特許第5793199号(P5793199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5793199-運搬車両 図000002
  • 特許5793199-運搬車両 図000003
  • 特許5793199-運搬車両 図000004
  • 特許5793199-運搬車両 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793199
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】運搬車両
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/04 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   B60P1/04 F
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-544211(P2013-544211)
(86)(22)【出願日】2012年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2012078507
(87)【国際公開番号】WO2013073391
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2014年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2011-249496(P2011-249496)
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】美濃島 俊和
(72)【発明者】
【氏名】井刈 孝信
(72)【発明者】
【氏名】柳生 隆
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−256444(JP,A)
【文献】 実開平07−023644(JP,U)
【文献】 特開2009−166669(JP,A)
【文献】 特開2010−137696(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/099691(WO,A1)
【文献】 特開2001−105955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/00−1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体(2)と、該車体(2)の後部側を支点として上,下方向に傾転可能に設けられた荷台(15)と、該荷台(15)と車体(2)との間に設けられ該荷台(15)を上向きまたは下向きに傾斜させる荷台傾斜装置(16)と、該荷台傾斜装置(16)に対して前記荷台(15)を上,下方向に傾動させるための指令信号を出力する指令信号出力手段(26)と、前記荷台(15)が前記車体(2)に着座した状態を検出する着座状態検出器(28)と、該着座状態検出器(28)の検出結果により前記荷台(15)が着座していないと判定したときに前記車体(2)の走行速度を制限する速度制限手段(30)と、該速度制限手段(30)による走行速度の制限をオペレータの操作により変更することを可能とする制限変更スイッチ(29)とを備え、
前記指令信号出力手段(26)は、前記荷台(15)を上向きに回動させる上げ指令信号と、前記荷台(15)を下向きに回動させる下げ指令信号と、前記荷台(15)側の自重によって該荷台(15)の自重落下を許す浮き指令信号と、前記荷台(15)の動きを止める保持指令信号とを出力する構成としてなる運搬車両において、
前記速度制限手段(30)は、
前記荷台(15)が着座していないと判定し、且つ、前記制限変更スイッチ(29)が操作されていないと判定したときは、前記車体(2)の走行速度を低速走行である第1の制限速度以下に制限し、
前記荷台(15)が着座していないと判定し、且つ、前記制限変更スイッチ(29)が操作されていると判定したときであって、前記指令信号出力手段(26)の指令信号が下げ指令信号または浮き指令信号と判定される場合には、制限速度を前記第1の制限速度よりも速い第2の制限速度に変更し、
前記荷台(15)が着座していないと判定し、且つ、前記制限変更スイッチ(29)が操作されていると判定したときであって、前記指令信号出力手段(26)の指令信号が上げ指令信号または保持指令信号と判定される場合には、制限速度を前記第1の制限速度から前記第2の制限速度に変更することを禁止する構成としたことを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
前記制限変更スイッチ(29)は、前記オペレータが押している間はONされオペレータが離すとOFF状態に自動復帰するモーメンタリスイッチにより構成してなる請求項1に記載の運搬車両。
【請求項3】
前記第1の制限速度は、3〜7km/hとし、前記第2の制限速度は、8〜12km/hに設定してなる請求項1に記載の運搬車両。
【請求項4】
前記荷台傾斜装置(16)は、油圧パイロット式の方向制御弁により構成された制御弁装置(22)からの圧油の供給、排出によって作動するホイストシリンダ(16)であり、
前記指令信号出力手段(26)は、指令信号としてのパイロット圧を前記制御弁装置(22)に出力する操作レバー装置(26)により構成してなる請求項1に記載の運搬車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば露天の採掘場、石切り場、鉱山で採掘した砕石物または掘削した土砂を運搬するのに好適に用いられるダンプトラック等の運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダンプトラックと呼ばれる大型の運搬車両は、車体のフレーム上に後部側を支点として上,下方向に傾転可能となったベッセルと呼ばれる荷台を備えている。運搬車両は、この荷台に運搬対象の荷物(例えば、砕石物、土砂)を多量に積載した状態で、運搬先(荷降し場、集荷場)に向けて運搬、搬送するものである(特許文献1)。
【0003】
この種の従来技術による運搬車両は、自走可能な車体と、該車体上に後部側を支点として傾転(起伏)可能に設けられ荷物が積載される荷台と、該荷台と車体との間に設けられ荷物を荷台から排出するときに伸長または縮小して該荷台を上向きまたは下向き傾斜させるホイストシリンダとを備えている。
【0004】
このような運搬車両は、荷台内に荷物を積載した状態で運搬先まで自走した後、ホイストシリンダを伸長させて荷台を上向きに回動させ、この上げ動作により荷台の傾斜方向に沿って荷物を荷降し場へと排出する。一方、排出動作が終了した後には、例えばホイストシリンダを縮小方向に駆動したり、またはホイストシリンダを荷台側の自重によって縮小させる。これにより、荷台は車体上に着座する位置まで徐々に下降するように倒伏する。
【0005】
ところで、荷台が車体上に着座していない状態のまま走行することは、例えば荷台が電線、配管等の障害物に接触する虞があり、好ましくない。特許文献2には、荷台の傾斜角度が所定角度以上になると、アクチュエータによりアクセルペダルがロックされ、荷台の傾斜角度が所定角度以上では、通常の走行を行うことができないように構成したベッセル上昇走行防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−262750号公報
【特許文献2】特開平10−151981号公報
【発明の概要】
【0007】
特許文献2によるベッセル上昇走行防止装置は、荷台の傾斜角度が所定角度以上の状態でも、オペレータが所定のスイッチを押せば、アクセルペダルのロックを解除することができる。このため、オペレータは、例えば荷台が障害物に接触する虞がないことを確認し、所定のスイッチを押せば、荷台の傾斜角度が所定角度以上の状態でも、通常の走行を行うことができる。
【0008】
しかし、このような従来技術によれば、荷台の傾斜角度が所定角度以上の状態で、且つ、荷台に荷物が積載されている状態でも、オペレータが所定のスイッチを押すことにより、高速走行を含む通常の走行を行うことができる。この場合には、荷台の後部側で該荷台を傾転可能に支承する支持軸に大きな負荷が加わった状態で、通常走行が行われる虞がある。これにより、支持軸の耐久性、寿命が低下し、支持軸の交換時期が早まる問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、耐久性、信頼性を向上することができる運搬車両を提供することを目的としている。
【0010】
(1).上述した課題を解決するため、本発明は、自走可能な車体と、該車体の後部側を支点として上,下方向に傾転可能に設けられた荷台と、該荷台と車体との間に設けられ該荷台を上向きまたは下向きに傾斜させる荷台傾斜装置と、該荷台傾斜装置に対して前記荷台を上,下方向に傾動させるための指令信号を出力する指令信号出力手段と、前記荷台が前記車体に着座した状態を検出する着座状態検出器と、該着座状態検出器の検出結果により前記荷台が着座していないと判定したときに前記車体の走行速度を制限する速度制限手段と、該速度制限手段による走行速度の制限をオペレータの操作により変更することを可能とする制限変更スイッチとを備え、前記指令信号出力手段は、前記荷台を上向きに回動させる上げ指令信号と、前記荷台を下向きに回動させる下げ指令信号と、前記荷台側の自重によって該荷台の自重落下を許す浮き指令信号と、前記荷台の動きを止める保持指令信号とを出力する構成としてなる運搬車両に適用される。
【0011】
本発明が採用する構成の特徴は、前記速度制限手段は、前記荷台が着座していないと判定し、且つ、前記制限変更スイッチが操作されていないと判定したときは、前記車体の走行速度を低速走行である第1の制限速度以下に制限し、前記荷台が着座していないと判定し、且つ、前記制限変更スイッチが操作されていると判定したときであって、前記指令信号出力手段の指令信号が下げ指令信号または浮き指令信号と判定される場合には、制限速度を前記第1の制限速度よりも速い第2の制限速度に変更し、前記荷台が着座していないと判定し、且つ、前記制限変更スイッチが操作されていると判定したときであって、前記指令信号出力手段の指令信号が上げ指令信号または保持指令信号と判定される場合は制限速度を前記第1の制限速度から前記第2の制限速度に変更することを禁止する構成としたことにある。
【0012】
この構成によれば、オペレータが制限変更スイッチを操作していない場合は、荷台が車体に着座していないと、速度制限手段により、走行速度が低速走行である第1の制限速度以下に制限される。さらに、オペレータが制限変更スイッチを操作した場合でも、荷台が車体に着座しておらず、且つ、指令信号出力手段により、荷台傾斜装置により荷台を上げた状態を継続(維持)することができる上げ指令信号または保持指令信号を出力しているときは、速度制限手段により、第1の制限速度よりも速い第2の制限速度に変更することが禁止される。
【0013】
これにより、荷台が車体に着座しておらず、且つ、荷台を上げた状態を継続することができる状態(上げ指令の状態、保持指令の状態)では、例えオペレータが制限変更スイッチを操作しても、速度制限手段により、第1の制限速度を超えた速度で走行することが阻止される。このため、荷台が車体に着座しておらず、且つ、荷台に荷物が積載されている状態のような、支持軸に大きな負荷が加わる状態の場合には、第1の制限速度を超えた速度で走行することを阻止することができる。この結果、支持軸の耐久性、寿命の低下を抑制することができ、支持軸の交換時期を長くできるから、運搬車両の耐久性、信頼性を高めることができる。
【0014】
なお、荷台が車体に着座しておらず、且つ、指令信号出力手段が荷台傾斜装置により荷台を着座させる下げ指令信号または浮き指令信号を出力しているときは、オペレータの制限変更スイッチの操作に対応して、制限速度が第1の制限速度よりも速い第2の制限速度に変更される。この場合には、オペレータが希望する第2の制限速度以下の速度で走行することができる。
【0015】
(2).本発明によると、前記制限変更スイッチは、前記オペレータが押している間はONされオペレータが離すとOFF状態に自動復帰するモーメンタリスイッチにより構成したことにある。
【0016】
この構成によれば、オペレータが制限変更スイッチを押し続けなければ、制限速度を第2の制限速度以下に変更することができない構成とすることができる。これにより、オペレータが制限速度の変更を希望しないにも拘わらず、不用意に制限変更スイッチがON状態に継続される事態を防止することができ、オペレータの誤操作の可能性を低減することができる。
【0017】
(3).本発明によると、前記第1の制限速度は、3〜7km/hとし、前記第2の制限速度は、8〜12km/hに設定したことにある。
【0018】
この構成によれば、第1の制限速度を3〜7km/hに設定しているので、支持軸の耐久性、寿命を確保することができる。一方、第2の制限速度を8〜12km/hに設定しているので、オペレータが制限速度の変更を希望した場合に、オペレータの必要とする走行速度で走行することができる。
【0019】
(4).本発明によると、前記荷台傾斜装置は、油圧パイロット式の方向制御弁により構成された制御弁装置からの圧油の供給、排出によって作動するホイストシリンダであり、前記指令信号出力手段は、指令信号としてのパイロット圧を前記制御弁装置に出力する操作レバー装置により構成したことにある。この構成によれば、操作レバー装置から制御弁装置に、上げ指令信号、下げ指令信号、浮き指令信号、保持指令信号のそれぞれに対応する信号を、パイロット圧として出力することができる。制御弁装置は、パイロット圧に応じて圧油の供給、排出を行い、ホイストシリンダを作動させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態によるダンプトラックを示す正面図である。
図2】ダンプトラックの荷台を斜め後方に傾斜させた状態を示す正面図である。
図3】ホイストシリンダを伸長、縮小または停止させるための油圧回路と電気回路を含んだ回路構成図である。
図4図3中のコントローラによる制御処理を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態による運搬車両を、鉱山で採掘した砕石物、土砂を運搬するダンプトラックを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0022】
図中、1は大型の運搬車両であるダンプトラックで、該ダンプトラック1は、自走可能な車体2と、該車体2に傾転(回動)可能に支持され砕石物、土砂等の荷物(以下、土砂3という)を積載する後述の荷台15と、該荷台15を車体2に対して傾斜させて土砂を排出する後述のホイストシリンダ16とにより大略構成されている。
【0023】
ここで、車体2の前部側には、左,右の前輪4が回転可能に設けられている。前輪4は、後述の後輪5と同様に、例えば2〜4mに及ぶタイヤ径(外径寸法)をもって形成され、ダンプトラック1の運転者によってステアリング操作される操舵輪を構成している。
【0024】
車体2の後部側には、左,右の後輪5が回転可能に設けられている。後輪5は、ダンプトラック1の駆動輪を構成し、後述する走行用モータ13により回転駆動される。ダンプトラック1は、後輪5の回転駆動により、路上走行を行うものである。
【0025】
さらに、車体2の前部側には、後述するキャブ8、エンジン9等が設けられ、車体2の後部には、後述する荷台15の後部側を支持する荷台支持ブラケット6が設けられている。荷台支持ブラケット6は、連結ピンとなる支持軸7を介して荷台15を傾転可能に支持するものである。支持軸7は、後述するホイストシリンダ16を伸長または縮小させて、荷台15を上向きまたは下向きに傾斜させるときの支点(回動中心)となるものである。
【0026】
キャブ8は、車体2の前部に設けられている。このキャブ8は、ダンプトラック1のオペレータ(運転者)が搭乗する運転室を形成し、その内部には運転席、起動スイッチ、アクセルペダル、ブレーキペダル、操舵用のハンドル(いずれも図示せず)、後述の操作レバー26Aおよび制限変更スイッチ29(図3参照)等が設けられている。
【0027】
エンジン9は、キャブ8の下側に位置して車体2に設けられている。このエンジン9は、例えば大型のディーゼルエンジンにより構成されている。図3に示すように、エンジン9は、主発電機10を駆動して、3相交流電力(例えば、1500kW程度)を発生させると共に、直流用の副発電機11も駆動する。この副発電機11は、後述するコントローラ30の電源となるバッテリ12に接続され、該バッテリ12を充電する。さらに、エンジン9は、後述する油圧ポンプ17を回転駆動する機能も有している。
【0028】
図3に示すように、車体2の後部下側には、左,右の走行用モータ13が設けられ、該各走行用モータ13は、各後輪5をそれぞれ独立して駆動するものである。ここで、走行用モータ13は、例えば3相誘導電動機、3相ブラシレス直流電動機等からなる大型の電動モータによって構成され、主発電機10からモータ制御装置14を介して供給される電力によって回転駆動される。
【0029】
即ち、各走行用モータ13は、モータ制御装置14によりそれぞれ独立して回転駆動されるもので、該モータ制御装置14には、後述するコントローラ30からの制御信号が入力される。モータ制御装置14は、制御信号に基づいて、例えば車両の直進時に左,右の後輪5の回転速度を同じにしたり、旋回時に旋回方向に応じて左の後輪5と右の後輪5の回転速度を異ならせる制御を行うように構成している。
【0030】
15はキャブ8の後側に位置して車体2の後部側を支点として上,下方向に傾転可能に設けられた荷台を示している。荷台15は、土砂3を多量に積載するため全長が10〜13m(メートル)にも及ぶ有底な箱状の大型容器として形成され、その前部側にはキャブ8を上方から覆う庇部15Aが設けられている。ここで、荷台15の底部の後部側は、車体2の荷台支持ブラケット6に支持軸7を用いて支持されている。荷台15は、後述のホイストシリンダ16を伸長または縮小させることにより、支持軸7を支点として上,下方向に回動する。荷台15は、図1に示す下げ位置(運搬位置)から図2に示す上げ位置(排土位置)へと回動させることにより車体2に対して傾斜させ、この傾斜した荷台15に沿って土砂3を滑り落とす。これにより、荷台15に積載した大量の土砂3は、迅速に排土場所に排出される。
【0031】
16は車体2と荷台15との間に設けられた荷台傾斜装置としての左,右で一対のホイストシリンダ(1個のみ図示)で、該ホイストシリンダ16は、荷台15を後部側を支点として上向きまたは下向きに傾斜させるものである。図3に示すように、ホイストシリンダ16は、多段式(例えば、2段式)の油圧シリンダ、いわゆるテレスコピック式油圧シリンダが用いられる。ホイストシリンダ16は、外側に位置する外筒部16Aと、該外筒部16A内に伸長または縮小可能に設けられた内筒部16Bと、該内筒部16B内に伸長または縮小可能に設けられたピストンロッド16Cと一体のピストン16Dとによって構成されている。ホイストシリンダ16の外筒部16A内は、内筒部16B、ピストンロッド16Cおよびピストン16Dによりロッド側油室16E,16Fとボトム側油室16Gとの3室に画成されている。
【0032】
このとき、ロッド側油室16Fは、内筒部16Bに設けられたポート16Hを介してロッド側油室16Eとボトム側油室16Gとのいずれかに連通されるものである。即ち、ホイストシリンダ16のピストン16Dが、内筒部16B内を変位することにより、ピストン16Dがポート16Hよりも上側に位置したときには、図3に示すように、ポート16Hを介してロッド側油室16Fはロッド側油室16Eと連通する。一方、ピストン16Dがポート16Hよりも下側位置まで変位したときには、ポート16Hを介してロッド側油室16Fはボトム側油室16Gと連通する。
【0033】
ホイストシリンダ16は、油圧ポンプ17からボトム側油室16G内に圧油が供給されたときに、内筒部16Bがピストンロッド16Cと一緒に下向きに伸長し、内筒部16Bが最大伸長したときには、さらにピストンロッド16Cが下向きに最大伸長位置まで伸長する。これにより、ホイストシリンダ16は、支持軸7を支点として荷台15を斜め後方へと傾斜した上げ位置(排土位置)へと回動させる。
【0034】
一方、ホイストシリンダ16は、ピストンロッド16Cが最大伸長した状態で油圧ポンプ17からロッド側油室16E内に圧油が供給されると、まずピストンロッド16Cとピストン16Dのみが縮小し、その後は内筒部16Bがピストンロッド16Cと一緒に最大縮小位置まで縮小する。これにより、ホイストシリンダ16は、支持軸7を支点として荷台15を下向きに下降した下げ位置(運搬位置)へと回動させる。
【0035】
次に、ホイストシリンダ16を駆動するための油圧回路について図3を参照しつつ説明する。
【0036】
油圧ポンプ17は、作動油タンク18(以下、タンク18という)と共に油圧源を構成している。図1および図2に示すように、タンク18は、荷台15の下方に位置して車体2の側面に取付けられている。ここで、タンク18内に収容された作動油は、油圧ポンプ17がエンジン9により回転駆動されるときに、油圧ポンプ17に吸込まれる。油圧ポンプ17の吐出側からは、高圧の圧油がポンプ管路19内に吐出される。ホイストシリンダ16からの戻り油は、低圧のタンク管路20を介してタンク18へと排出される。
【0037】
油圧管路21A,21Bは、ホイストシリンダ16のボトム側油室16G、ロッド側油室16E,16Fに接続された一対の主管路を構成するものである。油圧管路21A,21Bは、後述の制御弁装置22を介して油圧源(油圧ポンプ17、タンク18)にそれぞれ接続されている。油圧管路21Aの先端側は、ホイストシリンダ16のピストンロッド16C内を通ってホイストシリンダ16のボトム側油室16Gに接続されている。油圧管路21Bの先端側は、ピストンロッド16C内を通ってロッド側油室16Eに接続されている。ホイストシリンダ16のロッド側油室16Fは、ピストン16Dの摺動位置に応じてロッド側油室16Eまたはボトム側油室16Gにポート16Hを介して連通される。
【0038】
制御弁装置22は、油圧ポンプ17、タンク18とホイストシリンダ16との間に設けられている。図3に示すように、制御弁装置22は、例えば4ポート4位置の油圧パイロット式方向制御弁により構成されている。即ち、制御弁装置22は、単一の方向制御弁を用いて構成され、左,右両側に油圧パイロット部22A,22Bを有している。
【0039】
制御弁装置22は、中立位置(N)、上げ位置(R)、下げ位置(L)および浮き位置(F)からなる複数の切換位置のうち、通常時は中立位置(N)に保持される。図3に示すように、中立位置(N)にある制御弁装置22は、ポンプ管路19、タンク管路20を油圧管路21A,21Bに対して遮断することにより、圧油の供給,排出を停止してホイストシリンダ16の動きを止める。このような中立位置(N)は、荷台15の動きを止めると共にその止めた位置に荷台15を保持させるものであるため、保持位置とも呼ばれる。
【0040】
後述の操作レバー装置26から油圧パイロット部22Aにパイロット圧が供給されると、制御弁装置22は中立位置(N)から上げ位置(R)に切換えられる。上げ位置(R)に切換わった制御弁装置22は、ポンプ管路19を油圧管路21Aに連通させ、タンク管路20を油圧管路21Bに連通させる。これにより、ホイストシリンダ16は、ボトム側油室16G側に圧油が供給され、ロッド側油室16E,16F内の油液がタンク18側に排出され、ピストンロッド16Cが外筒部16A,内筒部16Bから伸長する方向、即ち荷台15を上げる方向に駆動される。
【0041】
操作レバー装置26から油圧パイロット部22Bにパイロット圧が供給されると、制御弁装置22は中立位置(N)から下げ位置(L)に切換えられる。下げ位置(L)に切換わった制御弁装置22は、ポンプ管路19を油圧管路21Bに連通させ、タンク管路20を油圧管路21Aに連通させる。これにより、ホイストシリンダ16は、ロッド側油室16E,16F側に圧油が供給され、ボトム側油室16G内の油液がタンク18側に排出され、ピストンロッド16Cが外筒部16A,内筒部16B内に縮小する方向、即ち荷台15を下降させる方向に駆動される。
【0042】
さらに、後述の操作レバー装置26から油圧パイロット部22Bに、例えばより大きなパイロット圧が供給されると、制御弁装置22は中立位置(N)から下げ位置(L)を通過して浮き位置(F)に切換えられる。浮き位置(F)に切換わった制御弁装置22は、油圧管路21Aをポンプ管路19とタンク管路20の両方に連通させ、この両方に対して油圧管路21Bを遮断する。これにより、ホイストシリンダ16は、ボトム側油室16G内の油液がタンク18側に排出され、ロッド側油室16E,16F内には後述の迂回管路23B側からタンク18内の油液が補給される。この結果、ホイストシリンダ16は、荷台15側の自重によって縮小するようになり、荷台15の自重落下を許すものである。
【0043】
迂回管路23A,23Bは、制御弁装置22を迂回して油圧管路21A,21Bとタンク18との間にそれぞれ設けられている。この迂回管路23A,23Bのうち一方の迂回管路23Aは、一側が油圧管路21Aの途中部位に接続され、他側はタンク18に接続されている。他方の迂回管路23Bは、一側が油圧管路21Bの途中部位に接続され、他側はタンク18に接続されている。
【0044】
ここで、一方の迂回管路23Aには、その途中位置にメイクアップ用のチェック弁24Aと過負荷防止用のリリーフ弁25Aとが並列接続して設けられている。リリーフ弁25Aは、ホイストシリンダ16に対し縮小方向の過負荷が作用すると、ボトム側油室16G側の過剰圧をリリーフするために開弁する。チェック弁24Aは、タンク18内の油液が油圧管路21Aを介してホイストシリンダ16のボトム側油室16Gに向けて流通するのを許し、逆向きに流れるのを阻止する。このため、ホイストシリンダ16のボトム側油室16Gは、内部が負圧傾向になるとチェック弁24Aを介して油液が補給されるものである。
【0045】
他方の迂回管路23Bにも、一方の迂回管路23Aと同様に、その途中位置にメイクアップ用のチェック弁24Bと過負荷防止用のリリーフ弁25Bとが並列接続して設けられている。リリーフ弁25Bは、ホイストシリンダ16に対し伸長方向の過負荷が作用すると、ロッド側油室16E,16F側の過剰圧をリリーフするために開弁する。チェック弁24Bは、タンク18内の油液が油圧管路21Bを介してホイストシリンダ16のロッド側油室16E,16Fに向けて流通するのを許し、逆向きに流れるのを阻止する。このため、ホイストシリンダ16のロッド側油室16E,16Fは、内部が負圧傾向になるとチェック弁24Bを介して油液が補給されるものである。
【0046】
26は指令信号出力手段としての操作レバー装置で、該操作レバー装置26は、荷台15を上,下方向に傾動させるための指令信号を出力するものである。具体的には、操作レバー装置26は、例えば減圧弁型パイロット弁により構成され、キャブ8内のオペレータによって操作される操作レバー26Aを有している。操作レバー装置26は、操作レバー26Aに対する操作に応じて制御弁装置22の油圧パイロット部22A,22Bに指令信号としてのパイロット圧を供給することにより、制御弁装置22を切換えるものである。
【0047】
この場合、操作レバー26Aを矢示A方向に操作し、荷台上げ位置にしたときは、操作レバー装置26から制御弁装置22の油圧パイロット部22Aに、荷台15を上向きに回動させる上げ指令信号としてのパイロット圧が供給される。これにより、制御弁装置22は荷台上げ位置(R)に切換えられる。一方、例えば、操作レバー26Aを矢示B方向に一段操作し、荷台下げ位置にしたときは、操作レバー装置26から制御弁装置22の油圧パイロット部22Bに、荷台15を下げる下げ指令信号としてのパイロット圧が供給される。これにより、制御弁装置22は荷台下げ位置(L)に切換えられる。
【0048】
さらに、例えば、操作レバー26Aを矢示B方向に二段操作し、浮き位置にしたときは、操作レバー装置26から制御弁装置22の油圧パイロット部22Bに、荷台15の自重によって該荷台15の自由落下を許す浮き指令信号としてのパイロット圧が供給される。これにより、制御弁装置22は浮き位置(F)に切換えられる。
【0049】
さらに、操作レバー26Aを、矢示A,Bの操作位置から図3に示す保持位置(中立位置)に操作したときは、操作レバー装置26から制御弁装置22の油圧パイロット部22A,22Bに、荷台15の動きを止める保持指令信号としてのパイロット圧がそれぞれ供給される。これにより、制御弁装置22は中立位置(N)に切換えられる。
【0050】
操作レバーセンサ27は、操作レバー装置26に設けられ、該操作レバーセンサ27は、操作レバー26Aの操作位置(指令信号)に応じた検出信号を後述のコントローラ30に出力する。具体的には、例えば、操作レバーセンサ27は、操作レバー26Aの操作位置である上げ位置、下げ位置、浮き位置、保持位置(中立位置)に対応して、当該位置を表す信号をコントローラ30に出力するものである。
【0051】
28は荷台15が車体2に着座した状態(例えば着座しているか否か)を検出する着座検出器としての着座センサを示している。図1および図2に示すように、着座センサ28は、荷台15と車体2との間に位置して車体2の上側に設置された接触式センサ(例えば、圧力センサ、圧力スイッチ)により構成され、荷台15側に設けた検出対象の突起物28Aが当接しているか、離間しているかを検出するものである。即ち、着座センサ28は、車体2上での荷台15の挙動(荷台15がどのような状態にあるか)を検出する。荷台15が車体2に着座しているときには、着座センサ28は、着座信号を後述のコントローラ30に出力する。一方、荷台15が車体2から離れているときには、着座センサ28は、着座信号を出力しない構成となっている。
【0052】
なお、本実施の形態では、荷台15が車体2に着座した状態を、着座センサ28により検出する構成としている。しかし、このような着座センサ28に代えて、例えば、荷台15の傾斜角度を検出する傾斜角度センサや、ホイストシリンダ16のストローク長さを検出するストロークセンサにより検出する構成としてもよい。この場合には、荷台15の傾斜角度やホイストシリンダ16のストローク長さが、例えば荷台15が着座した状態に対応する値になったか否かにより、荷台15の着座状態を検出するように構成することができる。換言すれば、着座検出器は、荷台15が車体2に着座した状態を検出することができるものであれば、各種の検出器(センサ、スイッチ等)を用いることができる。
【0053】
29はキャブ8内で運転席の近傍に設けられたオーバーライドスイッチと呼ばれる制限変更スイッチ(図3参照)を示している。制限変更スイッチ29は、後述のコントローラ30に接続され、オペレータの操作によりコントローラ30に対して車体2(ダンプトラック1)の制限速度を変更する旨の信号を出力するものである。即ち、オペレータが制限変更スイッチ29を操作すると、該制限変更スイッチ29からコントローラ30に対してスイッチ29が操作された旨の操作中信号(ON信号)が出力される。これにより、コントローラ30は、後述する条件に応じて(操作レバー26Aの位置に応じて)、制限速度を、第1の制限速度(例えば5km/h)以下からこれよりも速い第2の制限速度(例えば10km/h)に変更することを可能にするものである。
【0054】
ここで、制限変更スイッチ29は、モーメンタリスイッチにより構成され、この制限変更スイッチ29は、オペレータが押している間はONされ操作中信号(ON信号)が出力される。一方、制限変更スイッチ29は、オペレータが離すとOFF状態に自動復帰する。このため、オペレータが制限速度を第2の制限速度以下に変更したい場合は、オペレータは、制限変更スイッチ29を押し続ける必要がある。これにより、オペレータが制限速度の変更を希望しないにも拘わらず、不用意に制限変更スイッチ29がON状態とされる事態を防止することができ、オペレータの誤操作の可能性を低減することができる。
【0055】
30はマイクロコンピュータからなるコントローラ(コントロールユニット)で、該コントローラ30は、その入力側がバッテリ12、操作レバーセンサ27、着座センサ28、制限変更スイッチ29等に接続されている。コントローラ30の出力側は、モータ制御装置14等に接続されている。コントローラ30は、ROM,RAM等からなるメモリ(図示せず)を有し、このメモリ内には、後述の図4に示す走行速度制限用の処理プログラムと、予め設定された第1の制限速度、第2の制限速度の数値とを含むデータが格納されている。
【0056】
コントローラ30は、後述する図4の処理プログラムに従って、ダンプトラック1の走行速度を制限する制御を行う。即ち、コントローラ30は、着座センサ28の検出結果により荷台15が着座していないと判定したときに、車体2の走行速度を制限する。具体的には、コントローラ30は、着座センサ28の検出結果により荷台15が着座していないと判定し、且つ、制限変更スイッチ29が操作されていないと判定したときは、車体2の走行速度を低速走行である第1の制限速度以下に制限する(制限速度の変更はできない)。この場合、第1の制限速度は、例えば3〜7km/h、より好ましくは5km/hに設定することができる。
【0057】
一方、着座センサ28の検出結果により荷台15が着座していないと判定し、且つ、制限変更スイッチ29が操作されていると判定したときは、コントローラ30は、操作レバー装置26の指令信号、換言すれば、操作レバーセンサ27により検出される操作レバー26Aの位置に応じて制限速度を決定する。具体的には、操作レバー装置26の指令信号が下げ指令信号または浮き指令信号と判定される場合、即ち、操作レバー26Aの位置が制御弁装置22の切換位置を下げ位置(L)または浮き位置(F)にする位置であると判定される場合は、コントローラ30は、制限速度を第1の制限速度よりも速い第2の制限速度以下にする(制限速度の変更をする)。この場合、第2の制限速度は、例えば8〜12km/h、より好ましくは10km/hに設定することができる。
【0058】
これに対し、操作レバー装置26の指令信号が上げ指令信号または保持指令信号と判定される場合、即ち、操作レバー26Aの位置が制御弁装置22の切換位置を上げ位置(R)または中立位置(N)にする位置であると判定される場合は、コントローラ30は、制限速度を第1の制限速度以下にする(制限速度の変更はできない)。換言すれば、制限速度を、第1の制限速度よりも速い第2の制限速度に変更することを禁止する。
【0059】
これにより、例えば、荷台15が車体2に着座しておらず、且つ、荷台15に荷物が積載されている場合、即ち、荷台15を支承する支持軸7に大きな負荷が加わる状態の場合には、オペレータにより制限変更スイッチ29が操作されたとしても、制限速度を第1の制限速度以下にすることができる。この結果、支持軸7の耐久性、寿命の低下を抑制することができ、支持軸7の交換時期を長くできる等、ダンプトラック1の耐久性、信頼性を高めることができる。
【0060】
なお、着座センサ28の検出結果により荷台15が車体2に着座していると判定された場合は、制限速度は設定しない(速度制限は行わない)。
【0061】
本実施の形態によるダンプトラック1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について述べる。
【0062】
ダンプトラック1のキャブ8に乗り込んだオペレータが、エンジン9を起動すると、主発電機10と副発電機11とにより発電が行われる。副発電機11で発生した電力は、バッテリ12を介してコントローラ30に給電される。主発電機10で発生した電力は、モータ制御装置14を介して左,右の走行用モータ13に給電される。ダンプトラック1を走行駆動するときには、オペレータによるアクセルペダルの操作量等に対応したコントローラ30の制御信号に基づいて、モータ制御装置14から後輪5側の各走行用モータ13に駆動電流が供給される。
【0063】
ダンプトラック1により土砂3を運搬するときは、荷台15を図1に示す下げ位置(運搬位置)に保持した状態で、油圧ショベル(図示せず)を用いて掘削した土砂3を荷台15に積載し、所望の荷降し場へと走行する。荷降し場においては、キャブ8内のオペレータが、操作レバー装置26の操作レバー26Aを上げ位置に傾転操作する。これにより、荷台15が支持軸7を支点として図2に示す上げ位置(排土位置)へと回動し、土砂3は傾斜した荷台15に沿って滑り落ち、荷降し場へと排出される。土砂3の排出作業が終了し、オペレータが操作レバー26Aを浮き位置または下げ位置に傾転操作すると、荷台15が支持軸7を支点として図1に示す下げ位置(運搬位置)へと回動し、車体2に着座する。
【0064】
次に、コントローラ30によるダンプトラック1の走行速度制限処理について、図4を参照しつつ説明する。
【0065】
エンジン9の始動により、図4の処理動作がスタートすると、ステップ1では、着座センサ28により荷台15の着座状態を読込む。ステップ2では、荷台15が着座しているか否かを判定する。即ち、ステップ2では、ステップ1で読込んだ着座センサ28の検出信号が着座であるか未着座であるかを判定する。このステップ2で、「YES」、即ち、荷台15が着座していると判定された場合は、ステップ3に進む。この場合は、荷台15が着座しているため、制限速度は設定せずに(速度制限はなし)、リターンを介してスタートに戻り、ステップ1以降の処理を繰返す。
【0066】
一方、ステップ2で、「NO」、即ち、荷台15が着座していない(未着座)と判定された場合は、ステップ4に進み、操作レバーセンサ27により操作レバー26Aの位置を読込む。この操作レバー26Aの位置は、操作レバー装置26の指令信号に対応するものである。
【0067】
ステップ5では、制限変更スイッチ29からの信号を読込み、続くステップ6では、該制限変更スイッチ29が操作されている(ON状態)か否かを判定する。即ち、ステップ6では、ステップ5で読込んだ制限変更スイッチ29からの信号が、この制限変更スイッチ29が操作されていることを表す操作中信号(ON信号)であるか否かを判定する。このステップ6で、「NO」、即ち、制限変更スイッチ29が操作されていない(OFF状態)と判定された場合は、ダンプトラック1の走行速度を低速走行である第1の制限速度以下、具体的には5km/h以下に制限する。
【0068】
即ち、この場合は、ステップ6からステップ7に進む。このステップ7では、制限変更スイッチ29がOFF状態であるため制限変更スイッチ29を無効とし、ステップ8で、ダンプトラック1の制限速度を5km/hにする。このステップ8では、コントローラ30から、モータ制御装置14に制限速度が5km/hである旨の信号を出力する。これにより、オペレータがアクセルペダルを大きく踏み込んでもダンプトラック1の走行速度が5km/hを超えないようにし、ステップ1以降の処理を繰返す。
【0069】
一方、ステップ6で、「YES」、即ち、制限変更スイッチ29が操作されている(ON状態)と判定された場合は、ステップ9に進み、操作レバー26Aの位置が、下げ位置または浮き位置であるかを判定する。このステップ9で、「YES」、即ち、操作レバー26Aの位置が下げ位置または浮き位置であると判定された場合には、荷台15が未着座であってもこの荷台15が着座する方向に傾動している状態、ないしは、すでに着座している状態と考えられる。このため、ダンプトラック1の走行速度を第1の制限速度よりも速い第2の制限速度以下、具体的には10km/h以下に制限する。
【0070】
即ち、この場合は、ステップ9からステップ10に進み、制限変更スイッチ29を有効とし、ステップ11で、ダンプトラック1の制限速度を10km/hにする。換言すれば、例えば、前回の処理により制限速度が第1の制限速度である5km/hに制限されていた場合は、今回の処理のステップ9により、制限速度が第2の制限速度である10km/hに変更される(変更を許す)。何れにしても、ステップ11では、コントローラ30から、モータ制御装置14に制限速度が10km/hである旨の信号を出力する。これにより、オペレータがアクセルペダルを大きく踏み込んでもダンプトラック1の走行速度が10km/hを超えないようにし、ステップ1以降の処理を繰返す。
【0071】
一方、ステップ9で、「NO」、即ち、操作レバー26Aの位置が上げ位置または保持位置であると判定された場合は、荷台15が未着座であり、且つ、荷台15を上げた状態が継続(維持)されると考えられる。この場合には、もしも制限変更スイッチ29の操作中信号(ON信号)に従って制限速度を第2の制限速度である10km/hに変更すると、荷台15に土砂3が積載され、かつ荷台15が傾いている状態であるにも拘わらず、ダンプトラック1は、第1の制限速度よりも速い第2の制限速度で走行する虞がある。この結果、支持軸7に大きな負荷が加わった状態で、第1の制限速度よりも速い第2の制限速度で走行されることになり、支持軸7の耐久性、寿命が低下する虞がある。
【0072】
そこで、ステップ9で、「NO」、即ち、操作レバー26Aの位置が上げ位置または保持位置であると判定された場合は、ステップ9からステップ7に進む。このステップ7では、制限変更スイッチ29から操作中信号(ON信号)が出力されていてもそれを無効とし、ステップ8で、ダンプトラック1の制限速度を第1の制限速度である5km/hにする。換言すれば、制限変更スイッチ29がONされていても、制限速度を第1の制限速度よりも速い第2の制限速度に変更することを禁止し、ステップ1以降の処理を繰返す。
【0073】
これにより、荷台15が未着座で、且つ、荷台15に土砂3が積載されている状態のような、支持軸7に大きな負荷が加わった状態の場合に、ダンプトラック1の走行速度を第1の制限速度以下に制限することができる。この結果、支持軸7の耐久性、寿命の低下を抑制することができる。
【0074】
かくして、本実施の形態によれば、ダンプトラック1の耐久性、信頼性を向上することができる。即ち、荷台15が車体2に着座しておらず、且つ、オペレータが制限変更スイッチ29を操作していない場合には、ステップ6,8の処理により、走行速度が低速走行である第1の制限速度以下(5km/h以下)に制限される。さらに、オペレータが制限変更スイッチ29を操作した場合でも、荷台15が車体2に着座しておらず、且つ、操作レバー26Aが上げ位置または保持位置である場合には、ステップ6,9,8の処理により、走行速度が低速走行である第1の制限速度以下(5km/h以下)に制限される。即ち、第1の制限速度(5km/h)よりも速い第2の制限速度(10km/h)に変更することが禁止される。
【0075】
これにより、荷台15が車体2に着座しておらず、且つ、荷台15を上げた状態を継続することができる状態(上げ位置、保持位置)では、例えオペレータが制限変更スイッチ29を操作しても、ステップ2,6,9,8の処理により、第1の制限速度(5km/h)を超えた速度で走行することが阻止される。このため、荷台15が車体2に着座しておらず、且つ、荷台15に土砂3が積載されている状態のような、支持軸7に大きな負荷が加わる状態の場合には、第1の制限速度(5km/h)を超えた速度で走行することを阻止することができる。この結果、支持軸7の耐久性、寿命の低下を抑制することができ、支持軸7の交換時期を長くできる等、ダンプトラック1の耐久性、信頼性を高めることができる。
【0076】
なお、荷台15が車体2に着座しておらず、且つ、操作レバー26Aの位置が荷台15を着座させる下げ位置または浮き位置であるときは、オペレータの制限変更スイッチ29の操作中信号(ON状態)に対応して、ステップ2,6,9,11の処理により、制限速度が第1の制限速度(5km/h)よりも速い第2の制限速度(10km/h)に変更される。この場合には、オペレータが希望する第2の制限速度以下の速度で走行することができる。
【0077】
本実施の形態によれば、制限変更スイッチ29をモーメンタリスイッチにより構成することにより、オペレータが制限変更スイッチ29を押し続けなければ制限速度を変更することができないように構成している。これにより、オペレータが制限速度の変更を希望しないにも拘わらず、不用意に制限変更スイッチ29が操作される(ON状態が継続される)事態を抑制することができ、オペレータの誤操作の可能性を低減することができる。
【0078】
本実施の形態によれば、第1の制限速度を3〜7km/h(より好ましい5km/h)に設定しているので、支持軸7の耐久性、寿命を確保することができる。一方、第2の制限速度を8〜12km/h(より好ましい10km/h)に設定しているので、オペレータが制限速度の変更を希望した場合に、オペレータの必要とする走行速度で走行することができる。
【0079】
なお、上述した実施の形態では、図4に示すステップ2,6,8,9,11の処理が本発明の構成要件である速度制限手段の具体例を示している。
【0080】
上述した実施の形態では、荷台傾斜装置として、圧油を動力源として伸長または縮小するホイストシリンダ16を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、荷台傾斜装置として、電力を動力源とする電動アクチュエータ、電動モータ等、荷台を傾斜させることができる他の形式の駆動機器を用いる構成としてもよい。
【0081】
上述した実施の形態では、荷台傾斜装置としてのホイストシリンダ16に、油圧パイロット式の方向制御弁により構成された制御弁装置22からの圧油を供給、排出する構成とし、指令信号出力手段は、指令信号としてのパイロット圧を制御弁装置22に出力する操作レバー装置26を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、制御弁装置を電磁弁(ソレノイド式の方向制御弁)により構成し、指令信号出力手段として、電気信号を指令信号として出力する電気式操作レバー装置を用いる構成としてもよい。
【0082】
上述した実施の形態では、荷台15が車体2に着座した状態を検出する着座状態検出器として、着座センサ28を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、着座状態検出器として、荷台の傾斜角度を検出する傾斜角度センサ、ホイストシリンダのストローク長さを検出するストロークセンサ等、荷台が車体に着座した状態を検出することができるものであれば、各種の検出器(センサ、スイッチ等)を用いることができる。
【0083】
上述した実施の形態では、制御弁装置22を、4ポート4位置の1個(単一)の方向制御弁により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、制御弁装置を、複数個の方向制御弁、より具体的には、例えば特開2009−208510号公報に記載されている構成のように、6ポート3位置の方向制御弁を2個組み合わせる構成としてもよい。
【0084】
さらに、上述した実施の形態では、運搬車両として後輪駆動式のダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば前輪駆動式または前,後輪を共に駆動する4輪駆動式のダンプトラックに適用してもよく、走行用の車輪を備えたダンプトラック以外の運搬車両に適用してもよい。さらに、クローラ式の運搬車両にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0085】
1 ダンプトラック(運搬車両)
2 車体
15 荷台
16 ホイストシリンダ(荷台傾斜装置)
22 制御弁装置
26 操作レバー装置(指令信号出力手段)
28 着座センサ(着座状態検出器)
29 制限変更スイッチ
30 コントローラ
図1
図2
図3
図4