(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軸部材に磁石または磁性体が設けられ、前記軸部材に磁石が設けられる場合は、前記軸受部材には、前記軸部材と吸引しあう磁石または磁性体が設けられてなることを特徴とする請求項1記載の扉開閉構造。
前記軸部材に磁石または磁性体が設けられ、前記軸部材に磁性体が設けられる場合は、前記軸受部材には、前記磁性体と吸引しあう磁石が設けられてなることを特徴とする請求項1記載の扉開閉構造。
前記軸部材が、扉の下端面に形成された取付穴に埋設されると共に前記軸部材を外側から保護する軸部材側ハウジングを備え、該軸部材側ハウジングが、軸部材の先端が突出するように磁石または磁性体を収容する軸部材側収容凹部と、前記軸部材側鍔部とを備え、前記軸受部材が、扉の取付け対象体に形成された取付穴に埋設されると共に前記軸受部材を外側から保護する軸受部材側ハウジングを備え、該軸受部材側ハウジングが、前記軸受部材の磁石または磁性体を収容する軸受部材側収容凹部と、前記軸受部材側鍔部とを備え
ることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の扉開閉構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の扉開閉構造の場合、2つの軸部材が磁石の吸引力で互いに接触し、扉の取付け対象体からの取り外しが可能である点で優れているが、磁石同士が接触しているため、場合によっては互いにこすれあって、磁石の表面や磁性体の表面に削れや破損が生じるおそれがあった。
【0005】
また、特許文献1の扉開閉構造は、扉の取り外しを容易にしたものであるが、扉の開閉時に、扉を扉の取り付け対象体から外れにくくしたい場合がある。この場合、公知の構造として、
図9の、箱状の家具Fの扉開閉構造の概略説明図に示すような、扉101の上端面101aおよび下端面101bに設けられた軸部材102a、102bを、扉101の取付け対象体である天板103および地板104にそれぞれ形成した差込み凹部(天板差込み凹部105a、地板差込み凹部105b)に深く差し込むことにより、扉101を取り付け対象体である天板103や地板104に取り付けるものがある。
【0006】
しかし、このような構成であると、扉101の取り外し時に、扉101の下端面101bに設けた軸部材102bが地板104の地板差込み凹部105bに嵌り込む深さL1と同じ長さL4分だけ、扉101を
図7中に二点鎖線で示した状態まで上方にずらすことで、軸部材102bを地板104に対して上方向にずらして、軸部材102bの先端が地板104の上端面104aよりも上方になるようにした後に、取り外さなければならならない。そのため、扉101の上端面101aと天板103の下端面103aとの間に、L4と同じか、またはそれ以上の上下方向寸法L3を有する隙間CL1を確保しなければならない。また、天板差込み凹部105aに扉101の上端面101aの軸部材102aが差し込まれた状態で、軸部材102aが上方に移動できなければならない。したがって、天板差込み凹部105aの底面115と軸部材102aの先端との間に、扉101を上方にずらす長さ(L1、L4)と同じか、またはそれ以上の上下方向寸法L2を有する差込み凹部側の隙間CL2を確保しなければならない。そのため、従来の構造では、扉の天板103と扉の上端面101aとの間に、大きな隙間が開いてしまったり、扉の天板103を厚くしなければならないという問題がある。
【0007】
一方で、軸部材102a、102bの長さを短くすれば、隙間CL1や差込み凹部側の隙間CL2は小さくできるが、軸部材102a、102bの天板差込み凹部105aや地板差込み凹部105bへの嵌まり込む寸法も小さくなるため、軸部材102a、102bが天板差込み凹部105aや地板差込み凹部105bから外れやすくなってしまう。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、軸回りに回転する扉を、磁力により安定して停止させること、磁力を発生させるために磁石や磁性体を使用した場合に、磁石同士や磁石と磁性体との間で摩擦が生じて、磁石表面や磁性体表面が摩擦により削れたり破損したりするのを防止すること、扉を磁力により外れにくくすることができる扉の開閉構造を提供することを目的とする。また、扉の取り付け対象体に嵌まり込む軸部材の長さを短くしたとしても、扉を外れにくくすることが可能である扉開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の扉開閉構造は、軸部材と、該軸部材が回転可能に挿入される凹部を有する軸受部材とにより扉を開閉させる扉開閉構造であって、前記軸受部材は、前記凹部の開口縁に軸受部材側鍔部を有し、前記軸部材は、前記軸受部材側鍔部と当接し、扉の開閉に伴い、前記軸受部材側鍔部に対して摺動して回転する軸部材側鍔部を有し、前記凹部に挿入される前記軸部材の凸部の先端と、前記軸受部材の凹部の底面とが非接触の状態で磁力により互いに吸引されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の扉開閉構造は、前記軸部材に磁石または磁性体が設けられ、前記軸部材に磁石が設けられる場合は、前記軸受部材には、前記軸部材と吸引しあう磁石または磁性体が設けられてなるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の扉開閉構造は、前記軸部材に磁石または磁性体が設けられ、前記軸部材に磁性体が設けられる場合は、前記軸受部材には、前記磁性体と吸引しあう磁石が設けられてなるのが好ましい。
【0012】
また、本発明の扉開閉構造は、前記軸部材が扉の下端面に設けられ、前記軸受部材が扉の取付け対象体に設けられるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の扉開閉構造は、前記軸部材が、扉の下端面に形成された取付穴に埋設される軸部材側ハウジングを備え、該軸部材側ハウジングが、軸部材の先端が突出するように前記磁石または磁性体を収容する軸部材側収容凹部と、前記軸部材側鍔部とを備え、前記軸受部材が、扉の取付け対象体に形成された取付穴に埋設されると共に前記軸受部材を外側から保護する軸受部材側ハウジングを備え、該軸受部材側ハウジングが、前記軸受部材の磁石または磁性体を収容する軸受部材側収容凹部と、前記軸受部材側鍔部とを備えるのが好ましい。
【0014】
また、本発明の扉開閉構造は、前記軸部材側鍔部と前記軸受部材側鍔部との間に、摺動具合を調整するための介装部材が配設されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の扉開閉構造は、軸受部材の凹部に挿入される軸部材の凸部の先端と、軸受部材の凹部の底面とを非接触の状態で磁力により互いに吸引させるため、たとえば扉が閉まった状態など、所定の位置で安定して扉を停止することができる。また、軸部材側鍔部と軸受部材側鍔部とにより、凹部に挿入される軸部材の先端と、軸受部材の凹部の底面とが非接触の状態となるため、磁石同士や磁石と磁性体との間で摩擦が生じることがなく、磁石表面や磁性体表面が摩擦により削れたり破損したりするのを防止できる。また、削れカスなどによる軸部の故障を防止できる。
【0016】
また、磁力により扉の軸部材と、軸受部材の凹部とが吸引されるので、凹部に嵌まり込む磁石または磁性体の突出部が嵌まり込む深さを浅くしても、扉を外れにくくすることができる。また、扉を外れにくくしつつ、軸部材が軸受部材の凹部に嵌まり込む深さを浅くできるので、扉を外すときに必要な扉上部側の、扉と取付け対象体側との間の隙間を狭くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について、
図1〜
図8を参照して説明する。
【0019】
図1に本発明の扉開閉構造を備えた第1の実施形態にかかる家具を示す。なお、以下の実施形態においては、家具を例示して説明するが、本発明の扉開閉構造を備えたものであれば、取り付ける対象は家具に限定されることはなく、箱、建物、あるいは電子機器等、扉を備えたあらゆる扉取り付け対象体に適用が可能である。
図1に示すように、家具F1は、天板3と地板4を有し、三方が背面板5と2つの側板6で覆われ、前面が開口した箱形状の木製の構造体である。開口した前面には、開口を観音開き式に開閉する左右一対の扉1a、1bが取り付けられている。
【0020】
扉1a、1bは、木製で縦長の略長方形板状体に成形されており、一端が図中点線で示すように、扉開閉構造S1、S2を介して家具F1の天板3と地板4に回動自在に取り付けられている。家具F1は、木製に限らず、合成樹脂製、アルミニウム製等の非磁性体材料等とすることができるが、本発明の目的を逸脱しない範囲で、家具F1の材料は特に限定されない。以下、扉開閉構造について、扉1a、1bと地板4との間に設けた扉開閉構造をS1とし、扉1a、1bと天板3との間に設けた扉開閉構造をS2とし、扉1aと地板4との間に設けられた扉開閉構造S1を例に挙げて
図2〜
図4を参照して詳説する。
【0021】
扉開閉構造S1は、扉1aに設けられた
図2に示す軸部材11と、この軸部材11が回転可能に挿入される凹部27(
図3参照)を有し、地板4に設けられた
図3に示す軸受部材21とにより扉1aを開閉させるものであり、地板4に設けられた軸受部材21側の凹部27(
図3参照)に、
図2に示す軸部材11の凸部(
図2に参照符号16で示す磁石)の先端を挿入することにより扉1aが取り付けられる。なお、
図2〜
図4において、扉1a、底板4、軸部材11および軸受部材21の図中左側は断面図として示し、軸部材11および軸受部材21の図中右側は正面図として示している。
【0022】
軸部材11は、
図2に示すように、扉1aの下端面12側に開口する凹状の取付穴31が形成されている。この取付穴31に軸部材11が直接、または間接に埋設される。本実施の形態では、軸部材11は、後述する軸部材側ハウジング13を介して取付穴31に埋設されているが、軸部材11を直接取付穴31に埋設してもよい。この埋設手段としては、嵌合、ピン、ネジ、接着剤等の周知の技術を採用できる。なお、軸部材11は、本実施形態のように、扉1aの下端面12の取付穴31に埋設するものに限られず、扉1aの下端面12から下側に突出するものであれば特に限定されるものではない。例えば、軸部材11は、取付穴31が設けられていない扉1aの下端面12に扉1aと一体或いは別体として突出させたものであってもよい。
【0023】
本実施形態では、軸部材11は、扉1aの下端面12に形成された取付穴31に埋設されると共に軸部材11を外側から保護する軸部材側ハウジング13を備えている。軸部材側ハウジング13は、軸部材11の先端が扉1aの下端面12から突出するように磁石または磁性体(軸部材11の凸部)を収容する軸部材側収容凹部14と、扉1aの下端面12上で、取付穴31の周縁に係合すると共に、
図4に示すように、後述する軸受部材側鍔部25と当接する軸部材側鍔部15とを有する。軸部材側鍔部15は、扉1aの開閉に伴い、軸受部材側鍔部25に対して摺動して回転する。
図2に示すように、軸部材側収容凹部14には、磁石または磁性体が嵌め込みにより設けられている(本実施形態では磁石16)。
【0024】
軸部材側ハウジング13は、
図2に示すように、磁石16が突出する開口部の外周縁に軸部材側鍔部15を有した、有底の略円筒状の部材である。なお、ここでいう「有底」とは、少なくとも部分的に底を有していればよく、孔や切り欠きが形成されたものも含む。軸部材側収容凹部14は、挿入される磁石16とほぼ同径かそれよりもわずかに大きく形成されている。軸部材側ハウジング13の外周側面は、
図2に示すように軸部材側ハウジング13の軸方向(
図2中、上下方向)に複数の段部13aを有している。段部13aはそれぞれ、軸部材側ハウジング13の先端側(
図2中、上の端部)に向かって縮径するようにテーパ状に形成されている。この段部13aを設けることにより、軸部材側ハウジング13を挿入するときは、軸部材側ハウジング13を取付穴31に押し込むことにより、段部13aが取付穴31の内壁と当接して、わずかに変形するため、挿入しやすくなっており、逆に軸部材側ハウジング13の取り付け後は、段部13aが返しとなることによって、軸部材側ハウジング13が外れにくくなっている。
【0025】
軸部材側鍔部15は、軸部材側ハウジング13の開口部の外周縁から、軸部材側ハウジング13の軸方向に対して略垂直方向外側に突出した部位である。軸部材側鍔部15は、円環状であってもよいし、矩形枠状に形成されていてもよい。なお、
図2では、軸部材側鍔部15は軸部材側ハウジング13から一体的に延びたものを示しているが、軸部材側鍔部15は、軸部材側ハウジング13と一体である必要はなく、別体であってもよい。例えば、ワッシャのような、円環状の軸部材側鍔部15を、扉1aの下端面12の取付穴31における開口縁に軸部材側ハウジング13とは別部材として設けるようにすることもできる。なお、本実施形態では、軸部材11は、軸部材側ハウジング13を有したものを示しているが、後述するように、軸部材11の凸部(磁石16)の先端と、軸部材11の凸部(磁石16)の先端が挿入される軸受部材21の凹部27の底面26a(
図3参照)とを非接触の状態で保持し、磁力により互いに吸引させることができるのであれば、軸部材側ハウジング13は必ずしも必要ではない。
【0026】
次に、軸受部材21について、
図3を参照して説明する。軸受部材21は、扉1aの取付け対象体である地板4の上端面22で開口する凹状の取付穴41に埋設されている。埋設手段としては、軸部材11と同様、嵌合、ピン、ネジ、接着剤等の周知の技術を採用できる。
【0027】
本実施形態では、軸受部材21は、地板4の表面に形成された取付穴41に埋設されると共に軸受部材21を外側から保護する軸受部材側ハウジング23を備えている。軸受部材側ハウジング23は、地板4の上端面22側で開口し、磁石または磁性体を収容する軸受部材側収容凹部24と、軸受部材側収容凹部24に嵌めこまれて設けられ、軸部材11の磁石16と吸引しあうように異なる極性が向かい合うように配置された磁石または磁石16に吸引される磁性体(本実施形態では磁石26)とを備える。軸受部材21には、磁石26を軸受部材側収容凹部24内に取り付けた後、軸部材11の先端部を挿入するための凹部27が形成されている。したがって、磁石26の上端面26aは、軸受部材21の上端面(ここでは、軸受部材側ハウジング23の上端面23b)から突出せず、磁石の上端面26aと軸受部材21の上端面との間に空間が形成されるように、磁石26を設けるようにしている。軸受部材側ハウジング23に磁石を取り付けた後は、軸受部材側ハウジング23の内壁と磁石26の上端面26aとで凹部27が形成され、磁石26の上端面26aが、軸受部材21の凹部27の底面をなしている(以下、磁石26の上端面26aを「凹部27の底面26a」とする)。凹部27の開口縁には、軸受部材側ハウジング23から軸受部材側ハウジング23の軸方向に対して略垂直方向外側に突出した軸受部材側鍔部25を有する。軸受部材側鍔部25は、地板4の取付穴41の開口縁と係合し、
図4に示すように、軸部材側鍔部15と当接し、扉1aの開閉に伴い、軸部材側鍔部15に対して摺動して回転する。なお、軸部材11の軸部材側収容凹部14に収容する磁石16を磁性体に代えた場合、軸受部材21の軸受部材側収容凹部24に収容するのは、磁石にする必要がある。
【0028】
軸受部材側ハウジング23は、
図3に示すように、上方に開口した開口部の外周縁に軸受部材側鍔部25を有した、有底の略円筒状の部材である。軸受部材側収容凹部24は、挿入される磁石26とほぼ同径かそれよりもわずかに大きく形成されている。軸受部材側ハウジング23の外周側面は、
図2に示す軸部材側ハウジング13と同様に、軸受部材側ハウジング23の軸方向(
図3中、上下方向)に複数の段部23aを有している。この複数の段部23aにより、軸受部材側ハウジング23の取り付けが容易で、軸受部材側ハウジング23が外れにくくなる。
【0029】
軸受部材側鍔部25は、軸部材側鍔部15と同様の形状をしていればよいが、異なる形状、大きさとしてもよい。なお、
図3では、軸受部材側鍔部25は軸受部材側ハウジング23から一体的に延びたものを示しているが、軸受部材側鍔部25は、軸受部材側ハウジング23と一体である必要はなく、別体であってもよい。なお、本実施形態では、軸受部材21は、軸受部材側ハウジング23を有したものを示しているが、軸部材11の先端と、軸部材11が挿入される軸受部材21の凹部27の底面26a(
図3参照)とを非接触の状態で保持し、磁力により互いに吸引させることができるのであれば、軸受部材側ハウジング23は必ずしも必要ではない。ここで、「凹部」は、本実施形態では、軸受部材側ハウジング23の内壁と磁石26の上端面26aとで構成しているが、軸部材11を回転可能に収容できれば特に限定されない。たとえば、軸受部材側ハウジング23を用いずに、地板4の取付穴41に直接磁石または磁性体を入れたあとの空間を凹部27としてもよい。
【0030】
以上の構成により、本実施形態の扉開閉構造S1は、
図4に示すように、軸部材側鍔部15と軸受部材側鍔部25とを当接させ、かつ、扉1aの開閉に伴い、軸部材側鍔部15が軸受部材側鍔部25に対して摺動して回転するようにしている。また、
図2および
図3に示すように、軸部材11の先端(
図2では、磁石16の先端)が、軸部材側鍔部15の端面から突出する長さH1は、凹部27の深さH2(
図2では、軸受部材側鍔部25の端面25aから、軸受部材21の凹部27の底面26aまでの長さ)よりも短くされている。そのため、
図4に示すように、軸部材11の磁石16(凸部)の先端と軸受部材21の凹部27の底面26aとの間に空間Pが形成され、軸部材11の先端面16a(軸部材11の磁石16の先端面)と軸受部材21の凹部27の底面26a(軸受部材21の磁石26の上端面)とを、非接触の状態で、磁力により互いに吸引された状態になっている。
【0031】
このように、軸受部材21の凹部27に挿入される軸部材11の先端と軸受部材21の凹部27の底面26aとを、空間Pにより、非接触の状態で磁力により互いに吸引された状態としているため、
図4に示すように、軸部材11の磁石16の先端面(軸部材11の磁石16の先端面16a)や、軸受部材の磁石26の上端面(凹部27の底面26a)には、摩擦による削れ等が生じることがない。また、磁石16、26の削れカスなどによる軸部(扉開閉構造S1)の故障を防止できる。なお、空間Pの間隔H3は、磁石16、26の磁力が互いに及ぶ程度の間隔で特に限定されないが、磁力による吸着力を強めるために短い方がよく、0より大きく1.0mm以下であることが好ましい。
【0032】
また、軸部材11の磁石16は、軸受部材21の凹部27(
図3を参照)に挿入された状態で、軸受部材21の軸受部材側収容凹部24に設けた磁石26により吸引される。したがって、磁石を用いない単なる軸部材と軸受部材を用いた場合と比較して、磁石同士の吸着力により、回転する扉1a、1bの位置をその場で保持しようとする力が強くなる。したがって、家具F1などが傾いた場所などに設けられた場合、磁石を用いない単なる軸部材と軸受部材を用いた扉開閉構造の場合は、扉が傾いた方向に動いてしまう場合があるが、本発明によれば、扉1a、1bが閉まった状態で安定して扉1a、1bを停止させることができる。
【0033】
また、軸部材11の軸部材側収容凹部14(
図2を参照)に設けた磁石16と軸受部材21の軸受部材側収容凹部24の凹部27(
図3を参照)に設けた磁石26との間で生じる磁力、および、軸部材11の磁石16の先端(軸部材11の凸部の先端)を軸受部材21の凹部27に挿入する構成により、軸部材11に加わる横方向の力は、軸部材11が凹部27に挿入されていることにより、扉1aが外れることを防止することができるとともに、扉1aに上下方向に加わる力については、軸部材11と軸受部材21との間に働く磁力による吸着力によって、扉1aが外れることを防止することができる。
【0034】
さらに、軸部材11の軸部材側収容凹部14に設けた磁石16と軸受部材21の軸受部材側収容凹部24に設けた磁石26との間で生じる磁力により軸部材11が外れにくくなっているため、軸部材11が、軸受部材21の凹部27に嵌まり込む深さ(
図2、
図4のH1参照)を、磁石を用いない従来の扉開閉構造(
図7を参照)よりも浅くすることができる。そのため、扉1aを外すときに必要な、扉1aと取付け対象体である天板3(
図1参照)の間の隙間の上下方向寸法を、従来の磁石を用いない扉開閉構造で必要な寸法(
図7でいう上下方向寸法L3の隙間)に比べて狭くすることができる。したがって、扉1aと天板3との間に、美観を損なう不必要な隙間が開くことがなく、家具等の外観を良くすることができる。
【0035】
なお、扉1bの構成は、扉1aの構成と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0036】
次に
図5、および、
図5のX−X線断面図である
図6を参照して、本発明の扉開閉構造を備えた第2の実施形態にかかる家具を示す。本実施形態は、扉1a、1bの取付け方法以外は基本的な構成は
図1〜
図4に示す第1の実施形態と同じであるため、
図1に示す第1の実施形態と同じ部位、機能、形態については同じ符号を付して説明を省略し、以下では、
図1に第1の実施形態と相違する点についてのみ説明する。
【0037】
図5および
図6に示すように、第2の実施形態にかかる家具F2は、家具F2の側板6の開口側端面6aの上下方向中央部位に切欠き凹部50を有し、この切欠き凹部50に、扉1aの固定端面61に形成された取付け凸部62が挿入されている。また、
図6に示すように、扉1aの取付け凸部62の上端面62aには、この上端面62aから上側へ突出するピン部材132が取付け凸部62と別体で設けられており、ピン部材132の一端は取付け凸部62の上端面62aに埋設されている(ピン部材132と取付け凸部62は一体にしてもよい)。また、取付け凸部62の下端面62bには、取付穴131が形成されており、この取付穴131に、
図2に示す軸部材11が設けられている。また、家具F2の側板6の切欠き凹部50の上壁面50aと下壁面50bに取付穴141a、141bが形成されており、取付穴141aには有底円筒状のハウジング33が嵌めこまれている。このハウジング33の内部へピン部材132の他端が嵌めこまれている。取付穴141bには、
図3に示す軸受部材21が設けられている。つまり、扉1aの取付け凸部62の下端面62bと側板6の切欠き凹部50の下壁面50bとの間に
図1および
図2に示したような扉開閉構造S1が形成されている。なお、切欠き凹部50と取付け凸部62の上下方向寸法の関係は、扉1aを取り付け、取り外しできるものであれば、特に限定されない。
【0038】
このような構成においても、扉開閉構造S1、S2は、
図1に示す第1の実施形態の場合と同じ作用および効果を奏する。
【0039】
図1に示す第1の実施形態、および
図5に示す第2の実施形態にかかる扉開閉構造は、
図7および
図8に示す第3の実施形態にかかる扉開閉構造で代用することが可能である。本実施形態では、
図7に示すように、軸部材側鍔部15と軸受部材側鍔部25との間に、扉の開閉のスムーズさを調整するために、環状の介装部材Rを配設している。この介装部材Rの高さH4は、軸部材11の軸部材側ハウジング13から突出させた磁石16の長さH1よりも短くなるように構成されている。環状の介装部材Rには、軸部材11の先端が挿通できるように、中央に貫通孔が形成されている。
【0040】
次に、介装部材Rを配設する方法について説明する。
図7に示すように、まず軸部材側ハウジング13から突出させた磁石16の先端を介装部材Rの一端側から挿入する。ここで、介装部材Rの高さH4を軸部材11の軸部材側ハウジング13から突出させた磁石16の長さH1よりも短くすることから、介装部材Rの他端側から磁石16の先端を突出させることができる。この突出部分を軸受部材11の凹部27に嵌合することにより、軸部材側鍔部15と軸受部材側鍔部25との間への介装部材Rの配設を完了させることができる。なお、軸部材側鍔部15と軸受部材側鍔部25との間に介装部材Rを配設した状態を示したのが
図8である。
【0041】
本実施形態では、介装部材Rにより、軸部材側鍔部15と軸受部材側鍔部25との摺動具合を調整することができる。例えば、軸部材側鍔部15と軸受部材側鍔部25とが過剰に摺動(滑り)するのを防止して、扉1a(
図1、
図5を参照)を任意の開放位置で保持するのを容易にしたい場合、軸部材側鍔部15を含んだ軸部材側ハウジング13および軸受部材側鍔部25を含んだ軸受部材側ハウジング23をナイロン、たとえばナイロン6やナイロン6,6で成形し、介装部材Rをエラストマーなどの弾性材料で成形することにより可能である。一方、軸部材側鍔部15と軸受部材側鍔部25との間の摺動を円滑にしたい場合は、介装部材Rにおいて、軸部材側鍔部15および軸受部材側鍔部25と対向する面に、滑りを良くするための材料、たとえばニッケルなどの鍍金、テフロン(登録商標)コーティングなどの合成樹脂からなる塗膜、ジュラコン(登録商標)などの硬質の合成樹脂やゴムからなるシート部材、木製の板状体、合成樹脂がコーティングされた紙、潤滑油などを設けることで可能である。なお、
図1〜4に示す第1の実施形態、および
図5〜6に示す第2の実施形態においても、上述のような摺動具合を調整するための材料を軸部材側鍔部15の軸受部材側鍔部25と当接する面、あるいは、軸受部材側鍔部25の軸部材側鍔部15と当接する面に設けてもよい。この場合、摺動具合を調整するための材料の厚さは、軸部材および軸受部材の吸引力を大幅に低下しない程度であれば良く、できるだけ薄い方が良く、2mm以下であるのが好ましい。また、シート部材や木製の板状体、コーティングされた紙は接着剤によって軸部材あるいは軸受部材に固定することができる。
【0042】
これまでに本発明の実施形態について説明したが、ここで挙げた実施形態はあくまで例示であり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0043】
軸部材側収容凹部14や軸受部材側収容凹部24に磁石16や磁石26を嵌め込む方法は特に限定されず、接着剤等、周知の固着手段を採用することができ、例えば、軸部材側収容凹部14あるいは軸受部材側収容凹部24に接着剤を注入した上で、軸部材側収容凹部14あるいは軸受部材側収容凹部24に磁石16あるいは磁石26を圧入することで嵌め込むことが可能である。また、磁石16あるいは磁石26は、フェライト磁石や、ネオジム系、サマリウム系の希土類磁石など、特に磁石の種類は限定されないが、扉1aを外れにくくするために、磁力の強い希土類磁石等の永久磁石を使用することが好ましい。
【0044】
また、本発明にかかる扉開閉構造を設ける場所は、ここで挙げた実施形態に限られることはなく、扉と、扉の取付け対象体との種々の取付け部に設けることができ、本発明にかかる扉開閉構造を設ける数も特に限定されることはない。
【0045】
また、ここで挙げた実施形態では、扉を扉の取付け対象体に吸引させる方法としては、磁石のみあるいは磁性体のみからなる部材を使用しているが、磁石あるいは磁性体を含む部材であってもよい。このような部材としては、例えば、磁石や磁性体を粒子状にして混合した合成樹脂からなる成形物が挙げられる。
【0046】
また、ここで挙げた実施形態では、軸部材側、軸受部材側の両方に磁石を用いたものを示したが、一方を磁石とすれば、他方を磁性体とすることにより、上記実施形態と同様の効果が得られる。磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケルの他、マルテンサイト系ステンレス鋼などの強磁性体を用いることができる。また、軸部材および軸受部材は、磁石のみまたは磁性体のみを収容したものに限定されず、軸部材および/または軸受部材自体が、磁石や磁性体を含む部材であっても良い。そのような部材として、たとえば磁石や磁性体を粒子状にして混合した合成樹脂からなる成形物があげられる。
【0047】
また、ここで挙げた実施形態では、扉と固定された家具の板(天板、側板、地板)との固定部分に本発明の扉開閉構造を適用することを例示しているが、これに限られることはなく、扉同士の取り付け部分にも本発明の扉開閉構造を適用することもできる。
【0048】
また、ここで挙げた実施形態では、扉が2枚の家具を例示しているが、扉の枚数は2枚に限定されず、3枚以上、あるいは1枚であってもよく、素材は、木製に限られず、非磁性体材料からなるものであれば良く、例えば、合成樹脂やアルミニウムを採用できる。また、扉の開閉については、観音開きに限られず、部分的な開閉や半開き状態も含む。
【0049】
また、ここで挙げた実施形態では、軸部材と軸受部材の軸心が垂直方向(
図1、
図5、
図6の上下方向)に伸び、軸部材が軸受部材に垂直方向に挿入される実施形態を例示しているが、軸部材と軸受部材の軸心が水平方向(左右方向)に伸び、軸部材が軸受部材に水平方向に挿入される場合においても本発明を適用することができる。
【0050】
さらに、本発明の扉開閉構造は、蝶番の軸受部分にも採用することができる。また、軸部材を設ける方法についても、本実施形態では、扉の端面に形成した軸部材側収容凹部に埋設するようにしているが、埋設する方法に限られず、扉の端面から突出させて外付けにすることもできる。
【0051】
また、
図1〜
図4に示す第1の実施形態では、扉1aの下端面12に
図2に示す軸部材11を設け、扉1aの取付け対象である地板4に
図3に示す軸受部材21を設けているが、この態様に限られることはなく、扉1aの下端面12に
図3に示す軸受部材21を設け、地板4に
図2に示す軸部材11を設けるようにしてもよい。
【0052】
また、
図5〜
図6に示す第2の実施形態では、扉1aの取付け凸部62の下端面62bに
図2に示す軸部材11を設け、家具F2の側板6の切欠き凹部50の下壁面50bに
図3に示す軸受部材21を設けているが、扉1aの取付け凸部62の下端面62bに
図3に示す軸受部材21を設け、家具F2の側板6の切欠き凹部50の下壁面50bに
図2に示す軸部材11を設けるようにしてもよい。
【0053】
また、
図6に示す第2の実施形態では、扉1aの固定端面61の取付け凸部62と家具F2の側板6の開口側端面6aに形成する切欠き凹部50をそれぞれ1つとしているが、扉1aの固定端面61における上下方向の複数個所に取付け凸部を設け、家具F2の側板6の開口側端面6aにおける上下方向の複数箇所に切欠き凹部を形成し、各取付け凸部を各切欠き凹部に挿入するようにすることができる。この場合、各取付け凸部の下端面に
図2に示す軸部材11を設け、各切欠き凹部の下壁面に
図3に示す軸受部材21を設けることが可能である。あるいは、各取付け凸部の下端面に
図3に示す軸受部材21を設け、各切欠き凹部の下壁面に
図2に示す軸部材11を設けることもできる。