特許第5793278号(P5793278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5793278-Cr含有銅合金線の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793278
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】Cr含有銅合金線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/02 20060101AFI20150928BHJP
   B22D 1/00 20060101ALI20150928BHJP
   B22D 21/00 20060101ALI20150928BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20150928BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20150928BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20150928BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150928BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20150928BHJP
   C22F 1/08 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   C22C1/02 503B
   B22D1/00 J
   B22D21/00 B
   C22C9/00
   H01B1/02 A
   H01B5/02 Z
   H01B13/00 501D
   !C22F1/00 611
   !C22F1/00 612
   !C22F1/00 624
   !C22F1/00 625
   !C22F1/00 630K
   !C22F1/00 661A
   !C22F1/00 681
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/08 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-33090(P2009-33090)
(22)【出願日】2009年2月16日
(65)【公開番号】特開2010-189678(P2010-189678A)
(43)【公開日】2010年9月2日
【審査請求日】2011年9月27日
【審判番号】不服2014-13589(P2014-13589/J1)
【審判請求日】2014年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石田 徳和
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 訓
【合議体】
【審判長】 鈴木 正紀
【審判官】 河野 一夫
【審判官】 河本 充雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−073153(JP,A)
【文献】 特開2006−283106(JP,A)
【文献】 特開2008−081762(JP,A)
【文献】 特開2006−341268(JP,A)
【文献】 特開平05−105976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00 - 49/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径80μm以下の極細線を製造する際の素材として使用されるCrを0.1質量%以上1.5質量%以下含有し、残部がCuと不可避不純物からなる組成を有するCr含有銅合金線の製造方法であって、
銅原料を溶解して溶銅を生成する溶銅生成工程と、前記溶銅中に金属Crを添加するCr添加工程と、Crが添加された溶銅を鋳造する鋳造工程と、を有し、
前記Cr添加工程において添加される金属Cr中の炭素量が質量比で150ppm以下とされ、前記金属Crの粒径が100mesh以上5mm以下とされていることを特徴とするCr含有銅合金線の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のCr含有銅合金線の製造方法であって、
前記溶銅中に0.01質量%以上0.15質量%以下のZrを添加するZr添加工程を備えていることを特徴とするCr含有銅合金線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直径80μm以下の極細線を製造する際の素材として使用されるCr含有銅合金線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線材料として使用される直径80μm以下の極細線には、例えば特許文献1、2に開示されているように、Sn入り銅線やAg入り銅線等の純銅系の銅線が使用されている。これら純銅系の銅線においては、直径80μm以下の極細線にまで伸線した際には、銅線内に混入した耐火物や鉄粉等の異物が原因の断線が発生することがある。このため、従来より、これらの異物を除去する様々な方法が提案されている。
【0003】
また、最近では、配線材料においては、細線化に伴って高強度化が強く求められている。そこで、配線材料を製造する際の素材として、例えば特許文献3に示すように、Crを含有したCr含有銅合金線が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−121629号公報
【特許文献2】特開2001−148206号公報
【特許文献3】特開2000−073153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Cr含有銅合金線においては、直径80μm以下の極細線にまで伸線した際には、前述の耐火物や鉄粉等の異物のみでなく、銅合金線内に存在する未溶解CrやCr炭化物が断線の原因となっていた。これにより、従来のSn入り銅線やAg入り銅線等の純銅系の銅線に比べて、断線不良が発生し易いといった問題があった。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、Crを含有して高強度化を図ることができるとともに直径80μm以下の極細線にまで伸線した際の断線の発生を抑えることができるCr含有銅合金線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明のCr含有銅合金線の製造方法は、直径80μm以下の極細線を製造する際の素材として使用されるCrを0.1質量%以上1.5質量%以下含有し、残部がCuと不可避不純物からなる組成を有するCr含有銅合金線の製造方法であって、銅原料を溶解して溶銅を生成する溶銅生成工程と、前記溶銅中に金属Crを添加するCr添加工程と、Crが添加された溶銅を鋳造する鋳造工程と、を有し、前記Cr添加工程において添加される金属Cr中の炭素量が質量比で150ppm以下とされ、前記金属Crの粒径が100mesh以上5mm以下とされていることを特徴としている。
【0015】
この構成のCr含有銅合金線の製造方法によれば、溶銅中に添加される金属Cr中の炭素量が質量比で150ppm以下とされているので、活性元素であるCrと炭素との反応を抑制でき、Cr炭化物の生成を抑えることが可能となる。また、金属Crの表層にCr炭化物が生成されることも抑制されるので、金属Crと溶銅とを確実に接触させることで、金属Crの溶解を促進することができる。
また、溶銅中に添加される金属Crの粒径が100mesh以上とされているので、溶銅中に添加した際に金属Cr粉末同士が凝集してしまうことを防止でき、金属Crの溶解を促進することができる。また、金属Crの粒径が小さい程炭素と接触する表面積の割合が増加するため、Cr炭化物が発生しやすくなる。そこで、金属Crの粒径が100mesh以上とすることでCr炭化物の発生を抑制することもできる。また、前記金属Crの粒径が5mm以下とされているので、金属Crを溶解させるために必要な時間を短くすることができ、金属Crの溶解を促進することができる。
これらの作用により、粒径50μm以上の未溶解Cr及びCr炭化物の発生を抑制することが可能となり、極細線に加工した際の断線の発生を抑制可能なCr含有銅合金線を製出することができる。
【0016】
ここで、前述のCr含有銅合金線の製造方法において、前記溶銅中に0.01質量%以上0.15質量%以下のZrを添加するZr添加工程を備えていてもよい。
この場合、CrとともにZrを添加することになり、さらに高強度化したCr含有銅合金線を製出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、Crを含有して高強度化を図ることができるとともに直径80μm以下の極細線にまで伸線した際の断線の発生を抑えることができるCr含有銅合金線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態であるCr含有銅合金線の素材であるCr含有銅合金鋳塊を製出する製造装置の説明図である。
図2】本発明の実施形態であるCr含有銅合金線の製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係るCr含有銅合金線及びCr含有銅合金線の製造方法について添付した図面を参照して説明する。
図1に、本実施形態であるCr含有銅合金線の素材となる鋳塊を製造するCr含有銅合金鋳塊の製造装置の概略を示す。
【0020】
図1に示すCr含有銅合金鋳塊の製造装置は、最上流部に配置された溶解炉11と、その下流に配置された加熱炉12と、加熱炉12の下流に配置されたタンディッシュ13と、溶解炉11から加熱炉12までをつなぐ溶湯供給路14と、加熱炉12とタンディッシュ13とをつなぐ樋15と、タンディッシュ13に備えられた合金元素添加手段16と、を備えている。なお、本実施形態では、図1に示すように、加熱炉12に別の合金元素添加手段19が設けられている。
ここで、本実施形態においては、溶解炉11が低周波誘導炉とされ、加熱炉12が高周波誘導炉とされている。
【0021】
加熱炉12は、その外形が略円筒状とされ、その内部に貯留槽12aが設けられ、貯留槽12aに貯留された溶銅を高温(例えば1400℃)に加熱できる加熱手段として高周波誘導コイルが設けられている。加熱炉12内は、非酸化性雰囲気とされ、例えば、アルゴン等の不活性ガスで充満されている。ここで、排出口12bと樋15とが非酸化性雰囲気によってシールされた状態で接続されており、非酸化性雰囲気を保持したままで加熱炉12から樋15へ溶銅の排出が行なわれる構成とされている。
【0022】
加熱炉12の下流側には、タンディッシュ13が配置され、加熱炉12とタンディッシュ13とは、樋15によって接続されている。
タンディッシュ13は溶銅を1t程度保持するものであり、タンディッシュ13の内部の溶銅は、一定以上の流速で流れている。このタンディッシュ13の上部には合金元素添加手段16が設けられており、この合金元素添加手段16の装入口16aから金属Cr又は金属Zrを連続的にまたは間欠的に装入すると、タンディッシュ13内に開口された開口部16bより、タンディッシュ13内を流れる溶銅中に金属Cr又は金属Zrが添加される。
また、タンディッシュ13の底面側には、溶湯排出口13aが設けられている。この溶湯排出口13aにはノズル13bが接続されており、ノズル13bの下方には黒鉛鋳型18が配置されている。
【0023】
次に、前述のような構成とされたCr含有銅合金鋳塊の製造装置を利用したCr含有銅合金線の製造方法について説明する。図2に、本実施形態であるCr含有銅合金線の製造方法のフロー図を示す。
まず、溶解炉11(低周波誘導炉)に銅原料を投入して溶解し、溶銅を生成する(溶銅生成工程S1)。生成された溶銅を、溶湯供給路14を介して高周波誘導炉に供給し、加熱炉12の貯留槽12aに貯留された溶銅の温度を上昇させる(溶銅加熱工程S2)。
【0024】
加熱炉12の貯留槽12aに貯留された溶銅は樋15を介してタンディッシュ13へと供給される。そして、このタンディッシュ13に備えられた合金元素添加手段16によって、溶銅中に金属Cr及び金属Zrを添加する(Cr添加工程S3及びZr添加工程S4)。これらCr添加工程S3及びZr添加工程S4によって、Crを0.1質量%以上1.5質量%以下、Zrを0.01質量%以上0.15質量%以下、残部がCuと不可避不純物からなる組成を有するCr含有銅合金溶湯が連続的に製出される。
【0025】
タンディッシュ13内のCr含有銅合金溶湯は、溶湯排出口13aに接続されたノズル13bを介して黒鉛鋳型18内に供給され、黒鉛鋳型18で冷却されることにより、Crを0.1質量%以上1.5質量%以下、Zrを0.01質量%以上0.15質量%以下、残部がCuと不可避不純物からなる組成を有するCr含有銅合金鋳塊が得られる(鋳造工程S5)。なお、本実施形態では、鋳造工程S5において、直径200mm〜300mmの円柱状鋳塊(いわゆるビレット)を製出する。
【0026】
このようにして得られたCr含有銅合金鋳塊を、高温(900〜950℃)に加熱して押出加工を行い、直径10〜16mmの銅棒材を製出する(押出工程S6)。得られた銅棒材に対して引抜加工及び焼鈍処理を行って所定寸法(例えば直径0.05mm〜0.1mm)のCr含有銅合金線を製出する(伸線工程S7)。このようにして、Crを0.1質量%以上1.5質量%以下、Zrを0.01質量%以上0.15質量%以下、残部がCuと不可避不純物からなる組成を有するCr含有銅合金線が製出される。
【0027】
ここで、Cr添加工程S3においては、金属Crの粉状物を添加する。この金属Crは、その製造過程において黒鉛部材の使用を抑えることによって、炭素の含有量が質量比で150ppm以下とされている。また、添加される金属Crの粉状物は、篩い分けされており、その粒径が、100mesh以上5mm以下とされており、より好ましくは、60mesh以上5mm以下とされている。
【0028】
こうして製出された本実施形態であるCr含有銅合金線は、前述のようにCr添加工程S3において添加される金属Crの粒状物の炭素量及び粒径が規定されていることから、金属Crの溶解が促進されており、粒径50μm以上の未溶解Cr及びCr炭化物の個数が、3kg当たり2個以下とされているのである。
【0029】
このような構成とされた本実施形態であるCr含有銅合金線によれば、粒径50μm以上の未溶解Cr及びCr炭化物の個数が3kg当たり2個以下とされているので、直径80μm以下の極細線にまで加工した際に、未溶解Cr及びCr炭化物に起因する断線の発生を防止することができる。これにより、直径80μm以下の極細線の製造効率を大幅に向上させることができる。また、Cr含有銅合金線は、純銅系の銅線に比べて高強度であるので、極細線の高強度化を図って極細線使用時の断線を抑制することができ、品質の安定した極細線を製出することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態であるCr含有銅合金線は、Crを0.1質量%以上1.5質量%以下、Zrを0.01質量%以上0.15質量%以下、残部がCuと不可避不純物からなる組成を有しているので、Cr含有銅合金線のさらなる高強度化を図ることができるとともに、銅中に溶解したCr,Zrの一部から粗大な析出物が発生することを防止して極細線加工時や使用時の断線の発生を確実に抑制することができる。
【0031】
さらに、本実施形態であるCr含有銅合金線の製造方法によれば、溶解炉11(低周波誘導炉)に銅原料を投入して溶解して溶銅を生成する溶銅生成工程S1と、溶銅中に金属Crを添加するCr添加工程S3と、溶銅中に金属Zrを添加するZr添加工程S4と、得られたCr含有銅合金溶湯を鋳造する鋳造工程S5と、得られたCr含有銅合金鋳塊を押出加工する押出工程S6と、得られた銅棒材を伸線して所定寸法のCr含有銅合金線を製出する伸線工程S7とを備えており、Cr添加工程S3において添加される金属Crの炭素含有量が質量比で150ppm以下とされているので、活性元素であるCrと炭素との反応を抑制でき、Cr炭化物の生成を抑えることが可能となる。また、金属Crの表層にCr炭化物が生成されることも抑制されるので、金属Crと溶銅とを確実に接触させることで、金属Crの溶解を促進することができる。
【0032】
また、Cr添加工程S3において添加される金属Crの粒径が100mesh以上5mm以下、より好ましくは60mesh以上5mm以下とされているので、溶銅中に添加した際に金属Cr粉末同士が凝集してしまうことを防止でき、金属Crの溶解を促進することができる。なお、金属Crの粒径が小さい程炭素と接触する表面積の割合が増加するため、Cr炭化物が発生しやすくなる。そこで、金属Crの粒径が100mesh以上とすることでCr炭化物の混入を抑制することもできる。また、前記金属Crの粒径が5mm以下とされているので、金属Crを溶解させるために必要な時間を短くすることができ、金属Crの溶解を促進することができる。
【0033】
このような作用効果により、粒径50μm以上の未溶解Cr及びCr炭化物の発生を抑制し、粒径50μm以上の未溶解Cr及びCr炭化物の個数が3kg当たり2個以下とすることができ、極細線に加工した際の断線の発生を抑制可能なCr含有銅合金線を製出することができる。
また、溶銅中に金属Zrを添加するZr添加工程S4を備えているので、Crを0.1質量%以上1.5質量%以下、Zrを0.01質量%以上0.15質量%以下、残部がCuと不可避不純物からなる組成を有するCr含有銅合金線を確実に製出することができる。
【0034】
さらに、本実施形態においては、加熱炉12の下流側に配設されたタンディッシュ13内において、金属Cr及び金属Zrを添加する構成としているので、加熱炉12において溶銅の温度を高くした状態で金属Cr及び金属Zrを添加することが可能となり、これら金属Cr及び金属Zrの溶解を促進でき、未溶解Cr等の発生を抑制できるとともに、成分値が安定した銅合金溶湯を連続的に製造することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、Zr添加工程を備え、Zrを含有するCr含有銅合金線を製出するものとして説明したが、これに限定されることはなく、Zrを含有しないCr含有銅合金線であってもよい。また、Zr以外の添加元素が添加されていてもよい。
【0036】
さらに、鋳造工程を、黒鉛鋳型を用いたものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の鋳型を使用しても良いし、あるいは、ベルトキャスター方式の連続鋳造機の鋳型内に銅合金溶湯を注入して、連続鋳造・圧延を行っても良い。このように連続鋳造・圧延を行う場合には、押出工程を省略することが可能となる。
【実施例】
【0037】
以下に、前述した本実施形態であるCr含有銅合金線の製造方法によって得られたCr含有銅合金線の伸線結果について説明する。
なお、本実施例では、Cr添加工程において添加される金属Crとして、炭素含有量が質量比で100ppm以下、粒径が60mesh以上5mm以下のものを使用した。そして、目標組成をCr:0.1質量%、Zr:0.15質量%、残部がCuと不可避不純物としてCr含有銅合金線を製出した。なお、Cr含有銅合金線の直径を約8mmとした。
従来例として、低周波溶解炉中において、Cr及びZrを添加してCr含有銅合金線を製出した。なお、CrやZrの添加には母合金を使用した。
【0038】
これらのCr含有銅合金線を直径80μmの極細線に伸線加工し、断線が発生した場合には、破断面を観察し、未溶解Cr及びCr炭化物の有無を確認した。評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
従来例においては、3kg(直径80μmで長さ約67km)分伸線した段階で、断線が7回発生した。破断面を観察した結果、断線7回中5回分の破断面で未溶解Cr及びCr炭化物が確認された。
一方、実施例においては、3kg(直径80μmで長さ約67km)分伸線した段階で、断線が1回発生したが、破断面を観察した結果、未溶解Cr及びCr炭化物は確認されなかった。
【0041】
以上のことから、本発明によれば、未溶解Cr及びCr炭化物の発生を抑制して、直径80μm以下の極細線に加工する際における断線の発生回数を大幅に低減可能なCr含有銅合金線を提供できることが確認された。
【符号の説明】
【0042】
S1 溶銅生成工程
S3 Cr添加工程
S4 Zr添加工程
S5 鋳造工程
図1
図2