(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正相分電圧信号抽出手段、前記逆相分電圧信号抽出手段、前記正相分電流信号抽出手段、または前記逆相分電流信号抽出手段が用いる複素係数フィルタは、帯域通過型の複素係数フィルタである、請求項1に記載の単独運転検出装置。
前記正相分電圧信号抽出手段、前記逆相分電圧信号抽出手段、前記正相分電流信号抽出手段、または前記逆相分電流信号抽出手段が用いる複素係数フィルタは、帯域阻止型の複素係数フィルタである、請求項1に記載の単独運転検出装置。
前記正相分電圧信号抽出手段、前記逆相分電圧信号抽出手段、前記正相分電流信号抽出手段、または前記逆相分電流信号抽出手段は、複数の複素係数フィルタを多段に接続したフィルタを用いる、請求項4または5に記載の単独運転検出装置。
前記単独運転判定手段は、前記正相分の系統回路定数の変化に基づいて単独運転と判定でき、かつ、前記逆相分の系統回路定数の変化に基づいて単独運転と判定できる場合にのみ、単独運転と判定する、請求項1ないし7のいずれかに記載の単独運転検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を、本発明に係る単独運転検出装置を系統連系インバータシステムのインバータ制御回路に備えた場合を例として、図面を参照して具体的に説明する。
【0030】
図1は、第1実施形態に係る系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。
【0031】
同図に示すように、系統連系インバータシステムAは、直流電源1、インバータ装置2、インバータ制御装置3、電流センサ4、電圧センサ5、単独運転検出装置6、電流注入装置7、および開閉器8を備えている。直流電源1は、インバータ装置2に接続している。インバータ装置2は、開閉器8を介して、U相、V相、W相の出力電圧の出力ラインで、三相交流の電力系統Bに接続している。電流センサ4および電圧センサ5は、インバータ装置2の出力側に設置されている。インバータ制御装置3は、インバータ装置2に接続されている。系統連系インバータシステムAは、直流電源1が出力する直流電力を交流電力に変換して、電力系統Bおよび負荷C供給する。なお、系統連系インバータシステムAの構成は、これに限られない。例えば、インバータ装置2の制御に必要な他のセンサを設けていてもよい。
【0032】
直流電源1は、直流電力を出力するものであり、例えば太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源1は、生成された直流電力を、インバータ装置2に出力する。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源1は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池であってもよいし、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0033】
インバータ装置2は、直流電源1から入力される直流電圧を交流電圧に変換して、負荷Cおよび電力系統Bに出力するものである。インバータ装置2は、図示しない3組6個のスイッチング素子を備えたPWM制御型三相インバータ回路を備えている。当該インバータ回路は、インバータ制御装置3から入力されるPWM信号に基づいて、各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、直流電源1から入力される直流電圧を交流電圧に変換する。また、インバータ装置2は、内蔵するフィルタ回路(図示しない)によって、スイッチングによる高周波成分を除去し、内蔵する変圧回路によって、交流電圧を系統電圧とほぼ同一のレベルに昇圧または降圧する。なお、インバータ装置2の構成は、これに限られない。例えば、インバータ回路はマルチレベルインバータ回路であってもよい。また、変圧回路を設けない、いわゆるトランスレス方式としてもよい。また、直流電源1とインバータ装置2との間にDC/DCコンバータ回路を設けるようにしてもよい。
【0034】
インバータ制御装置3は、インバータ装置2を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。インバータ制御装置3は、電流センサ4から入力される電流信号I、および、電圧センサ5から入力される電圧信号Vに基づいて、系統連系インバータシステムAが出力する出力電圧の波形を指令するための指令値信号を生成し、当該指令値信号に基づいて生成されるパルス信号をPWM信号として出力する。インバータ装置2は、入力されるPWM信号に基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、指令値信号に対応した波形の交流電圧を出力する。
【0035】
インバータ制御装置3は、指令値信号生成部31およびPWM信号生成部32を備えている。
【0036】
指令値信号生成部31は、電流センサ4から電流信号Iを入力され、電圧センサ5から電圧信号Vを入力され、系統連系インバータシステムAの出力電力の制御や出力電流の制御を行うための補償信号を生成し、これに基づいて指令値信号を生成する。生成された指令値信号は、PWM信号生成部32に出力される。なお、各制御や指令値信号の生成方法の説明は省略する。
【0037】
PWM信号生成部32は、入力される指令値信号と、所定の周波数(例えば、4kHz)の三角波信号として生成されたキャリア信号とに基づいて、三角波比較法によりPWM信号を生成する。三角波比較法では、指令値信号とキャリア信号とがそれぞれ比較され、例えば、指令値信号がキャリア信号より大きい場合にハイレベルとなり、小さい場合にローレベルとなるパルス信号がPWM信号として生成される。生成されたPWM信号は、インバータ装置2に出力される。また、PWM信号生成部32は、単独運転検出装置6から単独運転検出信号(停止信号)を入力された場合に、PWM信号の生成を停止する。これにより、インバータ装置2の電力変換動作は停止する。
【0038】
電流センサ4は、電力系統Bとの連系点での各相を流れる電流(すなわち、系統連系インバータシステムAの出力電流)を検出するものである。検出された電流信号I(Iu,Iv,Iw)は、インバータ制御装置3および単独運転検出装置6に入力される。電圧センサ5は、電力系統Bとの連系点の各相の電圧を検出するものである。検出された電圧信号V(Vu,Vv,Vw)は、インバータ制御装置3および単独運転検出装置6に入力される。なお、系統連系インバータシステムAが電力系統Bに連系している場合、連系点の電圧は系統電圧とほぼ一致している。
【0039】
単独運転検出装置6は、単独運転を検出するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。単独運転検出装置6は、電流注入装置7に電流注入の指示信号を周期的に出力して、電流注入装置7に次数間高調波の電流を電力系統Bに注入させる。単独運転検出装置6は、電流注入装置7が次数間高調波の電流を注入したときに検出される電圧信号および電流信号に基づいて、単独運転を検出する。単独運転の検出方法の詳細については後述する。単独運転検出装置6は、単独運転を検出した場合に単独運転検出信号を出力する。単独運転検出装置6が出力した単独運転検出信号は、停止信号としてインバータ制御装置3のPWM信号生成部32に入力され、開放信号として開閉器8に入力される。
【0040】
電流注入装置7は、電力系統Bに次数間高調波の単相電流を注入するものであり、インバータ回路および変圧器などにより構成されている。電流注入装置7は、単独運転検出装置6から入力される指示信号に応じて、次数間高調波の単相電流を電力系統Bの所定の相間(例えば、U相V相間)に注入する。本実施形態では、注入する次数間高調波として、例えば、2.4次高調波を用いている。
【0041】
開閉器8は、系統連系インバータシステムAと負荷Cとの接続を切り離すものである。開閉器8は、単独運転検出装置6から単独運転検出信号(開放信号)が入力された場合に、系統連系インバータシステムAと負荷Cとの接続を切り離す。これにより、系統連系インバータシステムAの単独運転状態が回避される。
【0042】
次に、単独運転検出装置6の詳細について、
図2〜
図5を参照して説明する。
【0043】
図2は、単独運転検出装置6の内部構成を説明するためのブロック図である。
【0044】
同図に示すように、単独運転検出装置6は、電圧信号三相/二相変換部61、正相分電圧信号抽出部62a、逆相分電圧信号抽出部62b、電流信号三相/二相変換部63、正相分電流信号抽出部64a、逆相分電流信号抽出部64b、正相分系統回路定数算出部65、逆相分系統回路定数算出部66、単独運転判定部67、および、判定指示部68を備えている。なお、本発明は能動方式の単独運転検出方法に関するものなので、能動方式の単独運転検出のための構成のみを記載して説明している。実際には、単独運転検出装置6は受動方式の単独運転検出のための構成も備えているが、本実施形態ではその記載および説明を省略している。
【0045】
電圧信号三相/二相変換部61は、電圧センサ5より入力される3つの電圧信号Vu,Vv,Vwを、α軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβに変換するものである。電圧信号三相/二相変換部61は、いわゆる三相/二相変換処理(αβ変換処理)を行うものであり、電圧信号Vu,Vv,Vwを互いに直交するα軸成分とβ軸成分とにそれぞれ分解して、各軸成分をまとめることでα軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβを生成する。
【0046】
電圧信号三相/二相変換部61で行われる変換処理は、下記(1)式に示す行列式で表される。
【数3】
【0047】
正相分電圧信号抽出部62aは、電圧信号三相/二相変換部61より入力されるα軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβから、次数間高調波の正相分の信号を抽出するものであり、複素係数バンドパスフィルタ(帯域通過型の複素係数フィルタ)を備えている。
【0048】
当該複素係数バンドパスフィルタは、z変換表現による伝達関数H(z)が下記(2)式で表される複素係数の1次IIRフィルタで構成されている。下記(2)式において、複素係数a
1におけるf
dは、通過帯域の中心周波数f
0をサンプリング周波数で正規化した正規化周波数である。また、Ω
dは、正規化角周波数である。例えば、サンプリング周波数をf
srとすると、正規化周波数f
dはf
0/f
sr、正規化角周波数Ω
dは2π・f
d=2π・(f
0/f
sr)となる。なお、正規化角周波数Ω
dは、−π<Ω
d<πである。また、rは通過帯域の帯域幅を決めるパラメータ(0<r<1)であり、jは虚数単位、exp()は自然対数の底eの指数関数である。
【0050】
図3は、上記(2)式の演算処理を示すブロック図である。同図に示すように、複素係数バンドパスフィルタは、上記(2)式の分母の演算処理がフィードバック回路で構成され、そのフィードバック回路の出力に分子の係数b
0を乗算する回路によって構成される。
【0051】
図3に示すブロック図において、u[k](k:離散時間を表すインデックス番号)は入力データ、x[k]は状態データ、y[k]は出力データである。入力データu[k]、状態データx[k]および出力データy[k]の間には、
x[k]=r・exp(j・Ω
d)・x[k-1]+u[k] …(3)
y[k]=(1−r)・x[k] …(4)
が成立する。
【0052】
複素係数バンドパスフィルタにおいては、入力データu[k]が複素データか実データ(複素データの虚数部が「0」のデータ)かに関わらず、状態データx[k]および出力データy[k]が複素データとなる。したがって、入力データu[k]、状態データx[k]および出力データy[k]をそれぞれu[k]=u
r[k]+j・u
j[k]、x[k]=x
r[k]+j・x
j[k]、y[k]=y
r[k]+j・y
j[k]の複素データとし、複素係数a
1をa
1=r・exp(j・Ω
d)=a
r+j・a
j=r・cos(Ω
d)+j・r・sin(Ω
d)として、上記(3)式および(4)式に代入して、実数部と虚数部の関係式に分けると、
x
r[k]=r・cos(Ω
d)・x
r[k-1]−r・sin(Ω
d)・x
j[k-1]+u
r[k] ・・・ (5)
x
j[k]=r・cos(Ω
d)・x
j[k-1]+r・sin(Ω
d)・x
r[k-1]+u
j[k] ・・・ (6)
y
r[k]=(1−r)・x
r[k] ・・・ (7)
y
j[k]=(1−r)・x
j[k] ・・・ (8)
となる。
【0053】
図4は、上記(5)式〜(8)式に基づき複素係数バンドパスフィルタの複素演算処理を行う回路構成を示す図である。同図において、係数a
rおよび係数a
jは、それぞれ複素係数a
1=r・exp(j・Ω
d)の実数部および虚数部であり、a
r=r・cos(Ω
d)、a
j=r・sin(Ω
d)である。
【0054】
同図に示すように、複素係数バンドパスフィルタは、6個の乗算器12a〜12fと、2個の加算器12g,12hと、2個の遅延回路12i,12jで構成される。遅延回路12iは、状態データの実数部x
r[k-1]を生成する回路であり、遅延回路12jは、状態データの虚数部x
j[k-1]を生成する回路である。乗算器12a,12bはそれぞれ上記(5)式の第1項と第2項(負の符号を含む)を演算する演算器であり、加算器12gは上記(5)式の第1項と第2項と第3項を加算する演算器である。したがって、加算器12gから上記(5)式で示す状態データの実数部x
r[k]が出力される。
【0055】
一方、乗算器12c,12dはそれぞれ上記(6)式の第1項と第2項を演算する演算器であり、加算器12hは上記(6)式の第1項と第2項と第3項を加算する演算器である。したがって、加算器12hから上記(6)式で示す状態データの虚数部x
j[k]が出力される。また、乗算器12e,12fはそれぞれ上記(7)式および(8)式を演算する演算器である。
【0056】
本実施形態では、電圧信号三相/二相変換部61が、3つの電圧信号Vu,Vv,Vwを、互いに直交するα軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβに変換している。α軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβは、それぞれ複素データu
r+j・u
jの実数部と虚数部に対応させることができるので、α軸電圧信号Vαのサンプリングデータを入力データの実数部u
r[k]として加算器12gに入力し、β軸電圧信号Vβのサンプリングデータを入力データの虚数部u
j[k]として加算器12hに入力している。
【0057】
α軸電圧信号Vαのサンプリングデータが入力される毎に、遅延回路12i、乗算器12a,12b,12eおよび加算器12gで上記(5)式および(7)式の演算処理が繰り返され、これにより、乗算器12eからは出力データy
r[k]が出力される。出力データy
r[k]は、α軸電圧信号Vαから正規化角周波数Ω
dに対応する成分のみを抽出したものとなる。また、β軸電圧信号Vβのサンプリングデータが入力される毎に、遅延回路12j、乗算器12c,12d,12fおよび加算器12hで上記(6)式および(8)式の演算処理が繰り返され、これにより、乗算器12fからは出力データy
j[k]が出力される。出力データy
j[k]は、β軸電圧信号Vβから正規化角周波数Ω
dに対応する成分のみを抽出したものとなる。
【0058】
バンドパスフィルタを実係数の2次IIRフィルタで構成した場合、その2次IIRフィルタの伝達関数H(z)(z=exp(j・ω))は、
H(z)=(1-r
2+2(r-1)・r・cos(Ω
d)・z
-1)/(1-2r・cos(Ω
d)・z
-1+ r
2・z
-2)
で表わされる。この伝達関数H(z)の振幅特性M(ω)を求めると、
【数5】
となり、(1−2r・cos(Ω
d±ω)+r
2)=0を満たすωで極が表れるから、2次IIRフィルタはその極の周波数を通過させる特性を有する。r≒1とすると、cos(Ω
d±ω)≒1より、2次IIRフィルタを通過させる正規化周波数f
dはf
d=±Ω
d/2πとなるから、実係数の2次IIRフィルタでは、正相分、逆相分とも通過させることになる。
【0059】
一方、上記(2)式に示す伝達関数H(z)の振幅特性M(ω)求めると、
M(ω)=(1−r)/√{1−2r・cos(Ω
d−ω)+r
2}
となり、(1−2r・cos(Ω
d−ω)+r
2)=0を満たすωだけに極が表れる。したがって、複素係数の1次IIRフィルタを通過させる正規化周波数f
dはf
d=Ω
d/2πとなるから、複素係数の1次IIRフィルタでは、正相分または逆相分のいずれか一方のみを通過させることができる。
【0060】
正相分電圧信号抽出部62aは、電圧信号三相/二相変換部61より入力されるα軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβから、注入された次数間高調波の正相分の信号を抽出するものである。抽出された正相分電圧信号Vαp,Vβpは、正相分系統回路定数算出部65に出力される。正相分電圧信号抽出部62aが備える複素係数バンドパスフィルタの通過帯域を決定する正規化角周波数Ω
dとして、電力系統Bに注入した次数間高調波の角周波数を正規化した正規化角周波数が、あらかじめ設定されている。注入した次数間高調波が2.4次高調波の場合、系統電圧の基本波(正相分)の角周波数ω
0(例えば、ω
0=120π[rad/sec](60[Hz]))を正規化した正規化角周波数をω
dとすると、2.4ω
dがあらかじめ設定されている。正相分電圧信号抽出部62aは、α軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβを入力データu
r[k]およびu
j[k](
図4参照)として複素係数バンドパスフィルタに入力し、出力データy
r[k]およびy
j[k]を正相分電圧信号Vαp,Vβpとして出力する。
【0061】
図5(a)は、正相分電圧信号抽出部62aが備える複素係数バンドパスフィルタの周波数特性を示す図である。通過帯域の中心角周波数を2.4次高調波の角周波数2.4ω
0としているので、その他の角周波数の信号を好適に除去して、2.4次高調波の正相分の信号のみを抽出することができる。
【0062】
逆相分電圧信号抽出部62bは、電圧信号三相/二相変換部61より入力されるα軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβから、注入された次数間高調波の逆相分の信号を抽出するものである。抽出された逆相分電圧信号Vαn,Vβnは、逆相分系統回路定数算出部66に出力される。逆相分電圧信号抽出部62bが備える複素係数バンドパスフィルタの通過帯域を決定する正規化角周波数Ω
dとして、電力系統Bに注入した次数間高調波の逆相分の角周波数を正規化した正規化角周波数が、あらかじめ設定されている。逆相分は正相分とは相順が逆なので、逆相分の角周波数は正相分の角周波数の負の値となる。つまり、正相分の角周波数2.4ω
0の負の値である「−2.4ω
0」を正規化した「−2.4ω
d」が、正規化角周波数Ω
dとして設定されている。逆相分電圧信号抽出部62bは、α軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβを入力データu
r[k]およびu
j[k](
図4参照)として複素係数バンドパスフィルタに入力し、出力データy
r[k]およびy
j[k]を逆相分電圧信号Vαn,Vβnとして出力する。
【0063】
図5(b)は、逆相分電圧信号抽出部62bが備える複素係数バンドパスフィルタの周波数特性を示す図である。通過帯域の中心角周波数を2.4次高調波の逆相分の角周波数「−2.4ω
0」としているので、その他の角周波数の信号を好適に除去して、2.4次高調波の逆相分の信号のみを抽出することができる。
【0064】
なお、正相分電圧信号抽出部62aおよび逆相分電圧信号抽出部62bが備える複素係数バンドパスフィルタは、上記(2)式に示す伝達関数H(z)のものに限定されない。例えば、複素係数の2次以上のIIRフィルタなどで構成された複素係数バンドパスフィルタであってもよい。
【0065】
電流信号三相/二相変換部63は、電流センサ4より入力される3つの電流信号Iu,Iv,Iwを、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβに変換するものである。電流信号三相/二相変換部63は、いわゆる三相/二相変換処理(αβ変換処理)を行うものであり、電流信号Iu,Iv,Iwを互いに直交するα軸成分とβ軸成分とにそれぞれ分解して、各軸成分をまとめることでα軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβを生成する。
【0066】
電流信号三相/二相変換部63で行われる変換処理は、下記(9)式に示す行列式で表される。
【数6】
【0067】
正相分電流信号抽出部64aは、電流信号三相/二相変換部63より入力されるα軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβから、注入された次数間高調波の正相分の信号を抽出するものであり、正相分電圧信号抽出部62aと同様の複素係数バンドパスフィルタを備えている。抽出された正相分電流信号Iαp,Iβpは、正相分系統回路定数算出部65に出力される。正相分電流信号抽出部64aが備える複素係数バンドパスフィルタの通過帯域を決定する正規化角周波数Ω
dにも、正相分電圧信号抽出部62aと同様、正規化角周波数2.4ω
dがあらかじめ設定されている。正相分電流信号抽出部64aは、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβを入力データu
r[k]およびu
j[k](
図4参照)として複素係数バンドパスフィルタに入力し、出力データy
r[k]およびy
j[k]を正相分電流信号Iαp,Iβpとして出力する。正相分電流信号抽出部64aが備える複素係数バンドパスフィルタの周波数特性も
図5(a)の特性を示すので、角周波数2.4ω
0以外の角周波数の信号を好適に除去して、2.4次高調波の正相分の信号のみを抽出することができる。
【0068】
逆相分電流信号抽出部64bは、電流信号三相/二相変換部63より入力されるα軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβから、注入された次数間高調波の逆相分の信号を抽出するものであり、逆相分電圧信号抽出部62bと同様の複素係数バンドパスフィルタを備えている。抽出された逆相分電流信号Iαn,Iβnは、逆相分系統回路定数算出部66に出力される。逆相分電流信号抽出部64bが備える複素係数バンドパスフィルタの通過帯域を決定する正規化角周波数Ω
dにも、逆相分電圧信号抽出部62bと同様、正規化角周波数「−2.4ω
d」があらかじめ設定されている。逆相分電流信号抽出部64bは、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβを入力データu
r[k]およびu
j[k](
図4参照)として複素係数バンドパスフィルタに入力し、出力データy
r[k]およびy
j[k]を逆相分電流信号Iαn,Iβnとして出力する。逆相分電流信号抽出部64bが備える複素係数バンドパスフィルタの周波数特性も
図5(b)の特性を示すので、角周波数「−2.4ω
0」以外の角周波数の信号を好適に除去して、2.4次高調波の逆相分の信号のみを抽出することができる。
【0069】
なお、正相分電流信号抽出部64aおよび逆相分電流信号抽出部64bが備える複素係数バンドパスフィルタは、上記(2)式に示す伝達関数H(z)のものに限定されない。例えば、複素係数の2次以上のIIRフィルタなどで構成された複素係数バンドパスフィルタであってもよい。
【0070】
正相分系統回路定数算出部65は、正相分の系統回路定数を算出するものである。本実施形態では、正相分の系統回路定数としてアドミタンスの絶対値を算出している。正相分系統回路定数算出部65は、正相分電圧信号抽出部62aより入力される正相分電圧信号Vαp,Vβpと、正相分電流信号抽出部64aより入力される正相分電流信号Iαp,Iβpとから、下記(10)式によって正相分のアドミタンスの絶対値Ypを算出する。算出された正相分のアドミタンスの絶対値Ypは、単独運転判定部67に出力される。
【数7】
【0071】
逆相分系統回路定数算出部66は、逆相分の系統回路定数を算出するものである。本実施形態では、逆相分の系統回路定数としてアドミタンスの絶対値を算出している。逆相分系統回路定数算出部66は、逆相分電圧信号抽出部62bより入力される逆相分電圧信号Vαn,Vβnと、逆相分電流信号抽出部64bより入力される逆相分電流信号Iαn,Iβnとから、下記(11)式によって逆相分のアドミタンスの絶対値Ynを算出する。算出された逆相分のアドミタンスの絶対値Ynは、単独運転判定部67に出力される。
【数8】
【0072】
単独運転判定部67は、系統連系インバータシステムAが単独運転状態であるか否かを判定するものである。単独運転判定部67は、判定指示部68から判定の指示信号が入力されたときに判定を行い、単独運転状態であると判定した場合に単独運転検出信号を出力する。単独運転判定部67は、正相分系統回路定数算出部65から入力される正相分のアドミタンスの絶対値Ypがあらかじめ設定された所定値より小さく、かつ、逆相分系統回路定数算出部66が算出した逆相分のアドミタンスの絶対値Ynがあらかじめ設定された所定値より小さくなった場合に、単独運転状態であると判定する。
【0073】
正相分系統回路定数算出部65が算出した正相分のアドミタンスの絶対値Ypは、連系点からみた電力系統Bの注入された次数間高調波についての正相分のアドミタンスの大きさを示している。また、逆相分系統回路定数算出部66が算出した逆相分のアドミタンスの絶対値Ynは、連系点からみた電力系統Bの注入された次数間高調波についての逆相分のアドミタンスの大きさを示している。系統連系インバータシステムAが単独運転状態の場合の連系点からみた電力系統Bのアドミタンスの絶対値は、連系状態と比べて小さくなる。したがって、検出されたアドミタンスの絶対値があらかじめ設定された所定値より小さくなった場合に単独運転状態であると判定できる。また、三相交流の電力系統Bの相間に単相電流を注入することは、大きさの等しい正相と逆相の三相電流を同時に注入することと等価である。本実施形態では、次数間高調波の正相分のアドミタンスの絶対値による判定と、逆相分のアドミタンスの絶対値による判定との2重の判定を行うことで、誤検出を防ぐようにしている。
【0074】
なお、単独運転状態の判定の方法は上述したものに限られない。上述した判定方法に加えて、正相分のアドミタンスの絶対値Ypと逆相分のアドミタンスの絶対値Ynとの差に基づく判定を追加してもよい。当該判定は、定常時は正相分のアドミタンスの絶対値Ypと逆相分のアドミタンスの絶対値Ynとがほぼ等しく、系統過渡時は正相分のアドミタンスの絶対値Ypと逆相分のアドミタンスの絶対値Ynとが異なることを利用したものである。また、正相分のアドミタンスの絶対値Ypによる判定または逆相分のアドミタンスの絶対値Ynによる判定のいずれか一方で単独運転と判定された場合に単独運転状態であると判定するようにしてもよいし、正相分のアドミタンスの絶対値Ypによる判定のみで単独運転状態であると判定するようにしてもよい。また、上述した各判定を組み合わせて判定するようにしてもよい。
【0075】
なお、正相分系統回路定数算出部65および逆相分系統回路定数算出部66が算出する系統回路定数はアドミタンスの絶対値に限られず、インピーダンスの絶対値としてもよい。この場合、単独運転判定部67は、算出されたインピーダンスの絶対値があらかじめ設定された所定値より大きくなったか否かで判定するようにすればよい。
【0076】
判定指示部68は、単独運転状態の判定を指示するものであり、周期的に電流注入装置7に電流注入の指示信号を出力して、合わせて、単独運転判定部67に判定の指示信号を出力する。なお、判定指示部68を設けずに、電流注入装置7が周期的に電流注入を行い、これに同期して単独運転判定部67が判定を行うようにしてもよい。また、電流注入装置7を設けずに、インバータ装置2が次数間高調波の単相電流を注入するようにしてもよい。この場合、判定指示部68が周期的にインバータ制御装置3の指令値信号生成部31に電流注入の指示信号を出力して、指令値信号生成部31が次数間高調波を重畳させて指令値信号を生成するようにすればよい。
【0077】
本実施形態において、3つの電圧信号Vu,Vv,Vwが互いに直交するα軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβに変換され、3つの電流信号Iu,Iv,Iwが互いに直交するα軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβに変換される。そして、複素係数バンドパスフィルタによって、α軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβから、注入された次数間高調波の正相分電圧信号Vαp,Vβpおよび逆相分電圧信号Vαn,Vβnがそれぞれ抽出され、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβから、当該次数間高調波の正相分電流信号Iαp,Iβpおよび逆相分電流信号Iαn,Iβnがそれぞれが抽出される。そして、抽出された信号から正相分のアドミタンスの絶対値Ypおよび逆相分のアドミタンスの絶対値Ynが算出され、これに基づいて単独運転が判定される。複素係数バンドパスフィルタを用いるので、次数間高調波の正相分および逆相分の信号を簡単な処理でそれぞれ抽出することができる。
【0078】
上記第1実施形態においては、複素係数バンドパスフィルタを用いて次数間高調波の正相分の信号および逆相分の信号を抽出する場合について説明したが、複素係数ノッチフィルタ(帯域阻止型の複素係数フィルタ)を用いてこれらの信号を抽出するようにしてもよい。以下に、複素係数ノッチフィルタを用いる場合を第2実施形態として説明する。
【0079】
第2実施形態に係る単独運転検出装置の内部構成を説明するためのブロック図は、
図2に示す第1実施形態に係る単独運転検出装置6のものにおいて、正相分電圧信号抽出部62a、逆相分電圧信号抽出部62b、正相分電流信号抽出部64a、および逆相分電流信号抽出部64bを、それぞれ、複数の複素係数ノッチフィルタを備えた、正相分電圧信号抽出部62a’(後述する
図8参照)、逆相分電圧信号抽出部62b’、正相分電流信号抽出部64a’、および逆相分電流信号抽出部64b’に変更したものになる(なお、正相分電圧信号抽出部62a’以外は図示しない。)。正相分電圧信号抽出部62a’、逆相分電圧信号抽出部62b’、正相分電流信号抽出部64a’、および逆相分電流信号抽出部64b’は、抽出したい成分以外の成分の通過を抑制することで所望の成分を抽出する。
【0080】
正相分電圧信号抽出部62a’、逆相分電圧信号抽出部62b’、正相分電流信号抽出部64a’、および逆相分電流信号抽出部64b’が備える複素係数ノッチフィルタは、z変換表現による伝達関数H(z)が下記(12)式で表される複素係数の1次IIRフィルタで構成されている。下記(12)式において、Ω
dは阻止帯域の正規化中心角周波数(−π<Ω
d<π)であり、rは阻止帯域の帯域幅を決めるパラメータ(0<r<1)であり、jは虚数単位、exp()は自然対数の底eの指数関数である。
【0082】
図6は、上記(12)式の演算処理を示すブロック図である。
図6は、
図3に示すブロック図に対して、出力データy[k]を入力データu[k]から減算した値を新しく出力データe[k]として出力する回路を追加したものである。出力データはe[k]となるので、以下では、y[k]を単にデータy[k]と記載する。
図6に示すブロック図の詳細説明は省略する。
【0083】
図7は、複素係数ノッチフィルタの複素演算処理を行う回路構成を示す図である。
図7は、
図4に示すブロック図に対して、実数部の乗算器12eの後段に加算器12nを追加し、当該加算器12nで入力データの実数部u
r[k]からデータy[k]の実数部y
r[k]を減算して出力データの実数部e
r[k]を出力する構成としている。また、虚数部の乗算器12fの後段に加算器12oを追加し、当該加算器12oで入力データの虚数部u
j[k]からデータy[k]の虚数部y
j[k]を減算して出力データの虚数部e
j[k]を出力する構成としている。
図7に示す回路の演算処理の詳細説明は省略する。
【0084】
乗算器12eより出力されるデータy
r[k]を入力データu
r[k]から減算した値が、出力データe
r[k]として出力される。出力データe
r[k]は、入力データu
r[k]から正規化角周波数Ω
dに対応する成分のみを抑制したものとなる。また、乗算器12fより出力されるデータy
j[k]を入力データu
j[k]から減算した値が、出力データe
j[k]として出力される。出力データe
j[k]は、入力データu
j[k]から正規化角周波数Ω
dに対応する成分のみを抑制したものとなる。
【0085】
図8は、正相分電圧信号抽出部62a’の内部構成を説明するためのブロック図である。
【0086】
図8に示す正相分電圧信号抽出部62a’は、6つの複素係数ノッチフィルタNF1〜NF6を多段に接続したフィルタを備えている。複素係数ノッチフィルタNF1の阻止帯域を決定する正規化角周波数Ω
dとして、系統電圧の基本波の正相分の角周波数「ω
0」を正規化した「ω
d」があらかじめ設定されている。複素係数ノッチフィルタNF1は、α軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβを入力データu
r[k]およびu
j[k]として複素係数ノッチフィルタに入力し、出力データe
r[k]およびe
j[k]を複素係数ノッチフィルタNF2に出力する。複素係数ノッチフィルタNF1は、α軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβのうち、基本波の正相分の信号を抑制して出力する。同様に、複素係数ノッチフィルタNF2〜NF6は、それぞれ基本波の逆相分、2.4次高調波の逆相分、5次高調波(正相分)、7次高調波(正相分)、11次高調波(正相分)を抑制するためのものである。複素係数ノッチフィルタNF2〜NF6の阻止帯域を決定する正規化角周波数Ω
dとして、それぞれ「−ω
d」、「−2.4ω
d」、「−5ω
d」、「7ω
d」、「−11ω
d」があらかじめ設定されている。
【0087】
図9(a)は、正相分電圧信号抽出部62a’の周波数特性を示す図である。同図によると、基本波成分(角周波数「ω
0」)、基本波の逆相分(角周波数「−ω
0」)、2.4次高調波の逆相分(角周波数「−2.4ω
0」)、5次高調波成分(角周波数「−5ω
0」)、7次高調波成分(角周波数「7ω
0」)、11次高調波成分(角周波数「−11ω
0」)が抑制され、その他の成分(2.4次高調波の正相分)が通過される。したがって、正相分電圧信号抽出部62a’は、2.4次高調波の正相分のみを好適に通過させることができ、α軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβから2.4次高調波の正相分のみを抽出した正相分電圧信号Vαp,Vβpを出力する。
【0088】
一般的に、電力系統Bに重畳されている高調波は、5次、7次、11次高調波が多いので、本実施形態においては、これらと基本波の正相分および逆相分、注入した2.4次高調波の逆相分を抑制するようにしている。なお、正相分電圧信号抽出部62a’は、抑制する必要がある高調波の次数に応じて設計すればよい。例えば、高調波としては5次高調波のみを抑制したい場合は、複素係数ノッチフィルタNF1〜NF4のみを備えていればよく、さらに13次高調波も抑制したい場合には、阻止帯域を決定する正規化角周波数Ω
dとして「13ω
d」を設定した複素係数ノッチフィルタをさらに備えるようにすればよい。
【0089】
逆相分電圧信号抽出部62b’も、6つの複素係数ノッチフィルタNF1〜NF6を多段に接続したフィルタを備えている。逆相分電圧信号抽出部62b’においては、複素係数ノッチフィルタNF3の阻止帯域を決定する正規化角周波数Ω
dとして、2.4次高調波の正相分の角周波数「2.4ω
0」を正規化した「2.4ω
d」設定されている点が、正相分電圧信号抽出部62a’(
図8参照)と異なる。
【0090】
図9(b)は、逆相分電圧信号抽出部62b’の周波数特性を示す図である。同図によると、基本波成分(角周波数「ω
0」)、基本波の逆相分(角周波数「−ω
0」)、2.4次高調波の正相分(角周波数「2.4ω
0」)、5次高調波成分(角周波数「−5ω
0」)、7次高調波成分(角周波数「7ω
0」)、11次高調波成分(角周波数「−11ω
0」)が抑制され、その他の成分(2.4次高調波の逆相分)が通過される。したがって、逆相分電圧信号抽出部62b’は、2.4次高調波の逆相分のみを好適に通過させることができ、α軸電圧信号Vαおよびβ軸電圧信号Vβから2.4次高調波の逆相分のみを抽出した逆相分電圧信号Vαn,Vβnを出力する。
【0091】
正相分電流信号抽出部64a’は、正相分電圧信号抽出部62a’と同様のフィルタを備えている。正相分電流信号抽出部64a’の周波数特性も
図9(a)の特性を示すので、基本波成分、基本波の逆相分、2.4次高調波の逆相分、5次高調波成分、7次高調波成分、11次高調波成分が抑制され、その他の成分(2.4次高調波の正相分)が通過される。したがって、2.4次高調波の正相分のみを好適に通過させることができ、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβから2.4次高調波の正相分のみを抽出した正相分電流信号Iαp,Iβpを出力する。
【0092】
逆相分電流信号抽出部64b’は、逆相分電圧信号抽出部62b’と同様のフィルタを備えている。逆相分電流信号抽出部64b’の周波数特性も
図9(b)の特性を示すので、基本波成分、基本波の逆相分、2.4次高調波の正相分、5次高調波成分、7次高調波成分、11次高調波成分が抑制され、その他の成分(2.4次高調波の逆相分)が通過される。したがって、2.4次高調波の逆相分のみを好適に通過させることができき、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβから2.4次高調波の逆相分のみを抽出した逆相分電流信号Iαn,Iβnを出力する。
【0093】
なお、正相分電圧信号抽出部62a’、逆相分電圧信号抽出部62b’、正相分電流信号抽出部64a’、および逆相分電流信号抽出部64b’が備える複素係数ノッチフィルタは、上記(12)式に示す伝達関数H(z)のものに限定されない。例えば、複素係数の2次以上のIIRフィルタなどで構成された複素係数ノッチフィルタであってもよい。
【0094】
第2実施形態においても、正相分電圧信号Vαp,Vβp、逆相分電圧信号Vαn,Vβn、正相分電流信号Iαp,Iβp、および逆相分電流信号Iαn,Iβnをそれぞれ抽出することができ、これらを用いて単独運転の判定をすることができる。したがって、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0095】
なお、第2実施形態においては、正相分電圧信号抽出部62a’、逆相分電圧信号抽出部62b’、正相分電流信号抽出部64a’、および逆相分電流信号抽出部64b’で用いられる複素係数フィルタの正規化角周波数Ω
dをあらかじめ設定しておく場合について説明したが、これに限られない。信号処理のサンプリング周期が固定サンプリング周期の場合、複素係数ノッチフィルタNF1,2,4〜6においては、系統電圧の基本波の角周波数を周波数検出装置などで検出して、検出された角周波数を正規化して用いるようにしてもよい。なお、注入される次数間高調波の角周波数は固定されているので、複素係数ノッチフィルタNF3においては、当該角周波数に基づく正規化角周波数を設定すればよい。第1実施形態における複素係数バンドパスフィルタについても同様に、注入される次数間高調波の角周波数に基づく正規化角周波数を設定すればよい。
【0096】
上記第1または第2実施形態においては、複素係数バンドパスフィルタを用いる正相分電圧信号抽出部62a、逆相分電圧信号抽出部62b、正相分電流信号抽出部64a、および逆相分電流信号抽出部64bを備える場合と、複素係数ノッチフィルタを用いる正相分電圧信号抽出部62a’、逆相分電圧信号抽出部62b’、正相分電流信号抽出部64a’、および逆相分電流信号抽出部64b’を備える場合について説明したが、これに限られない。例えば、正相分電圧信号抽出部62aおよび正相分電流信号抽出部64aを備え、複素係数バンドパスフィルタを用いて正相分の信号を通過させることで抽出し、逆相分電圧信号抽出部62b’および逆相分電流信号抽出部64b’を備え、複素係数ノッチフィルタを用いて逆相分の信号を抽出するようにしてもよい。また、正相分電圧信号抽出部62aを備えて複素係数バンドパスフィルタを用いて正相分の信号を通過させることで抽出し、逆相分電圧信号抽出部62bを備えて複素係数バンドパスフィルタを用いて逆相分の信号を通過させることで抽出し、正相分電流信号抽出部64a’を備えて複素係数ノッチフィルタを用いて正相分の信号を抽出し、逆相分電流信号抽出部64b’を備えて複素係数ノッチフィルタを用いて逆相分の信号を抽出するようにしてもよい。
【0097】
上記第1または第2実施形態においては、電力系統Bに2.4次高調波を注入して、検出した電圧信号および電流信号から2.4次高調波成分を抽出する場合について説明したが、これに限られず、2.4次以外の次数間高調波を利用するようにしてもよい。また、次数間高調波でない高調波を利用するようにしてもよい。次数間高調波を利用するようにしたのは、本来電力系統Bにほとんど存在しない高調波を利用することで、注入する電流を小さくしても精度よく抽出することができるからである。したがって、電力系統Bに存在する量が極めて小さい高調波(例えば、10次高調波など)であれば、次数間高調波に代えて利用することができる。利用する高調波の角周波数に応じて、各複素係数フィルタの通過帯域(阻止帯域)を決定する正規化角周波数Ω
dを設定することで、所望の高調波の正相分の信号および逆相分の信号を抽出することができる。
【0098】
上記第1または第2実施形態においては、本発明に係る単独運転検出装置をインバータ制御装置とは別の構成として説明したが、インバータ制御装置に含めて、1つのマイクロコンピュータなどによって実現するようにしてもよい。
【0099】
上記第1または第2実施形態においては、本発明に係る単独運転検出装置を系統連系インバータシステムに用いた場合について説明したが、これに限られない。本発明に係る単独運転検出装置は、例えば同期発電機などの系統連系機器にも用いることができる。
【0100】
本発明に係る単独運転検出装置、系統連系インバータシステム、および、単独運転検出方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る単独運転検出装置、系統連系インバータシステム、および、単独運転検出方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。