(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793433
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】充填量検査装置および充填量検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/90 20060101AFI20150928BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20150928BHJP
B01D 65/10 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
G01N21/90 Z
B01D63/00 500
B01D65/10
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-5186(P2012-5186)
(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2013-145149(P2013-145149A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 喬剛
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−281591(JP,A)
【文献】
特開平07−051549(JP,A)
【文献】
特開2006−317386(JP,A)
【文献】
特開2007−040745(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0019438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
A61M 1/00− 1/36
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸束の端部とケーシング本体の内面とが充填剤によって固定された固定領域を有する中空糸型フィルタを被検体として、前記充填剤の充填量を検査する充填量検査装置であって、
前記ケーシング本体の中心軸を中心に前記被検体を回転させる回転装置と、
前記被検体の外周面に向けて光を照射する光源と、
前記被検体からの反射光を受光して撮像する撮像装置と、
前記撮像装置から出力される画像を基に充填剤の充填量を検査し固定状態を判定する判定装置と、
を有し、
前記判定装置は、前記被検体の長手方向の異なる位置に対応する前記充填剤の充填量を検査するための2つの検査領域が記憶され、前記撮像装置から出力される画像の充填剤の際と前記2つの検査領域との位置関係に応じて、固定状態の合否を判定することを特徴とする充填量検査装置。
【請求項2】
前記充填剤が有色であり、前記ケーシング本体が透明であることを特徴とする請求項1に記載の充填量検査装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、ラインスキャンカメラであり、
前記光源は、前記撮像装置の撮像視野線に対して対称に設けられ、前記被検体の外周面を2方向から照明する2つの光源からなることを特徴とする請求項1または2に記載の充填量検査装置。
【請求項4】
中空糸束の端部とケーシング本体の内面とが充填剤によって固定された固定領域を有する被検体を、前記ケーシング本体の中心軸を中心に前記被検体を回転させ、前記被検体の外周面に向けて光を照射し、前記被検体からの反射光を受光して撮像して、撮像された画像に基づき、充填剤の充填量を検査する方法であって、
前記被検体の長手方向の異なる位置に対応する前記充填剤の充填量を検査するための2つの検査領域が設定され、撮像された画像の充填剤の際と前記2つの検査領域との位置関係に応じて、固定状態の合否を判定することを特徴とする充填量検査方法。
【請求項5】
前記充填剤が有色であり、前記ケーシング本体が透明であることを特徴とする請求項4に記載の充填量検査方法。
【請求項6】
ラインスキャンカメラを用いて撮像し、前記ラインスキャンカメラの撮像視野線に対して対称に設けられ前記被検体の外周面を2方向から光を照明することを特徴とする請求項4または5に記載の充填量検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、特に、中空糸型フィルタにおける充填剤の充填量検査装置および中空糸型フィルタにおける充填剤の充填量検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、中空糸束を備えた中空糸型フィルタは、ケーシング本体と、ケーシング本体内に装填される中空糸束と、ケーシング本体の両端部にそれぞれ装着され流体の導出入口を備えた蓋部材とを有する。一般に、中空糸束の端部は、ケーシング本体内面に充填剤を用いて固定され、次いで、中空糸束が充填されたケーシング本体に蓋部材が装着されて、中空糸型フィルタが形成される。ところで、従来、充填剤による中空糸束の端部とケーシング本体との固定状態は、目視によって判定されていた。
【0003】
一方、特許文献1には、透明な内筒とこれに同軸に外嵌した透明な外筒とが、両筒間の隙間に配された透明な接合材を介して接合される二重筒の接合状態を検出する方法において、二重筒の溶着部分に向けて、外筒の上方から線状の光を照射し、内筒内に配置された反射体から反射した光をラインセンサによって検出することによって接合状態を判断する方法が記載されている。特に、特許文献1では、溶着部分に空気層がない場合にのみ反射光がラインセンサによって検出される。
【0004】
また、特許文献2には、多数本の中空糸膜からなる中空糸膜束を樹脂でポッティングした後、ポッティング部に片側から切断刃により横断面方向に切断し、多数の中空糸膜の開口端と中空糸膜開口端どうしを繋ぐポッティング樹脂部とが配置された中空糸膜モジュール切断面を形成し、該中空糸膜モジュール切断面に光りを照射し、反射光を受光して撮像し、撮像に基づき、中空糸膜モジュール切断面の良否判定を行うための端面検査方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、略円筒状の外周面を有する容器を自転させる回転機構と、自転時に容器の外周面の側方に位置するように固定された少なくとも1つのラインカメラとを設け、回転機構により容器を自転させながら、ラインカメラで容器の外周面を撮像し、得られた容器の外周面の画像データに基づき、外観検査の合否を判別する外観検査装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−261946号公報
【特許文献2】特開2008−246378号公報
【特許文献3】特開2010−151587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したように、従来、中空糸型フィルタにおいて、充填剤による中空糸束の端部とケーシング本体との固定状態は、目視により判定されていた。しかし、作業者による目視検査は、作業者に負荷がかかることから、検査の自動化が望まれている。また、客観的なしきい値に基づいて、中空糸束の端部とケーシング本体との固定部分における充填剤の充填量を検査し、前記固定状態の合否判定を行うことも望まれている。
【0008】
本発明は、以上のような状況を鑑みてなされたものであり、充填剤による中空糸束の端部とケーシング本体との固定状態の検査を自動化し、客観的なしきい値を基に充填剤の充填量を検査し、固定状態の合否を判定可能な、中空糸型フィルタにおける充填剤の充填量検査装置および中空糸型フィルタにおける充填剤の充填量検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す本発明を完成するに至った。本願発明は、以下の特徴を有する。
【0010】
(1)中空糸束の端部とケーシング本体の内面とが充填剤によって固定された固定領域を有する中空糸型フィルタを被検体として、前記充填剤の充填量を検査する充填量検査装置であって、前記ケーシング本体の中心軸を中心に前記被検体を回転させる回転装置と、前記被検体の外周面に向けて光を照射する光源と、前記被検体からの反射光を受光して撮像する撮像装置と、前記撮像装置から出力される画像を基に充填剤の充填量を検査し固定状態を判定する判定装置と、を有
し、前記判定装置は、前記被検体の長手方向の異なる位置に対応する前記充填剤の充填量を検査するための2つの検査領域が記憶され、前記撮像装置から出力される画像の充填剤の際と前記2つの検査領域との位置関係に応じて、固定状態の合否を判定する充填量検査装置である。
【0012】
(
2)前記充填剤が有色であり、前記ケーシング本体が透明である、上記(1
)に記載の充填量検査装置である。
【0013】
(
3)前記撮像装置は、ラインスキャンカメラであり、前記光源は、前記撮像装置の撮像視野線に対して対称に設けられ、前記被検体の外周面を2方向から照明する2つの光源からなる、上記(1)
または(2)に記載の充填量検査装置である。
【0014】
(
4)中空糸束の端部とケーシング本体の内面とが充填剤によって固定された固定領域を有する被検体を、前記ケーシング本体の中心軸を中心に前記被検体を回転させ、前記被検体の外周面に向けて光を照射し、前記被検体からの反射光を受光して撮像して、撮像された画像に基づき、充填剤の充填量を検査する
方法であって、前記被検体の長手方向の異なる位置に対応する前記充填剤の充填量を検査するための2つの検査領域が設定され、撮像された画像の充填剤の際と前記2つの検査領域との位置関係に応じて、固定状態の合否を判定する充填量検査方法である。
【0016】
(
5)前記充填剤が有色であり、前記ケーシング本体が透明である、上記
(4)に記載の充填量検査方法である。
【0017】
(
6)ラインスキャンカメラを用いて撮像し、前記ラインスキャンカメラの撮像視野線に対して対称に設けられ前記被検体の外周面を2方向から光を照明する、上記
(4)または(5)に記載の充填量検査方法である。
【発明の効果】
【0018】
本願発明における充填量検査装置によれば、中空糸型フィルタの製造において、充填剤による中空糸束の端部とケーシング本体との固定状態の検査が自動化され、客観的なしきい値を基に充填剤の充填量が検査され、中空糸束の端部とケーシング本体の内面の固定状態の合否が判定される。
【0019】
本願発明における充填量検査方法によれば、中空糸型フィルタの製造時に、充填剤による中空糸束の端部とケーシング本体との固定状態の検査が自動化され、客観的なしきい値を基に充填剤の充填量が検査されて、中空糸束の端部とケーシング本体の内面の固定状態の合否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る中空糸型フィルタにおける充填剤の充填量検査装置の一例を例示する概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る中空糸型フィルタにおける充填剤の充填量検査装置の光源の配置と撮像装置の配置の一例を説明する図である。
【
図3】本実施形態に係る中空糸型フィルタにおける充填剤の充填量検査装置における、充填剤の充填量の検査方法の一例を説明する図である。
【
図4】本実施の形態に係る中空糸型フィルタにおける充填剤の充填量検査方法における、充填剤の充填量の検査および固定状態の合否判定の一例を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、本実施形態に係る充填量検査装置100の一例を例示する。充填量検査装置100は、中空糸束14の端部とケーシング本体16の内面とが充填剤によって固定された固定領域12を有する中空糸型フィルタを被検体10として、前記充填剤の充填量を検査する充填量検査装置であって、ケーシング本体16の中心軸を中心に被検体10を回転させる回転装置と、被検体10の外周面に向けて光を照射する光源30と、被検体10からの反射光を受光して撮像する撮像装置40と、撮像装置40から出力される画像を基に充填剤の充填量を検査し固定状態を判定する判定装置80とを有する。
【0022】
また、本実施の形態において、回転装置は、被検体10が載置されて回転可能な回転テーブル20と、回転テーブル20を回転させる回転軸に連結されたモータ22とからなる。また、本実施の形態では、前記充填剤は有色の樹脂を用い、また、ケーシング本体16は透明な部材を用いた。また、本実施の形態では、撮像装置40として、例えば、ラインスキャンカメラを用いて、連続的に被検体10を撮像している。さらに、本実施の形態では、有色の充填剤と透明のケーシング本体16との画像をより鮮明にするため、光源30は、
図2に示すように、撮像装置40の撮像視野線(
図1,2の点線矢印)に対して対称に設けられた、被検体10の外周面に対して2方向から照明する2つの光源30a,30bを用いている。ここで、光源30a,30bは、撮像装置40の撮像視野線(
図1,2の点線矢印)に対して、それぞれ角度θになるように設置され、被検体10を2方向から照射している。角度θは、被検体10の直径によっても異なるが、例えば被検体10の直径が30mm〜60mmの範囲である場合、角度θは15〜30°の範囲内であることが好ましい。また、被検体10の直径が30mm〜60mmの範囲である場合、光源30a,30bは、被検体10の表面の照度が、以下に示す表1の場合であることが好ましい。なお、角度θが15°未満の場合には、ケーシング本体16表面で反射してしまい、ケーシング本体16内が観察できない。一方、角度θが30°を超える場合には、中空糸束14が背景として写り込んでしまう。また、表1に示す照度の上限を超えて明るい場合には、充填剤の充填領域が見えない(例えば、充填剤がポリウレタンの場合、白飛びしてしまう)。一方、表1に示す照度の下限を下回る場合には、中空糸束14が背景に移り込んでしまう。
【0024】
光源30,30a,30bは、いずれも、可視光から紫外光までの光を照射可能であって、充填剤の組成に応じて、適宜波長が選択される。
【0025】
また、回転装置は、モータ22を用いて、回転テーブル20をほぼ定速で回転させ、回転速度に応じて、撮像装置40としてのラインスキャンカメラのシャッタ速度を制御して、被検体10を撮像している。なお、撮像される画像は、被検体10の全体であってもよいが、例えば、本実施の形態では、主に、充填剤による固定領域12およびその周辺部分の透明なケーシング本体16の一部を含む画像を例示することとする。
【0026】
さらに、
図1から
図3を用いて、本実施の形態における判定装置80について説明する。判定装置80は、
図3に示すように、被検体10の長手方向(すなわち、
図3のY方向)の異なる位置に対して、予め定められた基準の充填剤の充填量になっているか否かを判定するための、第1の領域60と第2の領域70とからなる2つの検査領域が、記憶されている。ここで、
図3に示すY方向は、被検体10の長手方向に相当し、Y方向の矢印方向は、回転テーブル20上の被検体10の上方から下方を示している。一方、
図3に示すX方向は、被検体10の外周方向に相当し、X方向の矢印は、回転装置により回転しながら撮像される被検体10の外周面の方向を示している。さらに、本実施の形態では、撮像装置40から出力された画像50は、被検体10の上方側に位置する固定領域12と、ケーシング本体16の一部が収められ、有色の充填剤が充填された固定領域12は濃色として、また、充填剤が充填されていない部分(透明なケーシング本体16のみの部分)は淡色として、表されている。従って、画像50において、充填領域である固定領域12と非充填領域との濃淡の境目82が、充填剤の際(固定領域12の下端面)として判別される。
【0027】
さらに、判定装置80は、上述した第1の領域60を、固定領域12における充填剤の充填量が過少の領域として、一方、第2の領域70を、固定領域12における充填剤の充填量が過多の領域として、予め記憶している。さらに、判定装置80は、ケーシング本体16の上端部から第1の領域60を超え、第2の領域70の手前までの範囲を、上述した予め定められた基準の充填剤の充填量に相当する『適正充填領域』として、記憶している。
【0028】
次に、本実施の形態における充填剤の充填量検査装置100を用いた、充填量検査方法の一例を、
図1から
図4を用いて以下に説明する。モータ22により回転テーブル20を定速で回転させて、被検体10を回転させ、この回転速度に応じて、撮像装置40であるラインスキャンカメラのシャッタ速度を制御しながら、被検体10の撮像を行い、判定装置80は、外周面の画像を取得する(S100)。次に、判定装置80は、
図3に示す充填領域である固定領域12と非充填領域との濃淡の境目82が第1の領域60内に存在するか否か判定し(S102)、充填領域である固定領域12と非充填領域との濃淡の境目82が第1の領域60に存在する場合、すなわち、
図3の点線で囲ったIIIの部分が存在する場合には、充填剤の充填量が基準値より少ないと判定し、点線で囲ったIIIの部分における中空糸束14の端部とケーシング本体16の内面の充填剤による固定状態は、不良であると判定する(S104)。さらに、判定装置80は、
図3に示す充填領域である固定領域12と非充填領域との濃淡の境目82が第1の領域60内には存在しないが、第2の領域70に存在すると判定した場合(S106)、すなわち、
図3の点線で囲ったI,II,IVの部分が存在すると判定した場合には、充填剤の充填量が基準値より多いと判定し、点線で囲ったI,II,IVの部分における中空糸束14の端部とケーシング本体16の内面との充填剤による固定状態は、不良であると判定する(S108)。一方、判定装置80は、
図3に示す充填剤の際82が第1の領域60および第2の領域内70のいずれの領域内にも存在しないと判定した場合、その個所における中空糸束14の端部とケーシング本体16の内面との充填剤による固定状態は、合格であると判定する(S110)。なお、本実施の形態では、原則として、中空糸束14の端部とケーシング本体16の内面の充填剤による固定領域12における充填剤の際82は、第2の領域70を超えないものとする。
【符号の説明】
【0029】
10 被検体、12 固定領域、14 中空糸束、16 ケーシング本体、20 回転テーブル、22 モータ、30,30a,30b 光源、40 撮像装置、50 画像、60 第1の領域、70 第2の領域、80 判定装置、82 濃淡の境目、100 充填量検査装置。