(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示す画像形成装置(MFP、Multi-Functional Peripheral,マルチファンクショナルプリフェラル)1は、画像読取部10、画像形成部20及び制御ブロック51を備える。
【0012】
画像読取部10は、シート原稿およびブック原稿の画像をスキャンして読み取る。画像読取部10は、自動原稿搬送装置(ADF、Automatically Document Feeder,オートマティカリードキュメントフィーダ)11及び原稿台(透明ガラス等)12を備える。
【0013】
画像読取部10は、自動原稿搬送装置11が搬送するシート原稿が含む情報や、原稿台12上の読取対象(ブック原稿)が含む画像を、光の明暗及び色情報として読み取る。
【0014】
自動原稿搬送装置11が搬送する原稿の画像は、第1のセンサ(例えばラインCCD)13が、原稿台12上のブック原稿の画像は、第2のセンサ(例えばCMOSセンサ)14が、読み取る。それぞれのセンサは、読み取った原稿の画像に対応する画像信号を生成する。
【0015】
制御ブロック51の画像処理部が、上記センサが生成する画像信号を、後段に説明する光走査装置30において画像露光光(以下画像光とする)として利用可能な画像データに変換する。
【0016】
画像形成部20は、給紙カセット21、現像器22、感光体ドラム23、転写器24、定着器25、光走査装置30、排紙トレイ26、反転搬送路27及び給紙トレイ(手差し給紙部)28を備える。
【0017】
画像形成部20は、画像読取部10からの上記画像データあるいは外部機器が画像形成装置1に送信する画像データ等に基づく光走査装置30の画像光の走査(出力)により、感光体ドラム23に潜像(静電像)を形成する。感光体ドラム23は、y軸方向に延びる軸線を回転中心として回転する円筒状であって、光走査装置30が走査する画像光に対応する(y軸方向に延びる)1ライン毎の潜像を生起する。
【0018】
光走査装置30の走査に従い、感光体ドラム23が生起する潜像は、現像器22が供給する現像剤による現像により現像剤像となる。
【0019】
給紙カセット21が保持するシートPは、給紙カセット21から1枚ずつ移動する。
【0020】
シートPは、感光体ドラム23に位置する現像剤像のシートP上の位置がシートP上において一致する所定タイミングで、転写器24と感光体ドラム23が接する転写位置に、移動する。以下、転写位置において、感光体ドラム23上の現像剤像が、シートPに移動する。
【0021】
定着器25は、シートPが保持する(移動によりシートP上に位置する)現像剤像を、シートPに固着(定着)する。定着器25が現像剤像固定(定着)後のシートPは、出力画像すなわちプリントアウトとして、排紙トレイ26に移動する。なお、給紙トレイ28が保持するシートPに現像剤像を移動する場合においては、シートPが所定のタイミングで転写位置に移動し、転写位置において、感光体ドラム23上の現像剤像が、シートPに移動する。
【0022】
シートPの両面に現像剤像を移動する両面画像出力時は、シートPが反転搬送路27を移動することで表裏が反転するシートPの既に現像剤像が存在する面と異なる他の一方の面(裏面)に、転写位置において、現像剤像が移動する。移動により、シートP上に位置する現像剤像は、定着器25がシートPに固定する。以下、シートPは、上述した通り、プリントアウトとして、排紙トレイ26に移動する。
【0023】
光走査装置30は、レンズ固定ベース130を有する。レンズ固定ベース130の所定の位置に、光偏向器31、第1レンズ32、第1ミラー33、第2ミラー34、第2レンズ35及びカバー(防塵)ガラス36を含み、発光ユニット(半導体レーザブロック)37が出力するレーザ光すなわち画像光を、感光体ドラム23の所定の位置に、走査する。なお、第1レンズ32及び第1ミラー33と第2ミラー34及び第2レンズ35とカバー(防塵)ガラス36は、
図2ならびに
図3を用いて以下に詳述する通り、レンズ固定ベース130の表裏に位置する。
【0024】
図2は、光走査装置30における光偏向器31、第1レンズ32、第1ミラー33、発光ユニット(半導体レーザブロック)37及びビーム成型光学部38の配列の一例を、
図3は、光走査装置30における第2ミラー34、第2レンズ35及びカバーガラス36の配列の一例を、それぞれ示す。
図2、
図3の図の上下方向をy軸方向とし、y軸に直交で光偏向器31(ポリゴンミラー)の回転軸中心をとおる軸をx軸とする。
【0025】
光偏向器31は、x軸およびy軸のそれぞれと直交するz軸方向に延びる回転軸を回転中心として回転する任意数の反射面を含む多面体すなわちポリゴンミラーを有する。画像光は、光偏向器31の任意の反射面の反射(走査)により、感光体ドラム23の所定の位置に、向かう。
【0026】
光走査装置30が走査する画像光(レーザ光)は、感光体ドラム23の回転中心である軸線すなわちy軸に沿う感光体ドラム23の外周の所定位置Sに概ね直線状に移動する。従って、画像光は、y軸に実質的に平行となる。このため、第1ミラー33、第2ミラー34及びカバーガラス36は、y軸に平行に配置、かつ一方向(y軸)に沿って延びる。また、第1レンズ32及び第2レンズ35は、y軸にほぼ平行に配置、かつ一方向(y軸)に沿って延びるとともに、長さ方向の中心部分がx軸上に位置する。
【0027】
すなわち、任意の反射面が反射する画像光は、第1レンズ32を通り、第1ミラー33及び第2ミラー34で概ね90度ずつ曲がり、感光体ドラム23側に向かう。なお、第2ミラー34からの画像光は、第2レンズ35及びカバーガラス36を通過する。ここで、上述の画像光は、反射面の回転方向の上流(起点)側から下流(終点)側までの間の偏向角θの区間において、第1レンズ32及び第2レンズ35の作用により、所定の断面ビーム形状となり、感光体ドラム23上をy軸に平行、かつ実質的に直線で走査する。
【0028】
図4、
図5(a)及び
図5(b)ならびに
図6(a)及び
図6(b)は、レンズ固定ベース130に第2ミラー及び第2レンズを固定するための突起である固定部(支持構造)の特徴の一例を示す。なお、第1ミラー及び第1レンズもレンズ固定ベース130に固定されるが、レンズあるいはミラーにおいて、第1の方向である長手方向(y軸方向)の長さがより長い第2ミラー及び第2レンズを例に説明する。
【0029】
第2ミラー34はガラスが用いられているが、第2レンズ35の材質は、形状自由度を生かすとともに今日軽量化の要求に従い、プラスチックである場合が多い。また、レンズをレンズ固定ベースに固定する方法としても、接着剤を用いる固定方法(接着固定)が、広く採用される。
【0030】
レンズ固定ベースは、光学素子の位置精度が重要なので高い形状精度と剛性が必要であし、ガラスフィラやその他で強化された材料が用いられる。他方レンズは光学特性を重視した材料が用いられる。このため、レンズ固定ベースとレンズもしくはミラーの線膨張係数は、大きく異なる。一例であるが、レンズの材料の線膨張係数は、レンズ固定ベースの材料の線膨張係数に比較して数倍以上大きい。また、ガラスとレンズ固定ベースの線膨張係数は1桁以上大きい。
【0031】
このことは、例えばレンズもしくはミラーをレンズ固定ベースに接着剤により固定した場合において、輸送時や保管時の温度変化により接着面の剥離や接着剤の破談が生じて、レンズもしくはミラーの脱落や固定位置の変化を引き起こす。
【0032】
このような背景に基づき、長手方向(y軸方向)に長いレンズもしくはミラーをレンズ固定ベースに接着剤により固定するため、レンズ固定ベース130にレンズ固定ベース130と一体に、レンズ35を支持する固定部131R及び131L、及びミラーを支持する固定部132R及び132Lを設ける。なお、接着部あるいは位置決め部以外でレンズ35とレンズ固定ベース130との間には、接着剤が無い。すなわち、レンズ35のレンズ固定ベース130側の面(外形部)とレンズ固定ベース130とは、部品較差等に起因して接する場合があるものの、相互に独立している。また、レンズ35については短手方向(x軸方向)に第2の固定部131F及び131T、を設けている。
【0033】
図4、
図5(a)及び
図5(b)においては、レンズ35は、例えばUV(紫外線)硬化型接着剤ADによりその長手方向(y軸方向)の両端部が固定部131R及び131Lと、接着固定する。また、同レンズ35は、画像光が通過するx軸方向であって感光体ドラム23に近い側すなわち出射面側が第2の固定部131Fと、ミラー34に近い側すなわち入射面側が第2の固定部131Tと、それぞれ接着剤ADにより接着固定する。
【0034】
従って、温度変化によりレンズ35及びレンズ固定ベース130がそれぞれ延びるあるいは縮む場合においては、レンズ35の長手方向の中央の固定位置は、第2の固定部131Fと第2の固定部131Tとによる接着固定により、x軸上からほとんど移動しない。一方で、延びまたは縮みが生じた場合は、長手方向の両端部と接着する固定部131R及び/または131Lが撓む(弾性変形する)ことにより、接着剤ADが破損(破断)することや(レンズとの)接着面が剥離することが防止できる。なお、レンズ35の長手方向の中央の固定位置が移動しないことにより、第1レンズ32と第2レンズ35とが提供する画像光の偏向角θに対応する断面ビーム形が変動することが無い。
【0035】
また、
図4、
図6(a)及び
図6(b)において、ミラー34は、レンズ35と同様にUV硬化型接着剤ADにより、その長手方向(y軸方向)の両端部が固定部132R及び132Lと、接着固定する。接着剤の固定部にはミラー端面と対向する面を有する。対向面間でも接着することで低温でレンズ固定ベースがより収縮した場合に強度を増すことができる。なお、ミラーについては、両端部が固定部132R及び132Lとの接着固定を除いて、偏向角θの範囲内のいずれの位置においても、接着固定しない。これにより硬化時には接着剤が収縮してもミラーが湾曲するのを防止できる。
【0036】
すなわち、温度変化によりミラー34及びレンズ固定ベース130に、延びあるいは縮みが生じた場合、ミラー34の長手方向の両端部と接着する固定部132R及び/または132Lが撓む(弾性変形する)ことで、接着剤ADが破損(破断)することあるいは(ミラーとの)接着面が剥離することが防止できる。
【0037】
図7(a)及び
図7(b)は、
図4、
図5(a)及び
図5(b)ならびに
図6(a)及び
図6(b)が示すレンズ固定ベース130と一体の固定部(支持構造)の形状の特徴の一例を示す。
【0038】
図7(a)は、レンズ35の長手方向の端部のうちの一方と接着剤が接着固定する固定部131Rの形状を示し、
図7(b)は、レンズ35の端部との間の固定部131Rに接着剤ADが位置する例を示す。
【0039】
図7(a)が示すように、固定部131Rは、第2レンズ35の端面と対向する面を有し、レンズ35の端部と固定部131Rとの接着に用いる接着剤ADを保持する(接着剤ADがレンズ固定ベース130に流れ込むことを低減する)接着剤収容部(切り欠きあるいは厚みが薄い部分)131Cを有する。
【0040】
接着剤と固定部とが面で接着するだけでなく、硬化した接着材と固定部が機械的にかみ合うことで、固定力を増すことができる。また、対向面間でも接着することで、伸縮時の力を対向面で受けられるので、接着強度が増す。
【0041】
従い、
図7(b)が示すように、レンズ35の端部と固定部131Rとの接着に用いる接着剤ADは、接着剤収容部131Cに集約する。
【0042】
すなわち、接着剤ADがレンズ35と固定部131Rとの間から不所望に、レンズ固定ベース130部材に流れ込むことが抑止できる。
【0043】
図8は、
図4が示すレンズ固定ベース130と一体の固定部(支持構造)うちの画像光が通過するx軸方向の出射面側の固定部及び入射面側の固定部の形状の特徴の一例を示す。
【0044】
なお、接着剤については、上述した固定部の構造の特徴により、引っ張り弾性率や硬度が比較的高いもの、例えば上述のUV硬化タイプで引っ張り弾性率が180MPa、硬度(ショアD)が80程度のもの、を使用できるので、大型で質量の大きなレンズであっても、接着剤の変形による位置ずれを防止できる。
【0045】
以上説明したように、画像光の走査方向(y軸方向)である一方向に長いレンズの両端と接着固定するレンズ固定ベースの固定部(接着部)の形状を、レンズの長手方向に弾性変形して、長手方向に垂直な方向(z軸方向)とx軸方向に変形しにくい形状とすることにより、光走査装置(レーザ走査ユニット)を組み込んだ装置の輸送や保存時の温度変化に対して、プラスチックレンズとハウジングあるいはベースとの線膨張係数の差を吸収できる。
【0046】
また、レンズ接着部を片持ち薄板形状とし、接着剤がレンズ固定ベースに垂れ落ちないで保持できる一段薄くした段差を設けた接着剤収容部(壁)とし、さらにその壁の中央に壁を分ける溝部(切り欠きあるいは厚みが薄い部分)を設けることで接着剤がレンズ固定ベースとレンズとの間に流れ込むことを防止するとともに、接着面の接合力だけでなく機械的なかみ合い力で強度を増す構造とすることにより、接着剤がレンズと固定部との間から不所望に固定ベース130に流れ込むことが抑止できる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。