(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前処理用触媒の前記担体に、触媒全質量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下のルテニウム及び触媒全質量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下の白金が担持されており、前記前処理として一酸化炭素のメタネーション及び含酸素化合物の水素化脱酸素反応を行う請求項1に記載の液体燃料の製造方法。
前記前処理用触媒の前記担体に、触媒全質量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下のルテニウム及び触媒全質量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下の白金が担持されており、前記前処理として一酸化炭素のメタネーション及び含酸素化合物の水素化脱酸素反応を行う請求項5に記載の液体燃料製造システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、FT合成炭化水素にはFT合成反応の原料ガスに含まれる一酸化炭素ガスが溶存する場合がある。もし、水素化処理触媒に一酸化炭素ガスが吸着すると、触媒が被毒されて、寿命が短くなってしまう。このため、触媒を頻繁に交換する必要が生じ、メンテナンスにコストが高くなる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、コスト低減が実現可能な液体燃料の製造方法及び液体燃料製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体燃料の製造方法は、フィッシャー・トロプシュ合成反応によって合成ガスから炭化水素を合成し、前記炭化水素を用いて液体燃料を製造する液体燃料の製造方法であって、担体に周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族及び第14族から選ばれる1種以上の金属が担持された前処理用触媒を用いて、水素の存在下で前記炭化水素に前処理を行い、前記前処理の後に、前記炭化水素に水素化処理触媒を用いて水素化処理を行う。
【0008】
本発明によれば、水素化処理工程の前段階に設けられた前処理工程において、周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族及び第14族から選ばれる1種以上の金属を担持する前処理用触媒及び水素によって、FT合成炭化水素中に溶存する一酸化炭素ガスをメタンガスに転換するメタネーション反応が生起される。そのため、水素化処理を行うFT合成炭化水素から一酸化炭素ガスが除去されることになる。従って、水素化処理工程において用いられる水素化処理触媒が一酸化炭素ガスによって被毒されるのを防ぐことができるため、触媒の寿命が短縮されることを抑えることができる。これにより、メンテナンスのコストを低減することができる。
なお、ここで周期表とは、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry(国際純粋応用化学連合))により1989年に規定された長周期型の元素の周期表をいう。また、1989年の規定以前のIUPACの規定による周期表は、亜族を用いた短周期型の周期表であり、前記第6族は第6(VI)A族、前記第7族は第7(VII)A族、第8〜10族は第8(VIII)族、第11族は第1(I)B族、第14族は第4(IV)B族とそれぞれ称されていた。
【0009】
本発明の液体燃料の製造方法において、前記前処理用触媒の前記担体に、さらに周期表第9族又は第10族の貴金属が担持されていてもよい。
この場合、前処理用触媒にさらに周期表第9族又は第10族の貴金属が担持されているため、前処理工程において、FT合成炭化水素中に含まれるアルコール等の含酸素化合物を水素化脱酸素反応によりパラフィン系炭化水素と水に転換することが可能となる。当該前処理工程を施さずに含酸素化合物を含む各留分について水素化処理を行うと、水素化処理において水が副生し、当該副生水は水素化処理触媒の被毒の要因となる可能性がある。そこで、前処理工程において含酸素化合物の水素化脱酸素反応を行い、副生水を気体(水蒸気)として水素化処理を行うことで、水素化処理触媒の被毒が抑制されると考えられる。
【0010】
本発明の液体燃料の製造方法において前記周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族及び第14族から選ばれる1種以上の金属が、ルテニウム、ニッケル及び銅から選ばれる1種以上の金属であってもよい。
この場合、前処理用触媒に担持された周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族及び第14族から選ばれる1種以上の金属をルテニウム、ニッケル及び銅から選ばれる1種以上の金属とした。そのため、担持金属量を少なくした場合でも、効率的にメタネーション反応が生起され、FT合成炭化水素中に溶存する一酸化炭素を除去することができる。これらの金属のうち、ルテニウムを選択した場合に、必要なメタネーション活性を維持した状態で、最も担持金属量を少なくすることができる。
【0011】
本発明の液体燃料の製造方法において、前記周期表第9族又は第10族の貴金属が白金であってもよい。
この場合、前処理用触媒に担持される周期表第9族又は第10族の貴金属を白金としたので、担持金属量を少なくした場合でも、効率的にFT合成炭化水素中に含まれるアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素反応を行なうことができる。
【0012】
本発明の液体燃料の製造方法において、前記前処理用触媒の前記担体に、触媒全質量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下のルテニウムが担持されていてもよい。
ルテニウムの担持量が10質量%を超える場合は、共存する二酸化炭素ガスのメタネーション反応が起こりやすくなり、選択性が低下して一酸化炭素ガスの除去効果が不充分となるため好ましくない。一方、ルテニウムの担持量が0.05質量%未満の場合は、一酸化炭素ガスのメタネーション反応が十分に進まず、水素化処理触媒の一酸化炭素ガスによる被毒を抑制できなくなるおそれがあり好ましくない。本発明によれば、前処理用触媒の担体に、触媒全質量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下のルテニウムが担持されている。そのため、これら不具合を回避することができる。
【0013】
本発明の液体燃料の製造方法において、前記前処理用触媒の前記担体に、触媒全質量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下の白金が担持されていてもよい。
白金の担持量を10質量%より大きくしても上記アルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素反応に対する活性の更なる向上は困難であり、コストが増大するので好ましくない。一方、白金の担持量が0.05質量%未満の場合は上記含酸素化合物の水素化脱酸素反応が十分に進まなくなるおそれがあり好ましくない。本発明によれば、前処理用触媒の担体に、触媒全量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下の白金が担持されている。そのため、これら不具合を回避することができる。
【0014】
本発明の液体燃料の製造方法において、前記水素化処理の前に、前記炭化水素を分留してもよい。
この場合、水素化処理の前にFT合成炭化水素を分留するので、留分ごとに前処理及び水素化処理を行うことができる。
【0015】
本発明の液体燃料の製造方法において、上記の液体燃料の製造方法は、前記炭化水素を分留して得られた留分ごとに前記前処理を行ってもよい。
この場合、分留後、FT合成炭化水素を分留して得られる留分ごとに前処理を行うので、留分ごとに最適な前処理を行うことができる。これにより、より効率的に一酸化炭素ガスを除去することができる。
【0016】
本発明の液体燃料製造システムは、フィッシャー・トロプシュ合成反応によって合成ガスから炭化水素を合成し、前記炭化水素を用いて液体燃料を製造する液体燃料製造システムであって、担体に周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族及び第14族から選ばれる1種以上の金属が担持された前処理用触媒が充填され、水素ガスの供給ラインが接続された、前記炭化水素に前処理を行う前処理装置と、前記前処理装置の下流に位置し、水素化処理触媒が充填され、前記前処理装置から流出する前記炭化水素に水素化処理を行う水素化処理装置とを備える。
【0017】
本発明の液体燃料製造システムを用いることにより、水素化処理装置の上流に設けられた前処理装置において、充填された、担体に周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族及び第14族から選ばれる1種以上の金属が担持された前処理用触媒及び水素ガスの供給ラインより供給される水素により、FT合成炭化水素中に溶存する一酸化炭素ガスをメタンガスに転換するメタネーション反応が生起される。そのため、水素化処理を行うFT合成炭化水素から一酸化炭素ガスが除去されることになる。従って、水素化処理に用いられる水素化処理触媒が一酸化炭素ガスによって被毒されるのを防ぐことができるため、触媒の寿命の短縮化を抑えることができる。これにより、メンテナンスのコストを低減させることができる。
【0018】
本発明の液体燃料製造システムにおいて、前記前処理用触媒の前記担体に、さらに周期表第9族又は第10族の貴金属が担持されていてもよい。
本発明の液体燃料製造システムの奏する効果については、前記の対応する本発明の液体燃料の製造方法と同様であることから、重複を避けるために割愛する。なお、以下のそれぞれの本発明の液体燃料システムについても同様とする。
【0019】
本発明の液体燃料製造システムにおいて、前記周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族及び第14族から選ばれる1種以上の金属がルテニウム、ニッケル及び銅から選ばれる1種以上の金属であってもよい。
【0020】
本発明の液体燃料製造システムにおいて、前記周期表第9族又は第10族の貴金属が白金であってもよい。
【0021】
本発明の液体燃料製造システムにおいて、前記前処理用触媒の前記担体に、触媒全量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下のルテニウムが担持されていてもよい。
【0022】
本発明の液体燃料製造システムにおいて、前記前処理用触媒の前記担体に、触媒全量に対して0.05質量%以上10.0質量%以下の白金が担持されていてもよい。
【0023】
本発明の液体燃料製造システムにおいて、前記水素化処理装置の上流に設けられ、前記炭化水素を分留する分留装置を更に備えていてもよい。
【0024】
本発明の液体燃料製造システムにおいて、前記前処理装置は、前記分留装置の下流に、前記炭化水素を分留して得られる留分ごとに設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、前処理工程においてFT合成炭化水素中に溶存する一酸化炭素ガスを効率的に除去することにより、水素化処理触媒の一酸化炭素ガスの吸着による被毒を抑制でき、触媒の交換頻度を低減することが可能となり、メンテナンスに要するコストの低減が実現可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係るGTL(Gas To Liquids)プロセスを実行する液体燃料合成システム1の全体構成及び工程について説明する。
図1は、本実施形態にかかる液体燃料合成システム1の全体構成を示す概略図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る液体燃料合成システム1は、天然ガス等の炭化水素原料を液体燃料に転換するGTLプロセスを実行するプラント設備である。この液体燃料合成システム1は、合成ガス生成ユニット3と、FT合成ユニット5と、アップグレーディングユニット7とから構成される。合成ガス生成ユニット3は、炭化水素原料である天然ガスを改質して一酸化炭素ガスと水素ガスを含む合成ガスを製造する。FT合成ユニット5は、製造された合成ガスからフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)によりFT合成炭化水素を合成する。アップグレーディングユニット7は、FT合成反応により合成されたFT合成炭化水素を水素化処理・精製して液体燃料製品その他(ナフサ、灯油、軽油、ワックス等)を製造する。以下、これら各ユニットの構成要素について説明する。
【0030】
まず、合成ガス生成ユニット3について説明する。合成ガス生成ユニット3は、例えば、脱硫反応器10と、改質器12と、排熱ボイラー14と、気液分離器16及び18と、脱炭酸装置20と、水素分離装置26とを主に備える。脱硫反応器10は、水素化脱硫装置等で構成されて原料である天然ガスから硫黄成分を除去する。改質器12は、脱硫反応器10から供給された天然ガスを改質して、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H
2)とを主成分として含む合成ガスを製造する。排熱ボイラー14は、改質器12にて生成した合成ガスの排熱を回収して高圧スチームを発生する。気液分離器16は、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により加熱された水を気体(高圧スチーム)と液体とに分離する。気液分離器18は、排熱ボイラー14にて冷却された合成ガスから凝縮分を除去し気体分を脱炭酸装置20に供給する。脱炭酸装置20は、気液分離器18から供給された合成ガスから吸収液を用いて炭酸ガスを除去する吸収塔22と、当該炭酸ガスを含む吸収液から炭酸ガスを放散させて再生する再生塔24とを有する。水素分離装置26は、脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスから、当該合成ガスに含まれる水素ガスの一部を分離する。ただし、上記脱炭酸装置20は場合によっては設けないこともある。
【0031】
このうち、改質器12は、例えば、下記の化学反応式(1)、(2)で表される水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とを用いて天然ガスを改質して、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスを製造する。なお、この改質器12における改質法は、上記水蒸気・炭酸ガス改質法の例に限定されず、例えば、水蒸気改質法、酸素を用いた部分酸化改質法(POX)、部分酸化改質法と水蒸気改質法の組合せである自己熱改質法(ATR)、炭酸ガス改質法などを利用することもできる。
【0032】
CH
4+H
2O→CO+3H
2 ・・・(1)
CH
4+CO
2→2CO+2H
2 ・・・(2)
【0033】
また、水素分離装置26は、脱炭酸装置20又は気液分離器18と気泡塔型反応器30とを接続する主配管から分岐したライン上に設けられる。この水素分離装置26は、例えば、圧力差を利用して水素の吸着と脱着を行う水素PSA(Pressure Swing Adsorption:圧力変動吸着)装置などで構成できる。この水素PSA装置は、並列配置された複数の吸着塔(図示せず。)内に吸着剤(ゼオライト系吸着剤、活性炭、アルミナ、シリカゲル等)を有しており、各吸着塔で水素の加圧、吸着、脱着(減圧)、パージの各工程を順番に繰り返すことで、合成ガスから分離した純度の高い水素ガス(例えば99.999%程度)を、連続して供給することができる。
【0034】
なお、水素分離装置26における水素ガス分離方法としては、上記水素PSA装置のような圧力変動吸着法の例に限定されず、例えば、水素吸蔵合金吸着法、膜分離法、或いはこれらの組合せなどであってもよい。
【0035】
水素吸蔵合金法は、例えば、冷却/加熱されることで水素を吸着/放出する性質を有する水素吸蔵合金(TiFe、LaNi
5、TiFe
0.7〜0.9Mn
0.3〜0.1、又はTiMn
1.5など)を用いて、水素ガスを分離する手法である。水素吸蔵合金が収容された複数の吸着塔を設け、各吸着塔において、水素吸蔵合金の冷却による水素の吸着と、水素吸蔵合金の加熱による水素の放出とを交互に繰り返すことで、合成ガス中の水素ガスを分離・回収することができる。
【0036】
また、膜分離法は、芳香族ポリイミド等の高分子素材の膜を用いて、混合ガス中から高い膜透過性をもつ水素ガスを分離する手法である。この膜分離法は、相変化を伴わないため、運転に必要なエネルギーが小さくて済み、ランニングコストが小さい。また、膜分離装置の構造が単純でコンパクトなため、設備コストが低く設備の所要面積も小さくて済む。さらに、分離膜には駆動装置がなく、安定運転範囲が広いため、保守管理が容易であるという利点がある。
【0037】
次に、FT合成ユニット5について説明する。FT合成ユニット5は、例えば、気泡塔型反応器30と、気液分離器34と、分離器36と、気液分離器38と、第1精留塔40とを主に備える。気泡塔型反応器30は、上記合成ガス生成ユニット3で製造された合成ガス、即ち、一酸化炭素ガスと水素ガスとからFT合成反応により液体炭化水素を合成する。気液分離器34は、気泡塔型反応器30内に配設された伝熱管32内を流通して加熱された水を、水蒸気(中圧スチーム)と液体とに分離する。分離器36は、気泡塔型反応器30の中央部に接続され、触媒と液体炭化水素生成物を分離する。気液分離器38は、気泡塔型反応器30の塔頂に接続され、未反応合成ガス及び気体炭化水素生成物を冷却する。第1精留塔40は、気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給されたFT合成炭化水素を沸点に応じて各留分に分留する。
【0038】
このうち、気泡塔型反応器30は、合成ガスから液体炭化水素を合成する反応器の一例であり、FT合成反応により合成ガスから液体炭化水素を合成するFT合成用反応器として機能する。この気泡塔型反応器30は、例えば、塔型の容器内部に触媒と媒体油とからなるスラリーが貯留された気泡塔型スラリー床式反応器で構成される。この気泡塔型反応器30は、FT合成反応により合成ガスから液体炭化水素を合成する。詳細には、気泡塔型反応器30に供給された合成ガスは、触媒と媒体油からなるスラリー内を通過し、懸濁状態の中で下記化学反応式(3)に示すように水素ガスと一酸化炭素ガスとが反応して炭化水素が合成される。
【0040】
このFT合成反応は発熱反応であるため、気泡塔型反応器30は内部に伝熱管32が配設された熱交換器型になっており、冷媒として例えば水(BFW:Boiler Feed Water)を供給し、上記FT合成反応の反応熱を、スラリーと水との熱交換により中圧スチームとして回収できるようになっている。
【0041】
最後に、アップグレーディングユニット7について説明する。アップグレーディングユニット7は、例えば、ワックス留分水素化分解反応器50と、中間留分水素化精製反応器52と、ナフサ留分水素化精製反応器54と、気液分離器56,58,60と、第2精留塔70と、ナフサスタビライザー72とを備える。
【0042】
ワックス留分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の塔底に接続されている。中間留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40の中央部に接続されている。ナフサ留分水素化精製反応器54は、第1精留塔40の上部に接続されている。
【0043】
気液分離器56,58,60は、これら水素化処理反応器50,52,54のそれぞれに対応して設けられている。第2精留塔70は、気液分離器56,58から供給された液体炭化水素を沸点に応じて分留する。ナフサスタビライザー72は、気液分離器60及び第2精留塔70から供給されたナフサ留分の液体炭化水素を精留して、ブタン及びブタンより軽質の成分をオフガスとして排出し、炭素数5以上の成分を製品のナフサとして回収する。
【0044】
次に、以上のような構成の液体燃料合成システム1により、天然ガスから液体燃料を合成する工程(GTLプロセス)について説明する。
【0045】
液体燃料合成システム1には、天然ガス田又は天然ガスプラントなどの外部の天然ガス供給源(図示せず。)から、炭化水素原料としての天然ガス(主成分がCH
4)が供給される。上記合成ガス生成ユニット3は、この天然ガスを改質して合成ガス(一酸化炭素ガスと水素ガスを主成分とする混合ガス)を製造する。
【0046】
具体的には、まず、上記天然ガスは、水素分離装置26によって分離された水素ガスとともに脱硫反応器10に供給される。脱硫反応器10は、当該水素ガスを用いて天然ガスに含まれる硫黄分を水素化脱硫触媒により硫化水素に転換し、更に生成した硫化水素を例えばZnO等の脱硫剤により吸着除去する。このようにして天然ガスを予め脱硫しておくことにより、改質器12及び気泡塔型反応器30等で用いられる触媒の活性が硫黄により低下することを防止できる。
【0047】
このようにして脱硫された天然ガス(二酸化炭素を含んでもよい。)は、二酸化炭素供給源(図示せず。)から供給される二酸化炭素(CO
2)ガスと、排熱ボイラー14で発生した水蒸気とが混合された上で、改質器12に供給される。改質器12は、例えば、上述した水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とを用いて天然ガスを改質して、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスを製造する。このとき、改質器12には、例えば、改質器12が備えるバーナー用の燃料ガスと空気とが供給されており、当該バーナーにおける燃料ガスの燃焼熱により、吸熱反応である上記水蒸気・炭酸ガス改質反応に必要な反応熱がまかなわれている。
【0048】
このようにして改質器12で製造された高温の合成ガス(例えば、900℃、2.0MPaG)は、排熱ボイラー14に供給され、排熱ボイラー14内を流通する水との熱交換により冷却(例えば400℃)されて、排熱が回収される。このとき、排熱ボイラー14において合成ガスにより加熱された水は気液分離器16に供給され、この気液分離器16から気体分が高圧スチーム(例えば3.4〜10.0MPaG)として改質器12または他の外部装置に供給され、液体分の水が排熱ボイラー14に戻される。
【0049】
一方、排熱ボイラー14において冷却された合成ガスは、凝縮した液体分が気液分離器18において分離・除去された後、脱炭酸装置20の吸収塔22、又は気泡塔型反応器30に供給される。吸収塔22は、貯留している吸収液に、合成ガスに含まれる炭酸ガスを吸収させることで、当該合成ガスから炭酸ガスを除去する。この吸収塔22内の炭酸ガスを含む吸収液は、再生塔24に送出され、当該炭酸ガスを含む吸収液は例えばスチームで加熱されてストリッピング処理され、放散された炭酸ガスは、再生塔24から改質器12に送られて、上記改質反応に再利用される。
【0050】
このようにして、合成ガス生成ユニット3で製造された合成ガスは、上記FT合成ユニット5の気泡塔型反応器30に供給される。このとき、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスの組成比は、FT合成反応に適した組成比(例えば、H
2:CO=2:1(モル比))に調整されている。なお、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスは、脱炭酸装置20と気泡塔型反応器30とを接続する配管に設けられた圧縮機(図示せず。)により、FT合成反応に適した圧力(例えば3.6MPaG程度)まで昇圧される。
【0051】
また、上記脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスの一部は、水素分離装置26にも供給される。水素分離装置26は、上記のように圧力差を利用した吸着、脱着(水素PSA)により、合成ガスに含まれる水素ガスを分離する。当該分離された水素は、ガスホルダー(図示せず。)等から圧縮機(図示せず。)を介して、液体燃料合成システム1内において水素を利用して所定反応を行う各種の水素利用反応装置(例えば、脱硫反応器10、ワックス留分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52、ナフサ留分水素化精製反応器54など)に連続して供給される。
【0052】
次いで、上記FT合成ユニット5は、上記合成ガス生成ユニット3によって製造された合成ガスから、FT合成反応により、液体炭化水素を合成する。
【0053】
具体的には、上記脱炭酸装置20において炭酸ガスを分離された合成ガスは、気泡塔型反応器30に流入し、気泡塔型反応器30内に貯留された触媒スラリー内を通過する。この際、気泡塔型反応器30内では、上述したFT合成反応により、当該合成ガスに含まれる一酸化炭素と水素ガスとが反応して、炭化水素が生成する。さらに、この合成反応時には、気泡塔型反応器30の伝熱管32内に水を流通させることで、FT合成反応の反応熱を除去し、この熱交換により加熱された水が気化して水蒸気となる。この水蒸気は気液分離器34に供給されて凝縮した水と気体分に分離され、水は伝熱管32に戻されて、気体分は中圧スチーム(例えば1.0〜2.5MPaG)として外部装置に供給される。
【0054】
このようにして、気泡塔型反応器30で合成された液体炭化水素は、気泡塔型反応器30の中央部から触媒粒子を含んだスラリーとして取り出されて、分離器36に送出される。分離器36は、取り出されたスラリーを触媒(固形分)と、液体炭化水素生成物を含んだ液体分とに分離する。分離された触媒は、その一部が気泡塔型反応器30に戻され、液体分は第1精留塔40に供給される。また、気泡塔型反応器30の塔頂からは、未反応の合成ガスと、生成した炭化水素のガス分とが気液分離器38に導入される。気液分離器38は、これらのガスを冷却して、一部の凝縮分の液体炭化水素を分離して第1精留塔40に導入する。一方、気液分離器38で分離されたガス分については、その一部は気泡塔型反応器30に再投入されて、これに含まれる未反応の合成ガス(COとH
2)はFT合成反応に再利用される。また、製品対象外である炭素数が少ない(C
4以下)炭化水素ガスを主成分とするオフガスは、燃料ガスとして使用されたり、LPG(液化石油ガス)相当の燃料を回収されたりする。
【0055】
次いで、第1精留塔40は、上記のようにして気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給されたFT合成炭化水素(炭素数は多様)をナフサ留分(沸点が約150℃より低い。)と、中間留分(沸点が約150〜360℃)と、ワックス留分(沸点が約360℃を超える。)とに分留する。この第1精留塔40の塔底から取り出されるワックス留分の液体炭化水素(主としてC
21以上)は、ワックス留分水素化分解反応器50に移送され、第1精留塔40の中央部から取り出される灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素(主としてC
11〜C
20)は、中間留分水素化精製反応器52に移送され、第1精留塔40の塔頂から取り出されるナフサ留分の液体炭化水素(主としてC
5〜C
10)は、ナフサ留分水素化精製反応器54に移送される。
【0056】
ワックス留分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の塔底から抜き出された炭素数の多いワックス留分の液体炭化水素(概ねC
21以上)を、上記水素分離装置26から供給された水素ガスを利用して水素化分解して、炭素数を20以下に低減する。この水素化分解反応では、触媒と熱を利用して、炭素数の多い炭化水素のC−C結合を切断して、炭素数の少ない炭化水素へと転換する。また、ワックス留分水素化分解反応器50においては、水素化分解反応と同時に、直鎖状飽和炭化水素(ノルマルパラフィン)を水素化異性化して分岐状飽和炭化水素(イソパラフィン)を生成する反応も進行する。これにより、ワックス留分水素化分解生成物の、燃料油基材として要求される低温流動性が向上する。さらに、ワックス留分水素化分解反応器50においては、原料ワックス留分に含まれるアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素反応及びオレフィンの水素化反応も進行する。このワックス留分水素化分解反応器50により、水素化分解された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器56で気体と液体とに分離され、そのうち液体炭化水素は、第2精留塔70に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54に移送される。
【0057】
中間留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40において分留され、その中央部から抜き出された炭素数が中程度である灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素(概ねC
11〜C
20)を、水素分離装置26からワックス留分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスを用いて、水素化精製する。この水素化精製反応においては、上記液体炭化水素中に含まれるオレフィンを水素化して飽和炭化水素を生成するとともに、上記液体炭化水素中に含まれるアルコール等の含酸素化合物を水素化脱酸素して飽和炭化水素と水とに転換する。更に、この水素化精製反応においては、直鎖状飽和炭化水素(ノルマルパラフィン)を異性化して分岐状飽和炭化水素(イソパラフィン)に転換する水素化異性化反応が進行し、生成油の燃料油としての要求される低温流動性を向上させる。水素化精製された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器58で気体と液体に分離され、そのうち液体炭化水素は、第2精留塔70に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。
【0058】
ナフサ留分水素化精製反応器54は、第1精留塔40において分留され、その塔頂から抜き出された炭素数が少ないナフサ留分の液体炭化水素(概ねC
10以下)を、水素分離装置26からワックス留分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスを用いて、水素化精製する。この結果、水素化精製された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器60で気体と液体に分離され、そのうち液体炭化水素は、ナフサスタビライザー72に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。このナフサ留分の水素化精製においては、主としてオレフィンの水素化及びアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素が進行する。
【0059】
次いで、第2精留塔70は、上記のようにしてワックス留分水素化分解反応器50及び中間留分水素化精製反応器52から供給された液体炭化水素をC
10以下の炭化水素(沸点が約150℃より低い。)と、灯油留分(沸点が約150〜250℃)と、軽油留分(沸点が約250〜360℃)と、ワックス留分水素化分解反応器50からの未分解ワックス留分(沸点約360℃を超える。)とに分留する。第2精留塔70の塔底からは未分解のワックス留分が得られ、これはワックス留分水素化分解反応器50の上流にリサイクルされる。第2精留塔70の中央部からは灯油及び軽油留分が取り出される。一方、第2精留塔70の塔頂からは、C
10以下の炭化水素ガスが取り出されて、ナフサスタビライザー72に供給される。
【0060】
さらに、ナフサスタビライザー72では、上記ナフサ留分水素化精製反応器54及び第2精留塔70の塔頂から供給されたC
10以下の炭化水素を蒸留して、製品としてのナフサ(C
5〜C
10)を得る。これにより、ナフサスタビライザー72の塔底からは、高純度のナフサが取り出される。一方、ナフサスタビライザー72の塔頂からは、製品対象外である炭素数が所定数以下(C
4以下)の炭化水素を主成分とするオフガスが排出される。このオフガスは、燃料ガスとして使用されたり、LPG相当の燃料が回収されたりする。
【0061】
以上、液体燃料合成システム1の工程(GTLプロセス)について説明した。かかるGTLプロセスにより、天然ガスを、高純度のナフサ(C
5〜C
10)、灯油(C
11〜C
15)及び軽油(C
16〜C
20)等のクリーンな液体燃料に、容易且つ経済的に転換することができる。さらに、本実施形態では、改質器12において上記水蒸気・炭酸ガス改質法を採用しているので、原料となる天然ガスに含有されている二酸化炭素を有効に利用し、かつ、上記FT合成反応に適した合成ガスの組成比(例えば、H
2:CO=2:1(モル比))を改質器12における1回の反応で効率的に生成することができ、水素濃度調整装置などが不要であるという利点がある。
【0062】
次に、
図2を参照して、ワックス留分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54の構成を説明する。
同図に示すように、ワックス留分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54は、それぞれ前処理装置80及び水素化処理装置81を有している。
【0063】
各前処理装置80は、前処理用触媒80Aを有している。
本発明に係る前処理用触媒80Aは、第1精留塔40におけるFT合成炭化水素の分留で得られた各留分に含まれる一酸化炭素ガスを化学反応式(4)に示すメタネーション反応によりメタンガスに転換し、一酸化炭素ガスによる水素化処理触媒81Aの吸着被毒を抑制し、触媒寿命を延ばすことを可能にする。
【0064】
CO+3H
2→CH
4+H
2O ・・・(4)
【0065】
本発明に係る前処理工程において、FT合成炭化水素中に含まれる一酸化炭素ガスをメタネーション反応によりメタンに転換するために、前処理工程には水素ガスが供給される。水素ガスは一酸化炭素ガスに対して大過剰に供給されることが好ましく、通常は、FT合成炭化水素の水素化処理に必要な水素ガスが前処理工程に供給され、一部の水素ガスがメタネーション反応に使用され、未反応の水素ガスは前処理されたFT合成炭化水素とともに水素化処理工程に供給され、水素化処理に供される。
【0066】
水素分離装置26からワックス留分水素化分解反応器50に供給され、該反応器で未反応の水素ガスは、気液分離器56で分離され、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54に供給される。更に、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54において未反応の水素ガスは、それぞれ気液分離器58及び60において分離され、ワックス留分水素化分解反応器50に戻される。
【0067】
本発明に係る前処理用触媒80Aは、各留分に含まれるアルコール等の含酸素化合物を、化学反応式(5)に示すように、水素化脱酸素反応により炭化水素と水に転換することも可能とする。前処理を施さずに前記含酸素化合物を含む各留分について水素化処理を行うと、水素化処理装置81において副生した水の一部が水素化処理触媒81Aに吸着し、触媒の被毒の要因となると考えられる。従って前処理において含酸素化合物の水素化脱酸素反応を行い、副生水を気体(水蒸気)として後段の水素化処理装置81に送ることで、水素化処理触媒81Aの被毒が抑制されることになると考えられる。
【0068】
R−OH+H
2→R−H+H
2O ・・・(5)
【0069】
本発明に係る前処理用触媒80Aは、担体に周期表の第6族、第7族、第8族、第9族、第10族、第11族及び第14族から選ばれる1種以上の金属が担持されてなる触媒である。
第6族の金属としてはモリブデン(Mo)、タングステン(W)が好ましい。第7族の金属としてはレニウム(Re)が好ましい。第8族の金属としてはルテニウム(Ru)が好ましい。第9族の金属としてはコバルト(Co)が好ましい。第10族の金属としてはニッケル(Ni)が好ましい。第11族の金属としては銅(Cu)が好ましい。第14族の金属としてはスズ(Sn)が好ましい。これらの金属の中でRu、Ni及びCuがより好ましく、さらに、担持金属量を少なくできることからRuの使用が特に好ましい。
【0070】
ルテニウムの担持量は、前処理用触媒の全量に対して、0.05質量%以上10.0質量%以下の範囲であることが好ましく、さらにその担持量は0.1質量%以上であることがより好ましい。また、その担持量は5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。ルテニウムの担持量が10質量%を超える場合には、FT合成炭化水素中に共存するCO
2のメタネーション反応が起こりやすくなり、選択性が低下してCOの除去効果が不充分となるため好ましくなく、0.05質量%未満の場合は、反応式(4)で示すメタネーション反応が十分に進まず、水素化処理触媒の一酸化炭素ガスによる被毒を抑制できなくなるおそれがあり好ましくない。
また、Mo、W、Re、Snは、Ru、Ni、Co、Cuから選ばれる1種以上の金属と共に用いることが好ましい。
【0071】
また、本発明に係る前処理用触媒80Aは、FT合成炭化水素中に含まれるアルコール等の含酸素化合物を水素化脱酸素反応により飽和炭化水素と水とに転換するために、周期表第9族又は第10族の貴金属がさらに担持されることが好ましい。これにより、FT合成炭化水素の水素化処理工程において、副生する液状の水による水素化処理触媒の被毒を抑制することができる。周期表第9族の貴金属としてはロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)が好ましく、第10族の貴金属としてはパラジウム(Pd)、白金(Pt)が好ましい。中でも少ない担持金属量において高い水素化脱酸素活性を有することから白金の使用が好ましい。
【0072】
白金の担持量は前処理用触媒の全量に対して、0.05質量%以上10.0質量%以下の範囲であることが好ましく、さらにその担持量は0.1質量%以上であることがより好ましい。また、その担持量は5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以下であることが最も好ましい。白金の担持量を10質量%より大きくしてもアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素反応に対する活性の更なる向上は困難であり、コストが増大するので好ましくない。一方、白金の担持量が0.05質量%未満の場合には反応式(5)で示すような含酸素化合物の水素化脱酸素反応が十分に進まなくなるおそれがあり好ましくない。
【0073】
なお、これらの金属の担持方法は、特に限定されるものではなく、含浸法やイオン交換法等の常法によって後述の担体に担持することができる。また、担持の際に使用されるこれらの金属を含む化合物としては、これらの金属の塩、錯体等が好ましく用いられる。
【0074】
更に、本発明に係る前処理用触媒80Aを構成する担体については、特に限定されるものではないが、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ボリア、マグネシアまたはこれらの複合酸化物等を挙げることができ、中でもアルミナが好ましく使用でき、更にγ−アルミナがより好ましく使用される。担体は成形した後、焼成することにより製造でき、その焼成温度は、400〜550℃の範囲内であることが好ましく、470〜530℃の範囲内であることがより好ましく、490〜530℃の範囲内であることが更に好ましい。
【0075】
各前処理装置80は、各水素化処理装置81よりも各留分の流通方向の上流にそれぞれ配置されている。各前処理装置80は、各水素化処理装置81に対して1つの反応器内に一体的に設けられるようにしても構わないし、
図3に示すように各前処理装置80と各水素化処理装置81が別々の反応器で構成されていてもよい。
【0076】
前処理の条件は特に限定されるものではないが、次のような反応条件下で行うことができる。水素分圧としては、0.5〜12MPaが好ましい範囲として挙げられ、1.0〜5.0MPaがさらに好ましい。各留分の液空間速度(LHSV)としては、0.1〜10.0h
−1が好ましい範囲として挙げられ、0.3〜3.5h
−1がさらに好ましい。水素/油比としては、50〜1000NL/Lが好ましい範囲として挙げられ、70〜800NL/Lがさらに好ましい。
【0077】
また、前処理の反応温度としては、180〜400℃が好ましい範囲として挙げられ、200〜370℃がより好ましく、250〜350℃がさらに好ましく、280〜350℃がさらにより好ましい。反応温度が400℃を越えると、軽質分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が減少するだけでなく、生成物が着色し、燃料基材としての使用が制限されるため好ましくない。また、反応温度が180℃を下回ると、アルコール等の含酸素化合物の除去が不十分となるため好ましくない。
【0078】
各水素化処理装置81には水素化処理触媒81Aが充填されている。水素化処理触媒81Aは、各留分の水素化処理の目的(水素化分解、水素化異性化、水素化精製)に適するよう適宜選択されるものであり、各水素化処理装置の触媒は同じものであっても、異なるものであっても構わない。
【0079】
第1精留塔40の底部より取り出されたワックス留分(沸点が約360℃を超える。)をワックス留分水素化分解反応器50で水素化処理する工程においては、炭素数の多い炭化水素のC−C結合を切断して、炭素数の少ない低分子量の炭化水素を生成する水素化分解反応を主として行う。この場合の水素化処理触媒には、後述の水素化分解触媒を用いる。
【0080】
なお、ワックス留分水素化分解反応器50としては、公知の固定床反応器を用いることができる。本実施形態では、単一の固定床の流通式反応器において、前述の前処理用触媒80Aを充填し、その後段(下流)に、水素化処理触媒81Aとして所定の水素化分解触媒を充填し、第1精留塔40より得られたワックス留分を水素化分解する。
【0081】
水素化分解触媒としては、例えば、固体酸を含んで構成される担体に、活性金属として周期表第8族〜第10族に属する金属を担持したものが挙げられる。
【0082】
超安定化Y型(USY)ゼオライト、HYゼオライト、モルデナイト及びβゼオライトなどの結晶性ゼオライト、並びに、シリカアルミナ、シリカジルコニア及びアルミナボリアなどの耐熱性を有する無定形金属酸化物の中から選ばれる1種類以上の固体酸を含んでいる担体が好適な担体である。更に、担体は、USYゼオライトと、シリカアルミナ、アルミナボリア及びシリカジルコニアの中から選ばれる1種類以上の固体酸とを含んで構成されるものであることがより好ましく、USYゼオライトとシリカアルミナとを含んで構成されるものであることが更に好ましい。
【0083】
USYゼオライトは、Y型のゼオライトを水熱処理及び/又は酸処理により超安定化したものであり、Y型ゼオライトが本来有する20Å以下のミクロ細孔と呼ばれる微細細孔構造に加え、20〜100Åの範囲に新たな細孔が形成されている。水素化分解触媒の担体としてUSYゼオライトを使用する場合、その平均粒子径に特に制限は無いが、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。また、USYゼオライトにおいて、シリカ/アルミナのモル比率(アルミナに対するシリカのモル比率;以下、「シリカ/アルミナ比」という。)は10〜200であると好ましく、15〜100であるとより好ましく、20〜60であるとさらにより好ましい。
【0084】
また、担体は、結晶性ゼオライト0.1質量%〜80質量%と、耐熱性を有する無定形金属酸化物0.1質量%〜60質量%とを含んで構成されるものであることが好ましい。
【0085】
担体は、上記固体酸とバインダーとを含む混合物を成型した後、その成型された混合物を焼成することにより製造することができる。固体酸の配合割合は、担体全量を基準として1〜70質量%であることが好ましく、2〜60質量%であることがより好ましい。また、担体がUSYゼオライトを含んで構成される場合、USYゼオライトの配合量は、担体全量を基準として0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。更に、担体がUSYゼオライト及びアルミナボリアを含んで構成される場合、USYゼオライトとアルミナボリアとの配合比(USYゼオライト/アルミナボリア)は、質量比で0.03〜1であることが好ましい。また、担体がUSYゼオライト及びシリカアルミナを含んで構成される場合、USYゼオライトとシリカアルミナとの配合比(USYゼオライト/シリカアルミナ)は、質量比で0.03〜1であることが好ましい。
【0086】
バインダーとしては、特に制限はないが、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシアが好ましく、アルミナがより好ましい。バインダーの配合量は、担体全量を基準として20〜98質量%であることが好ましく、30〜96質量%であることがより好ましい。
【0087】
前記混合物の焼成温度は、400〜550℃の範囲内であることが好ましく、470〜530℃の範囲内であることがより好ましく、490〜530℃の範囲内であることが更に好ましい。
【0088】
周期表第8族〜第10族の金属としては、具体的にはCo、Ni、Rh、Pd、Ir、Ptなどが挙げられる。これらのうち、Ni、Pd及びPtの中から選ばれる金属を、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0089】
これらの金属は、含浸やイオン交換等の常法によって上述の担体に担持させることができる。担持する金属量は特に制限はないが、金属の合計量が担体に対して0.1〜3.0質量%であることが好ましい。また、担持の際に使用されるこれらの金属を含む化合物としては、これらの金属の塩、錯体等が好ましく用いられる。
【0090】
ワックス留分の水素化分解は、次のような反応条件下で行うことができる。すなわち水素分圧としては、0.5〜12MPaが挙げられるが、1.0〜5.0MPaが好ましい。ワックス留分の液空間速度(LHSV)としては、0.1〜10.0h
−1が挙げられるが、0.3〜3.5h
−1が好ましい。水素/油比としては、特に制限はないが、50〜1000NL/Lが挙げられ、70〜800NL/Lが好ましい。
【0091】
また、水素化分解における反応温度としては、180〜400℃が挙げられるが、200〜370℃が好ましく、250〜350℃がより好ましく、280〜350℃がさらにより好ましい。反応温度が400℃を越えると、軽質分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が減少するだけでなく、生成物が着色し、燃料基材としての使用が制限されるため好ましくない。また、反応温度が180℃を下回ると、アルコール等の含酸素化合物が除去しきれずに残存するため好ましくない。
【0092】
第1精留塔40において分留され、その中央部より抜き出された中間留分(沸点が約150〜360℃)を中間留分水素化精製反応器52で水素化処理する工程においては、ノルマルパラフィンをイソパラフィンに転換する水素化異性化反応や、オレフィンの水素化及びアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素反応を含む水素化精製が主たる反応となり、水素化分解は中間留分の収率を低下させるため、抑制される。この場合の水素化処理触媒には、後述の水素化精製触媒を用いることが好ましい。
【0093】
なお、中間留分水素化精製反応器52としては、公知の固定床反応器を用いることができる。本実施形態では単一の固定床の流通式反応器において、前述の前処理用触媒80Aを充填した後段(下流)に、水素化処理触媒81Aとして所定の水素化精製触媒を充填し、第1精留塔40より得られた中間留分を水素化精製する。
【0094】
水素化精製触媒としては、例えば、固体酸を含んで構成される担体に、水素化活性金属として周期表第8族〜第10族に属する金属が担持されたものが挙げられる。この触媒は、オレフィンの水素化やアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素を含む水素化精製、及びノルマルパラフィンをイソパラフィンに転換する水素化異性化に対する活性を有する。
【0095】
上記固体酸を含んで構成される担体としては、シリカアルミナ、シリカジルコニア及びアルミナボリアなどの耐熱性を有する無定形金属酸化物の中から選ばれる1種類以上の固体酸を含んでいる担体が好適な担体である。
【0096】
担体は、上記固体酸とバインダーとを含む混合物を成形した後、焼成することにより製造することができる。固体酸の配合割合は、担体全量を基準として1〜70質量%であることが好ましく、2〜60質量%であることがより好ましい。
【0097】
バインダーとしては、特に制限はないが、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシアが好ましく、アルミナがより好ましい。バインダーの配合量は、担体全量を基準として30〜99質量%であることが好ましく、40〜98質量%であることがより好ましい。
【0098】
前記混合物の焼成温度は、400〜550℃の範囲内であることが好ましく、470〜530℃の範囲内であることがより好ましく、490〜530℃の範囲内であることが更に好ましい。
【0099】
周期表第8族〜第10族の金属としては、具体的にはCo、Ni、Rh、Pd、Ir、Ptなどが挙げられる。これらのうち、Ni、Pd及びPtの中から選ばれる金属を、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0100】
これらの金属は、含浸やイオン交換等の常法によって上述の担体に担持させることができる。担持する金属量は特に制限はないが、金属の合計量が担体に対して0.1〜3.0質量%であることが好ましい。また、担持の際に使用されるこれらの金属を含む化合物としては、これらの金属の塩、錯体等が好ましく用いられる。
【0101】
中間留分の水素化処理は、次のような反応条件下で行うことができる。水素分圧としては、0.5〜12MPaが挙げられるが、1.0〜5.0MPaが好ましい。中間留分の液空間速度(LHSV)としては、0.1〜10.0h−1が挙げられるが、0.3〜3.5h−1が好ましい。水素/油比としては、特に制限はないが、50〜1000NL/Lが挙げられ、70〜800NL/Lが好ましい。
【0102】
また、水素化精製における反応温度としては、180〜400℃が挙げられるが、200〜370℃が好ましく、250〜350℃がより好ましく、280〜350℃がさらにより好ましい。反応温度が400℃を越えると、軽質分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が減少するだけでなく、生成物が着色し、燃料基材としての使用が制限されるため好ましくない。また、反応温度が180℃を下回ると、アルコール等の含酸素化合物が除去しきれずに残存するため好ましくない。
【0103】
第1精留塔40において分留され、その塔頂より抜き出されたナフサ留分(沸点が約150℃よりも低い。)をナフサ留分水素化精製反応器54で水素化処理する工程においては、オレフィンの水素化やアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素を含む水素化精製が主たる反応となる。なお、ナフサ留分の水素化精製においては、原料の分子量が比較的小さいことに起因して、水素化異性化はあまり進行しない。この場合の水素化処理触媒には、前述の中間留分の水素化精製に用いられる水素化精製触媒と同じ触媒を用いることができる。
【0104】
なお、ナフサ留分水素化精製反応器54としては、公知の固定床反応器を用いることができる。本実施形態では、反応器において、前述の前処理用触媒80Aを充填した後段(下流)に、水素化処理触媒81Aとして所定の水素化精製触媒を充填し、第1精留塔40より得られたナフサ留分を前述の中間留分の水素化精製と同様の条件で、水素化精製する。
【0105】
また、このナフサ留分水素化精製反応器54において水素化精製されたナフサ留分の一部は、ナフサ留分水素化精製反応器54の上流にリサイクルされることが好ましい。ナフサ留分は比較的高濃度でオレフィン及びアルコール等の含酸素化合物を含み、このオレフィンの水素化及び含酸素化合物の水素化脱酸素は大きな発熱を伴う反応であり、未処理のナフサ留分のみを水素化精製する場合には、ナフサ留分水素化精製反応器54おいて、ナフサ留分の温度が過度に上昇する虞がある。そこで、前記水素化精製後のナフサ留分の一部をリサイクルすることにより未処理のナフサ留分を希釈し、前記過度の温度上昇を防止するものである。
【0106】
なお、本明細書において、「LHSV(liquid hourly space velocity;液空間速度)」とは、触媒が充填されている触媒層の容量当たりの、標準状態(25℃、101325Pa)における原料油の体積流量のことをいい、単位「h
−1」は時間(hour)の逆数を示す。また、水素/油比における水素容量の単位である「NL」は、正規状態(0℃、101325Pa)における水素容量(L)を示す。
【0107】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態では、前処理装置80、水素化処理装置81が、それぞれワックス留分水素化分解反応器50内、中間留分水素化精製反応器52内及びナフサ留分水素化精製反応器54内に設けられる構成としたが、これに限られることはない。
【0108】
例えば
図3に示すように、前処理装置80がワックス留分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54とは独立して設けられている構成としても構わない。この場合、同図に示すように、例えばワックス留分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54の上流に、それぞれ、前処理反応器を前処理装置80として設けることができる。
【0109】
更に、上記実施形態においては、FT合成炭化水素をナフサ留分、中間留分及びワックス留分に分留し、それぞれの留分について前処理を行なった後に水素化処理を行う形態を示したが、FT合成炭化水素を、ナフサ留分と中間留分とを合わせた軽質留分及びワックス留分である重質留分の二つの留分に分留し、それぞれの留分について前処理を行なった後に水素化処理を行う形態としてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、第1精留塔40の下流に前処理装置80を配置する構成としたが、これに限られることはない。例えば、第1精留塔40の上流に前処理装置80を配置し、未分留のFT合成炭化水素をひとつの反応器から構成される前処理装置80において前処理する構成としても構わない。但し、この実施態様においては、前処理工程と第1精留塔40の間において、前処理工程に供給された水素ガスのうち未反応の水素ガスを主成分とするガス成分とFT合成炭化水素とを気液分離する工程、及び水素化処理工程への水素ガスの供給が必要となる。
【実施例】
【0111】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
<触媒の調整>
(触媒A)
γ−アルミナを直径約1.6mm、長さ約4mmの四つ葉型に成型した後、500℃でこの成型体を1時間焼成し担体を得た。この担体に、硝酸ルテニウム水溶液及び塩化白金酸水溶液を含浸し、ルテニウムと白金を担持した。これを120℃で3時間乾燥し、次いで500℃で1時間空気中で焼成することで触媒Aを得た。なお、ルテニウムの担持量は、担体に対して0.1質量%、白金の担持量は、担体に対して0.8質量%であった。
【0113】
(触媒B)
平均粒子径1.1μmのUSYゼオライト(シリカ/アルミナのモル比:37)、シリカアルミナ(シリカ/アルミナのモル比:14)及びアルミナバインダーを質量比3:57:40で混合混練し、これを直径約1.6mm、長さ約4mmの円柱状に成型した後、500℃で1時間空気中で焼成し担体を得た。この担体に、塩化白金酸水溶液を含浸し、白金を担持した。これを120℃で3時間乾燥し、次いで500℃で1時間焼成することで触媒Bを得た。なお、白金の担持量は、担体に対して0.8質量%であった。
【0114】
(触媒C)
シリカアルミナ(シリカ/アルミナのモル比:14)及びアルミナバインダーを質量比60:40で混合混練し、これを直径約1.6mm、長さ約4mmの円柱状に成型した後、500℃で1時間空気中で焼成し担体を得た。この担体に、塩化白金酸水溶液を含浸し、白金を担持した。これを120℃で3時間乾燥し、次いで500℃で1時間焼成することで触媒Cを得た。なお、白金の担持量は、担体に対して0.8質量%であった。
【0115】
【表1】
【0116】
(実施例1)
(FT合成炭化水素の分留)
FT合成法により得られた炭化水素油(FT合成炭化水素)(沸点150℃以上の炭化水素の含有量:84質量%、沸点360℃以上の炭化水素の含有量:42質量%、炭素数20〜25の炭化水素含有量:25.2質量%、いずれの含有量もFT合成炭化水素全量(炭素数5以上の炭化水素の合計)基準)を第1精留塔40で、ナフサ留分(沸点が約150℃より低い。)と、中間留分(沸点が約150〜360℃)と、ワックス留分(沸点が約360℃を超える。)とに分留した。
【0117】
(ワックス留分の水素化分解)
単一の固定床流通式反応器(ワックス留分水素化分解反応器50)の前段に触媒A(15ml)を充填し(前処理装置80)、その後段(下流側)に触媒B(150ml)を充填し(水素化処理装置81)、水素気流下、340℃にて2時間これらの触媒を還元した後、上記で得られたワックス留分をこのワックス留分水素化分解反応器50の反応器の塔頂より300ml/hの速度で供給して、水素気流下、表1記載の反応条件で水素化分解した。
【0118】
すなわち、ワックス留分に対して水素/油比676NL/Lで水素を塔頂より供給し、反応塔圧力が入口圧4.0MPaで一定となるように背圧弁を調節し、この条件にて水素化分解を行った。このときの反応温度(SOR(Start Of Run))は315℃であった。
【0119】
(中間留分の水素化精製)
単一の固定床流通式反応器(中間留分水素化精製反応器52)の前段に触媒A(15ml)を充填し(前処理装置80)、その後段(下流側)に触媒C(150ml)を充填し(水素化処理装置81)、水素気流下、340℃にて2時間これらの触媒を還元した後、上記で得られた中間留分をこの中間留分水素化精製反応器52の反応器の塔頂より300ml/hの速度で供給して、水素気流下、表1記載の反応条件で水素化精製した。
【0120】
すなわち、中間留分に対して水素/油比338NL/Lで水素を塔頂より供給し、反応塔圧力が入口圧3.0MPaで一定となるように背圧弁を調節し、この条件にて水素化精製を行った。反応温度(SOR)は338℃であった。
【0121】
(ナフサ留分の水素化精製)
単一の固定床流通式反応器(ナフサ留分水素化精製反応器54)の前段に触媒A(15ml)を充填し(前処理装置80)、その後段(下流側)に触媒C(150ml)を充填し(水素化処理装置81)、水素気流下、340℃にて2時間これらの触媒を還元した後、上記で得られたナフサ留分をこのナフサ留分水素化精製反応器54の反応器の塔頂より300ml/hの速度で供給して、水素気流下、表1記載の反応条件で水素化精製した。
【0122】
すなわち、ナフサ留分に対して水素/油比338NL/Lで水素を塔頂より供給し、反応塔圧力が入口圧2.0MPaで一定となるように背圧弁を調節し、この条件にて水素化精製を行った。反応温度(SOR)は320℃であった。
【0123】
(実施例2)
触媒A(15ml)を充填した固定床流通式反応器(前処理装置80)が、前記ワックス留分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54とは独立して、それぞれの反応器の上流に直列に設けられている構成とした以外は実施例1と同様にして、FT合成炭化水素の処理を行なった。なお、前処理は表1記載の通り、各留分を前処理装置80の反応器の塔頂より300ml/hの速度で、水素を塔頂より各留分に対して水素/油比169NL/Lで供給し、反応器圧力の入口圧が2.0MPaで一定となるように背圧弁を調節し、反応温度(SOR)320℃の条件で行なった。
【0124】
(比較例1)
前処理装置80を設けない構成とした以外は実施例1と同様にして、FT合成炭化水素の処理を行なった。
【0125】
(触媒寿命評価)
各留分の水素化処理において、所定の水素化処理生成油を得るための反応温度が、初期反応温度(SOR)から350℃に達するまでに要する時間を触媒寿命として定義した。
【0126】
なお、触媒寿命評価は、各留分の水素化処理触媒毎に、比較例1の触媒寿命を1.0とした場合の相対値(相対寿命)で比較を行なった。
【0127】
前処理工程を設けた実施例1及び実施例2は、前処理工程を設けない比較例1と較べて、いずれも触媒寿命を長くできることが分かる。