(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Xは、ハリド、メタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、アセタート、トリフルオロアセタート、トシラート、ラクタート、シトラートおよびホルマートから選択される、請求項1に記載の化合物。
ヒトを含めた哺乳類における、癌を含めた増殖性疾患の治療において使用するための、請求項1に記載の式IIの化合物の有効な量を、1種以上の医薬上許容される賦形剤または希釈剤と組み合わせて含む医薬組成物。
(2E)−4−(ジメチルアミノ)−N−{4−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリノ]ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル}−2−ブテナミドである、請求項1に記載の化合物の調製において使用するのに適したキナーゼインヒビター。
【発明を実施するための形態】
【0074】
(定義)
本明細書において用いられる場合、用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」および「アルコキシ」は、特に断りのない限り、直鎖および分枝鎖基並びに無置換および置換基の両方を含む。任意選択の置換基は、制限するものではないが、ハロゲン、C1−C6アルコキシ、CN、OH、NH
2、NO
2、NH(C1−C6アルキル)、N(C1−C6アルキル)
2、CONH
2、CO(C1−C6アルキル)、SO
2NH
2およびSO
2(C1−C6アルキル)を含み得る。
【0075】
本明細書において用いられる場合、用語「四級化可能な窒素」は、特に断りのない限り、求電子性基(例えば、α−メチルハリド/メシラート/トシラートまたはトリフラート)と反応して窒素の四級アンモニウム塩を提供する十分な塩基性(または求核性)の完全に置換された窒素を意味する。
【0076】
本明細書において用いられる場合、用語「芳香族ニトロヘテロ環」は、任意のリング位置で1個以上のニトロ(NO
2)基によって置換された芳香族ヘテロ環部分を意味する。芳香族ヘテロ環部分は、4〜12個の原子を含有し、そのうち少なくとも1個の原子が、窒素、硫黄または酸素から選択される単環式または二環式のリングであり得る。芳香族ヘテロ環部分は、連結された炭素または窒素であり得る。芳香族ヘテロ環部分は、さらに、1個以上のさらなる置換基によって任意の空いているリング炭素またはヘテロ原子において置換され得る。置換基は、式IIIにおいてR
8について定義される基を含み得るが、それらに限定されない。
【0077】
本明細書において用いられる場合、用語「芳香族ニトロ炭素環」は、任意の位置で1個以上のニトロ(NO
2)基によって置換されたベンゼン部分を意味する。さらに、2個の隣接するリング炭素原子は、場合により連結して、縮合炭素環式リングまたはヘテロ環式リングを形成してもよい。ベンゼン部分(および場合による縮合環)は、1個以上のさらなる置換基によって任意の空いている炭素またはヘテロ原子においてさらに置換されてもよい。置換基は、式IIIにおいてR
8について定義される基を含み得るが、それらに限定されない。
【0078】
本明細書において用いられる場合、用語「システイン捕捉官能基(cysteine trapping functionality)」は、タンパク質の対を形成していないシステイン残基と共有結合的に反応するのに十分な反応性の求電子性基を意味する。
【0079】
(詳細な説明)
上記で定義されるように、大まかには、本発明は、キナーゼ活性のインヒビターである化合物、特に、このような阻害が治療目的のためである化合物に関する。キナーゼ阻害は、例えば、増殖性疾患または障害の治療において有用であり得る。これによって、本発明の化合物は、抗癌剤として、特に、ターゲッティングされる抗癌剤として有用となる。
【0080】
一形態では、本発明の化合物は、キナーゼインヒビターと、正電荷を有する化合物により還元されるとフラグメント化する(還元的トリガー)、芳香族ニトロヘテロ環またはニトロ炭素環とを含む。化合物の正電荷は、重要な利点を、特に、癌の治療において有し、このことは、以下に記載されることになる。
【0081】
トリガーを還元するのに必要な還元性等価物は、酵素、放射線誘導性ラジカルまたは化学的還元剤によって提供され得る。放射線は、例えば、トリガーを還元する際およびキナーゼインヒビターの放出を単数または複数の腫瘍が存在する領域へターゲッティングする際の両方において特に有効であり得る。しかしながら、現在、還元が酸素の存在下で抑制されるよう、トリガーが腫瘍内に存在する内因性酵素(特に、内因性一電子還元酵素)によって還元されることが好ましい。一電子還元酵素によるこの好ましい還元は、キナーゼインヒビターの、腫瘍内の低酸素症の領域への放出を効果的にターゲッティングする。したがって、この形態では、化合物は、プロドラッグであり、このものは、腫瘍関連環境(「還元的活性化」とも呼ばれる)内での還元の際に、キナーゼインヒビターを放出して、抗癌作用を生じさせる。
【0082】
キナーゼインヒビターは、ひとたび、還元的トリガーから放出されるとキナーゼインヒビターとしての活性を有するあらゆる分子または構造であり得る。通常、インヒビターは、無傷または実質的に無傷のキナーゼインヒビターであり、これに、トリガーが結合されるか機能的に連結され、無傷のキナーゼインヒビターは、還元の際に放出される。
【0083】
キナーゼインヒビターは、可逆性であっても、不可逆性であってもよい。しかしながら、本明細書における化合物における還元的トリガーとの組合せには、不可逆性インヒビターが好ましい。最も好ましいのは、不可逆性erB1, 2, 4キナーゼインヒビター、特に、ATP競争性の不可逆性erb1, 2, 4キナーゼのインヒビターであり、このものは、腫瘍細胞の生存、増殖、転移および治療抵抗性に関与しているシグナル伝達経路を阻害する。これらのインヒビターは、塩基性第三アミン部分を必要とする。第三アミン部分は、システイン捕捉官能基と極めて接近することになる。これは、例えばerbB−インヒビターBを有するエポキシドであり得る(Carmi,C et al., J. Med. Chem. 2010, ASAP Online, DOI:10:1021/jm901558p)。より好ましくは、システイン捕捉官能基は、マイケル受容基である。このような実施形態では、マイケル受容基は、二重または三重結合のいずれかを含有し得る。アミンは、erbB1、2および4のATP−結合ドメインの口部のシステイン残基とマイケル受容基との間の反応の塩基触媒作用を提供し、キナーゼターゲットの不可逆性阻害をもたらす。キナーゼ−不活性のerbB3を通じた細胞シグナリングの阻害は、そのヘテロ二量体化パートナーの阻害を介してこのような化合物によって達成され、その結果、事実上、全erbBファミリー(erbB1-4)を通じた細胞シグナリングは、これらの化合物によって阻害される。
【0084】
上記のように、プロドラッグの還元的トリガーは、還元時にフラグメント化を受ける芳香族ニトロヘテロ環またはニトロ炭素環である。このニトロヘテロ環またはニトロ炭素環ユニットは、好ましくは、四級化可能な窒素を介して、例えば、環外メチレンリンカーを通じてキナーゼインヒビターと連結して、四価窒素を形成し、それにより、正電荷を作り出す。還元的条件下でのトリガーのフラグメント化は、活性なキナーゼインヒビターを放出し、トリガーが連結する窒素は、放出されるキナーゼインヒビターの一部のままである。
【0085】
内因性還元酵素による活性化のために、還元的トリガーのフラグメント化が、酸素によって効果的に抑制されるという必要条件が重要である。トリガーのフラグメント化は、内因性一電子還元酵素によって一電子還元レベルで生じる。酸素による効果的なフラグメント化の抑制は、酸素による一電子ラジカルの再酸化を通じて、またはプロドラッグ還元に必要な中間体を還元することによる酸化を通じて生じ得る。後者は、例えば、水和電子などの放射線誘導還元性ラジカルの酸素によるスカベンジング、またはレダクターゼ酵素の触媒サイクルにおける還元性中間体の酸化を含むだろう。しかし、メカニズムが何であれ、酸素抑制効果が結果である。
【0086】
このような抑制は、プロドラッグの選択的ターゲッティングにとって重要である。腫瘍関連環境は、通常、低酸素性となる。理論に拘束されることを望まないが、低酸素性組織へのインヒビターの放出および腫瘍の酸素化領域へのインヒビターのその後の逆拡散(back-diffusion)の制限が、内因性酵素を介した腫瘍選択性の主な根拠であると信じられる。キナーゼインヒビターの腫瘍への放出のこのターゲッティングはまた、このようなインヒビター、特に、広範囲のキナーゼ−受容体結合ターゲットを有する不可逆性erbB1、2、4インヒビターの治療機会を広げることにおいて有益である。
【0089】
[式中、
*は、結合点であり;
R
8は、H、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、CF
3、OCF
3、F、Cl、Br、I、NO
2、CN、COOH、COO(C1−C6アルキル)、CONH
2、CONH(C1−C6アルキル)、CON(C1−C6アルキル)
2、CO(C1−C6アルキル)、SO
2NH
2、SO
2NH(C1−C6アルキル)、SO
2N(C1−C6アルキル)
2、SO
2(C1−C6アルキル)および式VIaの基(上記で定義される通りであるが、
*が式IIIの基への結合点である)から選択され;
R
9は、H、C1−C6アルキルおよび式VIaの基(上記で定義される通りであるが、
*が式IIIの基への結合点である)からなる群から選択され;
R
10は、HおよびC1−C6アルキルから選択される]
のものが挙げられる。
【0090】
現在最も好ましいトリガーは、以下の式:
【0092】
[式中、
*は、結合点であり、R
8は、HおよびC1−C3アルキルから選択され、R
9は、HおよびC1−C6アルキル、好ましくは、C1−C3アルキルから選択される]
のものである。
【0093】
複数のこれらのトリガーは、以下の部分:
【0096】
正電荷および上記のように選択されたトリガーを有することに加え、プロドラッグは、NHEに対して−0.2〜−0.6Vの一電子還元電位(E(1))を有することがさらに好ましい。E(1)値は、低酸素性条件下での還元のために本発明の化合物を最適化することにおいて役に立つ。より好ましくは、E(1)値は、NHEに対して、−0.3〜−0.5V、さらにより好ましくは−0.35〜−0.45V、最も好ましくは−0.4〜−0.45Vである。化合物のE(1)は、MeiselおよびCzapskiによって記載されたように決定され得る(J. Phys. Chem., 1975, 79, 1503〜1509)。
【0097】
プロドラッグが一電子還元下でフラグメント化して、キナーゼインヒビターを放出する速度に関して特定の判定基準を本発明のプロドラッグが満たすことも好ましい。これらの速度(フラグメント化速度定数として表される)は、1〜4000s
−1であり得、1〜3000s
−1、1〜1500s
−1、2〜500s
−1、2〜300s
−1、2〜60s
−1および20〜60s
−1の間の範囲が代表的であるが、より速いまたは遅い本発明のプロドラッグのフラグメント化が望ましいと見なされるかどうかに応じて変わる。
【0098】
一電子還元されたプロドラッグのフラグメント化の速度定数kfragは、パルス放射線分解を用いて測定され得、ベンジルタイプのラジカルの吸収スペクトルの形成が観察される[Anderson, R. F. et al,. J. Phys. Chem A, 101:9704〜9769,1997]。
【0099】
特に好ましい実施形態では、プロドラッグを構成するトリガー/キナーゼインヒビターの組合せは、組合せにおける特定の判定基準に一致するよう選択され得る。例えば、トリガー/キナーゼインヒビターの組合せは、E(1)値:−0.2〜−0.6Vおよび一電子還元についてのフラグメント化速度定数:1〜4000s
−1、E(1)値:−0.3〜−0.5Vおよび一電子還元についてのフラグメント化速度定数:1〜3000s
−1(好ましくは1〜1500s
−1)、E(1)値:−0.35〜−0.45Vおよび一電子還元についてのフラグメント化速度定数:2〜500s
−1、10〜300s
−1または20〜60s
−1、およびE(1)値:−0.4〜−0.45Vおよび一電子還元についてのフラグメント化速度定数:20〜60s
−1(好ましくは40〜55s
−1)を有するよう選択され得る。
【0100】
全般的に、フラグメント化還元活性化トリガーおよびキナーゼインヒビターの組合せによって形成される本発明のプロドラッグは、本出願者によって、それらをターゲッティングされる抗癌剤として特に適しているものにする、多くの驚くべき特性を有するように決定されてきた。これらの特性のうち一番に挙げられるのは、それらのターゲッティングされる有効性である。本出願人は、当該技術において既に一般に知られている多数の還元的トリガー、例えば、カルバミン酸ニトロベンジル(Hay et al. J. Med. Chem, 2003, 46, 2456-2466; Sykes et al., J. Chem. Soc. Perk. Trans. 1, 2000, 10, 1601-1608; Hay et al., J. Chem. Soc. Perk. Trans. 1, 1999, 2759-2770)、カルバミン酸ニトロアリールメチル(Hay et al., Tetrahedron, 2000, 56, 645-657; Hay et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1999, 9, 2237-2242; Davis et al., PCT国際出願WO 2006032921)、5−ニトロフラン−2−イルメチリデンエーテル(Mahmud et al., Anticancer Drug Des, 1998, 13, 655-662)、ニトロベンジルチオエーテル(Thomson et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2007, 17, 4320-4322)、ニトロチエニルプロパ−2−イルエーテル(Thomson et al., Mol. Cancer. Ther., 2006, 5(11), 2886-2894)および2−アリール−6−メチル−5−ニトロキノリンエーテル(Couch et al., Tetrahedron, 2008, 64, 2816-2823)を超越して、最初に、プロドラッグのターゲッティングされた腫瘍の隣接領域へ安全に送達し、次いで、治療的抗腫瘍作用を有するように支配的な腫瘍関連条件下にフラグメント化して細胞毒性エフェクタを放出することを可能にするのは、特に、上記定義のトリガーおよび好ましい四級塩であることを決定した。安定性を欠き、腫瘍領域に送達する前に活性化されるか、または、エフェクタを効果的に放出せず、腫瘍への細胞毒性の影響が大きく低減したかのいずれかの他の還元的トリガーとのよい対照をなす。これは、本発明に根拠を与える驚くべき有効性である。
【0101】
還元的トリガーがキナーゼインヒビターと四級窒素塩としてカップリングされる場合(好ましい場合)に、本発明のプロドラッグのこの能力は、特に驚くべきものである。アルキル化剤メクロレタミンの還元的プロドラッグとしての一連のニトロアリールメチル四級塩の合成および評価は、Tercel,M.et al., J. Med. Chem. 2001, 44, 3511〜3522に報告された。著者は、一連のこのようなプロドラッグ化合物にわたる高度に可変性の毒性を報告した。腫瘍選択的細胞毒性活性の点で最も有望な化合物に関してでさえ、活性が、予測不可能な宿主毒性を伴うことが報告された。結論は、ニトロアリールメチル四級塩は、「生体還元性薬剤として役に立つメクロレタミンの非特異的放出に関してあまりにも不安定である」ということであった(3517頁参照のこと)。
【0102】
定義されたE(1)および定義されたフラグメント化速度定数を有するプロドラッグの好ましい選択はまた、以下に記載されるように、低酸素下での効率的な一電子還元および一過性の移動する腫瘍内低酸素のターゲッティングの両方を補助するという点で、利点を提供する。
【0103】
(本発明の四価窒素塩プロドラッグの調製)
本発明の式Iおよび式IIのプロドラッグ化合物は、ニトロヘテロ環還元的トリガーと連結しているエフェクタ部分を含む。
【0104】
エフェクタ部分は、可逆性または不可逆性のキナーゼインヒビターであり得る。それは、ATP−結合ドメイン中、キナーゼ基質結合ドメイン中、またはアロステリック結合部位中に結合することによってキナーゼを阻害し得る。不可逆性インヒビター、特に、不可逆性erbB1、2、4キナーゼインヒビターが好ましい。
【0105】
その他のクラスのキナーゼインヒビターの例として、PDGFRα、PDGFRβ、VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、ABL、KIT、AKT1、AKT2、AKT3、p70 S6K、MEK、c-MET、JAK2、JAK3、SRC、LCK、p38 MAPK、CHK1、CHK2、FGFR、DNA-PK、ATM、ATR、AuroraA、AuroraB、P13Kファミリーアイソフォームp110α、β、δ、γおよびmTORのインヒビターが挙げられる。
【0106】
本発明において有用なキナーゼインヒビターの具体的な例として、AST-487、CHIR-258、イマチニブ、VX-680、LY-333531、MLN-518、SU-14813、スニチニブ、PI-103、ZD6474、ソラフェニブ、ダサチニブ、PD 166285、PD 166285類似物A、PD 166285類似物B、AEE788、N−メチルスタウロスポリン、BIBW2992、HKI272、EKB569、ゲフィチニブ、バルガテフ(Vargatef)、セジラニブ、ボスチニブ、AZD0530、BIRB796、PHA-665752、10-DEBC、GDC-0941、MK-2206類似物、マシチニブ(Masitinib)、SU11274、XL880、XL184、ZM39923、AZD1152、ダヌセルチブ(Danusertib)、ZM447439およびPKI-587が挙げられる。
【0107】
最も好ましい不可逆性erbB1、2、4キナーゼインヒビターは、6位にアミドマイケル受容基を有し、システイン捕捉官能基を提供する。これらのインヒビターに関して、マイケル受容基は、二重または三重結合のいずれかを特徴とし得、以下に示される、第三アミンで終結する可変長のメチレン鎖によりβ炭素で置換され得る。
【0109】
当然のことではあるが、式VII中に示されていないエフェクタ部分の残部は、式IIに定義される二環式芳香族リング構造を有する。
【0110】
大まかに言えば、式Iおよび式IIの好ましいプロドラッグ化合物は、ニトロヘテロ環還元的トリガー部分を用いて脂肪族第三アミンまたは芳香族ヘテロ環式アミンエフェクタ部分を四級化することによって調製され得る。式Iおよび式IIの化合物を調製する方法は、以下に、より詳細に記載される。
【0111】
(不可逆性erbB1、2、4キナーゼインヒビターの調製)
式VIIのエフェクタ化合物であって、上記に示され、YおよびZが、同時に両方ともNではなく、マイケル受容基が二重結合を含有するものは公知であり、当技術分野において記載される方法に従って調製され得る。例えば、このような化合物およびその調製方法は、Tsou et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734、Wissner et al., J. Med. Chem., 2003, 46, 49〜63、Wissner et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2004, 14, 1411〜1416、Tsou et al., J. Med. Chem., 2005, 48, 1107〜1131、Klutchko et al., J. Med. Chem., 2006, 49, 1475〜1485、米国特許第6,251,912号(Wissner et al)、米国特許出願2002/0173509(Himmelsbach et al)、米国特許第7,019,012号(Himmelsbach et al)、米国特許出願第2005/0250761号(Fakhoury et al)、米国特許第6,288,082号(Wissner et al)、米国特許第6,297,258号(Wissner et al)、米国特許第7,399,865号(Wissner et al)、米国特許第6,355,636号(Wissner et al)、米国特許第6,602,863号(Bridges et al)に記載されている。
【0112】
また、例として、以下に示される化合物11、12および13は、Tsou et al., J. Med. Chem. 2001; 44: 2719〜34に開示される方法によって調製され得る。
【0114】
下記スキーム1は、Tsou et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734の方法に基づく、6−ニトロ−4(3H)−キナゾリノン(66)(Morley et al.,J. Chem. Soc., 1948, 360〜366)からの、本発明における使用に適したキナゾリンエフェクタ化合物の調製を説明する。
【0116】
下記スキーム2は、Tsou et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734およびSmaill et al., J. Med. Chem., 2000, 43, 1380〜1397の方法に基づく、7−フルオロ−6−ニトロ−4(3H)−キナゾリノン(72)(Rewcastle et al., J Med Chem, 1996, 39, 918〜928)からの、本発明における使用に適した7−アルコキシキナゾリンエフェクタ化合物の調製を説明する。
【0118】
下記スキーム3は、Wissner et al., J. Med. Chem., 2003, 46, 49〜63によって報告された方法に基づく、7−アルコキシ−4−クロロ−6−ニトロ−3−キノリンカルボニトリル(78)からの、本発明における使用に適した7−アルコキシキノリンカルボニトリルエフェクタ化合物の調製を説明する。
【0120】
下記スキーム4は、Wissner et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2004, 14, 1411〜1416によって報告された方法に基づく、4−クロロ−6−フルオロ[1,7]ナフチリジン−3−カルボニトリル(83)からの、本発明における使用に適した4−アニリノ−[1,7]ナフチリジン−3−カルボニトリルエフェクタ化合物の調製を説明する。
【0122】
下記スキーム5は、Rewcastle et al., J. Chem. Soc., Perkins. Trans. 1, 1996, 2221〜2226;Smaill et al., J. Med. Chem., 1999, 42, 1803〜1815;Klutchko et al., J. Med. Chem., 2006, 49, 1475〜1485;Soyka et al., US 2005/0085495 A1およびTsou et al.,J. Med. Chem.,2001,44,2719〜2734の方法を用いる、市販の6−フルオロ−3−ピリジンアミン(89)か
ら、既知の中間体6−フルオロピリド[3,4−d]ピリミジノン(93)(Rewcastle et al., J. Chem. Soc., Perkins. Trans. 1, 1996, 2221〜2226)を通じて進行する、本発明における使用に適した4−アニリノピリド[3,4−d]ピリミジンエフェクタ化合物の調製を説明する。
【0124】
上記スキーム1〜5は、R
5が式IVaのものであるように選択される場合の合成ルートの例を表す。Tsou et al., J. Med. Chem., 2005, 48, 1107〜1131によってキノリンカルボニトリルエフェクタ化合物について証明されているように、上記ルートは、R
5が式IVb〜IVgから選択される場合に同様に適用され得ることが理解されるだろう。
【0125】
下記スキーム6は、本発明における使用に適した2つの特定のエフェクタ化合物の調製を説明する。化合物14および16は、既知の6−アミノ誘導体8(Bridges et al.,J. Med. Chem., 1996, 39, 267〜276)および10(Rewcastle et al., J. Med. Chem., 1995, 38, 3482〜3487)と、(2E)−4−ブロモ−2−ブテノイルクロリドまたは4−クロロブタノイルクロリドのいずれかとの反応、続く、得られたアルキルハリドとジメチルアミン水溶液との反応によって調製され得る。
【0127】
化合物161、170および171は、下記スキーム7によって調製され得る:
【0129】
(プロドラッグの調製)
式Iのプロドラッグ化合物は、一般的には、脂肪族第三級アミンまたは芳香族ヘテロ環式アミンを含むキナーゼインヒビターを適当なニトロヘテロ環式またはニトロ炭素環式のα−メチルハリド/メシラート/トシラートと、適切な溶媒中で適切な時間にわたって(例えば、テトラヒドロフラン中で約24時間にわたって)反応させ、式Iの四価窒素塩を生じさせることによって調製され得る。
【0130】
式IIのプロドラッグ化合物は、一般的には、上記定義の式VIIのエフェクタ化合物を適当なニトロヘテロ環式またはニトロ炭素環式のα−メチルハリド/メシラート/トシラートと、適切な溶媒中で適切な時間長にわたって(例えば、テトラヒドロフラン中で約24時間にわたって)反応させ、式IIの四級アンモニウム塩を生じさせることによって調製され得る。
【0131】
本発明のプロドラッグにおける使用に適した、好ましい還元的トリガー部分は、下記の式IIIのものである:
【0133】
[式中、
*、R
8、R
9およびR
10は、前に定義したとおりである]。
【0134】
特に好ましいトリガーは、以下の通りである:
【0136】
上記のIIIc-1およびIIId-1のα−メチルハリドは公知である(ブロミド;Stribbling et al., PCT国際特許公報WO2008/039087);(クロリド;Tercel et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 3511〜3522;Jentzer et al., Eur. J. Med. Chem., 1991; 26, 687〜697)あるが、これは、上記IIIq-1およびIIIq-2のα−メチルブロミドも同様である(それぞれ、Everett et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1999, 9, 1267〜1272およびJiao et al., WO2008151253 A1)。
【0137】
下記スキーム8は、市販の出発材料からの、既知のα−メチルブロミド(105)への3つの代替ルートを説明する。
【0139】
下記スキーム9は、市販の出発材料からの、新規なα−メチルブロミド115および116への2つの代替ルートを説明する。
【0141】
下記スキーム10は、市販の出発材料からの、新規なα−メチルブロミド122へのルートを説明する。
【0143】
下記スキーム11は、市販の出発材料からの新規なα−メチルブロミド125へのルートおよび2−ブロモイミダゾール153(下記)からの新規なα−メチルブロミド127および130へのルートを説明する。
【0145】
下記スキーム12は、市販の出発材料または2−ブロモイミダゾール誘導体123または154(下記)からの、新規なα−メチルブロミド136へのルートを説明する。
【0148】
下記スキーム13は、2−ブロモイミダゾール中間体123および149(下記)それぞれからの、調製トリガー178、180、183、185および188へのルートを説明する。
【0150】
下記スキーム14は、脂肪族第三級アミンまたは芳香族ヘテロ環式アミンを含むキナーゼインヒビターを適当なニトロヘテロ環式α−メチルハリド/メシラート/トシラートと、適切な溶媒中で適切な時間長にわたって(例えば、テトラヒドロフラン中約24時間にわたって)反応させることによる、式Iおよび式IIの四価窒素塩化合物へのルートを説明する。
【0152】
下記スキーム15は、本発明による式IIの多くのプロドラッグ化合物の調製を説明する。
【0153】
本発明の四級アンモニウム塩プロドラッグの合成は、下記スキーム15に示されるように行われた。(2E)−N−[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(11)(Tsouet al., J. Med. Chem., 2001; 44: 2719〜34)は、適当なニトロヘテロ環式α−メチルハリドと、典型的にはテトラヒドロフラン中24時間にわたって反応させられて、四級アンモニウム塩(17−22)が、微細沈殿物として提供され、この沈殿物は、ろ過によって集められ、テトラヒドロフランおよびジエチルエーテルにより洗浄される。同様に、化合物12〜14および16は、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(Stribbling et al., PCT国際特許公報WO2008/039087)と反応させられて、それぞれ四級アンモニウム塩プロドラッグ23〜25および27が与えられる。必要なニトロヘテロ環式α−メチルハリド、2−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾールおよび5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−ピラゾールは、それぞれ、既知クロロメチルイミダゾール(Jentzer et al., Eur. J. Med. Chem. 1991; 26: 687〜697)およびクロロメチルピラゾール(Tercel et al., J. Med. Chem. 2001; 44: 3511〜22)前駆体のLiBr媒介ブロミド交換によって調製された。立体障害型の、反応がより遅いピペリジンおよびモルホリン含有誘導体(12および13)の四級化は、N−メチル−2−ピロリジノン(N-methyl-2-pyrolidinone:NMP)中で行われ、それぞれ、化合物23および24が与えられた。
【0155】
下記スキーム16〜19は、本発明による複数のプロドラッグ化合物の調製を説明する。
【0160】
本発明は、下記の限定されない実験セクションAおよびBを参照することによってよりよく理解されることになる。
【0161】
(実験)
(セクションA)
(A.1 合成)
(A.1.1 化学合成)
燃焼分析は、Microchemical Laboratory, University of Otago, Dunedin, NZで行われた。融点は、いずれも、Electrothermal Model 9200を使用して測定され、読み取りのとおりである。
1H NMRスペクトルは、いずれも、Bruker Avance-400分光計において測定され、Me
4Siが基準とされた。高分解能マススペクトルは、公称5000の分解能のVarian VG-70SE分光計で記録された。質量分析は、ThermoFinnigan MSQシングル四重極型質量分析計において行われた。質量検出は、APCI源を用い、正負イオン同時捕捉を使用して行われた。特に断りのない限り、化合物は、指示された溶出剤を使用する、シリカゲル60担体(support)(Scharlau, 230-400メッシュASTM)によるフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製された。
【0162】
(A.1.1.1 一般的手順A:キナーゼインヒビターエフェクタの合成)
N
4−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−4,6−キナゾリンジアミン(8)(4.0g,12.5mmol)の無水テトラヒドロフラン(150mL)中の攪拌溶液に、窒素下で、トリエチルアミン(19mmol)、続いて、新たに調製した、無水テトラヒドロフラン(50mL)中の(2E)−4−ブロモ−2−ブテノイルクロリド(15mmol)を加えた。次いで、得られた溶液を、室温で2時間にわたって攪拌し、減圧下に濃縮した。ジクロロメタンからの粉砕(trituration)によって、粗(2E)−4−ブロモ−N−[4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−キナゾリニル]−2−ブテナミド(4.6g)を得、これをそのまま使用した。
【0163】
上の粗(2E)−4−ブロモ−N−[4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−キナゾリニル]−2−ブテナミド(1.0g,2.15mmol)のジメチルアセトアミド(35mL)中の攪拌溶液に、0℃で、過剰のジメチルアミン水溶液(40%,5mL)を加えた。3時間後、反応物を、食塩水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3回)。合わせた有機抽出物を食塩水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、減圧下に濃縮した。次いで、ジクロロメタン/メタノール(5:95から15:85)を用いて溶出するシリカゲルによるクロマトグラフィーによって、(2E)−N−[4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−キナゾリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(14)(0.74g,80%)を、白色の固体として得た。
【0164】
m.p.(MeOH)179〜181℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 9.78 (s, 1H), 9.64 (s, 1H), 8.93 (s, 1H), 8.53 (s, 1H), 8.13 (dd, J=2.6, 6.9Hz, 1H), 7.83-7.79(m, 1H), 7.42(dd, J=9.1Hz, J
H-F=9.1Hz, 1H), 7.29(s, 1H), 6.80(td, J=6.0, 15.4Hz, 1H), 6.58(d, J=15.4Hz, 1H), 4.01(s, 3H), 3.08(d, J=6.0Hz, 2H), 2.19(s, 6H).分析値:C, 56.32;H, 5.14;N, 15.73. C
21H
21ClFN
5O
2.H
2O理論値:C, 56.32;H, 5.18;N, 15.64.
【0165】
N
4−(3−ブロモフェニル)−4,6−キナゾリンジアミン(10)(1.76g,5.58mmol)を、4−クロロブタノイルクロリド(0.75mL,6.70mmol)、次いで、ジメチルアミン水溶液と、(第一工程をジオキサン中で行い、第二工程を50℃で24時間にわたって行うことを除き)一般手順Aに従って反応させることにより、N−[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]−4−(ジメチルアミノ)ブタンアミド(16)(36%)を、白色の固体として得た。
【0166】
m.p.(MeOH)180〜182℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.23 (s, 1H), 9.87(s, 1H), 8.72(d, J=2.0Hz, 1H), 8.57(s, 1H), 8.17(dd, J=1.9, 1.9Hz, 1H), 7.88-7.84(m, 2H), 7.77(d, J=8.9Hz, 1H), 7.37-7.27(m, 2H), 2.43(t, J=7.2Hz, 2H), 2.29(t, J=7.2Hz, 2H), 2.16(s, 6H), 1.78(quintet, J=7.2Hz, 2H).分析値:C, 55.46;H, 5.33;N, 15.96. C
20H
22BrN
5O.
1/
4H
2O理論値:C, 55.50;H, 5.24;N, 16.18.
(A.1.1.2 一般的手順B:LiBr媒介によるハリド交換(スキーム8、経路2について)
2−(クロロメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(485mg,2.76mmol)およびLiBr(4.80g,55.2mmol)のアセトン中の混合物を5時間にわたって還流加熱した後、溶媒を全て減圧下で除去した。残渣を酢酸エチルと水とで分液した。水相を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機相を食塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、真空で濃縮した。粗生成物をDCM/ヘキサンから再結晶化させ、2−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(576mg,95%)を、灰白色の固体として得た。
【0167】
m.p.130〜132℃。
1H NMR (CDCl
3, 400MHz) δ 7.74 (s, 1H), 4.50(s, 2H), 3.83(s, 3H).分析値:C, 27.81;H, 3.27;N, 19.05. C
5H
6BrN
3O
2.0.04ヘキサン 理論値:C, 28.16;H, 2.96;N, 18.80.HRMS (FAB+)実測値:219.97220, 221.97018 (M+1),C
5H
779/81BrN
3O
2の計算値: 219.97216, 221.97012.
5−(クロロメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−ピラゾール(80mg,0.54mmol)をLiBrと、一般手順Bに従って反応させることによって、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−ピラゾール(70mg,70%)を、白色の結晶固体として得た。
【0168】
m.p.71〜73℃。
1H NMR (CDCl
3, 400MHz) δ 8.08(s, 1H), 4.82(s, 2H), 3.95(s, 3H).分析値:C, 27.76;H, 3.08;N, 18.99. C
5H
6BrN
3O
2.0.02ヘキサン 理論値:C, 27.73;H, 2.86;N, 18.95.HRMS (FAB+)実測値: 219.97223, 221.97012(M+1), C
5H
779/81BrN
3O
2の計算値: 219.97216, 221.97012.
(A.1.1.3 一般的手順C:四級アンモニウム塩プロドラッグの調製)
(2E)−N−[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(11)(150mg,0.35mmol)の無水テトラヒドロフラン(15mL)中の攪拌溶液に、窒素下で、4−ニトロベンジルブロミド(84mg,1.1モル当量,0.39mmol)を加えた。次いで、得られた溶液を、室温で24時間にわたって攪拌し、白色の沈殿物を得、この沈殿物を、ろ過により集め、無水テトラヒドロフランおよびジエチルエーテルで洗浄し、(2E)−4−{[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−(4−ニトロベンジル)−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(17)(101mg,45%)を得た。
【0169】
m.p.178〜181℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.75(s, 1H), 9.93 (s, 1H), 8.77(s, 1H), 8.61(s, 1H), 8.39(d, J=8.7Hz, 2H), 8.18(br s, 1H), 8.04(d, J=9.0Hz, 1H), 7.93-7.83(m, 4H), 7.38-7.29(m, 2H), 7.04(td, J=7.3, 15.2Hz, 1H), 6.68(d, J=15.2Hz, 1H), 4.78(s, 2H), 4.30(d, J=7.3Hz, 2H), 3.07(s, 6H).分析値:C, 50.02;H, 4.30;N, 12.75. C
27H
26Br
2N
6O
3.
1/
4H
2O理論値:C, 50.14;H, 4.13;N, 12.99.
11(200mg,0.47mmol)を、2−ニトロベンジルブロミド(111mg,0.52mmol)と一般手順Cに従って反応させることにより、(2E)−4−{[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−(2−ニトロベンジル)−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(18)(221mg,73%)を得た。
【0170】
m.p.166〜169℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.76(s, 1H), 9.94(s, 1H), 8.80(s, 1H), 8.61(s, 1H), 8.22-8.17(m, 2H), 8.04(d, J=9.0Hz, 1H), 7.95-7.82(m, 5H), 7.37-7.28(m, 2H), 7.01(td, J=7.3, 15.2Hz, 1H), 6.71(d, J=15.2Hz, 1H), 5.01(s, 2H), 4.38(d, J=7.3Hz, 2H), 3.04(s, 6H).分析値:C, 50.66;H, 4.29;N, 12.88. C
27H
26Br
2N
6O
3理論値:C, 50.49;H, 4.08;N, 13.08.
11(200mg,0.47mmol)を、2−(ブロモメチル)−1−メチル−5−ニトロ−1H−ピロール(123mg,0.56mmol)と一般手順Cに従って反応させることにより、(2E)−4−{[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−5−ニトロ−1H−ピロール−2−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(19)(207mg,68%)を得た。
【0171】
m.p.164〜168℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.74(s, 1H), 9.93 (s, 1H), 8.77(s, 1H), 8.61(s, 1H), 8.18(br s, 1H), 8.03(d, J=8.9Hz, 1H), 7.88-7.82(m, 2H), 7.37-7.28(m, 3H), 6.99(td, J=7.3, 15.2Hz, 1H), 6.71-6.65(m, 2H), 4.84(s, 2H), 4.33(d, J=7.3Hz, 2H), 4.01(s, 3H), 3.08(s, 6H).分析値:C, 48.34;H, 4.68;N, 14.19. C
26H
27Br
2N
7O
3.
1/
4THF.
1/
2H
2O理論値:C, 48.23;H, 4.50;N, 14.58.
11(129mg,0.30mmol)を、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(70mg,0.32mmol)と一般手順Cに従って反応させることにより、(2E)−4−{[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(20)(139mg,72%)を得た。
【0172】
m.p.163〜167℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.75(s, 1H), 9.96(s, 1H), 8.81(s, 1H), 8.61(s, 1H), 8.17(br s, 1H), 8.15(s, 1H), 7.99(d, J=9.0Hz, 1H), 7.88-7.83(m, 2H), 7.38-7.29(m, 2H), 7.02(td, J=7.3, 15.2Hz, 1H), 6.71(d, J=15.2Hz, 1H), 5.08(br s, 2H), 4.48(d, J=7.3Hz, 2H), 3.89(s, 3H), 3.13(s, 6H).分析値:C, 45.23;H, 4.36;N, 16.34. C
25H
26Br
2N
8O
3.
1/
10THF.1
1/
4H
2O理論値:C, 45.13;H, 4.37;N, 16.57.
(A.1.1.4 一般的手順D:N−メチル−2−ピロリジノン中での四級アンモニウム塩プロドラッグの調製)
(2E)−N−[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(11)(150mg,0.35mmol)の無水N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)(1mL)中の攪拌溶液に、窒素下で、2−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(52mg,0.66モル当量,0.23mmol)を、少量ずつ5時間かけて加えた。次いで、得られた溶液を室温で20時間にわたって攪拌した後、ジエチルエーテルを加えた。得られた沈殿物を、ろ過し、ジクロロメタンで十分に洗浄した。粗生成物を、ジオキサンの添加によるアセトニトリル(痕跡量のトリエチルアミンを含有する)からの分別沈殿によって精製した。沈殿物を、遠心機により母液から分離し、THFおよびDCM(1:1)の混合物で3回洗浄し、真空下で乾燥させ、(2E)−4−{[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−2−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(21)(127mg,84%)を得た。
【0173】
m.p.184〜187℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.69(s, 1H), 9.91(s, 1H), 8.76(s, 1H), 8.61(s, 2H), 8.17(t, J=1.9Hz, 1H), 7.99(d, J=9.0Hz, 1H), 7.88-7.83(m, 2H), 7.37-7.29(m, 2H), 7.00(td, J=7.3, 15.2Hz, 1H), 6.64(d, J=15.2Hz, 1H), 4.79(s, 2H), 4.36(d, J=7.2Hz, 2H), 3.88(s, 3H), 3.19(s, 6H).分析値:C, 46.11;H, 4.33;N, 16.78. C
25H
26Br
2N
8O
3.
1/
2H
2O理論値:C, 45.82;H, 4.15;N, 17.10.HRMS (FAB+)実測値:565.13144, 567.12820 (M-Br), C
25H
2679/81BrN
8O
3+の計算値:565.13112, 567.12908.
11(150mg,0.35mmol)を、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−ピラゾール(52mg,0.23mmol)と23時間にわたって一般手順Dに従って反応させることにより、(2E)−4−{[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−ピラゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(22)(94mg,62%)を得た。
【0174】
m.p.178〜182℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.71(s, 1H), 9.93(s, 1H), 8.79(s, 1H), 8.61(s, 1H), 8.56(s, 1H), 8.17(br s, 1H), 7.98(d, J=8.8Hz, 1H), 7.88-7.83(m, 2H), 7.37-7.29(m, 2H), 7.00(td, J=7.3, 15.2Hz, 1H), 6.69(d, J=15.2Hz, 1H), 5.11(s, 2H), 4.47(d, J=7.1Hz, 2H), 4.11(s, 3H), 3.15(s, 6H).分析値:C, 45.54;H, 4.50;N, 16.30. C
25H
26Br
2N
8O
3.H
2O.
1/
4ジオキサン 理論値:C, 45.50;H, 4.41;N, 16.33.HRMS (FAB+)実測値:565.13015, 567.13016 (M-Br), C
25H
2679/81BrN
8O
3+の計算値: 565.13112, 567.12908.
NMP(4mL)中で(E)−N−(4−(3−ブロモフェニルアミノ)キナゾリン−6−イル)−4−(ピペリジン−1−イル)ブタ−2−エナミド(12)(1.0g,2.14mmol)を、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(315mg,1.43mmol)と3.5日間にわたって一般手順Dに従って反応させることによって、1−((2E)−4−{[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]アミノ}−4−オキソ−2−ブテニル)−1−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]ピペリジニウムブロミド(23)(600mg,61%)を得た。
【0175】
m.p.188℃(分解)。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.73(s, 1H), 9.94(s, 1H), 8.82(s, 1H), 8.61(s, 1H), 8.17(t, J=1.8Hz, 1H), 8.14(s, 1H), 7.98(d, J=8.8Hz, 1H), 7.88-7.83(m, 2H), 7.37-7.29(m, 2H), 7.08(td, J=7.3, 15.1Hz, 1H), 6.80(d, J=15.1Hz, 1H), 5.02(br s, 2H), 4.62(br s, 2H), 3.87(s, 3H), 3.58-3.55(m, 2H), 2.04-1.99(m, 2H), 1.78-1.75(m, 2H), 1.64-1.61(m, 1H), 1.46-1.36(m, 1H).分析値:C, 48.24;H, 4.58;N, 15.89. C
28H
30Br
2N
8O
3.
1/
2H
2O 理論値:C, 48.36;H, 4.49;N, 16.11.HRMS (FAB+)実測値:605.16226, 607.15997 (M-Br), C
28H
3079/81BrN
8O
3+の計算値: 605.16242, 607.16038.
NMP(4mL)中で(E)−N−(4−(3−ブロモフェニルアミノ)キナゾリン−6−イル)−4−モルホリノブタ−2−エナミド(13)(1.0g,2.14mmol)を、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(313mg,1.42mmol)と3.5日間にわたって一般手順Dに従って反応させ、続いて、MeOH/ギ酸/水を移動相として用いる分取HPLCを行うことによって、4−((2E)−4−{[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]アミノ}−4−オキソ−2−ブテニル)−4−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]モルホリン−4−イウムホルマート(24)(110mg,12%)を得た。
【0176】
m.p.125〜129℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 11.69(s, 1H), 10.17(s, 1H), 9.28(s, 1H), 8.65(br, 1H), 8.61(s, 1H), 8.44-8.40(m, 2H), 8.14(s, 1H), 8.07(d, J=8.1Hz, 1H), 7.34(t, J=8.1Hz, 1H), 7.27(d, J=8.5Hz, 1H), 7.17-7.10(m, 2H), 6.82(d, J=14.6Hz, 1H), 5.12(br s, 2H), 4.81(br s, 2H), 4.16(t, J=12.0Hz, 2H), 3.91(m, 2H), 3.88(s, 3H), 3.70-3.60(m, 2H), 3.46(t, J=12.0Hz, 2H).HRMS (FAB+)実測値:607.14189, 609.14034(M-HCOO), C
27H
2879/81BrN
8O
4+の計算値:607.14169, 609.13964.
NMP(6mL)中で(2E)−N−[4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−キナゾリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(14)(990mg,2.30mmol)を、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(422mg,1.92mmol)と24時間にわたって一般手順Dに従って反応させることにより、(2E)−4−{[4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−キナゾリニル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(25)(1076mg,86%)を得た。
【0177】
m.p.192℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 9.99(s, 1H), 9.82(s, 1H), 8.91(s, 1H), 8.56(s, 1H), 8.14-8.11(m, 2H), 7.83-7.78(m, 1H), 7.42(t, J=9.1Hz, 1H), 7.33(s, 1H), 7.00-6.95(m, 1H), 6.90-6.86(d, J=15.3Hz, 1H), 5.06(br s, 2H), 4.43(d, J=6.8Hz, 2H), 4.03(s, 3H), 3.88(s, 3H), 3.12(s, 6H).分析値:C, 47.04;H, 4.32;N, 16.18. C
26H
27BrClFN
8O
4.H
2O.
1/
4THF 理論値:C, 47.28;H, 4.56;N, 16.34.
HR-MS (FAB+,
35/37Cl)実測値: m/z 569.18207/571.18086 (M-Br), C
26H
2735/37ClFN
8O
4+の計算値:569.182782/571.17983.
NMP(5mL)中でN−(4−(3−ブロモフェニルアミノ)キナゾリン−6−イル)−4−(ジメチルアミノ)ブタナミド(16)(1.0g,2.34mmol)を5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(342mg,1.56mmol)と15時間にわたって一般手順Dに従って反応させることにより、4−{[4−(3−ブロモアニリノ)−6−キナゾリニル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−1−ブタンアミニウムブロミド(27)(710mg,70%)を得た。
【0178】
m.p.177℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 10.39(s, 1H), 9.99(s, 1H), 8.69(d, J=1.6Hz, 1H), 8.59(s, 1H), 8.17(t, J=1.9Hz, 1H), 8.12(s, 1H), 7.93-7.84(m, 2H), 7.80(d, J=9.0Hz, 1H), 7.35(t, J=8.0Hz, 1H), 7.29(td, J=1.4, 8.4Hz, 1H), 5.02(br s, 2H), 3.86(s, 3H), 3.62-3.58(m, 2H), 3.10(s, 6H), 2.55(t, J=7.0Hz, 2H), 2.20-2.12(m, 2H).分析値:C, 45.69;H, 4.95;N, 15.57. C
25H
28Br
2N
8O
3.H
2O.
1/
2ジオキサン 理論値:C, 45.65;H, 4.82;N, 15.77.HRMS (FAB+)実測値:567.14724, 569.14564 (M-Br), C
25H
2879/81BrN
8O
3+の計算値:567.14677, 569.14473.
(A.1.1.5 トリガーブロミド200の調製)
【0180】
ブロミド149(500mg,1.80mmol)(スキーム20)、トリブチル(1−プロピニル)スズ(1.64mL,5.39mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(416mg,0.36mmol)のNMP(5mL)中の混合物を、80℃で終夜(14時間)加熱した後、標準的な水−酢酸エチルのワークアップを行った。得られた粗生成物を、MeCN/DCM(1:20から1:5へ勾配)を用いて溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーによってさらに精製し、化合物150(147mg,34%)を、白色の固体として得:
1H NMR(CDCl
3, 400MHz) δ 5.47(s, 2H), 3.77(s, 3H), 2.14(s, 3H), 2.10(s, 3H).LR-MS (+):m/e 238.5(M+1);続いて、化合物151(105mg,30%)も白色の固体として得た:
1H NMR(CDCl
3, 400MHz) δ 4.96(d, J=7.0Hz, 2H), 3.79(s, 3H), 2.60(t, J=7.0Hz, 1H), 2.14(s, 3H). LR-MS (+):m/e 196.5 (M+1)。化合物151は、化合物150をMeOH中K
2CO
3で処理することによって定量的に得られた。
【0181】
ブロミド149は、中間化合物123(スキーム11)から、アセトニトリル中でN−ブロモスクシンイミド(N-bromosuccinimide:NBS)と反応させてブロモメチレン誘導体153を得、続いてジメチルホルムアミド(dimethylformamide:DMF)中で酢酸ナトリウム媒介ブロミド置換を行うことによって得られ得る(スキーム20)。
【0183】
化合物151(110mg,0.56mmol)のDCM(10mL)中の溶液に、0℃で、トリエチルアミン(0.118mL,0.84mmol)、続いて、MsCl(0.052mL,0.68mmol)を滴下した。0℃での30分および室温での30分の後、混合物を、飽和塩化アンモニウム水溶液および食塩水で2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、セライトを通してろ過した。減圧下での濃縮によって、化合物(複数種)152(145mg,約94%)を、灰白色の固体として得、この固体は、
1H NMRによって、メシラートおよびクロリド(3.6:1)の混合物であることが分かり、これを、さらなる精製を行わずに使用した。
【0184】
1H NMR(CDCl
3, 400MHz)メシラートについて:δ 5.62(s, 2H), 3.81(s, 3H), 3.13(s, 3H), 2.15(s, 3H); クロリドについて:δ 5.02(s, 2H), 3.79(s, 3H), 2.14(s, 3H).LR-MS(+): 274.5(メシラートのM+1);214.4/216.4(3:1, クロリドのM+1).
混合物152(145mg,約0.53mmol)を、還流THF(10mL)中30分間にわたってLiBr(922mg,10.61mmol)で処理した。次いで、THFを真空で除去し、得られた残渣を水と酢酸エチルとの間に分配させた。有機相を水および食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させ、セライトを通してろ過した後、真空で濃縮した。そのようにして得られた粗生成物を、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)を用いて溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−2−(1−プロピニル)−1H−イミダゾール(200)(95mg,69%)を、白色の固体として得た。
【0185】
1H NMR(CDCl
3, 400MHz) δ 4.86(s, 2H), 3.76(s, 3H), 2.14(s, 3H).LR-MS(+):m/e 258.5/260.5(1:1, M+1).
(A.1.1.6 α−メチルブロミド127の調製(スキーム11))
ブロミド153(スキーム14)(1.40g,4.68mmol)の、数滴の水を含むDMA(14mL)中の溶液に、K
2CO
3(647mg,4.68mmol)を加えた。得られた溶液を終夜攪拌した後、標準的なEtOAcワークアップを行い、続いて、MeCN/DCM(5:95から15:85)を用いて溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、アルコール154(330mg,30%)を、灰白色の固体として得た。
【0186】
1H NMR(
6d-DMSO, 400MHz) δ 5.56(t, J=5.8Hz, 1H), 4.86(d, J=5.8Hz, 2H), 3.70(s, 3H).LR-MS (+):m/e 236.5/238.5(1:1, M+1).
アルコール154(300mg,1.27mmol)、Zn(CN)
2(90mg,0.76mmol)、亜鉛粉末(10mg,0.15mmol)、Pd
2(dba)
3(23mg,0.025mmol)およびdppf(28mg,0.051mmol)のDMA(3mL)中の混合物を、窒素下に120℃で3.5時間にわたって攪拌した。次いで、標準的なNH
4Cl水溶液/EtOAcのワークアップを行い、続いて、EtOAc/ヘキサン(1:1から2:1へ)を用いて溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、シアノイミダゾール126(180mg)を、灰白色の固体として得、この固体は、
1H NMRによって、少量の未反応の出発材料154を含むことが分かり、これを次の工程にそのまま使用した。
【0187】
1H NMR(CDCl
3, 400MHz) δ 5.09(d, J=6.7Hz, 2H), 4.00(s, 3H), 2.49(t, J=6.7Hz, 1H).
シアノイミダゾール126(173mg,約0.93mmol)のTHF(10mL)中の溶液に、0℃で、MsCl(0.088mL,1.14mmol)、続いて、DIPEA(0.182mL,1.04mmol)を滴下した。1時間にわたって攪拌した後、反応混合物を、標準的なNH
4Cl水溶液/EtOAcのワークアップに付し、黄色の油状物(237mg;
1H NMRによればメシラートおよびα−メチルクロリドの混合物)を得、この油状物をそのまま使用した。この油状物(235mg,約0.90mmol)のTHF(10mL)中の溶液に、LiBr(1.57g,18.06mmol)を加えた。0.5時間にわたって還流加熱した後、溶媒を真空で除去し、残渣を、標準的なNH
4Cl水溶液/EtOAcのワークアップに付した。粗生成物を、EtOAc/ヘキサン(1:4から1:2へ)を用いて溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによってさらに精製し、α−メチルブロミド127(65mg,3工程で21%)を、桃色の油状物として得た。
【0188】
1H NMR(CDCl
3, 400MHz) δ 4.86(s, 2H), 3.95(s, 3H).LR-MS(+):m/e 277.6/279.6(1:1, M+1+MeOH).
(A.1.1.7 α−メチルブロミドトリガー201の調製)
【0190】
ブロモイミダゾール149(1.90g,6.83mmol)(スキーム14)、テトラエチルスズ(5.42mL,27.34mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(790mg,0.68mmol)のNMP(20mL)中の混合物を、110〜120℃で5時間にわたって加熱した後、標準的な水−酢酸エチルのワークアップを行った。得られた粗生成物を、MeCN/DCM(1:5)を用いて溶出するフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した後、ヘキサンの添加によりDCMから沈殿させ、エチルイミダゾール156(1.04g,67%)を、白色の固体として得た。
【0191】
m.p.71〜73℃。
1H NMR(CDCl
3, 400MHz) δ 5.48(s, 2H), 3.64(s, 3H), 2.76(q, J=7.43Hz, 2H), 2.10(s, 3H), 1.37(t, J=7.43Hz, 3H).分析値:C, 48.11;H, 5.90;N, 18.23%. C
9H
13N
3O
4・0.04ヘキサン 理論値:C, 48.11;H, 5.92;N, 18.22%.LR-MS (+):m/e 228.5 (M+1).
エチルイミダゾール156(1.25g,5.50mmol)のMeOH(10mL)中の溶液に、無水K
2CO
3(1.52g,11.0mmol)を加えた。20分間にわたって攪拌した後、溶媒を減圧で除去し、残渣をDCMに溶解させ、シリカゲルの層を通してろ過し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液を濃縮し、白色の結晶を得、この結晶を、ろ過により集め、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)の混合物で洗浄し、アルコール157(949mg,93%)を、白色の結晶固体として得た。
【0192】
m.p.153〜155℃。
1H NMR(CDCl
3, 400MHz) δ 4.96(d, J=6.80Hz, 2H), 3.67(s, 3H), 2.79(t, J=6.80Hz, 1H), 2.74(q, J=7.50Hz, 2H), 1.36(t, J=7.50Hz, 3H).分析値:C, 45.71;H, 6.07;N, 22.87%. C
7H
11N
3O
3理論値:C, 45.40;H, 5.99;N, 22.68%.
LR-MS(+):m/e 186.5 (M+1).
アルコール157(685mg,3.70mmol)のDCM(30mL)中の溶液に、0℃で、トリエチルアミン(0.773mL,5.55mmol)、続いて、MsCl(0.344mL,4.44mmol)を滴下した。45分間にわたって攪拌した後、混合物を、飽和塩化アンモニウム水溶液で2回、食塩水で1回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させ、セライトを通してろ過した。真空でのろ液の濃縮によって、白色の固体(971mg)を得、この固体は、
1H NMRによって、メシラートおよびα−メチルクロリド(3:1)の混合物であることが分かり、次の工程にそのまま使用した。この固体(968mg)のTHF(50mL)中の溶液を、LiBr(6.39g,86.85mmol)により還流下に0.5時間にわたって処理した。次いで、溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣を水と酢酸エチルとの間で分配させた。有機相を、水で2回、食塩水で1回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにより乾燥させ、セライトを通してろ過した。溶媒を真空で除去し、α−メチルブロミドIIId-10(851mg,93%)を、白色固体として得た。
【0193】
m.p.91〜93℃。
1H NMR(CDCl
3, 400MHz) δ 4.88(s, 2H), 3.65(s, 3H), 2.76(q, J=7.60Hz, 2H), 1.37(t, J=7.60Hz, 3H).分析値:C, 34.41;H, 4.07;N, 16.96%. C
7H
10BrN
3O
2・0.04EtOAc理論値:C, 34.18;H, 4.13;N, 16.70%.LR-MS(+):m/e 248.4/250.4(1:1, M+1).
(A.1.1.8 他のキナーゼインヒビターのプロドラッグの調製)
(2E)−N−{4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−[(3S)−テトラヒドロ−3−フラニルオキシ]−6−キナゾリニル}−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(BIBW2992;Himmelsbach et al., US 07019012 B2)(1500mg,3.09mmol)のNMP(4mL)中の溶液に、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(747mg,3.40mmol)を、一般的手順Cに従って加え、(2E)−4−({4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−[(3S)−テトラヒドロ−3−フラニルオキシ]−6−キナゾリニル}アミノ)−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(1210mg,56%)を得、これを、CH
3CN/H
2O/TFAを用いて溶出する分取HPLCによってさらに精製し、(2E)−4−({4−(3−クロロ−4−フルオロアニリノ)−7−[(3S)−テトラヒドロ−3−フラニルオキシ]−6−キナゾリニル}アミノ)−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムトリフルオロアセタート(82)(730mg,32%)を得た。
【0194】
m.p.149〜152℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 10.80(s, 1H), 9.93(s, 1H), 9.07(s, 1H), 8.78(s, 1H), 8.14(s, 1H), 8.03-8.01(dd, J=6.8, 2.5Hz, 1H), 7.73-7.69(m, 1H), 7.50(t, J=9.1Hz, 1H), 7.38(s, 1H), 7.04-6.96(m, 1H), 6.88(d, J=15.2Hz, 1H), 5.32-5.31(m, 1H), 5.05(br, 2H), 4.42(d, J=6.9Hz, 2H), 4.02-3.91(m, 3H), 3.87(s, 3H), 3.82-3.77(m, 1H), 3.12(s, 6H), 2.43-2.34(m, 1H), 2.18-2.08(m, 1H).分析値:C, 44.42;H, 3.88;N, 12.21%. C
31H
31ClF
4N
8O
7・1.2CF
3COOH・1.5H
2O理論値:C, 44.43;H, 3.93;N, 12.41%.
(2E)−N−{4−[3−クロロ−4−(2−ピリジニルメトキシ)アニリノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリニル}−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(HKI272;Tsou et al., J. Med. Chem., 2005, 48, 1107〜1131)(700mg,1.26mmol)のNMP(4mL)中の溶液に、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(304mg,1.38mmol)を、MeCNの代わりにMeCN/EtOAc(1:3)が用いられたことを除き一般手順Cに従って加え、(2E)−4−({4−[3−クロロ−4−(2−ピリジニルメトキシ)アニリノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリニル}アミノ)−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(703mg,72%)を得、これを、CH
3CN/H
2O/TFAを用いて溶出する分取HPLCによってさらに精製し、(2E)−4−({4−[3−クロロ−4−(2−ピリジニルメトキシ)アニリノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリニル}アミノ)−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムトリフルオロアセタート(83)(410mg,40%)を得た。
【0195】
m.p.147〜149℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 9.93(br, 1H), 9.84(s, 1H), 8.97(s, 1H), 8.62-8.59(m, 1H), 8.14(s, 1H), 7.90-7.86(dt, J=7.7, 1.8Hz, 1H), 7.59(d, J=7.8Hz, 1H) 7.44(s, 2H), 7.40-7.36(m, 1H), 7.29-7.22(m, 2H), 6.99-6.84(m, 2H), 5.30(s, 2H), 5.04(br, 2H), 4.40(d, J=6.7Hz, 2H), 4.36-4.31(q, J=7.0Hz, 2H), 3.86(s, 3H), 3.11(s, 6H), 1.47(t, J=7.0Hz, 3H).分析値:C, 49.42;H, 4.57;N, 13.90%. C
37H
35ClF
3N
9O
7・0.5CF
3COOH・3H
2O理論値:C, 49.54;H, 4.54;N, 13.68%.
N−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−[(1−メチル−4−ピペリジニル)メトキシ]−4−キナゾリンアミン(ZD6474;Hennequin et al., J. Med. Chem., 2002, 45, 1300〜1312)(250mg,0.53mmol)のNMP(1mL)中の溶液に、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(139mg,0.63mmol)を、反応物が48時間にわたって攪拌されワークアップにおいてMeCNの代わりにEtOAcが用いられたことを除き一般手順Cに従って加え、4−({[4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−キナゾリニル]オキシ}メチル)−1−メチル−1−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]ピペリジニウムブロミド(392mg)を得、これを、CH
3CN/H
2O/TFAを用いて溶出する分取HPLCによってさらに精製して、4−({[4−(4−ブロモ−2−フルオロアニリノ)−6−メトキシ−7−キナゾリニル]オキシ}メチル)−1−メチル−1−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]ピペリジニウムトリフルオロアセタート(146)(246mg,64%)を、
1H NMRにより約2:5の比のトランス/シスの異性体として得た(以降の記載において、マイナーな異性体についてAとして名付けられ、メジャーな異性
体についてBとして名付けられる)。
【0196】
m.p.185〜188℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 10.42(br, 1H), 8.60(s, 1H), 8.114 & 8.110(s×2, A&B異性体, 1H), 7.74-7.71(m, 1H), 7.56-7.53(m, 1H), 7.34 & 7.27(s×2, A&B異性体, 1H), 5.07(br, 2H), 4.29 & 4.14(d×2, A&B異性体, J=6.6Hz, 2H), 3.99 & 3.97(s×2, A&B異性体, 3H), 3.88(s, 3H), 3.75-3.60(m, 4H), 3.15 & 3.01(s×2, A&B異性体, 3H), 2.33-1.82(m, 5H).
6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−{4−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]アニリノ}−8−メチルピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(PD166285; Klutchko et al., J. Med. Chem., 1998, 41(17), 3276〜3292)(200mg,0.39mmol)の無水NMP(2mL)中の攪拌溶液に、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(103mg,0.47mmol)を加えた。次いで、得られた溶液を室温で72時間にわたって攪拌した後、Et
2Oを加えた。得られた沈殿物を、ろ過し、Et
2OおよびCH
2Cl
2で洗浄した。粗生成物を、CH
3CN/Et
2Oからの沈殿によって精製した。沈殿物を、ろ過し、CH
2Cl
2で洗浄し、真空下で乾燥させ、2−(4−{[6−(2,6−ジクロロフェニル)−8−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イル]アミノ}フェノキシ)−N,N−ジエチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]エタンアンモニウムブロミド(140)(170mg,59%)を、淡黄色の粉末として得た。
【0197】
m.p.142〜145℃。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 10.12(s, 1H), 8.82(s, 1H), 8.13(s, 1H), 7.88(s, 1H), 7.78(d, J=8.9Hz, 2H), 7.59(dd, J=8.1, 0.7Hz, 2H), 7.46(dd, J=8.8, 7.4Hz, 1H), 7.05(d, J=9.1Hz, 2H), 5.15(s, 2H), 4.48(t, J=4.4Hz, 2H), 3.89(s, 3H), 3.86(t, J=4.5Hz, 2H), 3.65(s, 3H), 3.58(q, J=6.8Hz, 4H), 1.31(t, J=7.0Hz, 6H).分析値:C, 47.13;H, 4.26;N, 13.76. C
31H
33BrCl
2N
8O
4.CH
2Cl
2理論値:C, 47.02;H, 4.32;N, 13.71.
6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−{4−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]アニリノ}−8−メチルピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(PD166285; Klutchko et al., J. Med. Chem., 1998, 41(17), 3276〜3292)(200mg,0.39mmol)の無水NMP(1.5mL)中の攪拌溶液に、5−(ブロモメチル)−1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(122)(110mg,0.47mmol)を加えた。次いで、得られた溶液を室温で120時間にわたって攪拌した後、Et
2Oを加えた。得られた沈殿物を、ろ過し、Et
2OおよびCH
2Cl
2で洗浄し、真空下で乾燥させ、2−(4−{[6−(2,6−ジクロロフェニル)−8−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イル]アミノ}フェノキシ)−N−[(1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジエチルエタンアンモニウムブロミド(141)(210mg,72%)を、淡黄色の粉末として得た。
【0198】
m.p.163〜166℃。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 10.13(s, 1H), 8.82(s, 1H), 7.89(s, 1H), 7.78(d, J=8.8Hz, 2H), 7.59(dd, J=8.0, 0.6Hz, 2H), 7.45(dd, J=8.8, 7.4Hz, 1H), 7.05(d, J=9.1Hz, 2H), 5.15(s, 2H), 4.47(t, J=4.4Hz, 2H), 3.85(t, J=4.2Hz, 2H), 3.75(s, 3H), 3.65(s, 3H), 3.58(q, J=7.2Hz, 4H), 2.44(s, 3H), 1.31(t, J=7.0Hz, 6H).分析値:C, 51.74;H, 4.79;N, 14.86. C
32H
35BrCl
2N
8O
4理論値:C, 51.49;H, 4.73;N, 15.01.
6−(2,6−ジクロロフェニル)−8−メチル−2−(4−ピリジニルアミノ)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(PD166285類似物A; Klutchko et al.,J. Med. Chem., 1998, 41(17), 3276〜3292)(200mg,0.50mmol)の無水NMP(3mL)/THF(200mL)中の攪拌溶液に、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(133mg,0.60mmol)を加えた。次いで、得られた溶液を室温で25日間にわたって攪拌した後、THFを除去した。得られた溶液をEtOAc/水で分液した。水性部分を凍結乾燥に付し、得られたゴム状物を、Et
2O/EtOAc/CH
2Cl
2を用いてすりつぶし、4−{[6−(2,6−ジクロロフェニル)−8−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イル]アミノ}−1−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]ピリジニウムブロミド(142)(200mg,65%)を、淡黄色の粉末として得た。
【0199】
m.p.252℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.83(bs, 1H), 9.08(s, 1H), 8.68(d, J=7.0Hz, 2H), 8.21(bs, 2H), 8.09(s, 1H), 8.05(s, 1H), 7.61(dd, J=8.1, 0.6Hz, 2H), 7.5(dd, J=8.9, 7.4Hz, 1H), 6.00(s, 2H), 3.84(s, 3H), 3.73(s, 3H).分析値:C, 44.33 ;H, 3.42 ;N, 17.00. C
24H
19BrCl
2N
8O
3.2H
2O理論値:C, 44.06 ;H, 3.54 ;N, 17.13.
6−(2,6−ジクロロフェニル)−8−メチル−2−{4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]アニリノ}ピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(PD166285類似物B; Klutchko et al.,J. Med. Chem., 1998, 41(17), 3276〜3292)(230mg,0.44mmol)の無水NMP(5mL)中の攪拌溶液に、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(122)(116mg,0.53mmol)を加えた。次いで、得られた溶液を室温で12日間にわたって攪拌した後、Et
2Oを加えた。得られた沈殿物を、ろ過し、EtOAcおよびCH
2Cl
2で洗浄した。粗生成物を、NMP/EtOAcからの沈殿によって精製した(2回)。沈殿物を、ろ過し、真空下で乾燥させ、1−[2−(4−{[6−(2,6−ジクロロフェニル)−8−メチル−7−オキソ−7,8−ジヒドロピリド[2,3−d]ピリミジン−2−イル]アミノ}フェノキシ)エチル]−1−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]ピペリジニウムブロミド(143)(100mg,31%)を、淡黄色の粉末として得た。
【0200】
m.p.176〜178℃。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 10.14(s, 1H), 8.82(s, 1H), 8.14(s, 1H), 7.89(s, 1H), 7.80(d, J=8.9Hz, 2H), 7.59(dd, J=8.1, 0.7Hz, 2H), 7.46(dd, J=8.8, 7.4Hz, 1H), 7.10(d, J=9.1Hz, 2H), 5.22(bs, 2H), 4.61(t, J=4.4Hz, 2H), 4.17(bs, 2H), 3.86(s, 3H), 3.72-3.64(m, 2H), 3.65(s, 3H), 2.10-1.95(m, 4H), 1.74(bd, J=14.3Hz, 2H), 1.60(bd, J=14.3Hz, 1H), 1.46-1.31(m, 1H);2個のプロトンは観察されず。分析値:C, 48.33 ;H, 4.64 ;N, 13.32. C
32H
33BrCl
2N
8O
4.3H
2O.
1/
4EtOAc 理論値:C, 48.31 ;H, 5.04 ;N, 13.66.
N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−5−[(Z)−(5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド(スニチニブ; Sun et al.,J. Med. Chem., 2003, 46(7), 1116〜1119)(199mg,0.50mmol)のNMP(1mL)中の溶液に、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(100mg,0.45mmol)を一般手順Bに従って加え、N,N−ジエチル−2−[({5−[(Z)−(5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−イル}カルボニル)アミノ]−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]エタンアンモニウムブロミドを得、これを、分取HPLCによってさらに精製して、N,N−ジエチル−2−[({5−[(Z)−(5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−イル}カルボニル)アミノ]−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]エタンアンモニウムトリフルオロアセタート(144)(190mg,64%)を得た。
【0201】
m.p.162〜165℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 13.74(s, 1H), 10.89(s, 1H), 8.13(s, 1H), 7.80-7.75(m, 2H), 7.73(s, 1H), 6.96-6.91(m, 1H), 6.87-6.84(m, 1H), 5.03(s, 2H), 3.90(s, 3H), 3.61-3.48(m, 8H), 2.45(s, 3H), 2.42(s, 3H), 1.34(t, J=7.1Hz, 6H).
19F NMR[(CD
3)
2SO, 376.5MHz] δ -73.97(s, 3.31F), -122.71(m, 1F).
分析値:C, 50.50 ;H, 4.89 ;N, 13.88. C
29H
33F
4N
7O
6・0.31(F
3CCOOH)・H
2O 理論値:C, 50.46 ;H, 5.05 ;N, 13.91.
N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−5−[(Z)−(5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−カルボキサミド(スニチニブ; Sun et al.,J. Med. Chem., 2003, 46(7), 1116〜1119)(199mg,0.50mmol)のNMP(1mL)中の溶液に、5−(ブロモメチル)−1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(122)(106mg,0.45mmol)を、MeCNの代わりにEtOAcが用いられたことを除き一般手順Cに従って加え、N−[(1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジエチル−2−[({5−[(Z)−(5−フルオロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−3H−インドール−3−イリデン)メチル]−2,4−ジメチル−1H−ピロール−3−イル}カルボニル)アミノ]エタンアンモニウムブロミド(145)(268mg,93%)を得た。
【0202】
m.p.244〜248℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 13.74(s, 1H), 10.89(s, 1H), 7.79-7.75(m, 2H), 7.73(s, 1H), 5.04(br, 2H), 3.77(s, 3H), 3.58-3.46(m, 8H), 2.46(s, 3H), 2.45(s, 3H), 2.42(s, 3H), 1.34(t, J=7.1Hz, 6H).分析値:C, 52.59 ;H, 5.64 ;N, 14.98. C
28H
35BrFN
7O
4・0.5H
2O 理論値:C, 52.42 ;H, 5.66 ;N, 15.28.
(A.2.プロドラッグの有効性)
不可逆性erbB1、2、4インヒビター(11〜14)およびマイケル受容基二重結合が飽和している比較の可逆性インヒビター(16)を、さまざまなフラグメント化還元的トリガーを有する一連のそれらの四級アンモニウム塩プロドラッグ(17〜23、27)に対して比較した。プロドラッグの脱活性化度、低酸素下での細胞におけるそれらの活性化、一電子還元によるそれらのフラグメント化およびA431腫瘍異種移植片におけるそれらの有効性を評価するためのさまざまなアッセイが採用された。
【0203】
(実験:方法および材料)
(A.2.1 細胞性erbB1阻害:有酸素および低酸素条件実験)
ヒトA431類表皮癌腫細胞を、400,000細胞/ウェルで6ウェルプレート中の、10%のウシ胎児血清、10mMのD−グルコースおよび0.2mMの2’−デオキシシチジンを含有するα最小必須培地(alpha minimal essential media:αMEM)中に播種した。A431細胞を、有酸素または無酸素条件下に90分間にわたって接着させ、次いで、有酸素または無酸素条件下で、1μMの濃度の試験化合物にさらに4時間にわたって曝露した。次いで、細胞を、血清不含有培地を使用して3回洗浄して試験化合物を除去し、次いで、有酸素条件下で一晩、インキュベータに戻した。次いで、細胞を100ng/mLのEGFを用いて15分間にわたって刺激し、その後、培地を吸引し、細胞を氷冷PBSで洗浄した。細胞を改変RIPAバッファ(50mMのTris−HCl(pH7.4)、1%のNP−40、0.25%のデオキシコール酸Na、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのNa
3VO
4、1mMのNaFおよび1×プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma)に溶解させ、氷上で5〜10分間にわたってインキュベートした。BCAアッセイを採用して、サンプルのタンパク質濃度を決定した。アクチンローディングに対するEGFRのリン酸化を、適当な抗体を使用するウエスタンブロットによって決定した。ウェルあたり1μgの総タンパク質を、15ウェルのNuPAGE 4-12%ゲル(Invitrogen)中にロードした。電気泳動後、タンパク質を0.45μmのニトロセルロース膜(Biorad)に移し、TBS-Tween 0.1%中の2% BSA(ICPBio)を用いて1時間にわたってブロックした。抗体を、TBS-Tween 0.1%に示されるように希釈した。
【0205】
タンパク質は、Supersignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce/Thermo Scientific)を使用して検出される。リン酸化タンパク質の検出後、Restore Western Blot Stripping Buffer(Pierce/Thermo Scientific)を用いてブロットを30分間にわたってストリッピングし、洗浄し、再ブロックし、アクチンに対する抗体とともにインキュベートする。
【0206】
(A.2.2 細胞増殖阻害実験)
5%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum:FBS)を含有するα最小必須培地(αMEM)中の対数期指数増殖(log phase exponential growth)にあるヒトA431、BT474、SKBR3、SKOV3、SW620、H1975およびHT29癌腫細胞を、トリプシン処理(1×トリプシン/EDTA、Gibco Brl)によって回収し、カウントし、96ウェルプレート(Nunc)中に800〜1500細胞/ウェルの範囲の細胞密度で播種した。細胞サンプルの半量をプレートに播種した。このプレートは、予備平衡化され、無酸素環境下(90%N
2、5%H
2、5%CO
2、37℃;無酸素チャンバ,Coy Laboratory Products)に保持されていた。有酸素(21%O
2)または無酸素(<10ppmO
2)の条件のいずれかの下で3時間接着させた後、細胞を、適当な希釈範囲にわたるさまざまなプロドラッグまたはエフェクタ濃度に4時間にわたって曝露した。この期間の最後に、無酸素プレートを、有酸素チャンバから回収し、標準CO
2インキュベータ(37℃)中、酸素正常状態下で20時間にわたって保持した。すべてのプレートを洗浄して化合物を除去し、細胞を5%FBS+抗生物質を含有するαMEM中でさらに4日間にわたって増殖させた。細胞をトリクロロ酢酸中で固定し(30分)、洗浄し、スルホローダミンBで染色し(SRB、60分)、その後、酸性化水で洗浄した。SRBを可溶化し、吸収を450nmで読み取って、細胞密度を算出した。増殖の阻害は、未処理のコントロールウェルに対して算出された。
【0207】
(A.2.3 有酸素および低酸素の細胞代謝実験)
A431およびSKOV3細胞を、T75フラスコ中で増殖させ、40K、7日の増殖後に80〜90%のコンフルエント細胞層を与える密度で播種した。細胞をPBSで洗浄し、0.05%トリプシン/EDTAを用いて回収し、1000rpmで、室温で5分間にわたって遠心分離し、1mLの細胞培養培地(10%のFCS、10mMのD−グルコースおよび0.2mMの2’−デオキシシチジンを含有するα−MEM)に再懸濁させた。Coulterカウンターを用いて細胞数を測定し、適当な数の細胞を新しいチューブに移した。ウェルあたり5×10
5個の細胞を24ウェルプレートのウェルに350μL/ウェルの総体積で入れた(すなわち、14.3×10
5細胞/mL)。細胞を37℃で2時間にわたってインキュベートして、ウェルに接着させ、無酸素サンプルは平衡化した。80μMの化合物20を含有する50μLの細胞培養培地(350μL/ウェル)を各ウェルに加えて、各ウェルにおいて2細胞系のそれぞれについて2通りに最終化合物20濃度10μMを与えた。細胞を、1、2または3時間にわたって37℃でインキュベートした。適当な時間で、24ウェルプレートをインキュベータ/無酸素チャンバから取り出し、氷上に置いた。各ウェルの内容物を、氷上に維持されたマイクロ遠心チューブに移した。800μLのアセトニトリル(各0.5μMの化合物11および20のD6内部標準によりスパイクされた)を、薬物処理したウェルの各々に加え、細胞単層からの効率的な抽出を可能にした。次いで、全内容物(1200μL=400+800μL)をボルテックス混合し、LC−MS/MSシステムで実施されるまで保存のために−80℃に移行させた。コントロールサンプルについて同様の手順が続けられた。コントロールサンプルを使用して、それぞれ、化合物20および化合物11をスパイクすることによって較正曲線が構築された。分析の当日、−80℃フリーザからのサンプルを氷上で解凍し、ボルテックス混合し、5分間にわたって13000rpmで遠心分離し、細胞デブリを沈降させた。35μLの上清をHPLCインサートに注意深く移し、85μLのホルマートバッファ(45mM、pH4.5)と混合した。25μLの再構成されたサンプルをLC−MS/MSシステムに注入した。
【0208】
(A.2.4 血漿および腫瘍薬物動態学実験)
化合物20を、133μmol/kgの用量で、A431腫瘍異種移植片を有する24匹の雌NIH-IIIマウスに、pH4.0乳酸バッファの溶液として腹腔内注射を介して投与した。血液サンプルを、T=0.25、1、3、5、24、36、48および72時間に、末梢出血(terminal bleed)(コホートあたりn=3)によって、イソフルラン麻酔下に集めた。A431腫瘍サンプルを、T=0.25、1、3、5、24、36、48および72時間で集め(コホートあたりn=3)、液体窒素中で直ちに凍結させ、−80℃で保存し、その後に、薬物分析のためのサンプル調製がなされた。小片(約100mg)の組織をバイオパルベライザーウェル(予め液体窒素中で予め冷却される)に入れ、ステンレススチール乳棒の2〜3回の強打で小さくして微細粉末にした。凍結粉末を、予め秤量されたマイクロ遠心チューブ(ドライアイス上で維持された)中に集めた。4容積の氷冷アセトニトリル(それぞれ化合物20および化合物11のD6内部標準0.5μMを含有する)を加え、粉砕された組織から薬物を抽出した。マイクロ遠心チューブを、10分間にわたって13,000rpmで回転させ、細胞デブリおよびタンパク質を沈殿させた。10μLの血漿(EDTA中に集められた)に、40μLの氷冷アセトニトリル(化合物20および化合物11のD6内部標準0.5μM)を加えた。得られた溶液を混合し、次いで、5分間にわたって13,000rpmで遠心分離した。上清(40μL)をHPLCインサートに移し、80μLの45mMホルマートバッファーpH4.5と混合し、次いで、化合物20、化合物11、および化合物20を投薬されたマウスからのサンプル中の化合物11の濃度を、ダイオードアレイ吸光度検出器(diode array absorbance detector:DAD)を質量検出器に合わせて備えたAgilent 6410 LC−MS/MSにより測定した。分析は、マルチモードイオン源検出器をエレクトロスプレーネガティブモードで構成し、乾燥ガス流5.5L/分、ネブライザー圧力55psi、乾燥ガス温度350℃、気化器温度225℃、キャピラリー電圧2500V、充電電圧2000Vとすることにより実施され、DAD検出は、322nmであり、8nmのバンド幅であった。定量化(quantitat
ion)は、564>314のm/z(プロドラッグ)、425>314のm/z(エフェクタ)および570>314のm/z(プロドラッグのD6内部標準)、431>314のm/z(エフェクタのD6内部標準)におけるMRM遷移をベースとしていた。分析物は、アセトニトリル(80%)−水(20%)混合液中0.01%ギ酸および水(100%)中0.01%ギ酸の勾配を用いて、Zorbax SB C-18, Rapid resolution HT 3.0×50mm, 1.8ミクロン(Agilent) HPLCカラム上、0.6mL/分の流量で溶出された。
【0209】
(A.2.5 インビボの有効性実験)
A431異種移植片:特定病原体不含有のホモ接合型の雌のCD-1ヌードマウス(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)に、A431細胞の単細胞懸濁液を皮下播種した(5×10
6細胞/100μL;右脇腹)。A431腫瘍異種移植片が確立された時点で(通常6〜10日)、マウスを処理群に無作為化した。全ての化合物は、乳酸塩バッファ(pH4)中に調製された。マウスは、示されたスケジュールおよび用量レベルを使用して腹腔内注射(0.01〜0.03mL/g)によって投薬された。腫瘍の大きさおよび体重を、一定の間隔で測定した。腫瘍の容積は、π(長さ×幅
2)/6として算出された。腫瘍が処理前の容積に対して4倍の容積に増大する時間(RTV
4)を求め、腫瘍増殖阻害の%(% Tumour Growth Inhibition:%TGI)を、コントロールに対する処理RTV
4における中央値パーセンテージ増大として算出した。RTV
4の相違は、マンホイットニーのU検定によってSigmaStat v3.5を使用して統計的差異について検定された。
【0210】
SKOV3異種移植片:特定病原体不含有のホモ接合型の雌のNIH-IIIヌードマウス(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)に、SKOV3細胞の単細胞懸濁液を皮下播種した(1×10
7細胞/100μL;右脇腹)。SKOV3腫瘍異種移植片が確立した時点で(通常50〜65日)、マウスを処理群に無作為化した。全ての化合物は、乳酸塩バッファ(pH4)中で調製された。マウスは、示されたスケジュールおよび用量レベルを使用して腹腔内注射(0.01〜0.03mL/g)によって投薬された。腫瘍の大きさおよび体重を、一定の間隔で測定した。腫瘍の容積は、π(長さ×幅
2)/6として算出された。腫瘍が処理前の容積に対して4倍の容積に増大する時間(RTV
4)を求め、腫瘍増殖阻害の%(%TGI)を、コントロールに対する処理RTV
4における中央値パーセンテージ増大として算出した。RTV
4の相違は、マンホイットニーのU検定によってSigmaStat v3.5を使用して統計的差異について検定された。
【0211】
(A.2.6 放射線分解還元実験)
還元性等価物の導入の際の、エフェクタを遊離させる、溶液中の実施例のプロドラッグの相対的な活性が、
60Coγ線照射装置の使用によって測定された。プロドラッグを、Millpore水(5mMのリン酸ナトリウムによりpH7に緩衝された、添加された50mMのギ酸ナトリウムを含有する)に、50μM以下の濃度で溶解させた。溶液は、30分間にわたりN
2Oガスにより継続的に飽和された気密性ガラス容器中に含まれ、その後、Fricke線量測定法(Fricke and Hart,“Chemical Dosimetry” Radiation Dosimetry Vol.2, Attrix,F.H.;Roesch,W.C.; Tochilin,E.(Eds.), Academic Press, New York, 1966, pp167〜239)を用いて予め決められた7.5Gy・min
−1の照射量で放射線分解が行われる。上記の採用される放射線条件下、1電子還元等価物(CO
2・−ラジカル)中0.66μMの濃度が、Gyにつき生じさせられ(Mulazzani et al., J. Phys. Chem., 90, 5347〜5352, 1980)、プロドラッグ(P)は、電子移動によって還元される。
【0213】
各プロドラッグの喪失およびそのエフェクタの形成は、HPLC−質量分光光度法(MS)によって2連照射されたサンプルにおいてモニタリングされた。0.95還元等価物レベルでのプロドラッグの濃度における喪失のパーセンテージおよびエフェクタの形成が測定された。さらに、各プロドラッグに由来するメチル−ニトロ芳香族化合物の検出を記録した。0.95還元性等価物レベルでの濃度における>50%の喪失を示すプロドラッグは、1電子化学量論を示す。
【0214】
パルス放射線分解を使用して、一電子還元および化合物の安定性をリアルタイムでモニタリングした。迅速分光光度計検出システムを備えた、高エネルギー電子の短パルス(4MeVの200nsにおいて2〜3Gy)を送達する線形加速器を用いた(Anderson et al., J. Phys. Chem. A, 101, 9704〜9709, 1997)。プロドラッグを、上記のホルマートイオンを含有するN
2O飽和溶液に溶解させ、これは、パルス放射線分解後に、数マイクロ秒内に化合物のラジカルアニオンの迅速な形成をもたらした。フラグメント化の速度は、トリガー部分のベンジルタイプのラジカルの形成に対応する波長での動力学的遷移を分析することによって決定された(Bays et al., J. Am. Chem. Soc., 105, 320〜324, 1983; Anderson et al., J. Phys. Chem. A, 101, 9704〜9709, 1997)。
【0215】
(結果および考察)
(A.2.7 酵素阻害活性)
表1の化合物を、単離酵素アッセイにおいてerbB1、erbB1
T790M、erbB2およびerbB4を阻害するそれらの能力について試験した。このアッセイは、合成FRET可能ペプチド基質を利用する。これらの基質のリン酸化は、それらを展開試薬(development reagent)による切断から保護し、それらのFRET−能力を無傷で残す。データは、ペプチド基質のリン酸化を50%阻害するのに必要な薬物の濃度(IC
50)として提示される。他者によって指摘されたように(Tsou et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734)、特定の単離酵素アッセイ間で化合物を比較すると、酵素、基質の性質およびアッセイ全体の条件の相違に起因して相当な変動が存在する。さらなる検討事項として、酵素の不可逆性阻害が可能である化合物について、IC
50は、酵素への可逆性および不可逆性の結合の両方を反映する。酵素の迅速かつ完全なアルキル化が可能な化合物について、IC
50値は、化学量論方法で酵素活性を滴定することに本質的に由来し(すなわち、無限阻害(infinite inhibition))、したがって、単に「見掛け」のIC
50として考えられる。この性質のアッセイは、ここに記載されるような1セットのアッセイ条件内で化合物を順位付けするために広く使用されている(Tsou et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734;Wissner et al., J. Med. Chem., 2003, 46, 49〜63;Wissner et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2004, 14, 1411〜1416;Tsouet al., J. Med. Chem., 2005, 48, 1107〜1131;Klutchko et al., J. Med. Chem., 2006, 49, 1475〜1485)。
【0216】
これらのアッセイ条件下に、既知の不可逆性erbB1/2インヒビター11は、erbB1、2および4の強力なインヒビターであり(それぞれ、IC
50 0.22nM、8nMおよび2.7nM)、これらの酵素の各々のATP−結合ドメインの口部におけるシステイン残基をアルキル化する能力と一致し、別のerbB1選択的4−アニリノキナゾリンスキャフォールドに、汎erbB効力を付与することが確認された。このアッセイでは、11は、固相ELISAベースアッセイにおいて、これまでに報告されたもの(Tsou et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734)より強力であるが(erbB1 IC
50=11nM、erbB2 IC
50=301nM)、同一のZ’−LYTEアッセイを使用して実施された最近報告されたerbB1 IC
50(0.22nM)(Michalczyk et al., Bioorg. Med. Chem., 16, 2008, 3482〜3488)と直接的に比較可能である。化合物11は、さらに、不可逆性erbBインヒビターに感受性であることが知られているerbB1のT790M突然変異型に対して良好な効力(IC
50 10.3nM)を示す。この突然変異体は、臨床上の可逆性4−アニリノキナゾリンゲフィチニブおよびエルロチニブの結合を共にブロックし、ATP結合親和性を回復させると考えられている、かさ高いゲートキーパー残基を有し、ゲフィチニブおよびエルロチニブ感受性非小細胞肺癌における約50%の患者の再発につながる。対照として、化合物16は、化合物11の直接的な可逆性類似物であり、実際にerbB1選択的であり、erbB2、erbB4およびerbB1
T790Mに対して10〜42倍の効力の喪失を示し、これらの酵素をアルキル化しかつ阻害効力を改善する能力がないことと一致する。このアッセイ内で最も重要には、化合物11の四級アンモニウム塩プロドラッグ(17〜22)は、単離されたerbB1の強力なインヒビターであることが示されたが(IC
50 0.20〜0.56nM)、さらに、単離されたerbB2、erbB1
T790Mを阻害する時には少なくとも14〜44倍より低い有効性である。4−アニリノキナゾリンスキャフォールドの公知のerbB1選択的性質および単離されたerbB1
T790Mに対する効力の喪失のような、erbBファミリーの可逆性インヒビターである化合物をもたらす化合物11の第三アミンの四級化と一致する傾向(後の、細胞ベースの薬剤洗い流しデータも参照のこと)が、プロドラッグ(17〜22)について明らかである。
【0218】
表2の化合物が、EGF刺激A431細胞においてerB1の自己リン酸化を阻害するそれらの能力について、ホスホ−erbB1状態のウエスタン免疫ブロッティング測定によって試験された。化合物11〜13は、細胞erbB1の強力なインヒビターであると示され(IC
50 それぞれ9、45および16nM)、化合物16(化合物11の直接的可逆性類似物)も同様であった(IC
50 18nM)。対照的に、四級アンモニウム塩誘導体(19〜23、27)は、無傷のA431細胞におけるerbB1自己リン酸化の阻害において、それらの各エフェクタ分子と比較して、27〜201倍の範囲にわたってより低い有効性であった。プロドラッグについての細胞erbB1阻害効力のこの喪失は、上記の保持される単離酵素erbB1阻害効力と合わせて、正荷電四級アンモニウム塩プロドラッグの細胞排除(cellular exclusion)に主に起因すると考えられる。
【0220】
(A.2.8 細胞erbB1阻害:不可逆性の洗い流し(wash-out)アッセイ)
四級アンモニウム塩プロドラッグ20が、既知の不可逆性erbB11/2インヒビター11(プロドラッグ20に対するエフェクタ)および化合物16と並行して、無傷のA431細胞においてerbB1自己リン酸化を不可逆的に阻害するそれらの能力について評価された。細胞は、薬物(1μM)に1時間にわたって継続的に曝露され、次いで、EGFで刺激され、全細胞溶解物がウエスタンブロットによってホスホ−erbB1レベルについて測定されるか、または薬物(1μM)に1時間にわたって曝露され、次いで、洗浄されて、未結合薬物が除去され、その後に、EGF刺激およびホスホ−erbB1ウエスタンブロッティングがなされるかのいずれかであった(
図1A/B)。化合物11についてこれまでに記載されたように(Tsou et al.,J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734)、erbB1自己リン酸化は、EGF刺激に先行して細胞が洗浄により未結合薬物が除かれたかどうかに拘わらず、A431細胞において完全に阻害され、このことは、erbB1の不可逆性阻害が起こったという解釈を強力に支持する。対照的に、化合物16は、細胞自己リン酸化の強力なインヒビターであるとわかっている(IC
50=18nM、表2)が、6位にマイケル受容基により置換されないので、酵素アルキル化することができない。したがって、化合物16は、洗浄により薬物が除去されなかった細胞においてerbB1自己リン酸化の完全な阻害を示す一方で、洗浄により薬物が除去された細胞は、erbB1を自己リン酸化するそれらの能力において回復させられ、このことは、化合物16が、erbB1の強力な、可逆性インヒビターであることを示す。同様の傾向が、プロドラッグ20について観察された一方で、自己リン酸化は、1μMの薬物曝露を使用する未洗浄細胞では完全には阻害されず(この化合物のerbB1自己リン酸化の細胞IC
50(555nM、表2)と一致する)、洗浄により薬物が除去された細胞は、完全に回復させられた、erbB1を自己リン酸化するそれらの能力を有しており、プロドラッグ20がerbB1の可逆性インヒビターであることと一致した。
【0221】
図1は、化合物11、16および20についてのA431細胞自己リン酸化阻害を示す。細胞は、1μMの試験化合物への1時間にわたる曝露を与えられ、EGFにより直接的に刺激され、溶解させられ、EGFR(erbB1)およびホスホ−EGFR(ホスホ−erbB1)についてウエスタンブロットがなされるか、試験化合物を除去するように薬物不含有培地により広範に洗浄され、その後に、EDF刺激、細胞溶解およびウエスタンブロッティングが行われるかのいずれかであった。A:ウエスタンブロット。B:総細胞EGFRタンパク質を使用してタンパク質ローディングについて規格化されたウエスタン免疫ブロットの定量。
【0222】
(A.2.9 細胞増殖阻害活性)
表3の化合物が、文献の前例との比較を提供するように選択された3種のヒト癌腫細胞株の増殖を阻害するそれらの能力について試験された(Tsou et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734):A431(類表皮腫);これは、erbB1を過剰発現する;SKBR3(乳癌);これは、erbB2を過剰発現し、かつ、これより低い程度であるがerbB1を過剰発現する;およびSW620(結腸癌);これは、任意の重要な程度にerbB1またはerbB2を発現しないコントロール株として機能する。細胞は、有酸素条件下に24時間にわたって、または無酸素下に4時間、続いて有酸素条件下に20時間にわたってかのいずれかで試験化合物に曝露された。次いで、それらは、洗浄により薬物が除去され、さらに4日間にわたってインキュベートされ、その後、スルホローダミンBを用いて細胞生存について染色された。
【0224】
不可逆性erbB1/2インヒビター11は、A431およびSKBR3細胞の増殖を、SW620細胞に行ったよりも強力に阻害した(A431:IC
50=0.040μM;SKBR3:IC
50=0.081μM;SW620(IC
50=3.43μM))。この化合物およびその他の報告された化合物(12および13)のこの傾向およびIC
50値は、これまでに報告された結果と一致する(薬物曝露およびインキュベーション時間における所与の相違)(Tsou et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734)。7−メトキシキナゾリンスキャフォールドを有するインヒビター14は、erbBファミリーメンバーを発現する細胞の増殖を最も強力に阻害する化合物11に匹敵する活性を示した。対照的に、可逆性のインヒビター16は、erb1/2駆動細胞株において、その不可逆性の対応物11よりも32〜39倍低い活性であった。細胞が4時間の無酸素を与えられた場合には、化合物11〜14および16は、効力において何等の有意な変化を示さなかった。
【0225】
それらのそれぞれのキナーゼインヒビター(11、12、16)に対して、四級アンモニウム塩プロドラッグ(17〜23、27)は、A431細胞の増殖の阻害において12〜277倍より低い有効性であり;SKBR3細胞の増殖の阻害において19〜332倍より低い有効性であり;SW620細胞の増殖の阻害において18〜123より低い有効性であった。表4のいくつかのプロドラッグ(19、20、22および23)は、細胞が4時間の無酸素を受けた後に、A431およびSKBR3細胞の増殖を阻害する時に有意により強力であった(SW620細胞は強力ではない)。低酸素細胞毒性比(hypoxic cytotoxicity ratios:HCR)は、A431細胞において10.4〜26.8の範囲およびSKBR3細胞において6.7〜18.1の範囲にわたり、このことは、ニトロヘテロ環還元的トリガーの低酸素選択的還元と、それに続く、不可逆性のerbB1、2、4インヒビターを放出するトリガーフラグメント化と一致していた。
【0226】
(A.2.10 放射線分解還元)
電子親和性プロドラッグは、正常組織における正常酸素圧条件下と対照的に、固形腫瘍の低酸素領域において、一電子プロセスによって選択的に還元されて、細胞毒性エフェクタを形成または放出し得る(Brown and Wilson, Nature Rev. Cancer, 2004 , 4,437〜447)。プロドラッグは、NHEに対して−0.6〜−0.2V、好ましくは−0.5〜−0.3Vの一電子還元電位E(1)を有するトリガー部分を含有するべきである。多数の化合物のE(1)値は、文献(例えば、Wardman, P. J .Phys. Chem. Ref. Data, 1989, 18, 1637〜1755)から得られ得るか、または多数の方法によって測定され得る。例えば、パルス放射線分解法は、プロドラッグの、それらの一電子還元の際に形成されるラジカルアニオンと、それらから化合物のデータE(1)値を算出され得るビオロゲンおよびキノン化合物などの参照標準の間の平衡定数を測定する(Meisel and Czapski. J. Phys. Chem., 1975, 79, 1503〜1509)。プロドラッグ17〜22、140〜145のE(1)値は、パルス放射線分解法によって測定され、−0.493〜−0.388V範囲に決定された(表4)。全てが、生物学的背景で、それらのラジカルアニオンを酵素的に形成することができる適切なE(1)値を有すると考えられる。
【0227】
適切なE(1)値を有するプロドラッグは、溶液中のプロドラッグの放射線分解の後に、多くの方法によってエフェクタ部分を放出するそれらの能力について試験され得る。例えば、放射線分解の前後の質量分析(mass spectrometry:MS)および/または高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)によって、出発化合物および放射線分解の結果として形成される生成物が確認される。いくつかの一電子還元体が、種々の溶質(soluter)を含有する溶液の放射線分解の際に生じ得る。例えば、ホルマートイオンを含有するγ線照射溶液中で形成されるCO
2・−ラジカルは、−1.90Vの低いE(1)を有し(Schwarz et al., Inorg. Chem., 1985, 24, 433〜439)、より高いE(1)の化合物への容易な電子移動を経る。使用される放射線条件下に、吸収された放射線用量のGy(Jkg
−1)につき、一電子還元等価物(CO
2・−ラジカル)中0.66μMの濃度が生じさせられる(Mulazzaniet al, J. Phys. Chem., 1980, 90, 5347〜5352)。プロドラッグ濃度の喪失を、溶液の放射線分解の際に生じた還元性等価物の濃度と比較することによって、各プロドラッグの完全な喪失に、一電子還元が必要であるか、複数電子還元が必要であるかを決定することが可能である。通常、同じプロドラッグ分子の多電子還元を最小にするために、0.95還元当量がプロドラッグに移動させられた後のプロドラッグの1電子除去についての証拠が求められる。プロドラッグを1電子除去する場合、これは、しばしば、そのラジカルアニオンのフラグメント化を示す。この結論は、放出された細胞毒性エフェクタおよび一過性のベンジルタイプのラジカルから生じる生成物(例えば、H原子抽出(abstraction)によって形成されたメチルニトロ芳香族化合物(methyl nitroaromatic compound:MNA))のHPLC−MS組合せ同定によってさらに指示される。これは、所定の関連するアリールメチル四価窒素マスタードの場合に起こることを示した。(Anderson et al., J. Phys. Chem., 1997, 101,9 704〜9709;Wilson et al., Radiat. Res., 1998, 149, 237〜245)。プロドラッグ19および20について得られたデータは、一電子還元レベルでのそれらの消費と一致し(0.95還元当量のレベルでプロドラッグの>50%喪失)、放出されたエフェクタ(化合物11)がHPLC−MSによって検出された(表4)。同様に、定常状態の放射線分解と、それに続くHPLC−MSによって、プロドラッグ140、143および144は、一電子還元後にそれらのそれぞれのエフェクタ化合物を放出したことが確認された。対照的に、プロドラッグ21について得られたデータは、二電子還元を必要とする消費と一致する。一電子還元後に、エフェクタ(化合物11)の放出は、観察されなかった。プロドラッグ17、18、22および142は、一電子還元後にそれらのそれぞれのエフェクタ化合物を放出せず、多電子還元後にのみ消費された。
【0228】
還元的プロドラッグは、トリガー部分の一電子還元の際に制御されたフラグメント化速度定数を有するように選択されることが望ましい。腫瘍細胞の低酸素領域において高濃度の細胞毒性エフェクタを放出する迅速なフラグメント化が望ましいが、正常酸素状態下の正常組織細胞にとってはそうではない。エフェクタの放出を効果的に阻害する、酸素による一電子還元型ニトロアレンベースのプロドラッグの逆酸化の速度定数kO
2は、以下の式によって与えられる:
【0230】
[式中、E(1)C/C
・−は、プロドラッグの一電子還元電位である](Wardman et al., Biochem. Soc. Symp., 1995, 61, 171〜194;Anderson et al., Org. Biomol. Chem., 2005, 3, 2167〜2174)。
【0231】
一電子還元型プロドラッグのフラグメント化の速度定数kfragは、パルス放射線分解を用いてラジカルアニオンのフラグメント化の際に生じたベンジルタイプのラジカルの吸収スペクトルの時間分解形成を観察することにより測定され得る(Anderson et al., J. Phys. Chem. A, 1997, 101, 9704〜9709)。プロドラッグ19、20、140、141および143〜145のkfrag値は、パルス放射線分解によって測定され、表4に示されている。表3に記載されたプロドラッグのうち、プロドラッグ19および20は、低酸素下での一電子還元の際にフラグメント化速度を最も望ましい範囲内で有し、それらが、A431およびSKBR3細胞ベースの抗増殖アッセイにおいて最も大きい低酸素細胞毒性比(hypoxic cytotoxicity ratio:HCR)をインビトロで示すことと一致する(表3)。
【0233】
(A.2.11 A431異種移植片における化合物19、20および21のインビボスクリーニング)
プロドラッグ19、20および21は、それらのそれぞれの最大耐用用量の際のA431異種移植片における有効性について、乳酸塩バッファ中のIP投薬後のq4dx3スケジュールで比較された(
図2)。
【0234】
図2は、A431異種移植片に対する化合物19、20および21の有効性を示す。
【0235】
プロドラッグ20(q4dx3 MTD=133μmol/kg/用量)は、A431異種移植片において相当な有効性を実証した(算出された腫瘍増殖阻害(Tumour Growth Inhibition:TGI)>>210%)が、プロドラッグ19(q4dx3 MTD=75μmol/kg/用量)は、弱くしか活性でなく(TGI=120%)、プロドラッグ21(q4dx3 MTD=75μmol/kg/用量)は、不活性であった(TGI=10%)。各プロドラッグは、同一エフェクタ(化合物11)をベースとし、使用される還元的トリガーの性質のみが異なる。プロドラッグについての活性のランク順序(20>19>21)は、パルス放射線分解による一電子還元後のトリガーのフラグメント化の速度定数(20>19>21)およびインビトロでA431細胞においてプロドラッグについて観察されたHCR(20>19>21)と一致し、このことは、A431異種移植片の低酸素コンパートメントにおけるプロドラッグの低酸素選択的活性化およびエフェクタの放出、それに続く、腫瘍中の有酸素細胞へのエフェクタの逆拡散は、プロドラッグ19および20の作用機序であるという仮説を支持する。
【0236】
(A.2.12 化合物20の溶解性および安定性)
四級アンモニウム塩プロドラッグ20は、さまざまな溶質における溶解性および化学的安定性についてHPLCにより研究されている。αMEM細胞培養培地中1112μMの溶解性を有しながらも、良好な安定性(半減期=58時間)も有することが測定されている。エフェクタ11の放出は、α−MEM中37℃で24時間後にHPLCによって観察されなかった。さらに、プロドラッグ20は、DMSOおよび乳酸塩バッファ(pH=4)中で本質的に安定である(半減期>96時間)。
【0237】
(A.2.13 化合物11および20のマウスの毒性および薬物動態学)
表5には、不可逆性erbB1/2インヒビター11およびプロドラッグ20の最大耐量(maximum tolerated dose:MTD)および血漿薬物動態学(乳酸塩バッファ(pH4)中の溶液としての各化合物の腹腔内注射後)が記載されている。両化合物は、下痢および体重減少を示し、このことは、用量制限としての胃腸毒性を示唆する。体重減少が出発重量の>15%であった場合には、人道的選別が実施された。MTD値は、すべての薬物関連原因による7中1未満の死亡として定義された。プロドラッグ20は、単回用量として、またはq4dx3スケジュールで送達される場合に化合物11よりも1.8倍良好に耐容性であると決定された。両化合物は、それらのそれぞれの単回用量MTDの小部分での多数回用量スケジュールで十分に耐容性であり(次のセクション参照)、唯一の観察され得る毒性としての体重減少があった。各化合物の血漿薬物動態学は、単回投与MTDの42%での単回腹腔内投与後に測定された。プロドラッグ20は、化合物11のものよりも23倍高い曲線下面積(area under the curve:AUC)を示したが、プロドラッグ20による投薬後に血漿中に見られた化合物11の量は最小であり(エフェクタAUCは、プロドラッグAUCの1パーセントである)、このことは、プロドラッグ20が、インビボでの非特異的放出に安定であることを示した。
【0239】
(A.2.14 化合物11および20の有効性の比較)
プロドラッグ20は、A431異種移植片における有効性について、等毒性(equitoxic)用量(単回投与MTDの63%)において、乳酸塩バッファ中のIP投与後のより長期化したq4dx6スケジュールでエフェクタ11と直接的に比較された。プロドラッグ20は、増殖遅延によってエフェクタ11よりも優れた有効性を示し、これは、統計的に有意であると決定された(
図3A)。各剤について採用された用量およびスケジュールは、平均体重減少によって判断されるように等毒性であるとして決められ(
図3B)、エフェクタ11で処理されたマウスについて2/12の死亡が観察され、プロドラッグ20で処理されたマウスについて0/12の死亡が観察された。
【0240】
図3Aは、A431異種移植片に対する化合物11および20の有効性を示す。
【0241】
図3Bは、化合物11および20で処理されたA431保有マウスの平均体重変化を示す。
【0242】
(A.2.15 細胞erbB1阻害:有酸素および低酸素の条件)
図10は、化合物11および16〜22のA431細胞自己リン酸化阻害を示す。細胞は、有酸素または低酸素の条件下に1μMの試験化合物への4時間の曝露を与えられ、その後、薬物不含有培地により広範囲に洗浄されて、試験化合物が除去され、終夜、血清欠乏とされ、次いで、EGFにより刺激され、溶解させられ、ホスホ−EGFR(ホスホ−erbB1)またはタンパク質ローディングコントロールとしてのアクチンについてウエスタンブロッティングが行われた。
【0243】
化合物19および20は、p-erbB1の低酸素選択的阻害を実証した。化合物17、18、21および22は、p-erbB1の明らかな低酸素選択的阻害を示さなかった。
【0244】
(A.2.16 細胞株パネルにおける化合物11および20の細胞増殖阻害活性)
図11は、有酸素および低酸素の条件下、A431、BT474、SKBR3、SKOV3およびSW620細胞における化合物11および20の細胞増殖の阻害(IC
50)を示す。
【0245】
化合物20は、細胞株パネルの全域で低酸素選択的抗増殖性活性を示し、その選択性は、erbB−ファミリーのメンバー(A431、BT474、SKBR3、SKOV3)を過剰発現すると知られている細胞株において最大である。対照的に、不可逆性erbB1/2インヒビター11は、細胞株パネルの全域で低酸素選択的抗増殖活性を示さない。
【0246】
(A.2.17 化合物20の細胞代謝:有酸素および低酸素条件)
図12は、有酸素および低酸素条件下にA431およびSKOV3細胞が10μMのプロドラッグ20により処理される場合にLCMSによって検出されるインヒビター11の、細胞不含有コントロールに対する時間依存放出を示す。
【0247】
A431およびSKOV3細胞は、低酸素条件下でプロドラッグ20を選択的に代謝して、それぞれ、200および500pmol/時/100万個細胞の速度で不可逆性erbB1/2インヒビター11を生じさせることを実証した。プロドラッグ20のある程度の低酸素選択的還元が5%ウシ胎仔血清を含有する細胞不含有培地において起こり、62pmol/時の速度でインヒビター11を放出する。
【0248】
(A.2.18 化合物11および20の、それらのそれぞれのq4dx3 MTDでの血漿およびA431腫瘍の薬物動態学)
図13は、雌のA431腫瘍保有NIHIIIマウスが単回用量(ip)の各試験化合物をq4dx3 MTD(それぞれ133および75μmol/kg)で投与される場合の、血漿およびA431腫瘍中の、化合物20および化合物11(化合物20の投与に由来し、直接的に投与される場合)の濃度を時間の関数として示す。
【0249】
表6は、雌のA431腫瘍保有NIHIIIマウスが単回用量(ip)の化合物20をq4dx3 MTD(133μmol/kg)で投与された場合の、化合物20および11(投与化合物20に由来する)の、血漿およびA431腫瘍における、0〜72時間の算出された曲線下面積(AUC)を示す。
【0251】
プロドラッグ20およびインヒビター11の血漿およびA431腫瘍の薬物動態学が、雌のNIHIIIマウスにおいて、LC/MS/MS検出(D6内部標準による)によって、それらのそれぞれのMTD(133および75μmol/kg;ip)投与に従って測定された。プロドラッグ20は、2016μmol−h/Lの血漿AUC
0−72hを与え、インヒビター11の投与について達成されたもの(18μmol−h/L)よりも数倍〜110倍大きかった。後者は、100μmol−h/kgの腫瘍AUC
0−infを与え、半減期(t
1/2)は9時間であった。対照的に、プロドラッグ20は、2245μmol−h/kgの腫瘍AUC
0−72hを与え、72時間まで約30μmol/kgの安定な腫瘍組織濃度を有し、t
1/2は、測定され得なかった。この長いプロドラッグ残留性と一致して、プロドラッグ20から放出されたインヒビター11は、腫瘍組織において、>72時間のt
1/2を有しており、464μmol−h/kgのAUC
0−72hを提供した。したがって、A431腫瘍におけるインヒビター11のAUCは、プロドラッグ20の投与後に、等価な毒性でのインヒビター11自体の投与後よりも少なくとも4.6倍高かった。
【0252】
図14は、SKOV3異種移植片に対する化合物11および20の有効性を示す。
【0253】
図15は、化合物11および20で処理されたSKOV3保有マウスの平均体重変化を示す。
【0254】
プロドラッグ20は、SKOV3異種移植片における有効性について、等毒性(eqitoxic)用量(それぞれ133および56μmol/kg/用量)において、乳酸塩バッファ中のIP投与後のq3dx6スケジュールでエフェクタ11と直接的に比較された。プロドラッグ20は、増殖遅延によってエフェクタ11よりも優れた有効性を示し、この増殖遅延は統計的に有意であると決定された(
図14)。各薬剤について採用された用量およびスケジュールは、平均体重減少によって判断された時に等毒性であると決定され(
図15)、エフェクタ11で処理されたマウスについて1/7の死亡が観察され、プロドラッグ20で処理されたマウスについて0/7の死亡が観察された。
【0255】
図16は、インビトロでのA431細胞におけるプロドラッグ20およびエフェクタ11による細胞HER1(erbB1, EGFR)およびErk1/2リン酸化の用量依存性阻害を示す。
【0256】
プロドラッグ20およびエフェクタ11は、ホスホ−HER1およびホスホ(phosphor)−Erk1/2状態のウエスタン免疫ブロッティング測定によるEGF刺激A431細胞におけるHER1(erbB1)およびErk1/2のリン酸化を阻害するそれらの能力について試験された。化合物11は、細胞HER1およびErk1/2の強力なインヒビターであると示された。対照的に、四級アンモニウム塩誘導体20は、HER1およびErk1/2の阻害において約60倍より低い有効性であった。
【0257】
(A.2.19 細胞株パネルにおける化合物82および140〜144の阻害活性)
表7は、A431、H1975およびHT29細胞における細胞増殖に対するプロドラッグ82、140、141、142、143および144の阻害効果を示す。
【0259】
表7のプロドラッグ(82、140、141、143および144)は、細胞が4時間の無酸素を与えられた後に3種の細胞株すべての増殖の阻害において有意により強力であった。低酸素細胞毒性比(HCR)は、A431細胞において7〜62、H1975細胞において3〜28およびHT29細胞において5〜31の範囲であり、ニトロヘテロ環還元的トリガーの低酸素選択的還元と、それに続く、キナーゼインヒビターを放出するトリガーのフラグ
メント化と一致した。放出されるキナーゼインヒビターの性質は、細胞株感受性のスペクトルに影響を及ぼす。例えば、プロドラッグ82は、A431細胞に対して最大の抗増殖活性および低酸素選択性を示し、プロドラッグ144は、HT29細胞に対して最大の抗増殖活性および低酸素選択性を示す。
【0260】
(A.2.20 要約)
集められたデータにより、マイケル受容基に隣接する第三アミンを有する不可逆性erbB1、2、4インヒビターの四級アンモニウム塩プロドラッグは、有酸素条件下で実施される細胞ベースのターゲット調節および抗増殖アッセイにおいてあまり活性でないことが示される。一電子還元の際に望ましい速度定数でフラグメンテト化して第三アミン含有不可逆性erbB1、2、4インヒビターを放出するよう適宜選択されるフラグメント化還元的トリガーを採用するプロドラッグは、無酸素条件下で実施される細胞ベースの抗増殖アッセイにおいて選択的により強力であり、量的に大きな薬物曝露レベルでマウスに送達され得、従って、腫瘍異種移殖片実験において、それらの親不可逆性erbB1、2、4インヒビターに対して改善された治療係数を有し得る。
【0261】
(セクションB)
(B.1. 合成)
(B.1.1 化学合成)
燃焼分析は、Microchemical Laboratory, University of Otago, Dunedin, NZによって実施された。融点は、いずれも、Electrothermal Model 9200を使用して測定され、読み取りのとおりとした。
1H NMRスペクトルは、Bruker Avance-400分光計で測定され、Me
4Siを基準とした。高分解能質量スペクトルは、公称5000の分解能のVarian VG-70SE分光計で記録された。質量分析は、ThermoFinnigan MSQシングル四重極型質量分析計で実施された。質量検出は、APCI源により、正負イオン同時捕捉を用いて行われた。特に断りのない限り、化合物は、指示された溶出剤を使用する、Silica gel 60担体(Scharlau、230〜400メッシュASTM)によるフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製された。
【0262】
(B.1.1.1 4−アニリノピリド[3,4−d]ピリミジンキナーゼインヒビターの合成(スキーム7))
(B.1.1.1.1 (2E)−N−[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(161))
6−フルオロピリド[3,4−d]ピリミジン−4(3H)−オン(93)(4.0g,24.2mmol)、塩化チオニル(100mL)および触媒量のDMF(3滴)の不均一混合物を還流下に1時間にわたって攪拌した。得られた溶液を減圧下、45℃(浴温)で蒸発させ、明るい褐色の固体を得た。この固体に、3−ブロモ−4−フルオロアニリン(5.1g,26.8mmol)および無水DMA(25mL)の混合物を加えた。反応混合物を、室温で40分間にわたって攪拌し、次いで、5%炭酸水素ナトリウム溶液(250mL)を加え、混合物を室温で15分間にわたって攪拌した。沈殿した固体を、ろ過により集め、水およびヘキサンで数回逐次洗浄した後、真空下でシリカゲル上で乾燥させ、N−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−6−フルオロピリド[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(162)(8.13g,99%)を得た。
【0263】
mp 275〜277℃(文献のmp 269〜270℃;Smaill et al., .J Med. Chem., 1999, 42, 1803〜1815);
1H NMR δ [(CD
3)
2SO] 10.12(s, 1H), 8.97(s, 1H), 8.74(s, 1H), 8.32(dd, J=6.4, 2.6Hz, 1H), 8.23(d(不十分に分解), J=0.8Hz, 1H), 7.93-7.87(m, 1H), 7.46(t, J=8.8Hz, 1H).C
13H
7BrF
2N
4の分析計算値:C, 46.32 ;H, 2.09 ;N, 16.62%.実測値:C, 46.54 ;H, 3.33 ;N, 16.42%.
化合物162(13.9g,41.3mmol)および4−メトキシベンジルアミン(54.3mL,413mmolの無水DMSO(100mL)中の混合物を、窒素雰囲気下、75℃(浴温)で95時間にわたって攪拌した。次いで、溶液を冷却し、石油エーテル(500mL)を加えた。室温で15分間にわたって攪拌した後、層を分離させ、石油エーテル層をデカントした。この手順をさらに2回繰り返し、次いで、得られたDMSO層に水(500mL)を加え、混合物を室温で1時間にわたって攪拌し、黄色/橙色の固体を沈殿させ、この固体を、ろ過により集め、水で洗浄した(5×100mL)後、真空下で乾燥させ、次いで、石油エーテルで洗浄した(2×100mL)。次いで、黄橙色の固体を温アセトン(1L)とともに約3時間にわたって攪拌した後、水(1L)を加え、必要な生成物を沈殿させた。固体を、ろ過により集め、アセトン/水(1:1,5×80mL)で洗浄し、真空でシリカゲルにより乾燥させ、純粋なN
4−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)−N
6−(4−メトキシベンジル)ピリド[3,4−d]ピリミジン−4,6−ジアミン(165)(14.8g,79%)を、黄色/橙色の固体として得た。
【0264】
mp 181〜184℃;
1H NMR δ [(CD
3)
2SO] 9.69(s, 1H), 8.75(s, 1H), 8.37(s, 1H), 8.26(dd, J=6.4, 2.6Hz, 1H), 7.91-7.83(m, 1H), 7.42(t, J=8.8Hz, 1H), 7.33(br d, J=8.6Hz, 2H), 7.27(t, J=6.3Hz, 1H), 7.16(s, 1H), 6.91-6.85(m, 2H), 4.49(d, J=6.3Hz, 2H), 3.71(s, 3H).C
21H
17BrFN
5Oの分析計算値:C, 55.52 ;H, 3.77 ;N, 15.42%.実測値C: 55.75 ;H, 3.88 ;N, 15.44%.
化合物165(15.9g,34.9mmol)のトリフルオロ酢酸(80mL)中の攪拌均一溶液に、アニソール(7.58mL,69.8mmol)を加えた。次いで、混合物を室温で20時間にわたって攪拌した。トリフルオロ酢酸の大部分を減圧下、35℃(浴温)で蒸発させた。得られた赤褐色の油状物を石油エーテル(400mL)とともに室温で約10分間にわたって攪拌した。次いで、石油エーテル層をデカントし、さらに石油エーテルを用いてこの処理を繰り返した(2×300mL)。次いで、残渣を5M NH
3とともに、0℃で5分間にわたり、次いで、室温でさらに45分間にわたって攪拌した。このようにして得られた固体を、ろ過により集め、水で洗浄した(3×60mL)後、真空で乾燥させた。次いで、固体を温アセトン(500mL)とともに30分間にわたって攪拌した。水(800mL)を加え、懸濁液を室温で1時間にわたって攪拌した。固体を、再度ろ過により集め、水(6×70mL)、次いで、石油エーテル/酢酸エチル(3:1,4×100mL)で逐次洗浄した後、減圧下で乾燥させ、N
4−(3−ブロモ−4−フルオロフェニル)ピリド[3,4−d]ピリミジン−4,6−ジアミン(159)(11.5g,99%)を得た。
【0265】
mp 269〜271℃(文献のmp 268〜270℃)。
1H NMRは報告されているものと同一であった(Smaill et al., J. Med. Chem., 1999, 42, 1803〜1815)。
【0266】
(E)−メチル4−ブロモブタ−2−エノアート(53.7g,300mmol)のTHF(100mL)中の攪拌均一溶液に、0℃(浴温)、窒素雰囲気下で、水酸化リチウム一水和物(16.4g,390mmol)の水溶液(80mL)を滴下した(35分かけて)。添加後、混合物を0℃で3時間にわたって攪拌した。冷水(300mL)および石油エーテル(400mL)を加え、混合物を0℃で10分間にわたって攪拌した。有機層を分離し、廃棄した。次いで、酢酸エチル/石油エーテル(1:10,300mL)を加え、混合物を再度0℃で10分間にわたって攪拌した後、有機層を分離し、廃棄した。水溶液を、濃硫酸を用いて0℃でpH<1に酸性化した。生成物をジクロロメタン(400mL;200mL)中に抽出し、合わせた有機抽出物を、乾燥させ(MgSO
4)、減圧下、35℃(浴温)で蒸発させ、黄色の油状物を得た。油状物を石油エーテル(2×500mL)とともに50℃(浴温)で攪拌した。合わせた石油エーテル抽出物を減圧下、20〜25℃(浴槽)で濃縮し、生成物の沈殿を促した。次いで、懸濁液を5℃で一晩静置した後、固体を、ろ過により集め、冷石油エーテルで洗浄し、乾燥させ、(E)−4−ブロモブタ−2−エン酸(9)(19.9g,40%)を得た。
【0267】
(方法A:酸クロリドを用いたアミドカップリング)
塩化オキサリル(508mg,4.00mmol)を、酸159(496mg,3.00mmol)の無水ジクロロメタン(6mL)溶液に加え、混合物を室温で40分間にわたって攪拌した。次いで、溶液を減圧下、室温で蒸発させ、油状物を得、この油状物を、無水THF(5mL)に溶解させ、化合物8a(668mg,2.00mmol)、トリエチルアミン(0.84mL,6.00mmol)およびTHF(15mL)の攪拌混合物に0℃で加えた。1時間後、塩化オキサリル(508mg,4.00mmol)および酸9(496mg,3.00mmol)から事前に作製された、別のバッチの酸クロリドを加え、0℃でもう30分間にわたりさらに攪拌した。40%NHMe
2(15.2mL,12.0mmol)およびDMA(10mL)の混合物を加え、反応混合物を0℃〜室温で19時間にわたって攪拌した。揮発物を減圧下、25℃で蒸発させ、褐色の油状物を得、この油状物を、1%炭酸ナトリウム溶液(100mL)とともに0℃で30分間にわたって攪拌した。このようにして形成された固体を、ろ過により集め、水で数回洗浄し、乾燥させた。ジクロロメタン〜ジクロロメタン/MeOH(15:1)を用いて溶出する、この材料のシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーによって、(2E)−N−[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(161)(400mg,45%)を、黄色/橙色の固体として得た。
【0268】
mp 163〜166℃;
1H NMR δ [(CD
3)
2SO] 10.96(s, 1H), 10.33(s, 1H), 9.02(br s, 1H), 8.99(br s, 1H), 8.63(s, 1H), 8.24(dd, J=6.4, 2.6Hz, 1H), 7.92-7.84(m, 1H), 7.44(t, J=8.8Hz, 1H), 6.87(dt, J=15.5, 6.0Hz, 1H), 6.52(br d, J=15.5Hz, 1H), 3.09(dd, J=6.0, 1.2Hz, 2H), 2.19(s, 6H).C
19H
18BrFN
6O.MeOHの分析計算値:C, 50.33 ;H, 4.65 ;N, 17.61%.実測値:C, 50.38 ;H, 4.31 ;N, 17.86%.
(方法B:DCCを用いたアミドカップリング)
DCC(7.23g,35.1mmol)の無水THF(10mL)中の攪拌溶液に、0℃、窒素雰囲気下で、酸9(5.79g,35.1mmol)の無水THF(25mL)中の溶液を加えた。反応混合物を45分間にわたって攪拌した後、アニリン159(2.34g,7.01mmol)の無水DMA(18mL)中の懸濁液を加えた。次いで、ジ−イソ−プロピルエチルアミン(di-iso-propylethylamine:DIPEA)(6.11mL,35.1mmol)を加え、最終反応混合物を0℃で45分間にわたって攪拌した後、40%ジメチルアミン水溶液(10.6mL,84.0mmol)を加えた。さらに20分後、氷水(100mL)、続いて、冷2%炭酸ナトリウム水溶液(400mL)を加えた。生成物を酢酸エチル(600mL)中に抽出し、これを水(300mL)、冷2%炭酸ナトリウム水溶液(300mL)および水(300mL)で逐次洗浄した。酢酸エチル溶液を乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で蒸発させ、固体を得、この固体を、DCM/MeOH(100:0から15:1への勾配)を用いて溶出するシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーによって精製し、(2E)−N−[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(161)(2.4g,77%)を得た。
【0269】
(方法C:アミドカップリング、続いてのHorner Wadsworth Emmonsカップリング)
CDI(8.44g,52.0mmol)および無水THF(32mL)の攪拌混合物に、室温、窒素雰囲気下で、2−(ジエトキシホスホリル)酢酸(10.2g,52.0mmol)のTHF(28mL)中の溶液を加えた。添加後、反応混合物を40℃(浴槽)で20分間にわたってさらに攪拌した(それによりガスの発生は停止した)。化合物159(13.4g,40.0mmol)の、無水THF(45mL)およびDMA(50mL)の混液中の溶液を加え、反応物を40℃でさらに攪拌した。反応は、TLC(酢酸エチル)によってモニタリングされ、1.5時間後に約70%しか完了していないことが分かった。そこで、無水THF(16mL)中のCDI(4.22g,26.0mmol)を、無水THF(7mL)中の2−(ジエトキシホスホリル)酢酸(5.10g,26.0mmol)に加えることによって、別のバッチの試薬を調製した。この追加試薬を反応混合物に加えた後、それを2時間にわたって40℃でさらに攪拌し、次いで、水(1,000mL)中に注ぎ、石油エーテル(1,500mL)とともに室温で16時間にわたって攪拌した。次いで、石油エーテル層をデカントした。さらなる石油エーテル(800mL)を加え、混合物を15分間にわたって攪拌した。固体を、ろ過により集め、水で洗浄し(5×200mL)、乾燥させ、2−(4−(3−ブロモ−4−フルオロフェニルアミノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イルアミノ)−2−オキソエチルホスホン酸ジエチル(160)(20.1g,98%)を得た。
【0270】
m.p.214〜217℃。
1H NMR δ (CDCl
3) 9.45(s, 1H), 9.03(s, 1H), 8.73(s, 1H), 8.55(s, 1H), 8.13(dd, J=6.0, 2.6Hz, 1H), 7.77(s, 1H), 7.70-7.63(m, 1H), 7.18(dd, J=8.7, 8.2Hz, 1H), 4.31-4.18(m, 4H), 3.15(d, J=21.0Hz, 2H), 1.39(t, J=7.1Hz, 6H).C
19H
20BrFN
5O
4 P.0.2H
2Oの分析計算値:C, 44.24 ;H, 3.99 ;N, 13.58%.実測値:C, 44.00 ;H, 4.09 ;N, 13.42%.
2,2−ジエトキシ−N,N−ジメチルエタンアミン(15.7g,97.5mmol)および水(16.4mL)の攪拌混合物に、室温、窒素雰囲気下で、37%HCl水溶液(16.4mL,195mmol)を加えた。添加後、混合物を40℃(浴槽)で25時間にわたって攪拌した。次いで、それを0℃(浴槽)に冷却し、溶液Aを得た。KOH(14.0g,250mmol)を水(75mL)に室温、窒素雰囲気下で溶解させた。次いで、それを0℃(浴槽)に冷却し、溶液Bを得た。化合物160(19.97g,39.0mmol)の攪拌不均一混合物に、室温、窒素雰囲気下で、最小量のDMA(60mL)を加え、均一溶液を得た。次いで、LiCl(1.65g,39.0mmol)を加え、得られた混合物を0℃(浴槽)で15分間にわたって攪拌した。次いで、冷溶液Bを加え、反応物を0℃で2分間にわたって攪拌した。次いで、冷溶液Aを加え、最終反応混合物を0℃、窒素雰囲気下でさらに攪拌した。反応は、TLC(DCM/MeOH=10:1)によってモニタリングされた。30分後、さらなるKOH(5.0g,89mmol)を加え、反応物を0℃で1.5時間にわたってさらに攪拌した。次いで、それを水(1,000mL)中に注いだ。石油エーテル(1,000mL)を加え、混合物を室温で20分間にわたって攪拌した。石油エーテル層をデカントした後、さらなる石油エーテル(600mL)を加え、混合物を再度15分間にわたって攪拌した。固体を、ろ過により集め、水(5×200mL)で洗浄し、減圧下にシリカゲル/KOHにより乾燥させ、(2E)−N−[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテナミド(161)(16.9g,97%)を得た。
【0271】
(B.1.1.1.2 (2E)−4−(ジメチルアミノ)−N−{4−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリノ]ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル}−2−ブテナミド(170))
6−フルオロピリド[3,4−d]ピリミジン−4(3H)−オン(93)(4.90g,29.68mmol)の、SOCl
2(250mL)、CH
2Cl
2(50mL)およびDMF(8滴)中の懸濁液を3時間にわたって還流加熱した。次いで、溶媒を真空蒸留によって除去し、残渣を蒸発乾固させた。得られた粗4−クロロ−6−フルオロピリド[3,4−d]ピリミジンを、CH
2Cl
2(50mL)および
iPrOH(120mL)に溶解させ、それに、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリン(5.85g,32.66mmol)を加えた後、溶液を、空気冷却器を使用して、84℃で30分間にわたって還流加熱した。還流中にCH
2Cl
2を蒸発させ、残留する
iPrOHから淡黄色の固体として粗生成物が沈殿した。混合物を室温に冷却し、5%Na
2CO
3水溶液の氷冷ビーカー中に注ぎ、0℃で15分間にわたって攪拌した。固体を、ろ過により集め、水、次いで、ヘキサンで数回洗浄した後、真空炉内(45℃)で終夜乾燥させ、6−フルオロ−N−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ピリド[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(163)(9.68g,100%)を、黄色の固体として得た。
【0272】
m.p.247〜249℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.25(s, 1H), 8.99(s, 1H), 8.75(s, 1H), 8.34(dd, J=6.5, 2.7Hz, 1H), 8.26-8.30(m, 1H), 8.24(s, 1H), 7.60(t, J=9.7Hz, 1H).C
14H
7F
5N
4の分析計算値:C, 51.54 ;H, 2.16 ;N, 17.17%;実測値:C, 51.37 ;H, 2.30 ;N, 16.93%.
化合物163(14.30g,43.87mmol)のDMSO(90mL)中の攪拌溶液を、4−メトキシベンジルアミン(57.3mL,482.52mmol)を窒素下、70℃でゆっくりと添加することにより処理した。得られた混合物を70〜75℃で48時間にわたって攪拌し、次いで、室温に冷却し、氷水(1L)のビーカー中に攪拌しながら注いだ。得られた固体を、ろ過により集め、水で洗浄し、真空炉内(45℃)で2時間にわたって乾燥させた。粗生成物を、CH
2Cl
2を用いてすり潰し、N
4−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N
6−(4−メトキシベンジル)ピリド[3,4−d]ピリミジン−4,6−ジアミン(166)(14.40g,74%)を、黄色の固体として得た。
【0273】
m.p.202〜204℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 9.83(s, 1H), 8.77(s, 1H), 8.38(s, 1H), 8.27-8.30(m, 1H), 8.21-8.24(m, 1H), 7.55(t, J=9.7Hz, 1H), 7.28-7.34(m, 3H), 7.17(s, 1H), 6.86-6.90(m, 2H), 4.50(d, J=6.3Hz, 2H), 3.71(s, 3H).C
22H
17F
4N
5Oの分析計算値:C, 59.59 ;H, 3.86 ;N, 15.79%;実測値:C, 59.31 ;H, 4.07 ;N, 15.46%.
化合物166(1.0g,2.26mmol)のTFA(20mL)中の攪拌溶液を、アニソール(490μL,4.51mmol)により室温で処理した。混合物を終夜攪拌し、次いで、酢酸エチルで希釈し、溶媒を減圧下で除去した。残渣を、ヘキサンを用いてすり潰し、次いで、アンモニア水(5N,100mL)により、30分間にわたり攪拌しながら処理した。得られた固体を、ろ過により集め、水で洗浄し、真空下で乾燥させ、N
4−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)ピリド[3,4−d]ピリミジン−4,6−ジアミン(168)(720mg,99%)を、黄色の固体として得た。
【0274】
m.p.252〜255℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 9.90(s, 1H), 8.72(s, 1H), 8.38(s, 1H), 8.34(dd, J=6.5, 2.6Hz, 1H), 8.24-8.28(m, 1H), 7.54(t, J=9.7Hz, 1H), 7.14(s, 1H), 6.30(s, 2H).C
14H
9F
4N
5.0.55EtOAcの分析計算値:C, 52.35 ;H, 3.63 ;N, 18.84%;実測値:C, 51.96 ;H, 3.70 ;N, 18.46%.
DCC(633mg,3.07mmol)のTHF(2mL)中の攪拌溶液を、窒素下で、酸9(506mg,3.07mmol)の無水THF(2mL)中の溶液により0℃で処理した。混合物を2時間にわたって攪拌し、次いで、DMA(2mL)中の化合物168(200mg,0.62mmol)、続いて、ジ−イソ−プロピルエチルアミン(DIPEA)(535μL,3.07mmol)で処理した後、さらに3時間にわたって0℃で攪拌した。このようにして形成された、得られた粗(E)−4−ブロモ−N−(4−(4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル)ブタ−2−エナミドをin situで40%ジメチルアミン水溶液(942μL,18.60mmol)により0℃で、攪拌しながら1時間にわたって処理した。次いで、混合物を、酢酸エチル(300mL)で希釈し、次いで、氷水(600mL)のビーカー中に注ぎ、10分間にわたって攪拌し、次いで、EtOAcで抽出した。合わせた有機抽出物を、2%冷Na
2CO
3水溶液、水および食塩水で洗浄した後、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。残渣を、EtOAc/MeOH(9:1)を用いて溶出するシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーによって精製した。次いで、CH
2Cl
2/ジイソプロピルエーテルからの再結晶化によって、(2E)−4−(ジメチルアミノ)−N−{4−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリノ]ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル}−2−ブテナミド(170)(175mg,65%)を、淡黄色の固体として得た。
【0275】
mp 170〜172℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 10.93(s, 1H), 10.42(s, 1H), 9.04(s, 1H), 9.01(s, 1H), 8.64(s, 1H), 8.24-8.28(m, 2H), 7.56(t, J=9.6Hz, 1H), 6.88(dt, J=15.4, 6.0Hz, 1H), 6.53(d, J=15.4Hz, 1H), 3.10(dd, J=6.0, 1.1Hz, 2H), 2.19(s, 6H).C
20H
18F
4N
6O.0.4CH
2Cl
2の分析計算値:C, 52.32 ;H, 4.05 ;N, 17.94%;実測値: C, 51.99; H, 4.28; N, 18.07%.
(B.1.1.1.3 (2E)−4−(ジメチルアミノ)−N−[4−(3−エチニルアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]−2−ブテナミド(171))
6−フルオロピリド[3,4−d]ピリミジン−4(3H)−オン(93)(6.64g,40.2mmol)、塩化チオニル(150mL)および触媒量のDMF(5滴)の懸濁液を還流下に30分間にわたって攪拌し、均一混合物を得、この混合物を減圧下、45℃(浴温)で蒸発させ、明るい褐色の固体を得た。この固体に、3−エチニルアニリン(6.56g,44.2mmol)および無水DMA(40mL)の混合物を加えた。次いで、反応混合物を室温で40分間にわたって攪拌した後、5%炭酸水素ナトリウム溶液(500mL)を加え、得られた混合物を室温で15分間にわたって攪拌した。固体を、ろ過により集め、水、次いで、ヘキサンでそれぞれ数回洗浄した。次いで、固体を真空下、シリカゲルにより乾燥させ、N−(3−エチニルフェニル)−6−フルオロピリド[3,4−d]ピリミジン−4−アミン(164)(10.5g,99%)を得た。
【0276】
mp 225〜227℃;
1H NMR δ[(CD
3)
2SO] 10.06(s, 1H), 8.96(s, 1H), 8.74(s, 1H), 8.28(d(不十分な分解), J=0.6Hz, 1H), 8.10(t, J=1.7Hz, 1H), 7.95-7.90(m, 1H), 7.46(t, J=7.9Hz, 1H), 7.32-7.27(m, 1H), 4.22(s, 1H).C
15H
9BrFN
4の分析計算値:C, 68.18 ;H, 3.43 ;N, 21.20%.実測値:C, 67.80 ;H, 3.50 ;N, 20.81%.
化合物164(8.90g,33.7mmol)および4−メトキシベンジルアミン(44.2mL,337mmol)の無水DMSO(80mL)中の混合物を窒素下、70℃(浴温)で158時間にわたって攪拌した。得られた溶液を簡単に冷却し、次いで、石油エーテルと共に、室温で15分間にわたって攪拌した後、石油エーテル層をデカントした(2×400mL)。水(400mL)をDMSO層に加え、混合物を室温で3時間にわたって攪拌した。そのようにして沈殿させた固体を、ろ過により集め、水で洗浄した(5×100mL)後、乾式吸引し、次いで、石油エーテルで洗浄し(2×100mL)、再度乾式吸引した。得られた褐橙色の固体を温アセトン(400mL)に溶解させ、水(500mL)を加えた。次いで、混合物を室温で1時間にわたって攪拌し、得られた固体を、ろ過により集め、アセトン/水(1:1,5×80mL)で洗浄し、真空でシリカゲル上で乾燥させ、N
4−(3−エチニルフェニル)−N
6−(4−メトキシベンジル)ピリド[3,4−d]ピリミジン−4,6−ジアミン(167)(10.3g,80%)を、黄色/橙色の固体として得た。
【0277】
mp 200〜203℃;
1H NMR δ [(CD
3)
2SO] 9.63(s, 1H), 8.75(s, 1H), 8.38(s, 1H), 8.03(br s, 1H), 7.94-7.88(m, 1H), 7.41(t, J=7.9Hz, 1H), 7.34(br d, J=8.6Hz, 2H), 7.28-7.21(m, 2H), 7.19 (s,1H), 6.92-6.85(m, 2H), 4.50(d, J=6.3Hz, 2H), 4.19(s, 1H), 3.71(s, 3H).C
23H
19N
5Oの分析計算値:C, 72.42 ;H, 5.02 ;N, 18.36%.実測値:C, 72.28 ;H, 5.05 ;N, 18.22%.
化合物167(12.3g,32.3mmol)の無水DCM(325mL)中の攪拌均一溶液に、トリフルオロ酢酸(24.5mL,323mmol)、続いて、アニソール(7.11mL,64.6mmol)を加えた。得られた混合物を、室温で70時間にわたって攪拌し、次いで、石油エーテル(1L)中に注ぎ、室温で約30分間にわたって攪拌した。石油エーテル層をデカントし、廃棄した。この処理を、さらなる石油エーテル(800mL)を用いて繰り返した。残った残渣を、アセトン/水(1:1,200mL)に溶解させ、5M NH
3(500mL)とともに室温で1時間にわたって攪拌した。固体を、ろ過により集め、アセトン/水(1:4、5×100mL)、次いで、石油エーテル/酢酸エチル(3:1、5×100mL)で逐次洗浄した後、真空で乾燥させ、N
4−(3−エチニルフェニル)ピリド[3,4−d]ピリミジン−4,6−ジアミン(169)(8.56g,98%)を得た。
【0278】
mp 220〜225℃(分解);
1H NMR δ [(CD
3)
2SO] 9.69(s, 1H), 8.70(s, 1H), 8.38(s, 1H), 8.08(t, J=1.7Hz, 1H), 7.95-7.89(m, 1H), 7.40(t, J=7.9Hz, 1H), 7.34(br d, J=7.7Hz, 1H), 7.16(s, 1H), 6.25(s, 2H), 4.17(s, 1H).C
15H
11N
5.2H
2O.0.2CH
3COCH
3の分析計算値:C, 60.65 ;H, 5.29 ;N, 22.67%. 実測値:C, 60.54 ;H, 5.01 ;N, 22.56%.
DCC(7.23g,35.1mmol)の無水THF(25ml)中の溶液に、0℃、窒素下で、固体酸9(5.79g,35.1mmol)を加えた。反応混合物を0℃で35分間にわたって攪拌した後、固体アニリン169(1.83g,7.01mmol)、続いて、無水DMA(20mL)およびジ−イソ−プロピルエチルアミン(DIPEA)(6.11mL,35.1mmol)を加えた。最終反応混合物を0℃で45分間にわたって攪拌した後、−15〜−20℃(浴槽)に冷却した。次いで、40%ジメチルアミン水溶液(10.6mL,84.0mmol)を加え、25分後に反応混合物を冷2%炭酸ナトリウム水溶液(200mL)中に注ぎ、生成物を酢酸エチル(600mL)中に抽出し、これを、水(300mL)、冷2%炭酸ナトリウム水溶液(300mL)および水(300mL)で逐次洗浄した。酢酸エチル溶液を乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で蒸発させ、固体を得、この固体を、DCM/MeOH(100:0から15:1への勾配)を用いて溶出するシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーによって精製し、(2E)−4−(ジメチルアミノ)−N−[4−(3−エチニルアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]−2−ブテナミド(171)(1.33g,51%)を、黄色/橙色の固体として得た。
【0279】
mp 163〜166℃;
1H NMR δ[(CD
3)
2SO] 10.89(s, 1H), 10.25(s, 1H), 9.02(s, 1H), 9.00(s, 1H), 8.63(s, 1H), 8.02(br s, 1H), 7.94-7.87(m, 1H), 7.42(t, J=7.9Hz, 1H), 7.26(br d, J=7.7Hz, 1H), 6.88(dt, J=15.4, 6.0Hz, 1H), 6.52(br d, J=15.4Hz, 1H), 4.19(s, 1H), 3.09(dd, J=6.0, 1.2Hz, 2H), 2.19(s, 6H).C
21H
20N
6O.0.2H
2Oの分析計算値:C, 67.08 ;H, 5.47 ;N, 22.35%.実測値:C, 66.88 ;H, 5.47 ;N, 22.22%.
(B.1.1.2 還元的トリガーα−メチルブロミドの合成)
(B.1.1.2.1 5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(スキーム8、ルート3))
化合物101(20.0g,157.36mmol)(Chauviere et al., J. Med. Chem., 2003, 46, 427〜440の方法に従って調製)およびK
2CO
3(32.62g,236.04mmol)のDMF(200mL)中の懸濁液に、0℃で、ヨウ化メチル(14.70mL,236.04mmol)を滴下した。得られた混合物を、室温に加温し、次いで、2時間にわたって攪拌した後、過剰のヨウ化メチルを室温で蒸発させた。沈殿物をろ過により除去し、DMFろ液を減圧下、45〜50℃で濃縮した。得られた残渣をMeCN/DCM(1:9)で完全に抽出し、合わせた抽出物を、シリカゲルのショートカラムを通してろ過した。溶媒を除去した後、粗生成物をMeCNおよびトルエンから再結晶化させ、化合物111を、灰白色の結晶性固体として得た(15.74g,71%)。m.p.161〜163℃。
1H NMR(CDCl
3) δ 7.33(s, 1H), 3.65(s, 3H), 2.63(s, 3H)。これまでに報告されているものと同一である(Hosmane et al., J. Org. Chem., 1985, 50(26), 5892〜5)。
【0280】
化合物111(4.00g,28.34mmol)およびNBS(5.30g,29.78mmol)のMeCN(200mL)中の溶液を、還流下に2時間にわたって、1000Wタングステンハロゲン化物ランプで照射した。溶媒のおよそ半分を真空で除去した後、水(100mL)を加えた。減圧下でのさらなる濃縮によって、白色の沈殿物を得、この沈殿物を、ろ過により集め、水で洗浄し、真空下で乾燥させ、5−(ブロモメチル)−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(105)(4.69g,75%)を、白色の固体として得た。
1H NMR(CDCl
3) δ 7.44(s, 1H), 4.89(s, 2H), 3.78(s, 3H).これまでに報告されているものと同一である(Stribbling et al., PCT国際特許公報WO2008/039087)。
【0281】
(B.1.1.2.2 5−(ブロモメチル)−1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(122)(スキーム10))
化合物118(50.0g,393.39mmol)およびK
2CO
3(81.55g,590.08mmol)のDMF(300mL)中の懸濁液に、0℃で、ヨウ化メチル(36.74mL,590.08mmol)を滴下した。得られた混合物を、室温に加温させ、次いで、2時間にわたって攪拌した後、過剰のヨウ化メチルを室温で蒸発させた。沈殿物をろ過により除去し、DMFろ液を減圧下、45〜50℃で濃縮した。得られた残渣を、MeCN/DCM(1:9)で完全に抽出し、シリカゲルのショートカラムを通してろ過した。溶媒を除去した後、粗生成物をMeCN(少量のMeOHを含有)およびトルエンから再結晶化させ、化合物119(52.22g,94.0%)を、白色の結晶性固体として得た。
1H NMR(CDCl
3) δ 7.66(s, 1H), 3.67(s, 3H), 2.43(s, 3H).LR-MS(APCI +ve):m/e 142.5 (M+1).これまでに報告されているものと同一であった(Rav-Acha and Cohen, J. Org. Chem., 1981, 46(23), 4717〜4720)。
【0282】
化合物119(33.0g,233.83mmol)およびt−ブチルジクロロアセタート(64.90g,350.74mmol)(DCM中、ジクロロアセチルクロリド、t−ブタノールおよびトリエチルアミンから調製)のDMF(400mL)中の溶液を、カリウムt−ブトキシド(91.83g,818.40mmol)のDMF(400mL)中の懸濁液に、−35〜−25℃(ドライアイス/MeCN浴)で滴下した。得られた混合物を−25℃でさらに20分間にわたって攪拌した後、0.5N HCl(およそ1000mL)中に注いだ。次いで、標準的な酢酸エチル/水のワークアップおよび酢酸エチル/ヘキサン(3:2)を用いて溶出するシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーによって、粗化合物120を、暗色の固体(23.83g,35%)として得、この固体を、さらなる精製を行わずに使用した。LR-MS(APCI +ve)m/e 290.5/292.5(3:1, M+1).
上記のようにして調製された化合物120(23.83g,82.25mmol)を、還流酢酸(120mL)で45分間にわたって処理した後、減圧下で濃縮乾固した。次いで、残渣の標準的なNaHCO
3/DCMのワークアップ、続いての、酢酸エチルを用いて溶出するシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーによって、化合物121(10.00g,64%)を、白色の固体として得た。
【0283】
1H NMR(CDCl
3) δ 5.03(s, 2H), 3.67(s, 3H), 2.46(s, 3H).LR-MS(APCI +ve):m/e 190.4/192.4(3:1, M+1).
化合物121(10.00g,52.74mmol)およびLiBr(4.80g,55.20mmol)の酢酸エチル(500mL)中の懸濁液を4時間にわたって還流加熱した後、標準的な酢酸エチル/水のワークアップに付した。そのようにして得られた固体をもう一度、上記のようにLiBr/酢酸エチルで処理した。次いで、粗生成物をDCM/i−Pr
2Oからヘキサンの添加により沈殿させ、5−(ブロモメチル)−1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(122)(11.46g,93%)を、灰白色の固体として得た。
【0284】
1H NMR(CDCl
3) δ 4.88(s, 2H), 3.64(s, 3H), 2.46(s, 3H).C
5H
6BrN
3O
2.4%ヘキサンの分析計算値:C, 28.16 ;H, 2.96 ;N, 18.80%.実測値:C, 27.81 ;H, 3.27 ;N, 19.05%.
LR-MS(APCI +ve):m/e 234.4/236.4(1:1, M+1).
(B.1.1.2.3 5−(ブロモメチル)−2−メトキシ−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(125)(スキーム11))
化合物111(12.65g,90.00mmol)のクロロホルム(100mL)中の懸濁液に、臭素(5.53mL,108.00mmol)をゆっくりと加えた。次いで、得られた混合物を2時間にわたって攪拌した後、水(130mL)を加えた。次いで、クロロホルムを蒸留によって除去し、得られた沈殿物を、ろ過により集め、水で洗浄し、真空下で乾燥させ、化合物123(15.50g,79%)を、白色の固体として得た。
【0285】
m.p.180〜181℃;報告された値と同一であった(Pyman and Timmis, J. Chem. Soc., Trans., 1923, 123, 494〜503)。
1H NMR(CDCl
3) δ 3.63(s, 3H), 2.69(s, 3H).
C
5H
6BrN
3O
2の分析計算値:C, 27.29 ;H, 2.75 ;N, 19.10%.実測値:C, 27.56 ;H, 2.83 ;N, 19.10%.LR-MS(APCI +ve):m/e 220.3/222.3(1:1, M+1).
化合物123(1.00g,4.54mmol)の還流MeOH(40mL)中の溶液を、過剰のNaOMe(1.72g,31.78mmol)で3時間にわたって処理した。次いで、減圧下に溶媒を除去し、得られた残渣を、MeOH/DCM(1:9)に懸濁させ、シリカゲルのショートカラムを通してろ過した。次いで、真空下に溶媒を除去し、化合物124(442mg,57%)を、灰白色の固体として得た。
【0286】
m.p.103〜105℃。
1H NMR(CDCl
3) δ 4.11(s, 3H), 3.40(s, 3H), 2.59(s, 3H).C
6H
9N
3O
3の分析計算値:C, 42.10 ;H, 5.30 ;N, 24.55%.実測値:C, 42.20 ;H, 5.37 ;N, 24.61%.LR-MS(APCI +ve):m/e 172.5(M+1).
化合物124(750mg,4.38mmol)およびNBS(858mg,4.82mmol)のMeCN(30mL)中の溶液を、還流下に10分間にわたって1000Wのタングステンハロゲン化物ランプで照射した。次いで、真空下に溶媒を除去し、残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(1:2から2:1への勾配)を用いて溶出するシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーに付し、5−(ブロモメチル)−2−メトキシ−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール(125)(200mg,18%)を、白色の固体として得た。
【0287】
1H NMR(CDCl
3) δ 4.85(s, 2H), 4.14(s, 3H), 3.51(s, 3H).LR-MS(APCI +ve):m/e 250.4/252.4(1:1, M+1).
(B.1.1.2.4 3−[5−(ブロモメチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル]プロパンニトリル(115)(スキーム9,ルート2))
化合物101(1.00g,7.87mmol)、アクリロニトリル(1.56mL,23.60mmol)およびMTBD(48mg,0.31mmol)のMeCN(10mL)中の混合物を終夜(16時間)還流加熱した。次いで、混合物をろ過し、ある程度の沈殿物を除去し、ろ液にトルエン(10mL)を加えた。次いで、得られた溶液を減圧下に部分濃縮し、アセトニトリルを除去し白色の沈殿物を得、この沈殿物を、ろ過により集め、化合物117(1.26g,89%)を、灰白色の固体として得た。
【0288】
1H NMR(d
6-DMSO) δ 7.84(s, 1H), 4.37(t, J=6.6Hz, 2H), 3.08(t, J=6.6Hz, 2H), 2.61(s, 3H).LR-MS(APCI +ve):m/e 181.4 (M+1).
化合物117(540mg,3.00mmol)およびNBS(560mg,3.15mmol)のMeCN(20mL)中の溶液を、還流下に1時間にわたって、1000Wのタングステンハロゲン化物ランプで照射した。真空下に溶媒のおよそ半分を除去した後、水(10mL)を加えた。減圧下でのさらなる濃縮によって、白色の沈殿物を得、この沈殿物を、ろ過により集め、水で洗浄し、真空下に乾燥させ、3−[5−(ブロモメチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル]プロパンニトリル(115)(689mg,89%)を、灰白色の固体として得た。
【0289】
1H NMR(d
6-DMSO) δ 8.04(s, 1H), 5.08(s, 2H), 4.48(t, J=6.8Hz, 2H), 3.17(t, J=6.8Hz, 2H).LR-MS(APCI +ve):m/e 259.4/261.4(1:1, M+1).
(B.1.1.2.6 3−[5−(ブロモメチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル]プロパンアミド(116)(スキーム9,ルート2))
3−[5−(ブロモメチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル]プロパンニトリル(115)(680mg,2.62mmol)を90%硫酸(5mL)により65〜70℃で1時間にわたって処理した後、氷上に注いだ。標準的な酢酸エチル/NaHCO
3のワークアップの後、得られた粗生成物をTHFからi−Pr
2Oの添加により沈殿させ、3−[5−(ブロモメチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール−1−イル]プロパンアミド(116)(420mg,58%)を、灰白色の固体として得た。
【0290】
m.p.139〜141℃。
1H NMR (d
6-DMSO) δ 7.90(s, 1H), 7.44(br, 1H), 7.00(br, 1H), 5.06(s, 2H), 4.32(t, J=6.8Hz, 2H), 2.70(t, J=6.8Hz, 2H).LR-MS(APCI +ve):m/e 277.5/279.5(1:1, M+1).
(B.1.1.3 四級アンモニウム塩還元的プロドラッグの合成(スキーム16〜19))
(方法D:NMP中での四級アンモニウム塩プロドラッグの調製、続いてのEt
2O沈殿)
ジメチルアミンエフェクタのN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)中の溶液に、α−メチルブロミドトリガー(0.7〜1.0当量)を、少量ずつ、窒素下に加えた。次いで、得られた混合物を12時間〜数日間にわたって攪拌した後、ジエチルエーテルを加えた。このようにして形成された沈殿物を、ろ過により集め、DCMで完全に洗浄した。次いで、粗生成物を、数滴のトリエチルアミンを含有する、アセトニトリルおよびジオキサンの混液からの分別沈殿によってさらに精製した(必要に応じて1〜3回行った)。沈殿生成物を、遠心分離により集め、続いて、母液のデカンテーションを行った。次いで、生成物をTHF/DCM(1:1)、次いで、ヘキサンで洗浄した後、真空下で乾燥させ、プロドラッグを、白色または灰白色の固体として得た。
【0291】
(方法E:NMP中での四級アンモニウム塩プロドラッグの調製、続いてのMeCN沈殿)
ジメチルアミンエフェクタのNMP溶液に、α−メチルブロミドトリガー(1.0〜1.2当量)を加えた。得られた混合物を終夜(約15時間)攪拌した。次いで、MeCNを反応混合物に、沈殿物の形成が始まるまで攪拌を続けながら滴下した。次いで、得られた混合物をさらに2時間にわたって攪拌した後、沈殿物をろ過によりまたは遠心分離により集め、MeCN、酢酸エチルおよびヘキサンで洗浄した。次いで、真空下で乾燥することによって、プロドラッグを、白色または灰白色の固体として得た。必要な場合には、生成物を、NMPおよびMeCNからの再結晶によってさらに精製した。
【0292】
(B.1.1.3.1 (2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(42))
NMP(3mL)中で化合物161(500mg,1.12mmol)をα−メチルブロミド105(225mg,1.02mmol)と16時間にわたって方法Cに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(42)(658mg,97%)を得た。
【0293】
m.p.166〜170℃。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.31(s, 1H), 10.35(s, 1H), 9.07(s, 1H), 9.00(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.25-8.23(dd, J=6.4, 2.6Hz, 1H), 8.14(s, 1H), 7.90-7.86(m, 1H), 7.44(t, J=8.8Hz, 1H), 7.06-6.99(m, 1H), 6.80(d, J=15.3Hz, 1H), 5.06(br s, 2H), 4.45(d, J=7.2Hz, 2H), 3.88(s, 3H), 3.13(s, 6H).C
24H
24Br
2FN
9O
3・1.2H
2Oの分析計算値:C, 41.96 ;H, 3.87 ;N, 18.35%.実測値:C, 42.05 ;H, 3.77 ;N, 18.14%.
NMP(5mL)中で化合物161(2.0g,4.49mmol)をα−メチルブロミド105(1186mg,5.39mmol)と方法Dに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(42)(2.11g,70%)を得た。
1H NMRは上記と同一である。
【0294】
(B.1.1.3.2 (2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(43))
NMP(3mL)中で化合物161(700mg,1.57mmol)をα−メチルブロミドIIa-2(442mg,1.87mmol)と方法Dに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(43)(750mg,70%)を得た。
【0295】
m.p.181〜184℃。
1H NMR [(CD
3)
2SO] δ 11.30(s, 1H), 10.36(s, 1H), 9.07(s, 1H), 9.00(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.25-8.23(dd, J=6.4, 2.6Hz, 1H), 7.90-7.86(m, 1H), 7.44(t, J=8.8Hz, 1H), 7.07-6.99(m, 1H), 6.80(d, J=15.3Hz, 1H), 5.07(br s, 2H), 4.44(d, J=7.0Hz, 2H), 3.76(s, 3H), 3.11(s, 6H), 2.44(s, 3H).C
25H
26Br
2FN
9O
3・0.1ヘキサン・1.2H
2Oの分析計算値:C, 43.33 ;H, 4.23 ;N, 17.76%.実測値:C, 43.21 ;H, 4.46 ;N, 17.77%.
(B.1.1.3.3 (2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(2−エチル−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(172))
NMP(3mL)中で化合物161(700mg,1.57mmol)をα−メチルブロミド201(468mg,1.89mmol)と方法Dに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(2−エチル−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(172)(930mg,85%)を得た。
【0296】
m.p.173〜176℃。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.30(s, 1H), 10.35(s, 1H), 9.06(s, 1H), 9.00(s, 1H), 8.65(s, 1H), 8.25-8.23(dd, J=6.4, 2.6Hz, 1H), 7.90-7.86(m, 1H), 7.43(t, J=8.8Hz, 1H), 7.06-6.99(m, 1H), 6.80(d, J=15.3Hz, 1H), 5.07(br s, 2H), 4.44(d, J=7.2Hz, 2H), 3.76(s, 3H), 3.11(s, 6H), 2.79(q, J=7.4Hz, 2H), 1.29(t, J=7.4Hz, 3H).C
26H
28Br
2FN
9O
3・0.05ヘキサン・2H
2Oの分析計算値:C, 43.05, H, 4.49, N, 17.18%.実測値: C, 43.17 ;H, 4.75 ;N, 17.36%.
(B.1.1.3.4 (2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(2−メトキシ−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(44))
NMP(3mL)中で化合物161(481mg,1.08mmol)をα−メチルブロミド125(270mg,1.08mmol)と15時間にわたって方法Cに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(2−メトキシ−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(44)(530mg,71%)を得た。
【0297】
m.p.245℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.29(s, 1H), 10.35(s, 1H), 9.06(s, 1H), 9.00(s, 1H), 8.65(s, 1H), 8.25-8.22(m, 1H), 7.90-7.86(m, 1H), 7.43(t, J=8.8Hz, 1H), 7.06-6.99(m, 1H), 6.79(d, J=15.3Hz, 1H), 5.07(br, 2H), 4.42(d, J=7.2Hz, 2H), 4.09(s, 3H), 3.57(s, 3H), 3.12(s, 6H).C
25H
26Br
2FN
9O
4・0.2ヘキサン・1.5H
2Oの分析計算値:C, 42.55 ;H, 4.33 ;N, 17.04%.実測値:C, 42.47 ;H, 4.14 ;N, 16.89%.
(B.1.1.3.5 (2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−{[1−(2−シアノエチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル]メチル}−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(49))
NMP(2mL)中で化合物161(700mg,1.57mmol)をα−メチルブロミド115(411mg,1.59mmol)と15時間にわたって方法Cに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−{[1−(2−シアノエチル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル]メチル}−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(49)(897mg,81%)を得た。
【0298】
m.p.132℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.31(s, 1H), 10.35(s, 1H), 9.07(s, 1H), 9.00(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.32(s, 1H), 8.25-8.22(dd, J=6.4, 2.8Hz, 1H), 7.90-7.86(m, 1H), 7.44(t, J=8.8Hz, 1H), 7.04-6.97(m, 1H), 6.79(d, J=15.2Hz, 1H), 5.08(br, 2H), 4.61(t, J=6.8Hz, 2H), 4.43(d, J=6.8Hz, 2H), 3.20(t, J=6.8Hz, 2H), 3.11(s, 6H).C
26H
25Br
2FN
10O
3・0.8THF・H
2Oの分析計算値:C, 44.96 ;H, 4.32 ;N, 17.96%.実測値:C, 44.80 ;H, 4.48 ;N, 17.84%.
(B.1.1.3.6 (2E)−N−{[1−(3−アミノ−3−オキソプロピル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル]メチル}−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(47))
NMP(2mL)中で化合物161(400mg,0.90mmol)をα−メチルブロミド116(249mg,0.90mmol)と15時間にわたって方法Cに従って反応させることによって、(2E)−N−{[1−(3−アミノ−3−オキソプロピル)−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル]メチル}−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(47)(306mg,47%)を得た。
【0299】
m.p.168℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.31(s, 1H), 10.36(s, 1H), 9.07(s, 1H), 9.00(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.25-8.23(m, 2H), 7.90-7.86(m, 1H), 7.46-7.42(m, 2H), 7.05-6.98(m, 2H), 6.80(d, J=15.3Hz, 1H), 5.12(br s, 2H), 4.47-4.41(m, 4H), 3.12(s, 6H), 2.76(t, J=6.2Hz, 2H).C
26H
27Br
2FN
10O
4・0.3THF・1.5H
2Oの分析計算値:C, 42.37 ;H, 4.24 ;N, 18.17%.実測値:C, 42.40 ;H, 4.20 ;N, 18.17%.
(B.1.1.3.7 (2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−{[1−メチル−4−ニトロ−2−(1−プロピニル)−1H−イミダゾール−5−イル]メチル}−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(173))
NMP(0.5mL)中で化合物161(100mg,0.22mmol)をα−メチルブロミド200(64mg,0.25mmol)と方法Eに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−{[1−メチル−4−ニトロ−2−(1−プロピニル)−1H−イミダゾール−5−イル]メチル}−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(173)(94mg,60%)を得た。
【0300】
m.p.185〜188℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.30(s, 1H), 10.35(s, 1H), 9.07(s, 1H), 9.00(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.25-8.22(dd, J=6.4, 2.6Hz, 1H), 7.90-7.86(m, 1H), 7.44(t, J=8.8Hz, 1H), 7.05-6.98(m, 1H), 6.79(d, J=15.3Hz, 1H), 5.05(br, 2H), 4.43(d, J=6.9Hz, 2H), 3.86(s, 3H), 3.13(s, 6H), 2.22(s, 3H).分析値:C, 44.59 ;H, 3.92 ;N, 16.97%.C
27H
26Br
2FN
9O
3・1.5H
2O理論値:C, 44.40 ;H, 4.00 ;N, 17.26%.
(B 1.1.3.8 (2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(2−シアノ−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(48))
NMP(0.5mL)中で化合物161(100mg,0.22mmol)をα−メチルブロミド127(63mg,0.26mmol)と方法Eに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(2−シアノ−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(48)(132mg,85%)を得、これを、CH
3CN/H
2O/TFAを用いて溶出する分取HPLCによってさらに精製し、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(2−シアノ−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムトリフルオロアセタート(48TF)(112mg,69%)を得た。
【0301】
m.p.151〜154℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.32(s, 1H), 10.39(s, 1H), 9.06(s, 1H), 9.01(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.22(s, 1H), 7.86(s, 1H), 7.44(t, J=8.8Hz, 1H), 7.07-7.00(m, 1H), 6.79(d, J=15.2Hz, 1H), 5.15(br, 2H), 4.44(d, J=7.2Hz, 2H), 4.06(s, 3H), 3.15(s, 6H).
(B 1.1.3.9 (2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−2−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(174))
NMP(0.5mL)中で化合物161(100mg,0.22mmol)を5−(ブロモメチル)−1−メチル−2−ニトロ−1H−イミダゾール(IIIq-1)(54mg,0.25mmol)(Everett et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1999, 9, 1267〜1272)と方法Eに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−2−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(174)(131mg,88%)を得た。
【0302】
m.p.197℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.29(s, 1H), 10.36(s, 1H), 9.07(s, 1H), 8.99(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.24-8.22(dd, J=6.4, 2.6Hz, 1H), 7.89-7.85(m, 1H), 7.56(s, 1H), 7.44(t, J=8.8Hz, 1H), 7.03-6.96(m, 1H), 6.77(d, J=15.2Hz, 1H), 4.87(s, 2H), 4.29(d, J=7.2Hz, 2H), 4.02(s, 3H), 3.09(s, 6H).分析値:C, 41.72 ;H, 3.82 ;N, 18.18%.C
24H
24Br
2FN
9O
3・1.5H
2O理論値:C, 41.64 ;H, 3.93 ;N, 18.21%.
(B 1.1.3.10 (2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(4−エチル−1−メチル−2−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(175))
NMP(1mL)中で化合物161(200mg,0.45mmol)を5−(ブロモメチル)−4−エチル−1−メチル−2−ニトロ−1H−イミダゾール(IIIq-2)(123mg,0.49mmol)(Jiao et al., WO2008151253 A1)と方法Eに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−ブロモ−4−フルオロアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N−[(4−エチル−1−メチル−2−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(175)(198mg,84%)を得た。
【0303】
m.p.181〜184℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.29(s, 1H), 10.36(s, 1H), 9.07(s, 1H), 9.00(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.24-8.22(dd, J=6.4, 2.6Hz, 1H), 7.89-7.85(m, 1H), 7.44(t, J=8.8Hz, 1H), 7.03-6.96(m, 1H), 6.76(d, J=15.2Hz, 1H), 4.86(s, 2H), 4.33(d, J=7.2Hz, 2H), 3.99(s, 3H), 3.06(s, 6H), 2.75-2.70(q, J=6.6Hz, 2H), 1.23(t, J=6.6Hz, 3H).分析値:C, 43.25 ;H, 4.21 ;N, 17.37%. C
26H
28Br
2FN
9O
3・1.6H
2O理論値:C, 43.24 ;H, 4.36 ;N, 17.46%.
(B.1.1.3.11 (2E)−4−({4−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリノ]ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル}アミノ)−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(50))
NMP(3mL)中で化合物170(700mg,1.61mmol)をα−メチルブロミド105(425mg,1.93mmol)と方法Dに従って反応させることによって、(2E)−4−({4−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリノ]ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル}アミノ)−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(50)(895mg,85%)を得た。
【0304】
m.p.176〜180℃。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.32(s, 1H), 10.48(s, 1H), 9.08(s, 1H), 9.02(s, 1H), 8.67(s, 1H), 8.28-8.23(m, 2H), 8.14(s, 1H), 7.58(t, J=9.7Hz, 1H), 7.06-6.99(m, 1H), 6.81(d, J=15.3Hz, 1H), 5.06(br s, 2H), 4.45(d, J=7.3Hz, 2H), 3.88(s, 3H), 3.13(s, 6H).C
25H
24BrF
4N
9O
3・0.5(EtOAc)・H
2Oの分析計算値:C, 45.26 ;H, 4.22 ;N, 17.59%.実測値:C, 45.22 ;H, 4.43 ;N, 17.57%.
(B.1.1.3.12 (2E)−N−[(1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−({4−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリノ]ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル}アミノ)−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(51))
NMP(3mL)中で化合物170(700mg,1.61mmol)をα−メチルブロミド122(453mg,1.93mmol)と方法Dに従って反応させることによって、(2E)−N−[(1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−({4−[4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)アニリノ]ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル}アミノ)−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(51)(909mg,84%)を得た。
【0305】
m.p.174℃(分解)。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.32(s, 1H), 10.47(s, 1H), 9.08(s, 1H), 9.02(s, 1H), 8.67(s, 1H), 8.27-8.23(m, 2H), 7.57(t, J=9.7Hz, 1H), 7.07-6.99(m, 1H), 6.80(d, J=15.3Hz, 1H), 5.05(br s, 2H), 4.43(d, J=6.9Hz, 2H), 3.75(s, 3H), 3.11(s, 6H), 2.44(s, 3H).C
26H
26BrF
4N
9O
3・1.5H
2Oの分析計算値:C, 44.90 ;H, 4.20 ;N, 18.13%.実測値:C, 44.95 ;H, 4.42 ;N, 17.98%.
(B.1.1.3.13 (2E)−4−{[4−(3−エチニルアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(58))
NMP(3mL)中で化合物171(580mg,1.56mmol)をα−メチルブロミド105(411mg,1.86mmol)と方法Dに従って反応させることによって、(2E)−4−{[4−(3−エチニルアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−N−[(1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(58)(730mg,79%)を得た。
【0306】
m.p.179〜182℃。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.29(s, 1H), 10.30(s, 1H), 9.06(s, 1H), 9.02(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.14(s, 1H), 8.02(t, J=1.6Hz, 1H), 7.90-7.88(dd, J=8.3, 1.1Hz, 1H), 7.43(t, J=8.0Hz, 1H), 7.27(d, J=7.4Hz, 1H), 7.07-6.99(m, 1H), 6.80(d, J=15.3Hz, 1H), 5.06(br s, 2H), 4.45(d, J=7.2Hz, 2H), 4.20(s, 1H), 3.88(s, 3H), 3.13(s, 6H).C
26H
26BrN
9O
3・1.3H
2Oの分析計算値:C, 50.71 ;H, 4.68 ;N, 20.47%.実測値:C, 50.63 ;H, 4.82 ;N, 20.26%.
(B.1.1.3.14 (2E)−N−[(1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−{[4−(3−エチニルアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(59))
NMP(3mL)中で化合物171(580mg,1.56mmol)をα−メチルブロミド122(437mg,1.87mmol)と方法Dに従って反応させることによって、(2E)−N−[(1,2−ジメチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−{[4−(3−エチニルアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(59)(705mg,75%)を得た。
【0307】
m.p.177〜181℃。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.28(s, 1H), 10.31(s, 1H), 9.06(s, 1H), 9.02(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.02(s, 1H), 7.89(d, J=8.2Hz, 1H), 7.43(t, J=8.0Hz, 1H), 7.27(d, J=7.6Hz, 1H), 7.07-6.99(m, 1H), 6.80(d, J=15.3Hz, 1H), 5.06(br s, 2H), 4.43(d, J=7.0Hz, 2H), 4.20(s, 1H), 3.75(s, 3H), 3.11(s, 6H), 2.44(s, 3H).
C
27H
28BrN
9O
3・1.3H
2Oの分析計算値:C, 51.48 ;H, 4.90 ;N, 20.01%.実測値:C, 51.54 ;H, 4.92 ;N, 19.88%.
(B.1.1.3.15 (2E)−N−[(2−エチル−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−{[4−(3−エチニルアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(176))
NMP(3mL)中で化合物171(475mg,1.28mmol)をα−メチルブロミド201(375mg,1.52mmol)と方法Dに従って反応させることによって、(2E)−N−[(2−エチル−1−メチル−4−ニトロ−1H−イミダゾール−5−イル)メチル]−4−{[4−(3−エチニルアニリノ)ピリド[3,4−d]ピリミジン−6−イル]アミノ}−N,N−ジメチル−4−オキソ−2−ブテン−1−アンモニウムブロミド(176)(595mg,75%)を得た。
【0308】
m.p.173〜177℃。
1H NMR[(CD
3)
2SO] δ 11.29(s, 1H), 10.30(s, 1H), 9.06(s, 1H), 9.02(s, 1H), 8.66(s, 1H), 8.02(t, J=1.7Hz, 1H), 7.90-7.88(m, 1H), 7.43(t, J=8.0Hz, 1H), 7.27(d, J=7.7Hz, 1H), 7.07-6.99(m, 1H), 6.81(d, J=15.2Hz, 1H), 5.06(br s, 2H), 4.43(d, J=6.8Hz, 2H), 4.20(s, 1H), 3.76(s, 3H), 3.11(s, 6H), 2.79(q, J=7.4Hz, 2H), 1.29(t, J=7.4Hz, 3H).C
28H
30BrN
9O
3・1.2H
2Oの分析計算値:C, 52.37 ;H, 5.09 ;N, 19.63%.実測値:C, 52.31 ;H, 4.93 ;N, 19.76%.
(B.2.プロドラッグの有効性)
不可逆性erbB1、2、4インヒビター(161、170、171)が、フラグメント化還元的トリガーIIId-1(化合物105)を有するそれらの四級アンモニウム塩プロドラッグ(42、50、58)と比較された。プロドラッグの不活性化の程度、低酸素下の細胞におけるそれらの活性化、一電子還元の際のそれらのフラグメント化および種々の腫瘍異種移植片におけるそれらの有効性を評価するために種々のアッセイが採用された。
【0309】
(実験:方法および材料)
(B.2.1 細胞erbB1阻害実験)
5%ウシ胎仔血清を含有するα最小必須培地(α−MEM)で増殖する、ヒトA431類表皮癌腫細胞およびSKOV3卵巣癌腫細胞を、様々な濃度の試験化合物に1時間にわたって曝露し、その後、総細胞ライセートを調製した。細胞を、300μLの改変RIPAバッファ(50mMのTris−HCl(pH7.4)、1%のNP−40、0.25%のデオキシコール酸Na、150mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのNa
3VO
4、1mMのNaFおよび1×プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma, 100x))に溶解させ、氷上で30分間にわたってインキュベートした。サンプルのタンパク質濃度を決定するためにBCAアッセイを採用した。15.625〜1000μg/mLの範囲のアルブミン標準(Pierce)を使用してBSA較正曲線を作成した。標準およびサンプルを、0.1M NaOHに希釈する。タンパク質サンプルを、後のウエスタンブロット解析のために−20℃の冷凍機中に保存する。erbB1およびerbB2の発現並びにそれらのリン酸化度を、適当な抗体を使用するウエスタンブロットによって決定した。erbB1/2の検出には、5μgの総タンパク質/ウェルおよび5μLのKaleidoscopeタンパク質標準(Biorad)を15ウェルの7.5% PAGEゲルにロードする。サンプルを、100Vで、青色の先端がゲルの底に到達するまで流す。電気泳動の後、タンパク質を0.45μmのニトロセルロース膜(Biorad)に移し、TBS-Tween 0.1%中の2%BSAを用いて1時間にわたってブロックする。抗体を示されるようにTBS-Tween 0.1%に希釈する。タンパク質をSupersignal West Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce/Thermo Scientific)を使用して検出する。リン酸化されたタンパク質の検出の後、Restore Western Blot Stripping Buffer(Pierce/Thermo Scientific)を用いてブロットを10分間にわたってストリッッピングし、洗浄し、総タンパク質に対する抗体とともにインキュベートする。ImageJソフトウェアを用いて、ブロットの濃度測定を実施する。SigmaPlot 10を使用して値をプロットする。BCAアッセイによって(記載されるように)同等なタンパク質ローディングを決定し、総erbB1/2シグナル強度によって確認し、バンド強度を濃度測定(ImageJ)によって算出し、それから、IC
50値を決定した。
【0310】
(B.2.2 細胞増殖阻害実験)
5%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するα最小必須培地(αMEM)において対数期指数増殖にあるヒトA431、H1975およびSKOV3癌腫細胞を、トリプシン処理(1×トリプシン/EDTA、Gibco Brl)によって回収し、カウントし、96ウェルプレート(Nunc)中に800〜1500細胞/ウェルの範囲の細胞密度で播種した。細胞サンプルの半量を、プレートに播種した。このプレートは、予備平衡化され、無酸素環境下(90% N
2、5% H
2、5% CO
2、37℃;無酸素チャンバ, Coy Laboratory Products)に維持されていた。有酸素(21% O
2)または無酸素(<10ppm O
2)条件のいずれかの下で3時間接着させた後、細胞を、適切な希釈範囲にわたる濃度のプロドラッグまたはエフェクタに4時間にわたって曝露した。この期間の最後に、無酸素プレートを、有酸素チャンバから回収し、正常酸素状態下に標準CO
2インキュベータ(37℃)中20時間にわたって維持した。すべてのプレートを洗浄して化合物不含有とし、細胞をさらに4日間にわたって5% FBS+抗生物質を含有するαMEM中で増殖させた。細胞をトリクロロ酢酸中に固定し(30分)、洗浄し、スルホローダミンB(SRB)で染色し(60分)、その後、酸性化水で洗浄した。SRBを可溶化し、吸収を450nmで読み取って、細胞密度を算出した。増殖の阻害は、未処理のコントロールウェルに対して算出された。
【0311】
(B.2.3 インビボ有効性実験)
特定病原体不含有のホモ接合型の雌のNIH-IIIヌードマウス(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)に、H1975細胞の単一の細胞懸濁液を皮下播種した(5×10
6細胞/100μL;右脇腹)。H1975腫瘍異種移植片が確立された時点で(通常、8〜12日)、マウスを処理群に無作為化した。すべての化合物を、乳酸塩バッファ(pH4)中に調製した。マウスに、示されたスケジュールおよび用量レベルを使用して腹腔内注射(0.01〜0.03mL/g)によって投薬した。増殖遅延実験のために、マウスを処理に対して無作為化し、腫瘍容量[π(長さ×幅
2)/6]および体重を、処理後毎日測定した。腫瘍が処理前の容積に対して4倍の容積に増大する中央値時間を求め(RTV
4)、腫瘍増殖阻害(Tumor Growth Inhibition:TGI)を、処理対コントロールについてのRTV
4における増大率(%)として算出した。RTV
4の相違を、統計的差異について、SigmaStat v3.5を用いるマンホイットニーのU検定によって試験した。
【0312】
(B.2.4 SKOV3異種移植片実験)
特定病原体不含有のホモ接合型の雌のNIH-IIIヌードマウス(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)に、SKOV3細胞の単一細胞懸濁液を(1×10
7細胞/100μL;右脇腹)皮下播種した。SKOV3腫瘍異種移植片が確立された時点で(通常、50〜65日)、マウスを処理群に無作為化した。化合物42および161を、乳酸塩バッファ(pH4)中に調製した。マウスは、示されたスケジュールおよび用量レベルを使用して腹腔内注射(0.01〜0.03mL/g)によって投薬された。腫瘍の大きさおよび体重を、一定の間隔で測定した。腫瘍の容積を、π(長さ×幅
2)/6として算出した。腫瘍が処理前の容積に対して4倍の容積に増大する時間(RTV
4)を求め、腫瘍増殖阻害の%(%TGI)を、処理対コントロールのRTV
4における中央値増大率(%)として算出した。RTV
4の差異を、SigmaStat v3.5を用いるマンホイットニーのU検定によって統計的差異について試験した。
【0313】
(B.2.5 血漿および組織薬物動態学実験)
化合物42を、20μmol/kgの名目上の低用量で、H1975腫瘍異種移植片を有する9匹の雌のNIH-IIIマウスに、DMSO/5%デキストロース(20:80)中の溶液として、静脈内注射を介して投薬した。血液サンプルを、T=2、6および24時間で、末端出血(terminal bleed)(コホートあたりn=3)によって、イソフルラン麻酔下に採取した。H1975腫瘍、皮膚および肝臓サンプルを、T=2、6および24時間で採取し(コホートあたりn=3)、液体窒素中で直ちに凍結させ、−80℃で保存し、その後、薬物分析のためにサンプル調製した。それぞれの組織各々の小片(約100mg)をbiopulveriserウェル(予め液体窒素中で冷却される)に入れ、スチール乳棒の強打で小さくして微細粉末にした。次いで、凍結粉末を、予め秤量された微量遠心機管(ドライアイス上に維持される)中に回収した。組織粉末から薬物を抽出するために、4容積の氷冷アセトニトリル(内部標準として0.5μMのD6−161を含有する)を、各サンプルに加えた。次いで、微量遠心機管を、13,000rpmで10分間にわたって回転させて、細胞デブリおよびタンパク質を沈殿させた。10μLの血漿(EDTA中に採取)に、40μLの氷冷アセトニトリル(内部標準として0.5μMのD6−161を含む)を加えた。得られた溶液を混合し、次いで、13,000rpmで5分間にわたって遠心分離した。次いで、上清(40μL)をHPLCインサートに移し、80μLの45mMホルマートバッファ(pH4.5)と混合し、次いで、化合物42および化合物42を投与されたマウスからのサンプル中の化合物161の濃度を、ダイオードアレイ吸収検出器(DAD)を質量検出器に合わせて備えたAgilent 6410 LC-MS/MSにより測定した。エレクトロスプレーポジティブモードのマルチモードイオン源検出器を構成することによって分析を行い、乾燥ガス流5L/分、ネブライザー圧力60psi、乾燥ガス温度275℃、気化器温度150℃、キャピラリー電圧2000V、充電電圧2000Vであり、DAD検出は、322nm、8nmバンド幅であった。定量化は、584>400のm/z(プロドラッグ42)および445>400のm/z(化合物161)および451>400のm/z(D6−161内
部標準)でのMRM遷移をベースとしていた。100%アセトニトリルおよび0.01%ギ酸−水の勾配を用いて分析物をZorbax SB C-18(迅速分解HT 3.0×50mm,1.8ミクロン)(Agient)HPLCカラム上で溶出させ、その際の流量を0.6mL/分とした。
【0314】
化合物42および化合物161を、それらのそれぞれのq3dx4 MTD(それぞれ100μmol/kgおよび31.6μmol/kg)の75%で、A431腫瘍異種移植片を有する30匹の雌のNIH-IIIマウスに、乳酸塩バッファ中の溶液として、腹腔内注射を介して投与した。血液サンプルを、T=2、6、24、48および72時間で、末端出血によってイソフルラン麻酔下に採取した(コホートあたりn=3)。A431腫瘍サンプルを、T=2、6、24、48および72時間で採取し(コホートあたりn=3)、液体窒素中で直ちに凍結させ、−80℃で保存し、その後、上記のように薬物分析のためにサンプル調製した。
【0315】
(B.2.6 放射線分解還元実験)
パルス放射線分解を使用して、プロドラッグ42の一電子還元および安定性をリアルタイムでモニタリングした。迅速分光光度計検出システムを備えた、高エネルギー電子の短パルス(4MeVの200nsで2〜3Gy)を送達する線形加速器を使用した(Anderson et al., J. Phys. Chem. A, 101, 9704〜9709, 1997)。試験化合物を、上記のホルマートイオンを含有するN
2O飽和溶液に溶解させ、これにより、パルス放射線分解の後、数マイクロ秒内に化合物のラジカルアニオンが迅速に形成された。フラグメント化の速度を、トリガー部分のベンジルタイプのラジカルの形成に相当する波長で動力学的遷移を分析することによって決定した(Bays et al, J. Am. Chem. Soc., 105, 320〜324, 1983;Anderson et al., J. Phys. Chem. A, 101, 9704〜9709, 1997)。
【0316】
(結果および考察)
(B.2.7 細胞酵素阻害活性)
化合物161、170および171並びにそれらのそれぞれのプロドラッグ42、50および58を、EGF刺激されたA431細胞においてerbB1の自己リン酸化を阻害するそれらの能力について、ホスホ−erbB1状態のウエスタン免疫ブロット測定によって試験した(表8)。化合物161およびそのプロドラッグ42を、同様に、SKOV3細胞においてホスホ−erbB2の基礎レベルを阻害するそれらの能力について試験した。化合物161、170および171は、細胞erbB1の強力なインヒビターであると示された(それぞれ、5、8および8nMのIC
50)。対照的に、四級アンモニウム塩誘導
体プロドラッグ42、50および58は、無傷のA431細胞におけるerbB1自己リン酸化の阻害において、それぞれ、82倍、121倍および64倍より低い有効性であった。化合物161も、SKOV3細胞において細胞erbB2の強力なインヒビターであると示された(6nMのIC
50)が、対照的に、四級アンモニウム塩プロドラッグ42は、この点で35倍より低く有効であった。プロドラッグについての細胞erbB1/2阻害効力のこの喪失は、主に、正荷電四級アンモニウム塩の存在によるプロドラッグの細胞排除に起因する。
【0318】
(B.2.8 細胞erbB1阻害:不可逆性の洗い流しアッセイ)
erbB1、2、4インヒビター161およびその四級アンモニウム塩プロドラッグ42を、不可逆性erbB1/2インヒビターBIBW-2992(Minkovsky and Berezov. Current Opinion in Investigational Drugs, 2008, 9(12), 1336〜1346)および可逆性erbB1インヒビターエルロチニブ(Sanborn and Davies, Expert Review of Clinical Pharmacology, 2009, 2(1), 15〜36)と並行して、無傷のA431細胞においてerbB1自己リン酸化を不可逆的に阻害するそれらの能力について評価した。細胞を、1時間にわたって薬物(1μM)に継続的に曝露し、次いで、組換え上皮成長因子(epidermal growth factor:EGF; Invitrogen, NZ)で刺激するか、または1時間にわたって薬物(1μM)に曝露し、次いで、洗浄により非結合薬物不含有とし(15回)、その後にEGF刺激を行うかのいずれかとした。全細胞ライセートを調製し、ホスホ−erbB1の検出を、抗ホスホチロシンポリクローナル抗体(Upstate Biotech, #06-427)を用いるウエスタンブロッティングによって可視化した(
図19)。多数の不可逆性erbB1インヒビターについてこれまでに記載されたように(Fry et al., PNAS, 1998, 95(20), 12022〜12027;Smaill et al., J. Med. Chem., 1999, 42, 1803〜1815;Smaill et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 429〜440;Tsou et al., J. Med. Chem., 2001, 44, 2719〜2734;Wissner et al., J. Med. Chem., 2003, 46, 49〜63;Tsou et al., J. Med. Chem., 2005, 48, 1107〜1131;Klutchko et al., J. Med. Chem., 2006, 49, 1475〜1485)、BIBW-2992は、細胞がEGF刺激に先行して洗浄により非結合薬物不含有とされたかどうかにかかわらず、A431細胞においてerbB1自己リン酸化を完全に阻害し、インヒビター161について示される観察結果も、erbB1の不可逆性阻害が起こったという解釈を強力に支持する。対照的に、エルロチニブ(細胞erbB1自己リン酸化の既知可逆性インヒビター)は、マイケル受容基により6位で置換されていないので、酵素アルキル化することができない。したがって、エルロチニブは、洗浄により薬物不含有とされていない細胞においてerbB1自己リン酸化の有意な阻害を示したが、洗浄により薬物不含有とされた細胞は、EGF刺激に応じてerbB1を自己リン酸化するそれらの能力において十分に回復させられた。同様の傾向が、プロドラッグ42について観察されたが、この場合、洗浄により薬物不含有とされた細胞は、十分に回復させらたerbB1を自己リン酸化するそれらの能力を有しており、このことは、プロドラッグ42がerbB1の可逆性インヒビターであることと一致する。
【0319】
図19は、それぞれ可逆性および不可逆性erbB1インヒビターである、エルロチニブおよびBIBW-2992に対する、化合物161および42についてのA431細胞erbB1自己リン酸化阻害を示す。細胞に、1μMの試験化合物への1時間の曝露を与え、EGFを用いて直接的に刺激し、溶解させ、EGFR(erbB1)およびEGF刺激ホスホチロシン(すなわち、ホスホ−erbB1)についてウエスタンブロッティングするか、または、EGF刺激、細胞溶解およびウエスタンブロッティングに先行して薬物不含有培地により広範囲に洗浄して試験化合物を除去するかのいずれかとした。
【0320】
(B.2.9 細胞増殖阻害活性)
表9の化合物を、文献の前例との比較を提供するように選択された3種のヒト癌腫細胞株の増殖を阻害するそれらの能力について試験した:A431(類表皮腫);これはerbB1を過剰発現する;H1975(非小細胞肺);これは、承認された可逆性erbB1インヒビターであるエルロチニブに対する抵抗性を付与することが知られているerbB1の二重突然変異形態であるerbB1
L858R, T790Mを過剰発現するおよびSKOV3(卵巣);これは、erbB2を過剰発現する。細胞を、試験化合物に、有酸素条件下に24時間にわたって、または、無酸素下に4時間にわたって、次いで、有酸素条件下に20時間にわたって曝露した。次いで、それらを、洗浄により薬物不含有とし、さらに4日間にわたってインキュベートし、その後、スルホローダミンBにより細胞生存について染色した。
【0322】
不可逆性erbB1、2、4インヒビター161、170および171は、A431細胞の増殖を、H1975細胞およびSKOV3細胞よりも強力に阻害し(A431細胞においてIC
50=0.027〜0.24μM;H1975細胞においてIC
50=1.15〜1.70μM;SKOV3細胞においてIC
50=0.55〜0.99μM)、細胞に4時間の無酸素を与えた場合には、効力において何等の有意な変化を示さなかった。
【0323】
それらのそれぞれのキナーゼインヒビター(161、170および171)に対して、四級アンモニウム塩プロドラッグ(42、50および58)は、A431細胞の増殖の阻害において56〜74倍より低い有効性であり;H1975細胞の増殖の阻害において30〜86倍より低い有効性であり;SKOV3細胞の増殖の阻害において42〜133倍より低い有効性であった。さらに、表9のプロドラッグ(42、50および58)のすべては、細胞が4時間の無酸素を与えられた後に3種の細胞株のすべての増殖の阻害において有意により強力であった。低酸素細胞毒性比(HCR)は、A431細胞において60.0〜77.9、H1975細胞において10.8〜77.7およびSKOV3細胞において20.3〜38.5の範囲であり、ニトロヘテロ環還元的トリガーの低酸素選択的還元と、それに続く、不可逆性erbB1、2、4インヒビターを放出するトリガーフラグメント化と一致する。
【0324】
(B.2.10 放射線分解還元)
電子親和性プロドラッグは、正常組織における正常酸素圧条件下と対照的に、固形腫瘍の低酸素領域において、一電子プロセスによって選択的に還元され得る(Brown and Wilson, Nature Rev. Cancer, 2004, 4,437〜447)。プロドラッグは、NHEに対して−0.6〜−0.2V、好ましくは、−0.5〜−0.3Vの一電子還元電位E(1)を有するべきである。多数の化合物のE(1)値は、文献(例えば、Wardman, P. J. Phys. Chem. Ref. Data, 1989, 18, 1637〜1755)から得られ得るか、または多くの方法によって決定され得る。例えば、パルス放射線分解法は、プロドラッグの、それらの一電子還元の際に形成されるラジカルアニオンと、ビオローゲンおよびキノン化合物等の参照基準との間の平衡定数を測定し、そのデータから化合物のE(1)値が算出され得る(Meisel and Czapski. J. Phys. Chem., 1975, 79, 1503〜1509)。プロドラッグ42のE(1)値を、パルス放射線分解法によって測定し、−0.425±0.008Vであると決定し、これを、生物学的背景で、プロドラッグラジカルアニオンの酵素的に形成できる適当なE(1)値であると考える。
【0325】
還元的プロドラッグが、トリガー部分の一電子還元の際に制御されたフラグメント化速度定数を有するように選択されることが望ましい。腫瘍細胞の低酸素領域において高濃度の細胞毒性エフェクタを放出する迅速なフラグメント化が望ましいが、これは、酸素正常状態下の正常組織細胞にとってはそうなっていない。一電子還元型ニトロアレンベースのプロドラッグの逆酸化の速度定数kO
2は、以下の表現によって与えられる。:
【0327】
(Wardmanet al., Biochem. Soc. Symp., 1995, 61, 171〜194;Andersonet al, Org. Biomol. Chem. 2005, 3,2167〜2174)。
【0328】
一電子還元型プロドラッグのフラグメント化についての速度定数kfragは、パルス放射線分解を用いて測定されて、トリガーのフラグメント化によって生じたベンジルタイプのラジカルの吸収スペクトルの形成が観察され得る(Anderson et al., J. Phys. Chem. A, 1997, 101, 9704〜9709)。プロドラッグ42のkfrag値は、パルス放射線分解によって測定され、50±10s
−1であると決定され、A431、H1975およびSKOV3細胞ベースの抗増殖アッセイにおいて低酸素細胞毒性比(HCR)をインビトロで示すプロドラッグ42と一致する望ましい範囲での低酸素下の一電子還元の際のフラグメント化速度であると考えられる(表8)。
【0329】
(B.2.11 プロドラッグ42、50および58の溶解度および安定性)
四級アンモニウム塩プロドラッグ42、50および58が、HPLCにより、様々な溶質における溶解度および化学安定性について研究された(表10)。すべて、優れた溶解度および安定性を水中において示した。プロドラッグ58は、特に、プロドラッグ42および50(これらは、それでもこれらの溶質において許容される溶解性を有する)よりα−MEMおよびPBSに可溶性であった。プロドラッグの全てはまた、α−MEMおよびPBSにおいて許容される安定性を示し、各々>24時間の半減期を有する。
【0331】
(B.2.12 H1975異種移植片における化合物42、50および58のインビボの有効性)
プロドラッグ42、50および58が、H1975異種移植片における有効性について、それらのそれぞれの最大耐量(MTD)において、乳酸塩バッファ中のIP投薬の後のq3dx4スケジュールで比較された(
図20)。
【0332】
図20は、それらのそれぞれのMTDにおいてq3dx4スケジュールで試験された場合の、H1975異種移植片に対する化合物42、50および58の有効性を示す。
【0333】
プロドラッグ42(q3dx4 MTD=133μmol/kg/用量)は、H1975異種移植片において相当な有効性を実証した(算出された腫瘍増殖阻害TGI=229%)が、プロドラッグ50(q3dx4 MTD=316μmol/kg/用量)は、弱く活性であり(TGI=114%)、プロドラッグ58(q3dx4 MTD=75μmol/kg/用量)は、中間の活性(TGI=171%)を示した。各プロドラッグは、同一の還元的トリガー(105)をベースとし、採用されるエフェクタの性質のみが異なる。プロドラッグについて活性のランク順序(42>58>50)は、H1975細胞においてそれぞれのエフェクタのインビトロで観察された効力に呼応してプロドラッグの観察された用量耐性と一致する。
【0334】
(B.2.13 SKOV3およびH1975異種移植片に対する化合物42および161のインビボの有効性)
図21は、SKOV3異種移植片に対する化合物42および161の有効性を示す。プロドラッグ42が、SKOV3異種移植片における有効性について化合物161と、等毒性用量(100および31.6μmol/kg/用量)において、乳酸塩バッファ中のIP投薬の後のq3dx9スケジュールで直接的に比較された。
【0335】
プロドラッグ42は、増殖遅延によって化合物161より優れた有効性を示し、化合物161で処理されたマウスについて1/7の死亡が観察され、プロドラッグ42で処理されたマウスについて0/7の死亡が観察された。
【0336】
図22は、NIHIIIヌードマウス中で増殖したH1975腫瘍異種移植片に対する化合物42および161の有効性を示す。プロドラッグ42は、化合物161と、H1975異種移植片における有効性について、等毒性用量(それぞれ、133および42.2μmol/kg/用量)において、乳酸塩バッファ中のIP投薬の後のq3dx4スケジュールで直接的に比較された。プロドラッグ42は、増殖遅延によって化合物161よりも優れた有効性を示し、化合物161で処理されたマウスについて100%の腫瘍増殖阻害(TGI)が観察され、プロドラッグ42で処理されたマウスについて188%のTGI値が観察された。
【0337】
(B.2.14 H1975およびA431異種移植片に対するプロドラッグ42のインビボの有効性)
図23は、NIHIIIヌードマウス中で増殖した大きなH1975腫瘍異種移植片に対するプロドラッグ42の有効性を示す。プロドラッグ42は、133、100または75μmol/kg/用量において乳酸塩バッファ中のIP投与後のq3dx8スケジュールで投与された。プロドラッグ42のすべての用量レベルが、H1975増殖遅延によって有効性を示し、乳酸塩処理されたコントロールに対してそれぞれ275%、213%および154%の腫瘍増殖阻害(TGI)であった(p<0.01)。したがって、プロドラッグ42は、MTDを下回る用量で優れた抗腫瘍活性を有しており、治療域(therapeutic window)の存在を確立した。
【0338】
図24は、NIHIIIヌードマウス中で増殖した大きなA431腫瘍異種移植片に対するプロドラッグ42の有効性を示す。プロドラッグ42は、80、60、40または20mg/kg/用量において、乳酸塩バッファ中のIP投与後のq3dx8スケジュールで投薬された。プロドラッグ42のすべての用量レベルが、A431増殖遅延によって有効性を示し、乳酸塩処理されたコントロールに対して、それぞれ、843%、786%、800%および400%の腫瘍増殖阻害(TGI)であった(p<0.01)。したがって、プロドラッグ42は、MTDを下回る用量で優れた抗腫瘍活性を有しており、治療域の存在を確立した。
【0339】
(B.2.15 プロドラッグ42のマウスの毒性および薬物動態学)
表10は、q3dx4最大耐量(MTD)および組織および血漿の薬物動態学を記載する。プロドラッグ42は、時折の軟便を伴う体重減少を実証し、このことは、胃腸毒性が用量制限であり得ることを示唆する。体重減少が、出発重量の>15%であった場合には、人道的選別を実施した。MTD値は、すべての薬物関連原因による7中1未満の死亡として定義される。プロドラッグ42は、多用量スケジュールで良好に耐容されることが決定され、唯一の観察可能な毒性として体重減少があった。
【0340】
プロドラッグ42および化合物161の血漿および組織薬物動態学(プロドラッグ42を用いる投薬に起因する)を、DMSO/5%デキストロース(15:85)中の単回静脈内投薬(20μmol/kg)後に測定した。プロドラッグ42は、それぞれ24.7、123、256.2および197.7μM.hrの血漿、H1975腫瘍、肝臓および皮膚における曲線下面積(AUC
0−24hr)を示した。化合物161(プロドラッグ42に由来する)は、それぞれ、0.6、7.6、14.6および4.4μM.hrの血漿、H1975腫瘍、肝臓および皮膚において曲線下面積(AUC
0−24hr)を示した。
【0342】
図25は、雌のA431腫瘍保有NIHIIIマウスが、単回用量(ip)の各試験化合物を、q3dx4 MTD(それぞれ100および31.6μmol/kg)の約75%で投与された場合の、血漿およびA431腫瘍における、化合物42および化合物161(化合物42の投薬に由来し、直接的に投薬された場合)の濃度を時間の関数として示す。プロドラッグ42は、215μmol−h/Lの血漿AUC
0−72hを与え、これはインヒビター161の投与について達成されたもの(8μmol−h/L)より約27倍大きかった。後者は、49μmol−h/kgの腫瘍AUC
0−infを与えた。対照的に、プロドラッグ42は、2821μmol−h/kgの腫瘍AUC
0−72hを与え、72時間まで約30μmol/kgの安定な腫瘍組織濃度を有し、その結果、t
1/2は、決定され得なかった。この長いプロドラッグ残留と一致して、プロドラッグ20から放出されたインヒビター161も、腫瘍組織において長期のt
1/2を示し、72μmol−h/kgのAUC
0−infを提供した。したがって、A431腫瘍におけるインヒビター161のAUCは、プロドラッグ42の投与後に、等価の毒性でのインヒビター161自体の投与後よりも少なくとも1.5倍高かった。
【0343】
(B.2.16 要約)
集められたデータにより、マイケル受容基に隣接する第三アミンを有する不可逆性erbB1、2、4インヒビターの四級アンモニウム塩プロドラッグが、有酸素条件下で実施される細胞ベースのターゲット調節および抗増殖アッセイにおいてより低い活性であることが示される。一電子還元の際に所望の速度定数でフラグメント化して第三アミン保有の不可逆性erbB1、2、4インヒビターを放出するように適切に選択されたフラグメント化還元トリガーを採用するプロドラッグは、無酸素条件下に行われる細胞ベースの抗増殖アッセイにおいて選択的により強力であり、十分な耐量でマウスに送達され得、A431、SKOV3およびH1975腫瘍異種移植片実験において有意な抗腫瘍活性を有する。
【0344】
(産業上の利用)
本発明は、還元された時にフラグメント化して、キナーゼインヒビターを放出するトリガーを特徴とする一連のプロドラッグを提供する。本発明のプロドラッグは、持続性の正電荷を有する。この特徴は、正電荷が、それらを、それが由来する親のキナーゼインヒビターよりも細胞に対して透過性を低くする点で重要である。
【0345】
何等の特定の理論に結び付けられることを望むことなく、この透過性の減少が、細胞内キナーゼターゲットから離れてプロドラッグを区画化することによって親のキナーゼインヒビターに対してプロドラッグの細胞キナーゼ阻害効力を弱めることが信じられる。この活性の減弱の利益は、キナーゼインヒビターの用量制限毒性が健常な組織における関連キナーゼの阻害に由来する場合に、プロドラッグが、親キナーゼインヒビターよりも高い曝露レベルで動物に投与されることを可能にすることである。したがって、キナーゼインヒビターを放出するための腫瘍におけるプロドラッグの効率的な還元的フラグメント化は、親キナーゼインヒビターの全身投与を通じて達成され得るより高い濃度のキナーゼインヒビターを腫瘍中に送達する。同様に、親キナーゼインヒビターに対してより優れた有効性も達成される。
【0346】
また、本発明のプロドラッグの正電荷は、長時間にわたる持続性腫瘍滞留につながることも信じられる。今までの結果は、実質的に安定な腫瘍組織濃度が、長時間にわたって(少なくとも24時間にわたって、最大72時間)達成可能であることを示す。これは、低酸素が生じ得るいつでもおよび腫瘍内のどこでもプロドラッグが一電子還元によって放出されかつ活性化されるために利用可能であることを意味する。これは、多くの腫瘍内の低酸素の一過性のおよび移動する性質を考えると、特に有利である。
【0347】
適切なE(1)およびフラグメント化速度定数(kfrag)を有するトリガー/キナーゼインヒビターの組合せの選択も、低酸素選択性を補助することおよび活性なキナーゼインヒビターをプロドラッグからゆっくりと放出させることによって、その結果、十分なプロドラッグが腫瘍内における、腫瘍細胞の種々の部分に現れる低酸素のターゲット領域に長時間にわたって保持されることによって、有効性に寄与すると信じられる。
【0348】
本発明の化合物は、キナーゼの活性の阻害が望ましいあらゆる治療アプローチにおいて適用を有する。特定の一態様では、本発明は、ヒトをはじめとする哺乳類における異常な細胞増殖の治療方法であって、前記哺乳類に、異常な細胞増殖の治療に有効である量の本発明の化合物(好ましくは、式Iまたは式IIの化合物)を投与する工程を含む方法を提供する。本方法の一実施形態では、異常な細胞増殖は、骨癌、肺癌、乳癌、頭頸部の癌、前立腺癌、膵臓癌、皮膚癌、子宮癌、卵巣癌、慢性または急性白血病、子宮頸部の癌腫、外陰部の癌腫、膣の癌腫、ホジキン病、尿道の癌、副腎の癌、小腸の癌、腎臓の癌、膀胱の癌、脳幹神経膠腫および精巣癌をはじめとする癌であるが、これらに限定されない。
【0349】
本発明の化合物は、単独でまたは他の治療剤または治療計画、特に腫瘍を治療するためのものと組み合わせて用いられ得る。これによって、ヒトをはじめとする哺乳類における異常な細胞増殖の治療方法であって、前記哺乳類に、異常な細胞増殖の治療に有効な量の本発明の化合物(好ましくは、式Iまたは式IIの化合物)を、アルキル化剤、代謝拮抗剤、有糸分裂インヒビター、インターカレート剤、増殖因子インヒビター、トポイソメラーゼインヒビター、細胞周期インヒビター、生物反応調節剤、抗体、細胞毒性物質、抗ホルモン薬および抗アンドロゲン薬からなる群から選択される抗腫瘍剤と組み合わせて投与する工程を含む方法が可能となる。
【0350】
同様に、本発明はまた、ヒトをはじめとする哺乳類における異常な細胞増殖の治療方法であって、前記哺乳類に、異常な細胞増殖の治療に有効である本発明の化合物(好ましくは、式Iまたは式IIの化合物)を、ターゲッティングされた放射線治療法と組み合わせて投与する工程を含む方法を提供する。
【0351】
上記のいずれかの方法における使用を対象とする場合に、本明細書の化合物は、ヒトおよび動物に、経口的、直腸性に、非経口的(静脈内、筋肉内、または皮下)、大槽内に、膣内に、腹腔内に、膀胱内に、局所的にまたは口内もしくは鼻腔スプレーとしてのいずれかで投与され得る。
【0352】
非経口注射に適した組成物は、生理学的に許容される滅菌水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョンおよび滅菌注射用溶液または分散液に再構成するための滅菌散剤を含み得る。適した水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例として、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、植物油およびオレイン酸エチルが挙げられる。
【0353】
経口投与用の固形投与形態として、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が挙げられる。このような形態では、活性形態は、当業者に知られているように、少なくとも1種の不活性の通例の担体(例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウム)または増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、溶液凝結遅延剤、吸着促進剤、吸着剤および滑沢剤と混合され得る。
【0354】
経口投与用の液体投与形態として、医薬上許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。
【0355】
本発明の化合物は、1日あたり約0.1〜約3,000mgの範囲の、医薬上または治療上有効な投与量レベルで患者に投与され得る。採用される投与量は、最終的には、治療されている状態または障害、追跡される治療アプローチに依存することになる。投与量はまた、本発明の化合物が単剤療法として単独でまたは1種以上の他の活性剤または治療計画(放射線照射)との組合せ療法において一緒に投与されるかどうかに応じて変動する。
【0356】
本明細書の全体を通じて、前後関係が他のものを要求しなければ、語句「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」などは、排他的な意味とは対照的に包括的な意味で、すなわち、「含むが、それに限定されない」の意味で解釈される。
【0357】
上記で参照されるすべての刊行物は、その全体が本明細書に援用される。
【0358】
本明細書における任意の先行技術への参照は、先行技術が共通一般知識の一部を形成するという承認または示唆のあらゆる形態として理解されず、かつ、理解されるべきでない。
【0359】
以下は、本発明をその好ましい形態を含めて記載する。当業者に明らかであろう変更または改変は、含まれるものとする。