(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793105
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】クーリングユニット用固定・搬送治具
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20150928BHJP
H01L 23/473 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
H05K7/20 N
H01L23/46 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-97334(P2012-97334)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-225599(P2013-225599A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】益子 耕一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真
(72)【発明者】
【氏名】堀内 康洋
(72)【発明者】
【氏名】杉原 伸一
【審査官】
井上 信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−94257(JP,A)
【文献】
特開2010−219095(JP,A)
【文献】
特開2001−177203(JP,A)
【文献】
特開2011−228508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/34−46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用流体が供給される中空部に前記冷却用流体を流通させるための配管が接続され、その配管が接続されていない所定の外表面が冷却対象物に密着させられる平坦な熱接触面とされたコールドプレートを少なくとも一つ有するクーリングユニットを、前記コールドプレートと配管との相対位置を維持させた状態に固定するクーリングユニット用固定・搬送治具において、
前記熱接触面を上面に対向させて前記コールドプレートを固定する固定板と、前記配管を前記固定板に連結して固定する配管固定部とを有し、前記固定板のうち前記熱接触面に対向する箇所に、前記熱接触面を前記固定板の裏面側に露出させる開口部が形成されていることを特徴とするクーリングユニット用固定・搬送治具。
【請求項2】
前記開口部は、前記熱接触面の輪郭と相似形状の開口形状を有し、かつ前記熱接触面より広い開口面積を有することを特徴とする請求項1に記載のクーリングユニット用固定・搬送治具。
【請求項3】
前記配管固定部は、前記固定板に固定された前記クーリングユニットの全高さ以上の高さに形成され、
その配管固定部以上の高さであって、前記配管固定部と共に前記固定板を表裏反転させた状態に支持する支柱部が前記固定板に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のクーリングユニット用固定・搬送治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子素子などの発熱体に密着させられ、かつ冷却用媒体が供給されるクーリングユニットを固定し、また搬送するための治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子素子などの発熱体を冷却する手段として、従来、電動ファンなどによって送風する強制空冷装置が採用されていたが、発熱量の増大により更に多量の熱を運び去ることのできる冷却装置が必要になってきており、そこで本出願人は特許文献1や特許文献2によってコールドプレートを既に提案している。
【0003】
これらの特許文献1,2に記載されているコールドプレートは、チップセットあるいはマイクロプロセッサなどと称される半導体素子もしくはその構成体(アッセンブリー)を冷却するためのものであって、ベースプレートとトップカバーとによって中空状に形成され、その内部に冷媒を循環させるように構成されている。そして、使用に際してはそのベースプレートを冷却対象物に密着させ、冷却対象物から伝達された熱を冷媒によって外部に運び去るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−123881号公報
【特許文献2】特開2010−123882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したコールドプレートは冷媒を供給および排出するための配管を施し、また複数のコールドプレートを配管によって連結してクーリングユニットとして構成され、そのクーリングユニットごと搬送され、あるいは適宜な箇所に固定される。その場合、コールドプレートと配管との相対位置のずれやコールドプレート同士の位置のずれなどによって配管に過剰な応力が掛かることを防止するために、所定の固定板に各コールドプレートおよび配管を固定している。その例を
図3および
図4ならびに
図5に示してある。
【0006】
ここに示す例は、二枚のコールドプレート1,2を連通管3で接続するとともに、一方のコールドプレート1に冷媒の供給管4を接続し、かつ他方のコールドプレート2に排出管5を接続してクーリングユニット6を構成し、そのクーリングユニット6を搬送のために固定するように構成した例である。各コールドプレート1,2は連通管3によって連結された相対位置を維持するように、ネジなどの固定部品7によって固定板8に取り付けられており、また供給管4および排出管5の自由端部は、固定板8に一体化させて設けられている接続用部品9によって固定されている。このように固定して搬送されたクーリングユニット6は、スーパーコンピュータなどに組み込まれて使用されるが、その冷却対象物であるCPUなどの発熱体との間での熱授受はコールドプレート1,2と発熱体との接触面を介して行われる。したがって、各コールドプレート1,2におけるベースプレートは、CPUなどの放熱面に正確に密着させる必要があるから、クーリングユニット6をスーパーコンピュータなどに組み付けるのに先だって、そのベースプレートの平面度を測定して所定の平面度になっていることを確認することが必須である。
【0007】
上述した
図3ないし
図5に示す固定板8では、各コールドプレート1,2におけるベースプレートの底面を固定板8の上面に対向させて固定するように構成されているので、ベースプレートの平面度を測定する場合、クーリングユニット6を固定板8から一旦取り外し、その状態でベースプレートの底面(発熱体に密着させるべき箇所)の平面度を測定することになる。その場合、各コールドプレート1,2には連通管3や供給管4および排出管5が接続されているので、これらの配管に過剰な応力が掛からないように取り扱う必要があり、その作業には慎重さが要求され、作業性が必ずしも良好とは言い得ず、改善すべき余地があった。
【0008】
この発明は、上記の課題に着目してなされたものであって、クーリングユニットを冷却対象物に組み付けるなどの実際に使用する際に要求される作業の作業性をも改善することのできる固定・搬送治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、冷却用流体が供給される中空部に前記冷却用流体を流通させるための配管が接続され、その配管が接続されていない所定の外表面が冷却対象物に密着させられる平坦な熱接触面とされたコールドプレートを少なくとも一つ有するクーリングユニットを、前記コールドプレートと配管との相対位置を維持させた状態に固定するクーリングユニット用固定・搬送治具において、前記熱接触面を上面に対向させて前記コールドプレートを固定する固定板と、前記配管を前記固定板に連結して固定する配管固定部とを有し、前記固定板のうち前記熱接触面に対向する箇所に、前記熱接触面を前記固定板の裏面側に露出させる開口部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記開口部は、前記熱接触面の輪郭と相似形状の開口形状を有し、かつ前記熱接触面より広い開口面積を有することを特徴とするクーリングユニット用固定・搬送治具である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記配管固定部は、前記固定板に固定された前記クーリングユニットの全高さ以上の高さに形成され、その配管固定部以上の高さであって、前記配管固定部と共に前記固定板を表裏反転させた状態に支持する支柱部が前記固定板に設けられていることを特徴とするクーリングユニット用固定・搬送治具である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、クーリングユニットを取り付けてある固定板を表裏反転させるように裏返せば、固定板に形成されている開口部からコールドプレートにおける熱接触面が露出し、したがってその開口部から適宜の測定部材を差し込んで熱接触面に接触させることにより、その熱接触面の平面度を測定することができる。すなわち、この発明によれば、クーリングユニットを固定板から取り外すことなく、熱接触面の平面度を測定でき、あるいは判定することができるので、クーリングユニットをスーパーコンピュータなどの冷却対象物に組み込む際のいわゆる評価作業を簡素化あるいは容易化することができる。
【0013】
特に請求項3の発明によれば、固定板の表裏を判定させるように裏返した場合、配管固定部と支柱部とによって、裏返し状態に安定的に設置できるので、熱接触面の平面度の測定などの作業性が更に良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の具体例を示す裏面側から見た平面図である。
【
図2】その表裏を反転させるように裏返した状態での側面図である。
【
図3】クーリングユニットを取り付けた状態での固定板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明を図に示す具体例に基づいて説明すると、
図1および
図2において、符号10はこの発明に係る固定・搬送治具を示し、矩形の固定板11を備えている。この固定板11は、金属あるいは合成樹脂などの所定の剛性あるいは強度のある平板であり、その表面(上面)にクーリングユニット12を固定するように構成されている。そのクーリングユニット12は一対のコールドプレート13,14を主体として構成されたものであり、前述した
図3および
図4に示すクーリングユニット6と同様な構成を備えている。すなわち、コールドプレート13,14は中空の平板状の部材であって、ベースプレート15,16の上面にトップカバー17,18を液密状態に取り付けて中空形状に構成されている。
【0016】
そのベースプレート15,16の裏面(下面)の中央部分が、電子素子などの発熱体(図示せず)を密着させる熱接触面19,20であり、
図1には破線で囲んで示してある。各コールドプレート13,14はその熱接触面19,20が固定板11の表面(上面)に対向するように固定板11にネジなどの固定部品21によって固定される。このように固定したコールドプレート13,14における熱接触面19,20に対応する位置には、固定板11の一部をくり抜いて開口部22,23が形成されている。その開口部22,23は、要は、熱接触面19,20を固定板11の裏面側に露出させるためのものであり、したがって開口部22,23は熱接触面19,20と同じ大きさで同じ形状であってもよく、あるいは熱接触面19,20と相似形状でかつ広い面積で開口する部分であってもよい。
【0017】
各コールドプレート13,14は、前述した
図3に示すものと同様に、連通管24によって接続されており、また一方のコールドプレート13には供給管25が接続され、他方のコールドプレート12には排出管26が接続されている。これらの連通管24および供給管25ならびに排出管26はコールドプレート13,14におけるトップカバー17,18に取り付けられており、したがってこれらの連通管24および供給管25ならびに排出管26は各コールドプレート13,14の上側を横切る状態に配置されており、クーリングユニット12の全高さは、ベースプレート15,16の底面からこれらの連通管24および供給管25ならびに排出管26の最も高い点までの寸法である。
【0018】
さらに、供給管25および排出管26は、各コールドプレート13,14の配列方向と同方向に伸びた状態に屈曲されている。これら供給管25および排出管26の先端側の部分であるいわゆる自由端部を固定する配管固定部27が設けられている。この配管固定部27は、直方体状のブロック状部分もしくは壁部であって固定板11に立設されており、供給管25および排出管26の先端部を貫通させた状態でこれら供給管25および排出管26の自由端部を保持するように構成されている。したがって、クーリングユニット12を固定板11に取り付けたままの状態でコンピュータなどの冷却対象物に組み込む場合には、この配管固定部27およびこれによって保持されている供給管25および排出管26の先端部が、図示しない他の配管との接続部となる。
【0019】
上記の配管固定部27は、固定板11上のクーリングユニット12の全高さ以上の長さ(もしくは高さ)に設定されていて、固定板11の長手方向での一方の端部側に設けられており、これとは反対側の端部には配管固定部27とほぼ同じ長さ(高さ)の支柱部28が設けられている。この支柱部28は、クーリングユニット12を取り付けた固定板11を表裏が反転するように裏返した場合に、配管固定部27と共に固定板11を支えるためのものであり、固定板11の表面に立設された板状もしくは棒状(軸状)の部分である。
【0020】
この発明に係る上記の治具によれば、各コールドプレート13,14を固定板11の表面(上面)に所定の姿勢で設置し、その状態でネジなどの固定部品21によって各コールドプレート13,14を固定板11に固定し、併せて供給管25および排出管26の自由端部を配管固定部27に貫通させて固定する。これは、
図3ないし
図5に示す場合と同様である。この状態で固定板11ごとクーリングユニット12を搬送すれば、各コールドプレート13,14同士およびコールドプレート13,14と配管との相対位置のずれなどが生じないので、クーリングユニット12を損傷したり、変形させたりすることなく搬送でき、また保管することができる。
【0021】
そして、スーパーコンピュータなどの冷却対象物に組み込む場合、固定板11と共にクーリングユニット12を裏返すと、固定板11に形成されている開口部23を介して各コールドプレート13,14における熱接触面19,20が露出する。したがって、その開口部23から平面度測定プローブなどの測定機器(図示せず)をコールドプレート13,14に向けて差し込むことにより、熱接触面19,20の平面度などを測定でき、あるいは判定することができる。またその場合、固定板11は、その表面側に設けてある配管固定部27と支柱部28とによってテーブル状に支えられるので、固定板11を所定の箇所においたまま作業を行うことが可能になって作業性が向上する。しかも、荷重は配管固定部27および支柱部28が受け、クーリングユニット12に荷重が掛かることがないので、クーリングユニット12の変形や損傷を確実に防止することができる。
【0022】
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、クーリングユニットは単一のコールドプレートを備えた構成、あるいは三つ以上のコールドプレートを備えた構成など、適宜な構成のものであってよく、また配管の構成も上述した構成以外のものであってよい。
【符号の説明】
【0023】
10…固定・搬送治具、 11…固定板、 12…クーリングユニット、 13,14…コールドプレート、 15,16…ベースプレート、 17,18…トップカバー、 19,20…熱接触面、 21…固定部品、 22,23…開口部、 24…連通管、 25…供給管、 26…排出管、 27…配管固定部、 28…支柱部。