(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793430
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20150928BHJP
F25B 41/06 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F25B41/06 U
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-517(P2012-517)
(22)【出願日】2012年1月5日
(65)【公開番号】特開2013-139853(P2013-139853A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】原田 貴雄
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−275120(JP,A)
【文献】
実開平02−044178(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0211929(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F25B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室及びその内部に形成された弁座を有する弁本体と、
前記弁座に対して接離する弁体と、
弁本体の上部に固着されるキャンと、
キャンの内部に回転自在に装備されるロータと、
キャンの外部に装備されるステータと、
ロータにより駆動されて前記弁体を操作するねじ機構と、
前記弁体を開弁方向に付勢するコイルバネとを備え、
前記コイルバネは、前記弁本体と前記弁体との間に配設される引張りバネであることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記コイルバネの両端は、前記弁本体及び前記弁体のそれぞれに形成されたねじ部に螺合してとりつけられることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項3】
前記コイルバネは、前記弁本体の上部に固定されるねじ軸受けと前記弁体との間に配設されることを特徴とする請求項1記載の電動弁。
【請求項4】
前記コイルバネの両端は、前記ねじ軸受け及び前記弁体のそれぞれに設けられるねじ部に螺合されてとりつけられる請求項3記載の電動弁。
【請求項5】
前記ねじ部は、外ねじ部であることを特徴とする請求項2又は4記載の電動弁。
【請求項6】
前記コイルバネは、密着バネであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空気調和機の冷媒の流量を制御するのに用いられる電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1は、この種の空気調和機、冷凍機等に組み込まれて使用される電動弁を示し、冷媒等の流体の流量を調整する機能を有し、通常、弁室及び弁座を備えた弁本体と、弁本体の上部に固着された有底円筒状のキャンとを備えている。キャンの内側にはロータが内蔵され、キャンの外部には中央部に挿通孔を有するステータが外嵌されている。
【0003】
ロータの回転出力は、減速機構により減速され、ねじ軸に伝達される。ねじ棒は、弁本体の上部に固着されたねじ軸受に螺合しており、ねじ軸はねじ機構により軸線方向に移動する。
ねじ軸の移動は、弁体に伝達され、弁体は弁本体に形成された弁座との間を開閉して流量を制御する。
【0004】
弁体は、コイルバネにより常に開弁方向に付勢されて、ねじ軸に常時当接している。
棒状の弁体は、弁室内に設けられた円筒形状のバネケース内に摺動自在に挿入されている。
バネケースは、上部が大径部で下部が小径部の2段の円筒形状を有し、下部の小径部で弁体をガイドする。コイルバネは、バネケースの大径部に挿入される。コイルバネの上端部は弁体の上部のフランジ部に当接し、下端部はバネケースの大径部の底部に当接する。
コイルバネは圧縮バネであって、弁体を常時開弁方向に付勢している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−275120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の電動弁にあっては、バネケースは弁体の外周部を囲うので、弁本体の径寸法はバネケースを収納するために大きな寸法を必要とする。このために電動弁全体を小型化することが困難であった。
そこで本発明の目的は、バネケースを省略することができる電動弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電動弁は、弁室及びその内部に形成された弁座を有する弁本体と、前記弁座に対して接離する弁体と、弁本体の上部に固着されるキャンと、キャンの内部に回転自在に装備されるロータと、キャンの外部に装備されるステータと、ロータにより駆動されて前記弁体を操作するねじ機構と、前記弁体を開弁方向に付勢するコイルバネを備え、前記コイルバネは、前記弁本体と弁体との間に配設される引張りバネであることを特徴とする。
【0008】
好ましい態様では、前記コイルバネの両端は、前記弁本体及び前記弁体のそれぞれに形成されたねじ部に螺合してとりつけられる。
【0009】
他の好ましい態様では、前記コイルバネは、前記弁本体の上部に固定されるねじ軸受けと前記弁体との間に配設される。
【0010】
他の好ましい態様では、前記コイルバネの両端は前記ねじ軸受け及び弁体のそれぞれに設けられるねじ部に螺合されてとりつけられる。
【0011】
他の好ましい態様では、前記ねじ部は、外ねじ部であることができる。
さらに他の好ましい態様では、前記コイルバネは、密着バネであることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動弁は、上述した手段を備えることにより、バネケースを省略することができると共に、弁体を開弁方向に付勢するコイルバネを弁体上部からアクチュエータ側(換言すればキャン側)に配置することができる。したがって、部品点数の削減と共に、当該電動弁全体の小型化を図ることができる。
さらに、弁室内にバネケースが配置されないので、圧損の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例の電動弁をステータを省略して示す断面図(閉弁状態)。
【
図2】本発明の一実施例の電動弁をステータを省略して示す断面図(開弁状態)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施例の電動弁をステータを省略して示す断面図である。
ステータを省略して示す電動弁1は、円筒形状の弁本体10を有する。弁本体10は後述する弁体80が挿入される弁室10aを兼ねる内径部11を備え、内径部11に連続して同軸線上に第1の通路13が形成され、第1の通路13の第2の通路16側の出口に弁座14が設けられる。
第1の通路13とこれに直交するように弁本体10の側面に設けられた第2の通路16には、それぞれ配管20と配管22が接続される。この第1の通路13又は第2の通路16から当該電動弁1内に流体(冷媒)が流入し、第2の通路16又は第1の通路13から流体が流出する。
【0015】
弁本体10の上部には円盤状の取付基板30が固着され、取付基板30の上部には円筒状のキャン40がとりつけられる。キャン40の外周部には従来例で示したステータ(図示せず)が装備される。
キャン40の内側にはシャフト51を介してロータ50が回転自在に装備される。ロータ50の回転力は減速機構52により減速されて出力軸54に伝達される。減速機構52は、この例においては不思議遊星歯車機構とされている。出力軸54は平溝55を有し、ねじ軸60の平板61がこの平溝55に挿入されて、ねじ軸60は出力軸54の回転力を受けて回転駆動される。
【0016】
弁本体10の上部には段付きの円筒状のねじ軸受け70が挿入され、カシメ部K
1により弁本体10に対して固定される。ねじ軸受け70は雌ねじ部72を有し、これにねじ軸60の雄ねじ部62が螺合する。出力軸54によりねじ軸60が回転駆動されると、ねじ軸60は軸線方向に移動し、この移動はボール64を介して弁体80の頂部に支持されたボール受け66に伝達される。ねじ軸60及びねじ軸受け70は、ねじ機構を構成している。
【0017】
ボール受け66は弁体80に支持されているので、ねじ軸60の移動により弁体80は軸線方向に移動してテーパー面82が弁座14との間の流体の通路を開閉して弁機能を発揮する。また、ボール64の作用により、ねじ軸60は回転しながら昇降するが、弁体80は回転せずに昇降する。内径部11内の流体は、弁本体10に設けた均圧孔17を通ってキャン40内に送られ、均圧を図る。
【0018】
弁体80は内径部11に対して摺動する大径部84を有し、弁体80をガイドする。
ねじ軸60は弁体80を開弁方向に引き上げる機能は持たないので、コイルバネ90を配設して弁体80を開弁方向に付勢する。本発明の電動弁にあっては、弁本体10の内径部11に直接にコイルバネ90を配置してバネケースを省略している。
【0019】
図3は、コイルバネ90と、コイルバネ90の上下端部がとりつけられるねじ軸受け70と弁体80のとりつけ構造を説明する部品図である。
本発明に使用されるコイルバネ90は、自由状態では密着状態となるいわゆる密着バネである。
【0020】
ねじ軸受け70は、弁本体10の上端部に挿入されるフランジ部74を有し、円筒状のねじ軸受け70のフランジ部74の直下に外ねじ部(雄ねじ部)76が設けられる。この例においては、外ねじ部76のねじピッチは、自由状態であるコイルバネ90のピッチと同一に設定されている。この外ねじ部76にコイルバネ90の上端部92を螺合してコイルバネ90の上端部92をねじ軸受け70に対してとりつける(係止する)。
【0021】
弁体80も同様に、大径部84の上部の円筒部に外ねじ部(雄ねじ部)86が設けられる。この例においては、この外ねじ部86のねじピッチも、自由状態であるコイルバネ90のピッチと同一に設定されている。この外ねじ部86にコイルバネ90の下端部94を螺合してコイルバネ90の下端部94を弁体80に対してとりつける(係止する)。
【0022】
このようにして、組立てられた状態にあっては、ねじ軸受け70のフランジ部74より下側に形成された円筒部の長さと、弁体80の大径部84より上側の円柱部の長さの和が、自由状態であるコイルバネ90の全長寸法よりも大きく設定されているので、コイルバネ90の全長は少量の長さだけ伸長されて、引張りバネ力を発生させる。
この組立て部品を弁本体10の内径部11の頂部に挿入し、カシメ部K
1により固定する。
【0023】
図4は、
図3の要部の拡大図である。
コイルバネ90は、ねじ軸受け70と弁体80に対して組付けられた状態にあってはその全長寸法L
1は、自由状態の全長寸法L
0に対して引き伸ばされている。この状態では弁体80をねじ軸受け70側に引き寄せるバネ力が発生している。
【0024】
すなわち、自由状態では密着バネであるコイルバネ90は引張りバネとして機能して、弁体80を常時開弁方向に付勢する。
また、コイルバネ90の両端が外ねじ部76、86に螺合されて取り付けられるので、コイルバネ90が引っ張られると、該コイルバネ90の外径が小さくなって前記外ねじ部76、86を締めつけるように作用する。また、上述のように、弁体80は回転せずに昇降する。したがって、コイルバネ90を極めて簡単な手法によりねじ軸受け70及び弁体80に取り付けることができる一方、当該電動弁1の動作中(弁体80の昇降中)にコイルバネ90が外ねじ部76、86から外れるおそれもない。
【0025】
本実施例の電動弁にあっては、コイルバネ90を弁体80の外周部に装着し、コイルバネ90を弁本体10の内径部11に直接に配置し、かつコイルバネを弁本体10と弁体80に取り付けたので、バネケースを省略することができる。また、これにより圧損を低減することができる。
【0026】
弁体80の外径寸法は、電動弁が要求される弁の容量により決定される。
そこで、同一の容量が要求される弁体80に対して弁本体10の外径寸法を小さく設計することが可能となる。
【0027】
以上のように、本発明の電動弁にあっては、弁体を開弁方向に付勢するバネを引張バネとしたので、引張バネを弁体上部からアクチュエータ側(換言すればキャン40側)に配置することができる。これにより、バネケースを省略して部品点数を削減し、かつ小型化を図ることができ、さらに圧損の低減を図ることができる。
【0028】
さて、前述の説明においては、ねじ軸受け70に形成される外ねじ部76、及び弁体80に形成される外ねじ部86のねじピッチは、それぞれ自由状態であるコイルバネ90のピッチと同一に設定されるものとしたが、本発明はこれのみに限定されることはなく、自由状態であるコイルバネ90のピッチより大きくても良い。
【0029】
また、前述の説明においては、コイルバネ90は自由状態では密着バネであるものとしたが、本発明はこれのみに限定されることはなく、自由状態で密着しないものであっても良い。この場合、外ねじ部76、86のねじピッチは、コイルバネ90のピッチと同一であっても良いが、該ピッチよりも大あるいは小であっても良い。
【0030】
さらにまた、コイルバネ90の両端は、外ねじ部への螺合により取り付けられるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されることはなく、内ねじ部(雌ねじ部)への螺合により取り付けられても良い。すなわち、例えばねじ軸受70のフランジ部74の外周を円筒状に下方に延長してその内壁に内ねじを形成し、弁体80の大径部84の外周を円筒状に上方に延長してその内壁に内ねじを形成し、それぞれの内ねじにコイルバネ90両端部を螺合するようにしても良い。
【0031】
さらにまた、コイルバネ90の両端部の支持は、上記したような外ねじ部あるいは内ねじ部との螺合によることなく、他のいかなる手法によりなされても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 電動弁
10 弁本体
11 内径部
13 第1の通路
14 弁座
16 第2の通路
17 均圧孔
20 配管
22 配管
30 取付基板
40 キャン
50 ロータ
51 シャフト
52 減速機構
54 出力軸
55 平溝
60 ねじ軸
61 平板
62 雄ねじ部
64 ボール
66 ボール受け
70 ねじ軸受け
72 雌ねじ部
74 フランジ部
76 外ねじ部
80 弁体
82 テーパー面
84 大径部
90 コイルバネ
94 下端部
K
1 カシメ部