特許第5793374号(P5793374)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793374
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】半導体装置及び配線接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20150928BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-185845(P2011-185845)
(22)【出願日】2011年8月29日
(65)【公開番号】特開2013-48154(P2013-48154A)
(43)【公開日】2013年3月7日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】村松 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】森永 雄司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓希
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−132448(JP,U)
【文献】 実開昭60−111071(JP,U)
【文献】 特開平10−084078(JP,A)
【文献】 特開平07−142658(JP,A)
【文献】 特開2001−266994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/00−25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを内蔵した本体部と、
前記半導体チップに電気接続されて前記本体部の外面に配される複数の外部端子と、
電気的な絶縁性を有し、互いに隣り合う一対の外部端子の間において前記本体部の外面から突出するように配されることで、これら一対の外部端子の絶縁距離を延長する絶縁隔壁と、
前記本体部及び前記絶縁隔壁を互いに係合させる係合手段と、を備え、
前記絶縁隔壁は、前記係合手段によって前記本体部に対して固定され
前記本体部の外面に、前記外部端子に外部配線を締結させるためのネジを螺着させるネジ孔が形成され、
当該ネジ孔の軸線が、前記外面からその上方に向かうにしたがって前記絶縁隔壁から漸次離間するように、前記絶縁隔壁の突出方向に対して傾斜していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁隔壁には、その突出方向先端から延出して、前記一対の外部端子の上方を覆うカバー部が一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記本体部の外面に、前記外部端子に外部配線を締結させるためのネジを螺着させるネジ孔が形成され、
前記カバー部が、前記ネジ孔に螺着された前記ネジの頭部の上方を覆うように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記係合手段が、前記本体部の外面から窪む係合溝と、前記絶縁隔壁の突出方向基端部に形成されて、前記係合溝に挿入されることで当該係合溝に係合する爪部と、を備えて構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁隔壁に、その突出方向先端から延出して、前記一対の外部端子の上方を覆うカバー部が一体成形され、
前記係合手段が、前記絶縁隔壁から延びる前記カバー部の延出方向の両端に一体に形成されて、前記本体部を挟み込む一対の狭持部と、前記一対の狭持部に各々対向する前記本体部の両側面から窪んで、前記狭持部に形成される突起を挿入可能な係合穴と、を備えて構成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置において、
ネジによって前記外部端子に外部配線を締結した後に、
前記絶縁隔壁を前記本体部に取り付けることを特徴とする配線接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置及び配線接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置には、半導体チップを内蔵した本体部(例えば、半導体チップを収容するケース、半導体チップを封止するモールド樹脂など)の外面に、半導体チップに電気接続された複数の外部端子を互いに隣り合わせて配したものがある。
この種の半導体装置においては、外部端子間において電気的な短絡が生じないように、外部端子間の距離(絶縁距離)を十分に確保する必要がある。これに対して、従来では、例えば特許文献1のように、本体部に一体成形されて本体部の外面から突出する平板状の絶縁隔壁を、外部端子間に配置することで、上記絶縁距離の延長を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−198899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような半導体装置においては、形状や大きさを同一とした本体部、あるいは、複数の外部端子の相対配置を同一とした本体部に対して、チップ特性(半導体チップにかかる電圧の大きさ)の異なる半導体チップを内蔵することがある。このような場合には、絶縁距離を確保するために必要な絶縁隔壁の大きさ(例えば高さや厚さ)が変わるため、内蔵する半導体チップの特性毎に大きさの異なる絶縁隔壁を形成する必要がある。
しかしながら、上記従来の半導体装置では、絶縁隔壁が本体部に一体成形されているため、本体部の汎用性が低く、その結果として、半導体装置を安価に製造することができない、という問題がある。なお、チップ特性に関わらず、予め大きな絶縁隔壁を本体部に一体成形してもよいが、この場合には半導体装置のサイズが無駄に大きくなってしまう、という問題が生じる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、本体部の汎用性向上を図って半導体装置を安価に製造できると共に、小型化も図ることが可能な半導体装置及び配線接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の半導体装置は、半導体チップを内蔵した本体部と、前記半導体チップに電気接続されて前記本体部の外面に配される複数の外部端子と、電気的な絶縁性を有し、互いに隣り合う一対の外部端子の間において前記本体部の外面から突出するように配されることで、これら一対の外部端子の絶縁距離を延長する絶縁隔壁と、前記本体部及び前記絶縁隔壁を互いに係合させる係合手段と、を備え、前記絶縁隔壁は、前記係合手段によって前記本体部に対して固定され、前記本体部の外面に、前記外部端子に外部配線を締結させるためのネジを螺着させるネジ孔が形成され、当該ネジ孔の軸線が、前記外面からその上方に向かうにしたがって前記絶縁隔壁から漸次離間するように、前記絶縁隔壁の突出方向に対して傾斜していることを特徴とする。
なお、前記本体部の具体例としては、半導体チップを埋設するモールド樹脂や、半導体チップを収容する中空のケース、あるいは、中空のケース内にポッティング樹脂を充填して半導体チップを封止して構成されるもの等が挙げられる。
【0007】
上記半導体装置によれば、絶縁隔壁が係合手段によって本体部に対して固定されるため、絶縁隔壁を本体部とは別個に成形することができる。これにより、同一サイズ・形状の本体部に内蔵される様々な半導体チップのチップ特性に合わせて、様々な大きさの絶縁隔壁を本体部に取り付けることが可能となる。したがって、本体部の汎用性が向上し、半導体装置を安価に製造することが可能となる。
また、同一サイズ・形状の本体部に対して様々な大きさの絶縁隔壁を取り付けることができるため、半導体装置のサイズを必要最小限に抑えることもできる。
また、上記半導体装置によれば、ネジ孔に螺着されるネジの頭部を絶縁隔壁やカバー部から離間して位置させることができる。したがって、絶縁隔壁が本体部に固定された状態であっても、絶縁隔壁やカバー部とネジの頭部を操作する器具(例えばレンチやドライバー等)との干渉を防いで、ネジ孔に対するネジの脱着を容易に行うことが可能となる。
【0008】
そして、前記半導体装置において、前記絶縁隔壁には、その突出方向先端から延出して、前記一対の外部端子の上方を覆うカバー部が一体成形されていることが好ましい。
この構成では、外部端子を配した本体部の外面から突出する絶縁隔壁の突出高さを低く抑えても、一対の外部端子間の絶縁距離を延ばすことができる。言い換えれば、半導体装置のサイズをさらに小さく抑えると同時に、外部端子間の絶縁距離も十分に確保することが可能となる。
【0009】
さらに、前記半導体装置が前記カバー部を有する場合には、前記本体部の外面に、前記外部端子に外部配線を締結させるためのネジを螺着させるネジ孔が形成され、前記カバー部が、前記ネジ孔に螺着された前記ネジの頭部の上方を覆うように形成されているとさらによい。
【0010】
この構成では、例えネジが導電性を有していても、一対の外部端子に取り付けられたネジの頭部の間の絶縁距離を確保することができる。
また、ネジの頭部がカバー部によって覆われることで、ネジの頭部に触れることを防止できるため、ネジの頭部に外力が加えられて外部端子に対する外部配線の締結状態が緩んでしまうことを確実に防ぐことができる。
【0012】
さらに、前記半導体装置では、前記係合手段が、前記本体部の外面から窪む係合溝と、前記絶縁隔壁の突出方向基端部に形成されて、前記係合溝に挿入されることで当該係合溝に係合する爪部と、を備えて構成されることが好ましい。
また、前記半導体装置では、前記絶縁隔壁に、その突出方向先端から延出して、前記一対の外部端子の上方を覆うカバー部が一体成形され、前記係合手段が、前記絶縁隔壁から延びる前記カバー部の延出方向の両端に一体に形成されて、前記本体部を挟み込む一対の狭持部と、前記一対の狭持部に各々対向する前記本体部の両側面から窪んで、前記狭持部に形成される突起を挿入可能な係合穴と、を備えて構成されることが好ましい。
【0013】
これらの構成では、接着剤等を用いることなく絶縁隔壁を確実に本体部に固定することが可能となるため、本体部に対する絶縁隔壁の固定を容易に行うことができる。
【0014】
そして、本発明の配線接続方法は、前記半導体装置において、ネジによって前記外部端子に外部配線を締結した後に、前記絶縁隔壁を前記本体部に取り付けることを特徴とする。
上記配線接続方法によれば、外部配線を締結したネジの頭部が絶縁隔壁やカバー部の近くに配置されていても、絶縁隔壁やカバー部とネジの頭部を操作する器具との干渉を防いで、ネジによる外部配線の締結を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本体部に内蔵される半導体チップのチップ特性に最適な大きさの絶縁隔壁を、同一サイズ・形状の本体部に取り付けることができるため、本体部の汎用性向上を図って、半導体装置を安価に製造することが可能となる。また、半導体装置の小型化も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係る半導体装置を示す概略断面図である。
図2図1の半導体装置をその上面側から見た概略平面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る半導体装置を示す概略断面図である。
図4】本発明の第三実施形態に係る半導体装置を示す概略断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る半導体装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第一実施形態〕
以下、図1,2を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、この実施形態に係る半導体装置1は、板状のヒートシンク2の上面2a上に、ダイオードやトランジスタ等の半導体チップ3を配すると共に、半導体チップ3に一対の端子板4の長手方向の一端部(内部端子、不図示)を電気接続した上で、これらヒートシンク2、半導体チップ3及び端子板4の一端部をモールド樹脂5で封止して大略構成されている。
【0018】
ヒートシンク2は、導電性を有し、かつ、放熱性の高い材料によって形成されている。ヒートシンク2をなす具体的な材料としては、例えば銅(Cu)、タングステン、モリブデン、あるいは、これにNiメッキを施したものが挙げられる。このヒートシンク2の下面2bはモールド樹脂5の下面5bから外方に露出している。
半導体チップ3は、ヒートシンク2と電気的に絶縁されるように、不図示の絶縁シートや表裏面に配線パターンを形成した絶縁基板を介して、ヒートシンク2上に配置される、あるいは、ヒートシンク2との間にモールド樹脂5を介在させて配置される。
これにより、通電によって半導体チップ3において生じた熱を、ヒートシンク2から半導体装置1の外部に逃がすことができる。
【0019】
一対の端子板4の各他端部41は、モールド樹脂5の上面(外面)5aから外部に突出している。各端子板4の他端部41の突出方向の基端板部は、屈曲された屈曲部42となっている。一方、他端部41の突出方向の先端板部は、屈曲部42によって、板厚方向がモールド樹脂5の上面5aに直交するように配され、外部配線(不図示)を半導体チップ3に電気接続させるための外部端子43となっている。この外部端子43には、その板厚方向に貫通して、外部配線を外部端子43に締結させるためのネジ(図示例ではボルト)を挿通させる挿通孔44が形成されている。なお、図示例において、外部端子43は、モールド樹脂5の上面5aから所定量上方に離間して配置されているが、例えばモールド樹脂5の上面5aに接触していても構わない。
そして、一対の外部端子43は、各々の屈曲部42側から互いに近づくように逆向きに延びているものの、互いに間隔をあけて配され、接触はしていない。
【0020】
モールド樹脂5は、直方体形状の外観をなしている。このモールド樹脂5には、その上面5aから窪んでナット6を収容するナット収容部51が一対形成されている。一対のナット収容部51は、各外部端子43の下方に位置するように形成されている。そして、ナット収容部51に収容されたナット6は、その雌ねじ6a(ネジ孔)6aが外部端子43の挿通孔44に連通するように、また、雌ねじ6aの軸線L1がモールド樹脂5の上面5aに直交するように配されている。
【0021】
さらに、モールド樹脂5には、その上面5aから下方に窪むと共に、上面5aに沿って一対の端子板4の配列方向に直交する方向に延びる係合溝53が形成されている。この係合溝53は、一対の端子板4間の隙間に位置するように形成されている。また、係合溝53の延在方向の両端は、図2に示すように、モールド樹脂5の側面5c,5dに開口している。
図1に示すように、係合溝53の延在方向に直交する係合溝53の断面形状は、幅寸法が一定の平行部54と、平行部54よりも幅寸法の広い拡幅部55とをモールド樹脂5の上面5a側から下方に並べるようにして形成されている。なお、図示例における拡幅部55は、モールド樹脂5の上面5a側から下方に向かうにしたがって幅寸法が漸次狭くなる断面三角形状に形成されているが、これに限ることはない。拡幅部55は、例えば図示例とは向きの異なる三角形状、あるいは、矩形状や円形状等の任意の断面形状に形成されていてよい。
【0022】
さらに、本実施形態の半導体装置1は、電気的な絶縁性を有する絶縁部材7を備えている。絶縁部材7は、モールド樹脂5の係合溝53に係合することで一対の外部端子43の間においてモールド樹脂5の上面5aから突出するように配される平板状の絶縁隔壁71と、絶縁隔壁71の突出方向先端から絶縁隔壁71の厚さ方向に延出する平板状のカバー部72とを一体成形して構成されている。
【0023】
絶縁隔壁71の板厚は、係合溝53の平行部54の幅寸法と同等に設定されている。なお、絶縁隔壁71のうちモールド樹脂5の上面5aから突出する部分の幅寸法は、例えば係合溝53の平行部54の幅寸法よりも大きく設定されていてもよい。
そして、絶縁隔壁71の突出方向基端部には、拡幅部55に挿入されることで係合溝53に係合する爪部73が形成されている。爪部73は、絶縁隔壁71の板厚よりも厚く形成されており、係合溝53の拡幅部55に対応する断面形状及び大きさに形成されている。なお、図示例における爪部73は、拡幅部55に対応する断面三角形状に形成されているが、これに限ることはない。
【0024】
このように絶縁隔壁71が構成されているため、例えば、係合溝53が開口するモールド樹脂5の側面5c,5d側から爪部73を拡幅部55に挿入するように、絶縁隔壁71を係合溝53の延在方向にスライドさせることで、絶縁部材7をモールド樹脂5に取り付けることができる。この取付状態においては、絶縁隔壁71の爪部73が係合溝53の平行部54と拡幅部55との段差部分に係合するため、絶縁部材7がモールド樹脂5の上面5a側から上方に抜けることはない。すなわち、本実施形態では、モールド樹脂5の係合溝53及び絶縁隔壁71の爪部73によって、モールド樹脂5及び絶縁隔壁71を互いに係合させる係合手段101が構成されている。
また、絶縁部材7をモールド樹脂5に取り付けた状態では、一対の外部端子43の延出方向先端がそれぞれ絶縁隔壁71に対向し、一対の外部端子43同士が直接対向することはない。言い換えれば、係合溝53の延在方向に沿う絶縁隔壁71の幅寸法は、外部端子43の幅寸法よりも長く設定されている。
【0025】
カバー部72は、絶縁隔壁71の板厚方向に直交する両面から突出するように延びている。そして、絶縁部材7をモールド樹脂5に取り付けた状態では、カバー部72が一対の外部端子43の上方を覆うように配される。また、カバー部72は、その延出方向の先端がナット6に螺着されたネジ90の頭部91に対向するように配される。より具体的に説明すれば、一対の外部端子43に取り付けられた一対のネジ90の頭部91がカバー部72を挟み込むように、カバー部72及びネジ90の頭部91が互いに間隔をあけて一対の外部端子43の配列方向に並べられている。
なお、図示例では、係合溝53の延在方向に沿うカバー部72の幅寸法が、絶縁隔壁71の幅寸法と同等に設定されているが、これに限ることは無く、少なくとも外部端子43の延出方向先端をその幅方向全体にわたって覆うように形成されていればよい。すなわち、絶縁隔壁71及びカバー部72材の幅寸法は、例えば互いに異なっていても構わない。
【0026】
次に、以上のように構成される半導体装置1に対し、外部配線を接続する配線接続方法について説明する。
外部配線を外部端子43に取り付ける場合には、例えばネジ90をナット6に螺着させて外部配線を一対の外部端子43にそれぞれ締結した後に、絶縁部材7をモールド樹脂5に取り付ければよい。また、例えば絶縁部材7をモールド樹脂5に取り付けた後に、ネジ90をナット6に螺着させて外部配線を一対の外部端子43にそれぞれ締結してもよい。
【0027】
本実施形態の半導体装置1では、絶縁隔壁71をモールド樹脂5と別個に成形した上で、絶縁部材7が係合手段101によってモールド樹脂5に対して固定されるようになっている。これにより、同一サイズ・形状のモールド樹脂5に埋設(内蔵)される様々な半導体チップ3のチップ特性に合わせて、様々な大きさの絶縁隔壁71をモールド樹脂5に取り付けることが可能となる。すなわち、同一の金型でモールド樹脂5を成形することができるため、モールド樹脂5の汎用性が向上して、半導体装置1を安価に製造することが可能となる。
また、同一サイズ・形状のモールド樹脂5に対して様々な大きさの絶縁隔壁71を取り付けることができるため、半導体装置1のサイズを必要最小限に抑えて、半導体装置1の小型化も図ることができる。
【0028】
また、本実施形態の半導体装置1によれば、一対の外部端子43の上方を覆うカバー部72が絶縁隔壁71に一体成形されているため、外部端子43を配したモールド樹脂5の上面から突出する絶縁隔壁71の突出高さを低く抑えても、一対の外部端子43間の絶縁距離を延ばすことができる。言い換えれば、半導体装置1のサイズをさらに小さく抑えると同時に、外部端子43間の絶縁距離も十分に確保することが可能となる。
【0029】
さらに、本実施形態の半導体装置1によれば、係合手段101がモールド樹脂5の係合溝53及び絶縁隔壁71の爪部73によって構成されていることで、接着剤等を用いることなく、絶縁隔壁71を確実にモールド樹脂5に固定することが可能となるため、モールド樹脂5に対する絶縁隔壁71の固定を容易に行うことができる。
また、本実施形態では、係合溝53がモールド樹脂5の側面5c,5dに開口しているため、絶縁部材7をモールド樹脂5に対して着脱自在に固定することができる。
【0030】
さらに、本実施形態の半導体装置1において、ネジ90によって外部配線を一対の外部端子43にそれぞれ締結した後に、絶縁部材7をモールド樹脂5に取り付ける配線接続方法によれば、外部配線を締結したネジ90の頭部91が絶縁隔壁71やカバー部72の近くに配置されていても、絶縁隔壁71やカバー部72とネジ90の頭部91を操作する器具(例えばレンチやドライバー等)との干渉を防いで、ネジ90による外部配線の締結を容易に行うことができる。
【0031】
なお、上記第一実施形態では、絶縁隔壁71を係合溝53の延在方向にスライドさせて絶縁部材7をモールド樹脂5に取り付けるとしたが、これに限ることはない。例えば、拡幅部55及び爪部73が図1に示す断面三角形状とされ、かつ、絶縁部材7が弾性変形可能な材料によって形成される場合には、絶縁隔壁71の爪部73をモールド樹脂5の上面5a側から係合溝53に挿入してもよい。このような構成では、係合溝53がモールド樹脂5の側面5c,5dに開口していなくてもよいが、開口しない場合には、絶縁部材7がモールド樹脂5に対して着脱不能に固定されることになる。
【0032】
〔第二実施形態〕
次に、図3を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態に係る半導体装置は、第一実施形態と比較して、モールド樹脂5の上面5aの形状及びモールド樹脂5に対するナット6及び外部端子43の配置が異なっている。その他、第一実施形態と同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図3に示すように、本実施形態の半導体装置11を構成するモールド樹脂5では、その上面5aのうち一対の外部端子43を配置した二つの領域が、互いに傾斜する傾斜面15a,15bとなっている。これら二つの傾斜面15a,15bは、それぞれ外部端子43の延在方向の基端側から先端側に向かうにしたがって高くなるように傾斜している。
そして、各外部端子43は、傾斜面15a,15bと平行するように配されている。また、ナット収容部51は、各傾斜面15a,15bからこれに直交する方向に窪んで形成されている。これにより、ナット収容部51に収容されるナット6は、その雌ねじ6aの軸線L1が各傾斜面15a,15bに直交するように配されている。
【0034】
さらに、モールド樹脂5の係合溝53は、二つの傾斜面15a,15bの上端に形成されている、言い換えれば、モールド樹脂5の上面5aのうち最も高い位置に形成されている。なお、係合溝53の窪み方向は、傾斜面15a,15bの向きに関わらず、第一実施形態と同様に、モールド樹脂5の厚さ方向に設定されている。
以上のように形成されたモールド樹脂5に対して絶縁部材7を取り付けた状態では、各ナット6の軸線L1が、モールド樹脂5の各傾斜面15a,15bから上方に向かうにしたがって、絶縁隔壁71及びカバー部72から漸次離間するように、絶縁隔壁71の突出方向に対して傾斜することになる。
【0035】
本実施形態の半導体装置11によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
さらに、第一実施形態の場合と比較して、ナット6に螺着されるネジ90の頭部91を絶縁隔壁71やカバー部72から離間して位置させることができる。したがって、絶縁部材7がモールド樹脂5に固定された状態であっても、絶縁隔壁71やカバー部72とネジ90の頭部91を操作する器具との干渉を防いで、ナット6に対するネジ90の脱着を容易に行うことが可能となる。
【0036】
〔第三実施形態〕
次に、図4を参照して本発明の第三実施形態について説明する。
この実施形態に係る半導体装置は、第一実施形態と比較して、絶縁部材の構成、及び、モールド樹脂5のうち絶縁部材を取り付ける部分の形状が異なっている。その他、第一実施形態と同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
図4に示すように、本実施形態の半導体装置12を構成する絶縁部材17は、第一実施形態の絶縁部材7と同様に、一対の外部端子43の間でモールド樹脂5の上面5aから突出するように配される平板状の絶縁隔壁74、及び、絶縁隔壁74の突出方向先端から絶縁隔壁74の板厚方向に延出する平板状のカバー部75を備える。なお、カバー部75は、絶縁隔壁74の板厚方向に直交する両面から突出するように延びている。
そして、本実施形態の絶縁部材17は、カバー部75の延出方向の両端に一体に形成される一対の狭持部76も備えている。
【0038】
本実施形態の絶縁隔壁74は、単純な平板状に形成され、第一実施形態の絶縁隔壁74のような爪部を備えていない。なお、モールド樹脂5には、この絶縁隔壁74の突出方向基端部を挿入するための挿入溝56が形成されている。挿入溝56は、第一実施形態の係合溝53と同様に、モールド樹脂5の上面5aから下方に窪むと共に、上面5aに沿って一対の外部端子43の配列方向に直交する方向に延びるように形成され、一対の外部端子43間の隙間に位置している。また、本実施形態では、挿入溝56の延在方向の両端が、モールド樹脂5の側面5c,5d(図2参照)に開口している。そして、挿入溝56の断面形状は、この絶縁隔壁74の突出方向基端部に対応する形状(図示例では断面矩形状)となっている。
また、本実施形態のカバー部75は、一対の外部端子43の上方、及び、ナット6に螺着されたネジ90の頭部91の上方を覆うように形成されている。より具体的に説明すれば、一対の外部端子43の上方全体がカバー部75によって覆われている。
【0039】
絶縁部材17の各狭持部76は、カバー部75から絶縁隔壁74の突出方向とは逆向きに延出している。また、一対の狭持部76の各延出方向先端部には、互いに対向する面から突出する突起77が形成されている。この突起77は、各狭持部76の延出方向先端側から基端側に向けて徐々に突出量が大きくなる鉤状に形成されている。
そして、一対の狭持部76は、絶縁隔壁74の突出方向基端部が挿入溝56に挿入された状態において、モールド樹脂5を側部から挟み込むように、互いに逆向きに向くモールド樹脂5の両側面5e,5fに各々対向するように配置される。一方、モールド樹脂5には、その両側面5e,5f(図2参照)から窪んで、前述した狭持部76の突起77を挿入可能な係合穴57が形成されている。本実施形態における係合穴57は、前述した挿入溝56と同様に、挿入溝56の延在方向に延びる溝状に形成され、係合穴57の延在方向の両端はモールド樹脂5の側面5c,5d(図2参照)に開口している。
【0040】
以上のように、絶縁部材17及びモールド樹脂5が構成されることで、挿入溝56及び係合穴57が開口するモールド樹脂5の側面5c,5dから、絶縁隔壁74の基端部を挿入溝56に挿入するように、また、突起77を係合穴57に挿入するように、絶縁部材17を挿入溝56や係合穴57の延在方向にスライドさせることで、絶縁部材17をモールド樹脂5に対して着脱自在に取り付けることができる。
この取付状態においては、狭持部76の突起77が係合穴57に係合するため、絶縁部材17がモールド樹脂5の上面5a側から上方に抜けることはない。すなわち、本実施形態では、絶縁部材17の狭持部76及びモールド樹脂5の係合穴57によって、モールド樹脂5及び絶縁隔壁74を互いに係合させる係合手段102が構成されている。
また、この取付状態においては、狭持部76のうちモールド樹脂5の上面5aよりも上方に突出する部分によって、一対の外部端子43及びナット6に螺着されたネジ90の頭部91が側方からも覆われることになる。
【0041】
本実施形態の半導体装置12において、外部配線を外部端子43に取り付ける場合には、第一実施形態の場合と同様に、ネジ90をナット6に螺着させて外部配線を一対の外部端子43にそれぞれ締結した後に、絶縁部材17をモールド樹脂5に取り付ければよい。
【0042】
本実施形態の半導体装置12によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
すなわち、係合手段102がモールド樹脂5の係合穴57及び絶縁部材17の一対の狭持部76によって構成されていることで、接着剤等を用いることなく、絶縁隔壁74を確実にモールド樹脂5に固定することが可能となるため、モールド樹脂5に対する絶縁隔壁74の固定を容易に行うことができる。
また、本実施形態の半導体装置12では、カバー部75によってネジ90の頭部91の上方が覆われるため、例えネジ90が導電性を有していても、一対の外部端子43に取り付けられたネジ90の頭部91の間の絶縁距離を確保することができる。
【0043】
さらに、ネジ90の頭部91がカバー部75及びカバー延長部78によって覆われることで、ネジ90の頭部91に触れることを確実に防止できるため、ネジ90の頭部91に外力が加えられて外部端子43に対する外部配線の締結状態が緩んでしまうことを確実に防ぐことができる。
また、本実施形態の半導体装置12によれば、絶縁隔壁74の基端部が挿入溝56に挿入されていることで、モールド樹脂5の上面5aと絶縁隔壁74の基端部との間に隙間が生じることを確実に防止できるため、挿入溝56が無い場合と比較して、一対の外部端子43間の絶縁距離をより確実に確保することができる。
【0044】
この第三実施形態の構成は、前述した第一、第二実施形態にも適用することが可能である。例えば、半導体装置は、第一実施形態の係合手段101及び第三実施形態の係合手段102の両方を有していてもよい。また、第三実施形態のカバー部75は、第一実施形態のカバー部72と同様に、例えば、ネジ90の頭部91の上方を覆わず、例えば一対の外部端子43の上方だけを覆うように形成されていてもよい。
【0045】
なお、上記第三実施形態では、絶縁部材17を挿入溝56や係合穴57の延在方向にスライドさせることで、絶縁部材17をモールド樹脂5に取り付けるとしたが、これに限ることは無い。例えば、突起部が図4に示す鉤状に形成され、かつ、絶縁部材17が弾性変形可能な材料によって形成される場合には、絶縁部材17をモールド樹脂5の上面5a側から取り付けてもよい。このような構成では、挿入溝56や係合穴57がモールド樹脂5の側面5c,5dに開口していなくてもよい。
【0046】
また、上記第三実施形態の絶縁部材17は、狭持部76を備えるとしたが、少なくとも絶縁隔壁74及びカバー部75を備えていればよい。この場合には、挿入溝56の代わりに、例えば図5に示すように、第一実施形態と同じ係合溝53をモールド樹脂5に形成すると共に、絶縁隔壁74の突出方向基端部に第一実施形態と同様の爪部73を形成すればよい。
【0047】
そして、図5に示す半導体装置13においては、第三実施形態の狭持部76と同様に、外部端子43及びネジ90の頭部91を側方から覆うカバー延長部78が形成されている。このカバー延長部78の延長方向先端は、図示例のようにモールド樹脂5の上面5aに当接してもよいが、例えば上面5aから離間していても構わない。また、延長方向先端は、図示例のようにモールド樹脂5の上面5aに対向していてもよいが、第三実施形態の狭持部76の場合と同様にモールド樹脂5の上面5aに対向しなくてもよい。
なお、図4,5に示す絶縁部材17は、例えば狭持部76やカバー延長部78を備えず、少なくとも絶縁隔壁74及びカバー部75を備えて構成されていればよい。
【0048】
以上、上記実施形態により本発明の詳細を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、絶縁部材7,17は、カバー部72,75を備えるとしたが、少なくとも絶縁隔壁71,74を備えて構成されていればよい。
【0049】
また、本願発明の半導体装置は、上述した全ての実施形態の構成に限らず、少なくとも半導体チップ3を内蔵した本体部と、半導体チップ3に電気接続されて本体部の外面に配される複数の外部端子43とを備えた構成に適用することができる。
すなわち、本願発明の半導体装置の本体部は、上記実施形態のように半導体チップ3を埋設するモールド樹脂5によって構成されてもよいが、例えば半導体チップ3を収容する中空ケースや、中空ケース内にポッティング樹脂を充填して半導体チップ3を封止したものによって構成されてもよい。
【0050】
また、ネジ止めによって外部配線を外部端子43に締結させる場合、前述の本体部は、モールド樹脂5のナット収容部51にナット6を収容して構成されることに限らず、少なくとも外部端子43に外部配線を締結させるためのネジ90を螺着させるネジ孔を形成して構成されていればよい。したがって、前述の本体部は、例えば、モールド樹脂5や中空ケースにナット6を封止して構成されてもよいし、モールド樹脂5や中空ケースに直接ネジ孔を形成して構成されてもよい。
【0051】
さらに、本願発明の半導体装置は、上述した実施形態のように、一つの半導体チップ3及び一対の外部端子43を備える半導体装置に適用されることに限らず、例えば、複数の半導体チップ3及び三つ以上の外部端子43を備える半導体装置にも適用可能である。さらに、複数の外部端子の延出方向は、互いに近づく方向に限らず、任意の方向に設定されていてよい。
したがって、絶縁隔壁71,74は、互いに隣り合う一対の外部端子43の延出方向先端の間に配されることに限らず、少なくとも互いに隣り合う一対の外部端子43の間に配されていればよい。
【符号の説明】
【0052】
1,11,12,13 半導体装置
3 半導体チップ
4 端子板
43 外部端子
5 モールド樹脂
5a 上面(外面)
5e,5f 両側面
15a,15b 傾斜面
51 ナット収容部
53 係合溝
57 係合穴
6 ナット
6a 雌ねじ(ネジ孔)
L1 軸線
7,17 絶縁部材
71,74 絶縁隔壁
72,75 カバー部
73 爪部
76 狭持部
77 突起
90 ネジ
91 頭部
101,102 係合手段
図1
図2
図3
図4
図5