(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0031】
[第1の実施形態]
図1〜
図4は、本発明の第1の実施形態に係るレンズ1の製造方法(成形方法)の概要を示す図である。
図5は、
図4におけるV矢視図である。
【0032】
レンズ1は、たとえば携帯電話のカメラに使用されるレンズであり、直径が1.0mm〜3.0mm程度、最大厚さが0.4mm〜0.5mm程度でたとえば円形状の平凸レンズになっている。
【0033】
レンズ1を構成している感光性材料は、特定の波長の電磁波の照射を受けることによって硬化する材料であり、特定の波長の電磁波の照射を受ける前の未硬化の感光性材料は、液体状もしくは流動体状になっている。また、レンズ1は、液体状もしくは流動体状の感光性材料が硬化(固化)することによって生成されている。
【0034】
感光性材料としてたとえば紫外線硬化樹脂等の樹脂材料を掲げることができる。以下この明細書では、紫外線硬化樹脂5を例に掲げて説明する。基板3は、特定の波長の電磁波を透過する材料で構成されている。以下本明細書では、石英ガラス板3を例に掲げて説明する。
【0035】
レンズ1は、紫外硬化樹脂供給工程と石英ガラス板設置工程と紫外線硬化樹脂硬化工程とを経て製造されるようになっている。
【0036】
紫外硬化樹脂供給工程は、
図1で示すように、未硬化の紫外線硬化樹脂5を、型7に形成されている凹部(キャビティ;たとえば、平凸レンズ状の凹部)9に供給する工程である。凹部9に供給される未硬化の紫外線硬化樹脂5の量は、凹部9の体積よりも多い量(たとば、1.1倍〜3倍程度)である。
【0037】
未硬化の紫外線硬化樹脂5を供給し終えた状態では、未硬化の紫外線硬化樹脂5は、たとえば、この表面張力によって凹部9の周辺に存在している型7の平面
(上面)11よりも盛り上がっている。そして、紫外線硬化樹脂5が両凸レンズ状になっている。
【0038】
なお、凹部9に未硬化の紫外線硬化樹脂5を供給することに代えてもしくは加えて、基板3に未硬化の紫外線硬化樹脂5を供給するようにしてもよい。すなわち、凹部9、基板3の少なくともいずれかに未硬化の紫外線硬化樹脂5を供給するようにしてもよい。この場合、供給された未硬化の紫外線硬化樹脂5の粘度や表面張力で、重力による紫外線硬化樹脂5の落下が発生しないようにするか、供給された未硬化の紫外線硬化樹脂5が重力で落下しないように、型7と基板3との上下関係を適宜決めるかする。
【0039】
石英ガラス板設置工程は、
図2で示すように、紫外硬化樹脂供給工程で紫外線硬化樹脂5が供給された後、型7(凹部9)に石英ガラス板3を設置する(被せる)工程である。石英ガラス板3の設置は、凹部9を型7の外部に通じさせる通路13が形成されるようにしてなされるとともに、この通路13に未硬化の紫外線硬化樹脂5が入り込むようにしてなされる。
【0040】
なお、通路13は、凹部9の周辺部(レンズ1の光路にはならない外周部位)につながって形成されている。また、通路13に入り込む未硬化の紫外線硬化樹脂5は、石英ガラス板3の設置によって、凹部9からあふれ出る樹脂である。
【0041】
また、石英ガラス板設置工程で設置された石英ガラス板3は、未硬化の紫外線硬化樹脂5を、たとえば、所定の力で押圧している。すなわち、石英ガラス板3が型7に近づく方向に所定の力で押されており、これによって、型7の凹部9に供給された未硬化の紫外線硬化樹脂5(通路13内に存在しているものも含む)が、石英ガラス板3で押圧されている(紫外線硬化樹脂5が型7と石英ガラス板3とで挟まれている)。
【0042】
紫外線硬化樹脂硬化工程は、
図2や
図3で示すように、石英ガラス板設置工程で石英ガラス板3を設置した後、紫外硬化樹脂供給工程で供給された紫外線硬化樹脂5を硬化させる工程である。
【0043】
紫外線硬化樹脂5の硬化は、紫外線発生装置15が発する紫外線17を、未硬化の紫外線硬化樹脂5に照射してなされる。
【0044】
なお、紫外線硬化樹脂硬化工程では、石英ガラス板3で未硬化の紫外線硬化樹脂5をたとえば押圧している状態で、紫外線硬化樹脂5を硬化するようになっている。この場合において、たとえば、紫外線硬化樹脂5の種類、型7の凹部9の形態、紫外線硬化樹脂5の硬化の進行状態(たとえば、紫外線17を照射し始めてからの時間の経過)等のうちの少なくともいずれかの条件に応じて、紫外線硬化樹脂5を押圧する石英ガラス板3の押圧力を、紫外線硬化樹脂硬化工程で変更可能なようになっている。
【0045】
たとえば、紫外線硬化樹脂5の種類の変更によって粘度が高くなった場合には、石英ガラス板3の押圧力を大きくし、粘度が低くなった場合には、石英ガラス板3の押圧力を小さくするようになっている。また、たとえば、型7の凹部9が大きくなった場合には、石英ガラス板3の押圧力を大きくし、型7の凹部9が小さくなった場合には、石英ガラス板3の押圧力を小さくするようになっている。また、紫外線硬化樹脂5の硬化が進むにしたがって、石英ガラス板3の押圧力を次第に大きくするようになっている。
【0046】
ところで、石英ガラス板3の押圧力を、紫外線硬化樹脂硬化工程で紫外線硬化樹脂5を硬化している途中の状態で次第にもしくは急に(階段状に)変化させてもよい。また、紫外線硬化樹脂硬化工程で紫外線硬化樹脂5が硬化を開始する前に石英ガラス板3の押圧力を変更して、この後、この変更した値のままで紫外線硬化樹脂5を硬化させてもよい。
【0047】
また、紫外線硬化樹脂硬化工程において、次に示す態様で紫外線硬化樹脂5を硬化させてもよい。まず、石英ガラス板3と型7との距離が所定の距離になるようにして石英ガラス板3を型7に設置する。この設置後、紫外線硬化樹脂5を硬化させる(紫外線硬化樹脂5の硬化を開始する)。この硬化をさせるときに、紫外線硬化樹脂5の部分的な硬化による紫外線硬化樹脂5の僅かな体積に変化によって紫外線硬化樹脂5に欠陥が生じることを防止すべく、石英ガラス板3で紫外線硬化樹脂5を押圧(このときの押圧力が一定であってもよいし変更するようにしてもよい。)して、紫外線硬化樹脂5の全体を硬化する。
【0048】
このように、石英ガラス板3で紫外線硬化樹脂5を押圧して紫外線硬化樹脂5を硬化させることにより、紫外線硬化樹脂5に欠陥が生じようとしてもこの欠陥に未硬化の紫外線硬化樹脂5が押し込まれ、紫外線硬化樹脂5が硬化し終えたときにおける欠陥の発生を抑制することができる。
【0049】
紫外線硬化樹脂5の硬化は、凹部9に充填されている未硬化の紫外線硬化樹脂5の一部を硬化させ、この硬化した部位を次第に大きくして、紫外線硬化樹脂5の全体を硬化することによってなされる。
【0050】
具体的には、紫外線硬化樹脂5の中央部とこの近傍の部位(凹部9の中央部とこの近傍の部位)に、石英ガラス板3を透して紫外線17を照射する。そして、紫外線硬化樹脂5の中央部とこの近傍の部位で紫外線硬化樹脂5を硬化させる。続いて、この硬化した部位(内部に未硬化の部位を含まない硬化部位)を次第に大きくして(内部に未硬化の部位が存在しないように硬化部位を外側に向かって成長させて)紫外線硬化樹脂5の全体を硬化する。
【0051】
さらに説明すると、紫外線硬化樹脂硬化工程では、凹部9に充填されている紫外線硬化樹脂5の中央部およびこの近傍の部位に紫外線17を弱く長い時間(紫外線硬化樹脂5の全体に照射する従来の場合よりも弱くしかも長く)照射して、紫外線硬化樹脂5全体を硬化させるようになっている。
【0052】
このようにして紫外線硬化樹脂5を硬化させる場合、たとえば、紫外線硬化樹脂5の種類、型7の凹部9の形態、紫外線硬化樹脂5の硬化の進行状態(たとえば、紫外線17を照射し始めてからの時間の経過)等の少なくともいずれかの条件に応じて、紫外線硬化樹脂5に照射する紫外線17の照度(強度)が、弱い状態から強い状態になるように、紫外線17の照度を徐々に変更可能なようになっている。また、紫外線17を、凹部9(紫外線硬化樹脂5)の中央部およびこの近傍の部位にのみ照射し続けて紫外線硬化樹脂5全体を硬化させるようになっている。
【0053】
なお、紫外線硬化樹脂5に照射する紫外線の照度を変更することに代えてもしくは加えて、たとえば、紫外線硬化樹脂5の種類、型7の凹部9の形態、紫外線硬化樹脂5の硬化の進行状態等の少なくともいずれかの条件に応じて、紫外線硬化樹脂5に照射する紫外線17の照射位置(紫外線硬化樹脂5での紫外線のあたる場所;紫外線17を照射する部位)、紫外線硬化樹脂5に照射する紫外線17の照射面積の少なくともいずれかを変更可能なようにしてもよい。
【0054】
たとえば、始めに凹部9の中央部およびこの近傍の部位にのみ紫外線17を照射し、この後、紫外線17を照射する部位を凹部9の周辺部にずらしていき、紫外線硬化樹脂5全体を硬化させてもよい。さらに、紫外線17を照射する部位を凹部9の中央から周辺にずらすのではなく、紫外線17を凹部9の中央に照射したまま、紫外線17の照射部位を凹部9の周辺部に広げて紫外線硬化樹脂5全体を硬化させてもよい。
【0055】
また、紫外線17を照射する部位を変える場合には、紫外線17の照射で紫外線硬化樹脂5の体積が変化し終えた(縮小し終えた)後に、紫外線17の照射をする部位を移動する(変化させる)ことが望ましい。たとえば、凹部9の中央部やこの近傍の部位で紫外線硬化樹脂5が完全に硬化してから、紫外線17の照射部位を凹部9の周辺部に移行することが望ましいし、また、凹部9の中央部やこの近傍の部位で紫外線硬化樹脂5が半硬化してから、紫外線17の照射領域を凹部9の周辺部に移行することが望ましい。
【0056】
紫外線硬化樹脂5全体が硬化し終えた後、硬化した紫外線硬化樹脂5を型7から分離することによってレンズ1を得る(
図4、
図5参照)。
【0057】
なお、
図4や
図5で示すレンズ1は、硬化した紫外線硬化樹脂5が石英ガラス板3に貼り付いており、また、通路13内に存在していた紫外線硬化樹脂5の部位も存在している。そして、このままの状態のもの、もしくは、石英ガラス板3を分離した状態のものを、レンズ1として採用してもよい。
【0058】
また、
図4に示す破線L1(
図5に示す円L1)で、硬化した紫外線硬化樹脂5と石英ガラス板3とを切断して、凹部9内に存在していた紫外線硬化樹脂5の部位(石英ガラス板3の部位を含む)を、レンズ1として採用してもよい。さらに、上記切断後に、石英ガラス板3を分離した状態の硬化した紫外線硬化樹脂5を、レンズ1として採用してもよい。
【0059】
ここで、レンズ1の製造方法についてさらに詳しく説明する。
【0060】
型7は、たとえば、金属で構成された金型であって、円柱状に形成されており、旋盤加工で形成されている。型7の平面状の上面11の中央部に凹部9が形成されている。凹部9は、平凸レンズ状に形成されており、中心に向かうほど深くなっている。石英ガラス板3は、たとえば円形状で平板状に形成されている。
【0061】
石英ガラス板設置工程での石英ガラス板3の設置は、
図2や
図3で示すように、石英ガラス板3の厚さ方向の一方の平面(
図2や
図3における下面)19が型7の平面11と所定の僅かな距離L3(たとえば、5μm〜20μm)だけ離れて平行に対向するようにしてなされる。なお、距離L3は、凹部9の直径D1に応じて変更される。たとえば、凹部9の直径D1が大きくなるにしたがって距離L3も大きくなる。
【0062】
また、石英ガラス板設置工程での石英ガラス板3の設置は、
図2や
図3で示すように、石英ガラス板3と型7の平面11との間に未硬化の紫外線硬化樹脂5が入り込むようにしてなされる。
【0063】
さらに説明すると、石英ガラス板設置工程で石英ガラス板3を設置することにより、石英ガラス板3と型7の平面11との間に、型7の凹部9の全周を囲む平板状の隙間(厚さ寸法が5μm〜20μmの隙間;型7の凹部9と型7の外部とをお互いにつなぐ通路)13が形成されるようになっている。そして未硬化の紫外線硬化樹脂5は、型7の凹部9の全周を囲むようにして、隙間13に入り込んでいる。
【0064】
型7の平面11に直交する方向から見ると、型7の凹部9は、型7の平面11の中央部に形成されている。また、石英ガラス板3は型7の平面よりも大きくなっており、石英ガラス板3の内側に型7(型7の平面11や凹部9)が存在している。
【0065】
さらに、石英ガラス板3を設置した状態では、未硬化の紫外線硬化樹脂5が、隙間13の外にもあふれ出ているが(
図2や
図3の参照符号21を参照)、あふれ出ていなくてもよい。
【0066】
また、石英ガラス板3は、詳しくは後述するレンズ製造装置(図示せず)によって、未硬化の紫外線硬化樹脂5が供給された型7に設置され隙間13が形成されるようになっているが、石英ガラス板3が、たとえば型7に一体的に設けられているストッパ(図示せず)に当接して設置されるようになっていてもよい。なお、この場合ストッパは、たとえば、紫外線硬化樹脂5から離れて設けられており、紫外線硬化樹脂5には接触しないようになっているものとする。
【0067】
石英ガラス板3を、ストッパに当接させることなく、レンズ製造装置を用いて隙間13が形成されるように型7に設置する態様では、前述したように、たとえば、石英ガラス板3の設置後から紫外線硬化樹脂5が硬化し終えるまで、石英ガラス板3が型7に近づく方向に、石英ガラス板3が紫外線硬化樹脂5を所定の圧力で常に付勢している。さらに説明すると、石英ガラス板3の下面19を型7の上面11に面接触させるべく、石英ガラス板3を下方に所定の力で付勢している。この付勢をするときに、未硬化の紫外線硬化樹脂5の付着力等によって、石英ガラス板3の下面19と型7の上面1との間に、未硬化の紫外線硬化樹脂5で満たされている僅かな隙間が形成されるが、この隙間を通路13として使用している。
【0068】
レンズ1の製造方法によれば、凹部9に充填されている未硬化の紫外線硬化樹脂5を硬化させるときに、型7の凹部9が通路13を介して型7の外部に通じており、しかも、凹部9に充填されている未硬化の紫外線硬化樹脂5を中央から周辺部に向かって徐々に硬化させるので、紫外線硬化樹脂5の硬化時における体積の微小な減少によるレンズ1の形状精度の悪化を回避することができ、正確な形状のレンズ1を得ることができる。
【0069】
すなわち、
図3で示すように、凹部9に充填されている未硬化の紫外線硬化樹脂5の中央部およびこの近傍にのみ紫外線17を照射すると、まず、未硬化の紫外線硬化樹脂5のうちで中央部およびこの近傍に部位(
図3の参照符号23を参照)が硬化を開始する。このときに、硬化をする部位23が、矢印A1で示すように僅かに収縮する。この収縮にともなって、隙間13に存在している未硬化の紫外線硬化樹脂5が、矢印A3で示すように凹部9側に僅かに逆流(流動)する。これより、凹部9の中央部やこの近傍部位において紫外線硬化樹脂5が硬化しても、硬化した紫外線硬化樹脂5に欠陥等が発生する事態が回避される。同様にして、硬化部位が凹部9の周辺に広がるときにも、未硬化の紫外線硬化樹脂5が逆流し、硬化した紫外線硬化樹脂5に欠陥等が発生することが回避される。そして、正確な形状のレンズ1を得ることができる。なお、
図3に破線L5で示すものは、逆流により体積が減少した紫外線硬化樹脂5である。
【0070】
また、レンズ1の製造方法によれば、1回の紫外線硬化樹脂5の硬化でレンズ1が生成されるので、レンズ1内に、未硬化の紫外線硬化樹脂5を複数回に分けて供給し硬化させたことによる境界が存在せず、レンズ1の光
路が良好になっている。
【0071】
また、レンズ1の製造方法において、紫外線硬化樹脂5を硬化させるときに石英ガラス板3で押圧する態様にすると、硬化する際の紫外線硬化樹脂5の僅かな体積変化にかかわらず、通路13の僅かな隙間の値を一定に維持することができ、型
7が下型として確実にはたらき石英ガラス板3が上型として確実にはたらき、レンズ1を正確な形状に形成することができる。また、石英ガラス板3の押圧により、通路13内の紫外線硬化樹脂5の逆流が定量化され、レンズ1を正確な形状に形成することができる。
【0072】
また、レンズ1の製造方法において、石英ガラス板3の押圧力を変更可能なものとし、押圧力として適切な態様のものを選択することにより、一層正確な形状のレンズ1を成形することができ、紫外線17の照射の態様を変更可能なものとし、紫外線17の照射の態様として適切なものを選択することにより、一層正確な形状のレンズ1を成形することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係るレンズ1の製造方法を示す図である。
【0074】
本発明の第2の実施形態に係るレンズ1の製造方法は、型7aに複数の凹部9を設けて、複数のレンズ1をほぼ同時に成形する点が、本発明の第1の実施形態に係るレンズ1の製造方法と異なり、その他の点は、本発明の第1の実施形態に係るレンズ1の製造方法とほぼ同様にしてなされる。
【0075】
すなわち、本発明の第2の実施形態に係るレンズ1の製造に使用される型7aには、複数の凹部(お互いが僅かに離れている複数の凹部)9が設けられている。各凹部9は、型7の上面11の縦方向(
図6の紙面に直交する方向)および横方向(
図6の左右方向)で所定の間隔をあけ行列状に設けられている。
【0076】
また、紫外線硬化樹脂供給工程で、各凹部9に供給される未硬化の紫外線硬化樹脂5の量は、型7aに設けられている総ての凹部9の合計体積よりも多い量になっている。さらに説明すると、たとえば、各凹部9のそれぞれに、両凸レンズ状に紫外線硬化樹脂5が供給されるようになっている。
【0077】
なお、紫外線硬化樹脂供給工程で、型7aに設けられている総ての凹部9の合計体積よりも多い量の紫外線硬化樹脂5を供給するときに、一部の凹部9の群にのみ、供給するようにしてもよい。たとえば、紫外線硬化樹脂5を供給し終えた状態で、型7aの平面11の中央部およびこの近傍に設けられている一部の凹部9にのみ、紫外線硬化樹脂5を供給するようにしてもよい。
【0078】
そして、各凹部9が型7aの外部に通じるように石英ガラス板設置工程で石英ガラス板3を設置し終えた状態で、上述した紫外線硬化樹脂供給工程での未硬化の紫外線硬化樹脂5の供給態様にかかわらず、各凹部9に未硬化の紫外線硬化樹脂5が入り込んでいるとともに、石英ガラス板3と型7aの平面11との間に存在している平板状の隙間13にも未硬化の紫外線硬化樹脂5が入り込むようになっていてもよい。
【0079】
また、型7aの平面11に直交する方向から見ると、平板状の隙間13に入り込んでいる未硬化の紫外線硬化樹脂5は、空洞の存在しない1枚の板に見え、未硬化の紫外線硬化樹脂5が満たされている各凹部9は、空洞の存在しない上記1枚の板の内側に存在している。
【0080】
また、紫外線硬化樹脂硬化工程では、各凹部9の中央部とこの近傍の部位毎に、紫外線17を照射して紫外線硬化樹脂5を硬化させている。
【0081】
そして、紫外線硬化樹脂5の硬化後、第1の実施形態の場合と同様にして、硬化した紫外線硬化樹脂5を型7aから分離するとともに、硬化した紫外線硬化樹脂5を適宜切断し、複数のレンズ1を得るようになっている。
【0082】
レンズ1の製造方法によれば、型7aに複数の凹部9が設けられているので、一度の成形で多数のレンズ1を得ることができ、効率良くレンズ1を製造することができる。
【0083】
ところで、上記第1、第2の実施形態に係るレンズ1の製造方法を実行する装置として、次に掲げるレンズ製造装置(図示せず)を掲げることができる。
【0084】
レンズ製造装置は、たとえば、紫外線硬化樹脂供給装置と型設置体と石英ガラス板設置体と紫外線発生装置15と制御装置とを備えて構成されている。
【0085】
紫外線硬化樹脂供給装置は、未硬化の紫外線硬化樹脂5を、型7(7a)に形成されている凹部9に供給する装置である。
【0086】
型設置体は、ベース体の下部でベース体にたとえば一体的に設けられており、紫外線硬化樹脂が供給された型7(7a)を一体的に設置するものである。この設置は、型7(7a)の凹部9が上側に位置して未硬化の紫外線硬化樹脂が凹部9からこぼれないようにしてなされる。
【0087】
石英ガラス板設置体は、ベース体の上部で、型設置体から離れてベース体に設けられており、石英ガラス板3が一体的に設置されるようになっており、型設置体に接近・離反する方向(たとえば上下方向)で型設置体に対して相対的に移動自在になっている。石英ガラス板設置体に設置された石英ガラス板3は、型7(7a)の上方に位置して型と対向している。また、石英ガラス板設置体は、たとえば、リニアガイドベアリングを介してベース体に設けられており、これにより上記移動をするようになっている。
【0088】
また、レンズ製造装置には、石英ガラス板設置体に上記相対的な移動をさせるための駆動手段が設けられている。駆動手段は、たとえば、サーボモータとボールねじとを備えて構成されている。
【0089】
紫外線発生装置15は、紫外線硬化樹脂5に照射する紫外線を発生する装置であって、たとえば、紫外線の照射領域(照射位置;紫外線硬化樹脂5での紫外線17のあたる場所)を変更可能なようになっている。なお、紫外線発生装置15が、上述した照射領域を変更可能な構成に代えてもしくは加えて、紫外線17の照度(強度)、紫外線硬化樹脂5に照射する紫外線の照射面積の少なくともいずれかを変更可能な構成になっていてもよい。
【0090】
制御装置は、型7(7a)が型設置体に設置されこの型設置体から離れている石英ガラス板設置体に石英ガラス板3が設置されている状態で、未硬化の紫外線硬化樹脂5を、型7(7a)に形成されている凹部9の体積よりも多い量凹部9に供給し、この供給後に、凹部9を型7(7a)の外部に通じさせる通路13が形成されこの通路13に未硬化の紫外線硬化樹脂5が入り込むようになるまで、石英ガラス板設置体を型設置体側に相対的に移動して停止し、紫外線発生装置15で、型7(7a)の凹部9に充填されている紫外線硬化樹脂5の中央部位およびこの近傍に紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂5を硬化し、この後、石英ガラス板設置体を型設置体から相対的に離すように、駆動手段と紫外線発生装置15とを制御する装置である。
【0091】
なお、紫外線硬化樹脂5の硬化であるが、前述したように、たとえば、始めに型7(7a)の凹部9に充填されている紫外線硬化樹脂5の中央部位およびこの近傍にのみ紫外線17を照射して、型7(7a)の凹部9に充填されている紫外線硬化樹脂5の中央部位およびこの近傍の部位を硬化させ、この後、紫外線17の照射領域を変えて(型7(7a)の凹部9に充填されている紫外線硬化樹脂5の周辺部に次第に移して)、紫外線硬化樹脂5の全体を硬化するようになっている。
【0092】
また、制御装置の制御の下、石英ガラス板3を型7(7a)側に移動して停止した後、紫外線硬化樹脂5に紫外線17を照射して紫外線硬化樹脂5を硬化させるときに、紫外線硬化樹脂5が硬化し終えるまで、たとえば、石英ガラス板3が型7(7a)に近づく方向に、石英ガラス板3が紫外線硬化樹脂5を所定の圧力で常に付勢するようになっている。
【0093】
たとえば、制御装置の制御の下、石英ガラス板3と型7との距離が所定の距離になったときに石英ガラス板設置体の相対的な移動を停止し、この後、紫外線硬化樹脂5に紫外線17を照射するとともに、紫外線硬化樹脂5の部分的な硬化による紫外線硬化樹脂5の僅かな体積に変化によって紫外線硬化樹脂5に欠陥が生じることを防止すべく、石英ガラス板3で紫外線硬化樹脂5を押圧するようになっている。
【0094】
なお、レンズ製造装置には、石英ガラス板3が紫外線硬化樹脂5を押圧する押圧力を測定する押圧力測定手段が設けられている。そして、制御装置の制御の下、駆動手段によって石英ガラス板設置体を型設置体に相対的に近づけ、石英ガラス板設置体に設置されている石英ガラス板3と型設置体に設置されている型7との間の距離が予め設定されている距離になったときに、石英ガラス板設置体の相対的な移動を停止するようになっている。この停止により、紫外線硬化樹脂5が供給された型7の凹部9を型7の外部に通じさせる通路13が形成されこの通路13に未硬化の紫外線硬化樹脂5が入り込んだ態様で石英ガラス板3が型7に設置され石英ガラス板3で紫外線硬化樹脂5が押圧される。また、上記停止をしたときに、押圧力測定手段で石英ガラス板3の押圧力を測定し、この押圧力が目標値から所定の値以上ずれているときには、駆動手段を制御して押圧力を目標値にするようになっている。
【0095】
なお、押圧力測定手段は、たとえば、型設置体とベース体との間に設けられているロードセルによって構成されている。
【0096】
また、すでに理解されるように、制御装置は、紫外線硬化樹脂5に紫外線を照射して紫外線硬化樹脂5を硬化するときに、石英ガラス板3の押圧力を変更する制御ができるようになっている。
【0097】
また、すでに理解されるように、制御装置は、紫外線硬化樹脂5に紫外線を照射して紫外線硬化樹脂5を硬化するときに、紫外線発生装置が発生する紫外線の照度、紫外線発生装置による紫外線の照射位置、紫外線硬化樹脂5に照射する紫外線の照射面積の少なくともいずれかを変更する制御ができるようになっている。
【0098】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る成形品の製造装置(成形
品製造装置)31によって製造される成形品(たとえばレンズもしくはレンズ集合体)33について説明する。
【0099】
成形品33は、
図7に示すように、基材35と成形体37とを備えて構成されている。基材35は、たとえば、円形な平板状に形成されている(以下、「基材」を「基板」という)。成形体37は、たとえば、球冠状に形成されている。
【0100】
さらに説明すると、成形体37は、円形な平板で形成されている基部39と、球冠で形成されている先部41とで構成されている。先部41の円形な平面は、基部39の厚さ方向の一方の面(円形な面)に接しており、基部39の厚さ方向から見ると、基部39の中心位置と先部41の中心位置とがお互いに一致している。なお、先部41の平面の直径は、基部39の直径よりも小さくなっており、基部39の厚さの値は、先部41の高さの値に比べて小さくなっている。基部39(成形体37)の直径は、基板35の直径によりも十分に小さくなっており、基部39の厚さは、基板35の厚さよりも薄くなっている。
【0101】
基板35は、たとえば、所定の波長の電磁波(たとえば、紫外線)が透過可能な石英ガラス等の材料で構成されている。成形体37は、所定の波長の電磁波の照射を受けることで硬化した感光性材料(たとえば、硬化した紫外線硬化樹脂)で構成されており、成形体37の基部39と先部41とは一体成形されている。
【0102】
成形体37は、基板35の厚さ方向の一方の面(円形な平面)に設けられており、成形体37の基部39の厚さ方向の他方の面が、基板35の厚さ方向の一方の面に面接触して貼り付いている。これにより、成形体37が、基板35に一体的に設けられている。
【0103】
成形体37は、基板35の厚さ方向の一方の面に複数(多数)設けられている。
図7では、1枚の基板35に19個の成形体37を描いてあるが、実際の成形品33では、1枚の基板35に数百個〜数千個の成形体37が設けられている場合もある。各成形体37は、お互いが所定の間隔をあけて設けられている。
【0104】
次に、成形品の製造装置(成形品製造装置)31について説明する。なお、説明の便宜のために、水平な一方向をX軸方向とし、水平な他の一方向であってX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに直交する鉛直方向(上下方向)をZ軸方向とする。
【0105】
図8で示す成形品製造装置31は、たとえば1つの型43を繰り返し用いて、複数の成形体37をたとえば1つずつ、1枚の基板35に一体的に設ける装置である(複数の成形体37を基板35に一体的に設けることで成形品33を成形する成形品成形装置である)。
【0106】
成形品製造装置31は、型設置体45と基材設置体(基板設置体)47と硬化部(感光性材料硬化装置;成形材料硬化装置)49と制御装置51と押圧力測定部53とを備えている。
【0107】
型設置体45には、型43が設置されるようになっている。基板設置体47には、基板35が設置されるようになっている。また、基板設置体47は、型設置体45に接近もしくは離反する方向
(Z軸方向)で、型設置体45に対して相対的に移動位置決め自在になっている。
【0108】
硬化部49は、感光性材料に照射する所定の波長の電磁波を発生する電磁波発生装置(たとえば、図示しない紫外線発生装置)で構成されている。
【0109】
押圧力測定部53は、基板設置体47が型設置体45に対して相対的に移動して、型設置体45に設置されている型(設置済み型)43で基板設置体47に設置されている基板(設置済み基板)35を押すときの押圧力を測定するものである。
【0110】
制御装置51は、制御部55とメモリ57と入力部(たとえばタッチパネル)
59とを備えており、予めメモリ57に格納されている動作プログラムに従って、制御部55の制御の下、基板設置体47の相対的な移動、硬化部9等を制御し、成形
品製造装置31に次に示す各動作A,B,Cをこの順でさせるようになっている。
【0111】
動作A;未硬化の紫外線硬化樹脂61が供給された基板35が基板設置体47に設置され型43が型設置体45に設置された状態で(
図9(a)参照)、型43の凹部63を型43の外部に通じさせる通路65が形成され、凹部63と通路65とに未硬化の紫外線硬化樹脂61が入り込み、設置済み基板35と設置済み型43との間に未硬化の紫外線硬化樹脂61の薄膜が存在して設置済み型43が設置済み基板35を押圧する押圧力が所定の値になるまで、基板設置体47を型設置体45側に相対的に移動する(
図9(b)参照)。
【0112】
動作B;設置済み基板35と設置済み型43との間に(通路65に)未硬化の紫外線硬化樹脂61の薄膜が存在し設置済み型43が設置済み基板35を押圧する押圧力が所定の値になったことが押圧力測定部53で測定された後に、型設置体45に対する基板設置体47の相対的な移動を停止して設置済み基板35に対する設置済み型43の位置決めをする(
図9(b)もしくは
図9(c)参照)。
【0113】
動作C;上記位置決め後に、未硬化の紫外線硬化樹脂61に硬化部49が発した紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂61を硬化し(
図9(c)参照)、設置済み型43を設置済み基板35と硬化した紫外線硬化樹脂(成形体37)から離す(離型する;
図9(d)参照)。
【0114】
なお、制御装置51の制御の下、上記各動作A,B,Cを繰り返して、1枚の基板35に複数の成形体37が設置される。この場合、各成形体37が所定の間隔をあけて設置されるようにすべく、設置済み基板35が設置済み型43に対して、X軸方向とY軸方向とで相対的に移動位置決めされる(
図9(e)参照)。
【0115】
また、動作Aにおいて、未硬化の紫外線硬化樹脂61が供給された基板35が基板設置体47に設置され型43が型設置体45に設置された状態で、型43の凹部63を型43の外部に通じさせる通路65を形成する代わりに、未硬化の紫外線硬化樹脂61が凹部63に供給された型43が型設置体45に設置され基板設置体47に基板35が設置されている状態で、型43の凹部63を型43の外部に通じさせる通路65を形成し、もしくは、未硬化の紫外線硬化樹脂61が凹部63に供給された型43が型設置体45に設置され未硬化の紫外線硬化樹脂61が供給された基板35が基板設置体47に設置された状態で、型43の凹部63を型43の外部に通じさせる通路65を形成してもよい。
【0116】
この場合、設置済み型43に供給された未硬化の紫外線硬化樹脂61が重力で落下してしまうことを防止するために、未硬化の紫外線硬化樹脂61として、粘度が高いものや表面張力が大きいものが採用される。
【0117】
メモリ57には、
図11に示すテーブル(表)60が予め格納されている。テーブル60は、未硬化の紫外線硬化樹脂61の粘度と設置済み型43との押圧力との関係を示している。たとえば、未硬化の紫外線硬化樹脂61の粘度が10000cpsである場合、設置済み型43で設置済み基板35を押圧したとき(基板35に対して型43を一定の遅い速度で近づけて、型43と基板35とで未硬化の紫外線硬化樹脂61の薄膜を挟み込んだとき)に、押圧力(挟み込みの力)が0.5N(ニュートン)になれば、通路65の幅(設置済み型43と設置済み基板35との間の距離)が、0.050mmになるのである。同様にして、未硬化の紫外線硬化樹脂61の粘度が12000cpsである場合、押圧力が0.7Nになれば、通路65の幅が、0.050mm(0.060mm等の他の値であってもよい)になるのである。
【0118】
ここで、成形品製造装置31についてさらに詳しく説明する。成形品製造装置31は、たとえば、フレーム67と基板位置決め装置69と移動体71と移動体位置検出装置73とを備えている。
【0119】
移動体71は、フレーム67の上方で図示しないリニアガイドベアリングを介してフレーム67に設けられている。そして、移動体71は、図示しないサーボモータ等のアクチュエータとボールネジとを介して、制御装置51の制御の下、フレーム67に対してZ軸方向で移動位置決め自在になっている。移動体位置検出装置73は、移動体71の位置を検出するため検出装置であり、たとえば、リニアエンコーダで構成されている。型設置体45は、移動体71の下側で、移動体71に一体的に設けられている。
【0120】
基板位置決め装置69は、フレーム67の下方でフレーム67に設けられている。また、基板位置決め装置69は、ベース体75とこのベース体75の上側に設けられているテーブル77とを備えて構成されている。
【0121】
ベース体75は、フレーム67に一体的に設けられている。テーブル77は、図示しない中間テーブルを介してフレーム67に設けられている。上記中間テーブルは、図示しないリニアガイドベアリングを介してベース体75に設けられている。そして、上記中間テーブルは、図示しないサーボモータ等のアクチュエータとボールネジとを介して、制御装置51の制御の下、ベース体75に対してY軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0122】
テーブル77は、図示しないリニアガイドベアリングを介して上記中間テーブルに設けられている。そして、テーブル77は、図示しないサーボモータ等のアクチュエータとボールネジとを介して、制御装置51の制御の下、上記中間テーブルに対してX軸方向で移動位置決め自在になっている。
【0123】
また、テーブル77の上面には、たとえば真空吸着によって基板35が一体的に設置されるようになっており、テーブル77は基板設置体47としての機能を発揮するようになっている。これにより、基板設置体47が、型設置体45に対して、X軸方向とY軸方向とZ軸方向で相対的に移動位置決めされるようになっている。
【0124】
なお、図示してはいないが、テーブル77と基板設置体47とを別体にし、基板設置体47がテーブル77に対して、θ軸まわりで回動位置決め自在になっていてもよい。θ軸は、Z軸方向に延びた軸であって基板設置体47の中心を通る軸である。
【0125】
すなわち、テーブル77の上側に図示しないベアリングを介して基板設置体47を設け、テーブル77に対して基板設置体47がθ軸まわりで回動するようにし、さらに、制御装置51の制御の下、図示しないサーボモータ等のアクチュエータにより、θ軸まわりで基板設置体47をテーブル77に対して回動位置決め自在にしてもよい。
【0126】
次に、型43と型設置体45と移動体71とについてさらに詳しく説明する。
【0127】
型43は、たとえば、紫外線や可視光線が透過可能な石英ガラス等の材料で、円柱状に形成されている。型43の底面には、球冠状の凹部(コア)63が形成されている。型43の高さ方向から見ると、型43の底面の直径は、コア63の直径よりも
大きくなっており、型43の底面の中心位置とコア63の中心位置とがお互いに一致している。
【0128】
型設置体45は、押圧力測定部53を構成しているロードセル79を介して移動体71に一体的に設けられている。詳しく説明すると、移動体71の下部には、ロードセル79が一体的に設けられており、ロードセル79の下部に型設置体45が一体的に設けられている。
【0129】
型設置体45に設置された型(設置済み型)43は、図示しないボルト等の締結具を用いて、型設置体45の下部で型設置体45に一体的に設けられている。型43が型設置体45に一体的に設けられている状態では、円柱状の型43の高さ方向がZ軸方向になっており、型43の上面が型設置体45の平面状の下面に面接触しており、型43の底面が、基板設置体47に設置された基板(設置済み基板)35の上面に対して平行になって対向している。
【0130】
型設置体45と移動体71との間にロードセル79を設けてあることで、移動体71が下降して設置済み型43で設置済み基板35(たとえば未硬化の紫外線硬化樹脂61に薄膜を介して設置済み基板35)を押圧する場合、この押圧力を測定することができるようになっている。
【0131】
なお、上述したように、テーブル77(基板設置体47)がX軸方向とY軸方向とで移動位置決め自在であることで、設置済み基板35の上面の任意の位置に、設置済み型43で成形体37を設置することができるようになっている。
【0132】
また、成形品製造装置31には、樹脂供給装置81が設けられている。樹脂供給装置81は、樹脂供給ノズル83を備えており、この樹脂供給ノズル83から未硬化の紫外線硬化樹脂を所定量吐出し、設置済み基板35の上面に未硬化の紫外線硬化樹脂を供給することができるようになっている。
【0133】
樹脂供給ノズル83は、樹脂供給ノズル移動位置決め装置(図示せず)で支持されており、制御装置51の制御の下、供給位置PS2と退避位置PS1との間を移動するようになっている。供給位置PS2と退避位置PS1とは、設置済み基板35の上方の位置である。供給位置PS2は、基板設置体47に設置された基板35の上面の所定の位置に未硬化の紫外線硬化樹脂を供給する位置であり、退避位置PS1は、樹脂供給ノズル83が、型設置体45等と干渉しない位置である。
【0134】
なお、樹脂供給ノズル83を樹脂供給ノズル移動位置決め装置で支持することなく、設置済み基板35の上面の所定の位置に、手動で未硬化の紫外線硬化樹脂を所定量供給するようにしてもよい。
【0135】
硬化部49は、紫外線硬化樹脂に照射する所定の波長の電磁波(紫外線)を発生する電磁波発生装置(たとえば、図示しない上側紫外線発生装置)で構成されている。
【0136】
上側紫外線発生装置は、移動体71の上側に設けられており、下方に向かって紫外線を出射するようになっている。上側紫外線発生装置が出射した紫外線は、移動体71とロードセル79と型設置体45とに設けられた貫通孔(図示せず)と設置済み型43とを通って、型43の下部に存在している紫外線硬化樹脂61を硬化するようになっている。
【0137】
なお、硬化部49を上述したように上側紫外線発生装置で構成することに代えてもしくは加えて、硬化部49を、下側紫外線発生装置(図示せず)で構成してもよい。下側紫外線発生装置は、たとえば、ベース体75の下側に設けられており、上方に向かって紫外線を出射するようになっている。下側紫外線発生装置が出射した紫外線は、ベース体75とテーブル77(基板設置体47)等に設けられた貫通孔(図示せず)と設置済み基板35とを通って、設置済み型43の下部(基板35の上面の所定の位置)に存在している紫外線硬化樹脂61を硬化するようになっている。
【0138】
なお、第3の実施形態では、たとえば、第1の実施形態や第2の実施形態のように、紫外線硬化樹脂61を硬化させるものとする。すなわち、型43の凹部63が通路(型43と基板35との間の隙間)65を介して型43の外部に通じている状態で、型43の凹部63に充填されている未硬化の紫外線硬化樹脂61を中央から周辺部に向かって徐々に硬化させるものとする。
【0139】
また、上述したように、型43がたとえば円柱状に形成されており、型43の底面の中央にコア63が形成されている。したがって、設置済み型43のコア63の周辺は平面になっており、この平面が設置済み基板35の厚さ方向の一方の面と平行になって対向している。また、設置済み基板35はこの厚さ方向が上下方向になっている。そして、設置済み基板35の上方に設置済み型43が位置しており、設置済み型43の下面(コア63周辺の円環状の平面)と設置済み基板35の上面とがお互いに平行になって対向している。
【0140】
ここで、成形品製造装置31の動作について、
図9と
図10とを参照しつつ説明する。
【0141】
まず、初期状態として、型43が設置されている型設置体45が上昇しており、基板35が設置されている基板設置体47がX軸方向とY軸方向とで所定の位置に位置決めされており、樹脂供給ノズル83が退避
位置PS1に位置しており、硬化部9は紫外線を発していないものとする。また、メモリ57には、
図11で示すテーブル60が記憶されているものとする(S1)。この初期状態において、まず、入力部59で未硬化の紫外線硬化樹脂61の粘度が入力される。
【0142】
続いて、基板35、型43の少なくともいずかに未硬化の紫外線硬化樹脂61を供給する(成形材料供給工程;S3)。
【0143】
成形材料供給工程では、設置済み型43が設置済み基板35から離れている状態で、たとえば、基板35の厚さ方向の一方の面に未硬化の紫外線硬化樹脂61を供給する(
図9(a)参照)。紫外線硬化樹脂61の体積は、第1の実施形態の場合と同様に、型43の凹部63の体積よりも大きくなっている。
【0144】
さらに説明すると、成形材料供給工程では、設置済み型43が設置済み基板35の上方で基板35から所定の距離だけ離れている状態で、樹脂供給ノズル83を設置済み基板35の上方の位置である供給位置PS2に移動し(設置済み型43の真下に移動し)、設置済み基板35の上面に未硬化の紫外線硬化樹脂61を供給し、この供給後に樹脂供給ノズル83が退避位置PS1まで退避する。このとき、供給された未硬化の紫外線硬化樹脂の61真上に、設置済み型43が位置している。
【0145】
続いて、成形材料供給工程で未硬化の成形材料61を供給した後、設置済み基板35と設置済み型43との間に未硬化の成形材料61の薄膜が存在している状態(基板35と型43との間(通路65)に未硬化の成形材料61が介在している状態)で、設置済み型43が設置済み基板35を押圧する押圧力が所定の値になるまで、設置済み型43を設置済み基板35に対して一定の遅い速度で相対的に近づけて設置済み基板35に対する設置済み型43の位置決めをする(型移動位置決め工程;S5、S7)。
【0146】
型移動位置決め工程では、設置済み型43のコア63周辺の平面(下面)と設置済み基板35の厚さ方向の一方の面(上面)とがお互いに平行になって対向している状態から、型43を下降して基板35に相対的に近づける。これにより、型43の凹部63周辺の平面と基板35の上面とが僅かな距離LAを隔て平行になって対向する(
図9(b)参照)。そして、型43の凹部63と基板35との間と、型43の凹部63周辺の平面と基板35との間(通路65)とに、未硬化の紫外線硬化樹脂61が入り込む。なお、
図9(b)で示す状態では、未硬化の紫外線硬化樹脂61が、型43の外部にも僅かにあふれ出ている場合がある(参照符号85参照)。
【0147】
より詳しく説明すると、型移動位置決め工程では、成形材料供給工程により設置済み基板35の上面に未硬化の紫外線硬化樹脂61が供給された状態で設置済み型43を下降する。この下降によって型43が基板35に接近すると、型43のコア63内に未硬化の紫外線硬化樹脂61が入り込むとともに、基板35の上面と型43の下面(コア63の周辺)との間の間隙(通路65)にも未硬化の紫外線硬化樹脂61が入り込む。
【0148】
また、設置済み型43を設置済み基板35に近づけ、上述したように、型43と基板35との間に未硬化の紫外線硬化樹脂61が入り込むと、型43を基板35に近づけるために、型43の押圧力が必要になる(基板35と型43とで未硬化の紫外線硬化樹脂61を挟む力が必要になる)。すなわち、基板35を固定しておいて型43を下降させて基板35に近づける場合、型43を所定の速度で下降させるための力が必要になる。
【0149】
この押圧力は、型43が基板35に近づくにしたがって大きくなる。また、この押圧力は、型43と基板35との間の距離と、未硬化の紫外線硬化樹脂61の粘度と、型43の下降速度とによって決まる。
【0150】
そして、型移動位置決め工程では、型43が基板35を押圧する押圧力(ロードセル79で測定した押圧力)が所定の値になったときに後に、基板35に対する型43の位置決めをする(S5、S7)。たとえば、入力部59で未硬化の紫外線硬化樹脂61の粘度10000cpsが入力されており、一定の速度で下降する型43が基板35を押圧する押圧力が所定の値である0.5Nになったときに、型43と基板35との間の距離(
図9(b)で示す距離LA)が、0.050mmになったものとみなす。
【0151】
この後、型43を基板35から所定の僅かな距離だけ相対的に離して型43に対する基板35の位置決めをする(S9)。
【0152】
たとえば、型移動位置決め工程では、上述したように型43が基板35を押す押圧力が所定の値になるまで型43を基板35に一旦近づけてから(下降させてから)、型43の移動(下降)を停止する。この停止後ただちにもしくは僅かな時間経過した後に、型43を基板35から所定の距離だけ相対的に離し(上昇し)、型43を停止して型43の位置決めをする。なお、上記所定の距離の上昇は、移動体位置検出装置73の検出結果を用いてなされる。
【0153】
このようにして型43を上昇させて位置決めした状態であっても、型43の凹部63と基板35との間と、型43の凹部63周辺の平面と基板35との間(通路65)とに、未硬化の紫外線硬化樹脂61が入り込んでいる(
図9(c)参照)。
図9(c)で示す状態では、型43と基板35とは、僅かな距離LBだけ離れている。ただし
図9(c)に示す距離LBは、
図9(b)に示す距離LAよりも僅かに大きくなっている。
【0154】
型移動位置決め工程における型43の下降停止により、型43の押圧力が小さくなるかもしくはほぼ「0」になるがこの変化は無視する。また、型43の下降停止後に型43を上昇する場合、未硬化の紫外線硬化樹脂61内に空気が巻き込まれることを防止するために、型43の上昇速度を下降速度よりも小さくする必要がある。たとえば、未硬化の紫外線硬化樹脂61の粘度が10000cpsである場合、型43の上昇速度を10μm/秒以下の速度(たとえば2μm/秒〜10μm/秒)にする必要がある。
【0155】
なお、型移動位置決め工程で、型43を上昇させることなく、型43を位置決めするようにしてもよい。
【0156】
たとえば、型43が基板35を押圧する押圧力が所定の値になったときに、基板35に対する型43の相対的な移動を停止してそのまま基板35に対する型43の位置決めをしてもよいし、もしくは、型43が基板35を押圧する押圧力が所定の値になった後に、所定の距離だけ、型43を基板35にさらに近づけて型43の位置決めをしてもよい。
【0157】
続いて、型移動位置決め工程で設置済み基板35に対する設置済み型43の位置決めをした後、紫外線硬化樹脂61を硬化する(成形材料硬化工程;S11;
図9(c)参照)。
【0158】
続いて、成形材料硬化工程で紫外線硬化樹脂を硬化した後、設置済み型43を上昇して、硬化した紫外線硬化樹脂(成形体37)から、型43を離す(離型工程;S13)。これにより、基板35に成形体37(硬化した紫外線硬化樹脂)が一体的に設置される(
図9(d)参照)。
【0159】
続いて、成形体37の設置数が完成数Nに達したか否かを判断する(S15)。完成数Nに達した場合には、1枚の基板35への成形体37の設置動作を終了し、基板35を交換し、この交換した基板35への成形体37の設置を開始するか、もしくは、基板35を基板設置体47から取り外し、動作の総てを終了する。
【0160】
一方、完成数Nに達しない場合には、基板設置体47(設置済み基板35)をX軸方向とY軸方向とで適宜位置決めし(S17)、成形材料供給工程、型移動位置決め工程、成形材料硬化工程
、離型工程をこの順に繰り返し、基板35に複数の成形体37を一体的に設ける。
【0161】
成形品製造装置31によれば、基板35と型43との間(通路65)に未硬化の感光性材料61の薄膜が存在している状態で基板35を押圧する型43の押圧力を測定し、この測定値によって基板35に対する型43の位置決めをするので、従来よりもはやく、型43を位置決めをすることができ、これにより、従来よりもはやく成形体37を基板35に設置することができる。
【0162】
詳しく説明する。第3の実施形態において、第1の実施形態や第2の実施形態のように、型43の凹部63が通路65を介して型43の外部に通じている状態で、型43の凹部63に充填されている未硬化の紫外線硬化樹脂61を中央から周辺部に向かって徐々に硬化させるとすると、型43と基板35との間の距離(隙間の値)を正解な値にする必要がある。
【0163】
実際、基板35の平行度(厚さの均一さ)はあまり良くないので(平行度が100mmあたり数μm程度になっているので)、基板35と型43との間の距離を正確なものにするために、毎回もしくは数回に1回、基板35と型43との間の距離を測定する必要がある。
【0164】
この測定をする際、従来は、
図14で示すように、未硬化の紫外線硬化樹脂が存在しない状態で、型43を基板35に接触させ、基板35に対する型43の位置決めを行っていた。
【0165】
すなわち、
図14(a)に示すように、型43が基板35から離れて上昇している状態から、
図14(b)に示すように、型43を下降して基板35を押圧し、このときの押圧力が所定の値になったときに、型43が基板35に接触し、型43と基板35との間の距離が「0」になったものとしていた。
【0166】
続いて、
図14(c)で示すように、型43を上昇させて基板35から離し、未硬化の紫外線硬化樹脂61を基板35に供給し、
図14(d)で示すように、基板35と型43の間に僅かな隙間ができるまで、型43を再び下降して型43の位置決めをしていた。そして、この位置決め後に紫外線硬化樹脂61を硬化していた。
【0167】
続いて、
図14(e)で示すように、型43を再び上昇して、型43を成形体37から離し、
図14(f)で示すように、型43を基板35に対して位置決めし、以下
図14(b)
から図14(f)で示す動作を繰り返すことで(
図14(g)、(h)参照)、1枚の基板35に複数の成形体37を設けていた。
【0168】
しかし、このような従来の方式では、未硬化の紫外線硬化樹脂が存在しない状態で、型43を基板35に接触させ、基板35に対する型43の位置決めをする必要があるので、成形体37を基板35に設置するため要する時間が長くかかっていた。
【0169】
これに対して、成形品製造装置31では、未硬化の紫外線硬化樹脂61が存在している状態で、基板35に対する型43に位置を測定することができるので、従来よりも短い時間で、基板35の成形体37を設置することができる。たとえば、従来の方式では、基板35に1つの成形体37を設置するのに約60秒を要していたが、成形品製造装置31では、45秒で基板35に1つの成形体37を設置することができる。
【0170】
なお、テーブル60では、中間の粘度を有するものを示していないが、未硬化の紫外線硬化樹脂が中間の粘度を有する場合には、テーブル60で示してある値を用いて補間をすればよい。たとえば、未硬化の紫外線硬化樹脂の粘度が9000cpsである場合、押圧力を0.45N((0.4N+0.5N)÷2)にすればよい。
【0171】
また、テーブル60に代えて、粘度と押圧力との関係式をメモリ57に記憶しておき、この記憶している数式をテーブル60の代わりに使用してもよい。
【0172】
また、雰囲気や未硬化の紫外線硬化樹脂61の温度を測定する温度センサを設けこの温度センサで測定した温度を用いて、もしくは、入力部59から入力された温度を用いて、テーブル60や上記数式から得られた関係を補正してもよいし、設置済み型43の下降速度に応じてテーブル60や上記数式から得られた関係を補正してもよい。たとえば、テーブル60の示した粘度10000cps−0.5Nの関係が、設置済み型43の下降速度が50μm/秒のものであり、実際の設置済み型43の下降速度が100μm/秒である場合、上記関係を1000CPS−1.0N(0.5N×2)に補正してもよい。
【0173】
さらに、入力部59から未硬化の紫外線硬化樹脂の種類を入力することで、粘度の入力に変えてもよい。この場合、メモリ57には、たとえば、未硬化の紫外線硬化樹脂の種類に応じた粘度の値が記憶されているものとする。
【0174】
ところで、基板35に複数の成形体37を設置することで得られた成形品33は、たとえば、小さな凸レンズが集合しているレンズ集合体(製品もしくは半製品)として使用される。
【0175】
もしくは、成形品33は、成形体37とのこの成形体37が設置されている基板35の部分毎に切断され(基板35が切断され)、製品もしくは半製品として使用される。
【0176】
もしくは、成形品33は、
図12で示すように、金型87(89)を製造するときのマスター型として使用される。
【0177】
すなわち、
図12(a)で示すように、成形品33の下面(成形体37等の表面)に真空蒸着等によってシード層を設け、電鋳によって金型87を生成する。この後、
図12(b)で示すように、成形品33を金型87から分離する。この後、
図12(b)で示す金型87の上面を僅かな厚さだけ除去することで(基部39の厚さ分除去することで)、
図12(c)に示す金型89を得る場合もある。
【0178】
このようにして得られた金型87(89)は、レンズ集合体等の成形品をモールド成形するときの型として使用される。
【0179】
また、第3の実施形態の成形体37を、紫外線硬化樹脂等の所定の波長の電磁波で硬化する感光性材料に代えて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ガラス等の成形材料で構成してもよい。この場合、硬化部49は、基板設置体47等の設けられている加熱装置(ヒータ)や冷却装置(クーラ)で構成されているものとする。
【0180】
さらに、第1の実施形態、第2の実施形態において、基板に対する型の位置決めを、第3の実施形態のようにしてもとめてもよい。
【0181】
すなわち、第1の実施形態、第2の実施形態の基板設置工程が、型を基板に対して相対的に近づけ、基板と型との間に未硬化の感光性材料の薄膜が存在している状態で、型が基板を押圧する押圧力が所定の値になった後に、型に対する基板の位置決めをする工程であるようにしてもよい。
【0182】
また、第1の実施形態、第2の実施形態に係るレンズ製造装置において、型が基板を押圧する押圧力を測定する押圧力測定部を設け、制御装置が、基板設置体を型設置体側に相対的に移動し、基板と型との間に未硬化の感光性材料の薄膜が存在し型が基板を押圧する押圧力が所定の値になったことが押圧力測定部で測定された後に、移動を停止して基板に対する前記型の位置決めをするように、基板設置体の相対的な移動を制御するようにしてもよい。
【0183】
また、上記各実施形態では、凸レンズを例に掲げて説明しているが、上記各実施形態のものを凹レンズに適用してもよい。
【0184】
さらに、上記各実施形態では、レンズを製造(成形)する場合を例に掲げて説明しているが、レンズ以外の成形品(たとえば、モスアイ構造を備えた成形品)を製造する場合において、上記各実施形態を適用してもよい。この場合、レンズの製造装置は、成形品の製造装置(成形装置)ということになる。