特許第5793451号(P5793451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5793451-差圧センサ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793451
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】差圧センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 13/02 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   G01L13/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-47825(P2012-47825)
(22)【出願日】2012年3月5日
(65)【公開番号】特開2013-181951(P2013-181951A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】高井 宗則
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−170851(JP,A)
【文献】 特開平05−060639(JP,A)
【文献】 特開昭55−001508(JP,A)
【文献】 特開昭57−108725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 13/02
G01L 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通路を有する隔壁によって区画された第1の空間と第2の空間とを有するボディと、
前記第1の空間の開口部に設けられた第1の受圧ダイアフラムと、
前記第2の空間の開口部に設けられた第2の受圧ダイアフラムと、
一方の面および他方の面に受ける圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムを備え、前記センサダイアフラムの一方の面を前記第1の受圧ダイアフラムに臨むようにして、前記センサダイアフラムの他方の面に通ずる連通路を前記隔壁の貫通路に連通させるようにして、前記第1の空間側に位置する前記隔壁の壁面に接合されたセンサチップと、
前記第1の空間に封止され、前記第1の受圧ダイアフラムが受けた圧力を前記センサダイアフラムの一方の面に伝達する第1の圧力伝達媒体と、
前記第2の空間および前記隔壁の貫通路および前記センサダイアフラムの他方の面に通ずる連通路に封止され、前記第2の受圧ダイアフラムが受けた圧力を前記センサダイアフラムの他方の面に伝達する第2の圧力伝達媒体とを備え、
前記第1の圧力伝達媒体の封止圧が前記第2の圧力伝達媒体の封止圧よりも高くされている
ことを特徴とする差圧センサ。
【請求項2】
請求項1に記載された差圧センサにおいて、
前記センサチップは、
前記センサダイアフラムと、筒状の台座とを備え、
前記台座の一方の端面が前記センサダイアフラムの他方の面側に接合され、
前記台座の他方の端面が前記隔壁の壁面に接合されている
ことを特徴とする差圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、封入液として圧力伝達用媒体を封止した封入液封止型の差圧センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、差圧センサとしては種々のタイプのものがあるが、その中に封入液として圧力伝達用媒体を封止した封入液封止型の差圧センサがある(例えば、特許文献1参照)。この封入液封止型の差圧センサにおいて、圧力伝達用媒体としては、シリコーンオイル等の非圧縮性流体が用いられる。図3に従来の封入液封止型の差圧センサの一例の要部の断面図を示す。
【0003】
図3において、1は金属製のボディであり、内部空間として、隔壁1−1によって区画された第1の空間1−2と第2の空間1−3とを有している。隔壁1−1には第1の空間1−2と第2の空間1−3とを連通する貫通路1−4が設けられている。第1の空間1−2の開口部1−2aには第1の金属ダイアフラム(第1の受圧ダイアフラム)2−1が設けられており、第2の空間1−3の開口部1−3aには第2の金属ダイアフラム(第2の受圧ダイアフラム)2−2が設けられている。
【0004】
3はセンサチップであり、センサダイアフラム3−1と、台座3−2とから構成されている。センサダイアフラム3−1はシリコンなどから成り、台座3−2はシリコンやガラスなどから成る。センサダイアフラム3−1はその中央部が薄肉状とされており、その一方の面3−1aに対する他方の面3−1bに凹部3−1cが形成され、この凹部3−1cが形成された他方の面3−1c側に台座3−2の一方の端面3−2aが接合されている。台座3−2は筒状とされており、その中空部3−2cとセンサダイアフラム3−1の凹部3−1cとによって、センサダイアフラム3−1の他方の面3−1bに通ずる連通路3−3が形成されている。
【0005】
センサチップ3は、センサダイアフラム3−1の一方の面3−1aを第1の受圧ダイアフラム2−1に臨むようにして、センサダイアフラム3−1の他方の面3−1bに通ずる連通路3−3を隔壁1−1の貫通路1−4に連通させるようにして、第1の空間1−2側に位置する隔壁1−1の壁面1−1aに接合されている。すなわち、台座3−2の中空部3−2cを隔壁1−1の貫通路1−4に連通させるようにして、台座3−2の他方の端面3−2bを隔壁1−1の壁面1−1aに接合させている。以下、台座3−2と隔壁1−1との接合部を第1の接合部4−1とし、台座3−2とセンサダイアフラム3−1との接合部を第2の接合部4−2とする。
【0006】
ボディ1には、第1の空間1−2を第1の封入室6−1として、第1の圧力伝達用媒体5−1が封止されている。また、第2の空間1−3および隔壁1−1の貫通路1−4およびセンサダイアフラム3−1の他方の面3−1bに通ずる連通路3−3を第2の封入室6−2として、第2の圧力伝達用媒体5−2が封止されている。この第1の封入室6−1への第1の圧力伝達用媒体5−1の封止および第2の封入室6−2への第2の圧力伝達用媒体5−2の封止は、どちらも同じ条件(大気圧下)で行われており、第1の圧力伝達用媒体5−1および第2の圧力伝達用媒体5−2の封止圧は等しくされている。
【0007】
この封入液封止型の差圧センサ100では、第1の受圧ダイアフラム2−1が受けた圧力P1が第1の圧力伝達用媒体5−1を介してセンサダイアフラム3−1の一方の面3−1aに伝達され、第2の受圧ダイアフラム2−2が受けた圧力P2が第2の圧力伝達用媒体5−2を介してセンサダイアフラム3−1の他方の面3−1bに伝達される。その結果、センサダイアフラム3−1が圧力P1とP2との圧力差に応じて撓み、その圧力差に応じた信号がセンサダイアフラム3−1から出力される。センサダイアフラム3−1には、圧力差に応じた信号を出力するための構成として、圧力変化に応じて抵抗値が変化する歪抵抗ゲージが形成されている。
【0008】
この差圧センサ100は、例えば、圧力P1を受ける第1の受圧ダイアフラム2−1側を高圧側、圧力P1を受ける第2の受圧ダイアフラム2−2側を低圧側とした場合、低圧側に高圧側より高い圧力(逆圧)が加わると、壊れやすいという弱点を有している。
【0009】
すなわち、この差圧センサ100では、高圧側に低圧側より高い圧力が加えられた場合には、センサチップ3の第1の接合部4−1(台座3−2と隔壁1−1との接合部(高圧側・低圧側境界部))や第2の接合部4−2(台座3−2とセンサダイアフラム3−1との接合部(高圧側・低圧側境界部))を押し付ける状態となるので耐圧性が高いが、低圧側に高圧側より高い圧力(逆圧)が加えられた場合には、センサチップ3の接合部4−1や4−2が剥離される方向に力がかかる状態となるため、壊れやすくなる。
【0010】
このため、通常、圧力P1を受ける第1の受圧ダイアフラム2−1側を高圧側、圧力P2を受ける第2の受圧ダイアフラム2−2側を低圧側として定めて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平1−241193号公報(特許第2595749号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、このような構造の差圧センサ100では、圧力P1と圧力P2との高低関係が逆転しうるような場合や、圧力P1と圧力P2との高低関係は逆転しないが、第1の受圧ダイアフラム2−1側を低圧側、第2の受圧ダイアフラム2−2側を高圧側として誤って選択してしまうこともあり、高圧側・低圧側を定めただけでは、センサチップの接合部の剥離が生じ易いという弱点を解消することはできない。
【0013】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、センサチップの接合部の剥離が生じ難い差圧センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために本発明は、貫通路を有する隔壁によって区画された第1の空間と第2の空間とを有するボディと、第1の空間の開口部に設けられた第1の受圧ダイアフラムと、第2の空間の開口部に設けられた第2の受圧ダイアフラムと、一方の面および他方の面に受ける圧力差に応じた信号を出力するセンサダイアフラムを備え、センサダイアフラムの一方の面を第1の受圧ダイアフラムに臨むようにして、センサダイアフラムの他方の面に通ずる連通路を隔壁の貫通路に連通させるようにして、第1の空間側に位置する隔壁の壁面に接合されたセンサチップと、第1の空間に封止され、第1の受圧ダイアフラムが受けた圧力をセンサダイアフラムの一方の面に伝達する第1の圧力伝達用媒体と、第2の空間および隔壁の貫通路およびセンサダイアフラムの他方の面に通ずる連通路に封止され、第2の受圧ダイアフラムが受けた圧力をセンサダイアフラムの他方の面に伝達する第2の圧力伝達用媒体とを備えた差圧センサにおいて、第1の圧力伝達用媒体の封止圧を第2の圧力伝達用媒体の封止圧よりも高くしたものである。
【0015】
この発明によれば、第1の圧力伝達用媒体の封止圧が第2の圧力伝達用媒体の封止圧よりも高いので、第1の圧力伝達用媒体の封止圧と第2の圧力伝達用媒体の封止圧との差圧が常にセンサチップの接合部を押し付ける方向に作用するものとなる。すなわち、従来の差圧センサでは、第1の圧力伝達用媒体の封止圧と第2の圧力伝達用媒体の封止圧とが同じなので、逆圧が加わった場合、その圧力をセンサチップの接合部がそのまま受けることになる。これに対して、本発明では、第1の圧力伝達用媒体の封止圧を第2の圧力伝達用媒体の封止圧よりも高くしているので、第1の圧力伝達用媒体の封止圧と第2の圧力伝達用媒体の封止圧との差圧が逆圧を軽減する方向に作用するものとなる。これにより、逆圧のダメージが軽減され、センサチップの接合部の剥離が生じ難くなる。
【0016】
本発明において、第1の圧力伝達用媒体の封止圧と第2の圧力伝達用媒体の封止圧との圧力差(封止圧差)は、逆圧として加わる可能性のある最大差圧とセンサチップの接合部の接合力との関係で定めるようにするとよい。すなわち、最大差圧が逆圧で加わった場合にセンサチップの接合部の接合力がそれに耐えられるだけの圧力差で、第1の圧力伝達用媒体と第2の圧力伝達用媒体を封止するようにするとよい。
【0017】
なお、本発明において、センサチップは、センサダイアフラムを備えていればよく、必ずしもセンサダイアフラムと台座とを備えた構成でなくてもよい。センサチップをセンサダイアフラムと台座とを備えた構成とした場合、センサチップの接合部は、台座の一方の端面とセンサダイアフラムの他方の面側との接合部と、台座の他方の端面と隔壁の壁面との接合部の2箇所となる。センサチップをセンサダイアフラムのみの構成とした場合、センサチップの接合部は、隔壁の壁面とセンサダイアフラムの他方の面側との接合部の1箇所となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1の圧力伝達用媒体の封止圧を第2の圧力伝達用媒体の封止圧よりも高くしたので、第1の圧力伝達用媒体の封止圧と第2の圧力伝達用媒体の封止圧との差圧が常にセンサチップの接合部を押し付ける方向に作用するものとなり、逆圧のダメージが軽減され、センサチップの接合部の剥離が生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る差圧センサの一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す断面図である。
図2】本発明に係る差圧センサの他の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す断面図である。
図3】従来の封入液封止型の差圧センサの一例の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1はこの発明に係る差圧センサの一実施の形態(実施の形態1)の要部を示す断面図である。同図において、図3と同一符号は図3を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0021】
この実施の形態1の差圧センサにおいて、第1の封入室6−1に封止された第1の圧力伝達用媒体5−1の封止圧は、第2の封入室6−2に封止された第2の圧力伝達用媒体5−2の封止圧よりも高くされている。この第1の圧力伝達用媒体5−1の封止圧を第2の圧力伝達用媒体5−2の封止圧よりも高くした差圧センサを図3に示した差圧センサ100と区別するために符号200で示す。
【0022】
この差圧センサ200では、第1の圧力伝達用媒体5−1の封止圧が第2の圧力伝達用媒体5−2の封止圧よりも高いので、第1の圧力伝達用媒体5−1の封止圧と第2の圧力伝達用媒体5−2の封止圧との差圧が常にセンサチップ3の接合部4−1,4−2を押し付ける方向に作用するものとなる。
【0023】
すなわち、従来の差圧センサ100では、第1の圧力伝達用媒体5−1の封止圧と第2の圧力伝達用媒体5−2の封止圧とが同じなので、逆圧が加わった場合、その圧力をセンサチップ3の接合部4−1,4−2がそのまま受けることになる。
【0024】
これに対して、この差圧センサ200では、第1の圧力伝達用媒体5−1の封止圧を第2の圧力伝達用媒体5−2の封止圧よりも高くしているので、第1の圧力伝達用媒体5−1の封止圧と第2の圧力伝達用媒体5−2の封止圧との差圧が逆圧を軽減する方向に作用するものとなる。これにより、逆圧のダメージが軽減され、センサチップ3の接合部4−1,4−2の剥離が生じ難くなる。
【0025】
なお、この差圧センサ200において、第1の圧力伝達用媒体5−1の封止圧と第2の圧力伝達用媒体5−2の封止圧との圧力差(封止圧差)は、逆圧として加わる可能性のある最大差圧とセンサチップ3の接合部4−1,4−2の接合力との関係で定められている。すなわち、最大差圧が逆圧で加わった場合にセンサチップ3の接合部4−1,4−2の接合力がそれに耐えられるだけの圧力差で、第1の圧力伝達用媒体5−1と第2の圧力伝達用媒体5−2を封止している。
【0026】
また、この差圧センサ200では、センサダイアフラム3−1と台座3−2とを合わせた構成をセンサチップ3としたが、図2に示すように、台座3−2を省略し、センサダイアフラム3−1をセンサチップ3として、隔壁1−1の壁面1−1aに接合するようにした構成(実施の形態2)としてもよい。この差圧センサ300では、センサダイアフラム3−1の凹部3−1cがセンサダイアフラム3−1の他方の面3−1bに通ずる連通路3−3となる。また、センサチップ3の接合部は、ダイアフラム3−1の他方の面3−1b側と隔壁1−1の壁面1−1aとの接合部4−1の1箇所のみとなる。
【0027】
また、この差圧センサ200では、センサダイアフラム3−1を圧力変化に応じて抵抗値が変化する歪抵抗ゲージを形成したタイプとしているが、静電容量式のセンサチップとしてもよい。静電容量式のセンサチップは、所定の空間(容量室)を備えた基板と、その基板の空間上に配置されたダイアフラムと、基板に形成された固定電極と、ダイアフラムに形成された可動電極とを備えている。ダイアフラムが圧力を受けて変形することで、可動電極と固定電極との間隔が変化してその間の静電容量が変化する。
【0028】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…ボディ、1−1…隔壁、1−1a…壁面、1−2…第1の空間、1−3…第2の空間、1−4…貫通路、2−1…第1の受圧ダイアフラム、2−2…第2の受圧ダイアフラム、3…センサチップ、3−1…センサダイアフラム、3−1a…一方の面、3−1b…他方の面、3−1c…凹部、3−2…台座、3−3…連通路、4−1…第1の接合部、4−2…第2の接合部、5−1…第1の圧力伝達用媒体、5−2…第2の圧力伝達用媒体、6−1…第1の封入室、6−2…第2の封入室、200,300…差圧センサ。
図1
図2
図3