(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の錠剤は、(A)薬物及び(B)水溶性高分子化合物を含有する造粒粒子(以下、造粒粒子Pという。)と、(C)1質量%水溶液のpHが0.1以上7.5未満である水溶性の塩と、を含有する。
錠剤中に造粒粒子Pと(C)成分とを含有させることで、服用時の水分による(B)成分のゲル化が抑制される。(B)成分のゲル化が抑制されることで、錠剤中の造粒粒子P同士が離れやすくなり、錠剤の崩壊時間が短縮(速崩壊性が向上)する。また、(B)成分の効果が充分に発揮されるため、造粒粒子P自体も崩壊しやすくなり、(A)成分の溶出性も向上する。
(B)成分のゲル化が抑制される理由は明確ではないが、(B)成分を造粒粒子中に含有させ、その外側に(C)成分を存在させることで、錠剤が水分の浸食を受けた際、水分が(B)成分に到達する前に(C)成分が該水分に溶解し、塩析のような効果が発揮されるためではないかと考えられる。また、(B)成分、例えばヒドロキシプロピルセルロースのように水酸基(−OH)を持つ水溶性高分子や、ポリアクリル酸などのようにカルボキシル基(−COOH)をもつ水溶性高分子は、特にアルカリ性で強い増粘効果を発揮する傾向がある。そのため、(B)成分近傍の水分が(C)成分により酸性〜中性となることで、増粘が抑制されていると考えられる。
一方、(C)成分の代わりに、1質量%水溶液のpHが7.5以上である水溶性の塩を用いた場合、崩壊遅延の抑制効果が充分に得られず、速崩壊性が不充分となる。これは、錠剤が水にぬれたとき、(B)成分近傍の水分が該塩によりアルカリ性となることで、(B)成分が強い増粘効果を発揮するためと考えられる。
【0008】
上記のような本発明の効果は、さらに、下記の[1]〜[3]の少なくとも1つを満たす場合に特に優れたものとなる。
[1]前記(C)成分の含有量が0.2〜10質量%である。
[2]前記(B)成分の含有量に対する前記(C)成分の含有量の質量比(C/B)が0.2以上である。
[3]前記(C)成分が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウムから選ばれる少なくとも1種の無機塩である。
以下、本発明の錠剤についてより詳細に説明する。
【0009】
<錠剤が含有する成分>
[(A)成分:薬物]
(A)成分の薬物としては、特に限定されず、例えば錠剤に配合し得る有効成分として公知の各種薬物のなかから適宜選択できる。具体例としては、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、エテンザミド、フェナセチン、メフェナム酸、アンチピリン、フェニルブタゾン、スルピリン、ジクロフェナトリウム、ケトプロフェン、ナプロキセン、エピリゾール、塩酸チアラミド、インドメタシン、ペンタゾシン、塩化アセチルコリン、酒石酸アリメマジン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジフェドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、クエン酸ペントキシベリン、テオフィリン、アミノフィリン、塩酸エフェドリン、塩酸エピネフリン、硫酸サルブタモール、塩酸トリメトキノール、塩酸プロカテロール、塩酸メチルエフェドリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、グアイフェネシン、トラネキサム酸、無水カフェイン、カフェイン、サリチル酸、サリチル酸コリン、サリチル酸ナトリウム、アリルイソプロピルアセチル尿素、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
(A)成分としては1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0010】
(A)成分は、少なくとも一部が造粒粒子Pに配合される。
本発明の錠剤は、造粒粒子P以外の部分に(A)成分を含有してもよい。例えば造粒粒子P以外に、(A)成分を含み(B)成分を含まない造粒粒子を含有してもよい。また、造粒粒子外成分として、粉末状の(A)成分を含有してもよい。
【0011】
本発明の有用性の点では、造粒粒子P中に含まれる(A)成分の少なくとも一部は水難溶性薬物であることが好ましい。
水難溶性薬物とは、日本薬局方で「溶けにくい」から「ほとんど溶けない」に属する薬物を示す。具体的には、20℃において1gを溶解するのに必要な水の量が100mL以上であれば水難溶性薬物といえる。
水難溶性薬物の中でも、アスピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、アリルイソプロピルアセチル尿素、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
(A)成分は、さらに、水難溶性薬物以外の薬物を含有してもよい。該薬物は、造粒粒子P中に含まれてもよく、造粒粒子P以外の造粒粒子や、造粒粒子外成分として含まれてもよい。
【0012】
錠剤中の(A)成分の含有量は、特に限定されないが、0.1〜95質量%が好ましく、1〜90質量%がより好ましい。
【0013】
[(B)成分:水溶性高分子化合物]
(B)成分は結合剤として機能する成分である。
水溶性高分子化合物とは、20℃において1gを溶解するのに必要な水の量が100mL未満である高分子化合物を示す。水溶性高分子化合物としては、20℃において1gを溶解するのに必要な水の量が25mL未満であるものが好ましい。
(B)成分は、天然高分子でも合成高分子でもよく、これらを併用してもよい。
天然高分子としては、例えば、デンプン、可溶性デンプン、デキストリン、αデンプン、アルギン酸ナトリウム、アラビヤガム、ゼラチン、トラガントガム、ローカストビーンガム、カゼイン等が挙げられる。
合成高分子としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Na−CMC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチル化デンプンナトリウム塩、ヒドロキシエチル化デンプン、デンプンリン酸エステルナトリウム塩、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム塩、水溶性共重合体、部分けん化酢酸ビニルとビニルエーテルの共重合体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびそのエステルまたは塩の重合体または共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)等が挙げられる。
(B)成分としては1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(B)成分としては、上記の中でも、造粒性と水溶液とした場合の操作性の点から、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
ヒドロキシプロピルセルロースは、2質量%水溶液の20℃における粘度が、1〜5000mPa・sであることが好ましく、1〜500mPa・sであることがより好ましく、1〜20mPa・sであることが特に好ましい。
ポリビニルアルコールは、4質量%水溶液の20℃における粘度が、1〜100mPa・sであることが好ましく、3〜50mPa・sであることがより好ましく、20〜50mPa・sであることが特に好ましい。
上記の各水溶液の粘度は、回転粘度計(たとえばブルックフィールド型粘度計)により測定できる。
【0014】
(B)成分は、少なくとも一部が造粒粒子Pに配合される。
本発明の錠剤は、造粒粒子P以外の部分に(B)成分を含有してもよい。例えば造粒粒子P以外に、(B)成分を含み(A)成分を含まない造粒粒子を含有してもよい。また、造粒粒子外成分として、粉末状の(B)成分を含有してもよい。ただし本発明の効果を考慮すると、(B)成分が存在するのは造粒粒子中のみであることが好ましい。
【0015】
[(C)成分]
(C)成分は、1質量%水溶液のpHが0.1以上7.5未満である水溶性の塩である。該pHは、4.0以上7.5未満が好ましい。1質量%水溶液がpH0.1以上7.5未満を示す水溶性の塩を造粒粒子Pとは別に配合することで、上述したように、造粒粒子P中の(B)成分のゲル化が抑制され、該ゲル化による錠剤の崩壊時間の遅延を防止できる。
ここで、水溶性の塩とは、日本薬局方で「やや溶けやすい」から「極めて溶けやすい」に属する塩を示す。具体的には、20℃において1gを溶解するのに必要な水の量が30mL未満であれば水溶性の塩といえる。
pHは20℃における値である。
【0016】
(C)成分は、無機塩でも有機塩でもよい。
無機塩としては、例えば、塩化物、リン酸二水素塩が挙げられ、アルカリ金属塩化物、リン酸二水素アルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属としては、ナトリウムまたはカリウムが好ましい。塩化物として具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。リン酸二水素塩として具体的には、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム等が挙げられる。
有機塩としては、例えば、クエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸などの酸類のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩)等が挙げられる。
これらの塩は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、溶解度の高さの点から、アルカリ金属塩化物およびリン酸二水素アルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の無機塩が好ましく、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
さらに、製造装置のメンテナンス(錆防止)の観点から、(C)成分が、リン酸二水素アルカリ金属塩であることが特に好ましい。リン酸二水素アルカリ金属塩は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明の錠剤においては、(C)成分の少なくとも一部が造粒粒子Pとは別に配合される。
(C)成分は、造粒粒子Pとは異なる造粒粒子に含有させて配合してもよく、造粒粒子外成分として粉末状の(C)成分をそのまま配合してもよい。本発明の効果の点では、少なくとも一部が造粒粒子外成分として配合されることが好ましい。
本発明の効果を損なわない範囲で、(C)成分の一部を造粒粒子Pに含有させてもよい。
造粒粒子外成分として粉末状の(C)成分を配合する場合、これと配合する造粒粒子は、(C)成分との混合均一性を確保して安定した物性を発現させるために、850μm篩過する粒径のものを用いることが好ましい。
【0018】
錠剤中の(C)成分の含有量は、0.2〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、1.0〜2.5質量%が特に好ましい。0.2質量%以上であると、充分なゲル化抑制効果が得られる。これは、服用時に(C)成分が水に溶解して生じる水溶液中の塩濃度が充分に高くなることで、塩析効果が充分に発揮されるためと考えられる。一方、含有量が10質量%を超えると、吸水性を有する(C)成分が多く含まれることによる錠剤性能の悪化(膨れ、硬度低下)が生じるおそれがある。
【0019】
錠剤中、前記(B)成分の含有量に対する前記(C)成分の含有量の質量比(C/B)は、0.2以上であることが好ましく、0.35〜0.60がより好ましい。C/Bが0.2以上であると、充分なゲル化抑制効果が得られる。C/Bが0.60以下であると、錠剤中に充分な量の(B)成分が存在するため、錠剤の成形性が良好である。
【0020】
本発明の錠剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、前記(A)〜(C)成分以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、特に限定されず、通常、錠剤に配合されている成分を含有させることができる。かかる成分としては、たとえば崩壊剤、崩壊剤以外の賦形剤、界面活性剤、滑沢剤、香料、矯味剤(甘味料、酸味料など)、流動化剤、等が挙げられる。
以下に、各成分の具体例を例示するが、これに限られない。
【0021】
崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
崩壊剤以外の賦形剤としては、糖類、コーンスターチ、タルク、結晶セルロース(アビセルなど)、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、L−システインなどが挙げられる。糖類としては、単糖類(キシロース等)、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖など)、乳糖、マルトース、スクロース、トレハロース、異性化乳糖、その他各種オリゴ糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が好ましく挙げられる。
【0022】
界面活性剤としては、特に限定されず、通常、経口製剤などで使用されているノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。これらのなかでもノニオン界面活性剤またはアニオン界面活性剤が好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のエーテル型の活性剤;ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド類等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、N−グルタミン酸カリウム、N−グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの界面活性剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のなかでも、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0023】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸などが挙げられる。
香料としては、例えばメントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油、など)などが挙げられる。
甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロースなどが挙げられる。
これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0024】
<造粒粒子P>
本発明の錠剤は、前記(A)成分及び(B)成分を含有する造粒粒子Pを含有する。
造粒粒子P中の(A)成分の含有量は、40〜95質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましく、70〜80質量%が特に好ましい。40質量%以上であれば、造粒粒子P同士の凝集が生じにくい。95質量%を超えると、(B)成分の含有量が少なくなり、結合力が低下するため、造粒しにくくなる。
造粒粒子P中の(B)成分の含有量は、2〜15質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましく、4〜6質量%が特に好ましい。2質量%以上であれば、充分な結合力が得られ、造粒しやすい。また、(A)成分の溶出性向上効果にも優れる。15質量%以下であると、造粒粒子P同士が凝集しにくい。
造粒粒子P中の(A)成分及び(B)成分の合計量は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が特に好ましい。該合計量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0025】
造粒粒子Pは、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、(A)成分及び(B)成分以外の成分を含有してもよい。
(A)成分及び(B)成分以外に含有してよい成分としては、例えば、(C)成分、崩壊剤、崩壊剤以外の賦形剤、界面活性剤等が挙げられる。
崩壊剤、崩壊剤以外の賦形剤、界面活性剤としてはそれぞれ、前記(A)〜(C)成分以外の他の成分として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0026】
上記の中でも、界面活性剤を含有すると、濡れ性が向上し(A)成分の溶出性がさらに向上するため好ましい。
造粒粒子Pが界面活性剤を含有する場合、造粒粒子P中の界面活性剤の含有量は、1〜5質量%が好ましく、1〜2質量%がより好ましい。1質量%以上であれば、配合効果が充分に得られる。5質量%を超えると(A)成分及び(B)成分の含有量が少なくなってしまう。
【0027】
造粒粒子Pの製造方法に特に制限はなく、公知の造粒法により製造できる。該造粒法としては、乾式造粒法、湿式造粒法のいずれでも利用できる。
乾式造粒法による造粒は、たとえば乾式圧縮法により実施でき、具体的には、(A)成分、(B)成分およびその他の任意成分を混合した後、該混合物を圧縮して造粒する方法が挙げられる。
湿式造粒法による造粒は、たとえば、粉末状の(A)成分に、(B)成分を含有する水性液を添加しながら造粒する方法により実施できる。このとき、必要に応じて、(A)成分や水性液に他の任意成分を添加してもよい。たとえば粉末状の(A)成分に崩壊剤を添加してもよく、前記水性液に賦形剤を溶解させてもよい。
湿式造粒法として具体的には、流動層造粒法、攪拌造粒法、押出し造粒法、転動造粒法、捏和・破砕造粒等が挙げられる。
上記の中でも、湿式造粒法が好ましく、特に、流動層造粒法または攪拌造粒法が好ましい。
流動層造粒法による造粒粒子の製造は、例えば、攪拌型流動造粒装置(たとえば(株)パウレック社製のマルチプレックスやフロイント産業(株)社製のスパイラフロー、またはフローコーター)を用いて、前記水性液を噴霧しながら造粒することにより実施できる。
攪拌造粒法による造粒粒子の製造は、例えば、攪拌造粒機(たとえば深江パウテック(株)社製のハイスピードミキサーや(株)ダルトン社製の高速攪拌造粒機)を用いて、前記水性液を噴霧または滴下しながら攪拌錬合した後に、押出し造粒機(たとえば(株)ダルトン社製のドームグラン)を用いて造粒することにより実施できる。
造粒条件は特に限定されないが、(A)の融点よりも低い温度で行うことが好ましい。たとえば(A)成分がイブプロフェンの場合、65℃よりも低い温度で造粒することが好ましい。
造粒後、得られた造粒物に対し、平均粒径や粒度分布を整えるための整粒処理(粉砕、篩過等)を行ってもよい。
【0028】
造粒粒子Pの平均粒径は、50〜600μmの範囲内であることが好ましく、100〜300μmの範囲内であることがより好ましい。50μm以上であると打錠障害が起こりにくい。600μm以下であると錠剤強度が良好である。
ここで平均粒径とは、目開き1000μm、850μm、500μm、355μm、250μm、150μm、75μm、45μmの内径75mmのふるいを用い、サンプル量10gで、日本薬局方(第16改)「粉体粒度測定法」第2法に基づき試験を行い測定した際の累積質量の50%粒子径とする。
【0029】
錠剤中の造粒粒子Pの含有量は、下限は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。上限は、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が特に好ましい。この範囲で、本願の効果が特に良好である。
【0030】
<その他の造粒粒子>
本発明の錠剤は、前記造粒粒子P以外の造粒粒子(以下、造粒粒子Q)を含有してもよい。
造粒粒子Qとしては、(A)成分を含有しない造粒粒子(賦形剤粒子、崩壊剤粒子等)、(B)成分を含有しない造粒粒子があげられる。
【0031】
<錠剤>
本発明の錠剤は、前記造粒粒子Pと(C)成分とを含有する。
錠剤の形態としては、例えば以下の(1)〜(4)等が挙げられる。
(1)造粒粒子Pと(C)成分を含有する層(X)からなる単層構造の錠剤。
(2)造粒粒子Pと(C)成分を含有する層(X)を含む多層構造の錠剤。
(3)造粒粒子Pを含有し(C)成分を含まない層(Y)と、(C)成分を含有し造粒粒子Pを含まない層(Z)とを含む多層構成の錠剤。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかの錠剤の表面を、フィルム基剤を含有するコーティング剤でコーティングしたフィルムコーティング錠。
【0032】
(2)の錠剤は、層(X)として、組成(造粒粒子Pが含有する(A)成分や(B)成分の種類や含有量、(C)成分の種類や含有量等)が異なる複数の層を含有するものであってもよく、層(X)のほかに、造粒粒子P及び(C)成分のいずれか一方又は両方を含有しない層をさらに含むものであってもよい。
【0033】
(4)の錠剤に用いるフィルム基剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストリン、プルラン、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、メタアクリル酸コポリマー、白糖、マンニトール、ゼラチン等が挙げられる。これら1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でもヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等がより好適に使用される。
コーティング剤のコーティングにより錠剤の表面に形成されるフィルム層中のフィルム基材の割合は、特に制限はないが、40質量%以上が好ましい。
【0034】
これらの錠剤は常法により製造できる。
例えば(1)の錠剤は、造粒粒子Pと(C)成分と必要に応じて任意成分とを混合して打錠用粉体を調製し、該打錠用粉体を打錠することにより製造できる。
【実施例】
【0035】
本発明について、実施例を示してさらに具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
%は、特に記載のない限り、「質量%」を示す。pHは20℃における値である。
以下の各例で使用した原料を以下に示す。
[(A)成分]
イブプロフェン:BASF社製。
アセトアミノフェン:岩城製薬社製。
アリルイソプロピルアセチル尿素:金剛化学社製「アリプロナール」。
乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業社。
無水カフェイン:白鳥製薬社製。
[(B)成分]
HPC−SSL:ヒドロキシプロピルセルロース(SSL)、信越化学社製。
HPC−L:ヒドロキシプロピルセルロース(L)、信越化学社製。
PVA:ポリビニルアルコール、メルク社製。
[(C)成分]
リン酸二水素カリウム:太平化学産業社製(1質量%水溶液のpH=4.4−4.9)。
リン酸二水素ナトリウム:太平化学産業社製(1質量%水溶液のpH=4.3−4.9)。
塩化ナトリウム:富田製薬社製(1質量%水溶液のpH=7)。
塩化カリウム:高杉製薬社製(1質量%水溶液のpH=7)。
[その他の成分]
LHPC:低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、LH−21、信越化学社製。
D−マンニトール:ロケット(ROQUETTE)ジャパン社、「PEARLITOL」。
乳酸: DSP&五協フードケミカル社、「DL−乳酸」。
結晶セルロース: 旭化成社、「結晶セルロースUF−702」。
クロスポビドン(CL):BASF社、「コリドンCL」。
クロスポビドン(CL−SF):BASF社、「コリドンCL−SF」。
含水二酸化ケイ素:フロイント産業社、「アドソリダー102」。
ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業社、「ステアリン酸マグネシウム」。
オパドライ81W48956:日本カラコン社製(100g中の成分は、ポリビニルアルコール46.0g、タルク31.4g、酸化チタン12.6g、大豆レシチン10.0g)。
ショ糖脂肪酸エステル:三菱化学フーズ(株)、J−1816。
ラウリル硫酸ナトリウム:日光ケミカルズ(株)、SLS。
【0036】
<実施例1〜16、比較例1〜10>
以下の手順で、造粒粒子P1、造粒粒子P2及び顆粒外成分を含有する表1〜5に示す組成の錠剤を製造した。表1〜5に示す組成は、錠剤1錠中の各成分の配合量(mg)を示す。
【0037】
[1.造粒粒子P1の製造]
(A)成分と崩壊剤(LHPC)を混合して混合粉体を得た。
別途、(B)成分及び賦形剤(D−マンニトール)をイオン交換水に溶解して噴霧液を調製した。
流動層造粒機(スパイラフローSFC−5、フロイント産業社製)中で、前記混合粉体に前記噴霧液を噴霧(噴霧速度70g/分)しながら湿式造粒(給気温度56℃、給気量2.7m
3/分)し、さらに乾燥させ、得られた乾燥物を篩過(目開き850μm使用)し、造粒粒子P1を得た。
【0038】
[2.造粒粒子P2の製造]
ハイスピードミキサー(FS25、深江工業(株)社製)のジャケットを80℃になるよう設定した後、アジテーター回転数を300rpm、チョッパー回転数を1500rpmに設定し、ミキサーの缶体内に所定量の乾燥水酸化アルミニウムゲルとLHPCを投入し、予備混合後、攪拌しながら、HPC−SSL水溶液と乳酸の混合液を添加した。添加終了後も8分間攪拌を続けて造粒を進行させ、終了後20分間熟成させて造粒粒子P2を得た。
【0039】
[3.錠剤の製造]
造粒粒子P1と造粒粒子P2と顆粒外成分とを混合して第一粉体を得た。
第一粉体3000gを混合機(ボーレコンテナミキサー20L、寿工業(株)製)で20分間混合し、続いて第二粉体として滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)を所定量添加して5分間混合して打錠用粉体を得た。
該打錠用粉体をロータリー式の打錠機(LIBRA2、菊水製作所製)を用いて打錠することにより、直径9.2mmの錠剤を得た。
【0040】
[4.フィルムコーティング錠の製造]
実施例4と比較例2については、上記のようにして得た錠剤(素錠)にさらに以下の手順でコーティングを施し、フィルムコーティング錠とした。
素錠に、オパドライ81W48956の180gを精製水820gに溶解・懸濁したコーティング液を、コーティング機(ハイコーターHCT−30N、フロイント産業社製)にて、素錠重量に対して固形分換算で約2%量コーティングしてフィルムコ−ティング錠を得た。
【0041】
得られた錠剤について、以下の評価を行った。結果を表1〜5に示す。
[錠剤硬度の測定]
錠剤物性測定装置(ジャパンマシナリー(株)製)を用いて、錠剤側面より圧力をかけて応力の変曲点を測定し、錠剤硬度を測定した。繰り返し10回測定し、平均値を硬度とした。
[崩壊時間の測定]
日局崩壊試験の方法に準じて崩壊試験を行い、崩壊時間(秒)を測定した。崩壊試験液はイオン交換水を使用し、水浴温度は37℃とした。測定回数6回の平均値を算出した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
以下の結果に示すとおり、実施例1〜16の錠剤はいずれも崩壊時間が45秒以内であり、速崩壊性に優れていた。また、錠剤として充分な硬度も有していた。
一方、(C)成分を含まない比較例1〜9の錠剤、造粒粒子P1中に(C)成分であるリン酸二水素カリウムを含み、顆粒外成分として(C)成分を含まない比較例10の錠剤はそれぞれ、崩壊時間が実施例1〜16に比べて大幅に長く、崩壊遅延が生じていた。
【0048】
<実施例17〜18、比較例11〜12>
造粒粒子P1の製造する際に、噴霧液にさらに界面活性剤(ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル硫酸Na)を配合した以外は実施例10と同じ手順で錠剤を製造した。
得られた錠剤及び実施例10で得た錠剤について、以下の手順で溶出試験を行った。
[溶出試験]
日局溶出試験の方法に準じて行った。溶出試験第1液(pH=1.2)を使用し、5分時点でのイブプロフェンの溶出率(%)を算出した。測定回数3回の平均値を溶出率の測定値とした。
【0049】
各錠剤の組成と溶出試験の結果を表6に示す。
結果に示すとおり、実施例17、18の錠剤は、それぞれ、(C)成分を含まない以外は同じ組成の比較例11、12よりも、また、界面活性剤を配合していない以外は同じ組成の実施例10の錠剤と比べても、溶出性が向上していた。
【0050】
実施例10、17、18について、製造に使用した装置の錆の有無により製造適性を評価した。錆がないものを○、錆のあるものを×と判定した。その結果を表6に示す。
結果に示すとおり、実施例10、17、18はいずれも、製造に使用した装置の錆発生がなく、装置メンテナンスの点でも優れていた。
なお、水溶性の塩としてリン酸二水素塩を用いた他の実施例(実施例1〜6、9、11、14〜16)も、製造適性は○であった。
【0051】
【表6】