特許第5793224号(P5793224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793224
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20150928BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20150928BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20150928BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20150928BHJP
   C08F 220/16 20060101ALN20150928BHJP
   C08F 220/28 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   B32B27/00 D
   B32B27/30 A
   B32B7/02 103
   G02B1/10
   !C08F220/16
   !C08F220/28
【請求項の数】13
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2014-136753(P2014-136753)
(22)【出願日】2014年7月2日
(62)【分割の表示】特願2014-35289(P2014-35289)の分割
【原出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-221554(P2014-221554A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2014年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-264620(P2011-264620)
(32)【優先日】2011年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 登喜生
(72)【発明者】
【氏名】黒川 敦史
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
(72)【発明者】
【氏名】所司 悟
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−074380(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/148721(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/118367(WO,A1)
【文献】 特開2011−026449(JP,A)
【文献】 特開2011−088356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09J 1/00−5/10、9/00−201/10
G02B 1/10−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止フィルムと、該反射防止フィルム上に貼り付けられた保護フィルムとを有し、
該反射防止フィルムの表面は、隣り合う凸部の頂点間の幅が可視光波長以下である複数の凸部を有し、
該保護フィルムは、支持フィルムと、該反射防止フィルムと接する粘着層とを有し、
該粘着層は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を架橋剤(B)で架橋させて形成された材料からなる層であり、
該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、100万以上、150万未満であり、
該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、単量体成分全体を100質量%としたときに、非環状の炭素数4〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を77〜98質量%含有し、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(b)を1.5〜25質量%含有し、該架橋剤(B)との間で反応性を示す官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(c)を0.5〜質量%含有する単量体成分を重合して形成されたものであり、
ゲル浸透クロマトグラフィー測定により得られる、該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)全体の面積を100%としたときの、分子量が10万以下の成分が占める面積割合は、3.0%未満であり、
該反射防止フィルムと該保護フィルムを0.3m/minの速度で引き剥がしたときの粘着力が40〜150mN/25mmである
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記架橋剤(B)は、イソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系モノマー(c)は、水酸基含有モノマーであることを特徴とする請求項2記載の積層体。
【請求項4】
前記水酸基含有モノマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項3記載の積層体。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の分子量分布は、1.2〜3.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
ゲル浸透クロマトグラフィー測定により得られる、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)全体の面積を100%としたときの、分子量が10万以下の成分が占める面積割合は、1.0%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記架橋剤(B)の配合量は、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜15質量部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)は、ブチルアクリレートであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
前記脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(b)は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
前記反射防止フィルムの複数の凸部同士の間隙は、該反射防止フィルムの内部方向に尖った形状を有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
前記反射防止フィルムと前記保護フィルムを0.3m/minの速度で引き剥がしたときの粘着力が85〜150mN/25mmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
前記粘着層の厚さは、2〜15μmであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
前記反射防止フィルムの表面は、水に対する接触角が15°以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。より詳しくは、基材上に貼り付けることで表面反射を低減することができるモスアイフィルムと、上記モスアイフィルムの表面の保護に好適な保護フィルムとを有する積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置の表面反射を低減する技術として、従来の光干渉フィルムを用いずに超反射防止効果を得ることができるモスアイ(Moth−eye:蛾の目)構造が注目されてきている。モスアイ構造は、反射防止処理を行う物品の表面に、防眩性(AG:Anti Glare)フィルムで形成される凹凸パターンよりも更に微細な、可視光波長以下の間隔の凹凸パターンを隙間なく配列することで、外界(空気)と物品表面との境界における屈折率の変化を擬似的に連続なものとするものであり、屈折率界面に関係なく光のほぼ全てを透過させ、該物品の表面における光反射をほぼなくすことができる(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0003】
このようなモスアイ構造は、空気界面の屈折率の変化を擬似的になくすことで光を透過させるため、一般的には物品の最表面に貼り付けられて用いられる。しかし、モスアイ構造が外部に露出していると、上記物品の製作過程及び流通過程で、汚れ、キズ等の外的要因によってモスアイ構造の反射防止特性が劣化してしまうおそれがある。
【0004】
一方、様々な部材の生産工程や出荷運搬工程において汚れや傷付きを防止するために、合成樹脂よりなる基材に粘着剤層が積層された保護フィルム又は保護シートが広く用いられている。このうち、屋外用途の部材を保護するフィルム又はシートについては、特に耐候性や耐光性が要求される。また、保護フィルム又はシートは、用を終えた後、剥離されなければならず、必要な間だけ強固に被着体に接着して固定できる一方で、使用時には容易に剥がすことができることが求められる。
【0005】
上記モスアイ構造上に保護フィルムを適用して、モスアイ構造と保護フィルムからなる積層体とすれば、使用時まで外的要因によるモスアイ構造の反射防止特性の劣化を有効に防止でき、必要な時に保護フィルムを剥がすことにより、モスアイ構造の反射防止特性を充分に発揮することが期待できる。なお、モスアイ構造を有するフィルム等の光学部材においては、保護フィルムを貼りあわせた積層体が高温雰囲気下に置かれたり、洗浄工程を経ることもあり、より高い接着性を有しながら、剥がす際には、被着体に粘着剤層の一部が残ることなく剥離できること(再剥離性)が求められる。
【0006】
ナノオーダーレベルのモスアイ構造ほど微細な凹凸ではないが、マイクロオーダーレベルの凹凸構造と保護フィルムからなる積層体については種々検討がなされている。
【0007】
例えば、特許文献3においては、周波数1Hz、−50℃〜150℃における動的粘弾性スペクトルの損失正接が、所定性状を示す粘着剤層を有する再剥離用粘着シートが提案されている。特許文献4においては、ポリオレフィン系樹脂からなる基材上に、中間層を介して、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、及び、粘着付与剤を含有する粘着剤層からなる表面保護シートが提案されている。特許文献5においては、ゴム系ポリマーを含有する粘着剤より形成されてなる粘着剤層の使用が提案されている。
【0008】
また、特許文献6においては、所定の曲げ応力係数を有するポリオレフィン基材上にゴム系樹脂成分からなる粘着層を有する表面保護フィルムが提案されている。特許文献7においては、ポリオレフィン系樹脂からなる基材上に、イソプレンをベースとしたゴム系樹脂又はアクリル系樹脂からなる粘着層が積層されたプロテクトフィルムが提案されている。
【0009】
更に、特許文献8において、順に、微細凹凸消去層、粗さ発現層、基材層、高弾性率の第1粘着剤層、及び、低弾性率の第2粘着剤層が積層されてなる粘着テープが提案されている。
【0010】
一方、最近では、凹凸パターンがナノオーダーのモスアイ構造と保護フィルムの積層体に関しても検討され始めている。例えば、特許文献9及び10には、モスアイ構造が形成される面と同じ面に非凹凸部分を設け、保護フィルムとの密着性及び再剥離性を当該部分により確保した積層体が提案されている。
【0011】
また、特許文献11には、ナノメートルオーダーの微細凹凸を有する光学フィルムに貼り付けられる保護フィルムとして、表面粗さRaが0.030μm以下であり、剛体振り子測定における対数減衰率上昇温度が−35℃以上の粘着剤層を含む積層体を用いることが提案されている。
【0012】
更に、特許文献12には、モスアイ構造と同程度の微細凹凸構造を有するワイヤグリッド偏光板に固定フィルム(保護フィルム)を適用した積層体が提案されている。具体的には、ワイヤグリッド偏光板と固定フィルムの積層体について、80℃、24時間加熱後の90度剥離力が0.03〜0.50N/25mmであり、固定フィルム剥離前後の600nmにおける平行ニコル時の透過率の低下値が2%以下であるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許4368384号明細書
【特許文献2】特許4368415号明細書
【特許文献3】特開2009−057394号公報
【特許文献4】特開2010−214853号公報
【特許文献5】特開2011−013496号公報
【特許文献6】特開2010−077168号公報
【特許文献7】特開2011−006524号公報
【特許文献8】特開2011−042779号公報
【特許文献9】特開2010−107858号公報
【特許文献10】特開2010−120348号公報
【特許文献11】特開2011−088356号公報
【特許文献12】特開2011−033869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、間隔又はピッチサイズがナノオーダーで形成された複数の凸部を表面に有する反射防止フィルム(以下、モスアイフィルムともいう。)と保護フィルムとの積層体について種々検討を行った。
【0015】
しかし、特許文献3〜8のような保護フィルムを用いた積層体では、マイクロオーダーの凹凸に対する接着性と再剥離性の両立は可能であっても、可視光波長以下の凹凸構造を有するモスアイフィルムにおいては、その性能維持に必要なレベルの再剥離性(糊残り防止性)を得ることはできなかった。
【0016】
すなわち、観察者がディスプレイの表示を視認する等の使用時には、保護フィルムは剥がされて用いられる必要があるが、従来の保護フィルムをモスアイフィルムに対して貼り付け、一定時間経過してから剥離を行うと、モスアイフィルムの凹凸の隙間に粘着剤の糊残り(汚染)が起こって凹凸が目詰まりを起こす、又は、微細凹凸表面に対する接着性が不充分であり剥がれやすくなる等の課題があることがわかった。
【0017】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、一時粘着性に優れ、かつ剥がした後に糊残りが起こりにくい保護フィルムが表面に貼り付けられた反射防止フィルムを有する積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、モスアイフィルムの表面に糊残りが起こる原因について詳細な検討を行ったところ、一般的な、平坦な面を有する低反射フィルム(例えば、LR(Low Reflection)フィルム、AR(Anti Reflection)フィルム、表面にミクロンオーダーの凹凸パターンを有する防眩性(AG)フィルム等に対して用いたときに良好な密着性が得られ、かつ糊残りが起こらない粘着剤であったとしても、ナノオーダーの凹凸パターンをもつモスアイフィルムに対して用いると不良を起こす場合がある点に着目した。
【0019】
ナノオーダーの微細な凹凸構造がパターニングされた表面は、通常の平滑な表面に比べ表面積が大きいため、凹凸表面への接着性の良好な保護フィルムは非常に強固に接着されてしまい、オートクレーブ処理等で凹凸構造に深く食い込んだ粘着剤を剥離した際に、凹凸内部の粘着剤が引きちぎれ、汚染として残留してしまうおそれがある。また、モスアイフィルムの凸部は、ナノオーダーの微細構造であるため、従来では問題にならない程度の糊残りでも性能変化を生じるおそれがある。これらの現象により、従来の再剥離用粘着剤は汚染が発生するため使用が難しく、特にオートクレーブ処理後又は熱処理後には汚染の発生が著しい。
【0020】
そこで本発明者らは鋭意検討を行い、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする共重合体を架橋剤で架橋させることで得られる粘着剤を作製するに当たり、上記共重合体の重量平均分子量を一定の範囲に限定するとともに、単量体成分となる複数種のモノマーのそれぞれについて、アルキル基の炭素数、質量比等を制限し、更に、上記共重合体に占める一定の分子量以下の低分子成分の上限を定めて形成した粘着層を備える保護フィルムをモスアイフィルム上に適用することによって、モスアイフィルムの表面に糊残りを生じさせず、かつ充分な接着性をもつ、保護フィルムとモスアイフィルムからなる積層体を得ることができることを見いだした。こうして本発明者らは、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0021】
すなわち、本発明の一側面は、反射防止フィルム(モスアイフィルム)と、該反射防止フィルム上に貼り付けられた保護フィルムとを有し、該反射防止フィルムの表面は、隣り合う凸部の頂点間の幅が可視光波長以下である複数の凸部を有し、該保護フィルムは、支持フィルムと、該反射防止フィルムと接する粘着層とを有し、該粘着層は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を架橋剤(B)で架橋させて形成された材料からなる層であり、該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、60万以上、150万未満であり、該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、単量体成分全体を100質量%としたときに、非環状の炭素数4〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を70〜98質量%含有し、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(b)を1.5〜25質量%含有し、該架橋剤(B)との間で反応性を示す官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー(c)を0.5〜5質量%含有する単量体成分を重合して形成されたものであり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)測定により得られる、該(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)全体の面積を100%としたときの、分子量が10万以下の成分が占める面積割合は、3.0%未満である積層体である。
【0022】
上記積層体の構成としては、このような構成要素を必須として形成されるものである限り、その他の構成要素により特に限定されるものではない。以下、上記積層体の各構成要素及びその好ましい形態について詳述する。なお、下記積層体の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、上記積層体の好ましい形態である。
【0023】
上記積層体は、反射防止フィルムと、該反射防止フィルム上に貼り付けられた保護フィルムとを有する。上記反射防止フィルムは、基材上に貼り付けられることで、基材面で起こる反射を低減することができ、例えば、本発明の積層体を表示装置の前面板上に貼り付けることで、外光反射による周囲(例えば、室内での蛍光灯)の映り込みが少ない良好な表示を行う表示装置を得ることができる。
【0024】
上記積層体が貼り付けられる基材の材質は特に限定されず、例えば、ガラス、プラスチック、金属等が挙げられる。基材が半透明であるか、不透明であるかは限定されない。不透明な基材に対しては不透明体の表面反射防止効果となり、例えば、黒色の基材の場合には漆黒の見栄えが得られ、着色した基材の場合には高色純度の見栄えが得られるため、意匠性の高い物品が得られる。上記積層体が好適に用いられる物品としては、表示装置の構成部材(自発光型表示素子、非自発光型表示素子、光源、光拡散シート、プリズムシート、偏光反射シート、位相差板、偏光板、前面板、筐体等)、レンズ、窓ガラス、額縁ガラス、ショウウインドウ、水槽、印刷物、写真、塗装物品、照明機器等が挙げられる。
【0025】
上記反射防止フィルムの表面は、隣り合う凸部の頂点間の幅が可視光波長以下である複数の凸部を有する。本明細書において「可視光波長以下」とは、一般的な可視光波長域の下限である380nm以下をいい、より好ましくは300nm以下であり、更に好ましくは可視光波長の約1/2である200nm以下である。凸部の頂点間の幅が400nmを超えると青の波長成分で色付くことがあるが、幅を300nm以下とすることで充分にその影響は抑制され、幅を200nm以下とすることでほとんど全く影響を受けない。
【0026】
上記反射防止フィルムは、表面に上記凹凸構造を有している限り、他の構成を有していてもよく、例えば、上記凸部を支持するフィルム基材を有していてもよい。このようなフィルム基材は、凸部を構成する材料と異なる材料で構成されていてもよく、用途によっては半透明又は不透明であってもよい。また、上記反射防止フィルムは、上記凸部を有する構造を、適用する物品に貼り付けるための粘着層を有していてもよい。この場合、上記粘着層は、凸部が形成された面と逆側の面に形成される。なお、上記反射防止フィルムは、フィルム基材、粘着層等を用いないで、適用する基材に直接形成されてもよい。
【0027】
上記保護フィルムは、支持フィルムと、上記反射防止フィルムと接する粘着層とを有する。上記保護フィルムは、被着体(反射防止フィルム)に一旦貼り付けられた後、使用時に剥がすことができるものであり、良好な接着性を有するとともに、保護フィルムを剥がしたときに糊残りを生じさせず、反射防止フィルムの特性を劣化させない。
【0028】
上記粘着層は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を架橋剤(B)で架橋させて形成された材料からなる層である。すなわち、上記粘着層は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物を架橋反応に供することにより得られる。この組み合わせからなる粘着剤組成物を用いて形成された粘着層は、良好な耐熱性、透明性及び耐久性を有し、保護フィルムとして好適に用いられる。なお、上記粘着層の厚みは、1〜50μmであることが好ましく、作業性、コスト及び糊残りの観点から3〜10μmであることがより好ましい。
【0029】
上記共重合体(A)の重量平均分子量は60万以上、150万未満である。上記重量平均分子量が60万未満である場合、モスアイフィルムの表面凹凸の隙間に、低分子量体(分子量が10万以下の成分)が移行することで汚染の原因となる。一方、上記重量平均分子量が150万以上である場合、重合の制御が不充分となって分子量分布が大きくなり、低分子量体の割合が増加するおそれがある。上記共重合体(A)の重量平均分子量は、GPC測定により得られた曲線に基づき、確認することができる。また、上記共重合体(A)がリビングラジカル重合で合成される場合、重量平均分子量が高いと、重合時間の増加に伴うコストアップ、低固形分化による環境への悪影響等も懸念される。
【0030】
また、上記重量平均分子量を80万〜140万にすることで、低分子量体を削減し、架橋反応も十分に行え、汚染をより好ましく低減することができる。上記重量平均分子量は、100万〜130万とすることが更に好ましい。
【0031】
上記共重合体(A)は、単量体成分全体を100質量%としたときに、非環状の炭素数4〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を70〜98質量%含有する単量体成分を重合して形成されたものである。これにより、他の成分の導入を確保しながら、得られる粘着層に適切な粘着力を付与することができる(密着性向上)。また、同様の観点から、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を75〜94質量%とすることがより好ましく、77〜92質量%とすることが更に好ましい。
【0032】
上記共重合体(A)は、単量体成分全体を100質量%としたときに、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(b)を1.5〜25質量%含有する単量体成分を重合して形成されたものである。これにより、粘着層の凝集力及び貯蔵弾性率が向上し、凹凸構造に深く食い込んだ粘着層を引き剥がした際に、引きちぎれ等による残留汚染を防ぐことができる。なお、上記(b)成分が多すぎると粘着層が固くなりすぎて、引き剥がしの際にジッピング(引き剥がし音が発生すること)が生じ、その際モスアイ表面を傷つけるおそれがある。このような観点から、上記(b)成分の含有量としては、5〜21質量%であることがより好ましく、6〜20質量%であることが更に好ましい。
【0033】
上記共重合体(A)は、単量体成分全体を100質量%としたときに、架橋剤(B)との間で反応性を示すモノマー(c)を0.5〜5質量%含有する単量体成分を重合して形成されたものである。これにより、共重合体(A)は、架橋剤(B)を介して充分に架橋することができ、未架橋の一部の成分が染み出すことを防止する。一方、上記(c)成分が多すぎる場合、架橋が過度になり、粘着力が低下するおそれがある。また、極性の高いモノマーである(c)成分の共重合部数が多すぎると、重合の制御が不充分となり、分子量10万以下の成分の割合が増加し、貼り跡が残りやすくなるという悪影響が生じうる。このような観点から、上記(c)成分の含有量としては、1〜4質量%であることがより好ましく、2〜3質量%であることが更に好ましい。
【0034】
GPC測定により得られる、上記共重合体(A)全体の面積を100%としたときの、分子量が10万以下の成分が占める面積割合は、3.0%未満である。これにより、保護フィルム引き剥がし時の凹凸面への糊残りを充分に低減することができる。
【0035】
上記粘着剤組成物中における架橋剤(B)は、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、及び、金属キレート系架橋剤からなる群より選択される少なくとも一つであることが好ましい。架橋反応が穏やかで、得られる粘着層に適度な強度と柔軟性を付与することができるという観点からは、架橋剤(B)としてイソシアネート系架橋剤を用いることが特に好ましい。
【0036】
上記架橋剤(B)がイソシアネート系架橋剤である場合、上記共重合体(A)中の、架橋剤(B)との間で反応性を示す官能基を有するモノマー(c)は、水酸基含有モノマーであることが好ましく、特に好ましくは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。これにより、安定性の高い架橋構造を、適切な割合で粘着層中に形成することができる。
【0037】
上記架橋剤(B)は、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、又は、金属キレート系架橋剤である場合、上記(メタ)アクリル系モノマー(c)は、カルボキシル基含有モノマー又はアミノ基含有モノマーであることが好ましい。特に好ましくは、カルボキシル基含有モノマーであればエチレン性不飽和カルボン酸であり、アミノ基含有モノマーであればモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートである。
【0038】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の分子量分布は、1.2〜3.0であることが好ましい。この範囲とすることにより、低分子量成分の発生量を減らすことができ、粘着層の一部が保護フィルムから反射防止フィルムの凹凸層側に流れ込むことを防ぐことができる。
【0039】
GPC測定により得られる、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)全体の面積を100%としたときの、分子量が10万以下の成分が占める面積割合は、1.0%以上であることが好ましい。共重合体の生産効率を考慮すると、少なくともこの下限よりも大きいことが好ましい。
【0040】
上記架橋剤(B)の配合量は、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜15質量部であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、充分な粘着力の確保と、未反応の架橋剤が残存することによる糊残りの発生の防止の両立が可能となる。
【0041】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)は、ブチルアクリレートであることが好ましい。これにより、分子量分布を狭くすることができ、低分子量成分の発生を低減させることができるので、糊残りの発生の防止が可能となる。
【0042】
上記脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(b)は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートであることが好ましい。これにより、モスアイフィルムの凸部側に対する良好な密着性を得ることができ、また、粘着剤に適切な強度を持たせることで、粘着剤の引きちぎれによる糊残りの発生の防止が可能となる。
【0043】
上記反射防止フィルムの複数の凸部同士の間隙は、該反射防止フィルムの内部方向に尖った形状を有していることが好ましい。複数の凸部同士の間隙とは、複数の凸部間に形成される凹部のことである。なお、尖った形状は、一つの凹部に対し複数存在していてもよい。凹部の先端が尖っている場合、凹部の先端が平坦な場合と比べ、糊残りによる凸部の見かけ上の形状(反射防止フィルムの表面形状)が変化しやすく、反射防止特性の低下が起こりやすい。また、凹部の先端が尖っている形状は、凹部の先端が平坦な形状に比べ、反射防止特性に優れている。したがって、本発明における保護フィルムは、このような凸形状又は凹形状を有する反射防止膜に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、モスアイフィルムと、モスアイフィルムに対する一時粘着性に優れ、かつ剥がした後に糊残りが起こりにくい保護フィルムとの積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】実施形態1の積層体の断面模式図である。
図2】実施形態1のモスアイフィルムの断面模式図である。
図3】実施形態1におけるモスアイフィルムの凸部同士の間隙である凹部の形状を示す断面模式図であり、凹部の先端が曲率を有して尖っている形状を示している。
図4】実施形態1におけるモスアイフィルムの凸部同士の間隙である凹部の形状を示す断面模式図であり、凹部の先端が尖っている形状を示している。
図5】実施形態1におけるモスアイフィルムの凸部同士の間隙である凹部の形状を示す断面模式図であり、凹部の先端が鋭く尖っている形状を示している。
図6】実施形態1におけるモスアイフィルムの凸部同士の間隙である凹部の形状を示す断面模式図であり、凹部の先端が複数の尖った形状を示している。
図7】実施形態1におけるモスアイフィルムの凸部同士の間隙である凹部の形状を示す断面模式図であり、凹部の先端が平坦であり、全体として凹部が台形状を有したものを示している。
図8】実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図であり、凸部の単位構造が円錐状の場合を示す。
図9】実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図であり、凸部の単位構造が四角錐状の場合を示す。
図10】実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図であり、凸部の単位構造が底点から頂点に近づくほど傾斜が緩やかになる形状である場合を示す。
図11】実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図であり、凸部の単位構造が底点から頂点に近づくほど傾斜が緩やかになる形状である場合を示す。
図12】実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図であり、凸部の単位構造が底点と頂点の間の領域で傾斜が一部急峻になる形状である場合を示す。
図13】実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図であり、凸部の単位構造が底点から頂点に近づくほど傾斜が急峻になる形状である場合を示す。
図14】実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図であり、凸部の底点の高さが隣り合うもの同士で異なり、隣り合う凸部の間に鞍部及び鞍点が存在している形状である場合を示す。
図15】実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図であり、隣り合う凸部の接点が複数存在し、隣り合う凸部の間に鞍部及び鞍点が存在している形状である場合を示す。
図16】実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図であり、隣り合う凸部の接点が複数存在し、隣り合う凸部の間に鞍部及び鞍点が存在している形状である場合を示す。
図17】モスアイフィルムの凸部を詳細に示した斜視模式図であり、凸部が釣鐘型であり鞍部及び鞍点を有する場合の拡大図である。
図18】モスアイフィルムの凸部を詳細に示した斜視模式図であり、凸部が針状型であり鞍部及び鞍点を有する場合の拡大図である。
図19】モスアイ構造の凸部及び凹部をより拡大した平面模式図である。
図20図19におけるA−A’線に沿った断面、及び、図19におけるB−B’線に沿った断面を示す模式図である。
図21】実施形態1のモスアイフィルムが低反射を実現する原理を示す模式図であり、モスアイフィルムの断面構造を示す。
図22】実施形態1のモスアイフィルムが低反射を実現する原理を示す模式図であり、モスアイフィルムに入射する光の感じる屈折率の変化を示す。
図23】実施形態1の保護フィルムの断面模式図である。
図24】貼り跡の評価基準として用いた異なる反射率をもつサンプルの写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施形態を掲げ、本発明について図面を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0047】
実施形態1
図1は、実施形態1の積層体の断面模式図である。図1に示すように、実施形態1の積層体10は、反射防止フィルム12と、上記反射防止フィルム12上に貼り付けられた保護フィルム13とを有する。実施形態1の積層体は、基材11上に貼り付けられており、基材11表面で生じる反射を低減することができる。
【0048】
実施形態1において反射防止フィルム12にはモスアイフィルムが用いられており、モスアイフィルム12の表面に入射してきた光は、そのほとんどが、空気とモスアイフィルム12との界面、及び、モスアイフィルム12と基材11との界面を透過するので、従来の光干渉タイプの反射防止フィルムに比べ、はるかに優れた反射防止効果を得ることができる。
【0049】
実施形態1における積層体10は、例えば、表示装置の構成部材(自発光型表示素子、非自発光型表示素子、光源、光拡散シート、プリズムシート、偏光反射シート、位相差板、偏光板、前面板、筐体等)、レンズ、窓ガラス、額縁ガラス、ショウウインドウ、水槽、印刷物、写真、塗装物品、照明機器等に対して用いることができる。したがって、上記基材11の材質は、モスアイフィルム12を載置することができる限り、ガラス、プラスチック、金属等、特に限定されない。基材11が半透明であるか、不透明であるかは限定されない。不透明な基材に対しては不透明体の表面反射防止効果となり、例えば、黒色の基材の場合には漆黒の見栄えが得られ、着色した基材の場合には高色純度の見栄えが得られるため、意匠性の高い物品が得られる。基材11の形状は特に限定されず、例えば、フィルム、シート、射出成形品、プレス成形品等の溶融成形品等が挙げられる。
【0050】
実際の使用の際には、保護フィルム13は、モスアイフィルム12から剥がして用いられる。人間が視認することができる様々な部材の最表面をモスアイフィルムが配置された面で構成することで、低反射特性に優れた表面を形成することができ、外光反射による周囲の映り込みが抑制された、良好な視認性を得ることができる。しかしながら、モスアイフィルム12は、外的要因によりキズや汚れがつきやすく、その影響によりモスアイフィルム12の品質の劣化を起こす可能性がある。そこで、実施形態1では、モスアイフィルム12の表面に対して保護フィルム13を貼り付けた積層体10を物品の最表面に適用し、外的要因からモスアイフィルム12を保護している。
【0051】
実施形態1においてモスアイフィルム12の表面は、保護フィルム13が剥がされた後では外界に露出する部分であるので汚れがつきやすい。そのため、汚れの除去を容易とするために、モスアイ構造体の成型材料及び微細構造による表面積の増大効果を用いて親水性表面とすることが好ましい。これにより、汚れを水拭きすることが容易となり、性能維持性に優れたモスアイフィルム12を得ることができる。
【0052】
実施形態1における保護フィルム13は、支持フィルム21上に粘着層22が配置された構成を有しており、粘着層22が配置された面が、モスアイフィルム12の凸部のある面に対して貼り付けられる。実施形態1の保護フィルム13とモスアイフィルム12との組み合わせ(積層体)によれば、後述する粘着層22の特性により、保護フィルム13が一定時間貼り付けられ、その後、保護フィルム13が剥がされた場合であっても、モスアイフィルム12の凹凸の間に粘着剤が残留しないので、モスアイフィルム12の凹凸に目詰まりが起こることによる反射防止効果の低下を妨げ、優れた反射防止効果を維持することができる。
【0053】
このように、実施形態1における保護フィルムは、表面を保護するとともに、密着性に優れ、かつ剥離時に被着体の汚染のない、モスアイフィルムに対して好適な保護フィルムである。
【0054】
以下、実施形態1におけるモスアイフィルム(反射防止フィルム)について詳述する。図2は、実施形態1のモスアイフィルムの断面模式図である。図2に示すように、実施形態1の反射防止フィルム12は、反射防止処理の対象となる基材11上に設けられている。
【0055】
図2に示すように、モスアイフィルム12の表面は、隣り合う凸部12aの頂点の間隔(非周期構造の場合の隣り合う凸部の幅)又はピッチ(周期構造の場合の隣り合う凸部の幅)が可視光波長以下である凸部12aが複数存在する構造を有している。モスアイフィルム12は、このような凸部12aと、凸部12aの下(基材11側)に位置する下地部12bとで構成されている。
【0056】
隣り合う凸部12aの頂点間の幅は、可視光波長以下であり、言い換えれば、モスアイフィルム12の表面には、複数の凸部12aが可視光波長以下の間隔又はピッチをもって並んで配置されている。なお、実施形態1における凸部12aは、その配列に規則性を有していない場合(非周期性配列)に不要な回折光が生じないという利点があり、より好ましい。
【0057】
下地部12bには、凸部12aを成型する際に生じる樹脂残膜層12x、モスアイ構造を形成し保持するためのフィルム基材12y、及び、基材11と貼り合せるための粘着層12zを有している。樹脂残膜層12xは、凸部12aを形成する際に、凸部の一部とならなかった残膜であり、凸部12aと同じ材質で構成されている。
【0058】
フィルム基材12yの材質には、例えば、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等である製品名「ゼオノア」(日本ゼオン社製)、製品名「アートン」(JSR社製)等)のポリオレフィン系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエステル、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂材料等を用いることができる。フィルム基材12yの表面には、密着性を上げるためのアンカー処理層、ハードコート層等が形成されていてもよい。
【0059】
粘着層12zの材質は特に限定されない。粘着層12zの基材11側の表面上には、粘着層12zを保護するためのセパレーターフィルム(例えば、PET:ポリエチレンテレフタレート)が貼り付けられていてもよい。
【0060】
図3図7は、実施形態1におけるモスアイフィルムの凸部同士の間隙である凹部の形状を示す断面模式図である。図3は、凹部の先端が曲率を有して尖っている形状を示し、図4は、凹部の先端が尖っている形状を示し、図5は、凹部の先端が鋭く尖っている形状を示し、図6は、凹部の先端が複数の尖った形状を有する形状を示し、図7は、凹部の先端が平坦であり、全体として凹部が台形状を有したものを示している。なお、図6に示すモスアイフィルムは、凸部の観点からは、複数の凸部12a間に小さな盛り上がり部12cを有した形状といえる。
【0061】
図3図6に示す凹部を間隙に有する複数の凸部が形成されたモスアイフィルム12は、凹部14の先端がモスアイフィルム12の内部側に向かって尖った形状を有している。そして、モスアイフィルム12の凸部12a同士の間隙である凹部14の一部に粘着剤(貼り跡)23が堆積している。このようなモスアイフィルム12の表面に対して保護フィルムの粘着剤23による糊残り(汚染)が起こったときに、凸部12aそのものの変形については起こっていないが、粘着剤23の汚染によって、凸部の見かけ上の形状は変化している。具体的には、高さ(同様に、アスペクト比:高さ/間隔又はピッチ)の値及び形状変化に伴う有効屈折率分布が相違する。そのため、モスアイフィルム12の特性にも変化が起こり、反射防止特性の低下が特に大きくなる。一方、図7に示す凹部14を間隙に有する複数の凸部12aが形成されたモスアイフィルム12は、もともと凸部12a同士の間に平坦な面が形成されているので、粘着剤23の糊残りによる汚染が起こったとしても、見かけ上の構造の変化は少ない。
【0062】
したがって、糊残りの問題は、特に図3図6に示す凸部を有する、又は、凹部を形成するモスアイフィルムに顕著である。また、図3図6に示すような凹部の先端が尖った形状となるモスアイフィルムは、汚染前における反射防止特性の観点からも、図7に示すような凹部の先端が平坦な面を有するモスアイフィルムに比べて優れている。したがって、本発明における保護フィルムは、特にこのようなモスアイフィルムに対して好適に用いられる。
【0063】
以下、実施形態1のモスアイフィルムの凸部に関して、より詳細に説明する。
【0064】
図8及び図9は、実施形態1のモスアイフィルムの斜視模式図である。図8は凸部の単位構造が円錐状の場合を示し、図9は凸部の単位構造が四角錐状の場合を示す。図8及び図9に示すように、凸部12aの頂上部は頂点tであり、各凸部12a同士が接する点が底点bである。図8及び図9に示すように、隣り合う凸部12aの頂点間の幅wは、凸部12aの頂点tからそれぞれ垂線を同一平面上まで下ろしたときの二点間の距離で示される。また、凸部12aの頂点から底点までの高さhは、凸部12aの頂点tから底点bの位置する平面まで垂線を下ろしたときの距離で示される。
【0065】
実施形態1のモスアイフィルムにおいて、隣り合う凸部12aの頂点間の幅wは380nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。なお、図8及び図9においては、凸部12aの単位構造として円錐及び四角錐を例示したが、実施形態1におけるモスアイフィルムの表面は、頂点及び底点が形成され、かつ可視光波長以下に凸部の間隔又はピッチが制御された構造を有していれば、その単位構造は特に限定されず、例えば、図10及び図11に示すような底点から頂点に近づくほど傾斜が緩やかになる形状(釣鐘型、ベル型又はドーム型)、図12に示すような底点と頂点の間の領域で傾斜が一部急峻になる形状(サイン型)、及び、図13に示すような底点から頂点に近づくほど傾斜が急峻になる形状(針状型)、錐体の斜面に階段状のステップのある形状等であってもよい。
【0066】
また、実施形態1において凸部は複数の配列性を有していてもよく、更には配列性がなくてもよい。すなわち、凸部12a同士が接する点である底点が隣り合う凸部同士で同じ高さとなっている形態に限らない。例えば、図14図16に示すように、各凸部12a同士が接する表面上の点(接点)の高さが複数存在する形態であってもよい。このとき、これらの形態には鞍部が存在している。鞍部とは、山の稜線のくぼんだ所をいう(広辞苑第五版)。ここで、一つの頂点tを有する凸部を基準としてみたときに、その頂点tよりも低い位置にある接点は複数存在して鞍部を形成しており、本明細書では、任意の凸部の周りにある最も低い位置にある接点を底点bとし、頂点tよりも下に位置し、かつ底点bよりも上にあって鞍部の平衡点となる点を鞍点sともいう。この場合には、凸部12aの頂点間の幅wが隣り合う頂点間の距離に相当し、高さhが頂点から底点までの垂直方向の距離に相当することになる。
【0067】
以下、より詳細に説明する。特に、一つの頂点を有する凸部を基準としてみたときに、隣り合う凸部の接点は複数存在しており、頂点tよりも低い位置にあって鞍部(鞍点)を形成している場合の例を用いて示す。図17及び図18は、モスアイフィルムの凸部を詳細に示した斜視模式図である。図17は、釣鐘型であり鞍部及び鞍点を有する場合の拡大図であり、図18は、針状型であり鞍部及び鞍点を有する場合の拡大図である。図17及び図18に示すように、凸部12aの一つの頂点tに対して、その頂点tよりも低い位置にある隣り合う凸部の接点は複数存在しており、すなわち鞍部を有している。図17及び図18を比較して分かるように、釣鐘型と針状型とでは、鞍部の高さは、釣鐘型においてより高く形成されやすい。
【0068】
図19は、モスアイ構造の凸部及び凹部をより拡大した平面模式図である。図19に示す白丸(○)の点が頂点を表し、黒丸(●)の点が底点を表し、白四角(□)が鞍部の鞍点を表している。図19に示すように、一つの頂点を中心として同心円上に底点と鞍点とが形成されている。図19では模式的に、一つの円上に6つの底点と6つの鞍点とが形成されたものを示しているが、実際にはこれに限定されず、より不規則なものも含まれる。
【0069】
図20は、図19におけるA−A’線に沿った断面、及び、図19におけるB−B’線に沿った断面を示す模式図である。頂点がa2,b3,a6,b5で表され、鞍部がb1,b2,a4,b4,b6で表され、底点がa1,a3,a5,a7で表されている。このとき、a2とb3との関係、及び、b3とb5との関係が、隣り合う頂点同士の関係となり、a2とb3との間の距離、及び、b3とb5との間の距離が、隣り合う頂点間の距離wに相当する。また、a2と、a1又はa3との間の高さ、a6と、a5又はa7との間の高さが、凸部の高さhに相当する。
【0070】
ここで、実施形態1のモスアイフィルムが低反射を実現することができる原理について説明する。図21及び図22は、実施形態1のモスアイフィルムが低反射を実現する原理を示す模式図である。図21はモスアイフィルムの断面構造を示し、図22はモスアイフィルムに入射する光の感じる屈折率(有効屈折率)の変化を示す。図21及び図22に示すように、実施形態1のモスアイフィルム12は、凸部12aと下地部12bとで構成されている。光はある媒質から異なる媒質へ進むとき、これらの媒質界面で屈折、透過及び反射する。屈折等の程度は光が進む媒質の屈折率によって決まり、例えば、空気であれば約1.0、樹脂であれば約1.5の屈折率を有する。実施形態1においては、モスアイフィルム12の表面に形成された凹凸構造の単位構造は略錐状であり、すなわち、先端方向に向かって徐々に幅が小さくなっていく形状を有している。したがって、図21及び図22に示すように、空気層とモスアイフィルム12との界面に位置する凸部12a(X−Y間)においては、空気の屈折率である約1.0から、膜構成材料の屈折率(樹脂であれば約1.5)まで、屈折率が連続的に徐々に大きくなっているとみなすことができる。光が反射する量は媒質間の屈折率差に依存するため、このように光の屈折界面を擬似的にほぼ存在しないものとすることで、光のほとんどがモスアイフィルム12中を通り抜けることとなり、膜表面での反射率が大きく減少することとなる。図21では略錘状の凹凸構造を一例として記載しているが、もちろんこれに限定されるわけではなく、上記原理によるモスアイの反射防止効果を生じる凹凸構造であればよい。
【0071】
モスアイフィルム12の表面を構成する複数の凸部の好適なプロファイルの一例としては、光学特性、機械的物性、及び、製造上の観点より、互いに隣り合う凸部間の幅(間隔又はピッチ)が20nm以上、200nm以下であり、凸部の高さが50nm以上、400nm以下である形態が挙げられる。図1図22においては、複数の凸部12aは、全体として可視光波長以下の周期の繰り返し単位をもって並んで配置されている形態を示しているが、周期性を有していない部分があってもよく、全体として周期性を有していなくてもよい。また、複数の凸部のうちの任意の一つの凸部と、その隣り合う複数ある凸部との間のそれぞれの幅は、互いに異なっていてもよい。周期性を有していない形態では、規則配列に起因する透過及び反射の回折散乱が生じにくいという性能上の利点と、パターンを製造しやすいという製造上の利点を有する。更に、図14図20に示すように、モスアイフィルム12においては、一つの凸部に対し、その周りに複数個の高さの異なる底点が形成されていてもよい。なお、モスアイフィルム12の表面は、ナノオーダーの凹凸よりも大きな、ミクロンオーダー以上の凹凸を有していてもよく、すなわち、二重の凹凸構造を有していてもよい。
【0072】
以下、モスアイフィルム12を形成する方法について説明する。まず、ガラス基板を用意し、金型(モールド)の材料となるアルミニウム(Al)をスパッタリング法によりガラス基板上に成膜する。次に、アルミニウムを陽極酸化させ、直後にエッチングを行う工程を繰り返すことによって、隣り合う穴(凹部)の底点間の距離が可視光波長以下の長さである多数の微小な穴をもつ陽極酸化層を形成する。具体的には、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング、陽極酸化、エッチング及び陽極酸化を順に行うフロー(陽極酸化5回、エッチング4回)によって、金型を作製することができる。このような陽極酸化とエッチングとの繰り返し工程によれば、形成される微小な穴の形状は、金型の内部に向かって先細りの形状(テーパ形状)となる。なお、モールドの基板はガラスに限られず、SUS、Ni等の金属材料や、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等である製品名「ゼオノア」(日本ゼオン社製)、製品名「アートン」(JSR社製)等)のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等の樹脂材料であってもよい。また、アルミニウムを成膜した基板の代わりに、アルミニウムのバルク基板を用いてもよい。なお、金型の形状は、平板状であってもロール(円筒)状であってもよい。
【0073】
実際に金型を作製した例について説明する。まず、10cm角のガラス基板を用意し、金型の材料となるアルミニウム(Al)膜を、上記ガラス基板上に、スパッタリングを用いて膜厚1.0μmで成膜した。金型の材料となるアルミニウム(Al)の膜厚は、1.0μmとした。陽極酸化の条件は、シュウ酸0.6wt%、液温5℃、80Vの印加電圧とした。陽極酸化時間を調節することで、形成される穴の大きさ(深さ)に違いが生まれる。陽極酸化時間と穴の大きさ(深さ)との関係については、下記表1に示す。エッチングの条件は、いずれの例においても、それぞれリン酸1mol/l、液温30℃、25分とした。
【0074】
【表1】
【0075】
次に、このような製造工程によって作製された金型の表面上に、透光性を有する2P(光重合性)樹脂溶液を滴下し、気泡が入らないように注意しながら、2P樹脂溶液でできた2P樹脂層上に基材(例えば、TACフィルム)を貼り合わせた。そして、紫外(UV)光を2P樹脂層に対して2J/cm照射して2P樹脂層を硬化させ、その後、硬化してできた2P樹脂フィルム及びTACフィルムの積層フィルムの剥離を行った。金型を用いて基材上に微細凹凸を形成(複製)する具体的な方法としては、上記2P法(Photo − polymerization法)の他に、例えば、熱プレス法(エンボス法)、射出成形法、ゾルゲル法等の複製法、又は、微細凹凸賦形シートのラミネート法、微細凹凸層の転写法等の各種方法を、反射防止物品の用途及び基材の材料等に応じて適宜選択すればよい。
【0076】
上記2P法によって作製されたモスアイフィルムの表面はいずれも親水性を示し、水に対する接触角は15°以下であった。表面に微細な凹凸構造を有する場合、表面積の増大効果によって、その表面が疎水性(撥水性)の材料から形成されていれば超撥水性が得られ(ロータス効果)、その表面が親水性の材料から形成されていれば超親水性が得られることが知られている。したがって、凹凸構造体の形成材料と凹凸形状を適宜選択することで、親水性から疎水性(撥水性)まで様々な表面状態を示すモスアイ反射防止体を作製することができる。モスアイ反射防止体の表面が親水性の場合、表面に付着した汚れを水拭きで除去可能となり、十分な性能維持性が発揮される。一方、モスアイ反射防止体の表面が疎水性(撥水性)の場合、水汚れが付着しにくくなるため十分な防汚性が発揮される。保護フィルムの粘着剤による汚染の観点では、モスアイ反射防止体の表面が親水性である場合において汚染が顕著に生じやすいことから、本発明の保護フィルムは親水性を示すモスアイ反射防止体に好適に用いられるものの、疎水性(撥水性)を示すモスアイ反射防止体にも適用可能である。
【0077】
金型の凹部の深さ、及び、モスアイフィルムの凸部の高さは、SEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)を用いて測定することができる。また、モスアイ反射防止体の表面の水に対する接触角は、接触角計を用いて測定することができる。
【0078】
なお、モスアイフィルムの凹凸構造(モスアイ構造体)を形成する材料としては、上述した光硬化性樹脂組成物、電子線硬化性樹脂組成物等に代表される活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、及び、熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0079】
本明細書において活性エネルギー線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーとは、有機又は無機を問わず、光重合開始剤の存在下又は不存在下で、紫外線、可視エネルギー線、赤外線等の活性エネルギー線の照射により重合し、ポリマーとなるものであればよく、ラジカル重合性、アニオン重合性、カチオン重合性等のいずれであってよい。そのようなモノマー及び/又はオリゴマーとしては、例えば、分子内にビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基(以下、アクリロイル基とメタクリロイル基をあわせて(メタ)アクリロイル基ともいう。(メタ)アクリル、(メタ)アクリレート等についても同様である。)等を有するモノマー及び/又はオリゴマーが挙げられるが、中でも活性エネルギー線照射による重合速度が速いことから、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーが好ましい。また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物等を含んでいてもよい。
【0080】
成形物の表面を親水性にする方法としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の物理的表面処理、スルホン化等の化学的表面処理、界面活性剤又は親水性物質の練り込み法、成形材料として親水基を有するポリマーの使用、親水性ポリマーによるコーティング等が挙げられる。また、ポリマー成形物表面への親水性モノマーのグラフト重合法も挙げられる。例えば、親水性皮膜が形成可能な活性エネルギー線硬化性組成物としては、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート及びアルキレンオキシド結合を分子内に持つ反応性界面活性剤を含有してなる紫外線硬化性組成物、分子内に2個以上の水酸基を持つ多官能アクリレート及びアルキレンオキシド結合を分子内に持つ反応性界面活性剤を含有してなる紫外線硬化性組成物、繰り返し数が6から20のポリエチレングリコール鎖を有する両親媒性の重合性化合物を含有してなるエネルギー線硬化性組成物、ポリウレタン(メタ)アクリレート、環構造を有するジアクリレート及びポリアルキレングリコールアクリレートを含有してなる光硬化型組成物等がある。
【0081】
活性エネルギー線により重合可能なモノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能モノマー;
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4ー(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヒドロキシエチルイソシアネート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトリレンジイソシアネート、アジピン酸ジビニル等の2官能モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアネート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート等の4官能モノマー;
ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の5官能モノマー;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能モノマー等が挙げられる。
【0082】
活性エネルギー線により重合可能なオリゴマーは、活性エネルギー線により重合可能な重合性官能基を有するオリゴマーであり、分子量500〜50000のものが好ましい。そのようなオリゴマーとしては、例えば、ビスフェノールA−ジエポキシ−(メタ)アクリル酸付加物等のエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メタ)アクリル基を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0083】
これらの活性エネルギー線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーは、単独で用いることも、2種以上の材料を混合して、例えば、モノマー同士又はオリゴマー同士を混合して用いることもでき、また、モノマーとオリゴマーを混合して用いることもできる。
【0084】
活性エネルギー線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーの選択により、表面親水性成形物のモスアイ構造体(すなわち、活性エネルギー線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーからなる賦形物の硬化物)の架橋密度を任意に制御することができる。
【0085】
また、活性エネルギー線により重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーに疎水性(撥水性)のものを選択することにより、疎水性(撥水性)の表面をもったモスアイ構造を形成することができる。
【0086】
光重合開始剤は、本発明で使用する活性エネルギー線に対して活性であり、モノマー及び/又はオリゴマー、並びに、親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマーを重合させることが可能なものであれば、特に限定されず、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤等を用いることができる。そのような光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4、4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール類等が挙げられる。
【0087】
親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマーは、分子内に親水性基を有するモノマー及び/又はオリゴマーであり親水基としては、例えば、ポリエチレングリコール基、ポリオキシメチレン基、水酸基、糖含有基、アミド基、ピロリドン基等のノニオン性親水基;カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等のアニオン性親水基、アミノ基、アンモニウム基等のカチオン性親水基;アミノ酸含有基やリン酸基/アンモニウムイオン基等の双性イオン基等が挙げられる。また、これらの誘導体であってもよく、例えば、アミノ基、アミド基、アンモニウム基、ピロリドン基等のN置換体が挙げられる。親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマーは、分子中に単数又は複数の親水基を有するものであってよく、複数の種類の親水基を有するものであってもよい。
【0088】
親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマー;
ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエイコサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラデカエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエイコサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシノナエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール構造単位を有するモノマー;
N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルピぺリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチレンビスアクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有するモノマー;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−(ビスメトキシメチル)カルバミルオキシエチルメタクリレート、N−メトキシメチルカルバミルオキシエチルメタクリレート等のアミノ基を有するモノマー;
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸等のカルボキシル基を有するモノマー;
モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等のリン酸基を有するモノマー;
(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩基を有するモノマー;
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−フェニルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸ナトリウム、(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウム、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン酸ソーダエトキシメタクリレート等のスルホン基を有するモノマー;
これらの親水基を有する分子量500〜50000の重合性オリゴマー等が挙げられる。また、親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマーとして、分子中にアミノ酸骨格を有する(メタ)アクリルモノマー及び/又はオリゴマーを用いることもできる。更に、親水性モノマー及び/又は親水性オリゴマーとして、分子中に糖骨格を有する(メタ)アクリルモノマー及び/又はオリゴマーを用いることもできる。
【0089】
以下、実施形態1における保護フィルムについて説明する。図23は、実施形態1の保護フィルムの断面模式図である。図23に示すように、実施形態1の保護フィルム13は、支持フィルム21と粘着層22とを有している。支持フィルム21の種類及び材料は、特に限定されず、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂が挙げられる。
【0090】
実施形態1における粘着層22について、以下詳述する。実施形態1において粘着層22は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)及び架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物を架橋反応に供することにより得られる。
【0091】
<(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)>
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、単量体単位として、少なくとも、非環状の炭素数4〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(b)、及び、架橋剤(B)と反応性の官能基を有するモノマー(c)を由来とする化学構造を有している。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの両方を意味する。他の類似の用語も同様に解する。
【0092】
上記共重合体(A)が、非環状の炭素数4〜9のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を由来とする単量体単位を含有することにより、得られる粘着層に適切な粘着力を付与することができる。
【0093】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)の好適な例としては、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。適切な粘着力を付与する観点から、ブチル(メタ)アクリレート又は2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。中でもブチルアクリレートを主モノマー(最も大きな質量比を占めるモノマー)とすることで分子量分布を狭くすることができ、分子量が10万以下の成分が占める割合を低下させることができる。なお、上記モノマー(a)は2種以上併用されてもよい。
【0094】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)の配合割合としては、他のモノマーの導入を確保し、かつ適切な粘着力をも発揮させる観点から、上記共重合体(A)を形成するための単量体成分全体に対して、70〜98質量%含まれるように配合されることが好ましい。より好ましくは75〜94質量%であり、更に好ましくは77〜92質量%である。
【0095】
上記共重合体(A)が、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(b)由来の化学構造を単量体単位として含有することにより、共重合体(A)のガラス転移温度を適度に上昇させ、得られる粘着層に適切な強度を持たせると共に、モスアイフィルムの凸部側に対する適度な粘着力を得ることもできる。
【0096】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(b)の好適な例としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもシクロヘキシル(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。なお、上記モノマー(b)は2種以上併用されてもよい。
【0097】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー(b)の配合割合としては、得られる粘着層に適度な強度を持たせる観点から、上記共重合体(A)を形成するための単量体成分全体に対して、1.5〜25質量%配合されることが好ましい。より好ましくは、5〜21質量%であり、更に好ましくは6〜20質量%である。
【0098】
上記共重合体(A)が、架橋剤(B)との間で反応性を示す官能基を有するモノマー(c)を単量体単位として含有することにより、架橋剤(B)を介して上記共重合体(A)を架橋させ、得られる粘着層の凝集力を向上させることができる。これにより、糊残りを有効に低減できる。
【0099】
上記モノマー(c)の好適な例としては、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0100】
上記カルボキシル基含有モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。上記水酸基含有モノマーの好適な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記アミノ基含有モノマーの好適な例としては、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、上記モノマー(c)は2種以上併用されてもよい。
【0101】
上記モノマー(c)の配合割合としては、得られる粘着層の再剥離性と粘着力のバランス、及び、重合(分子量分布)の制御の観点から、上記共重合体(A)を形成するための単量体成分全体に対して、0.5〜5質量%配合されることが好ましい。より好ましくは、1〜4質量%であり、更に好ましくは2〜3質量%である。
【0102】
上記共重合体(A)は、上記(a)〜(c)由来の化学構造以外を単量体単位として有していてもよい。上記単量体成分に含まれうる他の成分としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類等が挙げられる。単量体成分全体に占めるこれらの成分の構成割合は、適宜変更できるが、単量体成分全体に対して10質量%未満であることが好ましい。
【0103】
本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、60万以上、150万未満であることを要する。上記重量平均分子量が60万未満であると、粘着層の凝集力が不十分となり、上記積層体を各種環境で一定期間経過後、保護フィルムを剥がした際、反射防止フィルムの凹凸層への糊残りが発生する。一方、上記重量平均分子量が150万以上である場合、重合の制御が不十分となり、分子量分布が大きくなり、分子量が10万以下の成分の割合が増加するおそれがある。また、リビングラジカル重合の場合では重合時間の増加に伴うコストアップ、低固形分化による環境への悪影響等も懸念される。同様の観点から、上記重量平均分子量は、80万〜140万であることが好ましく、100万〜130万であることがより好ましい。
【0104】
上記共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.2〜3.0であることが好ましい。1.2未満のものを得ようとすると、上記共重合体(A)の生産効率を著しく落とす場合がある。一方、3.0を超える場合、上記積層体において、保護フィルムの粘着層から反射防止フィルムの凹凸層側に上記共重合体(A)の低分子量成分がブリードアウトする場合がある。同様の観点から、上記分子量分布は、1.5〜2.5であることが好ましく、1.8〜2.4であることがより好ましい。
【0105】
上記重量平均分子量及び上記分子量分布は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めることができる。詳細は後述する。
【0106】
上記共重合体(A)は、GPC測定により得られる、分子量が10万以下の成分が占める面積割合が全体の3.0%未満であることを要する。上記割合は、GPC曲線から算出することができる。上記割合が3.0%未満であると、粘着層中の上記共重合体(A)の低分子量成分が少量になるため、反射防止フィルムの凹凸層側への移行を有効に低減できる。同様の観点から、上記割合は2.5%以下であることが好ましく、2.2%以下であることがより好ましい。なお、上記割合は低いほうが好ましいので、0%であってもよい。しかし、上記共重合体(A)の生産効率等を勘案すると、上記割合は1.0%以上であることが好ましい。
【0107】
上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を得る方法は、特に限定されない。例えば、通常のフリーラジカル重合法によって得た重合体を精製して得る方法が挙げられる。
【0108】
しかしながら、リビングラジカル重合法であれば、特別な精製工程を別途必要とせず、さらに、活性点での反応が緩やかであるため、上記(a)〜(c)成分等が配合割合どおりに、各共重合体中に導入されることが期待できる。これにより、上記共重合体(A)を構成する各成分間における構成単位のばらつきが小さく、糊残り防止等の粘着層の性能を最大限引き出すことができる。従って、上記共重合体(A)は、リビングラジカル重合により得られたものであることが、特に好ましい。
【0109】
リビングラジカル重合法としては、従来公知の方法、例えば、重合制御剤として原子移動ラジカル重合剤を用いる原子移動ラジカル重合法(ATRP重合法)、可逆付加−開裂連鎖移動剤を用いる可逆付加−開裂連鎖移動による重合法(RAFT重合法)、重合開始剤として有機テルル化合物を用いる重合法等を採用することができる。これらのリビングラジカル重合法の中で、有機テルル化合物を重合開始剤として用いる方法が、分子量の制御性、及び、水系においても重合が可能であること等から好ましい。以下に、有機テルル化合物を重合開始剤として用いる方法を示す。
【0110】
<有機テルル化合物を用いるリビングラジカル重合>
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)は、例えば、下記一般式(1);
【化1】
(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、置換アリール基又は芳香族ヘテロ環基を示す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rは、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、オキシカルボニル基又はシアノ基を示す。)で表されるリビングラジカル重合開始剤(以下、有機テルル化合物Iともいう。)を用いて、単量体の混合物を重合させることにより製造することができる。
【0111】
上記Rで示される基は、具体的には次の通りである。
【0112】
上記炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、メチル基又はエチル基である。上記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。上記置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等が挙げられる。上記芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。上記置換アリール基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORで示されるカルボニル含有基(R:炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。好ましいアリール基としては、フェニル基及びトリフルオロメチル置換フェニル基が挙げられる。また、上記置換基は、1個又は2個置換されたものであることが好ましく、置換場所としては、パラ位又はオルト位が好ましい。
【0113】
上記R及び上記Rで示される各基は、具体的には次の通りである。
【0114】
上記炭素数1〜8のアルキル基としては、上記Rで示したアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0115】
上記Rで示される基は、具体的には次の通りである。
【0116】
上記アリール基、上記置換アリール基及び上記芳香族へテロ環基としては、上記Rで示した基と同様のものが挙げられる。上記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。上記オキシカルボニル基としては、−COOR(R:水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又はアリール基)で示される基が好ましく、例えば、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられる。
【0117】
上記Rで示される基の好適な例としては、アリール基、置換アリール基及びオキシカルボニル基が挙げられる。上記アリール基としては、フェニル基が好ましい。上記置換アリール基としては、ハロゲン原子置換フェニル基又はトリフルオロメチル置換フェニル基が好ましい。また、上記置換基は、ハロゲン原子の場合は、1〜5個置換されたものであることが好ましい。アルコキシ基又はトリフルオロメチル基の場合は、上記置換基は、1個又は2個置換されたものであることが好ましい。1個置換の場合の置換場所としては、パラ位又はオルト位が好ましく、2個置換の場合の置換場所としては、メタ位が好ましい。上記オキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基が好ましい。
【0118】
上記一般式(1)で示される有機テルル化合物Iとしては、Rが、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRが、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rが、アリール基、置換アリール基又はオキシカルボニル基で示される化合物が好ましい。より好ましくは、Rが、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRが、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rが、フェニル基、置換フェニル基、メトキシカルボニル基又はエトキシカルボニル基で示される化合物である。
【0119】
一般式(1)で示される有機テルル化合物の例は、具体的には次の通りである。
【0120】
上記有機テルル化合物としては、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン[1−(1−メチルテラニル−エチル)−4−トリフルオロメチルベンゼン]、1−(1−メチルテラニル−エチル)−3,5−ビス−トリフルオロメチルベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、2−メチル−2−メチルテラニル−プロパナール、3−メチル−3−メチルテラニル−2−ブタノン、2−メチルテラニル−エタン酸メチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−エタン酸エチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート]、2−(n−ブチルテラニル)−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート]、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、(フェニルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−フェニルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−フェニルテラニル−プロピル)ベンゼン等が挙げられる。
【0121】
上記メチルテラニル、上記1−メチルテラニル、及び、上記2−メチルテラニルの各部分は、それぞれエチルテラニル、1−エチルテラニル、2−エチルテラニル、ブチルテラニル、1−ブチルテラニル又は2−ブチルテラニルに置換されたものであってもよい。
【0122】
上記有機テルル化合物の例のうち、好ましくは、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン[1−(1−メチルテラニル−エチル)−4−トリフルオロメチルベンゼン]、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート]、2−(n−ブチルテラニル)−2−メチルプロピオン酸エチル[エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート]、1−(1−メチルテラニル−エチル)−3,5−ビス−トリフルオロメチルベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル、(エチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−エチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−エチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−エチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−エチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−エチルテラニルプロピオニトリル、(n−ブチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−n−ブチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−n−ブチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−n−ブチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−n−ブチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−n−ブチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−n−ブチルテラニルプロピオニトリルである。
【0123】
これらの一般式(1)で表される有機テルル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
本実施形態における重合工程においては、上記有機テルル化合物に加え、重合促進剤としてアゾ系重合開始剤を添加してもよい。アゾ系重合開始剤としては、通常のラジカル重合に用いる開始剤であれば特に限定されないが、例示するなら2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
【0125】
上記アゾ系重合開始剤を使用する場合、重合開始剤である上記一般式(1)で示される有機テルル化合物1molに対して、好ましくは0.01〜100mol、より好ましくは0.1〜100mol、更に好ましくは0.1〜5molの割合で使用される。
【0126】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体(A)を、リビングラジカル重合によって形成する方法は、具体的には次の例が挙げられる。
【0127】
不活性ガスで置換した容器で、上記単量体(a)〜(c)を含む混合物と、一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤と、所望によりアゾ系重合開始剤とを混合する。この時用いる不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。好ましくは、アルゴン又は窒素であり、より好ましくは、窒素である。
【0128】
上記単量体、及び、上記一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤の使用量としては、得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)(以下、リビングラジカル共重合体(A)ともいう。)の分子量又は分子量分布に応じて適宜調節すればよい。好ましい使用量の目安としては、各単量体の分子量に仕込み割合を乗じて得た値の総和を、目的とする共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)で割った値(使用量の単位はモル数)とし、場合によりその値の0.3〜3倍の量を使用する。
【0129】
本実施形態における重合工程は、無溶媒で行ってもよいが、ラジカル重合で一般に使用される有機溶媒を使用しても構わない。使用できる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、トリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。また、水性溶媒も使用でき、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール等が挙げられる。溶媒の使用量としては適宜調節すればよいが、例えば、単量体1gに対して、溶媒を0.01〜100mlとする場合が好ましく、より好ましくは、0.05〜10ml、更に好ましくは0.05〜0.5mlである。
【0130】
次に、上記方法で調製した混合物を撹拌する。反応温度及び反応時間は、得られるリビングラジカル共重合体(A)の分子量又は分子量分布に応じて適宜調節すればよいが、例えば、60〜150℃で、5〜100時間撹拌する。好ましくは、80〜120℃で、10〜30時間撹拌する。この時、圧力は常圧で行ってもよいが、加圧又は減圧しても構わない。
【0131】
反応終了後、常法により使用溶媒及び残存モノマーを減圧下除去、沈殿ろ過、再沈殿、カラム分離等を行うことにより、目的のリビングラジカル共重合体(A)を必要に応じて精製する。反応処理については、目的物に支障がなければどのような処理方法でも行うことができる。
【0132】
上記リビングラジカル重合法においては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するための各単量体を含む混合物を使用することにより、ランダム共重合体の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を得ることができる。リビングラジカル重合法によれば、上記ランダム共重合体は、単量体の種類に関係なく、反応させる単量体の比率通りの構成比率を持つ共重合体を得ることができる。
【0133】
本実施形態で用いる一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤は、優れた分子量制御及び分子量分布制御を温和な条件下で行うことができる。
【0134】
本実施形態で得られるリビングラジカル共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、反応時間、一般式(1)で表されるリビングラジカル重合開始剤(有機テルル化合物)の量により調整可能である。具体的には、分子量を増加させるためには、単量体に対する有機テルル化合物の配合割合を低減し、重合時間を増加させればよいが、これでは重量平均分子量の大きい共重合体(A)を得るには長時間を要する。そこで、重合時間の低減を図るために、重合温度を高くする、上記アゾ系重合開始剤を添加する等の措置が必要となる。ただし、重合温度が高すぎる、又は、アゾ系重合開始剤の添加量が多すぎると、共重合体(A)の分子量分布を増大させることとなるので、それとの調整が必要である点に留意すべきである。
【0135】
このようにして、重量平均分子量が60万以上、150万未満であって、分子量分布(Mw/Mn比)が3.0未満であり、かつ分子量10万以下の低分子量成分のGPC測定により得られる面積割合が全体の3.0%未満の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を得ることができる。
【0136】
<架橋剤(B)>
次に、上記粘着剤組成物の必須成分の一つである架橋剤(B)について説明する。架橋剤(B)の好適な例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。なお、架橋剤(B)は、上記共重合体(A)を構成する単量体成分のうち、架橋剤との間で反応性を示すモノマー(c)との関係で選択することが好ましい。例えば、上記単量体(c)が水酸基含有モノマーである場合は、イソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。一方、上記単量体(c)がカルボキシル基含有モノマー又はアミノ基含有モノマーである場合は、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤又は金属キレート系架橋剤を用いることが好ましい。
【0137】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含む。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート、それらのビウレット体、イソシアヌレート体、又は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体等が挙げられる。反射防止フィルムの凹凸層への濡れ性と耐久性を考慮すると、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体のような脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体が特に好ましい。
【0138】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0139】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等が挙げられる。
【0140】
金属キレート系架橋剤としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等のキレート化合物が挙げられるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。アルミニウムキレート化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート等が挙げられる。
【0141】
これらのなかでも、取扱いが容易で、更に、適度な強度と柔軟性を有する架橋構造を形成できる観点から、架橋剤(B)としてイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。そして、イソシアネート系架橋剤を使用する場合、上記共重合体(A)を構成する単量体(c)として水酸基含有モノマーを使用することが好ましい。
【0142】
なお、上記組合せの場合、ポットライフを長期化する(ゲル化を遅延させる)ため、例えば、アセチルアセトン等のキレート化剤と、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫触媒とをキレート化して添加することが好ましい。上記キレート化剤は、有機錫触媒1質量部に対して、100〜500質量部使用されることが好ましい。また、有機錫触媒の添加量としては、共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜0.1質量部であることが好ましい。
【0143】
架橋剤は、単独で1種類のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0144】
上記架橋剤(B)の配合量は、上記共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜15質量部とすることが好ましい。0.01質量部未満である場合、再剥離性が不充分となる場合があり、15質量部を超えると粘着力が不足する場合がある。また、未反応の架橋剤が残存することにより、糊残りが発生するおそれがある。同様の観点から、上記配合量は、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。
【0145】
<その他の成分>
本実施形態における粘着剤組成物に対しては、上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)及び架橋剤(B)以外に、種々の成分を添加することができる。そのような成分としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、屈折率調整剤、光拡散剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、反応性希釈剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0146】
次に、本実施形態における保護フィルム13の構成について説明する。
【0147】
<支持フィルム21について>
支持フィルム21としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等が挙げられる。なお、保護フィルム13を貼付した状態で検品作業を行う、又は、需要者の好みにより保護フィルム13を貼付した状態のままその上から視認するような使用が要求される観点からは、支持フィルム21としては透明であることが好ましい。
【0148】
支持フィルム21の厚さは特に限定されず、適宜選定されるが、10〜250μmが好ましく、より好ましくは30〜200μmの範囲である。また、上記支持フィルム21は、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法、凹凸化法等により表面処理を施してもよい。上記酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。また、上記凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は、支持フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、効果及び操作性の面から、コロナ放電処理法が好ましく用いられる。また、片面又は両面にプライマー処理を施したものを用いてもよい。
【0149】
<保護フィルム13の作製>
粘着剤組成物は、上記各種成分を撹拌下、順に添加することにより調製される。なお、粘着剤組成物は、必要に応じて希釈溶媒を用いて希釈することができる。これにより、粘着剤組成物の均一化を図り、かつ塗工に必要な粘度の調整を行うことが容易となる。
【0150】
希釈溶媒の好適な例としては、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロへキサン、シクロヘプタン等の脂肪族環状化合物類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。
【0151】
希釈溶剤の使用量は特に限定されないが、希釈溶媒を使用する場合、上記粘着剤組成物の濃度が全体の10〜60質量%となるように希釈することが好ましい。
【0152】
得られた粘着剤組成物、又は、その希釈溶液は、上記支持フィルム21上に塗布し、必要に応じて乾燥し、架橋することにより粘着層22を形成する。
【0153】
粘着剤組成物又はその希釈溶液の塗布方法としては、公知の方法、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いて所定の厚さになるように基材上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
【0154】
粘着層22の厚さは、2〜30μmが好ましく、より好ましくは5〜15μmである。また、上記乾燥は、使用した希釈溶媒を揮発させ、架橋反応を進行させるため、60〜120℃で10秒〜10分程度行うことが好ましい。
【0155】
このようにして得られた保護フィルム13の粘着層22は、必要に応じて、その露出した粘着層表面を剥離フィルムで保護し、エージング処理を行うことが好ましい。エージング処理は、20〜60℃で1〜2週間放置することが好ましい。これにより、粘着層22中の上記共重合体(A)と架橋剤(B)の架橋反応が完結され、性能の安定した粘着層22を得ることができる。なお、上記剥離フィルムは、上記支持フィルム21で例示された各種フィルム上に公知のシリコーン系、オレフィン系、フッ素系、又は、アルキッド系の剥離剤を塗布することにより得ることができる。
【0156】
<積層体の作製>
上述の方法に従い、隣り合う頂点間の幅が可視光波長以下である凸部12aを有する反射防止フィルム12を製造する。
【0157】
一方、上記工程により得られた保護フィルム13は、エージング処理後、粘着層22上に剥離フィルムが積層されている場合は剥離フィルムを除去して、剥離フィルムが積層されていない場合はそのまま、粘着層22と反射防止フィルム12の凸部側が接するようにして互いを貼り付ける。
【0158】
その後、市販のラミネーター等を用いて圧着させることにより、保護フィルム13と、反射防止フィルム12とからなる積層体10を得ることができる。なお、上記圧着の方法は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10m/分で0.01〜1MPaの加圧により行うことができる。
【0159】
以下に、実施例、比較例、及び、参考例を用いて本発明について更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定されるものではない。
【0160】
<重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の算出>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及び、分子量が10万以下の低分子量成分の含有量(面積%)を、以下の条件により求めた。
測定装置:東ソー社製の高速GPC装置「HLC−8120GPC」に、高速カラム「TSK gurd column HXL−H」、「TSK Gel GMHXL」、及び、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用いて測定した。
カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分、検出器:示差屈折率計
【0161】
<粘着力の測定>
以下の各例で得られた積層体10について、モスアイフィルム(反射防止フィルム)12と保護フィルム13の層間の粘着力を、0.3m/min又は10m/minの引き剥がし速度にて保護フィルム13の側を180°の方向に引き剥がす以外、JIS Z0237:2009に準じて粘着力(mN/25mm)を測定した。結果は、下記表2に示す。なお、引き剥がし速度0.3m/minでの粘着力は、40〜150mN/25mmであることが好ましい。また、10m/minでの粘着力は、40〜1000mN/25mmであることが好ましい。
【0162】
<貼り跡の評価>
以下の各例で得られた積層体10について、モスアイフィルム12側裏面(凸部が形成されている面とは反対側の面)を、粘着剤を用いて、平坦な黒アクリル板(スミペックス960、住友化学社製)に貼り合わせた。次に、これらの積層体10を、以下の各種耐久条件に120時間供した後、23℃、相対湿度50%にて24時間静置した。続いて、上記積層体の保護フィルムを剥がし、露出したモスアイフィルム12の凸部側に、高さ30cmの距離から蛍光灯をかざし、その反射の様子(色相の変化)を観察した。図24に示される写真の基準に基づき、◎、○、△、×の4段階にて評価した。図24は、貼り跡の評価基準として用いた異なる反射率をもつサンプルの写真図である。結果は、下記表2に示す。表2において、◎は全く反射光量の増加を感じず、貼り跡が全く残っていないもの、○はほとんど反射光量の増加を感じず、貼り跡がほとんど残っていないもの、△はやや反射光量の増加を感じ、貼り跡が残っているため、良好であるとはいえないもの、×は反射光量の増加を感じ、貼り跡が残っているため、不良品扱いとなるものを表している。
【0163】
なお、表2に示すように、耐久条件は以下の3条件とした。
1)23℃、相対湿度(RH)50%
2)80℃、乾燥条件下
3)60℃、相対湿度(RH)95%
【0164】
【表2】
【0165】
実施例1
(1)リビングラジカル重合によるランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造
金属テルル(Aldrich社製、製品名:Tellurium(−40mesh))6.38g(50mmol)をテトラハイドロフラン(THF)50mlに懸濁させ、これにn−ブチルリチウム(Aldrich社製、1.6mol/Lヘキサン溶液)34.4ml(55mmol)を、室温でゆっくり滴下した。滴下後の反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した。撹拌後の反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート10.7g(55mmol)を室温で加え、更に2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物のエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート8.98g(収率59.5%)を得た。
【0166】
単量体(a)としてブチルアクリレート(BA)を、単量体(b)としてシクロヘキシルアクリレート(CHA)を、単量体(c)として4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)(以上、いずれも東京化成社製)を、質量比77:20:3の割合で用い、以下に示すリビングラジカル重合により、BA/CHA/4HBAのランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の溶液を製造した。この共重合体の性状は、上記表2に示されている。
【0167】
<リビングラジカル重合>
アルゴン置換したグローブボックス内で、上記方法で製造したエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート68.5μL、ブチルアクリレート(同上)110g、シクロヘキシルアクリレート(同上)28.5g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(同上)4.3g、及び、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)(Aldrich社製)4.6mgを60℃で20時間反応させた。
【0168】
反応終了後、反応器をグローブボックスから取り出し、酢酸エチル500mlに溶解した後、その(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶液を活性アルミナ(和光純薬工業社製)で作製したカラムに通した。その後、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の溶液は、トルエンを添加することによりの固形分は16質量%に調製した。
【0169】
また、最終生成物についてGPCによる測定を行ったところ、重量平均分子量Mwは100万、分子量分布(Mw/Mn)は2.06であった。また、GPCチャートより、全体に占める分子量10万以下の成分の面積割合は1.95%であった。
【0170】
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で製造したランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分)と、架橋剤(B)であるイソシアヌレート型HDI(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHXR」、固形分100%)3.0質量部と、アセチルアセトン5.0質量部と、ジブチル錫ジラウレート0.025質量部とを、溶媒であるメチルエチルケトンに溶解して、固形分濃度14質量%の粘着剤組成物の溶液に調製した。
【0171】
ここで、粘着剤組成物に含まれる各成分の配合比は、上記表2のとおりである。なお、表2に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
(i)アクリル酸エステル共重合体(A)
BA:ブチルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
4−HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
(ii)架橋剤(B)
イソシアネート系架橋剤
コロネートHXR:ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート体)(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートHXR」)
(iii)重合方法
LRP:リビングラジカル重合
FRP:フリーラジカル重合
【0172】
(3)保護フィルムの作製
支持フィルム21として、厚さ38μmの帯電防止性防汚ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「PET38SLD52」)の一方の面に、上記(2)で得た粘着剤組成物を、ナイフ式塗工機により、乾燥厚さが5μmになるように塗布したのち、90℃にて1分間加熱乾燥して粘着層22を形成した。
【0173】
次いで、剥離フィルムとして、厚さ38μmの離型フィルム(リンテック社製、商品名「SP−PET381031」)の離型処理面側を、上記で得られた粘着層22の露出面側に貼合した。その後、23℃、相対湿度50%の条件下に1週間静置するエージング処理を行うことにより保護フィルム13を得た。
【0174】
(4)積層体10の作製
アクリル系樹脂からなり凸部間距離が150〜200nmであり、凸部のアスペクト比が約1.5のモスアイフィルム(反射防止フィルム)12を用意した。
【0175】
上記モスアイフィルム12としては、アクリル系樹脂からなり凸部間距離が150〜200nmであり、凸部のアスペクト比が約1.1のモスアイフィルム(反射防止フィルム)12を用意した。まず、ガラス基板を用意し、金型(モールド)の材料となるアルミニウム(Al)をスパッタリング法によりガラス基板上に成膜し、上記表1に記載した金型3の条件を用いてモスアイ成型用の金型を作製した。次に、透光性を有する2P(光重合性)樹脂溶液を金型上に滴下し、気泡が入らないように注意しながら、ローラーを用いて金型とTACフィルムを2P樹脂を介して貼り合わせた。その後、TACフィルムの側から紫外光を2J/cm照射して2P樹脂層を硬化させ、硬化した2P樹脂とTACフィルムの積層フィルムを金型から離型し、モスアイフィルム(反射防止フィルム)を作製した。作製したモスアイフィルムを光学粘着剤を用いて黒色アクリル板に貼り合わせ、反射率を測定したところ、5°入射における反射率は0.1%以下であり、非常に優れた反射防止性能を有していることが明らかとなった。
【0176】
一方、上記工程にてエージング処理が完了した保護フィルム13について、剥離フィルムを除去した。その後、上記保護フィルム13を、露出した粘着層22が上記モスアイフィルム12の凸部が形成されている側と接するように、モスアイフィルム上に重ね合わせた。
【0177】
更に、保護フィルム13とモスアイフィルム12とが重ね合わされた状態で、ラミネーターにより、0.1MPa、速度1m/minにて圧着することにより積層体10を作製した。積層体10の粘着力及び貼り跡(糊残り)の有無の評価結果は上記表2に示すとおりであった。
【0178】
実施例2〜4、及び、比較例4〜7
(1)リビングラジカル重合によるランダム共重合体からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造
単量体として、上記表2に示す種類と使用割合のものを用い、エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート及びAIBNの添加量、並びに、重合時間を調整したこと以外は実施例1と同様の条件でリビングラジカル重合を行うことにより、各種の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の溶液を製造した。各共重合体の性状を上記表2に示す。
【0179】
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で製造した各(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部(固形分)と、上記表2に示す種類と量の各架橋剤、アセチルアセトン5.0質量部とジブチル錫ジラウレート0.025質量部を、溶媒であるメチルエチルケトンに溶解して、実施例1と同様の固形分濃度を有する各種の粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0180】
(3)保護フィルムの作製
上記(2)で得られた各種の粘着剤組成物の溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして保護フィルムを得た。
【0181】
(4)積層体の作製
上記(3)で得られた保護フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。積層体の粘着力及び貼り跡の有無の評価結果は上記表2に示すとおりであった。
【0182】
比較例1
(1)フリーラジカル重合による(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造
単量体として2−エチルへキシルアクリレート(同上)と4−ヒドロキシブチルアクリレート(同上)とを、質量比95:5の割合で用い、以下に示すフリーラジカル重合により、2EHA/4HBAの(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶液を製造した。この共重合体の性状を上記表2に示す。
【0183】
<フリーラジカル重合>
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、酢酸エチル90質量部、2−エチルヘキシルアクリレート95質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート5質量部、重合開始剤2,2’−アゾビス(イソブチルニトリル)(AIBN)0.2質量部を仕込み、撹拌しながら酢酸エチルの還流温度で7時間反応させた。反応終了後、トルエンで希釈することにより固形分40質量%である(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶液を得た。
【0184】
(2)粘着剤組成物の調製
上記(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル共重合体の溶液を用い、得られる粘着剤組成物の固形分濃度を30質量%としたこと以外は実施例1と同様の方法を用いて粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0185】
(3)保護フィルムの作製
上記(2)で調製された各種の粘着剤組成物の溶液を用い、粘着層22の乾燥膜厚が20μmとなるように上記粘着剤組成物の溶液を塗布し、乾燥させたこと以外は、実施例1と同様に保護フィルムを得た。
【0186】
(4)積層体の作製
上記(3)で得られた保護フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様の方法を用いて積層体を得た。この積層体の諸特性は、上記表2に示されている。
【0187】
比較例2及び3
(1)フリーラジカル重合による(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造
単量体として、上記表2に示す種類と使用割合のものを用い、AIBNの添加量、及び、重合時間を調整したこと以外は比較例1と同様のフリーラジカル重合により、各種の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を製造した。各共重合体の性状は、上記表2に示されている。
【0188】
次に、比較例1と同様にして、粘着剤組成物の溶液を調製し、更に保護フィルム及び積層体を作製した。この積層体の諸特性は、上記表2に示されている。
【0189】
参考例1〜4
比較例2で得られた保護フィルムを用いて、モスアイフィルム12を下記表3の各フィルムに変更したこと以外は、比較例2と同様にして、積層体を作製した。すなわち、参考例1〜4における保護フィルム自体は、比較例2で用いた保護フィルムと同じである。この積層体の諸特性を上記表2に示す。
【0190】
【表3】
【0191】
以下、各評価結果についてまとめる。
【0192】
上記表2に示されるように、実施例1〜4については、粘着力及び貼り跡(糊残り)の有無の両方について良好な結果が得られた。また、アクリル酸エステル共重合体(A)中のシクロヘキシルアクリレートの配合を所定量まで増加させた実施例1〜3においては、60℃、相対湿度95%の環境下で120時間静置した後であっても、貼り跡が残らない良好な結果が得られた。
【0193】
一方、アクリル酸エステル共重合体において、GPC曲線に基づき算出される分子量10万以下の成分が占める面積割合が全体の3.0%以上である比較例1〜3、6及び7は、いずれも貼り跡の試験において良好な結果が得られなかった。比較例4は、アクリル酸エステル共重合体を構成する単量体単位として単量体(c)に由来する構造を有しないため、粘着力の測定において、粘着層で凝集破壊を生じた。比較例5は、アクリル酸エステル共重合体を合成する際の単量体(b)の配合割合が多すぎるため、10m/minの粘着力の測定においてジッピングが発生した。ジッピングが発生すると、その振動でモスアイフィルムの凸部を傷めるおそれがあるため、積層体として好ましくない。また、貼り跡の確認試験においても、実施例に比べ悪化した。比較例7は、上述のとおりアクリル酸エステル共重合体がGPC曲線に基づき算出される分子量10万以下の面積割合が3.0以上であることに加えて、重量平均分子量(Mw)が60万未満であることも貼り跡を悪化させた原因と考えられる。
【0194】
参考例1〜4に示すように、貼り跡の確認試験において要求性能を満たせなかった比較例2の保護フィルムを、モスアイフィルムではなく各種従来の反射防止フィルムに適用した積層体においては、貼り跡は問題とならなかった。すなわち、本発明に係る保護フィルムの特徴を有するものにおいてはじめて、モスアイフィルムとの積層体において良好な特性を発揮することができることが示された。
【符号の説明】
【0195】
10:積層体
11:基材
12:モスアイフィルム(反射防止フィルム)
12a:凸部
12b:下地部
12c:盛り上がり部
12x:樹脂残膜層
12y:フィルム基材
12z:粘着層
13:保護フィルム
14:凹部
21:支持フィルム
22:粘着層
23:粘着剤(貼り跡、糊残り)
図1
図2
図3
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図5
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図10
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