【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、総務省、超高速近距離無線伝送技術等の研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
M.Elmala, J.Paramesh, K.Soumyanath,"A 90-nm CMOS Doherty Power Amplifier With Minimum AM-PM Distortion",IEEE Journal of Solid-State Circuits,米国,IEEE,2006年 6月,VOL.41,NO.6,Page 1323-1332
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信が可能な携帯端末(例えばスマートフォン)において、大容量なデジタルコンテンツを送受信することの需要が高まっている。例えば、1Gbps以上の伝送レートを有するミリ波帯、特に60GHz帯の無線通信が注目されている。近年の半導体技術の進展により、ミリ波帯を用いた無線通信が可能となると期待されている。
【0003】
ミリ波帯の無線通信に用いられる回路部品の1つに、直交ハイブリッドカプラがある。直交ハイブリッドカプラは例えば1入力及び2出力の回路部品であり、理想的には2つの出力信号は同振幅であって90度の位相差を有する。ミリ波帯の無線通信では、直交ハイブリッドカプラは、無線通信端末のIC(Integrated Circuit)に内蔵される。
【0004】
直交ハイブリッドカプラには、分布定数回路を用いたタイプと集中定数回路を用いたタイプとがある。ミリ波帯において、小型であって低損失の直交ハイブリッドカプラを実現するには、例えばLC集中定数回路が用いられることが望ましい。
【0005】
図18は、LC集中定数回路を用いた直交ハイブリッドカプラの回路図を示す。
図18(a)は、キャパシティブカップリング(capacitive coupling)型の直交ハイブリッドカプラを示す。
図18(b)は、マグネティックカップリング(magnetic coupling)型の直交ハイブリッドカプラを示す。
図18(c)は、波長短縮したマグネティックカップリング(magnetic coupling)型の直交ハイブリッドカプラを示す。
図18(a)〜(c)に示す直交ハイブリッドカプラは、無線通信端末内の回路サイズ、及び無線通信に用いられる信号の帯域幅に応じて使い分けられる。
【0006】
図18(a)に示す直交ハイブリッドカプラは、信号入力端子TA1、スルー端子TA2、カップリング端子TA3、アイソレーション端子(絶縁端子)TA4、インダクタL1,L2、カップリングキャパシタCA1,CA2、シャントキャパシタCB1,CB2,CB3,CB4を含む構成である。
【0007】
スルー端子TA2は出力I(OUTI)端子を表し、カップリング端子TA3は出力Q(OUTQ)端子を表す。アイソレーション端子TA4には、終端抵抗が接続される。カップリングキャパシタCA1では、信号入力端子TA1とアイソレーション端子TA4との間の寄生容量が支配的である。シャントキャパシタCB1,CB2,CB3,CB4は、それぞれ各端子(TA1,TA2,TA3,TA4)とグランドとの間に設けられる。キャパシティブカップリング型は、高周波信号の取り扱いに適したハイブリッドカプラである。
【0008】
図18(b)に示す直交ハイブリッドカプラは、信号入力端子TA10、スルー端子TA20、カップリング端子TA30、アイソレーション端子(絶縁端子)TA40、インダクタL10,L20、カップリングキャパシタCA10,CA20、及びシャントキャパシタCB10,CB20,CB30,CB40を含む構成である。アイソレーション端子TA40には、終端抵抗が接続される。インダクタL10,L20では、電磁誘導による結合容量が支配的である。シャントキャパシタCB10,CB20,CB30,CB40は、それぞれ各端子(TA10,TA20,TA30,TA40)とグランド(交流的なグランドを含む)との間に設けられる。
【0009】
図18(c)に示す直交ハイブリッドカプラは、信号入力端子としての入力ポートTAP1、OUTI端子としてのダイレクトポートTAP2、OUTQ端子としての結合ポートTAP3、絶縁端子としてのアイソレーションポートTAP4、結合度kのインダクタ、容量CC1,CC2、容量CP1,CP2,CP3,CP4及び容量CM1a,CM1bを含む構成である。
【0010】
容量CC1は、入力ポートTAP1とダイレクトポートTAP2との間の容量であって、寄生容量でもよい。容量CC2は、結合ポートTAP3とアイソレーションポートTAP4との間の容量であって、寄生容量でもよい。容量CC1,CC2は、共振回路を形成する。
【0011】
容量CM1aは、入力ポートTAP1と結合ポートTAP3との間の容量である。容量
CM1bは、ダイレクトポートTAP2とアイソレーションTAP4との間の容量である。各容量CP1,CP2,CP3,CP4は、各ポート(端子)とグランドとの間のシャント容量である。
【0012】
図19は、特許文献1に記載の直交ハイブリッドカプラを示す図である。
図19(a)は等価回路図、
図19(b)はレイアウト図である。特許文献1の直交ハイブリッドカプラは、変形キャパシティブカップリング(capacitive coupling)型の直交ハイブリッドカプラである。カップリングキャパシタには、スパイラルインダクタL3,L4の間の寄生容量が用いられている。
【0013】
図20は、非特許文献1に記載の直交ハイブリッドカプラのレイアウト図である。
図20には、マグネティック結合(magnetic coupling)型の直交ハイブリッドカプラが示され、中心にトランスが配置され、両側にカップリングおよびシャントのキャパシタが配置されている。
【0014】
なお、特許文献2には、ハイブリッドカプラの等価回路図及びレイアウト例が示されている。特許文献2に示すハイブリッドカプラは、波長短縮したマグネティックカップリング(magnetic coupling)型の直交ハイブリッドカプラである。カップリングキャパシタ、シャントキャパシタとして、トランス間の寄生容量が用いられている。
【0015】
なお、特許文献3、特許文献4、特許文献5には、同様のハイブリッドカプラの回路が示されている。これらの回路については、実施形態の説明において適宜、参照することとして、ここでは説明を省略する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態の直交ハイブリッドカプラは、マイクロストリップ伝送線路を介して、電磁誘導又は相互誘導する誘導デバイス(例えば、トランス又はインダクタ)に、高周波信号を入力する。マイクロストリップ伝送線路は、例えば、グランド(例えば共通グランド導体であるグランドプレーン)を含む構成である。
【0027】
図1(a)は本実施形態のマグネティックカップリング型の直交ハイブリッドカプラのレイアウトであり、
図1(b)は本実施形態の直交ハイブリッドカプラの回路図である。
【0028】
図1(a)又は
図1(b)に示す直交ハイブリッドカプラ100は、誘導デバイスとしてのトランス101、カップリングキャパシタ102,103、シャントキャパシタ104〜107、終端抵抗108、グランド109及び伝送線路110〜112を含む構成である。伝送線路110〜112は、グランド109及びマイクロストリップラインを構成する。
【0029】
本実施形態の直交ハイブリッドカプラ100では、入力信号INは端子P1から伝送線路110に入力される。出力信号OUT_Iは、伝送線路112を介して、端子P3から出力される。出力信号OUT_Qは、伝送線路111を介して、端子P2から出力される。出力信号OUT_Iの位相は、出力信号OUT_Qの位相より90度遅れる。
【0030】
直交ハイブリッドカプラ100の構成について詳細に説明する。
【0031】
誘導デバイスとしてのトランス101は、コイル101a、コイル101b、及び各端子T1,T2,T3,T4を含む構成である。誘導デバイスは、トランス101に限らず、例えばインダクタでもよい。また、誘導デバイスは、複数の配線層が平行にスパイラル形状に構成されていれば、
図1に示すトランス101に限定されない。
【0032】
各端子T1,T2,T3には、それぞれ、マイクロストリップ伝送線路110,111,112が接続される。端子T1と端子T2の間にはカップリングキャパシタ102が配置され、端子T3と端子T4との間にはカップリングキャパシタ103が配置される。
【0033】
各端子T1,T2,T3,T4と各マイクロストリップ伝送線路110,111,112のグランド109との間には、それぞれ、シャントキャパシタ104,105,106,107が配置されている。
【0034】
端子T4と、マイクロストリップ伝送線路110,111,112のグランド109との間には、終端抵抗108が配置されている。
【0035】
カップリングキャパシタ102,103は、長さの等しい複数の櫛形状配線を用いて構成されている。また、カップリングキャパシタ102,103は、長さの等しい複数のジグザグ(Zigzag)形状配線を用いて構成されていてもよい。
【0036】
ここで、本発明の解決しようとする課題について、より具体的に説明する。
図16,
図17にシャントキャパシタのレイアウトの比較例を示す。
図16,
図17は、
図1(a)の破線により囲まれたブロックの拡大図を示す。
【0037】
図16は、シャントキャパシタ104として特許文献3もしくは4記載のMOMキャパシタを用いたシャントキャパシタのレイアウト図の一例である。なお、特許文献3ではMOMキャパシタの配線として直線配線が用いられ、特許文献4ではジグザグ(Zigzag)配線が用いられている。
図16では、端子がシャントキャパシタ104を挟んで両側に設けられている。このため、例えばMOMキャパシタの一端をコイル101aに接続すると、MOMキャパシタの他端をグランド109に接続するための配線113が必要となり、シャントキャパシタ104を構成する場合に配線長の短縮が困難となる。
【0038】
図17は、シャントキャパシタ104として特許文献5に記載の交差配線を用いたMOMキャパシタを用いた場合のレイアウト図の他の一例である。
図16と同様に、シャントキャパシタ104からトランスを形成するコイル101a及びグランド109にそれぞれ接続するための配線113a、113bが必要となり、同様に配線長の短縮が困難となる。
【0039】
次に、本実施形態の直交ハイブリッドカプラ100のシャントキャパシタのレイアウトについて、
図2を参照して詳細に説明する。
図2(a)は第1の実施形態の直交ハイブリッドカプラ100におけるシャントキャパシタ104のレイアウト図であり、
図2(b)はシャントキャパシタ104のレイアウトの説明図であり、同図(c)は配線の交差の説明図である。
図2(a)〜(c)では、
図1に示す各シャントキャパシタ104〜107のうち、一例としてシャントキャパシタ104を例に挙げて説明するが他のシャントキャパシタ105〜107でも同様であり、更に以下の各実施形態においても同様とする。
【0040】
図2(a)に示す直交ハイブリッドカプラ100のシャントキャパシタ104は、シャントキャパシタ104のための配置領域ARに配置されている。
【0041】
図2(a)に示すシャントキャパシタ104は、最下層としての第1層に設けられたメタル配線121,122、及び、最下層の一つ上位の層としての第2層に設けられたメタル配線123,124を含む構成である。メタル配線121とメタル配線124とは、ビア125a,125cを介して接続されている。メタル配線123とメタル配線122とは、ビア125b,125dを介して接続されている。各ビア125a〜125dは、第1層のメタル配線と第2層のメタル配線とを接続し、具体的には、各ジグザグ形状のメタル配線(以下、「ジグザグ形状配線」という)の各角部を接続する。ジグザグ(Zigzag)形状配線については後述する。
【0042】
メタル配線121〜124は、配線の直線部分が第1方向と第2方向とに交互に折れ曲がった形状を有し、所謂ジグザグ形状を有するパターンである。第1方向は、例えばコイル101a(
図2(a)ではコイル101aの直線部分)の延在方向であり、
図2(a)におけるX方向である。第2方向は、マイクロストリップ伝送線路110〜112のグランド109、即ち共通の接地電位を提供するグランドプレーンの長手方向であり、
図2(a)におけるY方向である。
図2(a)においてX方向とY方向とは直角をなし、これらの2方向と垂直な方向がZ方向であり、Z方向は、所謂紙面に垂直な方向を表す。
【0043】
ジグザグ形状配線について、
図2(c)を参照して説明する。
【0044】
ジグザグ形状配線は、第1方向(X方向)に沿うジグザグ配線ha1〜ha3,hb1〜hb3と、第1方向に交差する第2方向(Y方向)に沿うジグザグ配線va1〜va3,vb1〜vb3とが角部において結合する構成である。従って、ジグザグ形状配線は、第1方向に沿うジグザグ配線と、第2方向に沿うジグザグ配線とが交互に繰り返されたジグザグ形状のパターンを有する。
【0045】
ジグザグ形状配線の長さについて、
図2(a)を参照して説明する。最下層(第1層)に設けられたジグザグ形状配線121,122の長さについては、ジグザグ形状配線121はジグザグ形状配線122より長い。更に、最下層の一つ上位の層(第2層)に設けられたジグザグ形状配線123,124の長さについては、ジグザグ形状配線123はジグザグ形状配線124より長い。
【0046】
ジグザグ形状配線121,124は、ビア126a,126bを介して、それぞれコイル101aに接続される。ジグザグ形状配線122,123は、ビア127b,127aを介して、グランド109に接続される。
【0047】
ジグザグ形状配線121とジグザグ形状配線122とは等間隔を空けて配列され、ジグザグ形状配線124とジグザグ形状配線123とは等間隔を空けて配列される。従って、シャントキャパシタ104は、等間隔に配置されるジグザグ形状配線の数が増えるため、高い容量を有する。また、シャントキャパシタ104は容量が高いため、小型化に適し、例えば集積回路(IC)に内蔵し易くなる。
【0048】
シャントキャパシタ104は、具体的には、ジグザグ形状配線121,122の各側面にて発生する容量と、ジグザグ形状配線123,124の各側面にて発生する容量と、ジグザグ形状配線121,123の第1層と第2層との積層方向(以下、単に「積層方向」という)における交差部にて発生する容量と、フリンジ(角部)にて発生する容量との和に相当する容量を有する。
【0049】
フリンジにて発生する容量は、例えば、一つのジグザグ形状配線の側面と、ジグザグ形状配線に対して上層又は下層のジグザグ形状配線との間にて生じるリーク容量である。シャントキャパシタ104は、フリンジにて発生する容量を有するため、容量密度を増やすことができる。
【0050】
また、
図2(b)のシャントキャパシタ104は、ジグザグ形状配線の積層方向を基準にすることで、配置領域ARにおいて、矢印の方向に、つまり斜めに立ち上がる配置となる。これにより、コイル101aの直線状部分とグランド109とは、シャントキャパシタ104によって直接に接続され、余分な接続配線が不要となる。
【0051】
これにより、シャントキャパシタ104は、
図16又は
図17に示すシャントキャパシタのレイアウトに比べて、トランス(コイル)又はグランドに接続するための余計な配線が不要となり、配線長を低減できる。従って、シャントキャパシタ104は、入力信号に対する出力信号の振幅誤差及び位相誤差を低減できる。なお、他のシャントキャパシタ105〜107のトランス(コイル)又はグランドに対する接続についても同様である。
【0052】
次に、シャントキャパシタ104の各層に設けられたジグザグ形状配線について、
図3〜
図6を参照して説明する。各シャントキャパシタ104〜107は、複数のジグザグ形状配線が積み上げられた構造を有している。即ち、各シャントキャパシタ104〜107では、N(Nは、2以上の整数)個のジグザグ形状配線が積層されている。
【0053】
図3は、シャントキャパシタ104のレイアウトの最下層(第1層)の配線パターンを個別に示すレイアウト図である。
図3に示すシャントキャパシタ104の配置領域ARでは、各層における配線層(配線パターン)としてのジグザグ形状配線121,122が設けられる。また、ビア125a〜125d、ビア126a、ビア127bが設けられる。なお、以下の説明では、各ビアは、ビアの一部をなす導体層又は不導体層を含む。
【0054】
図4は、シャントキャパシタ104のレイアウトの最下層の一つ上位の層(第2層)の配線パターンを個別に示すレイアウト図である。
図4に示すシャントキャパシタ104の配置領域ARでは、各層における配線層(配線パターン)としてのジグザグ形状配線124,123が設けられる。また、ビア126a〜126d、ビア126b、ビア127aが設けられる。
【0055】
図5は、シャントキャパシタ104のレイアウトの最下層の二つ上位の層(第3層)の配線パターンを個別に示すレイアウト図である。
図5では、シャントキャパシタ104の配置領域ARの近傍には、ビア126a,126bと、ビア127a,127bと、グランド109が設けられる。
【0056】
図6は、シャントキャパシタ104のレイアウトの最上層(第4層)の配線パターンを個別に示すレイアウト図である。
図6では、シャントキャパシタ104の配置領域ARの近傍には、ビア126a,126bと、コイル101aと、マイクロストリップ伝送線路の一部(例えばマイクロストリップ伝送線路112)とが設けられる。
【0057】
以上により、本実施形態の直交ハイブリッドカプラ100のシャントキャパシタ104〜107は、K(Kは、1〜N−1のうちいずれか)番目の配線層に設けられるジグザグ形状のK層配線と、K+1番目の配線層に設けられるジグザグ形状の(K+1)層配線とを含む構成である。
【0058】
K層配線は、ビア126aによって各端子T1〜T3のうちいずれかの端子(
図2の例では端子T3)に電気的に接続されるジグザグ形状配線121と、ビア127bによってマイクロストリップ伝送線路のグランド109に接続され、ジグザグ形状配線121とは長さが異なるジグザグ形状配線122とを含む構成である。
【0059】
更に、K+1層配線は、ビア126bによって各端子T1〜T3のうちいずれかの端子に(
図2の例では端子T3)に電気的に接続されるジグザグ形状配線124と、ビア127aによってマイクロストリップ伝送線路のグランドに接続され、ジグザグ形状配線124とは長さが異なるジグザグ形状配線123とを含む構成である。
【0060】
ジグザグ形状配線121〜124のうちのいずれかのジグザグ形状配線は、第1方向に沿うジグザグ配線と、第1方向に交差する第2方向に沿うジグザグ配線とが角部において立体的に交差(結合)し、第1方向に沿うジグザグ配線と第2方向に沿うジグザグ配線とが交互に繰り返されるジグザグ形状のパターンを有する(
図2(c)参照)。
【0061】
また、
図2(a)〜(c)に示す直交ハイブリッドカプラ100では、配線層の積層方向において、ジグザグ形状配線121のジグザグ配線ha1〜ha3とジグザグ配線Va1〜Va3とは、ジグザグ形状配線124のジグザグ配線Vb1〜Vb3とジグザグ配線hb1〜hb3とに対してそれぞれ立体的に交差する。
【0062】
同様に、
図2(a)〜(c)に示す直交ハイブリッドカプラ100では、配線層の積層方向において、ジグザグ形状配線122の第1方向に沿うジグザグ配線と第2方向に沿うジグザグ配線とは、ジグザグ形状配線124の第2方向に沿うジグザグ配線と第1方向に沿うジグザグ配線とに対してそれぞれ立体的に交差している。
【0063】
これにより、立体構造のシャントキャパシタ104〜107が形成され、シャントキャパシタ104の容量密度を効率的に増やすことができる。好ましくは、第1方向と第2方向との交差の角度は90°である。これにより、回路設計におけるレイアウトルールに従ったキャパシタレイアウトの設計が可能であり、直交ハイブリッドカプラの性能を向上できる。
【0064】
以上により、本実施形態の直交ハイブリッドカプラ100のシャントキャパシタ104〜107は、取り出し配線及びビアからトランス若しくはグランドまでの引き出し配線が不要になり、寄生インダクタンス及び寄生抵抗を低減できる。従って、直交ハイブリッドカプラ100は、入力信号に対する出力信号の振幅誤差及び位相誤差を低減できる。
【0065】
更に、直交ハイブリッドカプラ100は、入力側と出力側とのインピーダンス整合を改善できる。更に、
図2に示すシャントキャパシタは、シャントキャパシタのキャパシタンスとして、交差するジグザグ形状配線のフリンジキャパシタンスを用いることにより、単位面積あたりの容量(容量密度)を増大できる。
【0066】
また、直交ハイブリッドカプラ100は、配線層の積層方向において、ジグザグ形状配線121とジグザグ形状配線123とが立体的に交差する部分を接続するビア125a,125cと、ジグザグ形状配線122とジグザグ形状配線123とが立体的に交差する部分を接続するビア125b,125dとを含む。
【0067】
これにより、直交ハイブリッドカプラ100は、フリンジ部分を用いたキャパシタンスによって、直交ハイブリッドカプラ100自身の容量を増大できる。なお、直交ハイブリッドカプラ100において、ビア125a〜125dは必ずしも必要ではないが、ジグザグ形状配線の側面によって生じる容量を用いることにより、容量を増大できる。
【0068】
更に、多層のメタル配線がシャントキャパシタとして利用可能な場合、奇数番目の配線層には最下層の配線層と同じレイアウトが用いられ、偶数番目の配線層には最下層の一つ上位の配線層と同じレイアウトが用いられる。これにより、シャントキャパシタ104〜107は、より単位面積当たりの容量を大きくできる。
【0069】
また、トランス101の形状は上下対称であることが望ましい。これにより、直交ハイブリッドカプラ100がレイアウトの対称性を利用して、同振幅であって90度の位相差を有する信号を出力できる。
【0070】
トランス101は、半導体の複数のメタル配線層が平行にレイアウトされて形成され、交差部では上層と下層に分かれていることが望ましい。つまり、直交ハイブリッドカプラ100において、誘導デバイスは、複数の配線層を平行にスパイラル形状に構成されることが望ましい。この構成により、トランス101の寄生抵抗を低減できる。
【0071】
また、カップリングキャパシタ102、103は、長さの同じ櫛形のキャパシタ若しくは長さの同じジグザグ形状のキャパシタを用いてもよい。特に、櫛形のキャパシタを用いることにより、カップリング容量を増加できる。ジグザグ形状を用いても同様の効果が実現できる。
【0072】
なお、トランス101のコイル101aの末端の直線部分(コイル101a)と、グランド109と、いずれかのシャントキャパシタ104〜107により囲まれる三角形の空間が設けられる方が望ましい(
図2(b)参照)。
【0073】
このため、ジグザグ形状配線の長さの差が大きくなり、つまり、ジグザグ形状配線121とジグザグ形状配線122との差、及び、ジグザグ形状配線123とジグザグ形状配線124との差が大きくなり、シャントキャパシタ104〜107の自己共振周波数の低下を低減できる。
【0074】
つまり、ジグザグ形状配線121,124を、コイル101aに接続する場合に、よりグランド109側に配置できる場合であっても、また、ジグザグ形状配線122,123を、グランド109に接続する場合に、よりコイル101a側に配置できる場合であっても、ジグザグ形状配線の長さの差を考慮して、
図2に示すように配置する。
【0075】
図7(a)は、第1の実施形態のシャントキャパシタ104において、上層の配線層に設けられたジグザグ形状配線123と、下層の配線層に設けられたジグザグ形状配線121,122との関係の他の一例を示す図である。
図7(b)は、第1の実施形態のシャントキャパシタ104において、上層の配線層に設けられたジグザグ形状配線124と、下層の配線層に設けられたジグザグ形状配線121,122との重なりの別の一例を示す図である。
【0076】
図7(a)では、配線層の積層方向において、ジグザグ形状配線122とジグザグ形状配線123とは、それぞれ90度の角度を成す角部において立体的に交差する。また、ジグザグ形状配線121とジグザグ形状配線123とは、各々の配線の直線部において立体的に交差する。
【0077】
図7(b)では、配線層の積層方向において、ジグザグ形状配線121とジグザグ形状配線124とは、それぞれ90度の角度を成す角部において立体的に交差する。また、ジグザグ形状配線122とジグザグ形状配線124とは、各々の配線の直線部において立体的に交差する。従って、直交ハイブリッドカプラ100は、高密度の容量形成が可能であり、直交ハイブリッドカプラ100の性能を向上できる。
【0078】
(第1の実施形態の変形例1)
図8(a)は、第1の実施形態の変形例1のシャントキャパシタ104のレイアウト図である。
図8(a)に示すシャントキャパシタ104は、最下層としての第1層に設けられたジグザグ形状配線131,132、及び、最下層の一つ上位の層としての第2層に設けられたジグザグ形状配線133,134を含む構成である。ジグザグ形状配線131とジグザグ形状配線134とは、ビア135a〜135eを介して接続されている。ビア136a,136bは、ジグザグ形状配線131,134とコイル101aの直線部分とを接続する。
【0079】
また、ビア137a,137bは、ジグザグ形状配線132,133とグランド109とを接続する。ジグザグ形状配線131はジグザグ形状配線132より長く、ジグザグ形状配線133はジグザグ形状配線134より長い。
図8(a)に示すシャントキャパシタ104は、ジグザグ形状配線131とジグザグ形状配線134とが立体的に交差する部分が、ビア135a〜135eにより接続されている。即ち、
図8(a)に示すシャントキャパシタ104では、立体的に交差する各ジグザグ形状配線の角部において生じるフリンジ容量が用いられている。
【0080】
また、
図8(a)に示すシャントキャパシタ104では、ジグザグ形状配線131,133(
図8(b)参照)、ジグザグ形状配線132,134(
図8(c)参照)の各角部(
図8(b)及び(c)の各点線部)において生じるオーバーラップ容量が用いられている。
【0081】
以上により、本実施形態のシャントキャパシタ104は、
図2(a)に示すシャントキャパシタ104と同様にシャントキャパシタからの引き出し配線が不要となり、振幅誤差及び位相誤差を低減でき、
図2(a)に示すシャントキャパシタ104に比べて高い容量を有する。
【0082】
(第1の実施形態の変形例2)
図9は、第1の実施形態の変形例2のシャントキャパシタ104のレイアウト図である。
図9に示すシャントキャパシタ104は、最下層としての第1層に設けられたジグザグ形状配線141,142、及び、最下層の一つ上位の層としての第2層に設けられたジグザグ形状配線143,144を含む構成である。ジグザグ形状配線141,142とジグザグ形状配線143,144とは、ビア145,146(
図9の点線内の各四角部分)を介して接続されている。ジグザグ形状配線141,142とジグザグ形状配線143,144とは、全長にわたって立体的に重なっている。
【0083】
ビア147は、ジグザグ形状配線142、144とコイル101aとを接続する。ビア148は、ジグザグ形状配線141,143とグランド109とを接続する。ジグザグ形状配線141はジグザグ形状配線142より長く、ジグザグ形状配線143はジグザグ形状配線144より長い。
【0084】
図9の点線部分では、複数のビア145,146が、ジグザグ形状配線141,142とジグザグ形状配線143,144とを立体的に重ならせて接続している。
図2(a)に示すシャントキャパシタ104のレイアウトとの違いは、配線層の積層方向において、ジグザグ形状配線141,142と、ジグザグ形状配線143,144とが立体的に重なり、且つ、両形状配線間がビア145,146にて接続されていることである。これにより、
図9に示すシャントキャパシタ104は、隣接するビア間の容量を更に用いることができ、高密度の容量を形成できる。
【0085】
以上により、本実施形態のシャントキャパシタ104は、
図2(a)に示すシャントキャパシタ104と同様にシャントキャパシタからの引き出し配線が不要となり、振幅誤差及び位相誤差を低減でき、
図2(a)に示すシャントキャパシタ104に比べて高い容量を有する。
【0086】
(第1の実施形態の変形例3)
図10は、第1の実施形態の変形例3のシャントキャパシタ104のレイアウト図である。
図10では、シャントキャパシタ104を分かり易く示すために、一部透視図が用いられている。
【0087】
図10に示すシャントキャパシタ104は、最下層としての第1層に設けられたジグザグ形状配線151,152、及び、最下層の一つ上位の層としての第2層に設けられたジグザグ形状配線153,154を含む構成である。ジグザグ形状配線152,153とコイル101aとは、ビア155a,155bを介して接続されている。ジグザグ形状配線151,154とグランド109とは、ビア156a,156bを介して接続されている。
【0088】
ジグザグ形状配線151とジグザグ形状配線153とは、
図10のジグザグ形状配線151が表示されている以外の部分において、立体的に重なっている。つまり、ジグザグ形状配線153は、グランド109に接続しない程度に、ジグザグ形状配線151と立体的に重なっており、ジグザグ形状配線151は、コイル101aに接続しない程度に、ジグザグ形状配線153と立体的に重なっている。
【0089】
また、ジグザグ形状配線152とジグザグ形状配線154とは、
図10のジグザグ形状配線152が表示されている以外の部分において、立体的に重なっている。つまり、ジグザグ形状配線152は、グランド109に接続しない程度に、ジグザグ形状配線154と立体的に重なっており、ジグザグ形状配線154は、コイル101aに接続しない程度に、ジグザグ形状配線152と立体的に重なっている。
【0090】
なお、ジグザグ形状配線151はジグザグ形状配線152より長く、ジグザグ形状配線153はジグザグ形状配線154より長い。
【0091】
これにより、
図10に示すシャントキャパシタ104は、第1層と第2層との間に設けられた容量を用いることができる。
図2(a)に示すシャントキャパシタ104のレイアウトとの違いは、配線層の積層方向において、ジグザグ形状配線151,152とジグザグ形状配線153,154とが立体的に重なっていることである。これにより、
図10に示すシャントキャパシタ104は、上下に重複するジグザグ形状配線151,152とジグザグ形状配線153,154とによって大きな容量を得ることができ、容量を得るための面積的も低減できる。
【0092】
また、
図10に示すシャントキャパシタ104は、
図9に示すシャントキャパシタ104と異なり、第1層と第2層の各ジグザグ形状配線を接続するためのビアを不要とできる。
【0093】
以上により、本実施形態のシャントキャパシタ104は、簡単な構成によって、
図2(a)に示すシャントキャパシタ104と同様にシャントキャパシタからの引き出し配線が不要となり、振幅誤差及び位相誤差を低減でき、
図2(a)に示すシャントキャパシタ104に比べて高い容量を有する。
【0094】
(第1の実施形態の変形例4)
図11(a)は、第1の実施形態のシャントキャパシタ104の変形例4のレイアウト図である。
図11(b)は、最下層としての第1層に設けられたフローティング配線及びビアの位置関係を示す図である。
図11(c)は、最下層の一つ上位の層としての第2層に設けられたフローティング配線及びビアの位置関係を示す図である。
【0095】
図11(a)に示すシャントキャパシタ104は、最下層としての第1層に設けられたジグザグ形状配線121,122、最下層の一つ上位の層としての第2層に設けられたジグザグ形状配線123,124、第1層に設けられたフローティング配線167a,167c,167e,167g、及び、第2層に設けられたフローティング配線167b,167d,167fを含む構成である。
【0096】
図11(b)に示すフローティング配線167a、167c、167e,167gは、
ジグザグ形状配線121、122と同じ層にあり、
図11(c)に示すフローティング配線167b、167d、167fは、ジグザグ形状配線123、124と同じ層にある。
【0097】
なお、多層基板は、4層で構成されているが、フローティング配線とジグザグ形状配線とが配置されているのは2層である。
【0098】
図11(a)に示すシャントキャパシタ104の具体的な構成を、
図11(b)及び(c)を参照して説明する。
【0099】
図11(b)に示すフローティング配線167a,167c,167eは、配置領域AR内において、第1層のジグザグ形状配線121の外周であって、配線層の積層方向において第2層のジグザグ形状配線123の90度の角度の折れ曲がり部分に対応する位置に設けられる。
図11(b)に示すフローティング配線167gは、配置領域AR内において、第1層のジグザグ形状配線122の外周であって、配線層の積層方向において第2層のジグザグ形状配線124の90度の角度の折れ曲がり部分に対応する位置に設けられる。
【0100】
同様に、
図11(c)に示すフローティング配線167b,167d,167fは、配置領域AR内において、第2層のジグザグ形状配線123の外周であって、配線層の積層方向において第1層のジグザグ形状配線121の90度の角度の折れ曲がり部分に対応する位置に設けられる。
【0101】
ビア169a,169c,169eは、フローティング配線167a,167c,167eと、配線層の積層方向においてフローティング配線167a,167c,167eの各位置に対応する第2層に設けられたジグザグ形状配線123の折れ曲がり部分とを接続する。ビア169gは、フローティング配線167gと、配線層の積層方向においてフローティング配線167gの位置に対応する第2層に設けられたジグザグ形状配線124の折れ曲がり部分とを接続する。
【0102】
同様に、ビア169b,169d,169fは、フローティング配線167b,167d,167fと、配線層の積層方向においてフローティング配線167b,167d,167fの各位置に対応する第1層に設けられたジグザグ形状配線123の折れ曲がり部分とを接続する。
【0103】
図11(a)に示すシャントキャパシタ104は、
図2に示すシャントキャパシタ104のレイアウトの構成に、フローティング配線と、各配線層に設けられたフローティング配線と配線層とを接続するビアとを更に含む構成である。
図11(a)に示すシャントキャパシタ104は、フローティング配線及びビアを用いることにより、
図2(a)に示すシャントキャパシタ104に比べて、単位面積当たりの容量を更に増加できる。
【0104】
(第2の実施形態)
図12は、第2の直交ハイブリッドカプラ200のレイアウト例を示す図である。直交ハイブリッドカプラ200は、キャパシティブカップリング(capacitive coupling)型のカプラである。
【0105】
図12に示す直交ハイブリッドカプラ200は、誘導デバイスとしてのインダクタ201,202、カップリングキャパシタ203,204、シャントキャパシタ205,206,207,208、終端抵抗209及びグランド210,211を含む構成である。伝送線路212,213,214と、グランド210,211とは、マイクロストリップ伝送線路として機能する。
【0106】
図12に示すシャントキャパシタ205〜208に、第1の実施形態及び各変形例にて説明したシャントキャパシタ104〜107、具体的には、長さの異なるジグザグ形状配線を備えたレイアウト(
図2、
図7〜
図11のうちいずれか参照)を用いることにより、寄生インダクタ及び寄生抵抗を低減でき、振幅誤差及び位相誤差を低減できる。
【0107】
(第3の実施形態)
図13は、上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラを用いたドハティ増幅器700のブロック図である。ドハティ増幅器700は、上述した各実施形態のうちいずれかの直交ハイブリッドカプラ701、メイン増幅器702、1/4波長伝送線路703、及びピーク増幅器704を含む構成である。
【0108】
ドハティ増幅器700に入力される入力RF信号は、直交ハイブリッドカプラ701において、2つの出力信号に分岐される。一方の出力信号はメイン増幅器702に入力され、他方の出力信号はピーク増幅器704に入力される。メイン増幅器702に入力される信号の位相は、入力RF信号に対して90度進んでいる。ピーク増幅器704に入力される信号の位相は、入力RF信号と同じ位相である。
【0109】
メイン増幅器702において増幅された信号は、位相が1/4波長伝送線路703において90度遅延されて出力され、ピーク増幅器704において増幅された信号と合成されて、最終的な出力信号となる。
【0110】
ドハティ増幅器700では、直交ハイブリッドカプラにおいて2つの出力信号間に位相誤差が生じると、最終的な出力信号において合成時の損失が生じる。上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラ701を用いることにより、ドハティ増幅器700は、出力損失を低減でき、増幅性能を向上できる。
【0111】
(第4の実施形態)
図14は、上述した各実施形態のうちいずれかの直交ハイブリッドカプラ607,608を用いた無線通信装置600のブロック図である。
図14に示す無線通信装置600は、送信用のアンテナ601が接続された送信RF増幅器603、直交変調器605、上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラ607,608、スイッチ609、発振器610、PLL(Phase Locked Loop)611、アナログベースバンド回路612,613、デジタルベースバンド回路614、直交復調器606、及び受信用のアンテナ602が接続された受信RF増幅器604を含む構成である。スイッチ609、発振器610及びPLL(Phase Locked Loop)611はローカル信号を生成するローカル信号発生部を構成する。
【0112】
図14に示す無線通信装置600の動作について説明する。発振器610及びPLL611により発生したローカル信号は、スイッチ609を介して、送信回路側若しくは受信回路側に出力される。無線通信装置600の送信回路は、送信用のアンテナ601が接続された送信RF増幅器603、直交変調器605、直交ハイブリッドカプラ607及びアナログベースバンド回路612を含む構成である。
【0113】
送信回路側に出力される場合、ローカル信号は直交ハイブリッドカプラ607によって同振幅であって90度位相の異なる2つの信号に分岐され、直交変調器605に入力される。即ち、直交ハイブリッドカプラ607は、ローカル信号を基に、同振幅であって90度の位相差を有する2つの出力信号を生成して直交変調器605に出力する。直交変調器605は、直交ハイブリッドカプラ607からの2つの出力信号を基に、送信信号を直交変調して送信RF部603に出力する。
【0114】
受信回路側に出力される場合、ローカル信号は直交ハイブリッドカプラ608によって同振幅であって90度位相の異なる2つの信号に分岐され、直交復調器606に入力される。無線通信装置600の受信回路は、受信用のアンテナ602が接続された受信RF増幅器604、直交復調器606、直交ハイブリッドカプラ608及びアナログベースバンド回路613を含む構成である。直交ハイブリッドカプラ608は、ローカル信号を基に、同振幅であって90度の位相差を有する2つの出力信号を生成して直交復調器606に出力する。直交復調器606は、直交ハイブリッドカプラ608からの2つの出力信号を基に、受信信号を直交復調してアナログベースバンド回路613に出力する。
【0115】
デジタルベースバンド回路614にて生成された送信ベースバンド信号はアナログベースバンド回路612によってデジタル−アナログ変換、増幅及びフィルタリングされる。アナログベースバンド回路612からの出力信号は、直交変調器605において送信用のRF信号に変換され、RF増幅器603において増幅された後、アンテナ601から放射される。
【0116】
アンテナ602にて受信された受信RF信号は、RF増幅器604において増幅された後、直交復調器606に入力され、直交復調器606においてベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号はアナログベースバンド回路613にてアナログ−デジタル変換、増幅及びフィルタリングされ、デジタルベースバンド回路614においてデジタル復調される。
【0117】
図14に示す無線通信装置600に上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラを用いることにより、直交変調器605の変調精度及び直交復調器606の復調精度を改善できる。これにより、無線通信装置600は、送信信号の信号品質を向上でき、受信感度を向上できる。
【0118】
(第4の実施形態の変形例)
図15は、上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラを用いた無線通信装置800の変形例のブロック図である。
図14に示す無線通信装置600との違いは、直交ハイブリッドカプラ607の代わりに、直交ハイブリッドカプラ807が送信RF増幅器603と直交変調器805の間に挿入され、直交ハイブリッドカプラ608の代わりに、直交ハイブリッドカプラ808が受信RF増幅器604と直交復調器806の間に挿入されている点である。
【0119】
図15に示す無線通信装置800の説明では、
図14に示す無線通信装置600と異なる内容について説明し、同一の内容については説明を省略する。
【0120】
図15に示す無線通信装置800は、送信用のアンテナ601が接続された送信RF増幅器603、直交変調器805、上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラ807,808、スイッチ609、発振器610、PLL(Phase Locked Loop)611、アナログベースバンド回路612,613、デジタルベースバンド回路614、直交復調器806、及び受信用のアンテナ602が接続された受信RF増幅器604を含む構成である。スイッチ609、発振器610及びPLL(Phase Locked Loop)611はローカル信号を生成するローカル信号発生部を構成する。
【0121】
図15に示す無線通信装置800は、直交変調器805、直交復調器806がサブハーモニックミキサ、即ち、ローカル信号入力の周波数がRF周波数の整数分の1であるミキサである場合に有効である。
【0122】
無線通信装置800の送信回路は、送信用のアンテナ601が接続された送信RF増幅器603、直交ハイブリッドカプラ807、直交変調器805及びアナログベースバンド回路612を含む構成である。
【0123】
直交変調器805は、ローカル信号発生部によって生成されたローカル信号を基に、90度の位相差を有する2つの入力信号(送信信号)を直交変調して直交ハイブリッドカプラ807に出力する。
【0124】
直交ハイブリッドカプラ807は、直交変調器805から出力された2つの90度の位相差を有する入力信号を入力し、2つの入力信号のうち一方の位相を90度進める又は遅延させて2つの入力信号の位相差を0度に調整する。直交ハイブリッドカプラ807は、位相の調整後に、2つの入力信号を合成することによって、1つの出力信号を送信RF増幅器603に出力する。送信RF増幅器603は、直交ハイブリッドカプラ807からの出力信号を増幅する。
【0125】
また、無線通信装置800の受信回路は、受信用のアンテナ602が接続された受信RF増幅器604、直交ハイブリッドカプラ808、直交復調器806及びアナログベースバンド回路613を含む構成である。直交ハイブリッドカプラ808は、入力された受信信号を、同振幅であって90度の位相差を有する2つの受信信号を生成して直交復調器806に出力する。直交復調器806は、直交ハイブリッドカプラ808からの2つの受信出力信号を基に、受信信号を直交復調してアナログベースバンド回路613に出力する。
【0126】
図15に示す無線通信装置800に上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラを用いることにより、直交変調器805からの2つの出力信号の合成時における出力損失を低減でき、受信RF増幅器604からの出力信号の信号分岐精度を向上できる。
【0127】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種実施形態の変更例又は修正例、更に各種実施の形態の組み合わせ例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術敵範囲に属するものと了解される。
【0128】
なお、上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラの利用範囲は広く、例えば、複素ミキサとしても利用が可能である。また、例えば、上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラは、IQ位相平面において自由に位相差を作成する回路にも利用できる。
【0129】
また、上述した各実施形態の直交ハイブリッドカプラに用いられる誘導デバイスとしては種々のものがあるが、例えば、オンチップのスパイラルインダクタを用いればICに内蔵できる。また、シャントキャパシタ等もICの製造方法によって製造が可能であり、量産化にも適する。