特許第5793446号(P5793446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793446
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   H02K9/19 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-33027(P2012-33027)
(22)【出願日】2012年2月17日
(65)【公開番号】特開2013-172474(P2013-172474A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】壷井 昇
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/020630(WO,A1)
【文献】 特開2006−009592(JP,A)
【文献】 米国特許第04471621(US,A)
【文献】 特開昭57−105509(JP,A)
【文献】 米国特許第05743094(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体を封入してなり、前記作動媒体を加熱して蒸発させる蒸発器、前記蒸発器において蒸発した前記作動媒体の膨張力を回転力に変換し、膨張した前記作動媒体を排出する膨張機、前記膨張機が排出した前記作動媒体を凝縮温度よりも低い温度に過冷却して流出させる凝縮器、および、前記凝縮器から流出した前記作動媒体を加圧して前記蒸発器に環流させる循環ポンプが介設された循環流路と、
前記膨張機によって駆動され、前記作動媒体が挿通される冷却流路を備える発電機と、
前記循環ポンプと前記蒸発器との間において前記循環流路から前記作動媒体の一部を分流し、分流した前記作動媒体を減圧する減圧器を介して前記冷却流路に供給する分流流路と、
前記冷却流路から流出した前記作動媒体を前記循環流路の前記凝縮器と前記循環ポンプとの間に環流させる環流流路とを有し、
前記冷却流路は、前記減圧器で減圧された前記作動媒体を導入し、前記発電機を冷却して蒸発した湿り蒸気、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれかの状態である前記作動媒体を流出させることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記環流流路は、前記発電機を冷却して蒸発した湿り蒸気、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれかの状態である前記作動媒体の温度を検出する作動媒体温度検出器を備え、
前記減圧器は、開度調節可能な弁であって、前記作動媒体温度検出器の検出値に応じて開度が調節されることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記発電機は、内部の温度を検出する発電機温度検出器を備え、
前記分流流路は、前記発電機温度検出器にて検出された温度に基づいて開閉が制御される開閉弁を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記発電機のハウジングは、前記膨張機のハウジングと一体に接続されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランキンサイクルを用いた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸発器、膨張機、凝縮器および循環ポンプを介設した流路に封入した作動媒体を循環させることで、蒸発器で受け取った熱エネルギーを膨張機において回転エネルギーに変換するランキンサイクルを用いた発電装置が公知である。
【0003】
一般に、発電機の温度が過度に上昇すると発電効率が低下する。そのため、ランキンサイクルを用いた発電装置でも発電機の冷却を行うことが望ましい。
【0004】
特許文献1には、循環ポンプで加圧した作動媒体の一部を発電機に設けたジャケットに導入し、発電機を冷却した作動媒体を凝縮器に環流させる発明が記載されている。この構成では、高圧の作動媒体が発電機のジャケットに導入されるので、ジャケットにおける作動媒体の圧力が高く、その圧力における蒸発温度が高く、作動媒体と発電機の内部との間の温度差が小さいため、熱交換の効率が悪い。このため、発電機を十分に冷却するためには作動媒体の流量を増やさなければならず、膨張機を駆動するランキンサイクルを循環する作動媒体の流量が少なくなるので、発電効率が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−353571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題点に鑑みて、本発明は、発電機を冷却できる発電効率の高い発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明による発電装置は、作動媒体を封入してなり、前記作動媒体を加熱して蒸発させる蒸発器、前記蒸発器において蒸発した前記作動媒体の膨張力を回転力に変換し、膨張した前記作動媒体を排出する膨張機、前記膨張機が排出した前記作動媒体を凝縮温度よりも低い温度に過冷却して流出させる凝縮器、および、前記凝縮器から流出した前記作動媒体を加圧して前記蒸発器に環流させる循環ポンプが介設された循環流路と、前記膨張機によって駆動され、前記作動媒体が挿通される冷却流路を備える発電機と、前記循環ポンプと前記蒸発器との間において前記循環流路から前記作動媒体の一部を分流し、分流した前記作動媒体を減圧する減圧器を介して前記冷却流路に供給する分流流路と、前記冷却流路から流出した前記作動媒体を前記循環流路の前記凝縮器と前記循環ポンプとの間に環流させる環流流路とを有し、前記冷却流路は、前記減圧器で減圧された前記作動媒体を導入し、前記発電機を冷却して蒸発した湿り蒸気、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれかの状態である前記作動媒体を流出させるものとする。
【0008】
この構成によれば、作動媒体を減圧してから発電機の冷却流路に導入するので、冷却流路における作動媒体の圧力が低く、その圧力における蒸発温度が低く、作動媒体と発電機の内部との間の温度差が大きいため、冷却効率が高い。したがって、少量の作動媒体によって発電機を十分に冷却することができ、膨張機を駆動する作動媒体の流量を確保することによって、高い発電効率を実現できる。
【0009】
また、本発明の発電装置において、前記環流流路は、前記発電機を冷却して蒸発した湿り蒸気、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれかの状態である前記作動媒体の温度を検出する作動媒体温度検出器を備え、前記減圧器は、開度調節可能な弁であって、前記作動媒体温度検出器の検出値に応じて開度が調節されてもよい。


【0010】
この構成によれば、環流流路における作動媒体の過熱度を低く抑え、冷却流路に挿通する作動媒体の流量を少なくし、蒸発器を駆動する作動媒体の流量を確保することによって、高い発電効率を維持できる。
【0011】
また、本発明の発電装置において、前記発電機は、内部の温度を検出する発電機温度検出器を備え、前記分流流路は、前記発電機温度検出器にて検出された温度に基づいて開閉が制御される開閉弁を備えてもよい。
【0012】
この構成によれば、発電機の冷却が不要な場合には、冷却流路に作動媒体を供給しないので、蒸発器を駆動する作動媒体の流量を増やして高い発電効率を達成できる。
【0013】
また、本発明の発電装置において、前記発電機のハウジングは、前記膨張機のハウジングと一体に接続されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、膨張機に供給される作動媒体の熱がハウジングを通して発電機に伝導する。したがって、蒸発器から膨張機に供給される作動媒体の温度が発電機の適正な温度範囲を超えるときには、冷却流路を通過する作動媒体の温度を低くできる本発明の効果が顕著となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明は、作動媒体を減圧して発電機を冷却するので、発電機の内部と作動媒体との温度差が大きく、冷却効率が高いため、発電機の発電効率の低下を防止しながら、膨張機を駆動する作動媒体の流量を多くして、作動媒体の熱サイクルの効率も高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態の発電装置の概略構成図である。
図2】本発明の第2実施形態の発電装置の概略構成図である。
図3】本発明の第3実施形態の発電装置の概略構成図である。
図4】本発明の第4実施形態の発電装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る発電装置1の構成を示す。この発電装置1は、蒸発器10とスクリュ膨張機12と、凝縮器13と、循環ポンプ14とを介設してなり、作動媒体(例えばR245fa)が封入された循環流路15を有する。スクリュ膨張機12は、発電機16を駆動するようになっている。
【0018】
スクリュ膨張機12は、膨張機ハウジング17の中に雌雄一対のスクリュロータ18を収容してなり、蒸発器10で熱源と熱交換して加熱されることにより蒸発した作動媒体が供給され、作動媒体の膨張力をスクリュロータ18の回転力に変換し、膨張して圧力が低下した作動媒体を排出する。
【0019】
スクリュ膨張機12から排出された作動媒体は、凝縮器13において冷却源によって冷却されることにより凝縮する。凝縮した作動媒体は、循環ポンプ14によって加圧されて蒸発器10に再供給される。
【0020】
発電機16は、スクリュ膨張機12の膨張機ハウジング17に一体に接続された発電機ハウジング19を有し、発電機ハウジング19によって画定され、膨張機ハウジング17によって一端が封止された発電機室20の中に、固定子21および回転子22を収容している。回転子22の軸は、スクリュロータ18の一方の軸と一体である。また、発電機ハウジング19の外側には、冷却水が挿通される冷却ジャケット(冷却流路)23が設けられている。
【0021】
また、本実施形態の発電装置1は、循環ポンプ14と蒸発器10との間において循環流路15から作動媒体の一部を分流し、分流した作動媒体を減圧弁(減圧器)24を介して冷却ジャケット23に導入する分流流路25と、冷却ジャケット23から流出する作動媒体を、循環流路15の凝縮器13と循環ポンプ14との間に環流させる環流流路26とを有する。
【0022】
減圧弁24は、作動媒体を凝縮器13における凝縮圧力と略同じ圧力まで減圧する。減圧された作動媒体は、冷却ジャケット23の中で、発電機ハウジング19を冷却、より詳しくは、発電機ハウジング19を介して主に固定子21と熱交換する。このとき、作動媒体は、主として蒸発することによって殆どの熱を潜熱として吸収するが、流量が少ないときは、蒸発後の温度上昇、つまり、顕熱として発電機16の熱を吸収する。こうして、発電機16を冷却した作動媒体は、冷却ジャケット23から流出し、環流流路26を通って循環流路15に戻される。したがって、環流流路26から循環流路15に導入される作動媒体は、湿り蒸気、飽和蒸気及び過熱蒸気のいずれかの状態である。
【0023】
凝縮器13は、作動媒体をその圧力における凝縮温度よりも僅かに低い温度まで冷却(過冷却)して流出させる。環流流路26から循環流路15に環流する作動媒体の流量は、凝縮器13から流出した作動媒体の流量に比して十分に少ない。このため、凝縮器13から流出した液相の作動媒体がその圧力における蒸発温度(すなわち、飽和温度)以下の範囲で温度上昇し、循環流路15から導入された作動媒体の潜熱(過熱蒸気の場合は、加えて加熱度分の顕熱)を吸収して凝縮させる。これにより、循環ポンプ14が吸引する作動媒体は、完全な液体となるので、循環流路15における作動媒体の循環に悪影響がない。
【0024】
このように、冷却ジャケット23に供給する作動媒体の圧力を低くし、冷却ジャケット23内において低温で作動媒体を蒸発させることにより、発電機ハウジング19を介して熱交換する固定子21と作動媒体との温度差を大きくできる。このため、熱交換の能力が高く、冷却ジャケット23の伝熱面積を小さくできるため、冷却ジャケット23の構成が簡素化できる。
【0025】
発電装置1では、還流流路26が循環流路15の凝縮器13よりも下流側に接続される。その結果、分流流路、冷却ジャケットおよび還流流路を結ぶ経路に凝縮器が存在する発電装置に比べて、当該経路における作動媒体の流れが妨げられることが防止される。また、作動媒体の蒸発によって発電機16を冷却するので、冷却ジャケット23に挿通する作動媒体を少なくできる。このため、分流流路25に分流されることなく蒸発器10に供給されて、膨張機12を駆動する作動媒体の流量を大きく減少させることがない。このため、発電機16を駆動する動力が大きいので、発電量が大きい。つまり、本実施形態の発電装置1では、循環ポンプ14の容量に対する発電量が大きく、発電効率が高い。
【0026】
また、発電機ハウジング19は、膨張機ハウジング17と一体に接続されているため、発電機ハウジング19との間でも熱交換する。発電機ハウジング19は、蒸発器10から供給される作動媒体と熱交換するため、冷却ジャケット23における作動媒体の温度よりも高い温度になりやすい。このため、蒸発器10における作動媒体の蒸発温度が発電機16の適正温度範囲よりも高い場合には、発電機16の冷却がより重要となる。したがって、発電機ハウジング19と膨張機ハウジング17とが一体に接続されている場合には、減圧弁24で減圧することにより冷却効率を高めた効果が顕著となる。
【0027】
続いて、図2に、本発明の第2実施形態に係る発電装置1aの構成を示す。尚、以降の説明において、先に説明した実施形態の構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して、重複する説明を省略する。以下の実施形態においても同様である。本実施形態の発電装置1aは、分流流路25に設けた減圧器が、開度制御可能な制御弁27からなり、環流流路26には、作動媒体の温度を検知する感温筒28が設けられている。
【0028】
本実施形態において、感温筒28が検知した作動媒体の過熱度が0℃になるように、つまり作動媒体が飽和蒸気になるように、制御弁27の開度が制御される。その結果、冷却ジャケット23から流出した作動媒体が、湿り蒸気となる場合に比べて、冷却に必要な作動媒体の量を抑えることができ、また、作動媒体が過熱蒸気となる場合に比べて、効率よく発電機16を冷却することができる。このため、本実施形態では、膨張機12を駆動する作動媒体の流量が多く、発電効率をより向上することができる。尚、感温筒28は、必ずしも、還流流路26の循環ポンプ14近傍に設けられる必要はなく、他の位置に設けられてもよい。
【0029】
また、図3に示す本発明の第3実施形態に係る発電装置1bのように、分流流路25には、減圧器としてキャピラリチューブ29を設けてもよい。この実施形態では、発電装置をより安価に製造することができる。
【0030】
また、図4に示す本発明の第4実施形態に係る発電装置1cのように、発電機16に、その代表温度、例えば固定子21の温度を検出する発電機温度検出器30を設け、分流流路25に、制御部31により発電機温度検出器30の検出温度に基づいて開閉が制御される開閉弁32を設けてもよい。この構成では、発電機16の温度が低いときには、開閉弁32が閉じられて循環ポンプ14が吐出した作動媒体を分流流路25に分流しないので膨張機12を駆動する作動媒体の流量が多くなり、冷温時の発電効率をさらに高められる。
【符号の説明】
【0031】
1,1a,1b,1c…発電装置
11…蒸発器
12…スクリュ膨張機
13…凝縮器
14…循環ポンプ
15…循環流路
16…発電機
17…膨張機ハウジング
18…スクリュロータ
19…発電機ハウジング
20…発電機室
21…固定子
22…回転子
23…冷却ジャケット
24…減圧弁(減圧器)
25…分流流路
26…環流流路
27…制御弁(減圧器)
28…感温筒
29…キャピラリチューブ(減圧器)
30…発電機温度検出器
31…制御部
32…開閉弁
図1
図2
図3
図4