(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インピーダンス制御部は、前記第1のアンテナ群のインピーダンスを固定した状態で、前記第2のアンテナ群のインピーダンスを設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信端末。
前記送受信品質情報取得部は、広帯域チャネル品質情報(Wideband CQI)と周波数利用効率とを対応付ける変換テーブルにより、前記送受信品質情報として基地局の送信コードワード毎に規定される広帯域チャネル品質情報(Wideband CQI)に対応する周波数利用効率を取得し、
前記インピーダンス制御部は、前記取得された周波数利用効率に基づいて前記第2のアンテナ群のインピーダンスを制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線通信端末。
前記インピーダンス制御部は、前記第1のアンテナ群に属するアンテナの送信電力値として、上りリンク制御チャネルとデータチャネルの少なくとも一方の送信電力値に基づいて前記第1のアンテナ群のインピーダンスを制御することを特徴とする請求項5に記載の無線通信端末。
前記送受信品質情報取得部は、前記送受信品質情報として前記第1のアンテナ群に属するアンテナの下りリンクパスロス値と基地局からの送信電力制御コマンドにより指定される閉ループ制御電力増加量の定数倍との加算結果を取得し、
前記インピーダンス制御部は、前記取得された加算結果に基づいて前記アンテナ群のインピーダンスを制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線通信端末。
前記送受信品質情報取得部は、前記定数倍の定数として上りリンク制御チャネルとデータチャネルとで異なる値を用いて前記加算結果を取得することを特徴とする請求項9記載の無線通信端末。
前記インピーダンス制御部は、前記第1のアンテナ群のインピーダンスを複数のグループに分け、前記取得された送受信品質情報のうち第1の送信品質情報に基づいて前記複数のグループから候補のグループを選択し、前記選択された候補のグループを固定して前記取得された送受信品質情報のうち第2の送信品質情報に基づいてグループ内でインピーダンスを決定することで、前記インピーダンスの候補の抽出および決定を行なうことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線通信端末。
前記インピーダンス制御部は、前記第2の送信品質情報として、上りリンク制御チャネルおよびデータチャネルの少なくとも一方の送信電力値に基づいて前記インピーダンスを決定することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載の無線通信端末。
前記インピーダンス制御部は、前記第2の送信品質情報として、前記第1のアンテナ群に属するアンテナの下りリンクパスロス値と基地局からの送信電力制御コマンドにより指定される閉ループ制御電力増加量の定数倍との加算結果に基づいて前記インピーダンスを決定することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載の無線通信端末。
前記インピーダンス制御部は、前記第1のアンテナ群に属するアンテナの下りリンクパスロス値、RSRP値およびRSSI値のいずれかに基づいて前記インピーダンスの候補を抽出することを特徴とする請求項11から請求項15のいずれかに記載の無線通信端末。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるようなインピーダンス制御方法では、方向性結合器の挿入損失が生じるため電力効率が劣化する。また、複数のアンテナを用いるMIMO伝送に対応する端末で複数のアンテナに対し方向性結合器を挿入する場合は回路規模が大きくなる。さらに、全てのアンテナの反射損失を最小化するようにインピーダンスを制御しても、アンテナの素子間結合・アンテナ間相関の観点から、MIMO伝送の品質が向上するとは限らない。
【0007】
特許文献2に記載されるようなインピーダンス制御方法ではMIMO伝送を用いる通信システムの受信特性を最適化できるが周波数分割複信方式(FDD: Frequency Division Duplex)のように送受信で別の周波数帯域を用いる通信システムでは、アンテナの送信および受信の周波数特性が異なる場合に送信性能が劣化する可能性がある。
【0008】
この場合、基地局側での所要受信電力を満たすための送信電力が増大し、結果として端末の消費電力が増加してしまう。特許文献1記載の方法と特許文献2記載の方法とを組み合わせることで送受信双方の性能をある程度補償できるとも考えられるが、明確な制御指標が示されていない上に、方向性結合器の挿入により電力損失が生じたり、回路規模が増大したりする。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、送受信で状況が異なる場合でもアンテナのインピーダンスを適応的に設定し、余計な電力損失が生じない無線通信端末、インピーダンス制御方法およびインピーダンス制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の無線通信端末は、複数のアンテナを有し、周波数分割複信方式で無線通信可能な無線通信端末であって、自機の送受信品質情報を取得する送受信品質情報取得部と、前記取得された送受信品質情報のうちの送信品質情報に基づいて、第1のアンテナ群のインピーダンスを制御するとともに、前記取得された送受信品質情報のうちの受信品質情報に基づいて、前記第1のアンテナ群に属さないアンテナで構成される第2のアンテナ群のインピーダンスを制御するインピーダンス制御部と、を備えることを特徴としている。
【0011】
このように本発明の無線通信端末は、複数のアンテナのインピーダンスをアンテナ群毎に別々に送信・受信いずれか一方の品質情報を指標にして制御することで、送受信で状況が異なる場合でも、送受信帯域で同時にインピーダンス不整合影響を緩和でき、送信電力を低減しかつ受信のスループットを向上させることができる。また、方向性結合器を挿入する必要がなく余計な電力損失も生じない。また、特にMIMOに適した無線通信端末を提供できる。
【0012】
(2)また、本発明の無線通信端末は、前記インピーダンス制御部が、前記第1のアンテナ群のインピーダンスを固定した状態で、前記第2のアンテナ群のインピーダンスを設定することを特徴としている。このように、第1群のアンテナのインピーダンスを設定した後、第2群のアンテナのインピーダンスを設定するため、送信電力の低減を優先しつつ、スループットも高くすることができる。
【0013】
(3)また、本発明の無線通信端末は、前記インピーダンス制御部が、前記第1および第2のアンテナ群のインピーダンスを固定し、前記送受信品質情報取得部は、前記インピーダンスの固定後、自機の送受信品質情報の変化量を時間間隔をおきながら取得し、前記インピーダンス制御部は、前記時間間隔をおきながら取得された送受信品質情報のうち、前記送信品質情報の変化量が第1の閾値を超えた場合は前記第1のアンテナ群のインピーダンスを再度制御し、前記取得された送受信品質情報のうち、前記受信品質情報の変化量が第2の閾値を超えた場合は前記第2のアンテナ群のインピーダンスを再度制御することを特徴としている。
【0014】
このように、2段階の閾値比較によりサーチトリガをアンテナ別に設定することで、状況に応じた動的なインピーダンス制御が可能になり、余計なサーチ処理を低減できる。可変容量回路切り替えにかかる消費電力を低減できかつ、送受信の安定した品質を確保できる。
【0015】
(4)また、本発明の無線通信端末は、前記送受信品質情報取得部が、広帯域チャネル品質情報(Wideband CQI)と周波数利用効率とを対応付ける変換テーブルにより、前記送受信品質情報として基地局の送信コードワード毎に規定される広帯域チャネル品質情報(WidebandCQI)に対応する周波数利用効率を取得し、前記インピーダンス制御部は、前記取得された周波数利用効率に基づいて前記第2のアンテナ群のインピーダンスを制御することを特徴としている。このように、広帯域チャネル品質情報に対する周波数利用効率を用いることで基地局による動的な周波数割り当ての影響を排除してインピーダンス制御をすることができる。
【0016】
(5)また、本発明の無線通信端末は、前記送受信品質情報取得部が、前記送受信品質情報として前記第1のアンテナ群に属するアンテナの送信電力値を取得し、前記インピーダンス制御部は、前記第1のアンテナ群に属するアンテナの送信電力値に基づいて前記第1のアンテナ群のインピーダンスを制御することを特徴としている。これにより、適正なインピーダンスに制御することで送信電力値を低減できる。
【0017】
(6)また、本発明の無線通信端末は、前記インピーダンス制御部が、前記第1のアンテナ群に属するアンテナの送信電力値として、上りリンク制御チャネルとデータチャネルの少なくとも一方の送信電力値に基づいて前記第1のアンテナ群のインピーダンスを制御することを特徴としている。これにより、上りリンク制御チャネル(PUCCH)とデータチャネル(PUSCH)のいずれかの送信電力値しか取得できない場合や双方のチャネルの送信電力値が基地局から別々の制御手法で制御されている場合にも対応できる。
【0018】
(7)また、本発明の無線通信端末は、前記送受信品質情報取得部が、前記送受信品質情報として前記第1または第2のアンテナ群の一方に属するアンテナの下りリンクパスロス値を取得し、前記インピーダンス制御部は、前記取得された下りリンクパスロス値に基づいて前記一方のアンテナ群のインピーダンスを制御することを特徴としている。これにより、下りリンクパスロス値の小さいインピーダンスを選択することができる。
【0019】
(8)また、本発明の無線通信端末は、前記送受信品質情報取得部が、前記送受信品質情報として前記第1または第2のアンテナ群の一方に属するアンテナのRSRP値またはRSSI値を取得し、前記インピーダンス制御部は、前記取得されたRSRP値またはRSSI値に基づいて前記一方のアンテナ群のインピーダンスを制御することを特徴としている。これにより、RSRP値またはRSSI値の大きいインピーダンスを選択することができる。
【0020】
(9)また、本発明の無線通信端末は、前記送受信品質情報取得部が、前記送受信品質情報として前記第1のアンテナ群に属するアンテナの下りリンクパスロス値と基地局からの送信電力制御コマンドにより指定される閉ループ制御電力増加量の定数倍との加算結果を取得し、前記インピーダンス制御部は、前記取得された加算結果に基づいて前記アンテナ群のインピーダンスを制御することを特徴としている。これにより、送信電力値を低減させるインピーダンスを選ぶことができる。
【0021】
(10)また、本発明の無線通信端末は、前記送受信品質情報取得部が、前記定数倍の定数として上りリンク制御チャネルとデータチャネルとで異なる値を用いて前記加算結果を取得することを特徴としている。これにより、双方のチャネルの送信電力値が基地局から別々に制御される状況下でも両チャネルの品質情報を用いて高速に適正なインピーダンスを選択できる。
【0022】
(11)また、本発明の無線通信端末は、前記インピーダンス制御部が、前記第1または第2のアンテナ群の一方に属するアンテナの制御可能なインピーダンスの中から前記取得された送受信品質情報のうち第1の送信品質情報に基づいて第1の候補を抽出し、前記抽出された候補の中から前記取得された送受信品質情報のうち第2の送信品質情報に基づいてインピーダンスを決定することを特徴としている。これにより、該当するアンテナ群のインピーダンスを異なる観点により2段階で評価して、該当するアンテナ群のインピーダンスを適正に選択できる。
【0023】
(12)また、本発明の無線通信端末は、前記候補の抽出の際に前記第1の送受信品質情報が基準値から所定の範囲内の候補を抽出することを特徴としている。これにより、送受信品質情報の評価結果が好ましい範囲にある候補に絞ることができ、インピーダンスを適正に選択できる。これにより、送受信品質情報の評価結果が好ましい範囲にある候補に絞ることができ、インピーダンスを適正に選択できる。
【0024】
(13)また、本発明の無線通信端末は、前記インピーダンス制御部が、前記第1のアンテナ群のインピーダンスを複数のグループに分け、前記取得された送受信品質情報のうち第1の送信品質情報に基づいて前記複数のグループから候補のグループを選択し、前記選択された候補のグループを固定して前記取得された送受信品質情報のうち第2の送信品質情報に基づいてグループ内でインピーダンスを決定することで、前記インピーダンスの候補の抽出および決定を行なうことを特徴としている。
【0025】
これにより、インピーダンスをグループ分けし各アンテナのインピーダンスを異なる観点により2段階で評価することができる。たとえば、第1のアンテナ群に接続された可変可能な並列容量回路および直列容量回路を用いて適正な容量を決めることができる。
【0026】
(14)また、本発明の無線通信端末は、前記インピーダンス制御部が、前記第2の送信品質情報として、上りリンク制御チャネルおよびデータチャネルの少なくとも一方の送信電力値に基づいて前記インピーダンスを決定することを特徴としている。これにより、上りリンク制御チャネル(PUCCH)とデータチャネル(PUSCH)のいずれかの送信電力値しか取得できない場合や双方のチャネルの送信電力値が基地局から別々の制御手法で制御されている場合にも対応できる。
【0027】
(15)また、本発明の無線通信端末は、前記インピーダンス制御部が、前記第2の送信品質情報として、前記第1のアンテナ群に属するアンテナの下りリンクパスロス値と基地局からの送信電力制御コマンドにより指定される閉ループ制御電力増加量の定数倍との加算結果に基づいて前記インピーダンスを決定することを特徴としている。これにより、下りリンクパスロス値だけでなく、閉ループ制御電力増加量も低減するインピーダンスを選ぶことができる。
【0028】
(16)また、本発明の無線通信端末は、前記インピーダンス制御部が、前記第1のアンテナ群に属するアンテナの下りリンクパスロス値、RSRP値およびRSSI値のいずれかに基づいて前記インピーダンスの候補を抽出することを特徴としている。これにより、下りリンクパスロス値、RSRP値およびRSSI値のいずれかの評価を組み合わせて段階的に適正なインピーダンスを選択できる。
【0029】
(17)また、本発明のインピーダンス制御方法は、複数のアンテナを有し、周波数分割複信方式で無線通信可能な無線通信端末に用いられるインピーダンス制御方法であって、自機の送受信品質情報および受信品質を取得するステップと、前記取得された送受信品質情報のうちの第1の送受信品質情報に基づいて、第1のアンテナ群のインピーダンスを制御するステップと、前記取得された送受信品質情報のうちの第2の送受信品質情報に基づいて、前記第1のアンテナ群に属さないアンテナで構成される第2のアンテナ群のインピーダンスを制御するステップと、を含むことを特徴としている。
【0030】
これにより、送受信で状況が異なる場合でも送受信帯域で同時にインピーダンス不整合影響を緩和でき、送信電力を低減し、受信のスループットを向上させることができる。また、方向性結合器を挿入する必要がなく余計な電力損失も生じない。また、特にMIMOに適した無線通信端末を提供できる。
【0031】
(18)また、本発明のインピーダンス制御プログラムは、複数のアンテナを有し、周波数分割複信方式で無線通信可能な無線通信端末に実装されるインピーダンス制御プログラムであって、自機の送受信品質情報および受信品質を取得する処理と、前記取得された送受信品質情報のうちの第1の送受信品質情報に基づいて、第1のアンテナ群のインピーダンスを制御する処理と、前記取得された送受信品質情報のうちの第2の送受信品質情報に基づいて、前記第1のアンテナ群に属さないアンテナで構成される第2のアンテナ群のインピーダンスを制御する処理と、コンピュータに実行させることを特徴としている。
【0032】
これにより、送受信で状況が異なる場合でも送受信帯域で同時にインピーダンス不整合影響を緩和でき、送信電力を低減し、受信のスループットを向上させることができる。また、方向性結合器を挿入する必要がなく余計な電力損失も生じない。また、特にMIMOに適した無線通信端末を提供できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、方向性結合器等を追加することなく、アンテナの送受信品質を指標にして複数アンテナのインピーダンスを適応的に制御することができる。余計な電力損失を生じさせることなく送受信帯域で同時にインピーダンス不整合影響を緩和でき、送信電力を削減できる。また、MIMO受信性能に優れた無線通信端末を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
[第1の実施形態]
(無線通信端末の構成)
図1は、無線通信端末100の構成例を示すブロック図である。無線通信端末100は、周波数分割複信方式に対応し、2本のアンテナ110、120を有し、両アンテナ端にインピーダンス可変手段としてそれぞれ可変容量回路111、121が接続されている。このように、無線通信端末100は、少なくとも1本以上のアンテナと送受信RF回路との間にインピーダンス可変手段を有している。
【0037】
また、無線通信端末100では、アンテナ110(第1のアンテナ群)を送受信用アンテナとして、アンテナ120(第2のアンテナ群)を受信用アンテナとして用いる。すなわち、可変容量回路111に接続されたアンテナ110は周波数共用器113を介して送信RF回路114および受信RF回路115に接続され、可変容量回路121に接続されたアンテナ120は受信RF回路125に接続されている。
【0038】
また、各可変容量回路111、121は、回路内に直列および並列に接続される有限個のキャパシタを有している。このキャパシタをインピーダンス制御部123からの指示信号に従って切り替えることによりアンテナインピーダンスを変化させることができる。なお、キャパシタに代えて可変容量ダイオードの印加電圧を制御する等の他の構成で容量を変化させてもよい。各RF回路114、115、125に接続されるベースバンド信号処理回路130は、データの変復調、符号化、復号処理を行なう。
【0039】
送受信品質情報取得部140は、ベースバンド信号処理回路130から受けた情報に基づき端末の送受信品質情報を取得する。たとえば、下りリンク制御チャネル(PDCCH)の復号の際に得られる下りリンク制御情報および端末側で計算し基地局にフィードバックする上りリンク制御情報から、可変容量回路111、121の各状態に対する送受信品質情報を抽出する。
【0040】
送受信品質情報取得部140は、広帯域チャネル品質情報(WidebandCQI)から対応する周波数利用効率を索引する変換テーブルを有する。そして、受信品質情報として基地局の送信コードワード毎に規定される広帯域チャネル品質情報(WidebandCQI)を取得し、これに対応する周波数利用効率の合計値を算出できる。
【0041】
インピーダンス制御部123は、容量値設定部123a、123b、品質変動量取得部123cおよび容量値・品質情報記憶部123dを備えている。容量値設定部123aは、送信品質情報に基づいて可変容量回路111の容量値を設定する(第1の容量サーチ)。すなわち、アンテナ110のインピーダンスを設定する。容量値設定部123bは、受信品質情報に基づいて可変容量回路121の容量値を設定する(第2の容量サーチ)。すなわち、アンテナ120のインピーダンスを設定する。
【0042】
品質変動量取得部123cは、第1、第2の容量サーチによりインピーダンスを固定した後、送受信品質情報の変化量を特定間隔で取得する。所定の時間間隔で周期的に取得することが好ましい。送信品質の変動量が閾値を超えた場合には、容量値設定部123aが、アンテナ110の容量値のサーチを再度行ない、受信品質の変動量が閾値を超えた場合には、容量値設定部123bが、アンテナ120の容量値のサーチを再度行なう。
【0043】
(送受信品質情報と処理の例)
詳細は後述するが、送受信品質情報とそれに伴う処理は以下の通り様々に採用されうる。送受信品質情報取得部140は、送受信品質情報として、アンテナ110に属するアンテナの下りリンクパスロス値を取得することができる。容量値設定部123aは、パスロス値を最小化する可変容量値を探索できる。
【0044】
送受信品質情報取得部140は、送受信品質情報として、アンテナ110に属するアンテナの参照信号受信電力(RSRP)値または受信信号強度(RSSI)値を取得することもできる。容量値設定部123aは、取得された値を最大化する可変容量値を探索する。
【0045】
この場合には、送受信品質情報取得部140は、送受信品質情報として、アンテナ110に属するアンテナの下りリンクパスロス値と基地局からの送信電力制御コマンドにより指定される閉ループ制御電力増加量とを取得することもできる。
【0046】
容量値設定部123aは、アンテナ110に属するアンテナの下りリンクパスロス値と基地局からの送信電力制御コマンドにより指定される閉ループ制御電力増加量との定数倍との加算結果を用い、加算結果を最小化する可変容量値を探索する。その際には、定数として、上りリンク制御チャネル(PUCCH)とデータチャネル(PUSCH)とで異なる値を用いることが好ましい。
【0047】
容量値設定部123aは、第1の品質情報として、下りリンクパスロス値、参照信号受信電力(RSRP)値または受信信号強度(RSSI)値を用いて容量値を設定することができる。また、第2の送信品質情報として上りリンク制御チャネル(PUCCH)とデータチャネル(PUSCH)の少なくとも一方の送信電力や、下りリンクパスロス値と基地局からの送信電力制御コマンドにより指定される閉ループ制御電力増加量の定数倍との加算結果を用いることができる。
【0048】
(基本動作例)
図2は、インピーダンス制御の基本動作例を示すフローチャートである。基本動作は、無線通信端末100が基地局との接続を完了した時点で発行する初期のサーチトリガを検出した時点から開始される。
図2に従い、初期トリガ検出以降の動作を説明する。
【0049】
まず、可変容量回路121の容量値を固定し、送信品質情報に基づいて可変容量回路111の容量値をサーチする(ステップS1)。そして、可変容量回路111の容量値として適切な容量値を選択後、可変容量回路111の容量値を固定する(ステップS2)。
【0050】
次に、受信品質情報に基づいて可変容量回路121の容量値をサーチし(ステップS3)、適切な容量値を選択後、可変容量回路121の容量値を固定する(ステップS4)。なお、サーチに用いる送受信品質情報および各可変容量回路の具体的なサーチ方法については後述する。また、上記の例では、送信品質情報に基づくサーチ後に受信品質情報に基づくサーチを行なっており、この方が実装上は好ましいが、受信品質情報に基づくサーチ後に送信品質情報に基づくサーチを行なうことも可能である。
【0051】
次に、可変容量回路111、121の容量値が決定した時点で送受信品質参照用データを取得し(ステップS5)、この値を基準に容量値を固定した状態で送受信品質情報の変動量を品質変動量取得部123cで定期的に計測する(ステップS6)。そして、受信品質情報の変動量が設定値λ
2より小さいか否かを判定し(ステップS7)、変動量が設定値λ
2より小さい場合には、さらに送信品質情報の変動量が設定値λ
1より小さいか否かを判定する(ステップS8)。変動量が設定値λ
1より小さい場合にはステップS1に戻る。すなわち、送受信双方の品質情報の変動量がそれぞれの品質パラメータに関して事前に設定した閾値よりも大きい場合は、初期状態に戻り可変容量回路111、121のサーチを開始する。
【0052】
また、ステップS7で変動量が設定値λ
2以上である場合には、送信品質情報の変動量が設定値λ
1より小さいか否かを判定し(ステップS9)、送信品質情報の変動量が設定値λ
1以上である場合には、ステップS6に戻る。
【0053】
一方、送信品質情報の変動量が設定値λ
1より小さい場合には、第1の容量サーチを行ない、(ステップS10)、アンテナ110の容量値を固定し(ステップS11)、送信品質参照用データを取得して(ステップS12)、ステップS6に戻る。すなわち、送信品質情報の変動量のみが閾値を超える場合は可変容量回路111の容量サーチのみを再度行ない、送信品質情報の参照用データを更新する。
【0054】
一方、ステップS8で送信品質変動量が設定値λ
1以上である場合には、第2の容量サーチを行ない(ステップS13)、アンテナ120の容量値を固定して(ステップS14)、受信品質の参照用データを取得する(ステップS15)。すなわち、受信品質情報のみの変動量が閾値を超える場合には、可変容量回路121のサーチのみを行ない、受信品質参照用データを更新する。
【0055】
このように、2段階の閾値比較によりサーチトリガを可変容量回路個別に設定することで、余計なサーチ処理を低減できる。その結果、可変容量回路の切り替えにかかる消費電力を低減できかつ、安定した送受信品質を確保できる。
【0056】
(インデックスの設定)
図2に示す基本動作例において、無線通信端末100は、可変容量回路111の容量サーチで、基地局による送信電力制御の結果設定される送信電力を用いる。可変容量回路111でアンテナ110の整合が取れた状態では、送信電力値が最小化されることが予想される。
【0057】
そのため、送受信品質情報取得部140では送信電力情報を抽出し、以下の数式(1)に示すように送信電力値を最小にする可変容量回路111の容量値インデックスkaを全容量値候補の中から選択する。なお、kは可変容量回路111の容量値インデックス、P
1(k)は容量回路にkを設定した時のアンテナ110から送信される信号の電力の所定サブフレーム区間での平均値を表す。複数のアンテナを対象とする場合には送信電力値の合計の最小値を求める。
【数1】
【0058】
図3は、第1の容量サーチの処理例を示すフローチャートである。Kは可変容量回路111で選択可能な全候補数を表す。まず、k=0として可変容量回路111の容量値インデックスを初期化し(ステップT1)、可変容量回路111の容量値インデックスをkに設定する(ステップT2)。次に、N
SFサブフレーム数分の平均送信電力P
1(k)を算出し(ステップT3)、k+1がK以上であるか否かを判定する(ステップT4)。判定の結果、k+1がK以上でない場合には、kを1増加させて(ステップT5)、ステップT2に戻る。k+1がK以上である場合には、容量値設定部123aは、送信電力値P
1(k)が最小になるkを抽出して(ステップT6)、処理を終える。
【0059】
上記の例では、送信電力を最小化する容量値インデックスを検出しているが、無線通信端末100の上りリンク送信電力がチャネル種別によって別々の送信電力制御方法で基地局から制御される場合は、両チャネルの区別なく送信電力を最小化する可変容量値を決定しても、決定された容量値により上りリンク帯域の不整合損が最も少ない状態になるとは限らない。例えば、3GPPの標準規格の1つであるLTE(Long Term Evolution)では、物理上りリンク制御チャネル(PUCCH)と物理上りリンク共有チャネル(PUSCH)で異なる送信電力制御方式を採用している。この場合に、上りリンク送信電力に代えて、以下のパラメータを用いる構成であってもよい。
・PUCCHの送信電力
・PUSCHの送信電力
・パスロス値と基地局から閉ループ制御コマンドで指定されるオフセット値の定数倍の和
【0060】
(PUCCH、PUSCHそれぞれで異なる定数値を事前に設定)
可変容量回路121の容量サーチでは、全可変容量値の中から可変容量回路111の容量値を固定した条件下で、所定のサブフレーム区間における平均周波数利用効率が最大化されるように以下の数式(2)を満たす可変容量回路121の容量値インデックスkaを選択する。このように、容量値設定部123bは、周波数利用効率の平均値(合計値)を最大にする可変容量値を探索する。
【数2】
【数3】
【0061】
ただし、kは可変容量回路111の容量値インデックスを表し、Eff(CQI
cw_l(k))はk設定時の第lコードワードのWidebandCQIであるCQI
cw_l(k)に対応する周波数利用効率を表す。λは忘却係数を表す。索引は、たとえば表1に例示する変換テーブルに基づき行なう。表1は、広帯域チャネル品質情報、周波数利用効率変換テーブルの一例を示している。
【表1】
【0062】
図4は、第2の容量サーチの処理例を示すフローチャートである。Kは可変容量回路121で選択可能な全候補数を表す。まず、k=0として可変容量回路121の容量値インデックスを初期化し(ステップP1)、可変容量回路121の容量値インデックスをkに設定する(ステップP2)。次に、N
SFサブフレーム数分の平均周波数利用効率DLFE(k)を算出する(ステップP3)。次に、k+1がK以上であるか否かを判定する(ステップP4)。判定の結果、k+1がK以上でない場合には、kを1増加させて(ステップP5)、ステップP2に戻る。k+1がK以上である場合には、平均周波数利用効率DLFE(k)が最大になるkを抽出して(ステップP6)、処理を終える。
【0063】
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、可変容量回路111の容量サーチにおいて一つの送受信品質情報により1ステップで容量値インデックスを決定しているが、2つの品質情報を用いて2ステップで容量値インデックスを決定してもよい。なお、本実施形態では、可変容量回路111の容量サーチ以外は、第1の実施形態と同様である。
【0064】
この場合に、容量値設定部123aは、第1の容量サーチの処理の中で、第1のアンテナ群に属するアンテナ110の第1の送受信品質情報を用いて可変可能な全容量値候補の中から事前に決められた特定の候補数を抽出する(第1のサーチステップ)。そして、第1のアンテナ群に属するアンテナ110の第2の送受信品質情報を用いて抽出された候補の中から適切な容量値を決定する(第2のサーチステップ)。
【0065】
図5は、第1の容量サーチの処理例を示すフローチャートである。まず、Kは可変容量回路111で選択可能な全候補数を表す。まず、k=0として可変容量回路111の容量値インデックスを初期化し(ステップQ1)、可変容量回路111の容量値インデックスをkに設定する(ステップQ2)。次に、N
SF1サブフレーム数分のパスロス値を取得する(ステップQ3)。次に、k+1がK−1以上であるか否かを判定する(ステップQ4)。判定の結果、k+1がK−1以上でない場合には、kを1増加させて(ステップQ5)、ステップQ2に戻る。k+1がK−1以上である場合には、パスロス値が小さいkをM候補抽出する(ステップQ6)。
【0066】
次に、m=0として(ステップQ7)、可変容量回路111の容量値インデックスをk
mに設定する(ステップQ8)。そして、N
SF2サブフレーム数分の送信電力を取得し(ステップQ9)、mがM−1以上であるか否かを判定する(ステップQ10)。判定の結果、mがM−1以上でない場合には、mを1増加させて(ステップQ11)、ステップQ8に戻る。mがM−1以上である場合には、送信電力が最小になるkmを求め、容量値を固定して(ステップQ12)、処理を終える。
【0067】
本処理は2ステップに分かれる。第1のサーチステップでは、各可変容量値に対しパスロス値を所定のサブフレーム数N
SF1に渡って平均化し、パスロス値が小さいM候補を抽出する。第2のサーチステップでは抽出されたM候補のそれぞれに対して所定のサブフレーム数N
SF2に渡り平均送信電力を計算し、最も送信電力が小さい候補を抽出することで可変容量回路111の容量値を決定する。
【0068】
なお、第1のサーチステップで固定された候補数Mに絞り込むのではなく、パスロスの最小値を検出し、最小値からの差分が事前に設定したオフセット値α以内に収まる候補に絞り込む構成であってもよい。その場合には、容量値設定部123aが、容量サーチにおいて、アンテナ110の第1の送受信品質情報を用いて可変可能な全容量値候補の中から第1の送受信品質情報を最小または最大にする候補および最小値または最大値を基準にした差分量が事前に設定した閾値より小さくなる候補を抽出する(第1のサーチステップ)。そして、第2の送受信品質情報を用いて第1群に属するアンテナの抽出された候補の中から適切な容量値を決定する(第2のサーチステップ)。
【0069】
図6は、第1の容量サーチの処理例を示すフローチャートである。まず、Kは可変容量回路111で選択可能な全候補数を表す。まず、k=0として可変容量回路111の容量値インデックスを初期化し(ステップR1)、可変容量回路111の容量値インデックスをkに設定する(ステップR2)。次に、N
SF1サブフレーム数分のパスロス値を取得する(ステップR3)。次に、k+1がK−1以上であるか否かを判定する(ステップR4)。判定の結果、k+1がK−1以上でない場合には、kを1増加させて(ステップR5)、ステップR2に戻る。k+1がK−1以上である場合には、パスロス値PL(k)がパスロス値PL(k
MIN)+αを満たすkをMa候補抽出する(ステップR6)。
【0070】
次に、m=0として(ステップR7)、可変容量回路111の容量値インデックスをk
mに設定する(ステップR8)。そして、N
SF2サブフレーム数分の送信電力を取得し(ステップR9)、mがMa−1以上であるか否かを判定する(ステップR10)。判定の結果、mがMa−1以上でない場合には、mを1増加させて(ステップR11)、ステップR8に戻る。mがMa−1以上である場合には、送信電力が最小になるkmを求め、容量値を固定して(ステップR12)、処理を終える。
【0071】
なお、パスロス値の代わりに基準信号受信電力(RSRP)もしくは対象帯域の受信電力(RSSI)を用いてもよく、その場合には、RSRPもしくはRSSIが大きくなるM候補もしくは最大値との差分がα以内の候補を抽出する。
【0072】
[第3の実施形態]
上記の実施形態では、個々の容量値を比較しているが、グループごとに容量値を分けて、グループの候補を抽出した後、グループ内で容量値を決めることもできる。本実施形態では、可変容量回路111の容量サーチのアルゴリズム以外は第1の実施形態と同様とする。また、可変容量回路111の容量設定値は、予め複数のグループに分割されているとする。
【0073】
表2は、容量値インデックステーブルの一例として容量設定値をグループ分けした例を示している。この例では、直列容量値が同一で並列容量値が異なる容量回路の設定が同一のグループに属している。また、容量値インデックスをk
g,pで表し、gをグループインデックス、pをグループ内のインデックスとする。
【表2】
【0074】
この場合、容量値設定部123aは、容量サーチにおいて、並列容量回路の容量値を固定しアンテナ110の第1の送受信品質情報を用いて可変可能な直列容量回路の候補の中から直列容量回路候補を選択する(第1のサーチステップ)。また、容量値設定部123aは直列容量回路を選択された候補に固定しアンテナ110の第2の送受信品質情報を用いて可変可能な並列容量回路候補の中から適切な容量値を決定する(第2のサーチステップ)。なお、上記の処理で、直列容量回路と並列容量回路とを入れ替えてもよい。
【0075】
図7は、第1の容量サーチの処理例を示すフローチャートである。まず、Gは可変容量回路111で選択可能な全グループ数を表す。
図7に従い、本処理の動作を説明する。本動作は2ステップに分かれる。
【0076】
第1のサーチステップでは、まず、p=0、g=0に初期化し(ステップU1)、可変容量回路111の容量値インデックスをk
g,pに設定する(ステップU2)。そして、p=0に固定した状態で、gを切り替えながら各可変容量値k
g,0に対しパスロス値を所定のサブフレーム数N
SF1に渡って平均化し、パスロス値が最小になる候補k
g,0を抽出する(ステップU3)。次に、g+1がG以上であるか否かを判定する(ステップU4)。判定の結果、g+1がG以上でない場合には、gを1増加させて(ステップU5)、ステップU2に戻る。g+1がG以上である場合には、パスロス値PL(k
g,p)が最小になるg=gaを抽出し、p=1に設定する(ステップU6)。そして、第2のステップへ進む。
【0077】
第2のサーチステップでは、可変容量回路111の容量値をインデックスk
ga,pに設定する(ステップU7)。そして、gをgaに固定し、pを切り替えながら各可変容量値k
ga,pに対し所定のサブフレーム数N
SF2に渡り平均送信電力を計算する(ステップU8)。次に、p+1がmg以上か否かを判定し(ステップU9)、p+1がmg以上でない場合にはpを1増加させ(ステップU10)、ステップU7に戻る。一方、p+1がmg以上である場合には、最も送信電力が小さい候補p=paを抽出することで可変容量回路111の容量値k
ga,paを決定して(ステップU11)、処理を終了する。
【0078】
また、第1のサーチステップにおいてパスロス値の代わりに基準信号受信電力(RSRP)もしくは対象帯域の受信電力(RSSI)を用いてもよく、その場合は、RSRPもしくはRSSIが最大になるgを検出する。
【0079】
なお、以上の実施形態における各処理はプログラムにより実行される。また、以上の実施形態ではアンテナ数は2本であるが、3本以上であってもよい。また、アンテナ110、120で代表させているが、それぞれアンテナの集合(アンテナ群)が対象となってもよい。また、上記の実施形態では、インピーダンス制御を容量値制御で代表させている。