(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る設定値自動緩和支援装置を用いた空調制御システムの要部を示す計装図である。
【0020】
図1において、1は制御対象空間、2は制御対象空間1へ調和された空気を供給する空調機(FCU)、3は冷温水弁、4は本発明に係る設定値自動緩和支援装置の一実施の形態として設けられた空調コントローラである。
【0021】
この空調制御システムにおいて、空調機2は冷温水コイル2−1と給気ファン2−2とを備えている。冷温水弁3は空調機2の冷温水コイル2−1への冷温水の供給通路に設けられている。この例において、冷温水弁3は、空調機2の冷温水コイル2−1から戻される冷温水の還水管路に設けられている。
【0022】
制御対象空間1には、制御対象空間1の室内温度を実温度として計測する室内温度センサ5が設けられている。室内温度センサ5によって計測された実温度tpvは空調コントローラ4へ送られる。また、空調コントローラ4には、ユーザからの室内温度の設定値が設定温度tspとして与えられる。
【0023】
空調コントローラ4は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、本実施の形態特有の機能として設定温度自動緩和支援機能を有している。以下、冷房運転時を例にとって、この空調コントローラ4が有する設定温度自動緩和支援機能について説明する。
【0024】
〔実施の形態1:ケース1〕
図2は空調コントローラ4が有する設定温度自動緩和支援機能の第1例(実施の形態1)のケース1を説明するためのタイムチャートである。同図に実線で示す特性は設定温度tspの変化を示し、一点鎖線で示す特性は実温度tpvの変化を示す。
【0025】
この実施の形態1のケース1では、最初は実温度tpvが設定温度tsp(20℃)よりも高い状態にあり(
図2に示すt0点)、この状態から実温度tpvが設定温度tsp(20℃)に追従しようとして変化し、設定温度tsp(20℃)に達する前に実温度tpvの変化が止まっている(
図2に示すt1点)。
【0026】
この実温度tpvの変化の停止状態は、冷温水弁3の弁開度θが100%に達し、この弁開度θの100%の状態が続いていることを示す。すなわち、空調機2からの制御対象空間1への調和空気の冷却能力の制御が限界に達し(100%運転(フル運転))、この100%運転の状態が続いていることを示す。
【0027】
このような状態で、ユーザは、設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更しようとしている(
図2に示すt2点)。すなわち、実温度tpvが設定温度tsp(20℃)よりも高い状態で、設定温度tspを手動操作によって20℃から22℃に変更しようとしている。
【0028】
この場合、空調コントローラ4は、設定温度tspが実温度tpvよりも増エネルギー側にあり、設定温度tspと実温度tpvとの間に乖離が発生しており、この状態で設定温度tspに対する省エネルギー側へのユーザからの設定変更操作があったと判断し、その時の
実温度tpvに設定変更操作前後の設定温度tspの偏差Δtを省エネルギー方向に加えた値を変更後の設定温度tspとする。
【0029】
この例では、現在の設定温度(変更操作前の設定温度)をtsp
now(20℃)とし、ユーザからの設定変更操作後の設定温度をtsp
up(22℃)とし、その時の実温度tpv(24℃)に設定変更操作前後の設定温度の偏差Δtを加えた値を変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt)とする。この場合、Δt=tsp
up−tsp
now=22℃−20℃=2℃となるので、変更後の設定温度tspはtsp=tpv+Δt=24℃+2℃=26℃とされる。
【0030】
これにより、ユーザが設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更すると、設定温度tspは22℃ではなく、26℃に自動的に変更されるものとなる(
図2に示すt2点)。
【0031】
この場合、変更された設定温度tsp(26℃)は実温度tpv(24℃)よりも高くなるので、実温度tpvが設定温度tsp(26℃)に追従するように変化し、やがて実温度tpvが設定温度tsp(26℃)と等しくなり(
図2に示すt3点)、ユーザが意図した温度となる。
【0032】
〔実施の形態1:ケース2〕
図3は空調コントローラ4が有する設定温度自動緩和支援機能の第1例(実施の形態1)のケース2を説明するためのタイムチャートである。同図に実線で示す特性は設定温度tspの変化を示し、一点鎖線で示す特性は実温度tpvの変化を示す。
【0033】
この実施の形態1のケース2では、実温度tpvが設定温度tsp(20℃)に追従しようとして変化している途中で、ユーザが設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更しようとしている(
図3に示すt2)。すなわち、実温度tpvが設定温度tsp(20℃)よりも高い状態で、設定温度tspを手動操作によって20℃から22℃に変更しようとしている。
【0034】
この場合、空調コントローラ4は、設定温度tspが実温度tpvよりも増エネルギー側にあり、設定温度tspと実温度tpvとの間に乖離が発生しており、この状態で設定温度tspに対する省エネルギー側へのユーザからの設定変更操作があったと判断し、その時の
実温度tpvに設定変更操作前後の設定温度tspの偏差Δtを省エネルギー方向に加えた値を変更後の設定温度tspとする。
【0035】
この例では、現在の設定温度(変更操作前の設定温度)をtsp
now(20℃)とし、ユーザからの設定変更操作後の設定温度をtsp
up(22℃)とし、その時の実温度tpv(24℃)に設定変更操作前後の設定温度の偏差Δt(2℃)を加えた値を変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt=26℃)とする。
【0036】
これにより、ユーザが設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更すると、設定温度tspは22℃ではなく、26℃に自動的に変更されるものとなる(
図3に示すt2点)。
【0037】
この場合、変更された設定温度tsp(26℃)は実温度tpv(24℃)よりも高くなるので、実温度tpvが設定温度tsp(26℃)に追従するように変化し、やがて実温度tpvが設定温度tsp(26℃)と等しくなり(
図3に示すt3点)、ユーザが意図した温度となる。
【0038】
このようにして、本実施の形態では、設定温度tspと実温度tpvとの間に乖離が発生していても、ユーザに負担を強いることなく、ユーザが意図した設定温度の緩和を常に行わせることができるようになる。
【0039】
図4に実施の形態1における空調コントローラ4の要部の機能ブロック図を示す。空調コントローラ4は、設定温度tspを記憶する設定温度記憶部41と、冷温水弁3の弁開度θを制御する制御部42と、設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tspの緩和を支援する設定温度自動緩和支援部43(43A)と、室内温度センサ5によって計測された実温度tpvおよび設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tspを表示する設定温度表示部44と、ユーザの操作に応じて設定温度自動緩和支援部43Aの動作を有効とするのか無効とするのかの選択的な設定を行う有効/無効設定部45とを備えている。なお、室内温度センサ5は実温度計測手段として、空調コントローラ4に付設されている。
【0040】
この空調コントローラ4において、制御部42は、室内温度センサ5によって計測された実温度tpvおよび設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tspを入力とし、実温度tpvを設定温度tspに一致させるように冷温水弁3の弁開度θを制御する。
【0041】
設定温度自動緩和支援部43Aは、室内温度センサ5によって計測された実温度tpvと設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tsp(現在の設定温度tsp
now)とユーザからの設定変更操作後の設定温度tsp
upとを入力とし、例えば冷房運転中、実温度tpv>設定温度tspの状態で、設定温度tspを上昇させる方向へのユーザからの設定変更操作があった場合、その時の実温度tpvに設定変更操作前後の設定温度の偏差Δt(Δt=tsp
up−tsp
now)を加えた値を変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt)として求め、設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tspを自動変更する。
【0042】
設定温度表示部44は、設定温度tspを表示する場合、その設定温度がユーザが設定した値であるのか、設定温度自動緩和支援部43Aによって変更された値であるのかを識別可能に表示する。有効/無効設定部45は、ユーザ操作(ユーザからの選択操作)に応じ、設定温度自動緩和支援部43Aの動作を無効としたり、有効としたりする。
【0043】
〔実施の形態2:ケース1〕
図5は空調コントローラ4が有する設定温度自動緩和支援機能の第2例(実施の形態2)のケース1を説明するためのタイムチャートである。同図に実線で示す特性は設定温度tspの変化を示し、一点鎖線で示す特性は実温度tpvの変化を示す。
【0044】
この実施の形態2のケース1では、最初は実温度tpvが設定温度tsp(20℃)よりも高い状態にあり(
図5に示すt0点)、この状態から実温度tpvが設定温度tsp(20℃)に追従しようとして変化し、設定温度tsp(20℃)に達する前に実温度tpvの変化が止まっている(
図5に示すt1点)。そして、この実温度tpvが変化しない状態が所定時間T1(この例では、T1=10分)以上続いている。
【0045】
このような状態で、ユーザは、設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更しようとしている(
図5に示すt3点)。すなわち、実温度tpvが設定温度tsp(20℃)よりも高く、実温度tpvが変化しない状態が所定時間T1以上続いた状態で、設定温度tspを手動操作によって20℃から22℃に変更しようとしている。
【0046】
この場合、空調コントローラ4は、設定温度tspが実温度tpvよりも増エネルギー側にあり、空調機2がフル運転の状態で設定温度tspと実温度tpvとの間に乖離が発生しており、この状態で設定温度tspに対する省エネルギー側へのユーザからの設定変更操作があったと判断し、その時の
実温度tpvに設定変更操作前後の設定温度tspの偏差Δtを省エネルギー方向に加えた値を変更後の設定温度tspとする。
【0047】
この例では、現在の設定温度(変更操作前の設定温度)をtsp
now(20℃)とし、ユーザからの設定変更操作後の設定温度をtsp
up(22℃)とし、その時の実温度tpv(24℃)に設定変更操作前後の設定温度の偏差Δt(2℃)を加えた値を変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt=26℃)とする。
【0048】
これにより、実温度tpvが変化しない状態が所定時間T1以上続いていることを条件として、ユーザが設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更すると、設定温度tspが22℃ではなく、26℃に自動的に変更されるものとなる(
図5に示すt3点)。
【0049】
この場合、変更された設定温度tsp(26℃)は実温度tpv(24℃)よりも高くなるので、実温度tpvが設定温度tsp(26℃)に追従するように変化し、やがて実温度tpvが設定温度tsp(26℃)と等しくなり(
図5に示すt4点)、ユーザが意図した温度となる。
【0050】
〔実施の形態2:ケース2〕
図6は空調コントローラ4が有する設定温度自動緩和支援機能の第2例(実施の形態2)のケース2を説明するためのタイムチャートである。同図に実線で示す特性は設定温度tspの変化を示し、一点鎖線で示す特性は実温度tpvの変化を示す。
【0051】
この実施の形態2のケース2では、実温度tpvが変化しない状態が所定時間T1以上継続していない状態で、ユーザが設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更しようとしている(
図6に示すt2点)。
【0052】
この場合、空調コントローラ4は、空調機2がフル運転の状態で設定温度tspと実温度tpvとの間に乖離が発生しているとの判断は行わず、設定温度tspの自動変更は行わない。これにより、ユーザによる設定温度tspの手動変更が許可され、設定温度tspが20℃から22℃に変更される。
【0053】
図7に実施の形態2における空調コントローラ4の要部の機能ブロック図を示す。この空調コントローラ4において、設定温度自動緩和支援部43(43B)は、室内温度センサ5によって計測された実温度tpvと設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tsp(現在の設定温度tsp
now)とユーザからの設定変更操作後の設定温度tsp
upとを入力とし、例えば冷房運転中、実温度tpv>設定温度tspの状態で、かつ実温度tpvが変化しない状態が所定時間T1以上続いた状態で、設定温度tspを上昇させる方向へのユーザからの設定変更操作があった場合、その時の実温度tpvに設定変更操作前後の設定温度の偏差Δt(Δt=tsp
up−tsp
now)を加えた値を変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt)として求め、設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tspを自動変更する。
【0054】
〔実施の形態3:ケース1〕
図8は空調コントローラ4が有する設定温度自動緩和支援機能の第3例(実施の形態3)のケース1を説明するためのタイムチャートである。
図8(a)に実線で示す特性は設定温度tspの変化を示し、一点鎖線で示す特性は実温度tpvの変化を示す。
図8(b)は冷温水弁3の弁開度θの変化を示す。
【0055】
この実施の形態3のケース1では、最初は実温度tpvが設定温度tsp(20℃)よりも高い状態にあり(
図8(a)に示すt0点)、この状態から実温度tpvが設定温度tsp(20℃)に追従しようとして変化し、これに伴い冷温水弁3の弁開度θが100%に達したことから(
図8(b)に示すt1点)、設定温度tsp(20℃)に達する前に実温度tpvの変化が止まっている(
図8(a)に示すt2点)。そして、この弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2(この例では、T2=10分)以上続いている。
【0056】
このような状態で、ユーザは、設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更しようとしている(
図8(a)に示すt4点)。すなわち、実温度tpvが設定温度tsp(20℃)よりも高く、弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2以上続いた状態で、設定温度tspを手動操作によって20℃から22℃に変更しようとしている。
【0057】
この場合、空調コントローラ4は、設定温度tspが実温度tpvよりも増エネルギー側にあり、空調機2がフル運転の状態で設定温度tspと実温度tpvとの間に乖離が発生しており、この状態で設定温度tspに対する省エネルギー側へのユーザからの設定変更操作があったと判断し、その時の
実温度tpvに設定変更操作前後の設定温度tspの偏差Δtを省エネルギー方向に加えた値を変更後の設定温度tspとする。
【0058】
この例では、現在の設定温度(変更操作前の設定温度)をtsp
now(20℃)とし、ユーザからの設定変更操作後の設定温度をtsp
up(22℃)とし、その時の実温度tpv(24℃)に設定変更操作前後の設定温度の偏差Δt(2℃)を加えた値を変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt=26℃)とする。
【0059】
これにより、弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2以上続いていることを条件として、ユーザが設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更すると、設定温度tspが22℃ではなく、26℃に自動的に変更されるものとなる(
図8(a)に示すt4点)。
【0060】
この場合、変更された設定温度tsp(26℃)は実温度tpv(24℃)よりも高くなるので、実温度tpvが設定温度tsp(26℃)に追従するように変化し、やがて実温度tpvが設定温度tsp(26℃)と等しくなり(
図8(a)に示すt5点)、ユーザが意図した温度となる。
【0061】
〔実施の形態3:ケース2〕
図9は空調コントローラ4が有する設定温度自動緩和支援機能の第3例(実施の形態3)のケース2を説明するためのタイムチャートである。
図9(a)に実線で示す特性は設定温度tspの変化を示し、一点鎖線で示す特性は実温度tpvの変化を示す。
図9(b)は冷温水弁3の弁開度θの変化を示す。
【0062】
この実施の形態3のケース2では、弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2以上継続していない状態で、ユーザが設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更しようとしている(
図9(a)に示すt2点)。
【0063】
この場合、空調コントローラ4は、空調機2がフル運転の状態で設定温度tspと実温度tpvとの間に乖離が発生しているとの判断は行わず、設定温度tspの自動変更は行わない。これにより、ユーザによる設定温度tspの手動変更が許可され、設定温度tspが20℃から22℃に変更される。
【0064】
図10に実施の形態3における空調コントローラ4の要部の機能ブロック図を示す。この空調コントローラ4において、設定温度自動緩和支援部43(43C)は、室内温度センサ5によって計測された実温度tpvと設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tsp(現在の設定温度tsp
now)とユーザからの設定変更操作後の設定温度tsp
upと冷温水弁3への弁開度θとを入力とし、例えば冷房運転中、実温度tpv>設定温度tspの状態で、かつ弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2以上続いた状態で、設定温度tspを上昇させる方向へのユーザからの設定変更操作があった場合、その時の実温度tpvに設定変更操作前後の設定温度の偏差Δt(Δt=tsp
up−tsp
now)を加えた値を変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt)として求め、設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tspを自動変更する。
【0065】
〔実施の形態4:ケース1〕
図11は空調コントローラ4が有する設定温度自動緩和支援機能の第4例(実施の形態4)のケース1を説明するためのタイムチャートである。
図11(a)に実線で示す特性は設定温度tspの変化を示し、一点鎖線で示す特性は実温度tpvの変化を示す。
図11(b)は冷温水弁3の弁開度θの変化を示す。
【0066】
この実施の形態4のケース1では、最初は実温度tpvが設定温度tsp(20℃)よりも高い状態にあり(
図11(a)に示すt0点)、この状態から実温度tpvが設定温度tsp(20℃)に追従しようとして変化し、これに伴い冷温水弁3の弁開度θが100%に達したことから(
図11(b)に示すt1点)、設定温度tsp(20℃)に達する前に実温度tpvの変化が止まっている(
図11(a)に示すt2点)。そして、この実温度tpvが変化しない状態が所定時間T1(この例では、T2=10分)以上続く一方、弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2(この例では、T2=10分)以上続いている。
【0067】
このような状態で、ユーザは、設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更しようとしている(
図11(a)に示すt5点)。すなわち、実温度tpvが設定温度tsp(20℃)よりも高く、実温度tpvが変化しない状態が所定時間T1以上続いた状態で、また弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2以上続いた状態で、設定温度tspを手動操作によって20℃から22℃に変更しようとしている。
【0068】
この場合、空調コントローラ4は、設定温度tspが実温度tpvよりも増エネルギー側にあり、空調機2がフル運転の状態で設定温度tspと実温度tpvとの間に乖離が発生しており、この状態で設定温度tspに対する省エネルギー側へのユーザからの設定変更操作があったと判断し、その時の
実温度tpvに設定変更操作前後の設定温度tspの偏差Δtを省エネルギー方向に加えた値を変更後の設定温度tspとする。
【0069】
この例では、現在の設定温度(変更操作前の設定温度)をtsp
now(20℃)とし、ユーザからの設定変更操作後の設定温度をtsp
up(22℃)とし、その時の実温度tpv(24℃)に設定変更操作前後の設定温度の偏差Δt(2℃)を加えた値を変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt=26℃)とする。
【0070】
これにより、実温度tpvが変化しない状態が所定時間T1以上続いており、かつ弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2以上続いていることを条件として、ユーザが設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更すると、設定温度tspが22℃ではなく、26℃に自動的に変更されるものとなる(
図11(a)に示すt5点)。
【0071】
この場合、変更された設定温度tsp(26℃)は実温度tpv(24℃)よりも高くなるので、実温度tpvが設定温度tsp(26℃)に追従するように変化し、やがて実温度tpvが設定温度tsp(26℃)と等しくなり(
図11(a)に示すt6点)、ユーザが意図した温度となる。
【0072】
〔実施の形態4:ケース2〕
図12は空調コントローラ4が有する設定温度自動緩和支援機能の第4例(実施の形態4)のケース2を説明するためのタイムチャートである。
図12(a)に実線で示す特性は設定温度tspの変化を示し、一点鎖線で示す特性は実温度tpvの変化を示す。
図12(b)は冷温水弁3の弁開度θの変化を示す。
【0073】
この実施の形態4のケース2では、実温度tpvの変化しない状態が所定時間T1以上継続していない状態で、また弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2以上継続していない状態で、ユーザが設定温度tspを20℃から22℃に手動で変更しようとしている(
図12(a)に示すt3点)。
【0074】
この場合、空調コントローラ4は、空調機2がフル運転の状態で設定温度tspと実温度tpvとの間に乖離が発生しているとの判断は行わず、設定温度tspの自動変更は行わない。これにより、ユーザによる設定温度tspの手動変更が許可され、設定温度tspが20℃から22℃に変更される。
【0075】
図13に実施の形態4における空調コントローラ4の要部の機能ブロック図を示す。この空調コントローラ4において、設定温度自動緩和支援部43(43D)は、室内温度センサ5によって計測された実温度tpvと設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tsp(現在の設定温度tsp
now)とユーザからの設定変更操作後の設定温度tsp
upと冷温水弁3への弁開度θとを入力とし、例えば冷房運転中、実温度tpv>設定温度tspの状態で、実温度tpvの変化しない状態が所定時間T1以上続き、かつ弁開度θが100%に達した状態が所定時間T2以上続いた状態で、設定温度tspを上昇させる方向へのユーザからの設定変更操作があった場合、その時の実温度tpvに設定変更操作前後の設定温度の偏差Δt(Δt=tsp
up−tsp
now)を加えた値を変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt)として求め、設定温度記憶部41に記憶されている設定温度tspを自動変更する。
【0076】
なお、上述した実施の形態1〜4では、ユーザからの設定変更操作後の設定温度tsp
upが設定温度自動緩和支援部43(43A〜43D)に与えられるものとしたが、ユーザからの設定変更操作として偏差Δtが与えられるものとしてもよい。この場合、設定温度自動緩和支援部43では、与えられた偏差Δtをその時の実温度tpvに加えることによって、変更後の設定温度tsp(tsp=tpv+Δt)を得るようにする。
【0077】
また、上述した実施の形態2や4において、実温度tpvが変化しない状態は、実温度tpvそのものから判断するようにしてもよいし、実温度tpvと設定温度tspとの偏差から判断するようにしてもよい。
【0078】
また、上述した実施の形態4において、所定時間T1,T2は同じ時間としたが、異なる時間としてもよい。
【0079】
また、空調コントローラ4によって給気ファン2−2の回転数を制御するようなシステム構成とした場合(
図14参照)、上述した実施の形態3や4において、給気ファン2−2への回転数調整用の出力(ファンINV出力)から、制御対象空間1への調和空気の冷却能力の制御が限界に達しているか否かを判断するようにしてもよい。この場合、ファンINV出力が100%に達した状態が所定時間T2以上続いたか否かを条件として、ユーザ操作時の設定温度tspの自動変更を行うようにする。
【0080】
また、上述した実施の形態1〜4では、冷房運転を例にとって説明したが、暖房運転でも同様の動作が行われる。例えば、実施の形態1において、暖房運転中、実温度tpv<設定温度tspの状態で、設定温度tspを下降する方向へのユーザからの設定変更操作があると、空調コントローラ4は、その時の
実温度tpvから設定変更操作前後の設定温度tspの偏差Δtを差し引いた値(省エネルギー方向へ偏差Δtを加えた値)を変更後の設定温度tspとする。
【0081】
[実施の形態の拡張]
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施の形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。