(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
EGRシステムでは、吸気管と排気管とがEGR管を介して連結されており、EGR管を介して排気ガスが吸気管内に供給される。また、EGR管内には、EGRガス(吸気管内に流入する排気ガス)の流量を制御するためのEGR弁が設けられている。
【0003】
現在検討されている技術は、排気圧と吸気圧との差圧を検出し、その差圧に応じてEGR弁の開度を補正することによって、差圧の変動によってEGR率が変動することを抑制する。このような技術の一例が、例えば、本出願人による特許文献1に記載の技術である。
【0004】
ここで、EGR率、EGRガス量、吸入空気量、差圧、及び開度は、次の式(1
)の関係を満たしている。
EGR率=EGRガス量/(吸入空気量+EGRガス量)・・・(1)
また、EGRガス量
が、差圧
とEGR弁の開度
から求められることが知られている。
【0005】
したがって、EGR率は、吸入空気量、差圧、及びEGR弁の開度を検出することによって、特定される。このため、差圧の変動に応じて開度を変更することによって、EGR率を所定の目標率に保つことが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
EGRガス量は、上述したように、差圧×EGR弁の開度に比例する値として求められている。このため、平均排気圧が平均吸気圧よりも
低く、差圧が負の値を取る場合、EGRガス量を求めることができない。
【0008】
排気ガスの方が吸入空気よりも温度が高いため、通常、排気圧の方が吸気圧よりも高く、吸気管から排気管に吸入空気が逆流しない。一方、ターボチャージャー付のエンジンでは、吸気圧が高められる。この結果、吸気圧が排気圧よりも高い場合が発生する。ここで、吸気圧及び排気圧はそれぞれ、正確には、吸気圧及び排気圧の単位時間当たり平均値である、平均吸気圧及び平均排気圧を指している。吸気圧及び排気圧は、それぞれ吸気弁及び排気弁の開閉に応じて脈動するため、平均吸気圧が平均排気圧よりも高くても、瞬間的に排気圧が吸気圧よりも高くなる場合がある。このため、
平均吸気圧が
平均排気圧よりも高くても、EGR(排気再循環)の実施は可能である。なお、吸入空気が排気管内に流入するのを防止するために、EGR管内には、排気圧が吸気圧よりも高い場合にのみ開くリードバルブが設けられている。
【0009】
つまり、上述のEGRガス量の決定式(2)は、常に一定の差圧がEGR管内に作用している場合を想定しており、吸気圧及び排気圧の脈動によりリードバルブを介してEGRガスが吸気管内に流入する場合を想定していない。したがって、平均排気圧が平均吸気圧よりも
低い場合、EGR弁の開度を補正するための補正量を特定できない。補正量が特定できなければ、差圧の変動によるEGR率の変動を抑制するように、EGR弁の開度を補正することもできない。
【0010】
そこで、本発明は、平均排気圧が平均吸気圧よりも
低い場合の運転状態など、補正値が得られていない運転状態においても、EGR率を一定に保つようにEGR弁の開度の補正量を決定できる、
エンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
排気圧と吸気圧との差圧が変動しても、差圧、EGR弁の開度、及び吸入空気量に基づいて特定されるEGR率が所定の目標EGR率に保たれるように、開度を、差圧に対応する目標開度に補正するための補正量を決定する、EGR弁開度の補正量の決定方法であって、複数の異なる基準開度毎に設定されるマップであって、開度が基準開度に保たれているときの、エンジンの回転数、エンジンの負荷率、及び差圧の相関を示す差圧マップを作成する、差圧マップ作成工程と、目標開度が、目標EGR率、差圧、及び吸入空気量に基づいて特定されることと、差圧が回転数及び負荷率に基づいて特定されることとを利用して、回転数及び負荷率の異なる組合せ毎に、目標開度と基準開度との差である補正量を算出する、補正量算出工程と、回転数及び負荷率の異なる組合せ毎に得られる補正量に基づいて、開度が基準開度に保たれ且つEGR率が目標EGR率に保たれているときの、回転数、負荷率、及び補正量の相関を示す基本補正量マップを作成する、基本補正量マップ作成工程と、基本補正量マップに含まれる補正量の分布の傾向に基づいて、基本補正量マップに含まれない補正量の分布を推定することによって、基本補正量マップに含まれない補正量の推定値を取得し、開度が基準開度に保たれ且つEGR率が目標EGR率に保たれているときの、回転数、負荷率、及び補正量の推定値の相関を示す拡張補正量マップを作成する、拡張補正量マップ作成工程と、を備えている、EGR弁開度の補正量の決定方法を提供する。
【0012】
好ましくは、基本補正量マップに含まれる補正量は、差圧がゼロ又は正であるときの回転数及び負荷率の組合せ毎に対応する補正量であり、拡張補正量マップに含まれる補正量は、差圧が負であるときの回転数及び負荷率の組合せ毎に対応する補正量である。
【0013】
回転数を検出する、回転数検出工程と、負荷率を検出する、負荷率検出工程と、吸入空気量を検出する、吸入空気量検出工程と、前記EGR弁開度の補正量の決定方法によって得られる複数の基本補正量マップ及び拡張補正量マップに基づいて、基準開度、回転数、及び負荷率に対応する補正量を特定する、補正量特定工程と、特定された補正量及び基準開度に対応する目標開度に開度を制御する開度制御工程と、を備えている、EGR弁開度の制御方法を提供する。
【0014】
回転数を検出する、回転数検出部と、負荷率を検出する、負荷率検出部と、
吸入空気量を検出する、吸入空気量検出部と、前記EGR弁開度の補正量の決定方法によって得られる複数の基本補正量マップ及び拡張補正量マップに基づいて、基準開度、回転数、及び負荷率に対応する補正量を特定する、補正量マップ特定部と、特定された補正量マップに基づいて、基準開度、回転数、及び負荷率に対応する補正量を特定する、補正量特定部と、特定された補正量及び基準開度に対応する目標開度に開度を制御する開度制御部と、を備えている、エンジンを提供する。
【発明の効果】
【0015】
開示に係るEGR弁開度の補正量の決定方法は、補正値の推定値に基づいて補正量を特定できるので、平均排気圧が平均吸気圧よりも高い場合の運転状態など、補正値が得られていない運転状態においても、EGR率を一定に保つようにEGR弁12の開度の補正量を決定できる。
【0016】
開示に係るEGR弁開度の制御方法及びエンジンは、平均排気圧が平均吸気圧よりも高い場合の運転状態など、補正値が得られていない運転状態においても、EGR率を一定に保つようにEGR弁の開度を補正できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、エンジン1の構成図である。エンジン1は、シリンダヘッド2、シリンダブロック3、複数のシリンダ4、クランクシャフト5、吸気管6、排気管7、排気再循環装置(以下、EGR装置)8、ターボチャージャー9、及びコモンレール式燃料噴射装置(以下、コモンレール)10を備えている。
【0019】
EGR装置8は、EGR管11、EGR弁12、及びリードバルブ13を備えている。EGR管11は、排気管7と吸気管6とを連通する。EGR弁12及びリードバルブ13は、EGR管11内に配置されている。EGR弁12は、自らの開度を変更することによって、EGR管11内を通過する排気ガスの流量を変更する。リードバルブ13は、EGR管11内において、排気管7から吸気管6への排気ガスの流れのみを許容し、吸気管6から排気管7への排気ガスの流れを禁止する。以下、EGR管11を通過して排気管7から吸気管6へ流れる排気ガスを、EGRガスと称する。
【0020】
また、エンジン1は、制御のための構成として、制御装置20、回転数センサ21、及びエアフロメーター22を備えている。回転数センサ21は、クランクシャフト5の回転数を検出する。エアフロメーター22は、吸気管6を通過する混合吸気量を検出する。ここで、エアフロメーター22は吸気管6内においてEGR管11の出口よりも下流側に配置されている。このため、混合吸気量は、外気にEGRガスが混入されたガス量であり、つまり吸入空気量とEGRガス量との合計量を指している。制御装置20は、回転数センサ21及びエアフロメーター22の検出情報を取得できる。また、制御装置20は、コモンレール10及びEGR弁12を制御する。
【0021】
制御装置20は、排気圧と吸気圧との差圧が変動しても、EGR率が所定の目標率に保たれるように、差圧に対応する目標開度に、EGR弁12の開度を制御するように構成されている。制御装置20は、EGR弁12の開度を目標開度に補正するための補正量マップCMを記憶している。補正量マップCMは、後述のEGR弁開度の補正量の決定方法によって作成される。
【0022】
図2〜
図4を参照して、EGR弁開度の補正量の決定方法を説明する。この補正量の決定方法は、差圧マップ作成工程、補正量算出工程、基本補正量マップ作成工程、及び拡張補正量マップ作成工程を、備えている。
【0023】
補正量の決定方法は、EGR率が所定の目標EGR率に保たれるように、目標EGR率を実現する目標開度を得るための補正量を決定する。ここで、補正量は、目標開度と所定の基準開度との差である。また、基準開度の大きさに応じて、差圧、EGR弁の開度、及び吸入空気量に基づいて特定されるEGR率が変化する。EGR率に応じて排気圧が変化するため、差圧も変化し、差圧に応じて設定される補正量も変化する。つまり、目標EGR率の大きさだけでなく基準開度の大きさによって、補正量の大きさが異なっている。基準開度毎に補正量が設定されるため、異なる基準開度の数を増やせば、それだけ補正の精度は向上する。しかし、基準開度毎に多量の補正量のデータが設定されるため、制御装置20に記憶させるデータ量が増大する。このため、基準開度の数は、一定数に限定されている。
【0024】
本実施形態では、所定の基準開度として、第1〜第6基準開度(%)が設定されており、0%、20%、40%、60%、80%、及び100%からなっている。第n基準開度は、第1〜第6基準開度のいずれか1つを指している。基準開度毎に、後述の差圧マップ及び補正量マップCMが設定されている。
【0025】
(差圧マップ作成工程)
図2は、開度が第n基準開度に保たれているときに、回転数、負荷率、及び差圧の相関を示す差圧マップを示す図である。
図2において、横軸はエンジン1の回転数を示しており、縦軸はエンジン1の負荷率を示している。負荷率は、エンジン1の1回転当たりの燃料噴射量に関する割合であって、設定可能な最大の燃料噴射量に対する現在の燃料噴射量の割合を示している。ここで、エンジン1は回転数を一定に保つように制御されるため、エンジン1に掛かる負荷の増大に応じて、燃料噴射量が増大する。差圧は、排気圧から吸気圧を引いて得られる圧力差を示している。
【0026】
なお、本明細書において、吸気圧及び排気圧はそれぞれ、吸気圧及び排気圧の単位時間当たり平均値である、平均吸気圧及び平均排気圧を指している。
【0027】
差圧マップ作成工程は、
図2に示される差圧マップを作成する。
図2において、回転数及び負荷率の異なる組合せ毎に、回転数及び負荷率に対応する差圧が得られている。
図2において、各差圧データセットSDは、回転数及び負荷率の異なる組合せによって特定される、回転数、負荷率、及び差圧よりなる一組のデータを示している。ここで、エンジン1の特性により、実験的に、回転数及び負荷率に対応する差圧を検出することができる。
【0028】
図2には、複数の等圧線が記されている。等圧線は、差圧マップ上で同一の差圧を示す座標(回転数、負荷率)の集まりである。各等圧線における差圧の大きさは、例えば、−1D、0、+1〜+7Dのいずれか1つである。符号(D)は、一定量の差圧の絶対値を示している。符号(+)及び(−)は、差圧が正であるか負であるかを示している。符号(D)に付されている数字(2)等は、一定量の差圧に対する比率を示している。+4Dの差圧の大きさは、+2Dの差圧の2倍である。
【0029】
複数の等圧線は、差圧の分布の傾向を示している。
図2の左上の領域から右の領域に向けて、差圧が上昇している。
図2の左上の領域は、差圧が負になっている負圧領域Amであり、他の領域は、差圧が正になっている正圧領域Apである。
【0030】
(補正量算出工程)
補正量算出工程は、回転数及び負荷率の異なる組合せ毎に、目標開度と基準開度との差である補正量を算出する。補正量は、式(3)に示すように、目標開度と基準開度との差である。つまり、補正後の開度としての目標開度は、式(4)に示すように、基準開度と補正量との和である。
補正量=目標開度−基準開度・・・(3)
目標開度(補正後の開度)=基準開度+補正量・・・(4)
【0031】
ここで、EGR率、EGRガス量、吸入空気量、差圧、及び開度は、次の式(1)、(2)の関係を満たしている。
EGR率=EGRガス量/(吸入空気量+EGRガス量)・・・(1)
EGRガス量=比例定数×差圧×EGR弁の開度・・・(2)
【0032】
開度が、EGR率、差圧、及び吸入空気量に基づいて特定されるので、目標開度は、目標EGR率、差圧、及び吸入空気量に基づいて特定される。したがって、目標開度と基準開度との差である補正量が、基準開度、目標EGR率、差圧、及び吸入空気量に基づいて特定される。また、
図2の補正マップに示されるように、差圧は、回転数及び負荷率に基づいて特定される。このため、補正量は、基準開度、目標EGR率、回転数、負荷率、及び吸入空気量に基づいて特定される。基準開度、目標EGR率、及び吸入空気量は、運転条件等によって特定される定数であり、回転数、負荷率、及び補正量が変数である。このため、補正量算出工程において、回転数及び負荷率の異なる組合せ毎に、補正量が得られている。
【0033】
ただし、差圧が負である場合、補正量を、基準開度、目標EGR率、回転数、負荷率、及び吸入空気量に基づいて特定できない。このため、負圧領域Am内に含まれる回転数及び負荷率の組合せからは、補正量が得られない。
【0034】
(基本補正量マップ作成工程)
基本補正量マップ作成工程は、例えば
図3に示される基本補正量マップBCMを作成する。基本補正量マップBCMは、EGR率が目標EGR率に保たれているときの、回転数、負荷率、及び補正量の相関を示している。基本補正量マップBCMは、回転数及び負荷率の異なる組合せ毎に得られる補正量に基づいて作成される。また、異なる基準開度毎に、異なる基本補正量マップBCMが作成される。
【0035】
図3は、開度が第n基準開度に保たれ且つEGR率が目標EGR率に保たれているときの、回転数、負荷率、及び補正量の相関を示す基本補正量マップBCMを示す図である。
図3において、横軸は回転数を示しており、縦軸は負荷率を示している。
図3において、回転数及び負荷率の異なる組合せ毎に、回転数及び負荷率に対応する補正量が示されている。
図3において、各補正量データセットSCは、回転数及び負荷率の異なる組合せによって特定される、回転数、負荷率、及び補正量よりなる一組のデータを示している。
【0036】
図3には、複数の補正量の等量線が記されている。等量線は、基本補正量マップBCM上で同一の補正量を示す座標(回転数、負荷率)の集まりである。等量線における補正量の大きさは、例えば、0.2C、0.4C、0.6C〜1.6Cのいずれか1つである。ここで、等量線における補正量の大きさは、0.2C毎に等間隔に設定されている。符号(C)は、一定量の補正量を示している。符号(C)に付されている数字(2)等は、一定量の補正量に対する比率を示している。0.4Cの補正量の大きさは、1.0Cの補正量の0.4倍である。つまり、任意の補正量を基準にして、他の補正量が、その基準の補正量に対する比率を用いて表現されている。
【0037】
複数の等量線は、補正量の分布の傾向を示している。
図3の上の領域から下の領域に向けて、補正量が増加している。
【0038】
図2の差圧マップ及び
図3の基本補正量マップBCMは、共に、回転数及び負荷率を要素としているので、差圧マップ及び基本補正量マップBCMは原則として互いに対応している。しかし、上述したように、負圧領域Amでは補正量が得られていない。このため、
図3の基本補正量マップBCMは、負圧領域Amに対応する補正不能領域Ancを含んでいない。
図3の基本補正量マップBCMは、
図2の差圧マップと比べて、左上の領域が欠けている。
【0039】
(拡張補正量マップ作成工程)
拡張補正量マップ作成工程は、開度が第n基準開度に保たれ且つEGR率が目標EGR率に保たれているときの、回転数、負荷率、及び補正量の推定値の相関を示す拡張補正量マップECMを作成する。ここで、上述の基本補正量マップBCMは、
図2の差圧マップの正圧領域Apに対応する領域における、回転数、負荷率、及び補正量の相関を示している。このため、基本補正量マップBCMは、負圧領域Amに対応する領域における、回転数、負荷率、及び補正量の相関を示していない。そこで、負圧領域Amに対応する領域における、回転数、負荷率、及び補正量の相関を示すマップとして、拡張補正量マップECMが作成される。ただし、負圧領域Amにおいて補正量が得られないため、拡張補正量マップECMでは、補正量の代わりに、補正量の推定値が用いられている。補正量の推定値は、基本補正量マップBCMに含まれる補正量の分布の傾向に基づいて、基本補正量マップBCMに含まれない補正量の分布を推定することによって、取得される。
【0040】
図4は、開度が第n基準開度に保たれ且つEGR率が目標EGR率に保たれているときの、回転数、負荷率、及び補正量の相関を示す基本補正量マップBCMを示す図である。拡張補正量マップ作成工程は、
図3の基本補正量マップBCMに基づいて、補正不能領域Ancを埋める拡張補正量マップECMを作成する。
図4において、回転数及び負荷率の異なる組合せ毎に、回転数及び負荷率に対応する補正量の推定値が示されている。
図4において、各推定補正量データセットSCeは、回転数及び負荷率の異なる組合せによって特定される、回転数、負荷率、及び補正量の補正値よりなる一組のデータを示している。
【0041】
補正量の推定値は、例えば、次のようにして取得される。
図3において、等量線は、補正量の一定値毎に設定されており、隣り合う等量線間における補正量の差は、(0.2C)である。このため、実線で示される等量線の分布の傾向に基づいて、補正不能領域Ancにおける等量線の分布を推定できる。
図3において、推定された等量線が、二点鎖線により示されている。この結果、補正不能領域Ancにおける補正量の推定値が取得され、拡張補正量マップECMが作成される。あるいは、補正量データセットSCに基づく曲線当てはめにより、回転数及び負荷率を独立変数とし、補正量を従属変数とする関数を作成し、該関数に基づいて、補正不能領域Ancにおける補正量の推定値を取得しても良い。
【0042】
図4に示される補正量マップCMは、基本補正量マップBCM及び拡張補正量マップECMを合わせることによって作成されている。基本補正量マップBCM及び拡張補正量マップECMが基準開度毎に設定されるため、補正量マップCMも基準開度毎に設定されている。このため、制御装置20は、複数の基準開度の異なる補正量マップCMを記憶している。
【0043】
本実施形態に係る補正量の決定方法は、補正値の推定値に基づいて補正量を特定できるので、補正値が得られていない運転状態においても、EGR率を一定に保つようにEGR弁12の開度の補正量を決定できる。ここで、運転状態は、回転数及び負荷率によって特定される状態を指しており、例えば差圧の大きさを指している。
【0044】
図5を参照して、EGR弁開度の制御方法を説明する。EGR弁開度の制御方法は、EGR弁開度の補正量の決定方法によって得られる複数の補正量マップSMに基づいて、運転状態に対応する開度の補正量を特定し、EGR率が一定に保たれるように開度を制御する。
【0045】
EGR弁開度の制御方法は、回転数検出工程、負荷率検出工程、吸入空気量検出工程、補正量マップ特定工程、及び開度制御工程を、備えている。
【0046】
図5は、開度の制御に関係する構成のブロック図である。
図5において、制御装置20は、負荷率検出部201、補正量特定部202、及び開度制御部203を備えている。
【0047】
回転数検出工程において、回転数センサ(回転数検出部)21は、エンジン1の回転数を検出する。
【0048】
負荷率検出工程において、負荷率検出部201は、コモンレール10に指令する燃料噴射量に基づいて、負荷率を検出する。上述したように、制御装置20は、負荷の変動に応じて燃料噴射量の指令値を変更することによって、回転数を一定に保つようにエンジン1を制御する。このため、制御装置20は、燃料噴射量の指令値の変動に基づいて、負荷の変動を把握できる。
【0049】
吸入空気量検出工程において、エアフロメーター(吸入空気量検出部)22は、吸気管6を通過する混合吸気量を検出する。ここで、上述したように、混合吸気量は、吸入空気量とEGRガスとの合計量である。このため、吸入空気量を、混合吸入量及びEGRガスに基づいて特定できる。
【0050】
補正量特定工程において、補正量特定部202は、複数の補正量マップCMに基づいて、基準開度、回転数、及び負荷率に対応する補正量を特定する。補正量特定工程は、2段階の処理からなっている。第1段階では、補正量特定部202は、複数の補正量マップCMのうち、基準開度が開度の現在値に最も近い補正量マップを特定する。ここで、制御装置20が開度の指令値を作成し、その指令値に基づいてEGR弁12の開度が制御される。つまり、開度の現在値は、補正前の開度であって、現時点における開度の指令値を指している。例えば、開度の現在値が35%であるとき、開度の現在値に最も近い基準開度は、第1〜第6基準開度のうち、第3基準開度の40%である。この場合、第3基準開度に対応する補正量マップCMが、特定される。第2段階では、補正量特定部202は、特定された補正量マップCMに基づいて、回転数及び負荷率に対応する補正量を特定する。ここで、補正量の特定に用いられる回転数及び負荷率は、回転数検出工程及び負荷率検出工程において検出された回転数及び負荷率である。
【0051】
開度制御工程において、開度制御部203は、特定された補正量及び基準開度に対応する目標開度に、開度を制御する。上述の式(4)に示されるように、目標開度は、基準開度と補正量との和である。このようにして、EGR率を一定に保つようにEGR弁の開度が補正される。
【0052】
本実施形態に係るEGR弁開度の制御方法は、補正値が得られていない運転状態においても、EGR率を一定に保つようにEGR弁の開度を補正できる。