(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、一般的に広く利用されている鉄製の消火剤貯蔵容器を備えた消火器は非常に重いため、特に女性や子供、あるいは年配者にとって、持ち運びの不便さや操作性の悪さの問題を生じさせていた。
【0006】
鉄に代表される金属であるがための上述の技術的課題は、一見すると、樹脂製の消火剤貯蔵容器を採用することによって解決されるように思える。しかしながら、現実には、一般的に採用されている金属製の消火器のように、使用期限として数年ないし10年以上が要求される消火剤貯蔵容器を、容器全体としての軽量さを維持しつつ、樹脂のみによって形成することは容易ではない。
【0007】
そのような実情を踏まえ、本願出願人は、これまでに、より高度な強度を備えつつ、消火剤の残量が視認できるという特長を生かした種々の樹脂製の消火剤貯蔵容器を提案してきた。しかしながら、収容物が視認できるようになったことにより、これまでは特に意識されていなかった技術的課題が浮上した。すなわち、量産品として多数販売され、その結果、多くの場所で多くの人に使用されるようになることを念頭に置くと、単に樹脂製の消火剤貯蔵容器として耐候性や強度を高めたものでは足らず、その視認され得る収容物の存在や取り扱いについても、技術的見地から適正化、高機能化を図る必要が生じる。そして、その視認される収容物についての技術的な配慮が、1つの製品としての魅力をさらに高めることになる。
【0008】
具体的には、これまでは、サイフォン管については、従来の消火器において要求される性能、例えば、消火器を使用した際の消火剤の残留許容量の性能を満たすように設計されていれば量産品としての問題はなかった。その結果、サイフォン管の垂直性、換言すれば、消火剤貯蔵容器の底面へのサイフォン管の接近度に対する要求は、前述の要求さえ満たしていればそれほど厳しいものではなかった。
【0009】
しかしながら、本願出願人が量産を念頭に、透光性を有する、換言すれば収容物が視認され得る樹脂製の消火剤貯蔵容器を採用した消火器を鋭意調査、分析したところ、消火剤貯蔵容器を閉塞する蓋体(バルブケースともいう)やサイフォン管の継ぎ手に接続するサイフォン管が、外観上、予想外に目立つ存在であることが明らかとなった。したがって、従来は一般使用者にとって全くといって良いほど気にされない存在であったサイフォン管及びその周辺部品に対して何らの配慮もしなければ、透光性を有する樹脂製の消火剤貯蔵容器を備えた消火器としての信頼性や品質に少なからず影響することになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の技術課題を解決することにより、透光性を備えた樹脂製の消火剤貯蔵容器を備える消火器の信頼性及び品質の向上に大きく貢献するものである。
【0011】
本願発明者らは、上述のとおり、透光性を有する樹脂製の消火剤貯蔵容器内のサイフォン管が予想外に目立つ存在であることを強く認識した。すなわち、本願発明者らは、サイフォン管が垂直、あるいは消火剤貯蔵容器の胴部の稜線に対して平行に配置されていなければ、消火器の保有者、使用者、又は使用予定者(以下、総称して「使用者等」という)がサイフォン管のズレに対して不安感を抱き得ることを知見した。火災を伴う災害時において、使用者等にそのような不安感を抱かせることは、適切な初期消火の妨げにも成りかねないため、好ましくない。一方で、本願発明者らは、そのズレが外観上目立たなければ、使用者等も特に不安を感じることなくそのような消火器を使用することが出来ることも併せて知見した。そこで、本願発明者らは、サイフォン管自身に着目して改良を施すことにより、透光性を有する樹脂製の消火剤貯蔵容器を用いた際に、従来程度のサイフォン管の傾きが仮に生じたとしても、使用者等の信頼性が不必要に損なわれず、運用上の支障が生じにくい消火器を創出した。本発明はそのような視点で創出された。
【0012】
本発明の1つの消火器は、樹脂を用いて継ぎ目なく成形されるとともに、可視光透過率が5%以上95%以下である消火剤貯蔵容器を備えている。さらに、この消火器は、前述の消火剤貯蔵容器内に収容されるサイフォン管の可視光透過率が5%以上95%以下である。
【0013】
この消火器によれば、可視光透過率が5%以上95%以下の消火剤貯蔵容器の中に、可視光透過率が5%以上95%以下の透光性を有するサイフォン管が収容されている。したがって、透光性を有するサイフォン管の存在により、消火剤貯蔵容器が上述の適度な透光性を有している場合には、そのサイフォン管の存在を外観上目立たなくすることができる。その結果、仮に既存のサイフォン管の継ぎ手を利用した場合であっても、換言すれば、従来程度のサイフォン管の傾きが仮に生じたとしても、消火器の使用者等に不安を抱かせることを著しく低減でき、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。すなわち、この消火器によれば、透光性を備えた樹脂製の消火剤貯蔵容器を備える消火器の信頼性及び品質を高めることができる。
【0014】
また、本発明のもう1つの消火器は、第1樹脂を用いて継ぎ目なく成形されるとともに、可視光透過率が5%以上95%以下である消火剤貯蔵容器を備えている。さらに、この消火器は、前述の消火剤貯蔵容器内に収容されるサイフォン管の可視光透過率が5%以上95%以下であり、且つそのサイフォン管が第2樹脂を用いて成形される。
【0015】
この消火器によれば、可視光透過率が5%以上95%以下の消火剤貯蔵容器の中に、可視光透過率が5%以上95%以下の透光性を有する(第2)樹脂製のサイフォン管が収容されている。したがって、透光性を有するサイフォン管の存在により、消火剤貯蔵容器が上述の適度な透光性を有している場合には、そのサイフォン管の存在を外観上目立たなくすることができる。その結果、仮に既存のサイフォン管の継ぎ手を利用した場合であっても、換言すれば、従来程度のサイフォン管の傾きが仮に生じたとしても、消火器の使用者等に不安を抱かせることを著しく低減でき、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。すなわち、この消火器によれば、透光性を備えた(第1)樹脂製の消火剤貯蔵容器を備える消火器の信頼性及び品質を高めることができる。さらに、この消火器は、(第1)樹脂製の消火剤貯蔵容器のみならず、(第2)樹脂製のサイフォン管を有するため、この消火器の廃棄やリサイクルの際には廃棄物の低減を図ることができる。なお、この消火器において、第1樹脂と第2樹脂とが同一材料であってもよい。
【0016】
また、本発明のもう1つの消火器は、顔料を含む樹脂を用いて継ぎ目なく成形されるとともに、可視光透過率が5%以上85%以下である消火剤貯蔵容器を備えている。さらに、この消火器は、前述の消火剤貯蔵容器内に収容されるサイフォン管の反射光の色相が、前述の顔料の反射光の色相と同系色
である。
【0017】
この消火器によれば、顔料を含む樹脂製であって可視光透過率が5%以上85%以下の消火剤貯蔵容器の中に、その顔料の反射光の色相と同系色の反射光を発するサイフォン管が収容されている。したがって、そのような反射光を発するサイフォン管の存在により、消火剤貯蔵容器が透光性を有している場合であっても、そのサイフォン管の存在を外観上目立たなくすることができる。その結果、仮に既存のサイフォン管の継ぎ手を利用した場合であっても、換言すれば、従来程度のサイフォン管の傾きが仮に生じたとしても、消火器の使用者等に不安を抱かせることを著しく低減でき、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。すなわち、この消火器によれば、透光性を備えた樹脂製の消火剤貯蔵容器を備える消火器の信頼性及び品質を高めることができる。
【0018】
ところで、本出願において、「色相」とは、色合い、色の種類をあらわすものである。また、本出願において、「顔料の反射光の色相と同系色の反射光」とは、発色成分(顔料)の分光特性が厳密に同一である場合に限定されず、一般的に(赤(Red)、黄(Yellow)、緑(Green)、青(Blue)、紫(Purple)等のように、通常の色概念上の同じ色と呼べる範囲の反射光を意味する。また、本出願において「色材」とは、色をつける材料、着色材のことであり、顔料・塗料・印刷 インキに代表されるものをいう。
【発明の効果】
【0019】
本発明の1つの消火器によれば、消火剤貯蔵容器が透光性を有している場合であっても、そのサイフォン管の存在を外観上目立たなくすることができる。その結果、仮に既存のサイフォン管の継ぎ手を利用した場合であっても、換言すれば、従来程度のサイフォン管の傾きが仮に生じたとしても、消火器の使用者等に不安を抱かせることを著しく低減でき、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしも互いの縮尺を保って記載されるものではない。さらに、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態における消火器100の斜視図である
。また、
図2Aは、本実施形態における消火器100の一部である消火剤貯蔵容器10の側面図であり、
図2Bは、その消火剤貯蔵容器10の断面図である。また、
図3Aは、本実施形態における、サイフォン管継ぎ手及びサイフォン管が消火剤貯蔵容器の口部内に嵌入された状態を示す消火器の一部の拡大断面図である。また、
図3Bは、従来におけるサイフォン管970が傾いた状態の一態様を示す、消火器の一部の断面図である。加えて、
図4Aは、本実施形態における起動レバー33が係合していない蓋体31の拡大側面図であり、
図4Bは、本実施形態における起動レバー33が係合した蓋体31の拡大側面図である。
【0023】
まず、消火器100における消火剤貯蔵容器10、サイフォン管継ぎ手40、及びサイフォン管70の構造と機能について説明する。
【0024】
図1、
図2A、及び
図2Bに示すように、本実施形態の消火剤貯蔵容器10は、開口部13を備える一方、金属製の消火剤貯蔵容器のような継ぎ目が形成されていない。また、消火剤貯蔵容器10は、消火剤貯蔵部11と、消火剤貯蔵部11の上部に位置する開口部13に形成される雄ネジ部12とで構成される。消火剤60(例えば、粉末消火剤又は中性強化液)が消火剤貯蔵容器10内に収容された後、この雄ネジ部12と起動レバー33が係合していない蓋体31とが螺合することにより、消火剤貯蔵容器10内の空間が理想的には密閉状態となる。なお、
図2Aにおいて、便宜上、消火剤貯蔵容器の部位を説明するための破線と実線とを設けている。また、消火剤貯蔵容器10と蓋体31との固定手段は、前述の螺合に限られず、公知の接合手段が適用され得る。なお、本実施形態の消火剤貯蔵容器10は、後述するように、顔料を含有する樹脂(ポリエチレンナフタレート(PEN))製であり、曲面を有する底部94と嵌合する支持台50によって立設可能に支持される。
【0025】
また、
図2Bにおいて、便宜上、消火剤貯蔵容器10の肉厚を示すための矢印と、口部91の肉厚を表示するために、口部91の断面形状を延長するための破線とを設けている。本実施形態の消火剤貯蔵容器10の口部91の肉厚(T
1)は、2mm以上8mm以下である。また、消火剤貯蔵容器10の深さ方向に進むにしたがって外径が大きくなる(本実施形態では曲面となる)肩部92の肉厚(T
2)は、1.2mm以上12mm以下である。また、円筒状の胴部93の肉厚(T
3)は、1.2mm以上1.9mm以下であり、曲面を有する底部94の肉厚(T
4)は、1.2mm以上12mm以下である。
【0026】
なお、本実施形態の消火剤貯蔵容器10の胴部93の肉厚は、0.9mm以上5mm以下であることが好ましい。これは、樹脂の厚さが0.9mmよりも薄いと、消火剤の貯蔵容器として求められる強度(例えば、2.4MPaの耐圧)を達成できなくなるおそれが高まる一方、5mmよりも厚ければ、経済的に好ましくないとともに内容物たる消火剤を視認し得る樹脂性消火剤貯蔵容器の利点の達成が困難になるおそれが高まるためである。上述の観点によれば、胴部93の肉厚は、0.9mm以上3mmであることがより好ましく、1mm以上3mm以下であることが更に好ましい。
【0027】
次に、
図3Aに示すように、本実施形態のサイフォン管70は、サイフォン管継ぎ手40の挿入口41から係止部42まで密に(密接に)挿入される。また、本実施形態のサイフォン管継ぎ手40は、消火剤貯蔵容器10の口部91とバルブケース(図示しない)との間に挟まれた環状のシール部46と、シール部46の内周側に連設され、前述の係止部42を備えた筒状の管保持部45とを有する。
【0028】
ここで、本実施形態のサイフォン管継ぎ手40は、ゴム(例えば、NBR製)製であるため、消火器を車両等で輸送したときの振動等の影響により、シール性を損なわない範囲でサイフォン管継ぎ手940の向きがズレることがある。その結果、
図3Bに示すように、サイフォン管970が消火剤貯蔵容器の胴部の稜線に対して傾いてしまい、その下端971の位置が変動し、場合によってはそのような状態のまま維持されることがある。従来、本実施形態のように消火剤貯蔵容器910が透光性を有していると、サイフォン管970の傾きが消火剤貯蔵容器910を介して外部から視認されることになる。その結果、使用者等に消火器910に対する品質等の不安感を抱かせることになる。つまり、従来のサイフォン管及びサイフォン管継ぎ手を採用した場合、従来の消火剤の残量が外部から視認できる利点とは別に、サイフォン管についての新たな問題が生じ得る。
【0029】
しかしながら、本実施形態のサイフォン管70は、樹脂(例えば、透光性を有するABS樹脂(すなわち、アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合合成樹脂))を用いて成形されている。加えて、その可視光透過率は、5%以上95%以下である。また、本実施形態の消火剤貯蔵容器10の可視光透過率は、5%以上85%以下である。従って、仮に、上述のごとく、何らかの理由によってサイフォン管70が消火剤貯蔵容器10の胴部の稜線に対して傾いてしまった場合でも、外部から見たときには、さほど目立たない状態となる。その結果、消火器100の使用者等に不安を抱かせることを著しく低減でき、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。
【0030】
なお、本実施形態の消火剤貯蔵容器10の可視光透過率が85%以下であれば、収められている消火剤60の壁面への付着が見え難くなり、消火器100が設置される場所の周囲の美観が目立って損なわれない。加えて、本実施形態の消火剤貯蔵容器10の可視光透過率が85%以下であれば、サイフォン管70の視認性との関係においても、使用者等の不安を過度に生じさせないようにすることができる。
【0031】
他方、消火剤貯蔵容器10の可視光透過率が5%未満になると、緊急時に消火剤60の残量が確認しづらくなるため実用性が劣ることになる。従って、前述の範囲の適度な透明性を維持することにより、実用性、外観上の美観、及び信頼性が調和することになる。加えて、より好ましい消火剤貯蔵容器10の可視光透過率は、5%以上75%以下であり、さらに好ましい範囲は20%以上70%以下である。この範囲であれば、さらに、周囲の美観との調和が取れるとともに、サイフォン管70の視認性との関係においても、さらに使用者等に不安を抱かせることを低減することができる。なお、前述の各観点から言えば、本実施形態の消火剤貯蔵容器10の全光線透過率は、5%以上75%以下が好ましい。
【0032】
また、サイフォン管70の可視光透過率と消火剤貯蔵容器10の可視光透過率との差は特に限定されない。しかしながら、消火剤貯蔵容器10の方がサイフォン管70よりも可視光透過率が低い場合は、サイフォン管70の可視光透過率が、消火剤貯蔵容器10の可視光透過率と比較して、その差が90%以下の範囲内に収められるように成形されていることが好ましい。一方、サイフォン管70の方が消火剤貯蔵容器10よりも可視光透過率が低い場合は、サイフォン管70の可視光透過率が、消火剤貯蔵容器10の可視光透過率と比較して、その差が30%以下の範囲内に収められるように成形されていることが好ましい。上述の範囲に設定されることにより、使用者等に不安を抱かせることをより顕著に低減することができる。なお、サイフォン管70の方が消火剤貯蔵容器10よりも可視光透過率が低い場合は、サイフォン管70の可視光透過率と消火剤貯蔵容器10の可視光透過率との差が、20%以下であれば、さらに前述の効果が上がる。使用者等に不安を抱かせることをより顕著に低減することができるという観点で言えば、いずれの可視光透過率が相対的に低い場合であっても、最も好ましい差は10%以下である。
【0033】
ところで、本実施形態の消火器100の軽量化の達成度について確認すると、従来の鉄製の消火剤貯蔵容器を備える消火器と比べて、全体として重量を約70%に減少させることができた。消火器としての軽量化を実現することで、火災時において老若男女を問わず誰もが最も使い易い消火器となり、消火活動がし易い状況を提供することができる。
【0034】
次に、蓋体31及びホース20の構造と機能について説明する。
図1、
図4A、及び
図4Bに示すように、本実施形態の蓋体31は、樹脂(具体的には、6−ナイロン)を用いて公知の手法により一体成型されている。また、蓋体31の内側には雌ネジ部(図示しない)が形成されている。上述のとおり、この雌ネジ部が消火剤貯蔵容器10に形成される雄ネジ部12と螺合することにより、蓋体31が消火剤貯蔵容器10に取り付けられる。また、蓋体31と固定レバー31fとは、一体化されて形成されている。また、蓋体31は、起動レバー33と係合させるための起動レバー係合部31aと、起倒杆34と係合させるための起倒杆係合部31bとを備えている。加えて、蓋体31は、人間が持ちやすいように外径の大きいスポンジ状の把持部22を備えた、架橋ポリエチレン樹脂製の可とう性のホース20の先端を固定するためのホース固定部31cを備えている。
【0035】
蓋体31の接続部31dによってサイフォン管継ぎ手40と接続することにより、サイフォン管70からサイフォン管継ぎ手40を経由してホース固定部31cまで連通する流路が形成される。その流路のうち、蓋体31内の流路31eの一部には、消火剤貯蔵容器10に貯蔵される予定の消火剤60をホース20へ流通可能にするための金属(具体的には、真ちゅう)製の弁棒(バルブ)32がバネを用いて開閉自在に配置されている。また、ホース20の先端を固定するための公知の面ファスナー24が、ホース20の先端部と消火剤貯蔵容器10の胴部93の一部とに設けられている。
【0036】
図5は、本実施形態の起動レバー33を示す斜視図である。また、
図6は、安全栓35の一例を示す斜視図である。本実施形態の起動レバー33は、樹脂(具体的には、6−ナイロン)を用いて公知の手法により一体成型されている。起動レバー33は、レバー部33aと、薄肉部33bと、蓋体係合部33cとから構成されている。この起動レバー33は、蓋体係合部33cと蓋体31の起動レバー係合部31aとが係合することにより、蓋体31と接続している。また、レバー部33aは、後述する安全栓35の嵌入棒35cが嵌入する第1開口部33dと、安全栓35の係合突起35a及び突起35bが貫通する第2開口部33eを備えている。薄肉部33bは、押圧力の付与により屈曲可能な程度に薄肉に形成されている。起動レバー33のレバー部33aに押圧力が加えられると、この押圧力に耐えきれずに薄肉部33bが屈曲する。このように薄肉部33bが屈曲すると、起動レバー33は薄肉部33bを中心として蓋体31に対して回動する。
【0037】
また、
図6に示すように、安全栓35の嵌入棒35cは、起動レバー33が備える第1開口部33d及び起倒杆34が備える開口部に嵌入され得る長さを有している。また、係合突起35aは、起動レバー33が備える第2開口部33eを貫通し、起倒杆34に係合され得る形状を有している。この安全栓35の嵌入棒35cが、起動レバー33及び起倒杆34に嵌入するとともに、係合突起35aが起倒杆34に係合すると、起倒杆34及び起動レバー33が回動不可能な状態となる。一方、安全栓35が、起動レバー33及び起倒杆34から取り外されると、起倒杆34及び起動レバー33が回動可能な状態となる。
【0038】
また、本実施形態では、起倒杆34も、起動レバー33と同様に、樹脂(具体的には、6−ナイロン)を用いて公知の手法により一体成型されている。また、起倒杆34は、薄肉部34aと安全栓係合部34bとを備えるとともに、安全栓35の嵌入棒35cが嵌入される開口部(図示しない)を備えている。この起倒杆34は、その下端部が蓋体31の起倒杆係合部31bと係合することにより、蓋体31と接続している。薄肉部34aは、押圧力の付与により屈曲可能な程度に薄肉に形成されている。起動レバー33のレバー部33aに押圧力が加えられると起動レバー33が回動し、起倒杆34にその押圧力が伝えられる。起倒杆34に押圧力が加えられると、この押圧力に耐えきれずに薄肉部34aが屈曲する。このように薄肉部34aが屈曲すると、起倒杆34は、薄肉部34aを中心として蓋体31に対して回動する。
【0039】
ところで、本実施形態のサイフォン管70は、透光性を有するABS樹脂を用いて成形されているが、この材質に限定されない。例えば、他の樹脂(具体的には、塩化ビニル、ポリプロピレン、又はポリエチレンなど)を用いて成形されたサイフォン管であっても、可視光透過率が5%以上95%以下であれば、本実施形態と同様の効果が奏され得る。加えて、樹脂単体以外の材料、例えば、ガラス繊維含有樹脂も、本実施形態に適用され得る。なお、前述の樹脂単体以外の各材料によるサイフォン管の可視光透過率が、5%以上85%以下であればさらに好ましいことも、本実施形態と同様である。
【0040】
次に、消火器100の製造方法について説明する。まず、本実施形態の消火剤貯蔵容器10は、延伸ブロー成形、溶融成形などの公知の樹脂成形方法により製造することができるが、この中でも、開口部13を除いて、継ぎ目がなく、成形状態が良好で、かつ適度な肉厚の容器が得られる点で、延伸ブロー成形が好ましい。
【0041】
なお、本実施形態の消火剤貯蔵容器10は、顔料としてぺリノン系レッドを含有するポリエチレンナフタレート(PEN)によって形成されている。具体的には、本実施形態の消火剤貯蔵容器10は、マスターバッチ(顔料とPENとを混合したもの)が混合されたポリエチレンナフタレート(PEN)で形成された。なお、本実施形態では、マスターバッチは、ポリエチレンナフタレート(PEN)100部に対してぺリノン系レッド1.3部の割合で混合することにより形成された。また、ポリエチレンナフタレート(PEN)に対し、前述のマスターバッチが10%の割合で混合された。
【0042】
また、本実施形態の変形例として、消火剤貯蔵容器10に含まれる顔料が、ペリノン系レッドの代わりにシアニン系ブルーである点を除いて同じ構成を備えた消火剤貯蔵容器も成形された。なお、この変形例の消火剤貯蔵容器は、顔料としてシアニン系ブルーを含有するポリエチレンナフタレート(PEN)によって形成されている。具体的には、この変形例の消火剤貯蔵容器は、マスターバッチ(顔料とPENとを混合したもの)が混合されたポリエチレンナフタレート(PEN)で形成されている。また、本実施形態では、マスターバッチは、ポリエチレンナフタレート(PEN)100部に対してシアニン系ブルー0.16部の割合で混合することにより形成される。また、ポリエチレンナフタレート(PEN)に対し、前述のマスターバッチが5%の割合で混合される。
【0043】
本実施形態では、消火剤貯蔵容器10が形成された後、その底部94が、接着剤が設けられた支持台50の凹部内に嵌入される嵌入工程が行われることにより、消火剤貯蔵容器10と支持台50とが接着剤(例えば、湿気硬化型接着剤)によって接着する。
【0044】
嵌入工程の後、上述のとおり、蓋体31及びホース20が、消火剤60を収めた消火剤貯蔵容器10と直接的又は間接的に接続する工程が行われる。
【0045】
ところで、本実施形態の消火器100は、加圧式か蓄圧式かを問わない。例えば、消火器100が加圧式消火器であれば、蓋体31が消火剤貯蔵容器10に取り付けられる際に、図示しない加圧用ボンベが消火剤60とともに消火剤貯蔵容器10内に収められる。一方、消火器100が蓄圧式消火器であれば、上述の嵌入工程の後、蓋体31が消火剤60を収めた消火剤貯蔵容器10に取り付けられてから、ガス(例えば、0.9MPa)が蓋体31を介して消火剤貯蔵容器10内に導入されることにより封入される。
【0046】
なお、特に蓄圧式の消火器を製造する場合、支持台50の凹部内に消火剤貯蔵容器10を嵌入するのに先立って、消火剤貯蔵容器10内にガスを封入することは作業効率が悪いため好ましくない。したがって、上述のとおり、嵌入工程の後に、換言すれば、消火剤貯蔵容器10を立設させた状態でガスを封入する工程が行われることが好ましい。
【0047】
また、本実施形態の支持台50の材質は
、高い耐衝撃性及び強度を得るため、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂、ポリオレフィン、及びポリフェニレンスルファイド、ポリスチレン、及びポリカーボネートの群から選ばれる少なくとも1種類の樹脂により形成されている。しかしながら、本実施形態の支持台50の材質は、樹脂製に限定されない。支持台50が金属(例えば、アルミニウムやSUS304)製であっても、樹脂製の消火剤貯蔵容器10との接着を実現することは可能である。
【0048】
<第2の実施形態>
ところで、第1の実施形態では、消火剤貯蔵容器10の材料として、顔料を含むポリエチレンナフタレート(PEN)が採用されていたが、顔料を含まない樹脂が消火剤貯蔵容器の材料として採用された場合であっても、第1の実施形態の効果は、その一部が奏され得る。なお、本実施形態の消火器200及びその製造方法は、第1の実施形態の消火剤貯蔵容器10が、消火剤貯蔵容器210に変更された点を除き、第1の実施形態の消火器100及びその製造方法と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0049】
例えば、全く顔料を含まないポリエチレンナフタレート(PEN)を材料とする消火剤貯蔵容器が採用されると、その可視光透過率は最大で95%程度までに至る。その結果、第1の実施形態よりも高い可視光透過率を有する消火剤貯蔵容器210を備えた消火器200が採用されると、収められているサイフォン管70が第1の実施形態よりも見え易い状況となる。しかしながら、本実施形態のサイフォン管70の可視光透過率は、第1の実施形態と同様に、5%以上95%以下である。従って、仮に、何らかの理由によってサイフォン管70が消火剤貯蔵容器210の胴部の稜線に対して傾いてしまった場合でも、外部から見たときには、さほど目立たない状態となる。その結果、消火器200の使用者等の不安を過度に生じさせないようにすることができ、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。
【0050】
また、サイフォン管70の可視光透過率と消火剤貯蔵容器10の可視光透過率との差は特に限定されない。しかしながら、消火剤貯蔵容器10の方がサイフォン管70よりも可視光透過率が低い場合は、サイフォン管70の可視光透過率が、消火剤貯蔵容器10の可視光透過率と比較して、その差が90%以下の範囲内に収められるように成形されていることが好ましい。一方、サイフォン管70の方が消火剤貯蔵容器10よりも可視光透過率が低い場合は、サイフォン管70の可視光透過率が、消火剤貯蔵容器10の可視光透過率と比較して、その差が30%以下の範囲内に収められるように成形されていることが好ましい。上述の範囲に設定されることにより、使用者等に不安を抱かせることをより顕著に低減することができる。なお、サイフォン管70の方が消火剤貯蔵容器10よりも可視光透過率が低い場合は、サイフォン管70の可視光透過率と消火剤貯蔵容器10の可視光透過率との差が、20%以下であれば、さらに前述の効果が上がる。使用者等に不安を抱かせることをより顕著に低減することができるという観点で言えば、いずれの可視光透過率が相対的に低い場合であっても、最も好ましい差は10%以下である。
【0051】
<第3の実施形態>
本実施形態の消火器300及びその製造方法は、第1の実施形態のサイフォン管70がサイフォン管270に変更された点を除き、第1の実施形態の消火器100及びその製造方法と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0052】
本実施形態では、顔料としてぺリノン系レッドを含むポリエチレンナフタレート(PEN)を用いて成形され、可視光透過率が5%以上85%以下である消火剤貯蔵容器10内に、サイフォン管270が収められている。本実施形態のサイフォン管270は、顔料としてペリノン系レッドを含み、かつ実質的に透光性を有しない樹脂(例えば、透光性を有しない塩化ビニル又はポリプロピレン)を用いて成形されている。従って、本実施形態のサイフォン管270の反射光の色相は、消火剤貯蔵容器10の反射光の色相と同系色である。その結果、仮に、何らかの理由によってサイフォン管270が消火剤貯蔵容器10の胴部の稜線に対して傾いてしまった場合でも、外部から見たときには、さほど目立たない状態となる。その結果、消火器300の使用者等に不安を抱かせることを著しく低減でき、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。
【0053】
なお、本実施形態では、顔料としてペリノン系レッドを含むポリエチレンナフタレート(PEN)を用いて成形された消火剤貯蔵容器10と、顔料としてペリノン系レッドを含む樹脂(例えば、透光性を有しない塩化ビニル又はポリプロピレン)を用いて成形されたサイフォン管270との組合せであったが、本実施形態は、この組合せに限定されない。例えば、前述のそれぞれの母材となる樹脂が、互いに異なる顔料を含む場合であっても、サイフォン管の反射光の色が、消火剤貯蔵容器の反射光の色相と同系色であれば、本実施形態の効果は奏され得る。
【0054】
<第3の実施形態の変形例(1)>
本実施形態の消火器400及びその製造方法は、第1の実施形態のサイフォン管70がサイフォン管370に変更された点を除き、第1の実施形態の消火器100及びその製造方法と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0055】
本実施形態では、顔料としてぺリノン系レッドを含むポリエチレンナフタレート(PEN)を用いて成形され、可視光透過率が5%以上85%以下である消火剤貯蔵容器10内に、サイフォン管370が収められている。本実施形態のサイフォン管370は、樹脂ではなく、アルミニウム)を用いて成形されており、実質的に透光性を有しない。しかしながら、本実施形態のサイフォン管370は、その外表面が色材(例えば、アンスラキノン系イエロー、アンスラキノン系レッド、ポリアゾ系レッド、フタロシアニン系ブルー等の顔料又は染料)によって着色されている。その結果、サイフォン管370の反射光の色相は、消火剤貯蔵容器10の反射光の色相と同系色である。その結果、仮に、何らかの理由によってサイフォン管370が消火剤貯蔵容器10の胴部の稜線に対して傾いてしまった場合でも、外部から見たときには、さほど目立たない状態となる。その結果、消火器400の使用者等に不安を抱かせることを著しく低減でき、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。
【0056】
<第3の実施形態の変形例(2)>
本実施形態の消火器500及びその製造方法は、第1の実施形態の消火剤貯蔵容器10が、第2の実施形態の消火剤貯蔵容器210に変更され、また第1の実施形態のサイフォン管70がサイフォン管470に変更された点を除き、第1の実施形態の消火器100及びその製造方法と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0057】
本実施形態では、顔料を含まないポリエチレンナフタレート(PEN)を用いて成形され、可視光透過率が5%以上95%以下である消火剤貯蔵容器210内に、サイフォン管470が収められている。本実施形態のサイフォン管470は、顔料を含まない樹脂(例えば、透光性を有するABS樹脂)を用いて成形されており、その可視光透過率が5%以上95%以下である。加えて、サイフォン管470の反射光の色相は、消火剤貯蔵容器210の反射光の色相と同系色となるように成形されている。その結果、仮に、何らかの理由によってサイフォン管470が消火剤貯蔵容器10の胴部の稜線に対して傾いてしまった場合でも、外部から見たときには、さほど目立たない状態となる。その結果、消火器500の使用者等に不安を抱かせることを著しく低減でき、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。
【0058】
ところで、サイフォン管470の可視光透過率と消火剤貯蔵容器210の可視光透過率との差は特に限定されない。しかしながら、消火剤貯蔵容器210の方がサイフォン管470よりも可視光透過率が低い場合は、サイフォン管470の可視光透過率が、消火剤貯蔵容器210の可視光透過率と比較して、その差が90%以下の範囲内に収められるように成形されていることが好ましい。一方、サイフォン管470の方が消火剤貯蔵容器210よりも可視光透過率が低い場合は、サイフォン管470の可視光透過率が、消火剤貯蔵容器210の可視光透過率と比較して、その差が30%以下の範囲内に収められるように成形されていることが好ましい。上述の範囲に設定されることにより、使用者等に不安を抱かせることをより顕著に低減することができる。なお、サイフォン管470の方が消火剤貯蔵容器210よりも可視光透過率が低い場合は、サイフォン管470の可視光透過率と消火剤貯蔵容器210の可視光透過率との差が、20%以下であれば、さらに前述の効果が上がる。使用者等に不安を抱かせることをより顕著に低減することができるという観点で言えば、いずれの可視光透過率が相対的に低い場合であっても、最も好ましい差は10%以下である。
【0059】
上述のとおり、消火剤貯蔵容器210及びサイフォン管470の母材である各樹脂が顔料を含まない場合であっても、それぞれの反射光の色相を適切に調整することにより、消火器500の使用者等に不安を抱かせることを著しく低減でき、また外観に起因する初期消火の妨げを防ぐことができる。加えて、消火剤貯蔵容器210及びサイフォン管470の可視光透過率を適切に調整することによっても前述の効果が奏されるとともに、各効果が相乗的に奏され得る。
【0060】
なお、上述の各実施形態においては、例えば、消火剤が淡紅色の粉末消火剤である場合、その消火剤の一部を消火の際に使用すると、回収されるまではそのまま設置場所に置かれてしまうことがある。そのような場合、上述の各実施形態の効果が発揮されなければ、消火剤貯蔵容器が可視光透過性を有しているが故に、その着色された粉末状の消火剤がサイフォン管内に残存することによって、美観を損ねる状況でサイフォン管の存在が外部から視認される状況となり得る。同様に、液体材料の消火剤が採用された場合であっても、例えば、消火剤の設置場所が寒暖の激しい場所であったときに、熱による消火剤貯蔵容器内の気体の膨張度合の違いにより、サイフォン管の内外の液体の高さが異なる結果、美観を損ねる状況でサイフォン管の存在が外部から視認される状況となり得る。従って、上述の各実施形態の効果が発揮されることによって、前述のような美観を損ねる状況が生じにくくなることは、可視光透過性を有する消火剤貯蔵容器を備えた消火器の分野においては特筆すべきである。
【0061】
<その他の実施形態>
ところで、上述の各実施形態では、消火剤貯蔵容器を形成する樹脂中に含有する顔料が、ペリノン系レッド又はシアニン系ブルーであったが、採用される顔料はそれらに限定されない。例えば、アンスラキノン系レッドや酸化チタン(TiO
2)が前述の顔料に代えて採用されても、上述の各実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。
【0062】
また、上述の第3の実施形態では、サイフォン管270が、顔料を含み、かつ実質的に透光性を有しない樹脂を用いて成形されているが、これに代えて、顔料を含み、かつ透光性を有する樹脂を用いて成形されたサイフォン管が採用されても、そのサイフォン管の反射光の色相が消火剤貯蔵容器10の反射光の色相と同系色であれば、第3の実施形態の消火器300と同様の効果が奏される。特に、透光性を有するサイフォン管を採用した方が外部からより見えにくくなるため、そのような消火器も好ましい一態様である。
【0063】
また、サイフォン管が樹脂を用いて成形される場合、顔料が含まれなくても樹脂自身によってサイフォン管の反射光が有色となることがある。また、そのような場合に、サイフォン管が透光性を有する場合と透光性を有しない場合がある。いずれ
の場合であっても、そのサイフォン管の反射光の色相が消火剤貯蔵容器の反射光の色相と同系色となるように調整することにより、上述の各実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。なお、顔料が含まれなくても樹脂自身によって反射光が有色となり得るのは、消火剤貯蔵容器も同様である。
【0064】
また、サイフォン管が樹脂を用いて成形される場合、他の採用し得る材料の一例として、ナイロン6,6、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、又はシリコン樹脂が挙げられる。
【0065】
また、上述の各実施形態では、消火剤貯蔵容器を構成する樹脂としてポリエチレンナフタレート(PEN)が採用されているが、採用される樹脂はこれに限定されない。例えば、ジカルボン酸成分として主にナフタレンジカルボン酸またはテレフタル酸、ジオール成分として主にエチレングリコール又はブタンジオールを用いて重縮合させて得られたポリエステル樹脂又はこれらのポリエステル樹脂を主とする材料が消火剤貯蔵容器の材料として採用されても、本発明の少なくとも一部の効果が奏されると考えられる。換言すれば共重合ポリエステル樹脂であれば、本発明の少なくとも一部の効果が奏されると考えられる。
【0066】
また、消火剤貯蔵容器を構成する他の採用し得る材料の一例として、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリスチレン、又はポリカーボネートが挙げられる。但し、上述の全ての材料の中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)を採用することが、強度の観点から好ましい。また、ガスバリアー性の観点から、ポリエチレンナフタレート(PEN)が単独で採用されることが最も好ましい。すなわち、ポリエチレンナフタレート(PEN)を採用することにより、高強度でかつガスバリアー性に優れた消火剤貯蔵容器がより確度高く得られる。
【0067】
加えて、上述の各実施形態の消火器の消火剤貯蔵容器の外周表面上に公知の被膜フィルムや公知の顔料を含むフィルムが配置されていてもよい。例えば、消火器の製造メーカー名や消火器の性能を示すための記述や装飾が施されたフィルムは広く一般的に利用されているが、それらの使用は上述の各実施形態の効果を妨げない。
【0068】
さらに、上述の各実施形態の効果が損なわれない添加剤であれば、消火剤貯蔵容器を構成する樹脂は、変色の防止や耐候性の向上のために、光安定剤、紫外線吸収剤、又は老化防止剤などの公知の添加剤が適宜配合され得る。
【0069】
なお、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。