上記の軸1e,1fに対して、それらの一端を回転可能にして取り付けられている。また、3枚の羽根10,11,12は、各々周知の二つの連結軸部材を用いて、それらの一端側で、アーム8,9に対して枢支されている。そして、一方のアーム8には、周知の長孔が形成されていて、その長孔に、上記の駆動ピン4aの先端部が嵌合している。
【0025】
また、シャッタ地板1の軸1fには、セットばね13が巻かれていて、その一端を、シャッタ地板1に設けられた図示していないばね掛け部に掛け、他端を、アーム9の孔9aに掛けることによって、アーム9を、ひいてはアーム8及び第1駆動部材4を、反時計方向へ回転するように付勢している。しかしながら、その付勢力は、上記した駆動ばねの付勢力よりは小さい。尚、本実施例のセットばね13は、このように構成されているが、本発明におけるセットばねは、シャッタ地板1の軸1cに巻き付けられ、その一端を、第1駆動部材4に掛け、他端を、第2駆動部材5又はシャッタ地板1に掛けることによって、第1駆動部材4を反時計方向へ回転させるように直接付勢しても差し支えない。そして、このことは、下記の実施例2の場合にも言えることである。
【0026】
本実施例の場合には、このほかにも、実際には、シャッタ地板1に、セット部材や上記の電磁石などの構成部材が取り付けられているが、それらの部材は周知の構成をしたものであるため、図示が省略されている。尚、このような本実施例の構成は、シャッタ羽根の構成が、下記の実施例2においては、後羽根の構成とし、また、二つの駆動部材4,5、図示していない駆動ばね,セットばね13などの駆動手段や二つの緩衝部材3,6の構成が、下記の実施例2においては、後羽根の駆動手段の構成として援用される。
【0027】
次に、本実施例の作動を説明する。
図1は、撮影待機状態を示したものである。このとき、開口部1aは全開となっており、カメラの電源スイッチはオンになっている。そのため、撮像素子には被写体光が当たっていて、撮影対象である被写体(被写界)をモニターで観察することが可能になっている。また、このとき、第2駆動部材5は、図示していないセット部材によってローラー5bを押され、図示していない駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させられており、鉄片部材7の鉄片部7bを、図示していない電磁石の鉄芯部材に接触させている。更に、第1駆動部材4は、シャッタ羽根を介して、セットばね13の付勢力により反時計方向へ回転させられており、その被押動部4bを、第2駆動部材5の押動部5aに接触させている。
【0028】
この状態において、レリーズボタンを押すと、先ず、図示していない電磁石に通電されて、それまで鉄芯部材に接触していた鉄片部材7が磁気的に吸着保持される。その後、図示していないセット部材は、ローラー5bから離れて、第2駆動部材5の作動軌跡外に退き、初期位置で停止する。そうすると、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、あらたな電荷の蓄積が行われることによって撮影が開始される。
【0029】
その後、被写体光に対応した所定の時間が経過すると、電磁石に対する通電が断たれるので、第2駆動部材5は、図示していない駆動ばねの付勢力によって、セット位置から時計方向へ回転を開始する。そのとき、第1駆動部材4も、被押動部4bを押動部5aに押されて、セット位置から時計方向へ回転させられるので、セットばね13の付勢力に抗して、アーム8を時計方向へ回転させる。そのため、3枚の羽根10〜12は、
図1の格納状態から走行を開始し、相互の重なり量を小さくしながら開口部1aを閉じていく。
【0030】
そして、3枚の羽根10〜12によって開口部1aが閉鎖されると、その直後に、先ず、第2駆動部材5のローラー5bが緩衝部材6に当接し、続いて、第1駆動部材4の駆動ピン4aが緩衝部材3に当接する。それによって、二つの駆動部材4,5はタイミングをずらせてバウンドすることになるが、第1駆動部材4がバウンドしたときには、先にバウンドした第2駆動部材5が、図示していない駆動ばねの強い付勢力によって再び緩衝部材6に向けて作動しているときであるため、被押動部4bが押動部5aに当接して直ちに時計方向へ戻され、駆動ピン4aを緩衝部材3に押し付けさせられる。そのため、第1駆動部材4のバウンドは極めて小さくなり、それによって、シャッタ羽根が、一時的に開口部1aの一部を開いてしまうようなことがない。
【0031】
このようにしてシャッタ羽根の静止した状態が
図2に示された状態である。この状態で、撮像素子に蓄積された電荷が撮像情報として転送され、記憶装置に記憶されると、周知のように、図示していないセット部材が初期位置から回転させられ、ローラー5bを押して、第2駆動部材5を、図示していない駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させていく。また、それによって、第1駆動部材4も、セットばね13の付勢力によって、被押動部4bが押動部5aに追従し、反時計方向へ回転させられていくので、3枚の羽根10〜12は、相互の重なり量を大きくしながら開口部1aを下方から開いていく。
【0032】
そして、3枚の羽根10〜12が開口部1aを全開にすると、その直後に鉄片部材7の鉄片部7bが、図示していない電磁石の鉄芯部材に接触するようになり、その時点で、図示していないセット部材の回転も停止し、
図1に示された撮影待機状態に復帰する。尚、上記の説明からも分かるように、本実施例の場合には、第2駆動部材5に取り付けられているローラー5bが、緩衝部材6に当接する当接部と、セット部材によって押される被押動部とを兼ねている。しかしながら、下記の実施例2からも分かるように、第2駆動部材5に、緩衝部材6に当接させる専用の部位を設けるようにしても構わない。
【実施例2】
【0033】
次に、
図3及び
図4を用いて、実施例2を説明する。本実施例は、シャッタ羽根を二つ備えたカメラ用フォーカルプレンシャッタであって、フィルムを用いるカメラにも、デジタルカメラにも採用することができる、いわゆるノーマリークローズ式のフォーカルプレンシャッタである。しかしながら、その構成を一部変形させることによって、ノーマリーオープン式のフォーカルプレンシャッタとすることも可能であるが、そのことについては、本実施例の説明後に簡単に述べることにする。そして、本実施例の説明に用いる
図3は、撮影待機状態を示した平面図であり、
図4は、撮影終了状態を左側約半分だけ示した平面図であるが、本実施例の場合にも、それらの図面の手前側が被写体側であり、背面側が撮像素子側であることを前提にして説明する。
【0034】
尚、シャッタ羽根を二つ備えている場合には、特許文献1,2に記載されているように、それらを区別するために、先羽根(先羽根群),後羽根(後羽根群)などと称しているが、本実施例の説明に際しては、それらを先羽根,後羽根ということにする。また、
図3及び
図4には、先羽根系の構成だけが記載されているが、後羽根系の構成は、実施例1の構成と全く同じであるため、既に説明したように、実施例1の構成を援用することにし、干渉部材3,6については図示してあるが、後羽根の駆動手段の図示を省略してある。そのため、後羽根系は、
図3の状態においては、上記の
図1の状態になっており、
図4の状態においては、
図2の状態になって、後羽根の3枚の羽根10〜12は開口部1aを閉鎖していることになる。
【0035】
そこで、本実施例の全体構成と、先羽根系の構成について説明する。先ず、本実施例においては、シャッタ地板1と補助地板2との間に、周知の手段によって中間板14が取り付けられていて、シャッタ地板1と中間板14の間を先羽根の羽根室とし、中間板14と補助地板2の間を後羽根の羽根室としている。そのため、実施例1で説明したシャッタ羽根は、中間板14と補助地板2との間の羽根室に配置されていることになる。そして、その中間板14にも、開口部1aと重なるところに被写体光路用の開口部14aが形成されているが、本実施例の場合にも、開口部1aが露光開口の形状を決めている。尚、
図3においては、シャッタ地板1の右上方の領域を破断して示している。
【0036】
シャッタ地板1には、上記の実施例1における円弧状の長孔1bのほかに、開口部1aの左下方の領域に、円弧状の長孔1gが形成されており、その下方端部には、平面形状が略C字状をした周知のゴム製の緩衝部材15が取り付けられている。また、図示していないが、補助地板2にも、長孔1gと重なるところに、略同じ形状をした長孔が形成されている。
【0037】
シャッタ地板1の被写体側の面には、軸1h,1iが立設され、撮像素子側の面には、軸1j,1kが立設されているが、それらのうち、軸1hと軸1jとは、同心上に立設されている。そして、シャッタ地板1の被写体側に立設されている軸1hには、いずれも合成樹脂製の第1駆動部材16と第2駆動部材17とが、個々に回転可能に取り付けられており、また、軸1iには、ゴム製の緩衝部材18が取り付けられている。
【0038】
第1駆動部材16は、軸1hに対して、第2駆動部材17よりもシャッタ地板1側に取り付けられていて、その先端には、シャッタ地板1側の面に駆動ピン16aが設けられている。そして、その駆動ピン16aは、円弧状の長孔1gを貫通して、先端を、補助地板2の図示していない長孔に挿入している。また、この駆動ピン16aは、根元側の部位の断面が円形をしており、先端側の部位の断面が砲弾形をしているが、根元側の部位は、緩衝部材15に当接する部位であり、先端側の部位は、後述する先羽根に連結する部位である。他方、駆動ピン16aが設けられている面の反対側の面には、被押動部16bが所定の厚さで形成されている。
【0039】
第2駆動部材17は、第1駆動部材16よりも被写体側に配置されており、押動部17aと、被押動部17bと、被写体側に分厚く形成された取付け部17cと、当接部17dとが設けられている。そして、この第2駆動部材17には、駆動源として、図示していない周知の駆動ばねが掛けられており、撮影時に、その駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられるとき、押動部17aが上記の被押動部16bを押し、第1駆動部材16を時計方向へ回転させるようになっている。
【0040】
また、第2駆動部材17の取付け部17cには、鉄片部材19が取り付けられている。そして、この鉄片部材19は、軸部19aと、鉄片部19bと、頭部19cからなっており、軸部19aは、取付け部19c内の孔に対して、軸方向へ移動可能であるとともに、若干傾き得るようにして取り付けられている。また、取付け部15c内には、図示していない圧縮ばねが配置されていて、鉄片部19bを取付け部19c内から突き出すように付勢している。そして、周知のように鉄片部19bは、図示していない先羽根用電磁石の鉄芯部材に接触し、吸着される部位である。
【0041】
次に、後羽根の構成を説明する。後羽根は、二つのアーム20,21と、3枚の羽根22,23,24とを有している。そこで先ず、二つのアーム20,21は、シャッタ地板1に立設されている上記の軸1j,1kに対して、それらの一端を回転可能にして取り付けられている。また、3枚の羽根22,23,24は、各々二つの連結軸部材を用いて、それらの一端側で、アーム20,21に対して枢支されている。そして、一方のアーム20には、周知の長孔が形成されていて、その長孔に、上記の駆動ピン16aの先端部が嵌合している。
【0042】
また、シャッタ地板1の軸1kには、セットばね25が巻かれていて、その一端を、シャッタ地板1に設けられた図示していないばね掛け部に掛け、他端を、アーム21の孔21aに掛けることによって、アーム21を、ひいてはアーム20及び第1駆動部材16を、反時計方向へ回転するように付勢している。しかしながら、その付勢力は、第2駆動部材17に掛けられている上記の駆動ばねの付勢力よりは小さい。
【0043】
次に、本実施例の作動を説明する。既に述べたように、
図3及び
図4には、本実施例の先羽根系の構成だけが示されていて、後羽根系の構成は、
図1及び
図2に示されている構成を援用することにしている。そこで、作動を説明するに際しては、先羽根系と後羽根系の区別を明確にするために、
図3及び
図4に示されている第1駆動部材16,第2駆動部材17,図示されていない駆動ばねを、それぞれ先羽根用第1駆動部材16,先羽根用第2駆動部材17,先羽根用駆動ばねといい、
図1及び
図2に示されている第1駆動部材4,第2駆動部材5,図示されていない駆動ばねを、それぞれ後羽根用第1駆動部材4,後羽根用第2駆動部材5,後羽根用駆動ばねということにする。また、図示されていない電磁石も、先羽根用電磁石,後羽根用電磁石という。
【0044】
尚、
図3及び
図4においても、セット部材が図示されていないが、本実施例のセット部材は、特許文献1,2にも記載されているような周知のセット部材であって、セット時に、初期位置から回転を開始して、実施例1の場合のように一方だけではなく、両方の第2駆動部材5,17を、セット位置まで回転させるようになっている。
【0045】
そこで先ず、
図3に示されている撮影待機状態においては、カメラの電源スイッチはオンになっているが、開口部1aは先羽根の3枚の羽根22〜24によって覆われており、後羽根の3枚の羽根10〜12は、
図1に示されているように、開口部1aの上方に格納されている。そのため、フィルムを用いるカメラの場合は勿論であるが、デジタルカメラの場合でも、撮影用の撮像素子には被写体光が当たっていないので、撮影対象である被写体(被写界)を観察する場合には、光学式のファインダで観察するか、専用の撮像素子を用いてモニターで観察することになる。
【0046】
また、このとき、後羽根用第2駆動部材5は、図示していないセット部材によってローラー5bを押され、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させられており、鉄片部材7の鉄片部7bを、図示していない後羽根用電磁石の鉄芯部材に接触させているが、先羽根用第2駆動部材17は、図示していない同じセット部材によって被押動部17bを押され、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させられており、鉄片部材19の鉄片部19bを、図示していない先羽根用電磁石の鉄芯部材に接触させている。
【0047】
更に、後羽根用第1駆動部材4は、後羽根を介して、セットばね13の付勢力により反時計方向へ回転させられており、その被押動部4bを、後羽根用第2駆動部材5の押動部5aに接触させているが、先羽根用第1駆動部材16も、先羽根を介して、セットばね25の付勢力により反時計方向へ回転させられており、その被押動部16bを、先羽根用第2駆動部材17の押動部17aに接触させている。
【0048】
この状態において、レリーズボタンを押すと、先ず、図示していない二つの電磁石に通電されて、それまでそれぞれの鉄芯部材に接触していた鉄片部材7,19が磁気的に吸着保持される。その後、図示していないセット部材は、セット時とは逆方向へ回転させられ、ローラー5bと被押動部17bから離れて初期位置で停止する。そうすると、デジタルカメラの場合には、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷が放出される。
【0049】
その後、先ず、先羽根用電磁石に対する通電が断たれ、続いて、被写体光に対応した所定時間の経過後に、後羽根用電磁石に対する通電が断たれる。そのため、先羽根用第2駆動部材17は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられると共に、その押動部17aが被押動部16bを押すことによって、先羽根用第1駆動部材16を時計方向へ回転させるので、先羽根のアーム20もセットばね25の付勢力に抗して時計方向へ回転する。そのため、先羽根の3枚の羽根22〜24は、開口部1aを覆っている状態から走行を開始し、相互の重なり量を大きくしながら開口部1aを上方から下方へ向けて開いていく。
【0050】
続いて、後羽根用電磁石に対する通電が断たれると、後羽根用第2駆動部材5は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられると共に、その押動部5aが被押動部4bを押すことによって、後羽根用第1駆動部材4を時計方向へ回転させるので、後羽根のアーム8もセットばね13の付勢力に抗して時計方向へ回転する。そのため、後羽根の3枚の羽根10〜12は、格納状態から走行を開始し、相互の重なり量を小さくしながら開口部1aを上方から下方へ向けて閉じていく。それによって、それ以後は、先羽根の羽根24と後羽根の羽根12との間に形成されたスリットによって、フィルム又は撮像素子が露光されていく。
【0051】
そして、先羽根と後羽根による露光作動の終了段階になると、先羽根の3枚の羽根22〜24が開口部1aの下方位置に完全に退いた直後に、先羽根用第2駆動部材17の当接部17dが緩衝部材18に当接し、続いて、後羽根の3枚の羽根10〜12が開口部1aを完全に閉じた直後に、後羽根用第2駆動部材5のローラー5bが緩衝部材6に当接する。
【0052】
そこで先ず、先羽根用第2駆動部材17の当接部17dが緩衝部材18に当接すると、その直後には、先羽根用第1駆動部材16の駆動ピン16aが緩衝部材15に当接するようになる。それにより、先羽根用第1駆動部材16がバウンドしたときは、先にバウンドした先羽根用第2駆動部材17が、図示していない先羽根用駆動ばねの強い付勢力によって再び緩衝部材18に向けて作動しているときであるため、被押動部16bが押動部17aに当接して直ちに時計方向へ戻され、駆動ピン16aを緩衝部材15に押し付けられる。そのため、先羽根用第1駆動部材16のバウンドは極めて小さくなり、それによって、先羽根が、一時的に開口部1aの一部を閉じてしまうようなことがない。
【0053】
また、続いて、後羽根用第2駆動部材5のローラー5bが緩衝部材6に当接すると、その直後には、後羽根用第1駆動部材4の駆動ピン4aが緩衝部材3に当接するようになる。それにより、後羽根用第1駆動部材4がバウンドしたときは、先にバウンドした後羽根用第2駆動部材5が、図示していない後羽根用駆動ばねの強い付勢力によって再び緩衝部材6に向けて作動しているときであるため、被押動部4bが押動部5aに当接して直ちに時計方向へ戻され、駆動ピン4aを緩衝部材3に押し付けられる。そのため、後羽根用第1駆動部材4のバウンドは極めて小さくなり、それによって、後羽根が、一時的に開口部1aの一部を開いてしまうようなことがない。
【0054】
このようにして、先羽根は、
図4に示された状態で静止され、後羽根は、
図2に示された状態で静止される。そのため、デジタルカメラの場合には、この状態において、撮像素子に蓄積された電荷が撮像情報として転送され、記憶装置に記憶される。また、フィルムを用いるカメラの場合には、次に説明するセット作動に連動してフィルムが1コマ分だけ巻き上げられることになる。
【0055】
このようにして撮影が終了すると、周知のように、図示していないセット部材が初期位置から回転させられ、セット作動が開始する。セット部材は、その回転によって、先ず、先羽根用第2駆動部材16の被押動部17bを押し、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して先羽根用第2駆動部材16を反時計方向へ回転させていく。そのため、先羽根用第1駆動部材16も、セットばね25の付勢力によって、被押動部16bが押動部17aに追従して反時計方向へ回転するので、先羽根の3枚の羽根22〜24は、相互の重なり量を小さくしながら開口部1aの上方へ移動していく。
【0056】
そして、先羽根の羽根24と後羽根の羽根12が所定量重なると、図示していないセット部材は、後羽根用第2駆動部材5の被押動部5bを押し始め、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して後羽根用第2駆動部材5を反時計方向へ回転させていくようになる。そのため、後羽根用第1駆動部材4も、セットばね13の付勢力によって、被押動部4bが押動部5aに追従し、反時計方向へ回転させられていくので、後羽根の3枚の羽根10〜12は、相互の重なり量を大きくしながら開口部1aの上方へ移動していく。従って、このセット作動中において、開口部1aが部分的に開いてしまうようなことがない。
【0057】
このようにして、先羽根の3枚の羽根22〜24と後羽根の3枚の羽根10〜12が上方へ移動してゆき、先羽根の3枚の羽根22〜24によって開口部1aが覆われ、後羽根の3枚の羽根10〜12が開口部1aの上方位置に格納されると、鉄片部材19,7の鉄片部19b,7bが、図示していない各々の電磁石の鉄芯部材に順に接触するようになって、図示していないセット部材の回転が停止する。
図3は、そのようにして、セット作動が終了した状態、即ち次の撮影待機状態を示したものである。
【0058】
尚、本実施例においては、先羽根系の場合も後羽根系の場合にも、第1駆動部材16,4と第2駆動部材17,5とを備えていて、第2駆動部材17,5の当接部(後羽根系の場合にはローラーが兼用)17d,5bを緩衝部材18,6に当接させた直後に第1駆動部材16,4の駆動ピン16a,4aを緩衝部材15,3に当接させるように構成されているが、本発明は、このように構成されていれば、その他のバウンド防止機構を備えなくてもよいというものではなく、必要に応じて、その他のバウンド防止機構を備えることを妨げるものではない。そして、このことは実施例1の場合も同じである。
【0059】
また、本実施例においては、先羽根系の場合も後羽根系の場合にも、第1駆動部材16,4と第2駆動部材17,5とを備えていて、第2駆動部材17,5の当接部(後羽根系の場合にはローラーが兼用)17d,5bを緩衝部材18,6に当接させた直後に第1駆動部材16,4の駆動ピン16a,4aを緩衝部材15,3に当接させるように構成されているが、本発明は、このような構成に限定されず、先羽根系と後羽根系のいずれか一方は、従来のように、第1駆動部材と第2駆動部材とを一つの駆動部材で構成し、それに対応する、緩衝部材6,18の一方を備えていないようにしても構わない。
【0060】
更に、本実施例のフォーカルプレンシャッタは、二つのシャッタ羽根を備えたノーマリークローズ方式のフォーカルプレンシャッタであるが、本発明は、二つのシャッタ羽根を備えたノーマリーオープン方式のフォーカルプレンシャッタにも適用することが可能である。ノーマリーオープン方式のフォーカルプレンシャッタについては、詳しく説明するまでもないので、実施例として説明するのを省略しているが、特許文献2に記載されているのが、その方式のフォーカルプレンシャッタである。
【0061】
即ち、特許文献2には、本実施例の先羽根用第1駆動部材16,先羽根用第2駆動部材17,セットばね25に相当する、「先羽根用第1駆動部材16」,「先羽根用第2駆動部材17」,「セットばね34」が記載されている。また、特に、本実施例の先羽根用第1駆動部材16には、特許文献2における「先羽根用第1駆動部材16」の「被抑止部16b」に相当する部位の形状を記載しておいた。従って、本実施例における、先羽根用第1駆動部材16と図示していないセット部材との間に、特許文献2に記載の「抑止部材28」を介在させれば、本実施例のフォーカルプレンシャッタは、ノーマリーオープン方式のフォーカルプレンシャッタになることになる。