特許第5793295号(P5793295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793295
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20150928BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20150928BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20150928BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H01L23/36 A
   H01L23/12 J
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-280281(P2010-280281)
(22)【出願日】2010年12月16日
(65)【公開番号】特開2012-129393(P2012-129393A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】森永 雄司
(72)【発明者】
【氏名】村松 健太郎
【審査官】 松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−033445(JP,A)
【文献】 特開2008−021796(JP,A)
【文献】 特開2005−026294(JP,A)
【文献】 特開2009−238804(JP,A)
【文献】 特開2001−068502(JP,A)
【文献】 特開2007−288075(JP,A)
【文献】 特開2007−165600(JP,A)
【文献】 特開2007−329428(JP,A)
【文献】 特開2004−349300(JP,A)
【文献】 特開平08−070071(JP,A)
【文献】 特開平04−349653(JP,A)
【文献】 特開2007−266218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/00−25/18
H01L 23/34−23/473
H01L 23/48
H01L 21/447−21/449
H01L 21/60−21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の端子板と、該端子板よりも薄い板状に形成されると共に、前記端子板の厚さ方向に面するいずれか一方の端面に接合される導電性の搭載板と、該搭載板に接合されることで前記搭載板を介して前記端子板に電気接続される発熱体とを備え、
前記搭載板は、前記端子板の一方の端面に重ねて接合される積層板部と、前記一方の端面の周縁から外側に延びる延出板部とを有し、
前記発熱体は、前記延出板部の厚さ方向に面する両端面のいずれか一方に接合され
前記延出板部に、複数の前記発熱体が互いに間隔をあけて接合され、
前記延出板部のうち互いに隣り合う前記発熱体の接合領域の間に、前記搭載板の厚さ方向に貫通する区画スリットが、互いに隣り合う前記接合領域の配列方向に交差する方向に延びるように形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記積層板部と前記端子板とが、かしめによって接合されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記積層板部と前記端子板とをかしめ接合するかしめ部が、前記積層板部及び前記端子板に複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記搭載板と共に前記発熱体を挟み込むように前記発熱体に接合された厚板状のヒートシンクを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記搭載板が、前記積層板部と前記延出板部との間に形成されて、前記積層板部と前記延出板部とを前記搭載板の厚さ方向にずらして位置させる段差折曲部を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記延出板部のうち前記発熱体の接合領域に隣り合う領域に、当該接合領域の部分に対して折り曲げられて当該接合領域部分の厚さ方向に延びる折曲部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記延出板部に、複数の前記発熱体が互いに間隔をあけて接合され、
前記延出板部のうち前記発熱体の接合領域の間に前記折曲部が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記延出板部のうち前記発熱体の接合領域と前記積層板部との間に、前記搭載板の厚さ方向に貫通する隔離スリットが、前記接合領域及び前記積層板部の配列方向に交差する方向に延びるように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記搭載板が、前記端子板の熱膨張率よりも低い材料からなることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイオード製品のように大電流を流す半導体装置には、例えば特許文献1のように、導電性を有して板状に形成されたヒートシンク上に基板を重ねた上で、この基板の表面に、ダイオードをはじめとする半導体チップのように通電によって発熱する発熱体、及び、基板を介して発熱体に電気接続される外部接続用の端子板を固定して構成されたものがある。この半導体装置では、発熱体の熱を基板から熱伝導性の高いヒートシンクに逃がすことができるようになっている。
【0003】
また、この種の半導体装置には、前述した基板を省略して、ヒートシンク上に、外部接続用の端子板及び発熱体を順番に重ねて半田等の接合剤により固定したものもある。この半導体装置では、発熱体と端子板とが直接電気接続され、発熱体の熱は端子板を介してヒートシンクに逃がすことが可能である。
なお、端子板に発熱体を直接固定する半導体装置には、ヒートシンクと端子板との間に絶縁性を有する板材やモールド樹脂を介在させる等して、ヒートシンクを端子板や発熱体に対して電気的に絶縁させたものが多いが、例えばヒートシンクを発熱体に電気接続することで、ヒートシンクが外部接続用の端子として役割を果たすものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−238804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、端子板に発熱体を直接固定する半導体装置では、発熱体と端子板との間に熱膨張率の違いがあるため、発熱体の熱や半導体装置外部からの熱などに基づいて、発熱体に応力が加わってしまい、その結果として、発熱体にチップクラックが生じる等して半導体装置の特性が劣化する、という問題がある。例えば、発熱体が主にシリコンからなる半導体チップである場合、半導体装置が加熱冷却された際には、半導体チップよりも熱膨張率の大きい銅材料の端子板の方が大きく伸縮するため、半導体チップに応力がかかってしまう。
また、ヒートシンクを発熱体に電気接続する半導体装置では、例えば発熱源である発熱体の放熱性をさらに向上させるために、ヒートシンクと端子板との間に発熱体を挟みこむことも考えられる。しかしながら、ヒートシンクは端子板と同じ材料からなることが多いため、半導体装置が加熱冷却された際には、発熱体に大きな応力がかかってしまう、という問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、発熱体にかかる応力を緩和することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明の半導体装置は、導電性の端子板と、該端子板よりも薄い板状に形成されると共に、前記端子板の厚さ方向に面するいずれか一方の端面に接合される導電性の搭載板と、該搭載板に接合されることで前記搭載板を介して前記端子板に電気接続される発熱体とを備え、前記搭載板は、前記端子板の一方の端面に重ねて接合される積層板部と、前記一方の端面の周縁から外側に延びる延出板部とを有し、前記発熱体は、前記延出板部の厚さ方向に面する両端面のいずれか一方に接合され、前記延出板部に、複数の前記発熱体が互いに間隔をあけて接合され、前記延出板部のうち互いに隣り合う前記発熱体の接合領域の間に、前記搭載板の厚さ方向に貫通する区画スリットが、互いに隣り合う前記接合領域の配列方向に交差する方向に延びるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る半導体装置によれば、発熱体が端子板よりも厚さの薄い搭載板に接合されていることで、発熱体の熱や半導体装置外部からの熱などに基づいて半導体装置が加熱冷却されても、従来と比較して、発熱体にかかる応力を緩和することができる。
本発明の構成によって発熱体にかかる応力を緩和できる理由としては、搭載板が端子板よりも薄く形成されていることで、半導体装置の加熱冷却に基づいて搭載板がその端面に沿う方向に伸縮しようとする力が、端子板がその端面に沿う方向に伸縮しようとする力よりも小さくなっていることが考えられる。また、搭載板を端子板と別個に形成していることで、端子板が伸縮しようとする力が、端子板と重ならない搭載板の延出板部、及び、これに接合される発熱体に伝わり難くなっていることが考えられる。
【0009】
さらに、本発明に係る半導体装置では、端子板とは別個の搭載板に発熱体を接合するように構成されているため、様々な大きさや形状の発熱体に対応する搭載板を用意するだけで、同一の形状や大きさの端子板を用いて様々な構成の半導体装置を製造することが可能となる。すなわち、端子板の汎用性を向上させて半導体装置の製造コスト削減を図ることができる。
また、本発明に係る半導体装置では、延出板部の複数の接合領域部分が半導体装置の加熱冷却に対して個別で伸縮するようになるが、区画スリットが形成されていない場合と比較して、延出板部の伸縮量が小さくなるため、発熱体にかかる応力をさらに低減することができる。
【0010】
そして、前記半導体装置においては、前記積層板部と前記端子板とが、かしめによって接合されていることが好ましい。
また、前記積層板部と前記端子板とをかしめ接合するかしめ部は、前記積層板部及び前記端子板に複数形成されているとより好ましい。
なお、前記かしめ部は、搭載板及び端子板のいずれか一方に形成される突起部と、他方に形成されて前記突起部を挿通する挿通孔とによって構成されるものであり、かしめ接合は、前述した突起部を挿通孔に挿通させた上で突起部の先端部分を潰すことにより、搭載板と端子板とを接合することを意味している。
【0011】
これらの構成では、端子板に対する搭載板の位置決め精度が向上し、半導体装置の品質向上を図ることができる。また、端子板に対する搭載板の位置決めが容易となるため、半導体装置の製造効率を向上させることができる。
特に、前記かしめ部が複数形成されていれば、端子板に対する搭載板の向きも容易かつ高精度に設定できるため、半導体装置の品質向上及び製造効率の向上をさらに図ることができる。
【0012】
さらに、前記半導体装置は、前記搭載板と共に前記発熱体を挟み込むように前記発熱体に接合された厚板状のヒートシンクを備えていてもよい。
このような構成であっても、前述したように、発熱体が端子板よりも薄い搭載板に接合されているため、発熱体の熱や半導体装置外部からの熱などに基づいて半導体装置が加熱冷却されても、従来と比較して、発熱体にかかる応力を緩和することが可能である。
そして、上記構成では、発熱体がヒートシンクに直接接合されていることで、発熱体の熱を効率よくヒートシンクに逃がすことができる。
【0013】
また、前記半導体装置においては、前記搭載板が、前記積層板部と前記延出板部との間に形成されて、前記積層板部と前記延出板部とを前記搭載板の厚さ方向にずらして位置させる段差折曲部を有するとよい。
この構成では、積層板部と延出板部とが同一の平板をなす場合と比較して、半導体装置の加熱冷却に基づく端子板の伸縮が、延出板部に対してさらに伝わり難くなる、すなわち、発熱体を搭載する延出板部の伸縮をより小さく抑えることができるため、発熱体にかかる応力をさらに低減することができる。
【0014】
さらに、前記半導体装置では、前記延出板部のうち前記発熱体の接合領域に隣り合う領域に、当該接合領域の部分に対して折り曲げられて当該接合領域部分の厚さ方向に延びる折曲部が形成されているとよい。
そして、前記折曲部を有する前記半導体装置においては、前記延出板部に、複数の前記発熱体が互いに間隔をあけて接合され、前記延出板部のうち前記発熱体の接合領域の間に前記折曲部が形成されているとよい。
これらの構成では、搭載板をモールド樹脂内に埋設することで、折曲部がモールド樹脂に係合して延出板部の伸縮を抑制できるため、発熱体にかかる応力をさらに低減することが可能となる。
【0015】
さらに、前記半導体装置においては、前記延出板部のうち前記発熱体の接合領域と前記積層板部との間に、前記搭載板の厚さ方向に貫通する隔離スリットが、前記接合領域及び前記積層板部の配列方向に交差する方向に延びるように形成されていてもよい。
この構成では、隔離スリットが形成されていない構成と比較して、半導体装置の加熱冷却に基づく端子板の伸縮が積層板部側から延出板部に対してさらに伝わり難くなるため、発熱体にかかる応力をさらに低減することができる。
【0017】
さらに、前記半導体装置においては、前記搭載板が、前記端子板の熱膨張率よりも低い材料からなるとよい。
この構成では、半導体装置の加熱冷却に基づく搭載板の伸縮量が、端子板と比較してさらに小さくなるため、発熱体にかかる応力をさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発熱体が端子板よりも厚さの薄い搭載板に接合されているため、半導体装置が加熱冷却されても、従来と比較して、発熱体にかかる応力を緩和することができる。
また、半導体装置の製造に用いる端子板の汎用性向上を図り、半導体装置の製造コスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図2図1のA−A矢視断面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
図4】本発明の第三実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
図5】本発明の第四実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大上面図である。
図6】本発明の第五実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大上面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大上面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第一実施形態〕
以下、図1,2を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、この実施形態に係る半導体装置1は、厚板状のヒートシンク2、複数の端子板3,4、搭載板5及び複数の半導体チップ(発熱体)6をモールド樹脂7で封止して大略構成されている。
本実施形態の半導体チップ6は、大電流トランジスタ等のように通電により発熱するものであり、平面視矩形の板状に形成されて、上面及び下面の両方に電極パッドを有している。
【0021】
ヒートシンク2は、半導体チップ6等において生じた熱を効率よく放熱する役割を果たす。また、本実施形態のヒートシンク2は、半導体チップ6に電気接続されて外部接続用の端子としての役割も果たす。そのため、ヒートシンク2には、その上面2aから突出する複数の突出部21が形成されており、複数の半導体チップ6は半田等によって各突出部21上に個別に接合されている。これにより、ヒートシンク2と半導体チップ6とが電気接続されている。
このヒートシンク2は、少なくとも銅(Cu)、タングステン、モリブデン等のように導電性を有し、かつ、放熱性の高い材料によって形成されていればよいが、例えばこれに加えてNiメッキを施したものでもよい。
【0022】
各端子板3,4は、銅材などの導電性板材を平面視短冊状に形成して大略構成されており、その長手方向の一端部31,41がモールド樹脂7内に埋設されるインナーリード部をなし、他端部32,42がモールド樹脂7から外側に突出して半導体チップ6を外部に接続するためのアウターリード部をなしている。
また、各端子板3,4の一端部31,41と他端部32,42との間には、折り曲げ加工を施すことで一端部31,41を他端部32,42よりも端子板3,4の板厚方向にずらして低く位置させる段差板部33,43が形成されている。なお、この段差板部33,43は、一端部31,41と共にモールド樹脂7内に埋設されるインナーリード部をなしている。
【0023】
さらに、他端部32,42側に向く各端子板3,4の一端部31,41の上面には、後述する搭載板5をかしめによって接合するための突起部35,45が形成されている。
そして、本実施形態では、一対の端子板3,4の一端部31,41同士が互いに間隔をあけて向かい合うように、一対の端子板3,4がその長手方向に配列されている。また、一対の端子板3,4がその幅方向に間隔をあけて二組配列されている。
【0024】
搭載板5は、前述した端子板3,4と同様に、銅材等の導電性板材を平面視短冊状に形成して大略構成されている。ただし、搭載板5は、端子板3,4よりも厚さの薄い板状とされている。なお、搭載板5の板厚は、少なくとも端子板3,4の板厚未満であればよいが、搭載板5が半導体装置1の電気配線として機能することを考慮すれば、半導体装置1としての電気的特性を確保できる程度の厚みを有していることがより好ましく、具体的には、例えば端子板3,4の板厚の1/4以上とすることが好ましい。
【0025】
この搭載板5は、その長手方向の一端をなして端子板3,4の一端部31,41の上面(一方の端面)に重ねて配される積層板部51と、一端部31,41の上面の周縁から外側に延びる延出板部52とを有している。また、積層板部51と延出板部52との間には、折り曲げ加工を施すことで延出板部52を積層板部51よりも搭載板5の板厚方向にずらして低く位置させる段差折曲部53が形成されている。なお、積層板部51を端子板3の一端部31の上面に配した図2の状態では、段差折曲部53によって、延出板部52の下面が一端部31の下面よりも下方に位置しているが、例えば一端部31の下面と同等の高さ、あるいは、一端部31の下面よりも上方に位置していてもよい。
【0026】
積層板部51には、その厚さ方向に貫通する挿通孔55が形成されている。この挿通孔55は、前述した端子板3の突起部35と共に、端子板3の一端部31と搭載板5の積層板部51とをかしめ接合するかしめ部8を構成している。すなわち、積層板部51と一端部31とは、突起部35を挿通孔55に挿通した上で積層板部51を一端部31の上面に配し、この状態において突起部35の先端部分を潰すことで、かしめ接合されている。なお、本実施形態の半導体装置1では、搭載板5が一対の端子板3,4の一方(第一端子板3)のみに接合され、他方の端子板4(第二端子板4)には接合されていない。
そして、第一端子板3に接合された搭載板5は、その延出板部52が第一端子板3側から第二端子板4の一端部41に向けて延びるように配されている。なお、延出板部52の延出方向先端は、第二端子板4の一端部41に対して間隔をあけて配されている。
【0027】
そして、上記搭載板5は、ヒートシンク2と共に半導体チップ6を挟み込むように半導体チップ6の上面に接合されている。本実施形態においては、二つの半導体チップ6が、同一の搭載板5の長手方向に配列されるようにして延出板部52の下面(端面)に接合されている。これにより、半導体チップ6が、搭載板5を介して第一端子板3に電気接続されている。
【0028】
モールド樹脂7は、端子板3,4の他端部32,42が外部に突出するように、また、ヒートシンク2の下面2bが露出するように、ヒートシンク2の上面2a側及び側面2c、端子板3,4の一端部31,41及び段差板部33,43、搭載板5、並びに、半導体チップ6を封止している。なお、モールド樹脂7は第二端子板4と搭載板5との間に介在することで、第二端子板4と搭載板5との電気的な絶縁を図っている。
以上のように構成される本実施形態の半導体装置1では、例えば、通電によって半導体チップ6において生じた熱を、ヒートシンク2に伝え、ヒートシンク2の下面2bから外部に効率よく放熱することが可能である。
【0029】
そして、本実施形態の半導体装置1によれば、半導体チップ6が端子板3,4よりも厚さの薄い搭載板5に接合されているため、搭載板5の熱膨張率が半導体チップ6よりも大きくても、半導体チップ6の熱や半導体装置1外部からの熱などに基づいて半導体装置1が加熱冷却された際には、従来のように端子板3,4に半導体チップ6を直接接合する場合と比較して、前述した熱膨張率の差に基づいて半導体チップ6にかかる応力を緩和することができる。
【0030】
半導体チップ6にかかる応力を緩和できる理由としては、搭載板5がこれに接合される第一端子板3よりも薄く形成されていることで、例え第一端子板3及び搭載板5をなす材料が同等の熱膨張係数であっても、半導体装置1の加熱冷却に基づいて搭載板5がその端面(上面や下面)に沿う方向に伸縮しようとする力は、第一端子板3がその端面(上面や下面)に沿う方向に伸縮しようとする力よりも小さくなっていることが考えられる。また、搭載板5を第一端子板3と別個に形成していることで、第一端子板3が伸縮しようとする力は、第一端子板3と重ならない搭載板5の延出板部52、及び、これに接合される半導体チップ6に伝わり難くなっていることが考えられる。
【0031】
さらに、本実施形態の搭載板5では、積層板部51と延出板部52との間に段差折曲部53が形成されているため、段差折曲部53が形成されない場合と比較して、半導体装置1の加熱冷却に基づく第一端子板3の伸縮が、延出板部52に対してさらに伝わり難くなる。したがって、半導体チップ6を搭載する延出板部52の伸縮をより小さく抑えることができ、半導体チップ6にかかる応力をさらに低減することができる。
【0032】
なお、本実施形態の半導体装置1では、半導体チップ6がヒートシンク2と搭載板5とによって挟み込まれているものの、端子板3,4よりも薄い搭載板5に接合されているため、ヒートシンク2の熱膨張率が半導体チップ6よりも大きくても、半導体装置1が加熱冷却された際には、ヒートシンク2と端子板3,4との間に半導体チップ6を挟みこむ従来構成と比較して、熱膨張率の差に基づいて半導体チップ6にかかる応力を緩和することができる。
さらに、本実施形態の半導体装置1では、半導体チップ6がヒートシンク2に直接接合されているため、半導体チップ6において生じた熱を効率よくヒートシンク2に逃がすことができる。
【0033】
さらに、この半導体装置1によれば、半導体チップ6が端子板3,4とは別個の搭載板5に接合されているため、様々な大きさや形状の半導体チップ6に対応する搭載板5を用意するだけで、同一の形状や大きさの端子板3,4を用いて様々な構成の半導体装置1を製造することが可能となる。すなわち、端子板3,4の汎用性を向上させて半導体装置1の製造コスト削減を図ることができる。
また、この半導体装置1によれば、第一端子板3の一端部31と搭載板5の積層板部51とがかしめ接合されているため、第一端子板3に対する搭載板5の位置決め精度が向上し、半導体装置1の品質向上を図ることができる。さらに、第一端子板3に対する搭載板5の位置決めが容易となることで、半導体装置1の製造効率を向上させることもできる。
【0034】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について図3を参照して説明する。なお、ここでは、第一実施形態との相違点のみについて説明し、第一実施形態の半導体装置と同一の構成要素については同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図3に示すように、第二実施形態に係る半導体装置を構成する搭載板5は、延出板部52のうち半導体チップ6を接合する下面(端面)周縁に折曲部56を形成して構成されている。この折曲部56は、延出板部52のうち半導体チップ6の接合領域の部分(平板部分)に対して折り曲げられることで、この平板部分の厚さ方向に延びている。
なお、図示例では、折曲部56が延出板部52の平板部分の上面から突出するように形成されているが、例えばヒートシンク2に接触しない範囲で、延出板部52の平板部分の下面から突出するように形成されてもよい。また、図示例では、折曲部56が、延出板部52の延出方向先端に形成されているが、例えば延出方向に沿う延出板部52の側部に形成されてもよい。
【0035】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態について図4を参照して説明する。なお、ここでは、第一実施形態との相違点のみについて説明し、第一実施形態の半導体装置と同一の構成要素については同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図4に示すように、第三実施形態に係る半導体装置を構成する搭載板5は、延出板部52のうち二つの半導体チップ6を接合する領域の間に折曲部57を形成して構成されている。この折曲部57は、延出板部52のうち半導体チップ6の接合領域をなす平板部分に対して折り曲げられることで、この平板部分の厚さ方向に延びる断面視U字状に形成されている。
なお、図示例では、折曲部57が、いずれも延出板部52の平板部分の上面から突出するように形成されているが、例えばヒートシンク2に接触しない範囲で、延出板部52の平板部分の下面から突出するように形成されてもよい。
【0036】
これら第二、第三実施形態に係る半導体装置では、第一実施形態と同様の効果を奏する。また、これらの半導体装置によれば、搭載板5がモールド樹脂7内に埋設されることで、折曲部56,57がモールド樹脂7に係合して延出板部52の伸縮を抑制するため、第一実施形態の半導体装置1と比較して、半導体チップ6にかかる応力をさらに低減することができる。
【0037】
〔第四実施形態〕
次に、本発明の第四実施形態について図5を参照して説明する。なお、ここでは、第一実施形態との相違点のみについて説明し、第一実施形態の半導体装置と同一の構成要素については同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図5に示すように、第四実施形態に係る半導体装置をなす搭載板5は、延出板部52のうち半導体チップ6の接合領域と積層板部51との間に、搭載板5の厚さ方向に貫通する隔離スリット58を形成して構成されている。この隔離スリット58は、半導体チップ6の接合領域と積層板部51との間における延出板部52の幅寸法が、他の部分における延出板部52の幅寸法よりも小さくなるように形成されている。
なお、図示例では、隔離スリット58が、平面視した延出板部52の両側部の一方から他方に向けて延びるように一つだけ形成されているが、例えば両側部から窪むように一対形成されてもよい。また、図示例では、隔離スリット58は、平面視した延出板部52の幅方向に延びているが、少なくとも半導体チップ6の接合領域及び積層板部51の配列方向に交差するように延びていればよい。
【0038】
上記第四実施形態に係る半導体装置では、第一実施形態と同様の効果を奏する。また、この半導体装置によれば、半導体チップ6の接合領域と積層板部51との間における延出板部52の幅寸法が、他の部分における延出板部52の幅寸法よりも小さくなることで、半導体装置の加熱冷却に基づく第一端子板3の伸縮が積層板部51側から延出板部52に対してさらに伝わり難くなるため、半導体チップ6にかかる応力をさらに低減することが可能となる。
【0039】
〔第五実施形態〕
次に、本発明の第五実施形態について図6を参照して説明する。なお、ここでは、第一〜第三実施形態との相違点のみについて説明し、第一実施形態の半導体装置と同一の構成要素については同一符号を付す等して、その説明を省略する。
図6に示すように、第五実施形態に係る半導体装置をなす搭載板5は、延出板部52のうち互いに隣り合う二つの半導体チップ6の接合領域の間に、搭載板5の厚さ方向に貫通する区画スリット59を形成して構成されている。この区画スリット59は、二つの半導体チップ6の接合領域の間における延出板部52の幅寸法が、他の部分における延出板部52の幅寸法よりも小さくなるように形成されている。
なお、図示例では、区画スリット59が、平面視した延出板部52の両側部の一方から他方に向けて延びるように一つだけ形成されているが、例えば両側部から窪むように一対形成されてもよい。また、図示例では、延出板部52に形成される区画スリット59が、平面視した延出板部52の幅方向に延びているが、少なくとも二つの半導体チップ6の接合領域の配列方向に交差するように延びていればよい。
【0040】
上記第五実施形態に係る半導体装置では、第一実施形態と同様の効果を奏する。また、この半導体装置によれば、区画スリット59が形成されていることで、二つの半導体チップ6の接合領域部分が半導体装置の加熱冷却に対して個別で伸縮するようになり、区画スリット59が形成されていない場合と比較して延出板部52の伸縮量が小さくなるため、半導体チップ6にかかる応力をさらに低減することができる。
【0041】
以上、上記実施形態により本発明の詳細を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した全ての実施形態では、第一端子板3の一端部31と搭載板5の積層板部51とを接合するかしめ部8が、一つだけ形成されているが、例えば図7に示すように、複数形成されていてもよい。この構成では、第一端子板3に搭載板5を接合する際、第一端子板3に対する搭載板5の向きも容易かつ高精度に設定できるため、半導体装置の品質向上及び製造効率向上をさらに図ることができる。
また、搭載板5の積層板部51は、第一端子板3の一端部31の上面にかしめ接合されるとしたが、例えば図8に示すように、一端部31の下面にかしめ接合されてもよい。この場合、かしめ部8をなす第一端子板3の突起部35は、一端部31の下面から突出するように形成されていればよい。
【0042】
さらに、上述した全ての実施形態では、搭載板5の長手方向の一端のみが積層板部51として形成されているが、例えば図9に示すように、搭載板5の長手方向の両端が積層板部51として形成されてもよい。すなわち、搭載板5は、延出板部52の両端に積層板部51を形成して構成されてもよい。なお、一対の積層板部51を一対の端子板3,4の一端部31,41にそれぞれ接合する場合、例えば、一対の積層板部51が両方共に端子板3,4の一端部31,41の上面あるいは下面に接合されてもよいが、図示例のように、一方の積層板部51Aが第一端子板3の一端部31の上面に接合され、他方の積層板部51Bが第二端子板4の一端部41の下面に接合されてもよい。
【0043】
また、上述した全ての実施形態では、一対の端子板3,4の一方(第一端子板3)のみに搭載板5が接合されているが、例えば図10に示すように、一対の端子板3,4の両方(第一端子板3及び第二端子板4)の両方に、別個の搭載板5が接合されてもよい。なお、図示例では、図9の構成と同様に、一方の搭載板5が第一端子板3の一端部31の上面に接合され、他方の搭載板5が第二端子板4の一端部41の下面に接合されているが、例えば、一対の搭載板5が両方共に各端子板3,4の上面及び下面の一方に接合されてもよい。
さらに、上述した全ての実施形態では、半導体チップ6を接合するための突出部21が、ヒートシンク2の上面2aに一体に形成されているが、例えば図11に示すように、ヒートシンク2と別個に形成されてその上面2aに固定されていてもよい。この場合、突出部21やこれをヒートシンク2に接合するための接合剤等は、ヒートシンク2と同様に、導電性を有し、かつ、放熱性の高い材料からなることが好ましい。
【0044】
また、上述した全ての実施形態においては、ヒートシンク2が半導体装置1の外部端子として機能しているが、少なくとも半導体チップ6等の熱を効率よく放熱する機能を有していればよい。したがって、半導体チップ6は、ヒートシンク2に接合されることに限らず、例えばヒートシンク2と半導体チップ6とが離れて位置していても構わない。この場合、搭載板5に接合された半導体チップ6は、例えばボンディングワイヤ等の接続子を介して第二端子板4に電気接続されてもよい。
さらに、半導体チップ6は、搭載板5の延出板部52の下面に接合されることに限らず、例えば延出板部52の上面(端面)に接合されてもよい。この場合、ヒートシンク2と搭載板5や端子板3,4との間には、電気的な絶縁性を有するモールド樹脂7を介在させてもよいが、例えばモールド樹脂7とは別個の絶縁性板材を挟み込んでもよい。
【0045】
また、段差折曲部53を有する搭載板5では、延出板部52が積層板部51よりも低く位置しているが、少なくとも積層板部51及び延出板部52が搭載板5の厚さ方向にずれて位置すればよく、例えば延出板部52が積層板部51よりも高く位置してもよい。
さらに、搭載板5は、段差折曲部53を有して形成されることに限らず、少なくとも搭載板5を接合する端子板3,4よりも薄い板厚に設定されていれば、例えば図8に示すように段差折曲部53の無い平坦な板状に形成されても構わない。
【0046】
また、搭載板5は、端子板3,4と同等の熱膨張率を有する材料によって形成されることに限らず、例えば端子板の熱膨張率よりも低い材料によって形成されてもよい。この場合には、半導体装置の加熱冷却に基づく搭載板の伸縮量が、端子板と比較してさらに小さくなるため、半導体チップ6にかかる応力をさらに低減することができる。
さらに、端子板3,4と搭載板5とは、かしめによって接合されるとしたが、半田による接合等任意の接合手法によって接合されて構わない。
また、端子板3,4の形状は、上記実施形態のものに限らず、少なくとも端子板3,4のうち搭載板5に接合する部分が平板状に形成されていればよい。すなわち、端子板3,4は、例えば段差板部33,43のない平坦な板状に形成されていてもよい。
【0047】
さらに、端子板3,4、搭載板5及び半導体チップ6の配列や数は、上記実施形態のものに限らず、半導体装置の仕様に応じて任意に設定されてよい。
また、上述した全ての実施形態の半導体装置は、発熱体として半導体チップ6を備えるとしたが、搭載板5に接合されることで第一端子板3や第二端子板4に電気接続されるものであれば、発熱体として他の電子部品・電気部品を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体装置
2 ヒートシンク
3 第一端子板
35 突起部
4 第二端子板
45 突起部
5 搭載板
51,51A,51B 積層板部
52 延出板部
53 段差折曲部
55 挿通孔
56 折曲部
57 折曲部
58 隔離スリット
59 区画スリット
6 半導体チップ(発熱体)
7 モールド樹脂
8 かしめ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11