特許第5793397号(P5793397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793397
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20150928BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20150928BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20150928BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20150928BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C08J3/20 ZCES
   C08L23/10
   C08L23/08
   C08L53/02
   C08K3/00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-237576(P2011-237576)
(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公開番号】特開2013-95785(P2013-95785A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046314
【氏名又は名称】旭化成ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】井 俊一朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩一郎
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4053075(JP,B2)
【文献】 特開2010−248532(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/104174(WO,A1)
【文献】 特開平07−048485(JP,A)
【文献】 特開平05−222210(JP,A)
【文献】 特開2004−002898(JP,A)
【文献】 特開2000−143820(JP,A)
【文献】 特開2008−255278(JP,A)
【文献】 特開2005−264028(JP,A)
【文献】 特開2011−184483(JP,A)
【文献】 特開2010−138215(JP,A)
【文献】 特開2008−195801(JP,A)
【文献】 特開平06−240153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレン系樹脂97〜50質量%、
(b)エチレン−αオレフィン共重合体1〜48質量%、
(c)少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体1〜40質量%、及び
(d)無機フィラー1〜30質量%を含む原料成分を二軸押出機で溶融混練する工程を含み、
前記二軸押出機が、原料の流れ方向に対し上流側から順に、第1供給口、第2供給口及び第3供給口を有し、
前記二軸押出機への各原料成分の供給方法が下記の(i)〜(iii)のいずれかを満たすポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
(i)(a)成分及び(b)成分を第1供給口より供給し、(c)成分を第2供給口より供給し、(d)成分を第3供給口より供給すること。
(ii)(a)成分の少なくとも一部を第1供給口より供給し、残りの(a)成分、(b)成分及び(c)成分を第2供給口から供給し、(d)成分を第3供給口より供給すること。
(iii)(a)成分の一部、(b)成分及び(c)成分を第1供給口より供給し、残りの(a)成分を第2供給口から供給し、(d)成分を第2〜3供給口のいずれかより供給すること。
【請求項2】
前記(b)エチレン−αオレフィン共重合体がエチレン−オクテン−1共重合体ゴムである、請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記(c)水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物の重量平均結合量が12〜30質量%である、請求項1又は2記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記(c)水素添加ブロック共重合体中の重合体ブロックBの共役ジエン化合物の結合形態において、共役ジエン化合物単量体がブタジエンであり、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックにおける1,2−ビニル結合又は3,4−ビニル結合の合計量が40〜60%である、請求項1〜3のいずれか一項記載のポリプロピレン系樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記(d)無機フィラーがタルクである、請求項1〜4のいずれか一項記載のポリプロピレン系樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリプロピレン樹脂を主成分に、エチレン−αオレフィン共重合体などの各種ゴム成分と無機フィラーとを組み合わせた強化ポリプロピレン樹脂組成物を自動車材料に使用することは、一般に広く行われている。そして、ポリプロピレン樹脂や各種ゴム成分、無機フィラーを種々変えることで、剛性、耐衝撃性等を向上させることができる。しかし、これらのポリプロピレン樹脂組成物は、部分的な物性に優れるものの、総合的な物性に優れるものではない。最近の各種製品の機能性の追求、経済性の追求から製品の大型化、薄肉化等が進み、総合的にバランスのとれた物性を有する材料が要望されている。
【0003】
特許文献1には、剛性、耐衝撃性及び成形性に優れる樹脂組成物として、ポリプロピレン系重合体、水素添加ブロック共重合体、エチレン−αオレフィン共重合ゴム、タルクよりなる樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−302107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、最適な製造方法が開示されていなく、特許文献1に開示の樹脂組成物は、引張伸度、耐衝撃性及び成形温度依存性のバランスが満足のいくものではない。
【0006】
本発明は、引張伸度、耐衝撃性及び成形温度依存性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、本発明者らはポリプロピレン系樹脂、ゴム状重合体、水素添加ブロック共重合体、無機フィラーを組み合わせた原料を用いた場合、特定の製造方法により上記課題を効果的に解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下に関する。
【0008】
[1]
(a)ポリプロピレン系樹脂97〜50質量%、
(b)エチレン−αオレフィン共重合体1〜48質量%、
(c)少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体1〜40質量%、及び
(d)無機フィラー1〜30質量%を含む原料成分を二軸押出機で溶融混練する工程を含み、
前記二軸押出機が、原料の流れ方向に対し上流側から順に、第1供給口、第2供給口及び第3供給口を有し、
前記二軸押出機への各原料成分の供給方法が下記の(i)〜(iii)のいずれかを満たすポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
(i)(a)成分及び(b)成分を第1供給口より供給し、(c)成分を第2供給口より供給し、(d)成分を第2〜3供給口のいずれかより供給すること。
(ii)(a)成分の少なくとも一部を第1供給口より供給し、残りの(a)成分、(b)成分及び(c)成分を第2供給口から供給し、(d)成分を第2〜3供給口のいずれかより供給すること。
(iii)(a)成分の一部、(b)成分及び(c)成分を第1供給口より供給し、残りの(a)成分を第2供給口から供給し、(d)成分を第2〜3供給口のいずれかより供給すること。
【0009】
[2]
前記(b)エチレン−αオレフィン共重合体がエチレン−オクテン−1共重合体ゴムである、[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【0010】
[3]
前記(c)水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物の重量平均結合量が12〜30質量%である、[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【0011】
[4]
前記(c)水素添加ブロック共重合体中の重合体ブロックBの共役ジエン化合物の結合形態において、共役ジエン化合物単量体がブタジエンであり、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックにおける1,2−ビニル結合又は3,4−ビニル結合の合計量が40〜60%である、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂の製造方法。
【0012】
[5]
前記(d)無機フィラーがタルクである、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂の製造方法。
【0013】
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法より得られる樹脂組成物。
【0014】
[7]
[6]に記載の樹脂組成物を成形して得られる成形品。
【0015】
[8]
[6]に記載の樹脂組成物を成形して得られる自動車外装部品。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、引張伸度、耐衝撃性及び成形温度依存性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について具体的に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
≪ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法≫
本実施の形態のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法は、(a)ポリプロピレン系樹脂97〜50質量%、(b)エチレン−αオレフィン共重合体1〜48質量%、(c)少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとを含むブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体1〜40質量%、及び(d)無機フィラー1〜30質量%を含む原料成分を二軸押出機で溶融混練する工程を含み、前記二軸押出機が、原料の流れ方向に対し上流側から順に、第1供給口、第2供給口及び第3供給口を有し、前記二軸押出機への各原料成分の供給方法が下記の(i)〜(iii)のいずれかを満たす。
(i)(a)成分及び(b)成分を第1供給口より供給し、(c)成分を第2供給口より供給し、(d)成分を第2〜3供給口のいずれかより供給すること。
(ii)(a)成分の少なくとも一部を第1供給口より供給し、残りの(a)成分、(b)成分及び(c)成分を第2供給口から供給し、(d)成分を第2〜3供給口のいずれかより供給すること。
(iii)(a)成分の一部、(b)成分及び(c)成分を第1供給口より供給し、残りの(a)成分を第2供給口から供給し、(d)成分を第2〜3供給口のいずれかより供給すること。
【0019】
本実施の形態の製造方法において、用いる二軸押出機の具体例としては、コペリオン社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズなどが挙げられる。
【0020】
原料成分を二軸押出機で溶融混練する工程において、溶融温度としては特に限定されるものではないが、例えば、150〜250℃の範囲から任意に選ぶことができる。
【0021】
二軸押出機のスクリュー回転数は特に限定されるものではないが、例えば、100〜1200rpmの範囲から任意に選ぶことができる。この二軸押出機に原料を供給するための原料供給装置は、特に限定はされないが、単独スクリューフィーダー、二軸スクリューフィーダー、テーブルフィーダー、ロータリーフィーダーなどが使用できる。中でもロスインウエイトフィーダーが、原料供給の変動誤差が少なく好ましい。
【0022】
(a)〜(c)成分を溶融混練する際、(b)成分の添加位置が(c)成分と同一、あるいは(c)成分より上流側から添加すると、得られる樹脂組成物は耐衝撃性が優れる。一方、(c)成分を(b)成分より上流側から添加すると、得られる樹脂組成物は耐衝撃性が劣る傾向にある。上記の理由は、明らかとなっていないが、(a)〜(c)の各成分間の表面張力が関係しているものと推測される。すなわち、(a)成分との相容性は、(b)成分より(c)成分の方が高いため、(c)成分を(b)成分より先に添加すると、(a)成分中に(c)成分が非常に速く拡散するため、(b)成分を添加しても、(b)、(c)成分の接触時間が短く、衝撃を発現できるモルフォロジー等を形成できない。したがって、(c)成分を(b)成分より上流側から添加すると、得られる樹脂組成物は耐衝撃性が劣る傾向にあると考えられる。
【0023】
また、(d)成分は(a)〜(c)成分が溶融された状態で、第2〜3供給口のいずれかより供給することが好ましい。(d)成分を第2〜3供給口のいずれかより供給すると、系内の粘度及び樹脂温度が高くなりすぎないため、(a)〜(c)成分の熱劣化を抑制でき、得られる樹脂組成物は、引張伸度及び成形温度依存性に優れる。
【0024】
<(a)ポリプロピレン系樹脂>
本実施の形態に用いる(a)成分のポリプロピレン系樹脂は、結晶性プロピレンホモポリマーであるか、重合の第一工程で得られる結晶性プロピレンホモポリマー部分と重合の第二工程以降でプロピレン、エチレン及び/又は少なくとも1つの他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ヘキセン−1等)を共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とを有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体であり、さらにこれら結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体との混合物であってもかまわない。
【0025】
(a)ポリプロピレン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
(a)ポリプロピレン系樹脂は、例えば、三塩化チタン触媒又は塩化マグネシウムなどの担体に担持したハロゲン化チタン触媒等とアルキルアルミニウム化合物の存在下に、重合温度0〜100℃の範囲で、重合圧力3〜100気圧の範囲でモノマーを重合することにより得られる。この際、重合体の分子量を調整するために水素等の連鎖移動剤を添加することも可能である。また、重合方法としてはバッチ式、連続式いずれの方法でも可能であり、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合等の方法も選択でき、さらには無溶媒下、モノマー中での塊状重合、ガス状モノマー中での気相重合方法なども適用できる。
【0027】
さらには、上記重合触媒の他に、得られるポリプロピレンのアイソタクティシティ及び重合活性を高めるため、第三成分として電子供与性化合物を、内部ドナー成分又は外部ドナー成分として用いることができる。これらの電子供与性化合物としては公知のものが使用でき、例えば、ε−カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチルなどのエステル化合物;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸エステル;ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのリン酸誘導体などや、アルコキシエステル化合物、芳香族モノカルボン酸エステル、芳香族アルキルアルコキシシラン、脂肪族炭化水素アルコキシシラン、各種エーテル化合物、各種アルコール類、各種フェノール類などが挙げられる。
【0028】
また、本実施の形態に用いる(a)ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(230℃、荷重2.16kg)は、0.1〜150g/10分の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜100g/10分の範囲である。メルトフローレート(MFR)を上記範囲とすることによって、得られる樹脂組成物は流動性や剛性のバランスが良好となる傾向にある。(a)ポリプロピレン系樹脂の重合方法は、上述した方法や従来公知の方法いずれでもよく、遷移重合、ラジカル重合、イオン重合等が挙げられる。成分(a)のポリプロピレン系樹脂がプロピレンブロック共重合体の場合、メルトフローレート(MFR)が10〜80g/10分のプロピレンブロック共重合体が好ましい。このようなMFR値を有するプロピレンブロック共重合体を用いると、得られる樹脂組成物は耐衝撃性と流動性とが優れる傾向にある。
【0029】
また、成分(a)のポリプロピレン系樹脂がプロピレンホモ重合体である場合、MFRが1〜100g/10分のプロピレンホモ重合体であることが好ましい。このようなMFR値を有するプロピレンホモ重合体を用いると、得られる樹脂組成物は耐衝撃性が優れる傾向にある。また、成分(a)のポリプロピレン系樹脂がこれらプロピレンブロック共重合体と、プロピレンホモ重合体との両者から構成される場合、両者の比率がプロピレンブロック共重合体/プロピレンホモ重合体=1/99〜99/1であることが好ましい場合がある。両者の比率が前記範囲内であると、成形条件や組み合わせるゴムにもよるが、得られる樹脂組成物の物性発現上、より好ましい場合がある。
【0030】
(a)ポリプロピレン系樹脂は、上記したポリプロピレン樹脂のほかに、該ポリプロピレン樹脂とα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体とをラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態又は溶液状態で、30〜350℃の温度下で反応させることによって得られる公知の変性(該α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01〜10質量%グラフト又は付加した)ポリプロピレン樹脂であってもよく、さらに上記したポリプロピレン樹脂と該変性ポリプロピレン樹脂との任意の割合の混合物であってもかまわない。
【0031】
(a)成分の配合量は、97〜50質量%であり、90〜55質量%であることが好ましく、80〜60質量%であることがより好ましい。
【0032】
<(b)エチレン−αオレフィン共重合体>
本実施の形態に用いる(b)成分のエチレン−αオレフィン共重合体とは、エチレンとαーオレフィンとからなる共重合体ゴムであり、そのようなゴムであれば特に制限はない。(b)エチレン−αオレフィン共重合体ゴムとしては、エチレン−オクテン−1共重合体ゴムであることが好ましい。αーオレフィンは炭素原子数3以上であり、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、オクテン、4−メチルペンテン−1などが挙げられ、脆化温度、剛性の点からプロピレン、1−ブテン、エチレン、1−オクテン(オクテン−1)が好ましい。エチレン−αオレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。また、これらのα−オレフィンは単独でも、あるいは2種以上を併せて用いることができる。(b)エチレン−αオレフィン共重合体において、α−オレフィンの量は14質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。特にα−オレフィンが1−オクテンの場合、1−オクテンの含量が14質量%以上50質量%以下であるエチレン−オクテン共重合体は低温衝撃に優れるので好ましい。
【0033】
エチレン−オクテン共重合体において、1−オクテンの量が70質量%を超えると(a)ポリプロピレン系樹脂と完全相溶し、得られる樹脂組成物の剛性等の物性が低下するので好ましくない。また、(b)エチレン−αオレフィン共重合体の比重は0.900g/cc以下が好ましく、0.880g/cc以下であることが、脆化温度、剛性の点で、さらに好ましい。これら(b)エチレン−α−オレフィン共重合体の重合方法は、特に問わないが、組成を均一とすること、比重を小さくすること等の観点から、活性点が均一のメタロセン触媒で重合する方法が好ましい。重合系としては溶液均一系、スラリー系いずれでもかまわない。
【0034】
またα−オレフィンと共に非共役ジエンをエチレンに共重合させることも可能である。かかる非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、5−メチル−2,5−ノルボルナジネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(1−ブテニル)−2−ノルボルネン、シクロオクタジエン、シクロヘキサジエン、ビニルシクロヘキサン、6−メチル−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、トランス−1,2−ジビニルシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカンジエン、3,6−ジメチル−1,7−オクタジエン、4,5−ジメチル−1,7−オクタジエン、1,4,7−オクタトリエン、5−メチル−1,8−ノナジエン等が挙げられる。
【0035】
このようなエチレンとα−オレフィンとさらに非共役ジエンとを共重合したポリオレフィン系ゴムの具体例としてはエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等を挙げることができる。これらオレフィン系ゴム中のエチレン含有量は、30〜80質量%のものが好適に用いられる。
【0036】
(b)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0037】
本実施の形態において、(b)成分の配合量は、1〜48質量%であり、2〜40質量%であることが好ましく、3〜35質量%であることがより好ましい。(b)成分の配合量が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物は、低温性能、引張伸度、曲げ弾性率及び荷重たわみ温度に優れる。
【0038】
また、(b)成分のMFRは好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜30g/10分である。なお、(a)ポリプロピレン系樹脂には、例えばプロピレンブロック共重合体の場合、ホモポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエチレンブロック共重合体、ポリエチレンが含まれる。この場合はマトリックスがホモポリプロピレンとなり、ポリプロピレン−ポリエチレンブロック共重合体、ポリエチレンが分散相になる場合がある。このような場合ではこれら(a)ポリプロピレン系樹脂の重合時の側から来るポリプロピレン−ポリエチレンブロック共重合体、ポリエチレン等は(b)成分と考えることとする。
【0039】
<(c)水添ブロック共重合体>
本実施の形態に用いられる成分(c)は、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位(以下「ビニル芳香族炭化水素化合物」とも記す。)を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物単量体単位(以下「共役ジエン化合物」とも記す。)を主体とする重合体ブロックBと、を含むブロック共重合体の少なくとも一部を水素添加した水添ブロック共重合体である。(c)水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物の重量平均結合量は12〜30質量%であることが好ましく、12〜25質量%であることがより好ましく、15〜23質量%であることがさらに好ましい。該重量平均結合量が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物は、剛性が向上し、低温脆化温度に優れる。
【0040】
中でも好ましい(c)水素添加ブロック共重合体は、少なくとも2個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックAと、少なくとも2個の水素添加された共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックBと、を含むブロック共重合体の少なくとも一部を水素添加した水添ブロック共重合体において、末端にあるブロックのうち、少なくとも1個が重合体ブロックBであり、かつ末端にある重合体ブロックBは水素添加ブロック共重合体中で占める割合が、0.1質量%以上9.1質量%未満であって、(c)水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物の重量平均結合量が12質量%以上30質量%未満であることを特徴とする水素添加ブロック共重合体である。
【0041】
(c)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0042】
(c)水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物の重量平均結合量とは、水素添加ブロック共重合体が成分(c)として単独で用いられる場合はその水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物の結合量を意味する。水素添加ブロック共重合体が成分(c)として2種以上用いられる場合は、各々の水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物の重量平均結合量を意味する。例えばビニル芳香族化合物60質量%の水素添加ブロック共重合体3部と、ビニル芳香族化合物15質量%の水素添加ブロック共重合体7部とを併用した場合の(c)水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素化合物の重量平均結合量は、0.3×60+0.7×15=28.5質量%となる。
【0043】
なお、本実施の形態において、ビニル芳香族炭化水素化合物の重量平均結合量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0044】
かかる(c)水素添加ブロック共重合体のブロック構造はA−B−A、A−B−A−Bである水素添加ブロック共重合体もしくはB−A−B−A−Bである水素添加ブロック共重合体であることが好ましい。このブロック構造を取ることで、所望の物性を容易に得ることができる。また、(c)水素添加ブロック共重合体において重合体ブロックA、Bの結合部分に共役ジエン化合物単量体とビニル芳香族炭化水素化合物単量体とのランダム共重合、あるいはテーパー構造部分を有する水素添加ブロック共重合体であることも所望の物性を得る上で、好ましいブロック構造である。
【0045】
また、(c)水素添加ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等のアルキルスチレン、パラメトキシスチレン、ビニルナフタレン等のうちから1種、または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。上記(c)水素添加ブロック共重合体におけるビニル芳香族化合物単量体単位含量は、12質量%以上25質量%未満であることがさらに好ましく、剛性の点から15質量%以上23質量%未満であることが特に好ましい。ビニル芳香族化合物単量体単位含量が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物は、剛性が向上し、低温脆化温度が高くなりすぎず良好となる。ビニル芳香族化合物単量体単位含量は核磁気共鳴装置(NMR)、紫外分光光度計(UV)などにより測定できる。
【0046】
本実施の形態において、「主体とする」という言葉は例えば「ビニル芳香族化合物単量体単位を主体とする」の場合、ビニル芳香族化合物単量体単位の1種または2種以上からなる場合、もしくはこれらとリビングアニオン重合する他の単量体が共重合されている場合も含まれる。
【0047】
主体とするビニル芳香族化合物単量体と共重合可能な他の単量体としては、共役ジエン化合物単量体、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、シクロヘキサジエン、カプロラクトン等を挙げることができる。共重合の形態としては、ランダム、交互、テーパー等いかなる形態でもよく、2個ある重合体ブロックAはそれぞれその組成、分子量などが異なってもかまわない。
【0048】
(c)水素添加ブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物単量体単位としては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0049】
また、水素添加される前のブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックの場合は、そのブロックにおけるミクロ構造を任意に選ぶことができ、1,2−ビニル結合量が35〜90%であることが好ましく、より好ましくは40〜60%であり、41〜55%であることがさらに好ましい。当該1,2−ビニル結合量が前記範囲内であると、(c)成分の分散が良好となり、得られる樹脂組成物は引張伸度に優れ、また、成形体の成形条件、組み合わせる(b)成分にもよるが、得られる樹脂組成物は、低温衝撃、曲げ弾性率及び耐熱変形性に優れる。
【0050】
これらのミクロ構造は核磁気共鳴装置(NMR)により測定できる。
【0051】
本実施の形態のポリプロピレン系樹脂の製造方法は、前記(c)水素添加ブロック共重合体中の重合体ブロックBの共役ジエン化合物の結合形態において、共役ジエン化合物単量体がブタジエンである場合、水素添加前のブタジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックにおける1,2−ビニル結合又は3,4−ビニル結合の合計量が40〜60%であることが好ましい。
【0052】
本実施の形態において、1,2−ビニル結合又は3,4−ビニル結合の合計量は、核磁気共鳴装置(NMR)、赤外分光光度計などにより測定することができる。
【0053】
また、水素添加される前のイソプレン単量体単位を主体とする重合体ブロックの場合は、そのブロックにおけるミクロ構造には、1,4−ビニル結合の他、1,2−ビニル結合、3,4−ビニル結合が存在する。このうちイソプレン単量体中にしめる1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計をビニル結合量と定義すると、かかるビニル結合量が0〜20%であることが、好ましい。該ビニル結合量が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物は低温衝撃性、曲げ弾性率、耐熱変形性等が優れる。
【0054】
水素添加される前の共役ジエン単量体単位が、イソプレンと1,3−ブタジエンとの共重合体の場合は、その共重合組成によって、上記ビニル結合の最適範囲は異なるが、好ましくは10〜50%、より好ましくは15〜40%である。
【0055】
また、「共役ジエン化合物単量体単位を主体とする」という言葉には、共役ジエン化合物単量体とリビングアニオン重合する他の単量体が共重合されている場合も含まれる。
【0056】
共役ジエン化合物単量体と共重合可能な他の単量体としては、ビニル芳香族化合物単量体、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、1,3−シクロヘキサジエン、カプロラクトン等を挙げることができる。共重合の形態としては、ランダム、交互、テーパー等いかなる形態でもよい。
【0057】
なお、本明細書中で使用される「主体とする」という言葉は該当単量体単位が重合体ブロックにおいて、少なくとも50モル%を超え、好ましくは70モル%以上を占めることを意味する。
【0058】
本実施の形態に用いる成分(c)の水素添加ブロック共重合体の末端にある重合体ブロックBは、それぞれ水素添加ブロック共重合体中で占める割合が、0.1質量%以上9.1質量%未満であることが好ましく、樹脂組成物の引張伸度の点から、より好ましくは0.3質量%以上7.5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%を超え5.0質量%未満である。末端にある重合体ブロックBの割合が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物は引張伸度及び脆化温度に優れる。例えばA−B−A−Bの構造をとる場合、末端にある重合体ブロックBが全体に占める割合は0.1質量%以上9.1質量%未満の範囲にあることが好ましく、例えばB1−A−B2−A−B3(B1、B2、B3:水素添加された共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック)の構造をとる場合、末端にある重合体ブロックB1が全体に占める割合は0.1質量%以上9.1質量%未満の範囲にあることが好ましく、また末端にある重合体ブロックB3も全体に占める割合は0.1質量%以上9.1質量%未満の範囲にあることが好ましい。
【0059】
(c)成分の水素添加ブロック共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量は35,000以上200,000以下であることが好ましく、40,000以上150,000未満であることが好ましい。当該数平均分子量が前記範囲内であると、エラストマーとしての一般的な機能を発揮し、また樹脂組成物は所望の物性が得られ易く、また、秩序−無秩序転移温度が高くなりすぎず、成形加工性が良好となり、また、流動性が向上し、ブロック共重合体の取り扱いが容易となる。数平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法において、市販のGPC検量線作成用の標準ポリスチレンを用いることにより算出したポリスチレン換算分子量である。
【0060】
成分(c)の水素添加ブロック共重合体は、例えば、特公昭49−36957号公報などに記載された方法である炭化水素溶剤中でアニオン重合開始剤として有機リチウム化合物等を用い、ビニル化剤としてジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物、トリエチルアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン等の第3級アミン、必要に応じカップリング剤としてエポキシ化ダイズ油、四塩化ケイ素等の多官能性化合物を用い、ビニル芳香族単量体とブタジエン単量体とをブロック共重合し、このブロック共重合体を、公知の方法、例えば、特公昭42−87045号公報に記載の方法で水素添加することにより、得られる。
【0061】
本実施の形態に用いる成分(c)の水素添加ブロック共重合体は、上述の水素添加ブロック共重合体と、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(エステル化合物や酸無水物化合物)とをラジカル発生剤の存在下又は非存在下に、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80〜350℃で反応させることによって得られる変性水素添加ブロック共重合体であってもよい。この場合、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01〜10質量%の割合で水素添加ブロック共重合体にグラフト化又は付加していることが好ましい。
【0062】
さらに、(c)水素添加ブロック共重合体は、水素添加ブロック共重合体と変性水素添加ブロック共重合体との任意の割合の混合物であってもよい。
【0063】
(c)成分の配合量は、1〜40質量%であり、2〜25質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。(c)成分の配合量が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物は、低温衝撃性、曲げ弾性率、耐熱変形性等が優れる。
【0064】
<(d)無機フィラー>
本実施の形態に用いる(d)無機フィラーは、上記した(a)〜(c)成分を含む樹脂組成物に対して数多くの機能を与える成分であり、例えば、剛性の付与、耐熱性の付与、熱伝導性の付与、導電性の付与、成形収縮率の改善、線膨張率の改善などその目的に応じて選択することができる。(d)無機フィラーとしては、例えば、無機塩、ガラス繊維(ガラス長繊維、チョップドストランドガラス繊維)、セルロース、ガラスフレーク、ガラスビーズ、カーボン長繊維、チョップドストランドカーボン繊維、ウィスカ、マイカ、クレイ、タルク、カオリン、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム及びその繊維、シリカ、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、フライアッシュ(石炭灰)、チタン酸カリウム、ワラステナイト、熱伝導性物質(グラファイト、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化ベリリウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸バリウムなど)、導電性金属繊維、導電性金属フレーク、導電性を示すカーボンブラック、導電性を示すカーボンファイバー、及びカーボンナノチューブからなる群の中から選ばれる少なくとも1種を選択して用いることができる。中でも、タルクが好ましい。これらの(d)無機フィラーは、さらにシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪族カルボン酸、脂肪族金属塩等の表面処理剤で処理した物や、インターカレーション法によりアンモニウム塩等による有機化処理した物や、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂をバインダーとして処理した物でもかまわない。
【0065】
これらの(d)無機フィラーは、上記(i)〜(iii)を満たしていれば、(a)〜(c)成分のいずれかと任意の濃度で予め混合したマスターバッチで配合してもかまわない。
【0066】
(d)フィラーの配合量は、1〜30質量%であり、好ましくは3〜20質量%である。かかる配合量が1質量%以上であると、得られる樹脂組成物は機械的強度が改良される他に、得られる樹脂組成物を用いて成型して得られる成型品の寸法精度が改良され、配合量が30質量%以下であると、得られる樹脂組成物を成型して得られる成型品は、ヒケが少なく、温度変化(−30℃〜80℃)による線膨張係数が小さくなり優れた寸法精度及びその異方性を保持した成形品となり得る。
【0067】
<その他の成分>
本実施の形態では、上記の成分の他に本実施の形態の特徴及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の付加的成分を添加してもよい。他の付加的成分としては、特に限定されず、例えば、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体、オレフィン系エラストマー、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリ乳酸等の樹脂、酸化防止剤、金属不活性化剤、熱安定剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、ポリリン酸メラミン系化合物、ホスフィン酸塩類、水酸化マグネシウム、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等)、フッ素系ポリマー、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、三酸化アンチモン等の難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、各種着色剤、離型剤等が挙げられる。
【0068】
≪樹脂組成物≫
本実施の形態の樹脂組成物は、上述の製造方法により得られる樹脂組成物である。上述の製造方法により得られる樹脂組成物は、引張伸度、耐衝撃性及び成形温度依存性に優れる。
【0069】
≪成形品≫
本実施の形態の成形品は、上述の樹脂組成物を成形して得られる。
【0070】
上述の樹脂組成物の成形方法としては、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形、押出成形(シート、フィルム)、中空成形が挙げられる。当該成形方法により上述の樹脂組成物を成形して各種部品等の成形品が得られる。
【0071】
これら各種部品として、例えば、自動車部品が挙げられ、具体的には、バンパー、フェンダー、ドアパネル、モール、エンブレム、エンジンフード、ホイルカバー、ルーフ、スポイラー等の自動車部外装部品や、インストゥルメントパネル、コンソールボックストリム等の自動車部内装部品等が挙げられる。更には、各種コンピューター及びその周辺機器、その他のOA機器、テレビ、ビデオ、各種ディスクプレーヤー等のキャビネット、シャーシ、冷蔵庫、エアコン、液晶プロジェクター等としても用いることができる。
【実施例】
【0072】
本実施の形態を実施例によって更に詳細に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0073】
各物性の測定は以下のとおりに行った。
【0074】
[メルトフローレート(MFR)]
MFRは、230℃、荷重2.16kgの条件によって測定した。
【0075】
[結合スチレン量の測定]
結合スチレン量は紫外分光光度計(UV)により測定した。
【0076】
[水素添加率の測定]
水素添加率は核磁気共鳴装置(NMR)により測定した。
【0077】
[全ビニル結合量の測定]
全ビニル結合量は赤外分光光度計により測定した。
【0078】
[密度]
密度はJIS K7112に準じて測定した。
【0079】
[平均粒子径]
平均粒子径はレーザー式粒度分析計により測定した。
【0080】
[樹脂組成物の原料]
樹脂組成物の原料として以下の成分を用いた。
【0081】
1.(a)成分 ポリプロピレン系樹脂
プロピレンブロックポリマー 日本ポリプロ製 BC03B(MFR:30g/10分、密度:0.90g/cm3)。
【0082】
2.(b)成分 エチレン−αオレフィン共重合体
エチレンオクテンゴム(エチレン−オクテン−1共重合体ゴム) デュポンダウエラストマー製 EG8200。
【0083】
3.(c)成分 水素添加ブロック共重合体
水素添加ポリブタジエン−ポリスチレン(1)−水素添加ポリブタジエン−ポリスチレン(2)のB−A−B−A型の構造を有するブロック共重合体を常法によって合成した。このブロック共重合体に常法によって水素添加を行い、水素添加ブロック共重合体を得た。該水素添加ブロック共重合体の特性を以下に示す。
結合スチレン量(スチレンの重量平均結合量):17質量%
水素添加前のポリブタジエンの1,2−ビニル結合量及び3,4−ビニル結合量の合計量(全ビニル結合量):50%
ポリブタジエン部水素添加率:99.9%。
【0084】
4.(d)成分 無機フィラー
タルク(平均粒子径4μm、表面処理:なし)。
【0085】
<実施例1〜4及び比較例1〜3>
二軸押出機ZSK−25(コペリオン社製)を用いて樹脂組成物のペレットを以下のとおり製造した。該二軸押出機において、原料の流れ方向に対し上流側に第1供給口を設け、これより下流に第2供給口及びその下流に真空ベントを設け、更に下流側に第3供給口と真空ベントとを設けた。また、第2及び第3供給口への原料供給方法は、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給した。上記のように設定した押出機を用い、(a)〜(d)成分を表1に示した組成及び供給方法で供給し、押出温度210〜230℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量15kg/時間の条件にて溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0086】
<引張伸度>
上述のようにして実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットを用いて、210〜230℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度40℃の条件で、引張伸度測定用テストピースを射出成形した。該テストピースを用いて、引張伸度測定をISO527に準じて行った。
【0087】
<耐衝撃性(Charpy衝撃強度)>
上述のようにして実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットを用いて、ホッパー側からノズルに向けてシリンダー温度を210/220/230/230℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度40℃の条件で、Charpy衝撃強度測定用テストピースを射出成形した。該テストピースを用いて、Charpy衝撃強度測定をISO179に準じて行った。
【0088】
<耐衝撃性(成形温度依存性)>
上述のようにして実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットを用いて、ホッパー側からノズルに向けてシリンダー温度を250/260/270/270℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度40℃の条件で、Charpy衝撃強度測定用テストピースを射出成形した。該テストピースを用いて、250〜270℃の温度範囲、及び210〜230℃の温度範囲において、Charpy衝撃強度測定をISO179に準じて行った。得られたCharpy衝撃強度から、下記の式より保持率を算出した。該保持率が80%以上の場合を「○」、80%未満の場合を「×」、として、成形温度依存性を判定した。
耐衝撃性の保持率(%)=(250〜270℃時のCharpy衝撃強度)/(210〜230℃時のCharpy衝撃強度)×100
以上の結果を併せて表1に示した。
【0089】
【表1】
表1の結果より、本実施の形態の製造方法によれば、引張伸度、耐衝撃性及び成形温度依存性が同時に優れる樹脂組成物が得られることが分かった。なお、実施例の引張伸度は、測定可能範囲の上限以上であった。また、製造方法が本実施の形態の範囲外である場合、得られる樹脂組成物は、引張伸度、耐衝撃性及び成形温度依存性を同時に改良できないことが分かった。