(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1−1.表示装置の概略構成
1−2.レンチキュラレンズの焦点距離について
1−3.焦点距離を可変にする構成
1−4.液晶レンズの構成例
1−5.変形例
1−6.実施形態のまとめ
2.第2の実施形態
3.電子機器に係る実施形態
4.補足
【0016】
(1.第1の実施形態)
(1−1.表示装置の概略構成)
まず、
図1および
図2を参照して、本開示の第1の実施形態に係る表示装置の概略的な構成について説明する。
図1は、本開示の第1の実施形態に係る表示装置の構成を概略的に示す図である。
図2は、本開示の第1の実施形態に係る表示装置のLCDおよび液晶レンズの構成を示す図である。
【0017】
図1を参照すると、表示装置100は、LCD(Liquid Crystal Display)110と、液晶レンズ部120と、制御回路130と、画像取得部140とを含む。表示装置100は、LCD110に表示される画像の光を液晶レンズ部120によって空間的に分離することによって、視差を有する視点画像を観察者の左右の眼に呈示する立体表示装置である。なお、表示装置100の構成は、例えば、位置が異なる複数の観察者にそれぞれ異なる視点画像を呈示する指向性表示装置にも容易に応用することが可能である。つまり、以下で説明する立体表示装置に係る実施形態と同様にして、指向性表示装置に係る実施形態も実現することが可能である。
【0018】
図2をあわせて参照すると、LCD110は、偏光板111,115と、端子基板112と、液晶層113と、カラーフィルタ基板114とを含む。LCD110は、表示面に配置される画素によって画像を表示する。端子基板112上には、TFT(Thin Film Transistor)と透明な画素電極とが配置され、カラーフィルタ基板114側に形成された透明な共通電極との間で液晶層113に電圧を印加する。これによって、カラーフィルタ基板114に形成されたカラーフィルタの各色に対応する領域ごとにバックライト(図示せず)からの光の透過が制御され、各画素の色が表現される。なお、LCD110と液晶レンズ部120とは、接着剤(図示せず)を用いて貼り合わされる。
【0019】
液晶レンズ部120は、端子基板121と、液晶層122と、対向基板123とを含む。液晶レンズ部120は、画素に対応する光を空間的に分離させるレンズ部の一例である。端子基板121上に配置された透明電極は、対向基板123側に配置された透明電極との間で液晶層122に電圧を印加して、液晶層122の光の屈折率を領域ごとに変化させる。これによって、液晶層122には、シリンドリカルレンズが配列されたレンチキュラレンズと同様のレンズ効果が等価的に発生する。
図2では、等価的に実現されるシリンドリカルレンズ122Lが図示されている。各シリンドリカルレンズ122Lよって、LCD110の各画素に対応する光が空間的に分離され、表示される画像が立体画像の表示のための2つの視点画像に分割される。
【0020】
制御回路130は、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)、あるいはDSP(Digital Signal Processor)などによってソフトウェア的に、またはハードウェア的に実現され、表示装置100の各部を制御する。制御回路130は、図示しないストレージ装置、またはリムーバブル記録媒体に格納されたプログラムに従って動作してもよい。本実施形態において、制御回路130は、表示制御部131およびレンズ制御部132を含む機能を実現する。
【0021】
表示制御部131は、LCD110の表示を制御する。表示制御部131は、例えば、ストレージ装置もしくはリムーバブル記録媒体に格納された画像データ、放送波によって受信された画像データ、またはネットワークを介したストリーミングによって配信された画像データなどに基づいて、LCD110に画像を表示させる。本実施形態において、表示制御部131は、液晶レンズ部120による各画素の光の空間的な分離に対応して各視点画像が交互に配列された画像をLCD110に表示させる。
【0022】
レンズ制御部132は、液晶レンズ部120を制御する。上記のように、液晶レンズ部120は、液晶層122に電圧を印加して光の屈折率を領域ごとに変化させる。レンズ制御部132は、例えば、この印加電圧を制御して、液晶レンズ部120によって等価的に実現されるレンチキュラレンズの焦点距離を調整する。なお、レンズ制御部132によるレンチキュラレンズの焦点距離の調整の例については後述する。
【0023】
画像取得部140は、表示装置100の観察位置の情報を取得する観察位置情報取得部の一例である。本実施形態において、画像取得部140は、表示装置100の観察者の画像を取得する撮像装置に接続されるインターフェースである。制御回路130は、画像取得部140によって取得された画像について画像処理を実行し、観察者の位置(例えば表示装置100の周辺の空間に設定された座標などによって表される)を特定する機能をさらに有してもよい。
【0024】
また、他の実施形態において、観察位置情報取得部は、必ずしも画像取得部でなくてもよい。例えば、観察位置情報取得部は、赤外線などを用いて観察者の位置を検出するセンサであってもよい。また、例えば表示装置100がモバイル機器に搭載されるような場合、モバイル機器の筐体の傾きを検知する3次元加速度センサなどが観察位置情報取得部として用いられてもよい(例えば、筐体が傾いていれば、観察者が表示装置100を斜めに観察する位置にいると判定する)。
【0025】
あるいは、観察位置情報取得部は、観察者などの操作入力に基づいて、観察者の位置を認識してもよい。この場合、例えば、表示装置100を有する機器の操作コマンドとして、「左側から見る」、「正面から見る」、「右側から見る」といったような観察方向の選択が提供されてもよい。
【0026】
本実施形態において、レンズ制御部132は、画像取得部140によって取得される画像の観察位置の情報に基づいて液晶レンズ部120を制御し、液晶レンズ部120において等価的に実現されるレンチキュラレンズの焦点距離を変化させる。例えば、レンズ制御部132は、ROMやストレージ装置などに格納された、観察者の座標情報とレンチキュラレンズの焦点距離とを関連付けるテーブルを参照して、焦点距離を決定してもよい。このとき、レンズ制御部132は、レンチキュラレンズに含まれる各シリンドリカルレンズの焦点距離を一様に変化させてもよいし、後述するようにそれぞれのシリンドリカルレンズで異なる焦点距離を設定してもよい。
【0027】
(1−2.レンチキュラレンズの焦点距離について)
次に、引き続き
図2と、
図3および
図4とを参照して、レンチキュラレンズの焦点距離について説明する。
図3は、表示装置が正面から観察される場合のレンチキュラレンズの焦点距離を示す図である。
図4は、表示装置が斜めから観察される場合のレンチキュラレンズの焦点距離を示す図である。
【0028】
図2を参照すると、表示装置100を観察する場合の視線の角度がθ1である場合に、対向基板123に入射して屈折した後の視線の角度をθ2とすると、シリンドリカルレンズ122Lを介して観察される画素は、シリンドリカルレンズ122Lの正面にある画素からΔx=d
0・tanθ2だけずれた画素である(d
0は、シリンドリカルレンズ122Lの主点から表示面までの最短距離)。従って、この場合の最適焦点距離dは、d
0・cos
−1(θ2)になる。
【0029】
例えば、ある条件において、d
0=710μmとした場合、角度θ1=60°の場合の最適焦点距離dは870μmになる。このように、表示装置100を正面から観察する場合と、斜めから観察する場合とでは、最適焦点距離dには大きな差が生じる。
【0030】
上記のような現象は、例えばd
0の値のオーダーが異なる場合でも同様である。例えば、d
0=7100μmとした場合、角度θ1=60°の場合の最適焦点距離は8700μmになる。
【0031】
図3および
図4は、上述したような最適焦点距離の変化を、より広い範囲について説明した図である。
【0032】
まず、
図3に示す状態では、観察者が表示装置の正面付近に位置している。図示された例では、3つのシリンドリカルレンズ122L1〜122L3のそれぞれを介して、観察者の左眼eLおよび右眼eRに観察される光が示されている。例えば、シリンドリカルレンズ122L1を介して左眼eLに観察される光について、シリンドリカルレンズ122L1から観察される画素までの距離、すなわち最適焦点距離はd1である。また、シリンドリカルレンズ122L1を介して右眼eRに観察される光について、最適焦点距離はd2である。
【0033】
従って、この場合、例えば、シリンドリカルレンズ122L1の焦点距離を距離d1と距離d2との平均値に設定してもよい。同様にして、シリンドリカルレンズ122L2の焦点距離は、例えば左眼向けの最適焦点距離d3と右眼向けの最適焦点距離d4との平均値に設定されうる。また、シリンドリカルレンズ122L3の焦点距離は、例えば左眼向けの最適焦点距離d5と右眼向けの最適焦点距離d6との平均値に設定されうる。これによって、図示された状態では、左眼eLおよび右眼eRのそれぞれについて、シリンドリカルレンズ122Lの焦点距離が最適焦点距離に近くなり、良好な画質の立体画像が提供されうる。
【0034】
一方、
図4に示す状態では、観察者が表示装置の正面付近から図中の右向きに移動している。これによって、シリンドリカルレンズ122L1〜122L3のそれぞれについて、レンズを介して観察される画素が変化し、従って最適焦点距離も変化する。例えば、シリンドリカルレンズ122L1を介して左眼eLに観察される光の最適焦点距離は、
図3の例のd1よりも長いd1’になる。また、シリンドリカルレンズ122L1を介して右眼に観察される光について、最適焦点距離はd2よりも長いd’2になる。
【0035】
従って、この場合、シリンドリカルレンズ122L1の焦点距離が距離d1と距離d2との平均値に設定されていると、シリンドリカルレンズ122L1の焦点は、観察される画素が位置する表示面上よりも手前に位置する。つまり、シリンドリカルレンズ122L1を介して観察される画素は、デフォーカスした状態で観察されることになる。これは、シリンドリカルレンズ122L2についても同様である。
【0036】
このように、画素がデフォーカスした状態で観察されると、画素ごとに見かけの集光幅が異なることによって、クロストークが発生したり、画像に色がついたりする場合があり、観察される立体画像の画質の劣化につながる可能性がある。
【0037】
そこで、本実施形態に係る表示装置100では、レンズ制御部132が、画像取得部140を用いて取得される観察者の位置の情報に基づいて液晶レンズ部120を制御し、各シリンドリカルレンズ122Lの焦点距離を変化させる。例えば、レンズ制御部132は、画像取得部140からの情報に基づいて、観察者の位置が変化したことが検出された場合に、各シリンドリカルレンズ122Lの焦点距離を変化させてもよい。
【0038】
(1−3.焦点距離を可変にする構成)
次に、
図5および
図6を参照して、本実施形態に係る表示装置において、レンチキュラレンズの焦点距離を可変にする構成について説明する。
図5は、本開示の第1の実施形態における焦点距離変化の概要について説明するための図である。
図6は、本開示の第1の実施形態において液晶レンズの焦点距離を変化させる構成について説明するための図である。
【0039】
図5では、液晶レンズ部120の液晶層122によって等価的に実現されるレンチキュラレンズに含まれるシリンドリカルレンズ122Lを介して、画素113a〜113cをそれぞれ観察する場合が示されている。図では、焦点距離が変化しない場合が(a)として、焦点距離が変化する場合が(b)として、それぞれ示されている。
【0040】
(a)の例では、シリンドリカルレンズ122Lの焦点距離が、画素113cまでの距離で固定されている。この場合、画素113a,113bが観察される場合には、シリンドリカルレンズ112Lの焦点が表示面上に位置しない。つまり、画素113a,113bは、デフォーカスした状態で観察される。この場合、観察される立体画像の画質が劣化する可能性があるのは、上述したとおりである。
【0041】
そこで、本実施形態に係る表示装置100では、(b)に示すように、画素113a〜113cのそれぞれが観察される場合のそれぞれで、シリンドリカルレンズ122Lと観察される画素との距離に近づくように、シリンドリカルレンズ122Lの焦点距離を変化させる。これによって、それぞれの画素が観察される場合に、シリンドリカルレンズ122Lの焦点を表示面上に位置させる、つまり、シリンドリカルレンズの焦点距離を最適焦点距離に一致させることが可能である。従って、表示装置100では、観察位置が変化しても、観察される立体画像の画質を良好に維持することができる。
【0042】
図6は、上記のような焦点距離の変化を可能にする液晶レンズの構成を示す。上述の通り、液晶レンズ部120は、液晶層122に電圧を印加することによって光の屈折率を領域ごとに変化させることによって、等価的にレンズ効果を発生させる。そこで、本実施形態では、画素113cが観察される(a)場合と、画素113aが観察される(b)場合とで、レンズ制御部132が印加電圧を変化させる。
【0043】
より具体的には、(a)の場合、レンズ制御部132は、印加電圧が全体としてより大きくなるように制御することによって、シリンドリカルレンズ122Lの焦点距離を短くする。一方、(b)の場合、レンズ制御部132は、印加電圧が全体としてより小さくなるように制御することによって、シリンドリカルレンズ122Lの焦点距離を長くする。
【0044】
なお、このように焦点距離を変化させるための具体的な印加電圧の設定の例については、続く液晶レンズの構成例でより詳しく説明する。
【0045】
(1−4.液晶レンズの構成例)
次に、
図7〜11を参照して、本実施形態における液晶レンズの構成例およびシミュレーション結果について説明する。
図7は、本開示の第1の実施形態における液晶レンズの電極配置の例を示す図である。
図8は、
図7に示す液晶レンズの奥行き方向の強度プロファイルを示す図である。
図9は、
図7に示す液晶レンズのレンズ幅方向での強度プロファイルを示す図である。
図10および
図11は、
図7に示す液晶レンズの位相差のシミュレーション結果を示すグラフである。
【0046】
図7を参照すると、液晶レンズ部120では、端子基板121上に配設された透明電極e2〜e8と、対向基板123側に配置される共通透明電極e1とによって、1つのシリンドリカルレンズ122Lが等価的に実現される。透明電極e2〜e8と共通透明電極e1との間の電位差は、例えば、液晶層122の屈折率が、シリンドリカルレンズ122Lの中心付近ではより大きく、端部付近ではより小さくなるように設定される。
【0047】
一例として、シリンドリカルレンズ122Lの焦点距離を710μmと850μmとの間で変化させたい場合、例えば以下の表1のように各電極に電圧を印加すればよい。
【0049】
なお、上記の数値は一例であり、実際の数値は、例えば液晶層の材料や厚さによって変化する。また、1つのレンズに対応する電極の数は、上記の例には限られず、任意に設定されうる。
【0050】
図8は、上記のような電圧の印加によって等価的に実現されるシリンドリカルレンズの奥行き方向の強度プロファイルを、シミュレーションの結果を基に示す図である。この結果によれば、焦点距離を710μmに設定した(a)の例では、集光点がd=710μm付近に位置している。また、焦点距離を850μmに設定した(b)の例では、集光点がd=850μm付近に位置している。この結果は、液晶レンズに印加する電圧を制御することで、異なる焦点距離のレンズを等価的に実現することが可能であることを示しているといえる。
【0051】
図9は、上記のような電圧の印加によって等価的に実現されるシリンドリカルレンズのレンズ幅方向での強度プロファイルを、シミュレーションの結果を基に示す図である。この結果によれば、焦点距離を710μmに設定した(a)の例では、レンズからの距離が710μmの位置で、レンズ中心付近の光の強度が鋭いピークを示す。一方、焦点距離を850μmに設定した(b)の例では、レンズからの距離が850μmの位置で、レンズ中心付近の光の強度が鋭いピークを示す。この結果は、液晶レンズに印加する電圧を制御することで、異なる焦点距離のレンズを等価的に実現することが可能であることを示しているといえる。
【0052】
図10は、上記のような電圧の印加によって等価的に実現されるシリンドリカルレンズの位相差のシミュレーション結果を、それぞれの焦点距離での理想的な位相差分布と比較して示すグラフである。なお、グラフに示された位相差の単位はπである。この結果によれば、焦点距離を710μmに設定した(a)の例、焦点距離を850μmに設定した(b)の例ともに、理想的な位相差分布に近い位相差分布が実現できていることがわかる。
【0053】
図11は、上記のような電圧の印加によって等価的に実現されるシリンドリカルレンズの位相差のシミュレーション結果を、それぞれの焦点距離での結果を重ね合わせて示すグラフである。この結果によれば、液晶層への印加電圧を調整することによって、異なる焦点距離に最適化された位相差分布を実現できていることがわかる。
【0054】
(1−5.変形例)
次に、
図12を参照して、本実施形態の変形例について説明する。
図12は、本開示の第1の実施形態の変形例について説明するための図である。
【0055】
図12に示す状態では、観察者が、表示装置の正面付近から離れて位置している。図示された例では、3つのシリンドリカルレンズ122L1〜122L3のそれぞれを介して、観察者の左眼eLおよび右眼eRに観察される光が示されている。例えば、シリンドリカルレンズ122L1を介して左眼eLに観察される光について、シリンドリカルレンズ122L1から観察される画素までの距離、すなわち最適焦点距離はd11である。また、シリンドリカルレンズ122L1を介して右眼eRに観察される光について、最適焦点距離はd12である。同様にして、シリンドリカルレンズ122L2について最適焦点距離d13,d14を、シリンドリカルレンズ122L3について最適焦点距離d15,d16を定義する。
【0056】
この場合、図示されているように、視線の角度が大きいと、各シリンドリカルレンズ122Lにおける最適焦点距離の差が大きくなる。つまり、距離d11および距離d12の平均値と距離d15および距離d16の間の平均値との差は、例えば上記の
図4の例における距離d1’および距離d2’の平均値と距離d5’および距離d6’の間の平均値との差よりも大きい。従って、液晶レンズ部120において等価的に実現されるレンチキュラレンズの全体について一様に焦点距離を設定したのでは、一部のシリンドリカルレンズ122Lについて、画素のデフォーカスが許容しうる範囲を超えてしまう可能性がある。
【0057】
そこで、本変形例では、表示装置100のレンズ制御部132が、液晶レンズ部120の部分ごとに異なる焦点距離を設定する。より具体的には、レンズ制御部132は、シリンドリカルレンズ122L3,122L2,122L1の順で、印加電圧を少しずつ弱くし、より長い焦点距離を設定する。つまり、シリンドリカルレンズ122L1の焦点距離をf1、シリンドリカルレンズ122L2の焦点距離をf2、シリンドリカルレンズL3の焦点距離をf3とすると、f1>f2>f3である。
【0058】
本変形例によって、例えば、より大型の表示装置100においても、観察される立体画像の画質の劣化を防ぐことができる。なお、例えばモバイル機器に搭載されるような比較的小型の表示装置100では、上記のような表示面の位置ごとの差が顕著ではなく、液晶レンズ部全体で一様に焦点距離を設定することで十分に効果が得られる場合もある。
【0059】
(1−6.実施形態のまとめ)
以上で説明した本開示の第1の実施形態では、液晶レンズを用いた立体表示装置において、表示装置に表示される画像の観察位置に応じて液晶レンズの焦点距離が変化する。液晶レンズの焦点距離は、液晶層に印加する電圧の大きさを調整することで変化させることが可能である。画像の観察位置の情報は、例えば、観察者の画像を解析することによって取得されてもよいし、他の種類のセンサの検出結果から取得されてもよいし、また観察者などの操作入力によって与えられてもよい。
【0060】
これによって、例えば、画像を観察する位置が表示装置の変化した場合に、変化に適合して液晶レンズの焦点距離を変化させ、液晶レンズを介して観察される画素に焦点が合った状態を保つことによって、立体画像の良好な画質を維持することができる。
【0061】
また、液晶レンズでは、部分ごとに異なる焦点距離が設定されてもよい。これによって、例えば表示装置が大型であり、表示面の部分ごとの最適焦点距離の差が大きいような場合にも、液晶レンズのそれぞれの部分で適切な焦点距離を設定し、位置が異なる画素の間で画質に差が生じるのを防ぐことができる。
【0062】
(2.第2の実施形態)
続いて、
図13を参照して、本開示の第2の実施形態について説明する。
図13は、本開示の第2の実施形態において液体レンズの焦点距離を変化させる構成について説明するための図である。
【0063】
図13に示されるように、本実施形態では、液晶レンズに代えて液体レンズが用いられる。なお、それ以外の点では、本実施形態の構成は上記の第1の実施形態とほぼ同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0064】
液体レンズ部220は、端子基板121と、液体レンズ層222と、対向基板123とを含む。液体レンズ部220は、画素に対応する光を空間的に分離させるレンズ部の一例である。液体レンズ層222では、電極222fと、絶縁膜222eとによって形成されるレンズ室に、第1の液体222oと、第2の液体222wとが充填される。第1の液体222oと第2の液体222wとは、光の屈折率が異なり、互いの間に界面が形成される液体である。このような液体の組み合わせとして、例えば第1の液体222oが油であり、第2の液体222wが水であってもよい。
【0065】
液体レンズ層222では、電極222fに印加される電圧によって、第1の液体222oの表面張力が変化し、例えば(a)および(b)に示す例のように、第2の液体222wとの間の界面の形状が変化する。液体レンズ部220は、このような性質を利用して、液体レンズ層222をレンチキュラレンズとして機能させる。なお、液体レンズ部220では、必ずしも図示されているように1つのレンズ室に1つのレンズが形成されなくてもよく、複数のレンズ室にまたがって1つのレンズが形成されてもよい。
【0066】
液体レンズ部の構成には、例えば特開2011−095369号公報に記載されているような、公知の各種の構成を採用することが可能である。
【0067】
本実施形態に係る表示装置では、レンズ制御部132が、画像取得部140によって取得される画像の観察位置の情報に基づいて液体レンズ部220を制御し、液体レンズ部220で実現されるレンチキュラレンズの焦点距離を変化させる。ここで、レンズ制御部132は、電極222fに印加する電圧を制御し、各レンズ室における第1の液体222oの界面形状を変化させることによって、レンチキュラレンズの焦点距離を変化させる。
【0068】
かかる構成によって、上記の第1の実施形態と同様に、観察者の位置の変化に応じて適切なレンズの焦点距離を設定することが可能である。また、液体レンズの部分ごとに異なる焦点距離を設定し、位置が異なる画素の間で画質に差が生じるのを防ぐことも可能である。
【0069】
(3.電子機器に係る実施形態)
次に、
図14〜
図16を参照して、電子機器にかかる本開示の実施形態の例について説明する。
【0070】
図14は、本開示の実施形態に係る表示装置を有する電子機器の一例であるテレビジョン装置の外観を示す図である。テレビジョン装置10は、撮像部11、および表示部12などを有する。表示部12は、上記の実施形態で説明されたような本開示の実施形態に係る表示装置を用いて実現される。また、表示装置の画像取得部は、撮像部11から観察者の画像を取得してもよい。なお、表示部12は、タッチスクリーンであってもよい。
【0071】
図15は、本開示の実施形態に係る表示装置を有する電子機器の一例であるデジタルカメラの外観を示す図である。デジタルカメラ20は、撮像部21、操作部であるシャッターボタン22、および表示部23などを有する。表示部23は、上記の実施形態で説明されたような本開示の実施形態に係る表示装置を用いて実現される。なお、表示部23は、タッチスクリーンであってもよい。デジタルカメラ20は、さらに、表示部23の観察者側にサブ撮像部24を有し、表示装置の画像取得部がサブ撮像部24から観察者の画像を取得してもよい。
【0072】
図16は、本開示の実施形態に係る表示装置を有する電子機器の別の例である携帯電話(スマートフォン)の外観を示す図である。携帯電話30は、撮像部31、操作部である操作ボタン32、および表示部33などを有する。表示部33は、上記の実施形態で説明されたような本開示の実施形態に係る表示装置を用いて実現される。なお、表示部33は、タッチスクリーンであってもよい。携帯電話30は、さらに、表示部33の観察者側にサブ撮像部34を有し、表示装置の画像取得部がサブ撮像部34から観察者の画像を取得してもよい。
【0073】
(4.補足)
なお、上記の実施形態では、LCDを用いた表示装置の実施形態について説明したが、本開示の実施形態はこれには限られない。例えば、LCDに代えて有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの自発光型のディスプレイが用いられてもよい。また、レンズ部も、上記で説明した液晶レンズや液体レンズを用いたものには限られず、焦点距離を可変であるレンズを用いるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)焦点距離が可変であるレンズを含み、前記レンズによって表示面に配置される画素に対応する光を空間的に分離させるレンズ部と、
観察者の位置を示す情報に基づいて前記レンズ部を制御して前記レンズの焦点距離を変化させるレンズ制御部と
を備える表示装置。
(2)前記レンズ制御部は、前記レンズと該レンズを介して観察される前記画素との間の距離に近づくように前記レンズの焦点距離を変化させる、前記(1)に記載の表示装置。
(3)前記レンズ制御部は、前記観察者の位置が変化した場合に前記レンズの焦点距離を変化させる、前記(1)または(2)に記載の表示装置。
(4)前記レンズ制御部は、前記レンズ部の部分ごとに異なるように前記レンズの焦点距離を変化させる、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の表示装置。
(5)前記観察者の位置を示す情報を取得する観察位置情報取得部をさらに備える、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の表示装置。
(6)前記観察位置情報取得部は、観察者の画像を取得する画像取得部である、前記(5)に記載の表示装置。
(7)前記観察位置情報取得部は、前記表示装置を有する機器の筐体の傾きを検出するセンサである、前記(5)に記載の表示装置。
(8)前記観察位置情報取得部は、前記観察者の位置を指定する操作入力を取得する操作入力部である、前記(5)に記載の表示装置。
(9)前記レンズは、液晶レンズであり、
前記レンズ制御部は、前記液晶レンズの印加電圧を制御する、前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の表示装置。
(10)前記レンズは、液体レンズであり、
前記レンズ制御部は、前記液体レンズの印加電圧を制御する、前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の表示装置。
(11)焦点距離が可変であるレンズを含み、前記レンズによって表示面に配置される画素に対応する光を空間的に分離させるレンズ部と、
観察者の位置を示す情報に基づいて前記レンズ部を制御して前記レンズの焦点距離を変化させるレンズ制御部と
を含む表示装置
を備える電子機器。
(12)焦点距離が可変であるレンズを含み、前記レンズによって表示面に配置される画素に対応する光を空間的に分離させるレンズ部を制御するレンズ制御部を備え、
前記レンズ制御部は、観察者の位置を示す情報に基づいて前記レンズの焦点距離を変化させる制御回路。