特許第5793275号(P5793275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5793275オレフィン重合用触媒成分及びオレフィン重合用触媒並びにそれを使用するオレフィン系重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793275
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒成分及びオレフィン重合用触媒並びにそれを使用するオレフィン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20150928BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C08F4/6592
   C08F10/00 510
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-83327(P2012-83327)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-213120(P2013-213120A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2014年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123227
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆
(72)【発明者】
【氏名】板垣 浩司
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 努
(72)【発明者】
【氏名】岩間 直
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−101034(JP,A)
【文献】 特開2007−332065(JP,A)
【文献】 特開2010−163423(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0230622(US,A1)
【文献】 特開2001−329006(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0031834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60−4/70
C08F 10/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の下記一般式[I]で表されるメタロセン化合物を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒成分。
QKLMX [I]
[式中、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子、又はハフニウム原子を表す。
K及びLは、Mに配位する縮合環であり、互いに独立して、シクロペンタジエニル環と5員環との縮合環、シクロペンタジエニル環と6員環との縮合環、又はシクロペンタジエニル環と7員環との縮合環を表す。
Qは、KとLを架橋する架橋基であり、メチレン基、エチレン基、炭素数1〜6のアルキル基を有するテトラアルキルエチレン基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルメチレン基又は珪素原子、ゲルマニウム原子、若しくはスズ原子を含有する2価の架橋基を表す。
Xは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子である。
そして、K及びLは、それぞれの2位の位置に、互いに独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、置換基を有していてもよい3−フルフリル基を有する。更に、K及びLは、それぞれの4位の位置に、互いに独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の珪素含有アルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基を有する。但し、各2位の置換基の内いずれかは、必ず、3−フリル、3−(5−メチルフリル)、3−(5−エチルフリル)、3−(5−n−プロピルフリル)、3−(5−i−プロピルフリル)、3−(5−t−ブチルフリル)、3−(5−トリメチルシリルフリル)、3−(5−トリエチルシリルフリル)、3−(5−フェニルフリル)、3−(5−トリルフリル)、3−(5−フルオロフェニルフリル)、3−(5−クロロフェニルフリル)、3−(4,5−ジメチルフリル)、3−ベンゾフリル、3−チエニル、3−(5−メチルチエニル)、3−(5−エチルチエニル)、3−(5−n−プロピルチエニル)、3−(5−i−プロピルチエニル)、3−(5−t−ブチルチエニル)、3−(5−トリメチルシリルチエニル)、3−(5−トリエチルシリルチエニル)、3−(5−フェニルチエニル)、3−(5−トリルチエニル)、3−(5−フルオロフェニルチエニル)、3−(5−クロロフェニルチエニル)、3−(4,5−ジメチルチエニル)、3−ベンゾチエニル、置換基を有していてもよい3−フルフリル基のいずれかである。]
【請求項2】
次の下記一般式 [II]で表される、メタロセン化合物を含むことを特徴とする、請求項1記載のオレフィン重合用触媒成分。
【化1】
[式中、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子、又は、ハフニウム原子を表す。
、R11は、独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、置換基を有していてもよい3−フルフリル基を表す。但し、R、R11のうち少なくとも1つは、3−フリル、3−(5−メチルフリル)、3−(5−エチルフリル)、3−(5−n−プロピルフリル)、3−(5−i−プロピルフリル)、3−(5−t−ブチルフリル)、3−(5−トリメチルシリルフリル)、3−(5−トリエチルシリルフリル)、3−(5−フェニルフリル)、3−(5−トリルフリル)、3−(5−フルオロフェニルフリル)、3−(5−クロロフェニルフリル)、3−(4,5−ジメチルフリル)、3−ベンゾフリル、3−チエニル、3−(5−メチルチエニル)、3−(5−エチルチエニル)、3−(5−n−プロピルチエニル)、3−(5−i−プロピルチエニル)、3−(5−t−ブチルチエニル)、3−(5−トリメチルシリルチエニル)、3−(5−トリエチルシリルチエニル)、3−(5−フェニルチエニル)、3−(5−トリルチエニル)、3−(5−フルオロフェニルチエニル)、3−(5−クロロフェニルチエニル)、3−(4,5−ジメチルチエニル)、3−ベンゾチエニル、又は置換基を有していてもよい3−フルフリル基のいずれかである。
、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基であり、また、隣接するR双方で6〜7員環を構成してもよく、6〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
10とR20は、互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の珪素含有アルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基、又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基であり、R10とR20で4〜7員環を構成していてもよい。
Yは、珪素又はゲルマニウムであり、X、XはXと同じ置換基を表す。]
【請求項3】
一般式[II]において、R及びR17の双方は必ず水素であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のオレフィン重合用触媒成分。
【請求項4】
一般式[II]において、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R18及びR19のいずれかひとつ以上は、水素以外の置換基であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のオレフィン重合用触媒成分。
【請求項5】
成分(A)及び(B)と任意に成分(C)を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒。
成分(A):請求項1〜請求項4のいずれかに記載のメタロセン化合物
成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物、並びに成分(A)と反応して成分(A)
をカチオンに変換することが可能な、イオン性化合物及びルイス酸からなる群より選ばれる化合物
成分(C):有機アルミニウム化合物
【請求項6】
オレフィン重合用触媒が、更に微粒子担体(D)を含むことを特徴とする請求項5に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のオレフィン重合用触媒を使用して、オレフィンの重合又は共重合を行うことを特徴とするオレフィンの重合方法。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載のオレフィン重合用触媒を使用して、エチレンの重合又は共重合を行うことを特徴とするエチレンの重合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒成分及びオレフィン重合用触媒、並びにそれを使用するオレフィン又はエチレンの重合方法に関し、詳しくは、オレフィンの重合、特にエチレンの重合において、触媒活性に優れ、高分子量のオレフィン重合体、特にエチレン重合体を製造可能である、オレフィン重合用触媒及びそれを使用するオレフィン又はエチレンの重合方法に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂は、ポリオレフィン樹脂における主要ポリマーとして各種の産業分野において汎用され、卓越した重要な産業資材として常に重要視されている。
【0003】
その中で、エチレン/α−オレフィン共重合体、プロピレン/エチレン共重合体又はプロピレン/α−オレフィン共重合体に代表されるオレフィン系共重合体は、機械的物性に優れ、硬質のものから軟質のものまで幅広い物性の重合体が製造され、その用途はフィルムやシート、繊維や織布及び不織布、各種容器や成形品、改質剤などとして工業用途から生活資材に至るまで、幅広く使用されている。
【0004】
一般的に1−ブテンや1−ヘキセンなどのコモノマーを共重合させたものは、エチレン単独重合体及びプロピレン単独重合体と比較して、柔軟性、低温衝撃性、耐環境応力亀裂性、透明性などの性能が優れることが知られている。これらの性能を更に向上させるには、高分子量を保持したまま、共重合体中のコモノマー含量を高める必要がある。加えて、メタロセン触媒に代表される錯体触媒を使用すると、共重合体中に導入されるコモノマーの分布が均一となり、上記性能を更に向上させることが知られている。
しかしながら、メタロセン系触媒に代表される錯体触媒を使用してオレフィン共重合を実施すると、一般的に得られる共重合体中のコモノマー含量が増加するに従って、共重合体の分子量が低下するという欠点が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
そのため、これらの性能を有するエチレン及びプロピレン共重合体を製造する上で、工業プロセスにおいて効率的な50〜300Cの温度範囲において高分子量のオレフィン共重合体が製造でき、更に生産性良く、すなわち高活性にオレフィン共重合体が製造可能なメタロセン触媒が要望されていた。
【0005】
そして、触媒活性に優れ、かつ高分子量のオレフィン重合体を製造可能なメタロセン触媒に関する研究として、様々な置換基を導入した架橋メタロセンを触媒成分として用いた検討がなされている。
【0006】
例えば、フルオレニル環を有する架橋メタロセン化合物を使用した触媒が高分子量のオレフィン重合体を製造できることが報告されている(例えば、特許文献1,2参照)。
また、2個のインデニル環を有する架橋メタロセン化合物(以下、架橋インデニル錯体という。)を使用した触媒が報告されており、特に2位へ置換基を導入した構造が、ポリマーの脱離反応を抑制することから検討されている。
更に、2位にメチル基を有する架橋インデニル錯体が、高分子量のエチレン、プロピレン重合体を与えることが報告されている(特許文献3、非特許文献2参照)。
また、更に2位に分岐アルキル基を有する架橋インデニル錯体が、2位にメチル基を有する錯体よりも高分子量のエチレン、プロピレン重合体を与えることが報告されているが、その触媒活性は極めて低い結果になっている(特許文献4、非特許文献3,4参照)。
【0007】
本発明者らによる検討では、これらのメタロセン触媒をオレフィン重合に用いると触媒活性と生成する重合体の分子量が不十分であることが明らかとなった。
こうした状況下に、従来技術における触媒の問題点を解消し、工業的に有利な重合温度かつ重合条件において、優れた触媒活性で高分子量のオレフィン共重合体を製造できる触媒、また、それを使用したオレフィン系重合体の製造方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−189869号公報
【特許文献2】特開2010−144035号公報
【特許文献3】特開平6−100579号公報
【特許文献4】WO2001−048034公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Macromol.Chem.Phys.1996年,197巻,3091−3097頁.
【非特許文献2】Oraganometallics 1994年, 13巻, 954−963頁.
【非特許文献3】Macromol.Chem.Phys.2005年, 206巻、1043−1056.
【非特許文献4】Edward P.Moore,Jr.Polypropylene HandBook 2nd Edition、Hanser Fachbuchverlag、2005年、133頁.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、背景技術の問題点を鑑みて、エチレンなどのオレフィンを重合する際に工業的に有利な重合温度かつ重合条件において、優れた触媒活性で十分に高い分子量を有するオレフィン重合体、特にエチレン系共重合体を製造可能な触媒及びそれを用いたオレフィンの重合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、オレフィン系共重合体の重合用触媒としてのメタロセン触媒における、その改良による技術手法によって、工業的に有利な条件にて、優れた触媒活性で十分に高い分子量を有するオレフィン系共重合体を得るべく、多面的に考察し実験的な探索を行ったところ、その過程において、特定の構造を有するメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒を用いることにより、エチレンなどのオレフィンを重合する場合に、工業的に有利な重合温度かつ重合条件において、優れた触媒活性で十分に高い分子量を有するオレフィン重合体を製造可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明者らは、上記課題を解決するための技術手法として、特定の置換基を特定の位置に有する新規なメタロセン化合物である、インデニル環の2位において、置換基を有していてもよい3−フリル基又は置換基を有していてもよい3−チエニル基或いは置換基を有していてもよい3−フルフリル基を有するメタロセン化合物が上記の課題を解決し得ることを知見し得た。
【0013】
かくして、本発明の基本構成を成すメタロセン金属錯体を含むオレフィン重合用触媒成分は、新規な特定の遷移金属化合物を使用し、その錯体はメタロセン触媒における触媒構造の配位子の化学的かつ立体的及び電子的な環境の構造に特徴を有し、それによって、工業的に有利な条件にて、優れた触媒活性で十分に高い分子量を有するオレフィン系共重合体を製造することができる。
【0014】
そのメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒成分は、本発明の基本発明を成し、構造が下記の一般式[I]で表される新規な遷移金属化合物からなるものであって、本発明において、助触媒などと組み合わされてオレフィン重合用触媒を形成する。
QKLMX [I]
[式中、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子、又は、ハフニウム原子を表す。K及びLは、Mに配位する縮合環であり、互いに独立して、シクロペンタジエニル環と5員環との縮合環、シクロペンタジエニル環と6員環との縮合環、又は、シクロペンタジエニル環と7員環との縮合環を表す。Qは、KとLを架橋する架橋基であり、Xは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子である。]
そして、K及びLは、後述するとおり、各縮合環において、各位置に各種の置換基を有し得るが、各2位の置換基の内いずれかは、必ず、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、置換基を有していてもよい3−フルフリル基であることを、顕著な特徴とし、補足的な特徴として各4位にも特定の置換基を有している。
【0015】
本発明の上述した、基本発明に対して付加的な発明(実施態様発明)としては、オレフィン重合用触媒成分におけるメタロセン錯体の化学構造をより具体化し(請求項2)、各位置の置換基を特定し(請求項3,4)、メタロセン錯体を主要触媒成分とし、助触媒成分などにも特徴を有する重合触媒を形成し(請求項5,6)、当重合触媒によるオレフィン特にエチレンの(共)重合方法を具現化する(請求項7,8)各発明である。
【0016】
かかる本発明のメタロセン化合物をオレフィン重合用触媒成分とすることにより、後述の実施例と比較例の対照により実証されるとおり、工業的に有利な条件にて、優れた触媒活性で十分に高い分子量を有するオレフィン系共重合体を製造することができるが、本発明における一般式(I)で示されるメタロセン化合物は、インデニル環の2位に、置換基を有していてもよい3−フリル基又は置換基を有していてもよい3−チエニル基などを有した、立体的かつ電子環境的に特異な構造であることを基本的な特徴としており、こうした特徴が本発明の特異性をもたらすものと推定することができる。
【0017】
本発明のオレフィン重合触媒が、上記の本発明の作用効果を奏する理由について、より具体的に考察してみると、シクロアルカジエニル環の2位に置換基を有していてもよい3−フリル基又は置換基を有していてもよい3−チエニル基などを有したことで、分子量の低下の原因であるポリマーの脱離反応が立体的に抑制され、生成する重合体の分子量を高める働きをすると考えられる。そして、活性点である中心金属周りに適度な立体環境を提供することで、オレフィンモノマーとの反応を阻害せずに不純物による触媒の失活抑制することで優れた触媒活性を奏すると考えることができる。後述の実施例と比較例の対比により実証されるとおり、シクロアルカジエニル環の2位にメチル基を配置した構造ではポリマーの脱離反応を十分に抑制できる配置環境ではない。また、シクロアルカジエニル環の2位にイソプロピル基を配置した構造では活性点である中心金属周りの立体が過度に込み合い、オレフィンとの反応が抑制されるため、顕著な触媒活性の低下が起こっていると推察される。
この結果に対して、本発明で見い出したシクロアルカジエニル環の2位に、置換基を有していてもよい3−フリル基又は置換基を有していてもよい3−チエニル基などを有する構造では以上述べたポリマー脱離反応抑制とモノマーの配位・挿入の阻害の回避を両立させることができる適度な立体環境を提供できると考えられる。
【0018】
ところで、本発明は特許文献として前掲した各文献による、従来発明とは、構成要件(発明の特定事項)と発明の効果において、顕著な差異が見られ、本発明はそれらの従来文献からは些かも窺えないといえる。
【0019】
以上において、本発明の創作の経緯と発明の基本的な構成と特徴について、概括的に記述したので、ここで本発明の全体的な構成を俯瞰して総括すると、本発明は次の(1)〜(8)の発明単位群からなるものである。
一般式[I]で表されるメタロセン化合物を使用する重合用触媒成分が基本発明(1)として構成され、(2)以下の各発明は、基本発明に付随的な要件を加え、或いはその実施の態様を示すものである。そして、(5)及び(6)の重合用触媒の発明は、本発明の課題の解決をなすための付加的な要件を規定している。なお、全発明単位をまとめて発明群と称す。
【0020】
(1)次の下記一般式[I]で表されるメタロセン化合物を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒成分。
QKLMX [I]
[式中、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子、又はハフニウム原子を表す。
K及びLは、Mに配位する縮合環であり、互いに独立して、シクロペンタジエニル環と5員環との縮合環、シクロペンタジエニル環と6員環との縮合環、又はシクロペンタジエニル環と7員環との縮合環を表す。
Qは、KとLを架橋する架橋基であり、メチレン基、エチレン基、炭素数1〜6のアルキル基を有するテトラアルキルエチレン基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルメチレン基又は珪素原子、ゲルマニウム原子、若しくはスズ原子を含有する2価の架橋基を表す。
Xは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子である。
そして、K及びLは、それぞれの2位の位置に、互いに独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、置換基を有していてもよい3−フルフリル基を有する。更に、K及びLは、それぞれの4位の位置に、互いに独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の珪素含有アルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基を有する。但し、各2位の置換基の内いずれかは、必ず、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、置換基を有していてもよい3−フルフリル基のいずれかである。)
【0021】
(2)次の下記一般式 [II]で表される、メタロセン化合物を含むことを特徴とする、(1)におけるオレフィン重合用触媒成分。
【化1】
【0022】
[式中、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子、又は、ハフニウム原子を表す。
、R11は、独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、置換基を有していてもよい3−フルフリル基を表す。但し、R、R11のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、又は置換基を有していてもよい3−フルフリル基のいずれかである。
、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基であり、また、隣接するR双方で6〜7員環を構成してもよく、6〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
10とR20は、互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の珪素含有アルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基、又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基であり、R10とR20で4〜7員環を構成していてもよい。
Yは、珪素又はゲルマニウムであり、X、XはXと同じ置換基を表す。]
【0023】
(3)一般式[II]において、R及びR17の双方は必ず水素であることを特徴とする、(1)又は(2)におけるオレフィン重合用触媒成分。
(4)一般式[II]において、RとR11は、互いに同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい3−フリル基、或いは置換基を有していてもよい3−チエニル基のいずれかであり、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R18及びR19のいずれかひとつ以上は、水素以外の置換基であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかにおけるオレフィン重合用触媒成分。
【0024】
(5)成分(A)及び(B)と任意に成分(C)を含むことを特徴とする、オレフィン重合用触媒。
成分(A):(1)〜(4)のいずれかにおけるメタロセン化合物
成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物、並びに成分(A)と反応して成分(A)
をカチオンに変換することが可能な、イオン性化合物及びルイス酸か
らなる群より選ばれる化合物
成分(C):有機アルミニウム化合物
(6)オレフィン重合用触媒が、更に微粒子担体(D)を含むことを特徴とする(5)におけるオレフィン重合用触媒。
【0025】
(7)(5)又は(6)におけるオレフィン重合用触媒を使用して、オレフィンの重合又は共重合を行うことを特徴とするオレフィンの重合方法。
(8)(5)又は(6)におけるオレフィン重合用触媒を使用して、エチレンの重合又は共重合を行うことを特徴とするエチレンの重合方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の触媒をオレフィン重合に使用することにより、従来の触媒系と比較して、工業的に有利な重合温度かつ重合条件において、高い触媒活性で、高分子量のオレフィン重合体を得ることができることから、本発明のオレフィン重合用触媒、及び該オレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合方法は、工業的な観点から非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下においては、本発明のオレフィン触媒成分及びオレフィン重合用触媒、それを用いたオレフィン重合体の製造方法について、項目毎に具体的に詳細に説明する。
【0028】
〔I〕オレフィン重合触媒成分
(1)メタロセン化合物
本発明のオレフィン重合触媒成分は、下記の一般式[I]で表される特定の置換基を有する新規なメタロセン化合物を含むことを特徴とする。
【0029】
QKLMX [I]
[式中、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子、又はハフニウム原子を表す。
K及びLは、Mに配位する縮合環であり、互いに独立して、シクロペンタジエニル環と5員環との縮合環、シクロペンタジエニル環と6員環との縮合環、又はシクロペンタジエニル環と7員環との縮合環を表す。(縮環)
Qは、KとLを架橋する架橋基であり、メチレン基、エチレン基、炭素数1〜6のアルキル基を有するテトラアルキルエチレン基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルメチレン基又は珪素原子、ゲルマニウム原子、若しくは、スズ原子を含有する2価の架橋基を表す。
Xは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子である。
そして、K及びLは、それぞれの2位の位置に、互いに独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、置換基を有していてもよい3−フルフリル基を有する。
更に、K及びLは、それぞれの4位の位置に、互いに独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の珪素含有アルキル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基を有する。但し、各2位の置換基の内いずれかは、必ず、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、置換基を有していてもよい3−フルフリル基のいずれかである。)
【0030】
一般式[I]において、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子、又は、ハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムであり、特に好ましくはジルコニウムである。
【0031】
K及びLは、Mに配位する縮合環であり、互いに独立して、シクロペンタジエニル環と5員環との縮合環、シクロペンタジエニル環と6員環との縮合環、又は、シクロペンタジエニル環と7員環との縮合環を表す。5員環として好ましいのは、芳香族の5員環であり、6員環として好ましいのは、芳香族の6員環であり、7員環として好ましいのは、環骨格に2つの二重結合を含む7員環である。具体的には、シクロペンタジエニル環との縮合環全体として、シクロペンタチオフェニル基、シクロペンタピロリル基、インデニル基、ベンゾインデニル基、ヒドロアズレニル基などが好ましく挙げられ、更に好ましくはインデニル基、ベンゾインデニル基が挙げられる。
【0032】
Qは、KとLを架橋する架橋基であり、メチレン基、エチレン基、炭素数1〜6のアルキル基を有するテトラアルキルエチレン基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルメチレン基又は珪素原子、ゲルマニウム原子若しくはスズ原子を含有する2価の架橋基を表す。また、Qは、これらの2種以上を組み合わせて構成される架橋基であってもよい。
珪素原子を含有する2価の架橋基としては、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルシリレン基、炭素数6〜16のアリール基を有するジアリールシリレン基、ジベンジルシリレン基、又は、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜16のアリール基を有するアルキルアリールシリレン基を例示することができる。
ゲルマニウム原子を含有する2価の架橋基としては、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルゲルミレン基、炭素数6〜16のアリール基を有するジアリールゲルミレン基、ジベンジルゲルミレン基、又は、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜16のアリール基を有するアルキルアリールゲルミレン基を例示することができる。
スズ原子を含有する2価の架橋基としては、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルスタニレン基、炭素数6〜16のアリール基を有するジアリールスタニレン基、ジベンジルスタニレン基、又は、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜16のアリール基を有するアルキルアリールスタニレン基を例示することができる。
【0033】
Xは、それぞれ独立して、Mとσ結合を形成する配位子である。特に限定されないが、好ましいXは、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の置換アミノ基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基などが挙げられる。
具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、フェニル基、ベンジル基、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基などを挙げることができる。
これらの中でも、ハロゲン原子、炭素数1〜7の炭化水素基が好ましく。具体的には、塩素原子、メチル基、i−ブチル基、フェニル基、ベンジル基が特に好ましい。
【0034】
一般式[I]において、炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを挙げることができる。
【0035】
炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基の骨格上の水素にハロゲンが置換されたものである。
具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ヨードメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,1,1−テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、5−クロロペンチル、5,5,5−トリクロロペンチル、5−フルオロペンチル、5,5,5−トリフルオロペンチル、6−クロロヘキシル、6,6,6−トリクロロヘキシル、6−フルオロヘキシル、6,6,6−トリフルオロヘキシルを挙げることができる。
【0036】
炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基とは、異なっていてもよい炭素数1〜6の炭化水素基3個が珪素上に置換されている置換基であり、炭素数1〜6の炭化水素とは、一般式[I]中の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基およびフェニル基を含み、フェニル基上に置換基を有していてもよい。
具体的には、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ−n−ブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリビニルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリルを挙げることができる。
【0037】
炭素数6〜16のアリール基には、炭素数1〜6の炭化水素基が置換されていてもよく、具体例としては、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、トリメチルフェニル、t−ブチルフェニル、ビフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチル、フェナントリル、アントリルなどを挙げることができる。
【0038】
炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基の具体例とは、前記の炭素数6〜16のアリール基の水素原子をハロゲンに置換させたものであり、具体的には、2−,3−,4−置換の各フルオロフェニル、2−,3−,4−置換の各クロロフェニル、2−,3−,4−置換の各ブロモフェニル、2,4−、2,5−、2,6−、3,5−置換の各ジフルオロフェニル、2,4−、2,5−、2,6−、3,5−置換の各ジクロロフェニル、2,4,6−、2,3,4−、2,4,5−、3,4,5−置換の各トリフルオロフェニル、2,4,6−、2,3,4−、2,4,5−、3,4,5−置換の各トリクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、3,5−ジメチル−4−クロロフェニル、3,5−ジクロロ−4−ビフェニルなどが挙げられる。
【0039】
一般式[I]において、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基の具体例としては、3−フリル、3−(5−メチルフリル)、3−(5−エチルフリル)、3−(5−n−プロピルフリル)、3−(5−i−プロピルフリル)、3−(5−t−ブチルフリル)、3−(5−トリメチルシリルフリル)、3−(5−トリエチルシリルフリル)、3−(5−フェニルフリル)、3−(5−トリルフリル)、3−(5−フルオロフェニルフリル)、3−(5−クロロフェニルフリル)、3−(4,5−ジメチルフリル)、3−ベンゾフリル、3−チエニル、3−(5−メチルチエニル)、3−(5−エチルチエニル)、3−(5−n−プロピルチエニル)、3−(5−i−プロピルチエニル)、3−(5−t−ブチルチエニル)、3−(5−トリメチルシリルチエニル)、3−(5−トリエチルシリルチエニル)、3−(5−フェニルチエニル)、3−(5−トリルチエニル)、3−(5−フルオロフェニルチエニル)、3−(5−クロロフェニルチエニル)、3−(4,5−ジメチルチエニル)、3−ベンゾチエニル、などを挙げることができる。
【0040】
(2)メタロセン化合物の錯体構造
本発明の成分(A)のメタロセン化合物は、一般式[II]で表される特定の置換基を有するメタロセン化合物である。
【化2】
【0041】
[式中、Mは、チタン原子、ジルコニウム原子、又は、ハフニウム原子を表す。
、R11は、独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、置換基を有していてもよい3−フルフリル基を表す。但し、R、R11のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基、又は置換基を有していてもよい3−フルフリル基のいずれかである。
【0042】
、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基であり、また、隣接するR双方で6〜7員環を構成してもよく、6〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
10とR20は、互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の珪素含有アルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基、又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基であり、R10とR20で4〜7員環を構成していてもよい。
Yは、珪素又はゲルマニウムであり、X、XはXと同じ置換基を表す。]
【0043】
及びR17の双方は必ず水素であることが好ましく、RとR11は、互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは、メチル、エチルなどのアルキル基、或いは置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基が挙げられる。更に、好ましくは両方が、置換基を有していてもよい3−フリル基、置換基を有していてもよい3−チエニル基である。その中でも、特に、3−フリル、3−(5−メチルフリル)、3−(5−エチルフリル)が好ましく挙げられる。
、R、R、R13、R14、R15の具体例としては、炭素数1〜6のアルキ
ル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜16のアリール基、炭素数6〜16のハロゲン含有アリール基が好ましく挙げられる。更に好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、或いは炭素数6〜16のアリール基である。
、R、R、R、R12、R16、R18及びR19は、好ましくは水素原子である。
【0044】
(3)メタロセン化合物の具体例
本発明のメタロセン化合物の具体例を以下に示す。これらは代表的な例示である。
イ)4位置換基の変化例
(1)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(2)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(2−メチル
フェニル)−インデニル]ジルコニウム
(3)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(2−エチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(4)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(2−メトキシフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(5)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(2−クロロフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(6)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3−メチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(7)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3−メトキシフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(8)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3−クロロフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(9)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−メチル
フェニル)−インデニル]ジルコニウム
(10)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−エチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(11)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(12)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(13)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−ビフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(14)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(15)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−メトキシフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(16)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−トリ
フルオロメチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(17)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(18)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(19)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3,5−ジエチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(20)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3,5−ジ−i−プロピルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(21)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(22)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3,5−ジ−メトキシフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(23)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3,5−ジ−トリフルオロメチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(24)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3,4,5−トリメチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(25)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3,5−ジメチル−4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(26)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(3,5−ジクロロ−4−トリメチルシリルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(27)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(1−ナフチル)−インデニル]ジルコニウム
(28)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(2−ナフチル)−インデニル]ジルコニウム
(29)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(9−フェナンスリル)−インデニル]ジルコニウム
(30)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(2−フェ
ナンスリル)−インデニル]ジルコニウム
【0045】
ロ)2位フリル基上の置換基の変化例
(1)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(2)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−トリメチルシリル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(3)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−フェニル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(4)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(4,5−ジメチル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(5)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(4,5−ベンゾ−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(6)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−3−チエニル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(7)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−トリメチルシリル−3−フリ
ル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(8)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−フェニル−3−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(9)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(4,5−ジメチル−3−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(10)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(4,5−ベンゾ−3−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
(11)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−3−チエニル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−インデニル]ジルコニウム
【0046】
ハ)2位置換基が非対称の例
(1)ジクロロジメチルシリレン[4−フェニル−インデニル][2−(5−メチル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(2)ジクロロジメチルシリレン[2−メチル−4−フェニル−インデニル][2
−(5−メチル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(3)ジクロロジメチルシリレン[2−エチル−4−フェニル−インデニル][2−(5−メチル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(4)ジクロロジメチルシリレン[2−(5−メチル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル][2−(5−エチル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(5)ジクロロジメチルシリレン[2−(5−メチル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル][2−(5−トリメチルシリル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
(6)ジクロロジメチルシリレン[2−(5−メチル−3−フリル)−4−フェニル−インデニル][2−(5−メチル−3−チエニル)−4−フェニル−インデニル]ジルコニウム
【0047】
この他にも、例示した化合物の架橋部Qがジメチルシリレンの代わりに、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、ジメチルゲルミレン、ジエチルゲルミレン、ジフェニルゲルミレンの化合物、また、Xが例示の塩素の代わりに、片方、もしくは両方が臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、フェニル基、ベンジル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などに代わった化合物も、例示することができる。
また、本発明の触媒成分は、同一又は異なる記載の一般式[I]、[II]で示されるメタロセン化合物の二種以上を含んでもよい。
【0048】
(4)メタロセン化合物の合成法
本発明のメタロセン化合物は、置換基ないし結合の様式によって、任意の方法によって合成することができる。代表的な合成経路の一例を下記に示す。
【0049】
【化3】
【0050】
上記合成経路において、1とフェニルボロン酸を、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行うことにより、2が得られる。2から3の臭素化は、文献(J.Org.Chem.1982,47,705−709)記載の方法などにより行うことができ、2にN−ブロモスクシンイミドを水存在下で反応させ、p−トルエンスルホン酸などの酸により脱水することにより、3が得られる。3と3−フリルボロン酸を、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行うことにより4が得られる。5の架橋体は、ブチルリチウムなどで4をアニオン化したあと、ジメチルジクロロシランとの反応で5が得られる。5を2等量のn−ブチルリチウムなどでジアニオン化した後、四塩化ジルコニウムとの反応でメタロセン化合物6が得られる。
【0051】
置換基を導入したメタロセン化合物の合成は、対応した置換原料を使用することにより合成することができ、3−フリルボロン酸のかわりに、対応するボロン酸、例えば5−メチル−3−フリルボロン酸、3−チエニルボロン酸などを用いることにより、対応する2位置換基(R、R11)を導入することができ、2位置換基(R、R11)にアルキル基を導入する場合は、文献(J.Org.Chem.1984,49,4226)のように、3にグリニャール試薬をNi触媒下で反応させることにより、導入することができる。
2つのインデニル環上の置換基が異なるメタロセン化合物の合成は、異なる置換インデンを、順にMeYClと反応させることにより、架橋することができる。又、架橋時にアミン化合物(例えばメチルイミダゾール)など架橋助剤を存在させておいてもよい。
【0052】
〔II〕オレフィン重合用触媒
(1)触媒成分
本発明のオレフィン重合用触媒は、下記の成分(A)、(B)及び任意に(C)成分を含む。また、微粒子担体(D)を含んでもよい。
成分(A):上記一般式[I]及び[II]で示されるメタロセン化合物
成分(B):有機アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸からなる群より選ばれる化合物
成分(C):有機アルミニウム化合物
成分(D):微粒子担体
【0053】
(2) 成分(A)
成分(A)は上で説明した一般式[I]及び[II]で示されるメタロセン化合物であり、二種以上を含んでもよい。
【0054】
(3)成分(B)
成分(B)は、有機アルミニウムオキシ化合物、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸からなる群より選ばれる化合物であるが、このような成分(B)としては、アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、亜鉛化合物などを挙げることができ、好ましくはアルミニウムオキシ化合物又はホウ素化合物であり、更に好ましくはアルミニウムオキシ化合物である。これらの成分(B)は単独でもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0055】
成分(B)の一つである有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中に、Al−O−Al結合を有し、その結合数は通常1〜100、好ましくは1〜50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水または芳香族カルボン酸を反応させて得られる。
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
【0056】
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記一般式[III]で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
AlX3−t [III]
(式中、Rは、炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基を示し、Xは、水素原子またはハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、好ましくはメチル基、イソブチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0057】
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は0.25/1〜1.2/1、特に0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は、通常−70〜100C、好ましくは−20〜20Cの範囲にある。反応時間は、通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等に含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む )は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶解又は分散させた溶液としたものを用いてもよい。
【0058】
アルミニウムオキシ化合物においては、次の一般式で表されるものを例示することもできる。
【化4】
【0059】
一般式[IV]で表される化合物は、一種類のトリアルキルアルミニウム又は二種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式:RB(OH)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。一般式中、Rは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。
【0060】
また、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸(B)として、ボラン化合物やボレート化合物などのホウ素化合物も挙げられる。
ボラン化合物として具体的に例示すると、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリ(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボラン等が挙げられる。
これらの中でも、トリス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、更に好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが好ましい。
【0061】
また、ボレート化合物を具体的に表すと、第1の例は、次の一般式[V]で示される化物である。
[L−H][BR [V]
式[V]中、Lは、中性ルイス塩基であり、Hは、水素原子であり、[L−H]は、アンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウム等のブレンステッド酸である。アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムを例示できる。
また、アニリニウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。
更に、ホスフォニウムとしては、トリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウム等のトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
【0062】
また、式[V]中、R及びRは、6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等に代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンが好ましい。
更に、X及びXは、ハイドライド基、ハライド基、1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された1〜20の炭素原子を含む置換炭化水素基である。
【0063】
上記一般式[V]で表される化合物の具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
これらの中でも、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが好ましい。
【0064】
また、ボレート化合物の第2の例は、次の一般式[VI]で表される。
[L[BR [VI]
式[VI]中、Lは、カルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、tert−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトン等が挙げられる。また、R、R、X及びXは、前記一般式[IV]における定義と同じである。
【0065】
上記化合物の具体例としては、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o−トリル)ボレート、トリチルテトラ(p−トリル)ボレート、トリチルテトラ(m−トリル)ボレート、トリチルテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh、NaB(o−CH−Ph)、NaB(p−CH−Ph)、NaB(m−CH−Ph)、NaB(o−F−Ph)、NaB(p−F−Ph)、NaB(m−F−Ph)、NaB(3,5−F−Ph)、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HBPh・2ジエチルエーテル、H+B(3,5−F−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C−・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルを例示することができる。
【0066】
これらの中でも、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HB(C−・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが好ましい。
更に好ましくは、これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、HB(C−・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが挙げられる。
【0067】
また、オレフィン重合用触媒の成分(B)として、前記の有機アルミニウムオキシ化合物と、上記ボラン化合物やボレート化合物との混合物を用いることもできる。さらに、上記ボラン化合物やボレート化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0068】
(3)成分(C)
有機アルミニウム化合物の一例は、次の一般式で表される。
AlR3−a
一般式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、Xは、水素、ハロゲン、アルコキシ基又はシロキシ基を示し、aは0より大きく3以下の数を示す。
一般式で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアル
ミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン又はアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。これらの中では、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、上記の有機アルミニウム化合物を2種以上併用してもよい。
【0069】
(4)成分(D)
本発明の成分(A)、成分(B)及び/又は成分(C)を微粒子担体(D)に担持して重合に用いることができる。用いる微粒子担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体又はこれらの混合物が挙げられる。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素質物、又はこれらの混合物が使用可能である。
【0070】
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
また、金属酸化物としては、周期表1〜14族の元素の単独酸化物又は複合酸化物が挙げられ、例えば、SiO、Al、MgO、CaO、B、TiO、ZrO、Fe、Al・MgO、Al・CaO、Al・S、Al・MgO・CaO、Al・MgO・SiO、Al・CuO、Al・Fe、Al・NiO、SiO・MgOなどの天然又は合成の各種単独酸化物又は複合酸化物を例示することができる。
ここで、上記の式は、分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本発明において用いられる複合酸化物の構造及び成分比率は特に限定されるものではない。
また、本発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的にはMgCl、CaClなどが特に好適である。
金属炭酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
炭素質物としては、例えば、カーボンブラック、活性炭などが挙げられる。
以上の無機物担体は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、特に金属酸化物、シリカ、アルミナなどの使用が好ましい。
【0071】
これら無機物担体は、通常、200〜800℃、好ましくは400〜600℃で空気中又は窒素、アルゴン等の不活性ガス中で焼成して、表面水酸基の量を0.8〜1.5mmol/gに調節して用いるのが好ましい。
これら無機物担体の性状としては、特に制限はないが、通常、平均粒径は5〜200μm、好ましくは10〜150μm、平均細孔径は20〜1,000Å、好ましくは50〜500Å、比表面積は150〜1,000m/g、好ましくは200〜700m/g、細孔容積は0.3〜2.5cm/g、好ましくは0.5〜2.0cm/g、見掛比重は0.20〜0.50g/cm、好ましくは0.25〜0.3,5g/cmを有する無機物担体を用いるのが好ましい。
【0072】
上記した無機物担体は、もちろんそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後、用いることができる。
【0073】
(5)成分の接触
メタロセン化合物(成分A)と、成分(A)と反応して成分(A)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物又はルイス酸(成分B)、及び微粒子担体からなるオレフィン重合用触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
【0074】
(I)メタロセン化合物(成分A)と、メタロセン化合物(成分A)と反応してイオン対を形成する化合物又はルイス酸(成分B)、とを接触させた後、微粒子担体を接触させる。
(II)メタロセン化合物(成分A)と、微粒子担体とを接触させた後、メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はルイス酸(成分B)を接触させる。
(III)メタロセン化合物(成分A)と反応してイオン対を形成する化合物又はルイス酸(成分B)と、微粒子担体とを接触させた後、メタロセン化合物(成分A)を接触させる。
【0075】
これらの接触方法の中で(I)と(III)が好ましく、更に(I)が最も好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素又はアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン等の脂肪族或いは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下又は非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃、更に好ましくは0℃〜50℃の温度にて、5分〜50時間、好ましくは30分〜24時間、更に好ましくは30分〜12時間で行うことが望ましい。
【0076】
また、メタロセン化合物(成分A)、メタロセン化合物(成分A)と反応してイオン対を形成する化合物(成分B)と微粒子担体の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族又は脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素或いは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、或いは一旦可溶性溶媒の一部または全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
【0077】
本発明において、メタロセン化合物(成分A)と、メタロセン化合物(成分A)と反応してイオン対を形成する化合物(成分B)と、微粒子担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
メタロセン化合物(成分A)と反応してイオン対を形成する化合物(成分B)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、メタロセン化合物(成分A)中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常、1〜100,000、好ましくは5〜1,000、更に好ましくは50〜400の範囲が望ましく、また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、メタロセン化合物中の遷移金属(M)に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常、0.01〜100、好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは0.2〜10の範囲で選択することが望ましい。
更に、イオン対を形成する化合物(成分B)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
微粒子担体の使用量は、メタロセン化合物(成分A)中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.5ミリモル当たり、更に好ましくは0.01〜0.1ミリモル当たり1gである。
【0078】
メタロセン化合物(成分A)と、メタロセン化合物(成分A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体とを前記接触方法(I)〜(III)のいずれかで相互に接触させ、しかる後、溶媒の除去又は不活性溶媒で洗浄・スラリー化することで、オレフィン重合用触媒を固体触媒として得ることができる。また、溶媒の除去は、常圧下又は減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃で1分〜50時間、更に好ましくは10分〜10時間で行うことが望ましい。
【0079】
なお、オレフィン重合用触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
(IV)メタロセン化合物(成分A)と微粒子担体とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と接触させる。
(V)有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物又はこれらの混合物と微粒子担体とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下でメタロセン化合物(成分A)と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件及び溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
【0080】
(6)予備重合処理
成分(A)、(B)、(C)又は(D)を含む触媒を、オレフィン重合用(本重合)の触媒として使用する前に、必要に応じて、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレン等のオレフィンを予備的に少量重合する予備重合処理を施してもよい。予備重合方法は、公知の方法が使用できる。
【0081】
〔III〕オレフィンの重合方法
(1)重合モノマー
本発明において、「オレフィン」又は「オレフィンモノマー」とは、炭素数2〜20のオレフィンを指し、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエン、トリエン、環状オレフィン等が挙げられる。
また、本発明において「α−オレフィン」とは上記オレフィンの中でも、炭素数3以上のものを指す。
【0082】
(2)オレフィンの重合方法
本発明において、重合形態は、前記一般式[I]で示されるメタロセン化合物を含む重合用触媒とモノマーが効率よく接触し、オレフィンの重合又は共重合を行うことができるならば、あらゆる様式を採用し得る。
具体的には、重合様式としては、不活性溶媒を用いるスラリー法及び溶液法、不活性溶媒を実質的に用いずオレフィンモノマーを溶媒として用いるバルク重合法或いは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などが採用できる。
重合方式は、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。また、重合形式の組み合わせは、特に制限はなく、溶液重合2段、バルク重合2段、バルク重合後気相重合、気相重合2段といった様式も可能であり、更には、それ以上の重合段数で製造することも可能である。
【0083】
(3)プロピレンの重合方法
上記オレフィンの重合方法の中でもプロピレンの重合方法の場合、特に良好な粒子形状のポリマーを得るためには、第一工程をバルク重合で行い、第二工程を気相重合で行うか、若しくは、第一工程、第二工程共に、気相重合で行うことが好ましい。
本発明の重合用触媒を用いることにより、剛性と耐衝撃性を有するプロピレン系重合体を製造可能であり、製造方法としては、下記の工程1と工程2を含む重合方法が好ましく、特に好ましくは、工程1に引き続き、工程2の重合を行う重合方法である。また、他の重合条件と組み合わせて、3段以上で製造する多段重合も可能である。
【0084】
[工程1]
工程1は、全モノマー成分に対して、プロピレンを100〜90重量%、エチレン又はα−オレフィンを0〜10重量%で重合させる工程である。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
重合温度は、0〜150℃であり、また、分子量調節剤として、補助的に水素を用いることができる。重合圧力は、0〜3MPaG、好ましくは0〜2MPaGが適当である。
バルク重合法の場合は、重合温度は、0〜90℃であり、好ましくは60〜80℃である。重合圧力は、0〜5MPaG、好ましくは0〜4MPaGが適当である。
気相重合の場合は、重合温度は、0〜200℃であり、好ましくは50〜120℃であり、更に好ましくは60〜100℃である。重合圧力は、0〜4MPaG、好ましくは0〜3MPaGが適当である。
また、全モノマー成分に対して、ポリマーの形状を悪化させない0〜10%の範囲でエチレン又はα−オレフィンを共存させることができ、分子量、活性、融点の調整を行うことができる。また、分子量調整剤として、水素を用いてもよい。
【0085】
[工程2]
工程2は、全モノマー成分に対して、プロピレンを90〜10重量%、エチレンまたはα−オレフィンを10〜90重量%で重合させる工程であり、好適な耐衝撃性を示すゴム成分を製造することができる。モノマー成分に対するプロピレン量は、好ましくは、高い耐衝撃性を有するプロピレン重合体を与える点で、20〜80重量%である。
第二工程の重合条件として、スラリー重合、バルク重合は、第一工程と同じであるが、気相重合の場合は、モノマー組成が第一工程と異なることから、重合温度は、0〜200℃であり、好ましくは20〜90℃であり、更に好ましくは30〜80℃である。重合圧力は、0〜4MPaG、好ましくは1〜3MPaGが適当である。また、分子量調節剤として、水素を用いてもよい。
プロピレンと共に用いられるモノマーとして、好ましくはエチレン、1−ブテンであり、更に好ましくはエチレンである。また、これらモノマーを組み合わせて用いてもよい。
【0086】
(4)エチレンの重合方法
上記したオレフィン重合用触媒は、エチレンの単独重合又はエチレンとα−オレフィンとの共重合に、好適に使用可能である。
コモノマーであるα−オレフィン類には、炭素数3〜20、好ましくは3〜8のものが包含され、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が例示される。
α−オレフィン類は、2種類以上のα−オレフィンをエチレンと共重合させることも可能である。
共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。エチレンと他のα−オレフィンとを共重合させる場合、当該他のα−オレフィンの量は、全モノマーの90モル%以下の範囲で任意に選ぶことができるが、一般的には、40モル%以下、好ましくは30モル%以下、更に好ましくは10モル%以下の範囲で選ばれる。もちろん、エチレンやα−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレン等のスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等のジエン類、ノルボルネン、シクロペンテン等の環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチル等の含酸素化合物類、等の重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。
【0087】
本発明において、重合反応は、前記した担持触媒の存在下、好ましくはスラリー重合、又は気相重合にて、行うことができる。
スラリー重合の場合、実質的に酸素、水等を断った状態で、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で、エチレン等を重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレン等の液体モノマーも溶媒として使用できることはいうまでもない。
また、気相重合の場合、エチレンやコモノマーのガス流を導入、流通、又は循環した反応器内においてエチレン等を重合させる。
本発明において、更に好ましい重合は、気相重合である。重合条件は、温度が0〜250℃、好ましくは20〜110℃、更に好ましくは60〜100℃であり、圧力が常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜4MPa、更に好ましくは0.5〜2MPaの範囲にあり、重合時間としては5分〜10時間、好ましくは5分〜5時間が採用されるのが普通である。
【0088】
また、上記のエチレン重合等のオレフィン重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても、何ら支障なく実施することができる。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムな、トリオクチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、前記有機アルミニウム化合物をアルコール類又はフェノール類で変性した変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニャール化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムが好ましく、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムが特に好ましい。
【0089】
生成重合体の分子量は、重合温度、オレフィンモノマーの濃度、触媒のモル比等の重合条件を変えることにより調節可能である。また、重合反応系に水素や上記スカベンジャー類などを連鎖移動剤として添加することでも効果的に分子量調節を行うことができる。
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
【実施例】
【0090】
以下においては、本発明をより具体的にかつ明確に説明するために、本発明を実施例及び比較例の対照において説明し、本発明の構成要件の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。
なお、以下の諸例において、錯体合成工程、触媒合成工程及び重合工程は、全て精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は、脱水した後に精製窒素でバブリングして脱気して使用した。
また、実施例における物性測定、分析等は下記の方法に従ったものである。
【0091】
(1)HL−MFRの測定
JIS K7210に準拠し、190℃・21.6kg荷重で測定した。
(2)融点の測定:
DSC(デュポン社製のTA2000型、又はセイコー・インスツルメンツ社製のDSC6200型)を使用し、10℃/分で20〜160℃までの昇降温を1回行った後、10℃/分で2回目の昇温時の測定値により求めた。
【0092】
(3)GPCの測定:
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。 使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。[F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000」
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10−4 α=0.7
PE : K=3.92×10−4 α=0.733
PP : K=1.03×10−4 α=0.788
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置 :Waters社製GPC(ALC/GPC 150C) 検出器 :FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長 3.42μm) カラム :昭和電工社製AD806M/S(3本) 移動相溶媒:ο-ジクロロベンゼン 測定温度:140℃ 流速:1.0ml/分 注入量:0.2ml
試料の調製: 試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
【0093】
[メタロセン錯体の合成]
メタロセン化合物A:ジクロロジメチルシリレンビス[2−(3−フリル)−4−(4−イソプロピルフェニル)−インデニル]ジルコニウムの合成
(1)2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成:
特開2009−299045号公報記載の方法に従って合成した。
【0094】
(2)2−(3−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成
500mlのガラス製反応容器にDME300ml、3−フリルボロン酸14.0g、(0.125mol)、炭酸カリウム34.0g(0.249mol)と水150ml、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン19.8g(63mmol)を順に加え、15時間還流した。放冷後、反応液を蒸留水200ml中に注ぎ、分液ロートに移して酢酸エチルで2回抽出し、酢酸エチル溶液を蒸留水、1N塩酸水溶液、飽和食塩水で順に2回ずつ洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、石油エーテル:ジクロロメタン=10:1)で精製し、2−(3−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの黄色固体を18.7g(収率75%)得た。
【0095】
(3)ジメチルビス(2−(3−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの合成
500mlのガラス製反応容器に、2−(3−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン18.6g(62.0mmol)、THF200mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−78℃まで冷却した。ここに2.5mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液26ml(65mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−40℃に冷却し、1−メチルイミダゾール0.610g(7.44mmol)、ジメチルジクロロシラン3.96g(30.5mmol)を順に加え、−25℃で1時間撹拌した。
溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (展開溶媒、石油エーテル:ジクロロメタン=5:1)で精製し、ジメチルビス(3−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体16.9g(収率79%)を得た。
【0096】
(4)ジメチルシリレンビス(2−(3−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロライドの合成:
200mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2−(3−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)シラン4.60g(7.00mmol)、ジエチルエーテル70mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.65mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液8.7ml(14.4mmol)を滴下し、6時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン80mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム1.63g(7.00mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら16時間撹拌した。このときのラセミ体とメソ体の生成比率は6:4であった。
トルエンを100mL加え、セライトろ過した後、トルエン中で再結晶を行うことで、ラセミ体/メソ体組成比94/6のジメチルシリレンビス(2−(3−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロライドを0.88g(収率14%)得た。
H−NMR(300MHz,CDCl);ラセミ体:δ1.09(s,6H),1.26(d,12H),2.92(m,2H),6.45(m,2H),6.90(dd,2H),6.97(d,2H),7.04(s,2H),7.29(d,4H),7.35−7.41(m,6H),7.58(d,4H)
【0097】
[メタロセン錯体(A)を用いた触媒調製(触媒A)]
窒素雰囲気下、200ml二口フラスコに400℃で8時間焼成したシリカ(Grace社製Sylopol2212)3グラムを入れ、150℃のオイルバスで加熱しながら真空ポンプで1時間減圧乾燥した。別途用意した100ml二口フラスコに窒素雰囲気下でメタロセン錯体(A)72mg(ラセミ体が75μmolとなるように秤量)を入れ、脱水トルエン10mlで溶解した。室温で、メタロセン錯体(A)のトルエン溶液にアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液8.3mlを加え、室温で30分間撹拌した。真空乾燥済みシリカの入った200ml二口フラスコを40℃のオイルバスで加熱及び撹拌しながら、トルエン20mLを加えてシリカをスラリー化した後にメタロセン錯体(A)とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したままトルエン溶媒を減圧留去することで固体触媒(触媒A)を得た。
【0098】
[触媒Aによるエチレン/ヘキセン共重合体の製造]
内容積1.5Lの撹拌式オートクレーブ内に、ヘプタン500ml、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液1.4ml(1.0mmol)と、1−ヘキセン0.8mlを加え、80℃まで加熱した。続いて水素17mL(1気圧、室温換算)加えた後、エチレンにて1.5MPaまで昇圧した。触媒Aのヘプタンスラリー10ml(触媒Aとして32mg)を重合槽へ圧入して重合を開始した。重合温度80℃、エチレン圧力1.5MPaを維持して、1時間重合を行った。圧力を維持するために供給したエチレン消費量をマスフローメーターで測定し、エチレン消費量が12gに達するまで重合を行った。
35分後、エタノール10mlを重合槽に圧入することで重合を停止し、10.0gのエチレン共重合体が得られた。触媒活性は670g−PE/g−Cat・MPa・hr、HL−MFRは0.10g/10min、Mwは602,000、Mw/Mnは3.6
2、融点は127℃であった。
【0099】
[比較例1]
(比1−1)メタロセン錯体Bの合成:
ラセミ・ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライドは文献(Organometallics 1994,13,954−963)記載の方法で合成した。
【0100】
(比1−2)メタロセン化合物Bを用いた触媒の調製(触媒B):
メタロセン化合物Aの代わりにメタロセン化合物Bを47mg(75μmol用いた他は触媒Aと同様の操作により触媒Bを得た。
【0101】
(比1−3)触媒Aによるエチレン/ヘキセン共重合体の製造
触媒Aの代わりに、触媒Bを18mg使用し、実施例1と同様に操作した。その結果、重合開始60分後、エチレン消費量が12gに達しなかったため、エタノール10mlを重合槽に圧入することで重合を停止し、6.2gのエチレン共重合体が得られた。触媒活性は431g−PE/g−Cat・MPa・hr、HL−MFRは1.11g/10min、Mwは294,000、Mw/Mnは4.50、融点は129℃であった。
【0102】
[比較例2]
(比2−1)メタロセン錯体C触媒の合成:
ラセミ・ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライドは文献(特表2001−515911) 記載の方法で合成した。
【0103】
(比2−2)メタロセン化合物Cを用いた触媒の調製(触媒C)
メタロセン化合物Aの代わりにメタロセン化合物Cを51mg(75μmol用いた他は触媒Aと同様の操作により触媒Cを得た。
【0104】
(比2−3)触媒Aによるエチレン/ヘキセン共重合体の製造
触媒Aの代わりに、触媒Cを102mg使用し、実施例1と同様に操作した。その結果、重合を23分で停止し、11.0gのエチレン共重合体が得られた。触媒活性は352g−PE/g−Cat・MPa・hr、HL−MFRは0.97g/10min、Mwは289,000、Mw/Mnは3.70、融点は128℃であった。
【0105】
[比較例3]
(比3−1)メタロセン錯体D触媒の合成
ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドは文献 (J.Organomet.Chem.1996,522、39−54) 記載の方法で合成した。
【0106】
(比3−2)メタロセン化合物Dを用いた触媒の調製(触媒D):
メタロセン化合物Aの代わりにメタロセン化合物Dを32mg(75μmol用いた他は触媒Aと同様の操作により触媒Dを得た。
【0107】
(比3−3)触媒Aによるエチレン/ヘキセン共重合体の製造
触媒Aの代わりに、触媒Dを109mg使用し、実施例1と同様に操作した。その結果、重合開始60分後、エチレン消費量が12gに達しなかったため、エタノール10mlを重合槽に圧入することで重合を停止し、6.4gのエチレン共重合体が得られた。触媒活性は74g−PE/g−Cat・MPa・hr、HL−MFRは0.50g/10min、Mwは258,000、Mw/Mnは3.18、融点は128℃であった。
【0108】
【表1】
【0109】
[実施例と比較例の対比結果の考察]
表1から明らかなように、実施例1と比較例1〜3を対比することで、本発明の触媒は、錯体の2位に3−フリル基を有しているので、高い触媒活性で、高分子量のエチレン共重合体を与えることが可能であることが分かる。
本触媒は工業上有利な重合温度・条件において触媒活性に優れ、高分子量のエチレン共重合体を製造することができるバランスに優れた触媒であるということが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上から明らかなように本発明の触媒をオレフィン重合、特にエチレン系重合に使用することにより、オレフィン共重合において、従来の錯体触媒系と比較して高い触媒活性を発揮するのみならず、高分子量のオレフィン共重合体を得ることができる。特に、高分子量のエチレン系重合体を製造できる。
これにより、本発明のオレフィン重合用触媒、及び該オレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合方法は、工業上有利な重合温度・条件において重合を実施することができ、工業的価値が極めて大きい。