(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水素ガスおよび一酸化炭素ガスを主成分とする合成ガスと、媒体液中に触媒粒子を懸濁させてなるスラリーとを接触させることによって炭化水素化合物を合成する炭化水素合成反応装置であって、
前記スラリーを収容するとともに前記合成ガスが供給される反応容器と、
請求項1から9のいずれか1項に記載の温度制御システムと、を備えていることを特徴とする炭化水素合成反応装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、FT合成反応は発熱反応であることから、反応容器の底部側において一酸化炭素ガスと水素ガスとがFT合成反応すると、反応容器の底部側の温度が上昇する。これにより、反応容器の底部側においてFT合成反応が更に促進されることとなり、その結果、反応容器内におけるFT合成反応が、反応容器の底部側に集中するおそれがある。この場合、炭化水素化合物の生産量が低下したり、反応容器の底部側の温度が極めて高くなったりする可能性がある。なおこのように、反応容器内の温度が局所的ではあるものの極めて高くなる可能性があることから、反応容器には高い耐熱性を具備させておく必要があり、反応容器の設計に温度条件の制約があるという問題もある。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、反応容器内の温度を高精度に制御することができる温度制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る温度制御システムは、内部で発熱反応が生じる反応容器内の反応熱を回収し、前記反応容器内の温度を制御する温度制御システムであって、前記反応容器の底部に配設され、内部を液体冷媒が流通する下除熱部と、前記反応容器において前記下除熱部よりも上方に配設され、内部を液体冷媒が流通する上除熱部と、
前記底部内の温度を測定する反応熱温度測定部と、を備え、前記下除熱部には、
前記反応熱温度測定部の測定結果に基づいて制御される第1温調部により温度が調節された液体冷媒が供給され、前記上除熱部には、前記第1温調部とは異なる第2温調部により温度が調節された液体冷媒が供給され
、前記第1温調部は、液体冷媒が気液平衡状態で収容された冷媒ドラムと、前記冷媒ドラム内の圧力を制御する圧力制御部と、を備え、前記圧力制御部は、前記反応熱温度測定部により測定された前記底部内の実温度が、前記底部内の温度設定値に対して有する偏差に基づいて前記冷媒ドラム内の圧力を制御することで、前記冷媒ドラム内の液体冷媒の温度を制御し、前記冷媒ドラムには、その内部に液体冷媒を補給する冷媒補給部が設けられ、前記冷媒補給部は、前記冷媒ドラムの気相部内に配設され、前記冷媒補給部には、液体冷媒を前記気相部に散布する散布部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、下除熱部に、第1温調部により温度が調節された液体冷媒が供給され、かつ上除熱部に、第2温調部により温度が調節された液体冷媒が供給されるので、下除熱部と上除熱部とに温度が異なる液体冷媒を供給することができる。これにより、下除熱部による反応熱の回収量と、上除熱部による反応熱の回収量と、を異ならせることができる。
【0009】
したがって、反応容器の底部側の温度が局所的に上昇しようとしたときに、下除熱部に供給される液体冷媒の温度を第1温調部により低めることで、下除熱部による反応熱の回収量を高めることができる。これにより、反応容器の底部側の温度が上昇するのを抑制することができる。
しかもこのとき、前述のように下除熱部による反応熱の回収量と、上除熱部による反応熱の回収量と、を異ならせることができるので、下除熱部による反応熱の回収量を高めるのに伴って、上除熱部による反応熱の回収量が高くなりすぎるのを抑えることが可能になる。これにより、反応容器において下除熱部よりも上側に位置する部分で、反応熱を適度に回収しつつも過度に回収するのを抑制することができる。
【0011】
この場合、第1温調部が、反応熱温度測定部の測定結果に基づいて制御されているので、反応容器の底部における反応熱量が変動したとしても、その変動に追従するように、下伝熱部に供給される液体冷媒の温度を調節することができる。
【0013】
この場合、冷媒ドラム内に液体冷媒が気液平衡状態で収容されていることから、冷媒ドラム内の圧力と液体冷媒の温度とがほぼ1対1で対応している。これを利用して、圧力制御部が、冷媒ドラム内の圧力を制御することで、冷媒ドラムから下除熱部に供給される液体冷媒の温度を直接制御し、下除熱部による反応熱の回収量を制御する。
すなわち、この温度制御システムでは、まず、反応容器の底部内の実温度が温度設定値に対して有する偏差に基づいて、圧力制御部が冷媒ドラム内の圧力を制御する。すると、冷媒ドラム内の気液平衡状態の相関関係に応じて冷媒ドラム内の液体冷媒の温度が変化する。この液体冷媒は下除熱部に供給されるため、液体冷媒の温度変化に応じて下除熱部にて回収される熱量が変化する。
【0015】
この場合、冷媒補給部が、冷媒ドラムの気相部内に配設されているので、冷媒補給部から冷媒ドラム内の温度よりも低温の液体冷媒が補給されたとしても、この液体冷媒と冷媒ドラム内の蒸気との間で熱移動が行われ、液体冷媒が蒸気と同じ温度となって冷媒ドラム内の液相部に蓄えられるため、冷媒ドラム内の気相部と液相部との間に温度差が生じない。
【0017】
この場合、冷媒補給部に、液体冷媒を前記気相部に散布する散布部が形成されているので、冷媒補給部から補給される液体冷媒の表面積を大きくすることで、冷媒ドラム内の蒸気と液体冷媒との間で熱移動をより円滑に行わせることができる。
【0018】
また、請求項
2に係る温度制御システムは、前記冷媒補給部は、管状に形成され、前記散布部は、前記冷媒補給部に形成された貫通孔により構成されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項
3に係る温度制御システムは、
内部で発熱反応が生じる反応容器内の反応熱を回収し、前記反応容器内の温度を制御する温度制御システムであり、前記反応容器の底部に配設され、内部を液体冷媒が流通する下除熱部と、前記反応容器において前記下除熱部よりも上方に配設され、内部を液体冷媒が流通する上除熱部と、前記底部内の温度を測定する反応熱温度測定部と、を備え、前記下除熱部には、前記反応熱温度測定部の測定結果に基づいて制御される第1温調部により温度が調節された液体冷媒が供給され、前記上除熱部には、前記第1温調部とは異なる第2温調部により温度が調節された液体冷媒が供給され、前記第1温調部は、液体冷媒が気液平衡状態で収容された冷媒ドラムと、前記冷媒ドラム内の圧力を制御する圧力制御部と、を備え、前記圧力制御部は、前記反応熱温度測定部により測定された前記底部内の実温度が、前記底部内の温度設定値に対して有する偏差に基づいて前記冷媒ドラム内の圧力を制御することで、前記冷媒ドラム内の液体冷媒の温度を制御する温度制御システムであって、前記下除熱部で生じた蒸気と液体冷媒との混相流体を前記冷媒ドラムに戻す戻り配管と、前記冷媒ドラム内の蒸気を系外に排出する蒸気出口配管と、液体冷媒からなる補給水を、前記系外に排出される蒸気の量に見合った補給水量、前記戻り配管に供給する補給配管と、を備えていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項
4に係る温度制御システムは、前記冷媒ドラム内の比較的高い温度と補給水の比較的低い温度との差分と前記反応
容器内の反応熱量との積に基づいて前記補給水量を決定する制御手段と、前記制御手段で決定された前記補給水量に応じて前記補給配管から前記戻り配管に供給する補給水量を設定する補給水調整手段と、を更に備えていることを特徴とする。
【0021】
また、請求項
5に係る温度制御システムは、前記制御手段で決定する補給水量は次式によって演算されるようにしたことを特徴とする。
WL3=Q/{Cp×(t1−t3)+r}
但し、WL3:補給水量
Q:前記底部内での反応熱量
Cp:液体冷媒の比熱
t1:前記冷媒ドラムまたは前記底部内の温度
t3:補給水の温度
r:液体冷媒の蒸発潜熱。
【0022】
また、請求項
6に係る温度制御システムは、前記戻り配管と前記補給配管との合流部において、前記補給配管は前記戻り配管内の混相流体の進行方向に沿って前記戻り配管と鋭角の角度で接続されていることを特徴とする。
【0023】
また、請求項
7に係る温度制御システムは、前記補給配管には、蒸気の逆流を防ぐシール部が設けられていることを特徴とする。
【0024】
また、請求項
8に係る温度制御システムは、前記戻り配管と前記補給配管との合流部において、前記補給配管に補給水を前記戻り配管内に噴霧するスプレーノズルが設けられていることを特徴とする。
また、請求項9に係る温度制御システムは、内部で発熱反応が生じる反応容器内の反応熱を回収し、前記反応容器内の温度を制御する温度制御システムであり、前記反応容器の底部に配設され、内部を液体冷媒が流通する下除熱部と、前記反応容器において前記下除熱部よりも上方に配設され、内部を液体冷媒が流通する上除熱部と、前記反応容器において前記上除熱部が配設された部分の温度を測定する反応熱温度測定部と、を備え、前記下除熱部には、第1温調部により温度が調節された液体冷媒が供給され、前記上除熱部には、前記反応熱温度測定部の測定結果に基づいて制御される、前記第1温調部とは異なる第2温調部により温度が調節された液体冷媒が供給され、前記第2温調部は、液体冷媒が気液平衡状態で収容された冷媒ドラムと、前記冷媒ドラム内の圧力を制御する圧力制御部と、を備え、前記圧力制御部は、前記反応熱温度測定部により測定された実温度が、温度設定値に対して有する偏差に基づいて前記冷媒ドラム内の圧力を制御することで、前記冷媒ドラム内の液体冷媒の温度を制御する温度制御システムであって、前記上除熱部で生じた蒸気と液体冷媒との混相流体を前記冷媒ドラムに戻す戻り配管と、前記冷媒ドラム内の蒸気を系外に排出する蒸気出口配管と、液体冷媒からなる補給水を、前記系外に排出される蒸気の量に見合った補給水量、前記戻り配管に供給する補給配管と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
また、請求項
10に係る炭化水素合成反応装置は、水素ガスおよび一酸化炭素ガスを主成分とする合成ガスと、媒体液中に触媒粒子を懸濁させてなるスラリーとを接触させることによって炭化水素化合物を合成する炭化水素合成反応装置であって、前記スラリーを収容するとともに前記合成ガスが供給される反応容器と、前記温度制御システムと、を備えていることを特徴とする。
【0026】
また、請求項
11に係る炭化水素合成反応システムは、前記炭化水素合成反応装置と、炭化水素原料を改質して前記合成ガスを生成し、前記合成ガスを前記反応容器に供給する合成ガス生成ユニットと、前記炭化水素化合物から液体燃料を製造するアップグレーディングユニットと、を備えていることを特徴とする。
【0027】
また、
参考例に係る温度制御方法は、内部で発熱反応が生じる反応容器の底部に配設され、内部を液体冷媒が流通する下除熱部と、前記反応容器において前記下除熱部よりも上方に配設され、内部を液体冷媒が流通する上除熱部と、を備える温度制御システムを用い、前記反応容器内の反応熱を回収し、前記反応容器内の温度を制御する温度制御方法であって、前記下除熱部に供給する液体冷媒の温度を、前記上除熱部に供給する液体冷媒の温度よりも低くすることを特徴とする。
【0028】
この発明では、下除熱部に供給する液体冷媒の温度を、上除熱部に供給する液体冷媒の温度よりも低くするか、若しくは単独で流量を増やして回収熱量を増大させることができる。したがって、反応容器の底部側の温度が上昇するのを抑制することが可能で、かつ反応容器において下除熱部よりも上側に位置する部分で、反応熱を適度に回収しつつも過度に回収するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に係る発明によれば、反応容器の底部側の温度が上昇するのを抑制することが可能で、かつ反応容器において下除熱部よりも上側に位置する部分で、反応熱を適度に回収しつつも過度に回収するのを抑制することができるので、反応容器内の温度を高精度に制御することができる。
また前述のように、反応容器内の温度を高精度に制御するという作用効果を、下除熱部と上除熱部とに温度が異なる液体冷媒を供給することにより奏功させることができる。したがって、例えば下除熱部および上除熱部をそれぞれ流通する液体冷媒の流量調節などをしなくてもよく、前述の作用効果を簡便かつ確実に奏功させることができる。
【0030】
また、発熱容器の底部における反応熱量が変動したとしても、その変動に追従するように、下伝熱部に供給される液体冷媒の温度を調節することができるので、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0031】
また、圧力制御部が、反応容器の底部内における実温度の温度設定値に対する偏差に基づいて冷媒ドラム内の圧力を制御することにより、下除熱部に供給される液体冷媒の温度を変化させ、下除熱部にて回収される熱量を調節することができる。したがって、反応容器の底部内の実温度が温度設定値に対して高い場合には、下除熱部により回収される熱量が多くなるように、また、前記実温度が温度設定値に対して低い場合には、下除熱部により回収される熱量が少なくなるように、冷媒ドラム内の圧力を制御することで、反応容器の底部内の温度を、温度設定値を目標に制御することができる。
また、圧力制御部が、下除熱部に供給する液体冷媒の温度と1対1に対応する冷媒ドラムの圧力を制御することで、冷媒ドラムから下除熱部に供給される液体冷媒の温度を直接制御することができる。したがって、外部で温度を制御した液体冷媒を冷媒ドラムへ供給することで、冷媒ドラム内の液体冷媒の温度を制御する方法よりも、反応容器の底部内の温度制御を迅速に行うことができる。これにより、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
なお前述のように、外部で温度を制御した液体冷媒を冷媒ドラムへ供給することで、冷媒ドラム内の液体冷媒の温度を制御する方法では、外部から供給された液体冷媒と、冷媒ドラム内の液体冷媒と、の温度が均一になりにくく、反応容器の温度制御が高精度になされないおそれがある。
【0032】
また、冷媒補給部が、冷媒ドラムの気相部内に配設されているので、気相部にて液体冷媒と冷媒ドラム内の蒸気との間で効率よく熱の移動が行われるため、冷媒補給部から補給される液体冷媒を系外にて予熱しなくとも冷媒ドラム内で気相部と液相部との温度差が生じず、冷媒ドラム内の圧力と温度とを、気液平衡状態の相関関係に確実に保つことができる。
【0033】
また、冷媒ドラム内の蒸気と液体冷媒との間で熱移動をより円滑に行わせることができるので、冷媒ドラム内の圧力と温度とを、気液平衡状態の相関関係に一層確実に保つことができる。
【0034】
請求項
2に係る温度制御システムによれば、散布部が、冷媒補給部に形成された貫通孔により構成されているので、液体冷媒を確実に散布することができる。
【0035】
請求項
3に係る温度制御システムによれば、下除熱部で生じた蒸気と液体冷媒との混相流体を冷媒ドラムに戻す戻り配管に、系外に排出された蒸気の量に見合った補給水量を供給する補給配管を設けたから、系外に排出する蒸気流量に見合った補給水量を戻り配管に合流させて戻り配管内の飽和温度にある蒸気流量と直接混合させることで、冷媒ドラムに供給される前に、補給水を加熱・蒸発させることができることになり、冷媒ドラム内の気液温度を常に飽和温度に維持できる。
しかも、補給水を直接冷媒ドラムへ供給する場合と比較して、構造の複雑化や設備の大型化を避けて冷媒ドラム内の温度を均一に制御できる。
【0036】
請求項
4に係る温度制御システムによれば、冷媒ドラム内の比較的高い温度と補給水の比較的低い温度との差分と反応
容器内の反応熱量との積に基づいて補給水量を決定する制御手段と、決定された補給水量に応じて補給配管から戻り配管に補給水を供給する補給水調整手段と、を更に備えているから、補給水量は系外に排出する蒸気流量と同等となるように制御手段によって正確に演算できて補給水量が蒸気流量を超えないように正確に制限することができることになり、合流部での全凝縮によるハンマリングを確実に防止することができる。
【0037】
請求項
5に係る温度制御システムによれば、制御手段で決定する補給水量は、具体的には次式によって演算されるから、補給水量は系外に排出する蒸気流量と同等またはそれ以下となるように正確に演算できて補給水量が蒸気流量を超えないように制限できる。
WL3=Q/{Cp×(t1−t3)+r}
但し、WL3:補給水量
Q:気泡塔型反応器の底部内での反応熱量
Cp:液体冷媒の比熱
t1:冷媒ドラムまたは気泡塔型反応器の底部内の温度
t3:補給水の温度
r:液体冷媒の蒸発潜熱。
【0038】
請求項
6に係る温度制御システムによれば、戻り配管と補給配管との合流部において、補給配管は混相流体の進行方向に沿って戻り配管と鋭角の角度で接続されているから、補給配管の補給水を、戻り配管の蒸気と液体冷媒との混相流体に合流させる際、混相流体の流れ方向に沿って補給水の給水を行うことができるため、合流時に補給水が混相流体に衝突して衝撃によるハンマリングの発生を防止できる。
【0039】
請求項
7に係る温度制御システムによれば、補給配管には、蒸気の逆流を防ぐシール部が設けられているから、補給水の供給量が少ない場合、戻り配管内の蒸気が補給配管内に逆流して凝縮によるハンマリングが生じることを防止できる。
【0040】
請求項
8に係る温度制御システムによれば、戻り配管と補給配管との合流部において、補給配管に補給水を戻り配管内に噴霧するスプレーノズルが設けられているから、補給水を補給配管から合流部で戻り配管に供給する際、スプレーノズルで補給水を噴霧して均等に分散させて混相流体の蒸気に接触させれば、補給水の偏りによる急激な蒸気凝縮を抑制してハンマリングの発生を防止できる。
【0041】
請求項
10に係る発明によれば、前記温度制御システムを備えているので、反応容器の底部側の温度が局所的に上昇するのを抑制することができる。
【0042】
請求項
11に係る発明によれば、前記炭化水素合成反応装置を備えているので、反応容器の底部側の温度が局所的に上昇するのを抑制することができる。
【0043】
参考例に係る発明によれば、反応容器の底部側の温度が上昇するのを抑制することが可能で、かつ反応容器において下除熱部よりも上側に位置する部分で、反応熱を適度に回収しつつも過度に回収するのを抑制することができるので、反応容器内の温度を高精度に制御することができる。
また前述のように、反応容器内の温度を高精度に制御するという作用効果を、下除熱部と上除熱部とに温度が異なる液体冷媒を供給することにより奏功させることができる。したがって、例えば下除熱部および上除熱部をそれぞれ流通する液体冷媒の流量調節などをしなくてもよく、前述の作用効果を簡便かつ確実に奏功させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施形態に液体燃料合成システムの一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0046】
(液体燃料合成システム)
図1に示すように、液体燃料合成システム(炭化水素合成反応システム)1は、天然ガス等の炭化水素原料を液体燃料に転換するGTLプロセスを実行するプラント設備である。この液体燃料合成システム1は、合成ガス生成ユニット3と、FT合成ユニット(炭化水素合成反応装置)5と、アップグレーディングユニット7とから構成される。合成ガス生成ユニット3は、炭化水素原料である天然ガスを改質して一酸化炭素ガスと水素ガスを含む合成ガスを製造する。FT合成ユニット5は、製造された合成ガスからFT合成反応により液体の炭化水素化合物を生成する。アップグレーディングユニット7は、FT合成反応により合成された液体の炭化水素化合物を水素化・精製して液体燃料その他の製品(ナフサ、灯油、軽油、ワックス等)を製造する。以下、これら各ユニットの構成要素について説明する。
【0047】
まず、合成ガス生成ユニット3について説明する。
合成ガス生成ユニット3は、例えば、脱硫反応器10と、改質器12と、排熱ボイラー14と、気液分離器16および18と、脱炭酸装置20と、水素分離装置26とを主に備える。脱硫反応器10は、水素化脱硫装置等で構成されて原料である天然ガスから硫黄成分を除去する。改質器12は、脱硫反応器10から供給された天然ガスを改質して、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H
2)とを主成分として含む合成ガスを製造する。排熱ボイラー14は、改質器12にて生成した合成ガスの排熱を回収して高圧スチームを発生する。気液分離器16は、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により加熱された水を気体(高圧スチーム)と液体とに分離する。気液分離器18は、排熱ボイラー14にて冷却された合成ガスから凝縮分を除去し気体分を脱炭酸装置20に供給する。脱炭酸装置20は、吸収塔(第2吸収塔)22と、再生塔24と、を有する。吸収塔22では、気液分離器18から供給された合成ガスに含まれる炭酸ガスが吸収液によって吸収される。再生塔24では、炭酸ガスを吸収した吸収液が炭酸ガスを放散し、吸収剤が再生される。水素分離装置26は、脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスから、当該合成ガスに含まれる水素ガスの一部を分離する。ただし、上記脱炭酸装置20は場合によっては設けないこともある。
【0048】
改質器12では、例えば、下記の化学反応式(1)、(2)で表される水蒸気・炭酸ガス改質法を用い、二酸化炭素と水蒸気によって天然ガスが改質され、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスが製造される。なお、この改質器12における改質法は、上記の水蒸気・炭酸ガス改質法に限定されない。例えば、水蒸気改質法、酸素を用いた部分酸化改質法(POX)、部分酸化改質法と水蒸気改質法の組合せである自己熱改質法(ATR)、炭酸ガス改質法などを利用することもできる。
【0049】
CH
4+H
2O→CO+3H
2 ・・・(1)
CH
4+CO
2→2CO+2H
2 ・・・(2)
【0050】
水素分離装置26は、脱炭酸装置20又は気液分離器18と気泡塔型反応器30とを接続する主配管から分岐した分岐ライン上に設けられる。この水素分離装置26は、例えば、圧力差を利用して水素の吸着と脱着を行う水素PSA(Pressure Swing Adsorption:圧力変動吸着)装置などで構成できる。この水素PSA装置は、並列配置された複数の吸着塔(図示せず。)内に吸着剤(ゼオライト系吸着剤、活性炭、アルミナ、シリカゲル等)を有している。各吸着塔で水素の加圧、吸着、脱着(減圧)、パージの各工程を順番に繰り返すことで、合成ガスから分離した純度の高い水素ガス(例えば99.999%程度)を、連続して供給することができる。
【0051】
水素分離装置26における水素ガス分離方法は、上記の水素PSA装置による圧力変動吸着法に限定されない。例えば、水素吸蔵合金吸着法、膜分離法、或いはこれらの組合せなどを用いてもよい。
【0052】
水素吸蔵合金法は、例えば、冷却/加熱されることで水素を吸着/放出する性質を有する水素吸蔵合金(TiFe、LaNi
5、TiFe
0.7〜0.9Mn
0.3〜0.1、又はTiMn
1.5など)を用いて、水素ガスを分離する手法である。水素吸蔵合金法では、例えば水素吸蔵合金が収容された複数の吸着塔において、水素吸蔵合金の冷却による水素の吸着と、水素吸蔵合金の加熱による水素の放出とが交互に繰り返される。これにより、合成ガス中の水素ガスを分離・回収することができる。
【0053】
膜分離法は、芳香族ポリイミド等の高分子素材の膜を用いて、混合ガスから膜透過性に優れた水素ガスを分離する手法である。この膜分離法は、分離対称の相変化を必要としないため、運転に必要なエネルギーが小さくて済み、ランニングコストが小さい。また、膜分離装置の構造が単純でコンパクトなため、設備コストが低く設備の所要面積も小さくて済む。さらに、分離膜には駆動装置がなく、安定運転範囲が広いため、保守管理が容易であるという利点がある。
【0054】
次に、FT合成ユニット5について説明する。
FT合成ユニット5は、例えば、気泡塔型反応器(反応容器)30と、分離器36と、気液分離器38と、第1精留塔40と、を主に備える。気泡塔型反応器30は、上記合成ガス生成ユニット3で製造された合成ガス、即ち、一酸化炭素ガスと水素ガスとからFT合成反応により液体炭化水素化合物を合成する。分離器36は、気泡塔型反応器30の中央部に接続され、触媒と液体炭化水素化合物を分離する。気液分離器38は、気泡塔型反応器30の塔頂に接続され、未反応合成ガス及び気体炭化水素化合物を冷却する。第1精留塔40は、気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素化合物を各留分に分留する。
【0055】
このうち、気泡塔型反応器30は、合成ガスから液体の炭化水素化合物を合成する反応器の一例であり、FT合成反応により合成ガスから液体の炭化水素化合物を合成するFT合成用反応器として機能する。この気泡塔型反応器30は、例えば、塔型の容器内部に主に触媒粒子と媒体油(媒体液、液体の炭化水素)とからなるスラリーが貯留された気泡塔型スラリー床式反応器で構成される。この気泡塔型反応器30は、FT合成反応により合成ガスから気体又は液体の炭化水素化合物を合成する。詳細には、この気泡塔型反応器30では、原料ガスである合成ガスは、気泡塔型反応器30の底部の分散板から気泡となって供給され、媒体油中に触媒粒子が懸濁されたスラリー内を通過する。そして、懸濁状態の中で下記化学反応式(3)に示すように、合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとが反応して炭化水素化合物が合成される。
【0057】
なお、このFT合成反応は発熱反応であるため、気泡塔型反応器30は、温度制御システム80を構成する伝熱管(下除熱部、上除熱部)32a、32bが内部に配設された熱交換器型になっている。気泡塔型反応器30には、冷媒として例えば水(BFW:Boiler Feed Water)が供給され、上記FT合成反応の反応熱を、スラリーと水との熱交換により中圧スチームとして回収できるようになっている。
【0058】
次に、アップグレーディングユニット7について説明する。アップグレーディングユニット7は、例えば、ワックス留分水素化分解反応器50と、中間留分水素化精製反応器52と、ナフサ留分水素化精製反応器54と、気液分離器56,58,60と、第2精留塔70と、ナフサ・スタビライザー72とを備える。ワックス留分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の塔底に接続されている。中間留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40の中央部に接続されている。ナフサ留分水素化精製反応器54は、第1精留塔40の塔頂に接続されている。気液分離器56,58,60は、これら水素化反応器50,52,54のそれぞれに対応して設けられている。第2精留塔70は、気液分離器56,58から供給された液体炭化水素化合物を分留する。ナフサ・スタビライザー72は、気液分離器60から供給された、及び第2精留塔70から分留されたナフサ留分の液体炭化水素化合物を精留する。その結果、ナフサ・スタビライザー72は、ブタン及びブタンより軽質の成分をオフガスとして排出し、炭素数5以上の成分を製品のナフサとして回収する。
【0059】
次に、以上のような構成の液体燃料合成システム1により、天然ガスから液体燃料を合成する工程(GTLプロセス)について説明する。
【0060】
液体燃料合成システム1には、天然ガス田又は天然ガスプラントなどの外部の天然ガス供給源(図示せず。)から、炭化水素原料としての天然ガス(主成分がCH
4)が供給される。上記合成ガス生成ユニット3は、この天然ガスを改質して合成ガス(一酸化炭素ガスと水素ガスを主成分とする混合ガス)を製造する。
【0061】
具体的には、まず、上記天然ガスは、水素分離装置26によって分離された水素ガスとともに脱硫反応器10に導入される。脱硫反応器10では、導入された水素ガスと水素化脱硫触媒により、天然ガスに含まれる硫黄分が硫化水素に転換される。更に、脱硫反応器10では、生成した硫化水素が例えばZnO等の脱硫剤により吸着除去される。このようにして天然ガスを予め脱硫しておくことにより、改質器12及び気泡塔型反応器30等で用いられる触媒の活性が硫黄により低下することを防止できる。
【0062】
このようにして脱硫された天然ガス(二酸化炭素を含んでもよい。)は、二酸化炭素供給源(図示せず。)から供給される二酸化炭素(CO
2)ガスと、排熱ボイラー14で発生した水蒸気とが混合された上で、改質器12に供給される。改質器12では、例えば、上述した水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とにより天然ガスが改質され、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスが製造される。このとき、改質器12には、例えば、改質器12が備えるバーナー用の燃料ガスと空気(エア)とが供給されている。そして、当該バーナーにおける燃料ガスの燃焼熱により、吸熱反応である上記水蒸気・炭酸ガス改質反応に必要な反応熱がまかなわれている。
【0063】
このようにして改質器12で製造された高温の合成ガス(例えば、900℃、2.0MPaG)は、排熱ボイラー14に供給され、排熱ボイラー14内を通過する水との熱交換により冷却(例えば400℃)される。そして、合成ガスの排熱が水により回収される。このとき、排熱ボイラー14において合成ガスにより加熱された水は気液分離器16に供給される。そして、この合成ガスにより加熱された水は、気液分離器16において高圧スチーム(例えば3.4〜10.0MPaG)と、水とに分離される。分離された高圧スチームは、改質器12または他の外部装置に供給され、分離された水は排熱ボイラー14に戻される。
【0064】
一方、排熱ボイラー14において冷却された合成ガスは、凝縮した液体分が気液分離器18において分離・除去された後、脱炭酸装置20の吸収塔22、又は気泡塔型反応器30に供給される。吸収塔22では、吸収塔22の内部に貯留されている吸収液によって、合成ガスに含まれる炭酸ガスが吸収され、当該合成ガスから炭酸ガスが除去される。吸収塔22内で炭酸ガスを吸収した吸収液は、吸収塔22から排出され、再生塔24に導入される。再生塔24に導入された吸収液は、例えばスチームで加熱されてストリッピング処理され、炭酸ガスを放散する。放散された炭酸ガスは、再生塔24から排出されて改質器12に導入され、上記改質反応に再利用される。
【0065】
このようにして、合成ガス生成ユニット3で製造された合成ガスは、上記FT合成ユニット5の気泡塔型反応器30に供給される。このとき、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスの組成比は、FT合成反応に適した組成比(例えば、H
2:CO=2:1(モル比))に調整されている。なお、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスは、脱炭酸装置20と気泡塔型反応器30とを接続する配管に設けられた圧縮器(図示せず。)により、FT合成反応に適した圧力(例えば3.6MPaG程度)まで昇圧される。
【0066】
また、上記脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスの一部は、水素分離装置26にも供給される。水素分離装置26では、上記のように圧力差を利用した吸着、脱着(水素PSA)により、合成ガスに含まれる水素ガスが分離される。当該分離された水素は、ガスホルダー(図示せず。)等から圧縮機(図示せず。)を介して、液体燃料合成システム1内において水素を利用して所定反応を行う各種の水素利用反応装置(例えば、脱硫反応器10、ワックス留分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52、ナフサ留分水素化精製反応器54など)に連続して供給される。
【0067】
次いで、上記FT合成ユニット5は、上記合成ガス生成ユニット3によって製造された合成ガスから、FT合成反応により、液体炭化水素化合物を合成する。
【0068】
具体的には、上記脱炭酸装置20において炭酸ガスが分離された合成ガスは、気泡塔型反応器30に導入され、気泡塔型反応器30内に貯留された触媒を含むスラリー内を通過する。この際、気泡塔型反応器30内では、上述したFT合成反応により、当該合成ガスに含まれる一酸化炭素と水素ガスとが反応して、炭化水素化合物が生成する。さらに、このFT合成反応時には、気泡塔型反応器30の伝熱管32a、32b内を通過(流通)する水(液体冷媒)によって、FT合成反応の反応熱が回収され、反応熱によって加熱された水が気化して水蒸気となる。
【0069】
このようにして、気泡塔型反応器30で合成された液体炭化水素化合物は、気泡塔型反応器30の中央部から触媒粒子を含んだスラリーとして排出されて、分離器36に導入される。分離器36では、導入されたスラリーが触媒(固形分)と、液体炭化水素化合物を含んだ液体分とに分離される。分離された触媒の一部は気泡塔型反応器30に戻され、液体分は第1精留塔40に導入される。気泡塔型反応器30の塔頂からは、FT合成反応において反応しなかった合成ガスと、FT合成反応により生成した気体炭化水素化合物と、を含む気体副生成物が排出される。気泡塔型反応器30から排出された気体副生成物は、気液分離器38に導入される。気液分離器38では、導入された気体副生成物が冷却され、凝縮した液体炭化水素化合物と、ガス分とに分離される。分離された液体炭化水素化合物は、気液分離器38から排出され、第1精留塔40に導入される。分離されたガス分は、気液分離器38から排出され、その一部が気泡塔型反応器30に再導入される。気泡塔型反応器30では、再導入されたガス分に含まれる未反応の合成ガス(COとH
2)がFT合成反応に再利用される。また、気液分離器38から排出されたガス分の一部は、オフガスとして燃料に使用されたり、このガス分からLPG(液化石油ガス)相当の燃料が回収されたりする。
【0070】
第1精留塔40では、上記のようにして気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素化合物(炭素数は多様)が、ナフサ留分(沸点が約150℃より低い)と、中間留分(沸点が約150〜350℃)と、ワックス留分(沸点が約350℃を超える)とに分留される。この第1精留塔40の塔底から排出されるワックス留分の液体炭化水素化合物(主としてC
21以上)は、ワックス留分水素化分解反応器50に導入される。第1精留塔40の中央部から排出される灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素化合物(主としてC
11〜C
20)は、中間留分水素化精製反応器52に導入される。第1精留塔40の塔頂から排出されるナフサ留分の液体炭化水素化合物(主としてC
5〜C
10)は、ナフサ留分水素化精製反応器54に導入される。
【0071】
ワックス留分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の塔底から排出された炭素数の多いワックス留分の液体炭化水素化合物(概ねC
21以上)を、上記水素分離装置26から供給された水素ガスを利用して水素化分解して、炭素数を20以下に低減する。この水素化分解反応では、炭素数の多い炭化水素化合物のC−C結合が切断される。これにより、炭素数の多い炭化水素化合物が炭素数の少ない炭化水素化合物へと転換される。また、ワックス留分水素化分解反応器50においては、水素化分解反応と並行して、直鎖状飽和炭化水素化合物(ノルマルパラフィン)を水素化異性化して分岐状飽和炭化水素化合物(イソパラフィン)を生成する反応も進行する。これにより、ワックス留分水素化分解生成物の、燃料油基材として要求される低温流動性が向上する。さらに、ワックス留分水素化分解反応器50においては、原料であるワックス留分に含まれるアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素反応及びオレフィンの水素化反応も進行する。水素化分解されワックス留分水素化分解反応器50から排出された液体炭化水素化合物を含む生成物は、気液分離器56に導入され、気体と液体とに分離される。分離された液体炭化水素化合物は、第2精留塔70に導入され、分離された気体分(水素ガスを含む。)は、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54に導入される。
【0072】
中間留分水素化精製反応器52では、第1精留塔40の中央部から排出された炭素数が中程度である灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素化合物(概ねC
11〜C
20)が水素化精製される。中間留分水素化精製反応器52では、水素分離装置26からワックス留分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスが、水素化精製に用いられる。この水素化精製反応においては、上記液体炭化水素化合物中に含まれるオレフィンが水素化されて飽和炭化水素化合物を生成するとともに、上記液体炭化水素化合物中に含まれるアルコール等の含酸素化合物が水素化脱酸素され飽和炭化水素化合物と水とに転換される。更に、この水素化精製反応においては、直鎖状飽和炭化水素化合物(ノルマルパラフィン)を異性化して分岐状飽和炭化水素化合物(イソパラフィン)に転換する水素化異性化反応が進行し、生成油の燃料油として要求される低温流動性を向上させる。水素化精製された液体炭化水素化合物を含む生成物は、気液分離器58で気体と液体に分離される。分離された液体炭化水素化合物は、第2精留塔70に導入され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。
【0073】
ナフサ留分水素化精製反応器54では、第1精留塔40の上部から排出された炭素数が少ないナフサ留分の液体炭化水素化合物(概ねC
10以下)が、水素化精製される。ナフサ留分水素化精製反応器54では、水素分離装置26からワックス留分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスが、水素化精製に用いられる。この結果、水素化精製された液体炭化水素化合物を含む生成物は、気液分離器60で気体と液体に分離される。分離された液体炭化水素化合物は、ナフサ・スタビライザー72に導入され、分離された気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。このナフサ留分の水素化精製においては、主としてオレフィンの水素化及びアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素が進行する。
【0074】
第2精留塔70では、上記のようにしてワックス留分水素化分解反応器50及び中間留分水素化精製反応器52から供給された液体炭化水素化合物をC
10以下の炭化水素化合物(沸点が約150℃より低い)と、灯油(沸点が約150〜250℃)と、軽油(沸点が約250〜350℃)と、ワックス留分水素化分解反応器50からの未分解ワックス分(沸点約350℃を超える)とに分留する。第2精留塔70の塔底からは未分解のワックス留分が得られ、これはワックス留分水素化分解反応器50の上流にリサイクルされる。第2精留塔70の中央部からは灯油及び軽油が排出される。一方、第2精留塔70の塔頂からは、C
10以下の気体炭化水素化合物が排出されて、ナフサ・スタビライザー72に導入される。
【0075】
さらに、ナフサ・スタビライザー72では、上記ナフサ留分水素化精製反応器54から供給された、及び第2精留塔70において分留されたC
10以下の炭化水素化合物が蒸留され、製品としてのナフサ(C
5〜C
10)が得られる。これにより、ナフサ・スタビライザー72の塔底からは、高純度のナフサが排出される。一方、ナフサ・スタビライザー72の塔頂からは、製品対象外である炭素数が所定数以下(C
4以下)の炭化水素化合物を主成分とするオフガスが排出される。このオフガスは、燃料ガスとして使用されたり、このオフガスからLPG相当の燃料が回収されたりする。
【0076】
次に、気泡塔型反応器30内の反応熱を回収し、気泡塔型反応器30内の温度を制御する温度制御システム100について説明する。この温度制御システム100は、前述のようにスラリーを収容する気泡塔型反応器30に設けられており、気泡塔型反応器30にその底部30aから供給された合成ガスがスラリーと接触することにより生じるFT合成反応(発熱反応)の反応熱を回収するものである。
【0077】
(第1実施形態)
図2に示すように、温度制御システム100は、前記伝熱管32a、32bを備えている。伝熱管32a、32bとしては、気泡塔型反応器30の底部30a内に配設された下伝熱管(下除熱部)32aと、気泡塔型反応器30において下伝熱管32aよりも上方に位置する部分内に配設された上伝熱管(上除熱部)32bと、が備えられている。図示の例では、上伝熱管32bは、上下方向に間隔をあけて2つ配置されており、これらの2つの上伝熱管32bは、気泡塔型反応器30の頂部30b内と、気泡塔型反応器30において頂部30bと底部30aとの間に位置する中央部30c内と、に配置されている。
【0078】
そして本実施形態では、下伝熱管32aには、第1温調部121により温度が調節された水が供給され、上伝熱管32bには、第1温調部121とは異なる第2温調部122により温度が調節された水が供給されている。
【0079】
第1温調部121は、水が気液平衡状態で収容された冷媒ドラム101と、冷媒ドラム101内の圧力を制御する圧力制御部118と、を備えている。
冷媒ドラム101と下伝熱管32aとは、流量を調整可能なポンプ104が設けられた行き配管113により接続されており、冷媒ドラム101内の水は、冷媒ドラム101の底部からポンプ104により下伝熱管32aに送られる。
下伝熱管32aにて一部の水が蒸発した蒸気および水の混相流体は、下伝熱管32aと冷媒ドラム101とを接続する戻り配管112を通って冷媒ドラム101に戻される。
【0080】
圧力制御部118は、冷媒ドラム101内の蒸気を排出する蒸気出口配管111と、該蒸気出口配管111に設けられた圧力調節弁103と、該圧力調節弁103を制御することで冷媒ドラム101内の圧力を設定する圧力設定部109と、を備えている。
蒸気出口配管111を通って排出された蒸気は、系外の蒸気ユーザーに供給される。なお、蒸気出口配管111の下流側には、図示しないスチームトラップが設けられていてもよい。
【0081】
圧力設定部109は、蒸気出口配管111を通した冷媒ドラム101内の蒸気の排出量を、圧力調節弁103を用いて制御することにより、冷媒ドラム101内の圧力を設定する。圧力設定部109には、気泡塔型反応器30内の温度を測定する反応熱温度測定部106から、気泡塔型反応器30の底部30a内の測定結果が送出されており、圧力設定部109は、この測定結果に基づいて冷媒ドラム101内の圧力を設定する。
なお反応熱温度測定部106は、例えば、気泡塔型反応器30において上下方向に互いに離間して配置された図示しない複数の温度センサにより構成すること等が可能である。
【0082】
ところで、圧力制御部118により蒸気出口配管111を通して系外に排出された蒸気に見合った量の補給水(水)は、補給配管110を通して補給される。
この補給配管110には、
図3および
図4に示すように、冷媒ドラム101の長手方向に沿って延設された補給水内管(冷媒補給部)114が接続されている。補給水内管114は、冷媒ドラム101の蒸気相中に設置されている。
【0083】
補給水内管114の側面114aには、管軸方向に沿って孔(貫通孔)115が1個以上設けられ、同じく管端114bにも孔115が1個以上設けられている。そして、これらの孔115は、補給水を補給水内管114から蒸気相中に散水(散布)する散水部(散布部)119を構成している。なお孔115は、散水ノズルであってもよい。
【0084】
また、冷媒ドラム101の蒸気相内には、前記戻り配管112に接続された戻り内部配管112aも設けられている。戻り内部配管112aからは、下伝熱管32aにて一部蒸発した蒸気および水の混相流体が、冷媒ドラム101内に供給される。戻り内部配管112aは、補給水内管114よりも上方に位置し、かつ補給水内管114の鉛直上方を回避した位置に配置されている。そして、戻り内部配管112aは、補給水内管114側に向けて湾曲されており、これにより、戻り内部配管112a内を流通した蒸気が、補給水内管114に向けて供給されることとなる。
【0085】
なお
図2に示すように、補給配管110からの補給水の補給量は、冷媒ドラム101内の水面レベル(液面レベル)を測定するレベル測定部117の測定結果に基づいて、レベル調節弁102により調節される。
【0086】
ここで第2温調部122は、前記第1温調部121とほぼ同様に構成されている。第2温調部122においては、第1温調部121における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
第2温調部122における行き配管113は、ポンプ104よりも下流側において分岐されており、各分岐先において両上伝熱管32bに各別に接続されている。
【0087】
また、第2温調部122における戻り配管112は、両上伝熱管32bから各別に延設された後、途中で合流し、その後、冷媒ドラム101に接続されている。
そして第2温調部122における圧力設定部109には、反応熱温度測定部106から、気泡塔型反応器30の頂部30b内および中央部30c内の各測定結果が送出されており、圧力設定部109は、これらの測定結果に基づいて冷媒ドラム101内の圧力を設定する。
【0088】
以上のように構成された温度制御システム100の運用の一例について説明する。
この温度制御システム100では、第1温調部121は、水の温度を第2温調部122よりも低く調節する。これにより、下伝熱管32aによる反応熱の回収量を、上伝熱管32bによる反応熱の回収量よりも多くすることができる。なおこのとき、下伝熱管32aによる反応熱の回収量と、上伝熱管32bによる反応熱の回収量と、の比を、例えば約3:1にすること等が可能である。
【0089】
さらに本実施形態では、第1温調部121が、水の温度を第2温調部122よりも低く調節することにより、気泡塔型反応器30の底部30a内の実温度を、気泡塔型反応器30において底部30aよりも上側に位置する中央部30c内および頂部30b内の実温度よりも低くする。このとき例えば、気泡塔型反応器30の底部30a内の実温度を、例えば約200℃とし、気泡塔型反応器30の中央部30cおよび頂部30b内の実温度を、例えば約230℃とすることが可能である。
【0090】
ここで気泡塔型反応器30の底部30a内、中央部30c内および頂部30b内の実温度は、前記反応熱温度測定部106により測定することが可能である。
そこで本実施形態では、第1温調部121における圧力制御部118は、反応熱温度測定部106により測定された気泡塔型反応器30の底部30a内の実温度が、底部30a内の温度設定値に対して有する偏差に基づいて冷媒ドラム101内の圧力を制御することで、冷媒ドラム101内の水の温度を制御する。
【0091】
すなわち、冷媒ドラム101内の蒸気相(気相部)と水相(液相部)とは気液平衡状態であるため、冷媒ドラム101の蒸気相圧力と冷媒ドラム101の水相の温度とは一定の相関関係にある。したがって、気泡塔型反応器30の底部30aの温度設定値に対し、反応熱温度測定部106により測定された底部30aの実温度に偏差が生じた場合、圧力制御部118を作動させ冷媒ドラム101の蒸気相圧力を変更する。
【0092】
すると、冷媒ドラム101内の水相の温度が変化し下伝熱管32aにて回収する熱量を変化させることが可能になり、気泡塔型反応器30の底部30aの温度を温度設定値に近づけることができる。なお、水温と飽和水蒸気圧との関係の一例について示すと、195℃での飽和水蒸気圧は、約14760.75hPa程度であり、170℃での飽和水蒸気圧は、約8249.20hPa程度であり、140℃での飽和水蒸気圧は、約3706.57hPa程度である。
【0093】
また第2温調部122についても同様に、反応熱温度測定部106により測定された気泡塔型反応器30の中央部30c内および頂部30b内の実温度が、気泡塔型反応器30の中央部30c内および頂部30b内の温度設定値に対して有する偏差に基づいて、第2温調部122の圧力制御部118が、冷媒ドラム101内の圧力を制御することで、冷媒ドラム101内の水の温度を制御する。
【0094】
なお、以上のように圧力制御部118により蒸気出口配管111を通して蒸気が排出されたとき、冷媒ドラム101内の水面レベルが下降することにより、補給水内管114から補給水が供給される。このとき、補給水内管114から没水しない位置で補給水を供給することで、低温の補給水と蒸気相の蒸気とで熱交換がされ、補給水が低温のまま冷媒ドラム101の底部に流れる状況が回避できる。
【0095】
さらに、補給水内管114の側面114aおよび管端114bの孔115から補給水を散水させることにより、補給水と蒸気との接触面積を増やして熱交換の効率を向上させ、低温の補給水と蒸気の温度との熱交換の効率を高めることができる。これにより、蒸気相と水相との間の温度差がなくなり、冷媒ドラム101の蒸気相圧力と冷媒ドラム101内の水相の温度とは、気液平衡状態に基づいた相関関係が常に保たれることとなる。
【0096】
なお、
図5に示す参考例のように、補給水内管114が冷媒ドラム101内にて没水していると、比重の大きな低温の補給水は補給水内管114の側面開孔116からほとんど出ずに、直接冷媒ドラム101の底部に流れるため、冷媒ドラム101内の蒸気相と水相との間に温度差が生じる。すると、冷媒ドラム101の蒸気相圧力と冷媒ドラム101内の水相の温度との相関関係が崩れるおそれがある。
【0097】
以上説明したように、本発明に係る温度制御システム100によれば、下伝熱管32aに、第1温調部121により温度が調節された水が供給され、かつ上伝熱管32bに、第2温調部122により温度が調節された水が供給されるので、下伝熱管32aと上伝熱管32bとに温度が異なる水を供給することができる。これにより、下伝熱管32aによる反応熱の回収量と、上伝熱管32bによる反応熱の回収量と、を異ならせることができる。
【0098】
したがって、気泡塔型反応器30の底部30a側の温度が局所的に上昇しようとしたときに、下伝熱管32aに供給される水の温度を第1温調部121により低めることで、下伝熱管32aによる反応熱の回収量を高めることができる。これにより、気泡塔型反応器30の底部30a側の温度が上昇するのを抑制することができる。
しかもこのとき、前述のように下伝熱管32aによる反応熱の回収量と、上伝熱管32bによる反応熱の回収量と、を異ならせることができるので、下伝熱管32aによる反応熱の回収量を高めるのに伴って、上伝熱管32bによる反応熱の回収量が高くなりすぎるのを抑えることが可能になる。これにより、気泡塔型反応器30において下伝熱管32aよりも上側に位置する中央部30cおよび頂部30bで、反応熱を適度に回収しつつも過度に回収するのを抑制することができる。
【0099】
以上のように、気泡塔型反応器30の底部30a側の温度が上昇するのを抑制することが可能で、かつ気泡塔型反応器30の中央部30cおよび頂部30bで、反応熱を適度に回収しつつも過度に回収するのを抑制することができるので、気泡塔型反応器30内の温度を高精度に制御することができる。
また前述のように、気泡塔型反応器30内の温度を高精度に制御するという作用効果を、下伝熱管32aと上伝熱管32bとに温度が異なる水を供給することにより奏功させることができる。したがって、例えば
図6に示す参考例のように、行き配管113に設けられた流路調整弁113aを調整することにより、下伝熱管32aおよび上伝熱管32bをそれぞれ流通する水の流量調節などをしなくてもよく、前述の作用効果を簡便かつ確実に奏功させることができる。
【0100】
また、圧力制御部118が、気泡塔型反応器30の底部30a内における実温度の温度設定値に対する偏差に基づいて冷媒ドラム101内の圧力を制御することにより、下伝熱管32aに供給される水の温度を変化させ、下伝熱管32aにて回収される熱量を調節することができる。したがって、気泡塔型反応器30の底部30a内の実温度が温度設定値に対して高い場合には、下伝熱管32aにより回収される熱量が多くなるように、また、前記実温度が温度設定値に対して低い場合には、下伝熱管32aにより回収される熱量が少なくなるように、冷媒ドラム101内の圧力を制御することで、気泡塔型反応器30の底部30a内の温度を、温度設定値を目標に制御することができる。
【0101】
また、圧力制御部118が、下伝熱管32aに供給する水の温度と1対1に対応する冷媒ドラム101の圧力を制御することで、冷媒ドラム101から下伝熱管32aに供給される水の温度を直接制御することができる。したがって、外部で温度を制御した水を冷媒ドラム101へ供給することで、冷媒ドラム101内の水の温度を制御する方法よりも、気泡塔型反応器30の底部30a内の温度制御を迅速に行うことができる。これにより、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
なお前述のように、外部で温度を制御した水を冷媒ドラム101へ供給することで、冷媒ドラム101内の水の温度を制御する方法では、外部から供給された水と、冷媒ドラム101内の水と、の温度が均一になりにくく、気泡塔型反応器30の温度制御が高精度になされないおそれがある。
【0102】
また、補給水内管114が、冷媒ドラム101の蒸気相内に配設されているので、補給水内管114から冷媒ドラム101内の温度よりも低温の水が補給されたとしても、この水と冷媒ドラム101内の蒸気との間で熱移動が行われ、水が蒸気と同じ温度となって冷媒ドラム101内の蒸気相に蓄えられるため、冷媒ドラム101内の蒸気相と蒸気相との間に温度差が生じない。
このように、蒸気相にて水と冷媒ドラム101内の蒸気との間で効率よく熱の移動が行われるため、補給水内管114から補給される水を系外にて予熱しなくとも冷媒ドラム101内で蒸気相と蒸気相との温度差が生じず、冷媒ドラム101内の圧力と温度とを、気液平衡状態の相関関係に確実に保つことができる。
【0103】
また、補給水内管114に、水を前記蒸気相に散布する散水部119が形成されているので、補給水内管114から補給される水の表面積を大きくすることで、冷媒ドラム101内の蒸気と水との間で熱移動をより円滑に行わせることができる。これにより、冷媒ドラム101内の圧力と温度とを、気液平衡状態の相関関係に一層確実に保つことができる。
【0104】
また、散水部119が、補給水内管114に形成された孔115により構成されているので、水を確実に散布することができる。
【0105】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の温度制御システムを説明する。
ここで、この第2実施形態においては、前記第1実施形態に比べて第1温調部121および第2温調部122が異なっている。また、この第2実施形態においては、前記第1実施形態と同様に、第2温調部122は、第1温調部121とほぼ同様に構成されている。
そこで、この第2実施形態では、第1温調部121について説明し、それ以外の説明は省略する。また第1温調部121についても、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
なお
図7においては、図面の見易さのため、上伝熱管32bおよび第2温調部122の図示を省略するとともに、気泡塔型反応器30を模式的に示している。
【0106】
図7に示すように、補給配管110は、戻り配管112の途中の合流部201で接続されており、蒸気出口配管111から系外に排出された蒸気排出量に見合った量の補給水を冷媒ドラム101へ補給する。これにより、比較的低温(例えば温度t3とする)の補給水は、戻り配管112内において気泡塔型反応器30で蒸発させられた比較的高温(例えば温度t1とする。t1>t3)の蒸気と直接混合して加熱され、飽和温度となる。
しかも、合流部201より下流側の戻り配管112内の蒸気量は冷媒ドラム101から蒸気出口配管111によって排出される蒸気量に等しいかそれ以下とし、水の流量は冷媒ドラム101から行き配管113によって気泡塔型反応器30に供給される水の流量にほぼ等しくなるように制御されるものとする。
なお、補給配管110には補給水の温度を測定する補給温度測定部202が設けられている。そして、補給配管110の補給水は、戻り配管112で蒸気となって冷媒ドラム101内へ供給される。
【0107】
また、蒸気出口配管111には系外への蒸気排出量を測定する蒸気排出量測定手段203が設けられている。さらに、気泡塔型反応器30には、気泡塔型反応器30内の反応熱量Qを測定する反応熱量測定部204が設けられている。さらにまた、冷媒ドラム101内の水相の温度は、冷媒ドラム101の底部に設けられた水相温度測定部205により測定可能となっている。なお本実施形態では、反応熱量測定部204は、気泡塔型反応器30の底部30a、頂部30b、および中央部30cの各内部の反応熱量Qを測定する構成となっている。
【0108】
また、温度制御システム200には、補給配管110からの補給水量が蒸気出口排管111から系外へ排出される蒸気量を超えないように補給水量を制御する制御手段206が設けられている。この制御手段206では、冷媒ドラム101内の水相温度を測定する水相温度測定部205、気泡塔型反応器30における反応熱温度測定部106、反応熱量測定部204、補給配管110内の補給水温度を測定する補給温度測定部202による各測定値が入力され、補給水量が蒸気出口排管111から排出される蒸気量を超えないように演算して決定される。
演算された補給水量のデータは補給配管110に設けた流量調整手段207に出力され、レベル調節弁102の開度を調整して補給水量を制御することになる。なお、流量調整手段207とレベル調節弁102は補給水量調整手段を構成する。
これらによって補給水量WL3が蒸気流量WV1を超えないように制御される。
【0109】
つぎに、制御手段206による補給水量の演算方法の一例について説明する。
図8に示すように、蒸気出口配管111で排出される蒸気量をWV1,温度をt1,行き配管113で気泡塔型反応器30に供給される水の流量をWL4、温度t1、気泡塔型反応器30から戻り配管112へ吐出される蒸気量をWV2、水の流量をWL2、各温度t1、補給配管110から戻り配管112へ供給される水の流量をWL3、温度t3、合流後の戻り配管112から冷媒ドラム101へ戻される蒸気量をWV1、水の流量をWL4、各温度t1とする。なお、水の流量は単位kg/h,蒸気の流量は単位kg/hとし、温度は℃とする。
また、気泡塔型反応器30での反応熱量をQ(kcal/h)、水の蒸発潜熱をr(kcal/kg)、水の比熱をCp(kcal/kg/℃)とする。
【0110】
まず、物質収支により、補給配管110が合流した後の戻り配管112における蒸気発生量WV1と補給水量WL3は等しいため、次式(1)式が成り立つ。
WV1=WL3 …(1)
上記(1)式を導き出す手順について以下に説明する。
図8において、まず冷媒ドラム101から供給される温度t1の水の流量WL4は気泡塔型反応器30で反応熱を回収することで、温度t1の蒸気流量WV2+水流量WL2となるから、気泡塔型反応器30で相変化する入出の物質収支を示すと下記(2)式になる。
WL4=WV2+WL2 …(2)
更に、補給配管110から補給水量WL3が供給されることで、戻り配管112と補給配管110の合流部201での物質収支(給水+相変化)は次の式(3)になる。
WV2+WL2+WL3=WV1+WL4 …(3)
(2)式を(3)式に代入して整理すると次式になる。
WV1=WL3 …(1)
【0111】
また、補給水量WL3の温度は低温t3であり、他は高温t1(>t3)である。戻り配管112と補給配管110の合流部201においては、蒸気凝集量=給水予熱量/蒸発潜熱となるから、
(WV2−WV1)×r=WL3×Cp×(t1−t3) …(4)
となる。
反応熱量Qと気泡塔型反応器30での蒸気発生量WV2との関係は以下の通りである。
WV2=Q/r …(5)
そして、式(1)と(5)を(4)式に代入して整理する。
WL3=Q/{Cp×(t1−t3)+r} …(6)
このようにして、反応熱量Qと給水温度t1,t3との関係から補給水量WL3を求めることができる。
なお、反応熱量Qは、別途測定される反応率や冷媒ドラム101と気泡塔型反応器30の温度差から求めることができる。
【0112】
本実施形態による温度制御システム200は上述の構成を有しており、次にその制御方法について説明する。
例えば、給水用のポンプ104を駆動することで、冷媒ドラム101から温度t1の水の流量WL4が気泡塔型反応器30へ供給される。気泡塔型反応器30で発生する発熱反応に伴う反応熱により下伝熱管32a内で水流量WL4は一部が蒸発されて温度t1の蒸気流量WV2と水の流量WL2の二相となり、この二相流体(混相流体)は戻り配管112によって給送される。
【0113】
また、冷媒ドラム101内の蒸気相と水相とは、上述した水の流量WL4をポンプ104により気泡塔型反応器30に向けて排出することで水面が低下するため、これをレベル測定部117で測定し、その測定結果に基づいて補給配管110に設けたレベル調節弁102によって補給水量が調整されて供給される。
一方、補給配管110では、制御手段206で決定された比較的低温t3の補給水量WL3が補給されて、戻り配管112との合流部201で戻り配管112内の二相流体(WV2+WL2)と合流する。すると、合流部201では、温度t3の補給水量WL3が戻り配管112内で高温t1の蒸気WV2と直接混合して加熱され、飽和温度t1の蒸気となる。しかも、一部の蒸気が凝縮することで戻り配管112内の水の流量は、冷媒ドラム101から行き配管113に供給される水流量WL4と同じになる。
そして、合流部201以降の戻り配管112では、温度t1の蒸気流量WV1と水の流量WL4となって冷媒ドラム101内の水面の上方に吐出される。
【0114】
ここで、制御手段206による補給水量WL3の制御方法について説明する。
冷媒ドラム101内の水相温度を測定する水相温度測定部205で測定した温度t1と、気泡塔型反応器30の温度を測定する反応熱温度測定部106で測定した温度t1と、反応熱量測定部204で測定した反応熱量Qと、補給配管110の補給温度測定部202で測定した補給水の温度t3とが制御手段206に入力される。そして、制御手段206では上記(6)式により補給水量WL3を演算する。
この補給水量WL3の演算値を流量調整手段207に出力してレベル調節弁102を作動させて補給水流量WL3を補給配管110に供給し、合流部201で戻り配管112に合流させて冷媒ドラム101へ吐出させることになる。
【0115】
そして、冷媒ドラム101内では、蒸気相と水相の水面が設定レベルに調整され、蒸気相圧力と水相の温度とは、気液平衡状態に基づいた相関関係が常に保たれる。
また、蒸気出口配管111によって冷媒ドラム101内から蒸気流量WV1が系外に排出されると共に、補給水量WL3が戻り配管112との合流部201で蒸気と水との二相流体と合流して冷媒ドラム101内に供給される。しかも、制御手段206によって、蒸気流量WV1と補給水量WL3は等しく制御されるため、或いは補給水量WL3が蒸気流量WV1以下に制御されるため、冷媒ドラム101内の水面は一定に調整される。
【0116】
上述のように本実施形態による温度制御システム200によれば、蒸気出口配管111によって系外に排出する蒸気流量WV1に等しい比較的低温t3の補給水量WL3を補給配管110から戻り配管112に合流させて、戻り配管112内の飽和温度t1にある蒸気流量WV2と直接混合させることができるから、補給水量を瞬時に加熱して蒸発させることができる。そのため、冷媒ドラム101内の気液温度を常に飽和温度に維持できる。
更に、制御手段206によって、補給水量WL3が系外に排出する蒸気流量WV1と同等となるように演算でき、補給水量WL3が蒸気流量WV1を超えないように補給水量を正確に制限することができて、合流部201での全凝縮によるハンマリングを防止することができる。
しかも、構造の複雑化や設備の大型化を避けて冷媒ドラム101内の温度を均一に制御できる。
【0117】
(第2実施形態に係る変形例)
次に、前記温度制御システム200において、補給配管110が合流部201で戻り配管112に合流する際のハンマリングを防止するための構成について
図9から
図11により変形例として説明する。
【0118】
(第1変形例)
図9は第1変形例による合流部201の構成を示すものである。
図9において、補給配管110は戻り配管112の二相流体の流れ方向に対して鋭角αをなすように連結して合流する。これにより戻り配管112を流れる蒸気と水の二相流体に対して補給水がスムーズに合流して蒸発するため、ハンマリングを生じない。
【0119】
(第2変形例)
次に、
図10に示す第2変形例による合流部では、補給配管110は戻り配管112の二相流体の流れ方向に対して鋭角をなすように連結して合流すると共に、合流部201の上流側の補給配管110では例えば略U字形状の凹部110aを形成して凹部110a内に水を残留充填させた水シール部210がシール部として設けられている。
この構成によれば、補給水量WL3が少ない場合、戻り配管112内の蒸気が補給配管110内に逆流しようとしても水シール部210で停止させられる。そのため、戻り配管112内の蒸気が補給配管110内に逆流して凝縮によるハンマリングが発生することを防止できる。
なお、蒸気の逆流を防ぐシール部として、水シール部210に代えて逆止弁を設けてもよい。
【0120】
(第3変形例)
図11は第3変形例による合流部201の構成を示すものである。
図11において、補給配管110は戻り配管112の二相流体の流れ方向に対して鋭角をなすように連結しており、しかも補給配管110の先端部には戻り配管112内で補給水を分散して噴霧するスプレーノズル220が形成されている。これにより、戻り配管112の蒸気と水に合流する補給水は、スプレーノズル220で広く噴霧されるため、急激な蒸気凝縮を抑制してハンマリングを防止できる。
なお、実施形態による温度制御システム200においては、上述した第1から第3変形例の構成のいずれか二つまたは三つを組み合わせて構成してもよい。
【0121】
(第2実施形態に係る検証試験)
次に本発明の実施形態による温度制御システム200の検証試験について説明する。
まず、
図8において、冷媒ドラム101内の温度や行き配管113を通して供給する水量WL4や気泡塔型反応器30で生成される水量WL2の各水温t1、そして蒸気流量WV1、WV2の温度t1をいずれも195℃の飽和温度とする。そして、補給水量WL3の水温t3を110℃とする。
さらに、反応熱量Q=8000000kcal/h(測定値(計算による))
水の蒸発潜熱r=470kcal/kg(物性置(定数))
水の比熱Cp=1kcal/kg/℃(物性置(定数))
スチームドラム圧力=1.3MPaG
ポンプ104の循環量WL4=68000kg/h
とする。
【0122】
上記の条件下において、温度制御システム200の制御手段206において、冷媒ドラム101内の温度の均一化と液面レベルの一定化を図って、系外への蒸気の流量WV1と同一量になる補給水量WL3を決定するには上記(6)式によって行う。即ち、(6)式に上記の各数値を代入すると、
WL3=Q/{Cp×(t1−t3)+r}
=8000000/{1×(195−110)+470}
=14400kg/h
となる。
【0123】
また、(1)式により蒸気の流量WV1は補給水量WL3と等しいから
WV1=WL3=14400kg/h
となる。また、(5)式により気泡塔型反応器30内での蒸気発生量WV2を求めると、
WV2=Q/r
=8000000/470
=17000kg/h
となる。また、気泡塔型反応器30の出口における水の流量WL2を(2)式から求めると
WL2=WL4−WV2
=68000−17000
=51000kg/h
となる。
【0124】
次に
図12は、温度制御システム200において、戻り配管112と補給配管110との合流部201の前後位置での蒸気割合の変化を示す検証試験のグラフである。
図12において、スチームタンク2から気泡塔型反応器30へ供給される水の循環量WL4に対する気泡塔型反応器30内で生成される蒸気WV2の割合(WV2/WL4)を横軸にとり、合流部201の前後における戻り配管112内の二相流体中の蒸気量の割合を気相部の割合として縦軸にとった。
そして、水の循環量WL4に対する気泡塔型反応器30内で生成される蒸気WV2の割合(WV2/WL4)を変化させた場合における、戻り配管112中の合流部201の前後における二相液体中の蒸気量(気相部)の割合を測定した。
【0125】
図12において、破線Mは、気泡塔型反応器30の出口(戻り配管112)での気相(蒸気)の割合(WV2/(WL2+WV2))、実線Nは、補給配管110が合流した後の戻り配管112での気相(蒸気)の割合(WV1/(WV1+WL4)の変化を示している。
図12に示すグラフにおいて、スタート時点では気泡塔型反応器30での蒸発割合は0であるが(WV2/WL4=0)、気泡塔型反応器30の温度上昇に伴い蒸気WV2の発生量は増加する。気泡塔型反応器30での循環流量WL4に対する蒸発量WV2の割合(WV2/WL4)は通常30%で運転される。これを通常運転ポイントとする。この状態で、気泡塔型反応器30の出口で生成された蒸気量WV2の割合(WV2/WL4)から補給水WL3合流後の戻り配管112での蒸気量WV1の割合(WV1/(WV1+WL4))への変化は約1%程度の低下にすぎなかった。
【0126】
また、気泡塔型反応器30での循環流量WL4に対する蒸発量WV2の割合(WV2/WL4)が0を超えて〜35%の全範囲において、破線Mで示す蒸気量の割合(WV2/(WL2+WV2))から合流後の戻り配管112における実線Nで示す蒸気量の割合(WV1/(WV1+WL4))に変化しても、その変化は1%〜3%程度の範囲内であり、極めて低いためハンマリングは起こらなかった。
ここで、戻り配管112の補給配管110との合流部201において、戻り配管112内の蒸気WV2の全凝縮が起こればハンマリングが生じる可能性があるが、本検証試験では、上記のように補給水量WL3の合流後の戻り配管112内での蒸気WV1の割合の変化は約1%〜3%の範囲であり、蒸気流量WV1と補給水量WL3のバランスがとれているため、ハンマリングは生じない。
【0127】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、液体燃料合成システム1に供給される炭化水素原料として、天然ガスを用いたが、かかる例に限定されず、例えば、アスファルト、残油など、その他の炭化水素原料を用いてもよい。
【0128】
また、前記実施形態では、気泡塔型反応器30における合成反応として、FT合成反応による液体炭化水素の合成を例示したが、本発明はかかる例に限定されない。気泡塔型反応器30における合成反応としては、例えば、オキソ合成(ヒドロホルミル化反応)「R−CH=CH
2+CO+H
2→R−CH
2CH
2CHO」、メタノール合成「CO+2H
2→CH
3OH」、ジメチルエーテル(DME)合成「3CO+3H
2→CH
3OCH
3+CO
2」などにも適用することができる。
【0129】
また前記実施形態では、
図1に示すように、反応後流体(反応生成物)が気泡塔型反応器30の頂部30bから導出されているが、気泡塔型反応器30から反応後流体を導出する位置は、適宜変更することが可能である。例えば、反応後流体が、気泡塔型反応器30の中央部30c(側面)や底部30aから導出されていてもよく、気泡塔型反応器30の頂部30b、中央部30cおよび底部30aのうちの複数箇所から導出されていてもよい。なお、反応後流体を導出する位置は、例えば気泡塔型反応器30内の発熱反応の種類などに応じて変更してもよい。
【0130】
また前記実施形態では、水として水を採用したが、水でなくてもよい。
さらに前記実施形態では、下伝熱管32aにて一部蒸発した蒸気および水の混相流体が、戻り配管112を通って冷媒ドラム101に戻されるものとしたが、該混相流体は冷媒ドラム101に戻されなくてもよい。
【0131】
また前記実施形態では、第1温調部121および第2温調部122のいずれも、冷媒ドラム101および圧力制御部118を備えているものとしたが、これに限られるものではなく、液体冷媒である水の温度を調節する構成であれば、適宜構成を変更することが可能である。
【0132】
また前記実施形態では、上伝熱管32bは2つ設けられているものとしたが、これに限られるものではない。
さらに前記実施形態では、気泡塔型反応器30の底部30a内の実温度を、気泡塔型反応器30において底部30aよりも上側に位置する中央部30c内および頂部30b内の実温度よりも低くするものとしたが、これに限られるものではなく、底部30a内の実温度を、中央部30c内および頂部30b内の実温度と同等にしてもよい。
【0133】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。