(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧調整部は、前記第1分布と前記第2分布とを前記複数の発光画素に対応して合計することにより、前記第1電源線に生じる電圧降下量と前記第2電源線に生じる電圧降下量との和である総電圧降下量の分布を算出し、算出した総電圧降下量の分布に基づき前記第1電圧及び前記第2電圧を調整する
請求項5記載の表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、有機EL素子は電流駆動素子であることから、陽極側電源線および陰極側電源線には電流が流れ、配線抵抗に比例した電圧降下が発生する。
【0007】
図18は、特許文献2で提案されている、有機EL素子を駆動する画素の回路構成を示す回路図である。
【0008】
例えば前記画素回路の構成において、電源配線に電圧降下が発生する場合においても有機EL素子を電流駆動するドライバトランジスタQ1のソースドレイン間電圧が高く動作点が飽和領域である場合には、映像信号に応じてデータ線電圧により設定される適切な画像表示が可能である。
【0009】
しかしながら、ドライバトランジスタQ1のソースドレイン間電圧が低く動作点が線形領域である場合には、有機EL素子OLEDおよびスイッチトランジスタQ4の抵抗成分やドライバトランジスタQ1のソースドレイン間電圧の影響を大きく受けて適切な画像表示ができない。
【0010】
そのため、ドライバトランジスタQ1の動作点が飽和領域になるように、ディスプレイに供給される電源電圧は電圧降下分を補う電圧降下マージンを上乗せして設定される。
【0011】
電圧降下分を補う電圧降下マージンについても、上述の電源回路設計やバッテリ容量と同様に、ディスプレイの電圧降下量が一番大きくなる場合を想定して設定されることから、一般的な自然画に対して無駄な電力が消費されていることになる。
【0012】
モバイル機器用途を想定した小型ディスプレイでは、パネル電流が小さいので、電圧降下分を補う電圧降下マージンは発光画素で消費される電圧に比べて無視できるほど小さい。
【0013】
しかし、パネルの大型化に伴って電流が増加すると、電源配線で生じる電圧降下が無視できなくなる。
【0014】
図19は、各画素がマトリクス配置された有機ELディスプレイであり、各画素は映像信号に応じてドライバトランジスタが定電流を流す電流源にモデル化されている。
【0015】
また各画素は陽極側電源線および陰極側電源線によって隣接画素と互いに接続される。
【0016】
図20Aおよび
図20Cは、表示画像の一例であって、どちらも黒背景に同じ大きさの白窓を有するが、白窓の表示位置が異なる。
【0017】
また
図20Bおよび
図20Dは、これら表示画像を
図19のように構成される有機ELディスプレイへ表示した場合の、陰極側電源供給線の電圧降下値の分布を示すグラフである。具体的には、
図20Bは
図20Aを表示した際の陰極側電源供給線の電圧降下値の分布を示すグラフであり、
図20Dは
図20Cを表示した際の陰極側電源供給線の電圧降下値の分布を示すグラフである。
【0018】
特許文献1に提案されている従来の技術では、画像Aと画像Bは双方ともに映像信号のピーク値が同じであるために同じ外部印加電圧が設定される。
【0019】
しかしながら
図20Bおよび
図20Dに示すように画像Bでは画像Aに比較して2V程度電圧降下量が小さいので、画像Bでは画像Aに比較して外部印加電圧を少なくとも2V小さく設定して消費電力を低減することができるはずである。
【0020】
このように、上記特許文献1における従来技術においては、電圧降下分を補う電圧降下マージンを低減することはできず、家庭向けの30型以上の大型表示装置における消費電力低減効果としては不十分である。
【0021】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、消費電力低減効果の高い表示装置及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明に係る表示装置は、二次元状に配置された複数の発光画素を有する表示部を備える表示装置であって、前記表示部に電圧を供給する電圧源と、前記複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像データに応じて、前記電圧源が出力する前記電圧を調整する電圧調整部とを備え、前記表示部は、さらに、前記複数の発光画素及び前記電圧源に接続され、前記電圧源から前記電圧が供給される少なくとも1つの電源線を有し、前記電圧調整部は、前記映像データから前記少なくとも1つの電源線に生じる電圧降下量の分布を前記発光画素毎に推定し、推定した前記発光画素毎の電圧降下量の分布に基づき前記電圧を調整する。
【0023】
これにより、映像データに応じて電圧源から供給される電圧を調整するので、高い消費電力低減効果を実現できる。例えば、
図20Aに示すような画像を示す映像データが入力された場合と
図20Cに示すような画像を示す映像データが入力された場合とを比較すると、
図20Cの画像の場合には、電圧降下量に伴う電圧上昇分のマージンを低く抑えることができる。つまり、有機EL表示部内での電圧降下量の分布に基づき電圧を調整することにより、ピーク値が同じ、かつ、異なる画像の2つの映像データが入力された場合にも、それぞれの映像データに応じて電圧を調整する。よって、消費電力を低減できる。
【0024】
また、前記電圧調整部は、前記複数の発光画素を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られるM(Mは2以上の整数)個の発光画素からなる第1ブロック毎に前記電圧降下量の分布を算出し、前記第1ブロック毎に算出した前記電圧降下量の分布に基づき、前記電圧降下量の分布を前記発光画素毎に推定してもよい。
【0025】
これにより、計算量を大幅に低減することができるので、低コスト化できる。
【0026】
また、前記電圧調整部は、さらに、前記複数の発光画素を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られるN(NはMと異なる2以上の整数)個の発光画素からなる第2ブロック毎に前記電圧降下量の分布を算出し、前記第1ブロック毎に算出した前記電圧降下量の分布と、前記第2ブロック毎に算出した前記電圧降下量の分布とから、前記電圧降下量の分布を前記発光画素毎に推定してもよい。
【0027】
これにより、少ない計算量で精度よく電圧を調整できる。よって、低コストで、さらに消費電力を低減できる。
【0028】
また、前記電圧調整部は、推定した前記発光画素毎の前記電圧降下量の分布の最大値を用いて前記電圧を調整してもよい。
【0029】
これにより、電圧不足による発光画素の輝度の低下を防止できる。
【0030】
また、前記電圧源は、第1電圧及び前記第1電圧とは異なる第2電圧を前記表示部に供給し、前記少なくとも1つの電源線は、前記第1電圧が供給される第1電源線及び前記第2電圧が供給される第2電源線からなり、前記電圧調整部は、前記第1電源線に生じる電圧降下量の分布である第1分布及び前記第2電源線に生じる電圧降下量の分布である第2分布を前記発光画素毎に推定し、推定した前記発光画素毎の第1分布及び第2分布に基づき前記第1電圧及び前記第2電圧を調整してもよい。
【0031】
また、前記電圧調整部は、前記第1分布の最大値と前記第2分布の最大値との合計に従って、前記第1電圧及び前記第2電圧を調整してもよい。
【0032】
これにより、表示装置が2つの電源線(第1電源線及び第2電源線)を含む場合にも、電圧不足による発光画素の輝度の低下を防止できる。
【0033】
また、前記電圧調整部は、前記第1分布と前記第2分布とを前記複数の発光画素に対応して合計することにより、前記第1電源線に生じる電圧降下量と前記第2電源線に生じる電圧降下量との和である総電圧降下量の分布を算出し、算出した総電圧降下量の分布に基づき前記第1電圧及び前記第2電圧を調整してもよい。
【0034】
これにより、第1電源線に生じる電圧降下量が最大となる表示部内の位置と、第2電源線に生じる電圧降下量が最大となる表示部内の位置とが合致していない場合に、消費電力を一層低減できる。
【0035】
また、前記電圧調整部は、算出した総電圧降下量の分布の最大値を用いて前記第1電圧及び前記第2電圧を調整してもよい。
【0036】
また、前記複数の発光画素は、それぞれ、駆動素子と発光素子とを含み、前記駆動素子は、ソース電極及びドレイン電極を含み、前記発光素子は、第1の電極及び第2の電極を含み、当該第1の電極が前記駆動素子のソース電極及びドレイン電極の一方に接続され、前記ソース電極及びドレイン電極の他方と前記第2の電極との一方は、前記第1電源線に接続され、前記ソース電極及びドレイン電極の他方と前記第2の電極との他方は、前記第2電源線に接続されていてもよい。
【0037】
また、前記第2の電極は、前記複数の発光画素に共通して設けられた共通電極の一部を構成しており、前記共通電極は、その周縁部から電位が印加されるように、前記電圧源と電気的に接続されていてもよい。
【0038】
また、前記第2の電極は、金属酸化物からなる透明導電性材料で形成されていてもよい。
【0039】
また、前記発光素子は有機EL素子であってもよい。
【0040】
また、本発明はこのような表示装置として実現できるだけではなく、その表示装置を構成する処理部をステップとする表示装置の駆動方法としても実現できる。
【0041】
本発明に係る表示装置の駆動方法は、二次元状に配置された複数の発光画素を有する表示部と、前記表示部に電圧を供給する電圧源とを備える表示装置の駆動方法であって、前記表示部は、さらに、前記複数の発光画素及び前記電圧源に接続され、前記電圧源から前記電圧が供給される少なくとも1つの電源線を有し、前記表示装置の駆動方法は、前記複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像データから前記少なくとも1つの電源線に生じる電圧降下量の分布を前記発光画素毎に推定する推定ステップと、推定ステップで推定された前記発光画素毎の電圧降下量の分布に基づき前記電圧を調整する調整ステップとを含む。
【0042】
また、前記推定ステップは、前記複数の発光画素を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られるM(Mは2以上の整数)個の発光画素からなる第1ブロック毎に前記電圧降下量の分布を算出する第1算出ステップと、前記複数の発光画素を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られるN(NはMと異なる2以上の整数)個の発光画素からなる第2ブロック毎に前記電圧降下量の分布を算出する第2算出ステップと、前記第1算出ステップで算出された前記第1ブロック毎に算出した前記電圧降下量の分布と、前記第2算出ステップで算出された前記第2ブロック毎に算出した前記電圧降下量の分布とから、前記電圧降下量の分布を前記発光画素毎に推定するサブ推定ステップとを含んでもよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、消費電力低減効果の高い表示装置及びその駆動方法を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0046】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る表示装置は、二次元状に配置された複数の発光画素を有する表示部を備える表示装置であって、表示部に電圧を供給する電圧源と、複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像データに応じて、電圧源が出力する電圧を調整する電圧調整部とを備え、表示部は、さらに、複数の発光画素及び電圧源に接続され、電圧源から電圧が供給される少なくとも1つの電源線を有し、電圧調整部は、複数の発光画素のそれぞれの発光輝度を示すデータである映像データから少なくとも1つの電源線に生じる電圧降下量の分布を発光画素毎に推定し、推定した発光画素毎の電圧降下量の分布に基づき電圧を調整する。
【0047】
これにより、本実施の形態に係る表示装置は、映像データに応じて電圧源から供給される電圧を調整するので、高い消費電力低減効果を実現できる。
【0048】
図1は、本実施の形態に係る表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【0049】
同図に示す表示装置100は、有機EL表示部110と、データ線駆動回路120と、書込走査駆動回路130と、制御回路140と、電圧降下量演算回路150と、メモリ155と、信号処理回路160と、可変電圧源170とを備える。
【0050】
図2は、水平1920画素、垂直1080画素を有する有機EL表示部110における陽極側電源線網のモデルを模式的に示す図である。
【0051】
各画素(発光画素)は水平抵抗成分Rahと垂直抵抗成分Ravによって上下左右の隣接画素と各々接続されており、周縁部は外部印加電圧が加えられる陽極側電極に接続される。
【0052】
図3は、有機EL表示部110の構成を模式的に示す斜視図である。なお、図中下方が表示面側である。
【0053】
同図に示すように、有機EL表示部110は、複数の発光画素111と、陽極側電源線網112と、陰極側電源線網113とを有する。
【0054】
発光画素111は、陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113に接続され、当該発光画素111に流れる画素電流ipixに応じた輝度で発光する。
【0055】
陽極側電源線網112は、例えば、網目状に形成されている。一方、陰極側電源線網113は、有機EL表示部110にベタ膜状に形成され、有機EL表示部110の周縁部から可変電圧源170により出力された電圧が印加される。
図3においては、陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113の抵抗成分を示すために、陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113を模式的にメッシュ状に図示している。なお、陰極側電源線網113は、例えばグランド線であり、有機EL表示部110の周縁部で表示装置100の共通接地電位に接地されていてもよい。
【0056】
陽極側電源線網112には、水平抵抗成分Rahと垂直抵抗成分Ravが存在する。陰極側電源線網113には、水平抵抗成分Rchと垂直抵抗成分Rcvとが存在する。なお、図示されていないが、発光画素111は、書込走査駆動回路130及びデータ線駆動回路120に接続され、発光画素111を発光及び消光するタイミングを制御するための走査線と、発光画素111の発光輝度に対応する信号電圧を供給するためのデータ線とも接続されている。
【0057】
図4は、発光画素111の具体的な構成の一例を示す回路図である。
【0058】
同図に示す発光画素111は、駆動素子と発光素子とを含み、駆動素子は、ソース電極及びドレイン電極を含み、発光素子は、第1の電極及び第2の電極を含み、当該第1の電極が前記駆動素子のソース電極及びドレイン電極の一方に接続され、ソース電極及びドレイン電極の他方と第2の電極との一方に高電位側の電位が印加され、ソース電極及びドレイン電極の他方と第2の電極との他方に低電位側の電位が印加される。具体的には、発光画素111は、有機EL素子121と、データ線122と、走査線123と、スイッチトランジスタ124と、駆動トランジスタ125と、保持容量126とを有する。この発光画素111は、有機EL表示部110に、例えば二次元状に配置されている。
【0059】
有機EL素子121は、発光素子の一例であって、アノードが駆動トランジスタ125のドレインに接続され、カソードが陰極側電源線網113に接続され、アノードとカソードとの間に流れる電流値に応じた輝度で発光する。この有機EL素子121のカソード側の電極は、複数の発光画素111に共通して設けられた共通電極の一部を構成しており、該共通電極は、その周縁部から電位が印加されるように、可変電圧源170と電気的に接続されている。つまり、共通電極が有機EL表示部110における陰極側電源線網113として機能する。また、カソード側の電極は、金属酸化物からなる透明導電性材料で形成されている。なお、有機EL素子121のアノード側の電極は第1の電極の一例であり、有機EL素子121のカソード側の電極は第2の電極の一例である。また、陰極側電源線網113は第2電源線網の一例である。
【0060】
データ線122は、データ線駆動回路120と、スイッチトランジスタ124のソース及びドレインの一方に接続され、データ線駆動回路120により映像信号(映像データ)に対応する信号電圧が印加される。
【0061】
走査線123は、書込走査駆動回路130と、スイッチトランジスタ124のゲートに接続され、書込走査駆動回路130により印加される電圧に応じて、スイッチトランジスタ124をオン及びオフする。
【0062】
スイッチトランジスタ124は、ソース及びドレインの一方がデータ線122に接続され、ソース及びドレインの他方が駆動トランジスタ125のゲート及び保持容量126の一端に接続された、例えば、P型薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0063】
駆動トランジスタ125は、駆動素子の一例であって、ソースが陽極側電源線網112に接続され、ドレインが有機EL素子121のアノードに接続され、ゲートが保持容量126の一端及びスイッチトランジスタ124のソース及びドレインの他方に接続された、例えば、P型TFTである。これにより、駆動トランジスタ125は、保持容量126に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子121に供給する。なお、陽極側電源線網112は、第1電源線の一例である。
【0064】
保持容量126は、一端がスイッチトランジスタ124のソース及びドレインの他方に接続され、他端が陽極側電源線網112に接続され、スイッチトランジスタ124がオフされたときの陽極側電源線網112の電位と駆動トランジスタ125のゲートの電位との電位差を保持する。つまり、信号電圧に対応する電圧を保持する。
【0065】
データ線駆動回路120は、映像信号に対応する信号電圧を、データ線122を介して発光画素111に出力する。
【0066】
書込走査駆動回路130は、複数の走査線123に走査信号を出力することで、複数の発光画素111を順に走査する。具体的には、スイッチトランジスタ124を行単位でオン及びオフする。これにより、書込走査駆動回路130により選択されている行の複数の発光画素111に、複数のデータ線122に出力された信号電圧が印加される。よって、発光画素111が映像信号に応じた輝度で発光する。
【0067】
制御回路140は、データ線駆動回路120及び書込走査駆動回路130のそれぞれに、駆動タイミングを指示する。
【0068】
メモリ155は、
図2及び
図3で説明した陽極側電源線網112の水平抵抗成分Rah及び垂直抵抗成分Rav、ならびに、陰極側電源線網113の水平抵抗成分Rch及び垂直抵抗成分Rcvの数値データが予め格納された記憶部である。
【0069】
電圧降下量演算回路150は、電圧調整部の一例であり、表示装置100に入力された映像信号と、メモリ155から読み出された水平抵抗成分Rah、垂直抵抗成分Rav、水平抵抗成分Rch及び垂直抵抗成分Rcvとから、陽極側電源線網112に生じる電圧の降下量の分布及び陰極側電源線網113に生じる電圧の降下量の分布を発光画素111毎に推定し、推定した電圧降下量の分布に対応する電圧マージンを示す信号を信号処理回路160に出力する。
【0070】
信号処理回路160は、電圧降下量演算回路150から出力された電圧マージンを示す信号に応じて、可変電圧源170が出力する陽極側電圧及び陰極側電圧である外部印加電圧を調整する。具体的には、信号処理回路160は、電圧マージンだけ外部印加電圧が増加するように可変電圧源170を制御する。
【0071】
可変電圧源170は、電圧源の一例であり、有機EL表示部110に陽極側電圧及び陰極側電圧を供給する。この可変電圧源170は、信号処理回路160から指示される電圧に応じて外部印加電圧(陽極側電圧及び陰極側電圧)を変更する、電圧可変型の電源である。
【0072】
以上のように、本実施の形態に係る表示装置100は、入力された映像信号から陽極側電源線網112に生じる電圧の降下量の分布及び陰極側電源線網113に生じる電圧の降下量の分布を発光画素111毎に推定し、推定した発光画素111毎の陽極側電源線網112電圧降下量の分布及び陰極側電源線網113の電圧降下量の分布に基づき、可変電圧源170から出力される外部印加電圧を調整する。
【0073】
次に、本発明の表示装置100の動作について、
図5と、
図6A〜6Cと、
図7A〜7Cとを用いて説明する。
【0074】
従来の表示装置では、入力された映像信号から、例えばフレームごとのピーク信号を抽出し、当該ピーク信号に応じた駆動素子及び有機EL素子の駆動に必要な電圧を設定して電源電圧を調節するという制御が行われているのに対し、本発明の表示装置では、上記映像信号に加えて、予めメモリ155に格納された電源線網の水平抵抗成分(Rah、Rch)及び垂直抵抗成分(Rav、Rcv)を使った演算処理が行われることにより電圧降下量が推定される。
【0075】
図5は、本実施の形態に係る表示装置100の動作を示すフローチャートである。
【0076】
まず、電圧降下量演算回路150は、予め設定される映像信号と画素電流の変換式もしくは変換テーブルを用いて、映像信号から発光画素毎に流れる電流を算出する(ステップS11)。具体的には、電圧降下量演算回路150は、表示装置100に入力された1フレーム期間の映像信号を取得し、取得した映像信号から、各発光画素111に流れる画素電流を算出する。ここで、電圧降下量演算回路150は、映像信号と、当該映像信号に対応する発光輝度で発光画素111が発光した場合の画素電流とを対応付ける変換式もしくは変換テーブルを有する。この変換式もしくは変換テーブルを用いて、電圧降下量演算回路150は、表示装置100に入力された1フレーム期間の映像信号から、各発光画素111に流れる画素電流を算出する。
【0077】
次に、電圧降下量演算回路150は、メモリ155から陽極側電源線網112の水平抵抗成分Rah及び垂直抵抗成分Ravを取得する(ステップS12)。
【0078】
次に、電圧降下量演算回路150は、陽極側電源線網112の電圧分布を計算する(ステップS14)。具体的には、画素座標(h,v)における陽極側電源線網112の電圧の降下量をva(h,v)、画素電流をi(h,v)とおくと、画素座標(h,v)における電流i(h,v)に関して次の式1が導出される。
【0079】
Rah×{va(h−1,v)−va(h,v)}+Rah×{va(h+1,v)−va(h,v)}+Rav×{va(h,v−1)−va(h,v)}+Rav×{va(h,v+1)−va(h,v)}=i(h,v)・・・(式1)
【0080】
ただし、hは1から1920までの整数であり、vは1から1080までの整数である。また、va(0,v)およびva(1921,v)、va(h,0)、va(h,1081)は可変電圧源170から有機EL表示部110までの配線で生じる電圧降下量であり十分小さいので0と近似できる。また、Rahは陽極側電源線網112の水平抵抗成分(アドミッタンス)、Ravは陽極側電源線網112の垂直抵抗成分(アドミッタンス)である。
【0081】
式1を各発光画素111において導出すると1920×1080個の未知の変数va(h,v)に対する1920×1080個の1次連立方程式が得られる。よって、この1次連立方程式を解くことで各発光画素における陽極側電源線網112の電圧の降下量va(h,v)を得ることができる。つまり、発光画素111毎に陽極側電源線網112の電圧分布を算出できる。
【0082】
図6Aは、有機EL表示部110に表示される画像の一例を模式的に示す図である。
【0083】
同図に示す画像Aは、有機EL表示部110の中心部が白く、当該中心部以外が黒くなっている。
【0084】
図6Bは、画像Aを示す映像信号から計算された陽極側電源線網112の電圧分布を示すグラフである。
【0085】
同図のx軸は列方向の画素座標を示し、y軸は行方向の画素座標を示し、z軸は電圧降下量を示す。具体的には、画素座標(0,v)はx軸に対応し、画素座標(h,0)はy軸に対応する。
【0086】
電圧降下量演算回路150は、画像Aを示す映像信号が入力された場合に、上記式1より画素座標(h,v)毎に電圧降下量va(h,v)を算出し、算出結果から、
図6Bに示すような陽極側電源線網112の電圧分布を計算する。ここで、陽極側電源線網112は、
図2及び
図3に示した垂直抵抗成分Ravが実質的に無限大の1次元配線を想定している。つまり、異なる行の発光画素111に対応して設けられた複数の陽極側電源線網112は、水平方向(行方向)に平行に配置されている。これにより、画像Aのうち白い領域に対応する行の陽極側電源線網112の電圧降下量は、画面中央に向かって徐々に大きくなる。一方、画像Aのうち白い領域に対応する行以外の陽極側電源線網112の電圧降下量は、実質的に0となる。
【0087】
同様にして、電圧降下量演算回路150は、ステップS11の後、メモリ155から陰極側電源線網113の水平抵抗成分Rch及び垂直抵抗成分Rcvを取得する(ステップS13)。
【0088】
次に、電圧降下量演算回路150は、陰極側電源線網113の電圧分布を計算する(ステップS15)。具体的には、画素座標(h,v)において、上記の式1と同様に陰極側電源線網113に対して連立方程式を得てこれを解くことで、画素座標(h,v)における陰極側電源線網113の電圧の降下(上昇)量vc(h,v)を得ることができる。つまり、発光画素111毎に陰極側電源線網113の電圧分布を算出できる。
【0089】
図6Cは、画像Aを示す映像信号から計算された陰極側電源線網113の電圧分布を示すグラフである。
【0090】
同図のx軸は列方向の画素座標を示し、y軸は行方向の画素座標を示し、z軸は電圧降下量を示す。
【0091】
電圧降下量演算回路150は、陽極側電源線網112の電圧降下量の算出と同様に、陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量を算出する。ここで、陰極側電源線網113はベタ膜状に形成されている。よって、陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量vc(h,v)は、有機EL表示部110の中心、つまり画素座標(960,540)において、最も大きくなる。なお、陽極側電源線網112の電圧分布を計算する処理(ステップS14)及び陰極側電源線網113の電圧分布を計算する処理(ステップS15)のそれぞれは、推定ステップの一例である。
【0092】
次に、各発光画素における陽極側電源線網112の電圧降下量va(h,v)と、陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量vc(h,v)との和 |va(h,v)|+|vc(h,v)| が最大となる面内の電圧降下の最大値vmaxを計算する(ステップS16)。つまり、電圧降下量演算回路150は、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布と、陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量の分布とを、画素座標(h,v)に対応して合計することにより、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布と陰極側電源線網113の電圧降下(上昇)量の分布との和である総電圧降下量の分布を算出する。そして、算出した総電圧降下量の分布から、面内の電圧降下の最大値vmaxを計算する。
【0093】
なお、電圧降下量va(h,v)の最大値vamaxと、電圧降下(上昇)量vc(h,v)の最大値vcmaxとの和 |vamax|+|vcmax| は、ステップS16で算出される面内の電圧降下の最大値vmaxと比較すると、 vmax≦|vamax|+|vcmax| の関係が成り立つ。
【0094】
そこで、演算量の削減を目的として|vamax|+|vcmax|を面内の電圧降下の最大値として使用することもできる。
【0095】
これにより、電圧降下量を過大に見積もる可能性があるため、ステップS16の方法に比較して電力削減効果が低減するものの、電圧降下量を過少に見積もることはないので、表示画像に弊害は生じない。
【0096】
ところで、画像Aを示す映像信号とは異なる映像信号が表示装置100に入力された場合の陽極側電源線網112の電圧分布及び陰極側電源線網113の電圧分布について述べる。
【0097】
図7Aは、有機EL表示部に表示される画像の他の一例を模式的に示す図である。
【0098】
同図に示す画像Bは、
図6Aに記載された画像Aの白領域と同じ大きさの白領域であって、画像Aの白領域とは表示位置の異なる白領域を含む。具体的には、画像Bは、画素座標(1,1)を含む領域が白領域となっている。
【0099】
図7Bは、画像Bを示す映像信号から計算された陽極側電源線網112の電圧分布を示すグラフである。
【0100】
同図のx軸は列方向の画素座標を示し、y軸は行方向の画素座標を示し、z軸は電圧降下量を示す。
【0101】
同図に示す陽極側電源線網112の電圧分布は、
図6Bに示した陽極側電源線網112の電圧分布と比較して、分布のピークが左側(画素座標(h,0)側)にずれると共にピーク電圧が低くなっている。具体的には、
図6Bに示した陽極側電源線網112の電圧分布の最大値は7〜8Vであるが、
図7Bに示す陽極側電源線網112の電圧分布の最大値は4〜5Vであり、3V程度低下している。
【0102】
図7Cは、画像Bを示す映像信号から計算された陰極側電源線網113の電圧分布を示すグラフである。
【0103】
同図のx軸は列方向の画素座標を示し、y軸は行方向の画素座標を示し、z軸は電圧降下量を示す。
【0104】
同図に示す陰極側電源線網113の電圧分布は、
図6Cに示した陰極側電源線網113の電圧分布と比較して、
図7B同様、分布のピークが左側にずれると共にピーク電圧が低くなっている。具体的には、
図6Cに示した陰極側電源線網113の電圧分布の最大値は5〜6Vであるが、
図7Cに示す陰極側電源線網113の電圧分布の最大値は3〜4Vであり、2V程度低下している。
【0105】
したがって、
図6Aに示す画像Aと
図7Aに示す画像Bとで、電圧降下の最大値vmaxを比較すると、画像Aではvmaxが12〜14Vとなるが、画像Bではvmaxが7〜9Vとなる。つまり、陽極側電源線網112の電圧分布と陰極側電源線網113の電圧分布とから最大電圧降下量を計算する処理(ステップS16)で計算される電圧降下の最大値vmaxは、画像に応じて異なる値となる。特に、画像Aと画像Bとでは、白い領域の大きさは同じであるにも関わらず、白い領域が表示される位置が異なるために、電圧降下の最大値vmaxも異なる値となる。
【0106】
次に、信号処理回路160は、電圧降下量演算回路150で計算された電圧降下の最大値vmaxに応じて、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を制御する(ステップS17)。具体的には、電圧降下量演算回路150は、計算した電圧降下の最大値vmaxを示す信号を信号処理回路160へ出力する。信号処理回路160は、入力された電圧降下の最大値vmaxを示す信号から、可変電圧源170から出力される外部印加電圧の電圧マージンを求める。この電圧マージンは、例えば、電圧降下量演算回路150で計算された電圧降下の最大値vmaxと同等とする。これにより、可変電圧源170は、電圧マージンを加算した電圧を有機EL表示部110へ供給する。
【0107】
つまり、この電圧降下の最大値vmaxを、電圧降下分を補う電圧マージンとして、可変電圧源170から有機EL表示部110へ供給する電圧を増加させることにより、映像に応じて必要最小限の外部印加電圧を設定して消費電力を低減することができる。
【0108】
具体的には、画像Aを示す映像信号が入力された場合には、12〜14Vを電圧マージンとし、画像Bを示す映像信号が入力された場合には、7〜9Vを電圧マージンとする。言い換えると、画像Aと画像Bとは、映像信号のピーク値が同じであっても、異なる外部印加電圧が供給される。言い換えると、画像Bが入力された場合は、画像Aが入力された場合よりも陽極側電源線網112に供給する電圧を低くできる。つまり、消費電力を低減できる。
【0109】
なお、面内の最大電圧降下量を計算する処理(ステップS16)及び印加電圧を制御する処理(ステップS17)は、調整ステップの一例である。
【0110】
また、上記ステップS14及びS15では、電圧降下量演算回路150は、映像信号が入力された場合に、画素毎に電圧降下量を算出し、当該算出結果から、電源線網の電圧分布を算出するが、当該算出は、1フレームごとになされることに限定されない。
【0111】
図8は、本実施の形態に係る表示装置100の動作の一例を詳細に示すフローチャートである。同図は、
図5に記載された動作フローチャートの一例を詳細に説明したものであり、ステップS14及びS15における電源線網の電圧分布算出が、1フレームごとでなく画素行単位でなされていることを示す図である。
図8の左側には、
図6Aに記載された画像Aを表示する状態aから、
図7Aに記載された画像Bを表示する状態eへの画像変遷が描かれている。つまり、状態aから状態eまでの期間が、1フレーム期間に相当する。以下では、状態bでの電源線網の電圧分布算出を例にして、上記動作の説明をする。
【0112】
まず、電圧降下量演算回路150は、状態a〜状態bの間に更新される1画素行の映像信号を入力する。
【0113】
次に、電圧降下量演算回路150は、保持している映像信号のマトリクスを更新する。具体的には、
図8の右側に表されている映像信号マトリクスデータ201において、状態aから状態bの間に、1行目の画素行の階調データが更新される。
【0114】
次に、電圧降下量演算回路150は、更新された映像信号のマトリクスと画素電流の変換式もしくは変換テーブルとを用いて、画素電流マトリクスを作成する。具体的には、
図8の右側に表されている画素電流マトリクスデータ202において、状態aから状態bの間に、1行目の画素行の画素電流データが更新されている。
【0115】
次に、電圧降下量演算回路150は、
図5にて説明したステップS12及びステップS13を実行する。
【0116】
次に、電圧降下量演算回路150は、
図5にて説明したステップS14及びステップS15を実行する。具体的には、
図8の右側に表されている陽極側電源線網の電圧分布データ203Aと陰極側電源線網の電圧分布データ203Bとを作成する。
【0117】
次に、電圧降下量演算回路150は、陽極側電源線網の電圧分布データ203Aと陰極側電源線網の電圧分布データ203Bとを単純に加算した電圧降下量マトリクスデータ204を作成する。
【0118】
そして、電圧降下量演算回路150は、電圧降下量マトリクスデータ204に基づいて、最大電圧降下量を決定する。具体的には、
図8の右側に表されている電圧降下量マトリクスデータ204において、最大電圧降下量を12.3V(第540行、第960列)と決定する。
【0119】
次に、電圧降下量演算回路150は、上記最大電圧降下量から算出した電圧マージンを、駆動トランジスタ及び有機EL素子を駆動するのに必要な電圧に足し合わせた電圧を電源電圧として設定する。具体的には、駆動トランジスタの必要電圧が5V、有機EL素子の必要電圧が6Vである場合、これらの電圧と最大電圧降下量12.3Vとを加算して電源電圧を23.3Vと設定する。
【0120】
次に、信号処理回路160は、設定された電源電圧となるように、可変電圧源170を調節する。
【0121】
上述した状態bに対応した電源電圧制御の処理を1単位として、1画素行の映像信号データが更新される度に、上記処理を実行する。
【0122】
なお、
図8において、1画素行ごとに上記処理が実行されるのではなく、状態aにおける上記処理の後には、状態eにおける上記処理がなされる場合は、1フレームごとの上記処理が実行される場合に相当する。
【0123】
また、
図8において、1画素行ごとに上記処理が実行されるのではなく、複数の画素行を1単位として上記処理が実行されてもよい。
【0124】
1フレームごとに上記処理が実行される態様では、処理時間を確保できるという利点を有するのに対し、1画素行ごとに上記処理が実行される態様では、高速な処理が要求されるが、電源電圧設定精度が向上するという利点を有する。
【0125】
以上のように、本実施の形態に係る表示装置100は、二次元状に配置された複数の発光画素111を有する有機EL表示部110を備える表示装置であって、有機EL表示部110に陽極側電圧及び陰極側電圧を供給する可変電圧源170と、複数の発光画素111のそれぞれの発光輝度を示す映像信号に応じて、可変電圧源170が出力する陽極側電圧及び陰極側電圧を調整する電圧降下量演算回路150とを備え、有機EL表示部110は、さらに、複数の発光画素111及び可変電圧源170に接続され、可変電圧源170から陽極側電圧及び陰極側電圧が供給される陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113を有し、電圧降下量演算回路150は、映像信号から陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113のそれぞれに生じる電圧降下量の分布を発光画素111毎に推定し、推定した発光画素111毎の電圧降下量の分布に基づき陽極側電圧及び陰極側電圧を調整する。
【0126】
これにより、高い消費電力低減効果を実現できる。具体的には、映像信号のピークが同じ、かつ、有機EL表示部内の異なる位置にピークを有する2つの映像信号に対して、異なる電圧マージンを加算した電圧を有機EL表示部110へ供給する。よって、映像信号のピークに応じて電圧マージンを決定する構成と比較して、消費電力をさらに削減できる。
【0127】
また、本実施の形態に係る表示装置100は消費電力を削減できることにより発熱が抑えられるので、有機EL素子121の劣化を抑制できる。
【0128】
また、本実施の形態に係る表示装置100は、電圧降下量演算回路150が算出した総電圧降下量の分布から、面内の発光画素111毎の電圧降下の最大値vmaxを計算し、計算した総電圧降下量の最大値vmaxを用いて、外部印加電圧を調整する。
【0129】
これにより、電圧不足による発光画素111の輝度の低下を防止できる。
【0130】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態1において、映像に応じた電圧降下量を計算することで必要最小限の外部印加電圧を設定して消費電力を低減することができる方式を示したが、例えば水平1920画素、垂直1080画素を有する有機ELディスプレイの場合には、1920×1080個の1次連立方程式を陽極側と陰極側で各々解く必要があるために、計算回路が非常に大きくなりコスト高である課題がある。
【0131】
本発明の実施の形態2では、本課題を鑑みて各画素をブロック化して計算量を大幅に低減する方式について説明する。具体的には、本実施の形態では、電圧調整部は、複数の発光画素を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られるM(Mは2以上の整数)個の発光画素からなる第1ブロック毎に電圧降下量の分布を算出し、第1ブロック毎に算出した電圧降下量の分布に基づき、電圧降下量の分布を発光画素毎に推定する。具体的には、電圧調整部は、さらに、複数の発光画素を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られるN(NはMと異なる2以上の整数)個の発光画素からなる第2ブロック毎に電圧降下量の分布を算出し、第1ブロック毎に算出した電圧降下量の分布と、第2ブロック毎に算出した電圧降下量の分布とから、電圧降下量の分布を発光画素毎に推定する。
【0132】
なお、本実施の形態に係る表示装置の構成は、実施の形態1に係る表示装置100の構成とほぼ同じであり、電圧調整部の一例である電圧降下量演算回路150の機能が異なる。
【0133】
図9は、本実施の形態に係る表示装置の動作を示すフローチャートである。
【0134】
まず、電圧降下量演算回路150は、予め設定される映像信号の画素電流の変換式もしくは変換テーブルを用いて、映像信号から発光画素毎に流れる電流を算出する(ステップS21)。なお、この発光画素毎に流れる電流を算出する処理(ステップS21)は、実施の形態1で説明した発光画素毎に流れる電流を算出する処理(ステップS11)と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0135】
次に、電圧降下量演算回路150は、メモリ155から粗くブロック化した陽極側電源線網112の水平抵抗成分Rah1及び垂直抵抗成分Rav1、ならびに、陰極側電源線網113の水平抵抗成分Rch1及び垂直抵抗成分Rcv1を取得する(ステップS22)。
【0136】
次に、電圧降下量演算回路150は、粗くブロック化したブロック毎にブロック電流を計算して、抵抗線網モデルを作成する(ステップS24)。ここで、粗くブロック化した場合の抵抗線網のモデルについて説明する。
【0137】
図10は、水平1920画素、垂直1080画素を有する有機EL表示部110において、水平120画素、垂直120画素を1ブロックとした場合の陽極側電源線網112のモデルを模式的に示す図である。
【0138】
各ブロックは水平抵抗成分Rah1と垂直抵抗成分Rav1とによって上下左右の隣接ブロックと各々接続されており、周縁部は外部印加電圧が加えられる陽極側電極に接続される。言い換えると、水平抵抗成分Rah1と垂直抵抗成分Rav1との交点に、1ブロック(120×120画素)が配置されているとみなす。
【0139】
次に、電圧降下量演算回路150は、
図10に示すように、粗くブロック化した陽極側電源線網112の電圧分布を計算する(ステップS25)。
【0140】
ここで、粗くブロック化した陽極側電源線網112の電圧分布の計算手順について説明する。
【0141】
まず、電圧降下量演算回路150は、各ブロック毎に画素電流を合計してブロック電流を計算する。
【0142】
次にブロック座標(h,v)における陽極側電源線電圧の降下量をva1(h,v)、ブロック電流をi1(h,v)とおくと、ブロック座標(h,v)における電流に関して次の式2が導出される。
【0143】
Rah1×{va1(h−1,v)−va1(h,v)}+Rah1×{va1(h+1,v)−va1(h,v)}+Rav1×{va1(h,v−1)−va1(h,v)}+Rav1×{va1(h,v+1)−va1(h,v)}=i1(h,v)・・・(式2)
【0144】
ただし、hは1から16までの整数であり、vは1から9までの整数である。また、va1(0,v)およびva1(17,v)、va1(h,0)、va1(h,10)は可変電圧源170から有機EL表示部110までの配線で生じる電圧降下量であり十分小さいので0と近似できる。また、Rah1は粗くブロック化した陽極側電源線網112の水平抵抗成分(アドミッタンス)、Rav1は粗くブロック化した陽極側電源線網112の垂直抵抗成分(アドミッタンス)である。
【0145】
式2を各ブロックにおいて導出すると16×9個の未知の変数va1(h,v)に対する16×9個の1次連立方程式が得られる。よって、この1次連立方程式を解くことで、水平120画素、垂直120画素を1ブロックとしてモデル化した場合の、各ブロックにおける陽極側電源線網112の電圧の降下量va1(h,v)を得ることができる。つまり、粗くブロック化したブロック(水平120画素、垂直120画素)毎に陽極側電源線網112の電圧分布を算出できる。
【0146】
図11は、粗くブロック化した場合に算出されたブロック毎の電圧降下量を示す表である。
【0147】
同図に示すように、ブロック行とブロック列とに対応して電圧降下量が算出される。例えば、有機EL表示部110の中心部のブロック、つまりブロック座標(8,5)の電圧降下量は9.0Vと算出されている。
【0148】
さらに、粗くブロック化した場合の陽極側電源線網112の電圧の降下量va1(h,v)が最大となる面内の電圧降下の最大値va1maxを得ることができる。
【0149】
同様に、陰極側電源線網113に対して連立方程式を得てこれを解くことで、水平120画素、垂直120画素を1ブロックとしてモデル化した場合の、各ブロックにおける陰極側電源線網113の電圧の降下量vc1(h,v)を得ることができる。つまり、粗くブロック化したブロック毎(水平120画素、垂直120画素)毎に陰極側電源線網113の電圧分布を計算する(ステップS26)。
【0150】
また、電圧降下量演算回路150は、ステップS21の後、メモリ155から細かくブロック化した陽極側電源線網112の水平抵抗成分Rah2及び垂直抵抗成分Rav2、ならびに、陰極側電源線網113の水平抵抗成分Rch2及び垂直抵抗成分Rcv2を取得する(ステップS23)。
【0151】
次に、電圧降下量演算回路150は、細かくブロック化したブロック毎にブロック電流を計算して、抵抗線網モデルを作成する(ステップS27)。ここで、細かくブロック化した場合の抵抗線網のモデルについて説明する。
【0152】
図12は、水平1920画素、垂直1080画素を有する有機EL表示部110において、水平60画素、垂直60画素を1ブロックとした場合の陽極側電源線網112のモデルを模式的に示す図である。
【0153】
各ブロックは水平抵抗成分Rah2と垂直抵抗成分Rav2とによって上下左右の隣接ブロックと各々接続されており、周縁部は外部印加電圧が加えられる陽極側電極に接続される。言い換えると、水平抵抗成分Rah2と垂直抵抗成分Rav2との交点に、1ブロック(60×60画素)が配置されているとみなす。
【0154】
次に、電圧降下量演算回路150は、
図12に示すように細かくブロック化した陽極側電源線網112の電圧分布を計算する(ステップS28)。
【0155】
ここで、細かくブロック化した陰極側電源線網113の電圧分布の計算手順について説明する。
【0156】
まず、電圧降下量演算回路150は、各ブロック毎に画素電流を合計してブロック電流を計算する。
【0157】
次にブロック座標(h,v)における陽極側電源線電圧の降下量をva2(h,v)、ブロック電流をi2(h,v)とおくと、ブロック座標(h,v)における電流に関して次の式3が導出される。
【0158】
Rah2×{va2(h−1,v)−va2(h,v)}+Rah2×{va2(h+1,v)−va2(h,v)}+Rav2×{va2(h,v−1)−va2(h,v)}+Rav2×{va2(h,v+1)−va2(h,v)}=i2(h,v)・・・(式3)
【0159】
ただし、hは1から32までの整数であり、vは1から18までの整数である。また、va2(0,v)およびva2(33,v)、va2(h,0)、va2(h,19)は可変電圧源170から有機EL表示部110までの配線で生じる電圧降下量であり十分小さいので0と近似できる。また、Rah2は細かくブロック化した陽極側電源線網112の水平抵抗成分(アドミッタンス)、Rav1は細かくブロック化した陽極側電源線網112の垂直抵抗成分(アドミッタンス)である。
【0160】
式3を各ブロックにおいて導出すると32×18個の未知の変数va2(h,v)に対する32×18個の1次連立方程式が得られる。よって、この1次連立方程式を解くことで、水平60画素、垂直50画素を1ブロックとしてモデル化した場合の、各ブロックにおける陽極側電源線網112の電圧の降下量va2(h,v)を得ることができる。つまり、細かくブロック化したブロック毎(水平60画素、垂直60画素)毎に陽極側電源線網112の電圧分布を計算できる。
【0161】
図13は、細かくブロック化した場合に算出されたブロック毎の電圧降下量を示す表である。
【0162】
同図に示すように、ブロック行とブロック列とに対応して電圧降下量が算出される。例えば、有機EL表示部110の中心部のブロック、つまりブロック座標(16,9)の電圧降下量は8.5Vと算出されている。
【0163】
さらに、細かくブロック化した場合の陽極側電源線網112の電圧の降下量va2(h,v)が最大となる面内の電圧降下の最大値va2maxを得ることができる。つまり、各画素における陽極側の降下量と陰極側の降下量の和 |va2(h,v)|+|vc2(h,v)| が最大となる面内の電圧降下の最大値v2maxを得ることができる。
【0164】
同様に、陰極側電源線網113に対して連立方程式を得てこれを解くことで、水平60画素、垂直60画素を1ブロックとしてモデル化した場合の、各ブロックにおける陰極側電源線網113の電圧の降下量vc2(h,v)を得ることができる。つまり、細かくブロック化したブロック毎(水平120画素、垂直120画素)毎に陰極側電源線網113の電圧分布を計算する(ステップS29)。
【0165】
次に、電圧降下量演算回路150は、粗くブロック化した抵抗線網モデルを用いて陽極側電源線網112の電圧分布を計算する処理(ステップS25)で計算された電圧の降下量va1(h,v)と、細かくブロック化した抵抗線網モデルを用いて陽極側電源線網112の電圧分布を計算する処理(ステップS28)とで計算された電圧の降下量va2(h,v)とから、陽極側電源線網112の電圧の降下量を発光画素111毎に求める。具体的には、粗くブロック化した場合の電圧の降下量va1(h,v)と、細かくブロック化した場合の電圧の降下量va2(h,v)とを用いて、外挿により、発光画素111毎の陽極側電源線網112電圧の降下量を計算する(ステップS30)。
【0166】
ここで、外挿による発光画素111毎の電圧の降下量の計算手順について説明する。
【0167】
これまでの異なる2つのサイズでブロック化した場合の計算結果からva1maxとva2maxの2つの電圧降下の最大値を得ることができるが、それぞれブロック化に伴い実際の電圧降下の最大値に対して誤差を有する。言い換えると、粗くブロック化した場合の陽極側電源線網112の電圧降下の最大値va1maxと、細かくブロック化した場合の陽極側電源線網112の電圧降下の最大値va2maxとは、発光画素111毎の陽極側電源線網112の電圧降下の最大値に対して誤差を有する。
【0168】
図14は、ある映像信号に対して、ブロック化する際の水平垂直画素数と、ブロック化したモデルから計算される電圧降下の最大値の関係を示すグラフである。
【0169】
図14において、大きなブロックサイズでモデル化した場合に計算される電圧降下量ほど本来の電圧降下量であるブロックサイズ1の場合に計算される電圧降下量に対して誤差が大きい。
【0170】
また、ブロックサイズと誤差との関係がおおよそ比例関係と見ることができることから、異なる2つのブロック化モデルで計算した電圧降下量を用いて外挿することで本来の電圧降下量であるブロックサイズ1(1ブロックに含まれる発光画素111が1つ)の場合に計算される電圧降下量に対する誤差が十分小さい外挿電圧降下量を求めることができることがわかる。
【0171】
よって、ブロックサイズ120×120画素のモデルにより得られた電圧降下の最大値va1maxと、ブロックサイズ60×60画素のモデルにより得られた電圧降下の最大値va2maxを用いると、ブロックサイズ1×1画素の場合に計算される外挿電圧降下量vamaxは次の式4で計算される。
【0172】
vamax = va2max−(va1max−va2max)×(60−1)/(120−60)・・・(式4)
【0173】
つまり、本実施の形態では、電圧降下量演算回路150は、複数の発光画素111を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られる120×120個の発光画素111からなる粗くブロック化されたブロック毎に陽極側電源線網112の電圧降下量の分布を算出し、複数の発光画素111を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られる60×60個の発光画素111からなる細かくブロック化されたブロック毎に陽極側電源線網112の電圧降下量の分布を算出し、粗くブロック化されたブロック毎に算出された電圧降下量の分布と、粗くブロック化されたブロック毎に算出された電圧降下量の分布とから、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布を発光画素111ごとに推定する。
【0174】
同様に、陰極側電源線網113に対しても、電圧降下量演算回路150は、粗くブロック化した抵抗線網モデルを用いて陰極側電源線網113の電圧分布を計算する処理(ステップS26)で計算された電圧の降下量vc1(h,v)と、細かくブロック化した抵抗線網モデルを用いて陰極側電源線網113の電圧分布を計算する処理(ステップS29)とで計算された電圧の降下量vc2(h,v)とから、陰極側電源線網113の電圧の降下量を発光画素111毎に求める。具体的には、粗くブロック化した場合の電圧の降下量vc1(h,v)と、細かくブロック化した場合の電圧の降下量vc2(h,v)とを用いて、外挿により、発光画素111毎の陰極側電源線網113の電圧の降下量を計算する(ステップS31)。
【0175】
次に、陽極側電源線網112電圧の降下量を外挿により計算する処理(ステップS30)により推定された発光画素111毎の陽極側電源線網112電圧の降下量と、陰極側電源線網113の電圧の降下量を外挿により計算する処理(ステップS31)により推定された発光画素111毎の陰極側電源線網113の電圧の降下量とから、各発光画素111における陽極側電源線網112の電圧降下量と、陰極側電源線網113の電圧降下量との和が最大となる面内の電圧降下の最大値を計算する(ステップS32)。なお、この面内の電圧降下の最大値を計算する処理(ステップS32)は、実施の形態1で説明した面内の電圧降下の最大値vmaxを計算する処理(ステップS16)と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0176】
最後に、信号処理回路160は、電圧降下量演算回路150で計算された電圧降下の最大値に応じて、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を制御する(ステップS33)。なお、可変電圧源170が出力する外部印加電圧を制御する処理(ステップS33)は、実施の形態1で説明した外部印加電圧を制御する処理(ステップS17)と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0177】
以上のように1920×1080個の1次連立方程式の計算を2回行う代わりに、ブロック化する手法では16×9個の1次連立方程式の計算と、32×18個の1次連立方程式の計算を各々2回行う。
【0178】
1次連立方程式の解法として例えばガウスジョルダン法を用いる場合には、元数の2乗に比例して演算量が増加することから、本実施の形態のようにブロック化することで約1200万分の1の計算量に低減できることになる。
【0179】
以上のように、異なる2つのサイズにブロック化して電圧降下量を演算することによって、計算量を大きく低減して比較的に低コストの演算回路を用いて低消費電力駆動に優れた表示装置を提供することが可能である。
【0180】
このように、本実施の形態に係る表示装置は、実施の形態1に係る表示装置100と比較して、電圧降下量演算回路150が、複数の発光画素111を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られる120×120個の発光画素111からなる粗くブロック化されたブロック毎に陽極側電源線網112の電圧降下量の分布を算出し、複数の発光画素111を行方向及び列方向にそれぞれ等分割して得られる60×60個の発光画素111からなる細かくブロック化されたブロック毎に陽極側電源線網112の電圧降下量の分布を算出し、粗くブロック化されたブロック毎に算出された電圧降下量の分布と、細かくブロック化されたブロック毎に算出された電圧降下量の分布とから、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布を発光画素111ごとに推定する。また、陰極側電源線網113についても同様である。
【0181】
これにより、本実施の形態に係る表示装置は、計算量を大幅に低減することができるので、計算回路を省スペースで設計でき、低コスト化できる。
【0182】
なお、粗くブロック化した陽極側電源線網112の電圧分布を計算する処理(ステップS25)及び粗くブロック化した陰極側電源線網113の電圧分布を計算する処理(ステップS26)のそれぞれは第1算出ステップの一例であり、細かくブロック化した陽極側電源線網112の電圧分布を計算する処理(ステップS28)及び細かくブロック化した陰極側電源線網113の電圧分布を計算する処理(ステップS29)のそれぞれは第2算出ステップの一例である。また、発光画素111毎の陽極側電源線網112電圧の降下量を計算する処理(ステップS30)及び発光画素111毎の陰極側電源線網113電圧の降下量を計算する処理(ステップS31)のそれぞれは、サブ推定ステップの一例である。
【0183】
以上、本発明に係る表示装置について実施の形態に基づき説明したが、本発明に係る表示装置は、上述した実施の形態に限定されるものではない。実施の形態1及び2に対して、本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る表示装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0184】
なお、本発明の表示装置において、温度変化に対応した電圧マージンの調整がなされることが望ましい。具体的には、有機EL表示部に温度センサが配置され、当該温度センサのモニタ値(計測温度)に応じて、例えば、電圧降下量演算回路が映像信号−画素電流間の変換テーブル(または変換式)を更新する。以下、温度変化を考慮した場合の表示装置について説明する。
【0185】
まず、実施の形態1及び2に係る表示装置において、温度変化が生じた場合に想定される問題点について説明する。有機EL表示部の温度が変化すると、駆動トランジスタの移動度及び閾値電圧が変化し、また、有機EL素子の抵抗が変化する。例えば、温度が高くなると、駆動トランジスタの移動度が高くなり電流が流れやすくなる。また、有機EL素子も抵抗が低くなって電流が流れやすくなる。そうすると、電圧降下量演算回路が、映像信号を画素電流に変換する際に温度の影響を受けてエラーが発生する。例えば、有機EL表示部の温度が25℃で128階調という映像信号に対して、画素電流は1μAと変換されるが、当該温度が60℃となると、同じ128階調でも実際に流れる画素電流は1.2μAとなる。
【0186】
この温度による画素電流の変化を考慮せずに、以降の電圧降下計算フローに移行すると、実際には想定した以上の電流(約1.2倍)が流れているにもかかわらず、電圧降下量演算回路による画素電流算出フローでは25℃での画素電流値を算出してしまう。これにより、電圧降下量演算回路により算出された電圧降下量は、実際よりも低く見積られることになる(例えば、実際には温度上昇により2.4V電圧降下しているのに対し、上記算出フローでは2.0Vと算出される)。このとき、初期設定の電圧マージンが5Vであるとすると、電圧降下量の算出フローにて電圧降下量を2Vと算出していることから、表示装置は3V(5V−2V)の分、電源電圧を下げようと調整する。ところが、実際には2.4Vの電圧降下が発生しているので、3Vも電源電圧を下げると、0.4V分電源電圧を低く設定することとなり、結果的に駆動トランジスタの線形領域に突入してしまい、表示エラーが発生してしまう。本発明の表示装置は、上記問題を解消すべく、温度変化を考慮した構成を備え、温度変化を補償する動作を含ませることが可能である。以下、上記温度センサを備えた表示装置の動作を説明する。
【0187】
図15は、本発明の実施の形態1の第1の変形例に係る表示装置の動作を示すフローチャートである。同図に記載された実施の形態1の第1の変形例に係るフローチャートは、
図8に記載された実施の形態1の具体例を示すフローチャートと比較して、ステップS11の動作のみが異なる。以下、
図8に記載されたフローチャートと同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0188】
まず、電圧降下量演算回路150は、状態a〜状態bの間に更新される1画素行の映像信号を入力する。
【0189】
次に、電圧降下量演算回路150は、保持している映像信号のマトリクスを更新する。
【0190】
次に、電圧降下量演算回路150は、表示装置100が備える温度センサの計測温度データを取得する(ステップS111)。
【0191】
次に、電圧降下量演算回路150は、取得した計測温度データに応じて、映像信号−画素電流間の変換テーブル(または変換式)を更新する(ステップS112)。つまり、電圧降下量演算回路150は、変換テーブル(または変換式)を、計測温度での駆動トランジスタの移動度及び閾値電圧ならびに有機EL素子の抵抗に対応した変換テーブル(または変換式)へと変更する。
【0192】
次に、電圧降下量演算回路150は、更新された映像信号のマトリクスと画素電流の変換式もしくは変換テーブルとを用いて、画素電流マトリクスを作成する。
【0193】
以上の動作フローにより、本発明の実施の形態1の第1の変形例に係る表示装置は、温度変化に影響されない高精度な電圧マージンの設定をすることが可能となる。
【0194】
また、本発明の実施の形態1に係る表示装置は、
図5及び
図8に記載された動作フローチャートに従い、映像信号マトリクス→画素電流マトリクス→電源線網の電圧分布→電圧降下量マトリクス作成→電圧マージン設定→可変電圧源の電源電圧調整、を実行するが、当該電圧マージンの設定精度を高めるために、画素電流マトリクス作成から電圧降下量マトリクス作成までの動作フローを複数回繰り返してもよい。
【0195】
図16は、本発明の実施の形態1の第2の変形例に係る表示装置の動作を示すフローチャートである。同図に記載された実施の形態1の第2の変形例に係るフローチャートは、
図8に記載された実施の形態1の具体例を示すフローチャートと比較して、画素電流マトリクスの作成から映像信号マトリクスの更新までの動作フローを複数回繰り返す点が異なる。以下、
図8に記載されたフローチャートと同じ点は説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0196】
各ステップで実行される動作は、
図8に記載された動作と同様であるが、ステップS16において、電圧降下量マトリクスを作成した後、所定の変換式(または変換テーブル)を用いて当該電圧降下量マトリクスから映像信号マトリクスを更新する。
【0197】
そして、更新された映像信号マトリクスを、ステップS11に戻し、当該更新された映像信号マトリクスから再度画素電流マトリクスを作成する。
【0198】
入力された映像信号を画素電流に変換して算出された最大電圧降下量は、実際に各発光画素を流れる画素電流に対して過度な電圧降下量が設定される場合がある。これに対し、一度設定された最大電圧降下量を重み付けして映像信号マトリクスを変換更新し、逐次、当該更新された映像信号マトリクスにより電圧降下量を再設定するという動作を、複数回繰り返すことにより、算出すべき電圧降下量を一定値へと収束させることが可能となる。これにより電圧降下量の算出精度が向上する。上記動作フローの一例を以下に説明する。
【0199】
まず、映像信号として、所定の発光画素の階調データとして255階調が入力されたと仮定する。このとき、255階調に対応するデータ電圧を、ステップS11にて使用される変換式により求めると、4.5Vであったとする。一方、ステップS11〜ステップS16の動作フローにより、最大電圧降下量が4.1Vと算出されたとする。この場合、ステップS16において、所定の変換式を、
変換後のデータ電圧=データ電圧−(最大電圧降下量×0.1)
と定義する。この場合、変換後のデータ電圧は、4.09V(=4.5V−4.1V×0.1)と算出される。この変換後のデータ電圧に相当する階調は、214階調となるので、映像信号マトリクスの所定の発光画素における階調データを214階調と更新して、再びステップS11〜ステップS16の動作を行う。この動作を複数回繰り返すことにより、より高精度な最大電圧降下量を算出することが可能となる。
【0200】
また、例えば、本発明に係る表示装置は、
図17に記載されたような薄型フラットTVに内蔵される。本発明に係る表示装置が内蔵されることにより、映像信号を反映した高精度な画像表示が可能な薄型フラットTVが実現される。
【0201】
また、上記各実施の形態では、陽極側電源線網112の発光画素111毎の電圧降下量と、陰極側電源線網113の発光画素111毎の電圧降下量とを、複数の発光画素111に対応して合計し、合計した総電圧降下量の最大値vmaxを用いて外部印加電圧を調整した。これに対し、陽極側電源線網112の発光画素111毎の電圧降下量の最大値と、陰極側電源線網113の発光画素111毎の電圧降下量の最大値とそれぞれ算出し、算出した陽極側電源線網112の電圧降下量の最大値と陰極側電源線網113の電圧降下量の最大値との合計値を用いて、外部印加電圧を調整してもよい。
【0202】
これにより、複数の電源線(陽極側電源線網112及び陰極側電源線網113)を含む場合にも、電圧不足による発光画素111の輝度の低下を防止できる。
【0203】
また、上記実施の形態2では、粗くブロック化したブロック毎の陽極側電源線網112と、細かくブロック化したブロック毎の陽極側電源線網112とから発光画素111毎の陽極側電源線網112の電圧降下を推定し、同様に推定した発光画素111毎の陰極側電源線網113の電圧降下と合わせて総電圧降下量の分布を算出し、算出結果から発光画素111毎の面内の最大電圧降下を推定した。これに対し、粗くブロック化したブロック毎の陽極側電源線網112と、粗くブロック化したブロック毎の陰極側電源線網113とを合わせて、総電圧降下量の分布を粗いブロック毎に算出し、同様に総電圧降下量の分布を細かいブロック毎に算出し、粗いブロック毎に算出した総電圧降下量の分布と細かいブロック毎に算出した総電圧降下量の分布とから、総電圧降下量の分布を発光画素111毎に推定し、推定結果から面内の最大電圧降下を推定してもよい。
【0204】
また、上記実施の形態2では、1つのブロックに含まれる複数の発光画素111は、水平方向(列方向)と垂直方向(行方向)とで同数であったが、水平方向の発光画素111の数と垂直方向の発光画素111の数とが異なっていてもよい。
【0205】
また、上記各実施の形態では、可変電圧源170から出力される陽極側電圧及び陰極側電圧のいずれも調整したが、いずれか一方の電圧を調整してもよい。
【0206】
また、上記各実施の形態では、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布と陰極側電源線網113の電圧降下量の分布とを推定して外部印加電圧を調整したが、陽極側電源線網112の電圧降下量の分布及び陰極側電源線網113の電圧降下量の分布の一方を推定し、推定した一方の電圧降下量の分布に基づき外部印加電圧を調整してもよい。
【0207】
また、上記実施の形態においては、スイッチトランジスタ124及び駆動トランジスタ125をP型トランジスタとして記載したが、これらをN型トランジスタで構成してもよい。
【0208】
また、スイッチトランジスタ124及び駆動トランジスタ125は、TFTであるとしたが、その他の電界効果トランジスタであってもよい。
【0209】
また、上記実施の形態に係る表示装置に含まれる処理部は、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。なお、表示装置100に含まれる処理部の一部を、有機EL表示部110と同一の基板上に集積することも可能である。また、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0210】
また、本発明の実施の形態に係る表示装置に含まれるデータ線駆動回路、書込走査駆動回路、制御回路、電圧降下量演算回路、信号処理回路の機能の一部を、CPU等のプロセッサがプログラムを実行することにより実現してもよい。また、本発明は、表示装置100が備える各処理部により実現される特徴的なステップを含む表示装置の駆動方法として実現してもよい。
【0211】
また、上記説明では、表示装置がアクティブマトリクス型の有機EL表示装置である場合を例に述べたが、本発明を、アクティブマトリクス型以外の有機EL表示装置に適用してもよいし、電流駆動型の発光素子を用いた有機EL表示装置以外の表示装置、例えば液晶表示装置に適用してもよい。