特許第5793494号(P5793494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5793494セラミックス混合物、及びそれを用いたセラミックス含有熱伝導性樹脂シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793494
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】セラミックス混合物、及びそれを用いたセラミックス含有熱伝導性樹脂シート
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20150928BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150928BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20150928BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20150928BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K3/22
   C08K3/38
   C08J5/18CFC
   C08K7/00
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-522700(P2012-522700)
(86)(22)【出願日】2011年6月30日
(86)【国際出願番号】JP2011065085
(87)【国際公開番号】WO2012002505
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2010-151937(P2010-151937)
(32)【優先日】2010年7月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雄樹
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C08J 5/18
C08K 3/22
C08K 3/38
C08K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機マトリックス10〜70体積%と、セラミックス混合物30〜90体積%とを含有する樹脂組成物を成形してなり、
前記セラミックス混合物が、体積基準のD50が10〜55μmである球状アルミナ粒子と、体積基準のD50が30μm以下の鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子との混合物であって、前記鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の含有割合が5〜30質量%であり、
前記球状アルミナの体積基準のD50が、前記鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の体積基準のD50に対して3〜7倍である、
セラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
【請求項2】
前記鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の体積基準のD50が、5〜30μmである請求項1に記載のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス混合物及びそれを用いたセラミックス含有熱伝導性樹脂シートに関する。さらに詳しくは、本発明は、高熱伝導性樹脂シートを与えるセラミックス混合物、及び該セラミックス混合物を用いてなる、発熱体から放熱部材へ熱を伝達させるために用いる熱伝導性樹脂シート、特に半導体素子等の発熱体からの熱を放熱部材に伝達させ、かつ絶縁層としても機能する熱伝導性樹脂層を形成するための熱伝導性樹脂シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器等に使用されているIC等の電子部品はその集積度が向上している。更に電子機器等の小型化の要求に対応するため、IC等の電子部品を小さなスペースに高密度に配置することにより、筐体内での発熱に対する放熱対策が大きな問題となっている。すなわち、IC等の電子部品は、温度が上昇すると電子部品の特性が変動して機器の誤作動の原因になったり電子部品自体が故障したりする。
【0003】
一方で、高速化が進むCPUをはじめとする半導体ディバイス等から発生する発熱量が増大しているのに対し、各種電子機器等は、その装置の小型軽量化および薄型化が進展している。そのため、その性能および機能を維持するには、発生した熱を十分除去する必要があり、効率の良い放熱システムが要求されている。
【0004】
電気・電子機器の発熱部から放熱部材へ熱を伝達させる熱伝導性樹脂層には、高熱伝導性、絶縁性、接着性の要求から、熱硬化性樹脂に無機充填材を添加した熱伝導性樹脂組成物が用いられている。
例えばパワーモジュールにおいては、電力半導体素子を搭載したリードフレームの裏面と放熱部となる金属板との間に設ける熱伝導性樹脂層として、無機充填材を含有した熱硬化性樹脂シートや塗布膜を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、CPU等の発熱性電子部品と放熱フィンとの間に介在させる熱伝導性樹脂層として、高熱伝導性の無機粉体を充填した熱硬化性樹脂シートが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2にあるとおり無機粉体として球状アルミナ粒子は分散させやすく、高充填でき、熱伝導性シートに用いる熱伝導性充填材としては非常に有用である。そのため、その他の熱伝導性充填材との組合せによるものや有機マトリックスを変更して、熱伝導性充填材をより高充填させて高熱伝導にすることが検討されている(例えば特許文献3及び4参照)。
【0006】
特許文献5では、高い放熱特性を発揮し得る無機粉末として、所定の球状無機質粉末と、この球状無機質粉末よりも平均粒子径が小さい非球状無機質粉末とを含む混合粉末からなり、平均粒子径が5〜50μmである無機粉末を開示している。しかし、実際に評価を行っているのは、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、及び窒化アルミニウムから選ばれた組合せで、その他の無機粉末で同様な効果が得られるかどうかは不明である。
また、アルミナのような比重の高いフィラーを高充填すると熱伝導性樹脂シート自体が重くなり、電子機器等の小型化・軽量化への対応が困難になるといった問題がある。
さらに、電子機器等の小型化に伴い、熱伝導性樹脂シート薄膜化が進むと絶縁破壊特性が低下する可能性がある。また、高熱伝導性を有するとされている窒化アルミニウムは、大気中の水分に対して不安定で取り扱いが難しい上、高価であり、同じく熱伝導性に優れた炭化ケイ素は絶縁破壊特性が劣ることが問題であった。
例えば、特許文献6には、粒径5μmの窒化珪素と粒径7μmの窒化硼素との併用系の熱伝導性樹脂シートが開示されているが、窒化珪素の粒径が小さ過ぎるために均一分散が困難な場合があり、必ずしも併用の効果をもたらすとは限らないという問題がある。また該文献には炭化珪素と窒化硼素との併用系の熱伝導性樹脂シートも開示されているが、炭化珪素を使用する系は絶縁破壊特性に劣る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−196495号公報
【特許文献2】特開2003−253136号公報
【特許文献3】特開平11−87958号公報
【特許文献4】特開2000−1616号公報
【特許文献5】特開2007−70474号公報
【特許文献6】特許第4089636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況下になされたものであり、従来以上に優れた熱伝導率を有すると共に、シート重量の軽量化を図ることができ、加工性にも優れ、かつ絶縁破壊特性が良好な熱伝導性樹脂シートを与えるセラミックス混合物、及び該セラミックス混合物を用いた上記性状を有するセラミックス含有熱伝導性樹脂シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
まず、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子は、高い熱伝導性を有しているものの、有機マトリックス中に分散させにくく、加工性が悪いという欠点がある。そこで、流動性の良好な球状アルミナ粒子と混合することにより、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子が分散させやすくなり、加工性が向上することを見出した。また、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子が面方向に高い熱伝導率を有するという特徴を利用し、球状アルミナ粒子に骨材としての役割を担わせることで、熱伝導性シートの厚み方向に配向させることで高い熱伝導率を得られることを見出した。また、絶縁破壊特性の劣る炭化ケイ素でなく、アルミナを用いることにより、優れた絶縁破壊特性が得られることが判った。
上記のような知見より、特定の粒径を有する鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子と、特定の粒径を有する球状アルミナ粒子とを、所定の割合で含むセラミックス混合物を、熱伝導性充填材として用いることにより、アルミナ粒子や窒化ホウ素粒子を単独で用いたときよりも、従来以上に優れた熱伝導率を有すると共に、シート重量の軽量化を図ることができ、かつ加工性にも優れる熱伝導性樹脂シートが得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]体積基準のD50(50体積%粒径)が10〜55μmである球状アルミナ粒子と、体積基準のD50が30μm以下の鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子との混合物であって、前記鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の含有割合が5〜30質量%であることを特徴とするセラミックス混合物。
[2] 鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の体積基準のD50が、5〜30μmである[1]に記載のセラミックス混合物。
[3] 有機マトリックス10〜70体積%と、[1]又は[2]に記載のセラミックス混合物30〜90体積%とを含有する樹脂組成物を成形してなるセラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
[4] 前記球状アルミナの体積基準のD50が、前記鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の体積基準のD50に対して3〜7倍である、[3]に記載のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
[5] 前記セラミックス混合物における前記球状アルミナ粒子の体積基準のD50が45〜55μmであり、当該セラミックス混合物が前記樹脂組成物中に70〜80体積%の割合で含まれる[3]に記載のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
[6] 前記セラミックス混合物における前記鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の含有割合が6〜25質量%であり、当該セラミックス混合物が前記樹脂組成物中に75〜80体積%の割合で含まれる[5]に記載のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
[7] 熱伝導率が7W/m・K以上である[6]に記載のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
[8] 前記セラミックス混合物における前記鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の含有割合が15〜25質量%であり、当該セラミックス混合物が前記樹脂組成物中に70〜80体積%の割合で含まれる[5]に記載のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
[9] 熱伝導率が9W/m・K以上である[8]に記載のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
[10] 前記有機マトリックスが硬化性エポキシ樹脂を含む[4]〜[9]のいずれかに記載のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
[11] 前記有機マトリックスが硬化性シリコーン樹脂を含む[4]〜[9]のいずれかに記載のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来以上に優れた熱伝導率を有すると共に、シート重量の軽量化を図ることができ、加工性にも優れ、かつ絶縁破壊特性が良好な熱伝導性樹脂シートを与えるセラミックス混合物、及び該セラミックス混合物を用いてなる上記性状を有する熱伝導性樹脂シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の「鱗片状」の形態を説明する図であり、図1(A)は平面図を示し、図1(B)は図1(A)におけるX−X断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明のセラミックス混合物について説明する。
[セラミックス混合物]
本発明のセラミックス混合物は、従来以上に優れた熱伝導率を有すると共に、シート重量の軽量化を図ることができ、かつ加工性にも優れる熱伝導性樹脂シートを提供するための熱伝導性充填材であり、体積基準のD50が10〜55μmである球状アルミナ粒子と、体積基準のD50が30μm以下の鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子との混合物であって、前記鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の含有割合が5〜30質量%であることを特徴とする。
【0014】
(球状アルミナ粒子)
本発明のセラミックス混合物を構成する2つの成分の中の一方の成分であるアルミナ粒子は、熱伝導性が良好であり、球状や非球状のものがある。本発明のセラミックス混合物においては、もう一方の成分である後述の鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子が有機マトリックス中に分散させにくい点を考慮して、このアルミナ粒子として、流動性の良好な球状アルミナ粒子を用いる。ここで、球状アルミナ粒子とは、アルミナ粉末のうち粒子形状が球状ないし、球状に近い形状をなす粉末をいう。
【0015】
なお、本発明において、「球状」とは、平均球形度で評価される。平均球形度は、例えばシスメチックス社製商品名「FPIA−1000」等のフロー式粒子像分析装置を用い、次のようにして測定することができる。まず、粒子像から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の球形度はA/Bとして表示できる。そこで試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定するとPM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)2として算出できる。これを任意に選ばれた100個以上の粒子について測定し、その平均値を平均球形度とする。本発明における「球状」とは、上記球形度が0.93〜1.00の範囲にあるものをいい、通常の市販品で球状または球形と明示されているものであれば、この範囲を満たす。
【0016】
当該球状アルミナ粒子の体積基準のD50は、セラミックス混合物の有機マトリックスに対する分散性や、得られる熱伝導性樹脂シートの性能等の観点から、10〜55μmであることを要し、25〜55μmであることが好ましく、45〜55μmであることがより好ましい。また、上記観点から粒度分布のシャープな球状アルミナ粒子が好ましい。
なお、本発明において体積基準のD50は、コールター・カウンター法やレーザ回折散乱法等によって測定することができる。例えば、球状アルミナ粒子の場合は、コールター・カウンター法により測定し、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の場合は、レーザ回折散乱法により測定することが好ましい。
【0017】
(鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子)
本発明のセラミックス混合物を構成するもう一方の成分である鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子としては、体積基準のD50が30μm以下のものが用いられる。体積基準のD50が30μmを超えると、有機マトリックス中で鱗片状粒子が厚み方向に対して平行に配向しやすくなり得られる熱伝導性樹脂シートは所望の熱伝導性が得られにくい。
当該鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の体積基準のD50は、5〜30μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。体積基準のD50が5μm未満であると、有機マトリックス及びセラミックス混合物を含む樹脂組成物の粘度が上昇してしまい、加工性が低下する場合がある。
体積基準のD50が30μmを超えない範囲で、より大きな体積基準のD50を持った鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子を用いることで、粒子間の界面が少なくなり熱をより伝えやすくなるといった効果を奏する。
ここで、「鱗片状」とは、図1(A)の平面図に示すような、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子10の長径Lと、図1(A)のX−X断面図(図1(B))に示すような当該粒子10の厚みr(平均厚み)との比(アスペクト比(L:r))が5:1〜20:1である形態を意味する。
【0018】
当該鱗片状六方晶窒化ホウ素中に不純物(例えば、B23)が多く含まれていると、硬化を必要とする有機マトリックスを用いる場合、硬化阻害の要因となる。また、得られる熱伝導性樹脂シートの熱伝導性が低下する要因となる。このような観点から、当該鱗片状六方晶窒化ホウ素中に不可避的に混入される不純物のB23の含有量は、0.01〜0.1質量%であることが好ましく、0.01〜0.05質量%であることがより好ましい。
【0019】
本発明のセラミックス混合物における当該鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の含有量は、5〜30質量%であることを要する。この含有量が30質量%を超えると、有機マトリックス及びセラミックス混合物を含む樹脂組成物の粘度が増大して、加工性を低下させる要因となる。また、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子は高価であるため、この含有量が30質量%を超えると、商業的にも不利となる。このような観点から、セラミックス混合物における当該鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の含有量は30質量%以下が好ましい。また、5質量%未満では、優れた熱伝導性を付与することができない。含有量は6〜25質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましく、15〜25質量%がさらに好ましく、18〜25質量%が特に好ましい。
【0020】
球状アルミナ粒子の体積基準のD50が鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の体積基準のD50に対して、3〜7倍であることが好ましく、4〜6倍であることがより好ましい。3〜7倍であることで、球状アルミナ粒子単独使用や鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の単独使用の場合に比べて、顕著に高い熱伝導率を得ることができる。
【0021】
前述した球状アルミナ粒子や鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子は、有機マトリックスに対する分散性を高め、加工性を向上させる等の目的で、必要に応じ、各種カップリング剤等を用いて表面処理を施してもよい。
【0022】
(カップリング剤)
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系等が挙げられるが、これらの中で効果の点から、シラン系カップリング剤が好ましい。シラン系カップリング剤としては、特にγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン化合物が好ましく用いられる。
【0023】
次に、本発明のセラミックス含有熱伝導性樹脂シートについて説明する。
[セラミックス含有熱伝導性樹脂シート]
本発明のセラミックス含有熱伝導性樹脂シートは、有機マトリックス10〜70体積%と、既述の本発明のセラミックス混合物30〜90体積%とを含有する樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
セラミックス混合物が90体積%超(有機マトリックスが10体積%未満)では、有機マトリックスがあまりにも少ないために樹脂組成物の成形が困難となってしてしまい、セラミックス混合物が30体積%未満(有機マトリックスが90体積%超)では、フィラー同士が有機マトリックス内で接触しにくくなり、熱伝導特性が低下し、放熱に必要とされる熱伝導率が得られなくなってしてしまう。
【0024】
本発明のセラミックス含有熱伝導性樹脂シートにおいては、下記第1の態様及び第2の態様のいずれかであることが、優れた熱伝導率、シート重量の軽量化、良好な加工性及び絶縁破壊特性の点から好ましい。
すなわち、第1の態様は、セラミックス混合物における鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の含有割合が6〜25質量%であり、当該セラミックス混合物が前記樹脂組成物中に75〜80体積%の割合で含まれるセラミックス含有熱伝導性樹脂シートである。かかる態様とすることで、熱伝導率を7W/m・K以上とすることができる。
また、第2の態様は、セラミックス混合物における前記鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の含有割合が15〜25質量%であり、当該セラミックス混合物が前記樹脂組成物中に70〜80体積%の割合で含まれるセラミックス含有熱伝導性樹脂シートである。かかる態様とすることで、熱伝導率を9W/m・K以上とすることができる。
【0025】
(有機マトリックス)
本発明のセラミックス含有熱伝導性樹脂シート(以下、単に「熱伝導性樹脂シート」と称することがある。)に用いられる有機マトリックスは、熱伝導性樹脂シートの機械的強度、耐熱性、耐久性、柔軟性、可撓性等の要求特性に応じて、従来熱伝導性樹脂シートの有機マトリックスとして使用されている各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等の中から、適宜選択して用いることができる。これらの有機マトリックスは、一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明においては、特に硬化性エポキシ樹脂や、硬化性シリコーン樹脂が好適に用いられる。
【0026】
<硬化性エポキシ樹脂>
本発明の熱伝導性樹脂シートにおいて有機マトリックスとして用いられる硬化性エポキシ樹脂としては、セラミックス混合物の有機マトリックスに対する分散性の観点から、常温で液状のエポキシ樹脂や、常温で固体状の低軟化点エポキシ樹脂が好ましい。
この硬化性エポキシ樹脂としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限されず、従来エポキシ樹脂として使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸のグリシジルエーテル、シクロヘキサン誘導体のエポキシ化により得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。前記エポキシ樹脂の中では、耐熱性、及び作業性等の観点からは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、シクロヘキサン誘導体のエポキシ化により得られるエポキシ樹脂が好適である。
【0027】
<エポキシ樹脂用硬化剤>
硬化性エポキシ樹脂を硬化させるために、通常エポキシ樹脂用硬化剤が用いられる。
このエポキシ樹脂用硬化剤としては、特に制限はなく、従来エポキシ樹脂の硬化剤として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができ、例えばアミン系、フェノール系、酸無水物系等が挙げられる。
アミン系硬化剤としては、例えばジシアンジアミドや、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が好ましく挙げられる。
フェノール系硬化剤としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂等が好ましく挙げられる。また、酸無水物系硬化剤としては、例えばメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂環式酸無水物、無水フタル酸等の芳香族酸無水物、脂肪族二塩基酸無水物等の脂肪族酸無水物、クロレンド酸無水物等のハロゲン系酸無水物等が挙げられる。
これらの硬化剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。このエポキシ樹脂用硬化剤の使用量は、硬化性及び硬化樹脂物性のバランス等の点から、前記硬化性エポキシ樹脂に対する当量比で、通常0.5〜1.5当量比程度、好ましくは0.7〜1.3当量比の範囲で選定される。
【0028】
<エポキシ樹脂用硬化促進剤>
本発明において、エポキシ樹脂用硬化剤と共に、必要に応じてエポキシ樹脂用硬化促進剤を併用することができる。
このエポキシ樹脂用硬化促進剤としては、特に制限はなく、従来エポキシ樹脂の硬化促進剤として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
これらの硬化促進剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。このエポキシ樹脂用硬化促進剤の使用量は、硬化促進性及び硬化樹脂物性のバランス等の点から、前記硬化性のエポキシ樹脂100質量部に対し、通常0.1〜10質量部程度、好ましくは0.4〜5質量部の範囲で選定される。
【0029】
<硬化性シリコーン樹脂>
硬化性シリコーン樹脂としては、付加反応型シリコーン樹脂とシリコーン系架橋剤との混合物を用いることができる。付加反応型シリコーン樹脂としては、例えば分子中に官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。上記の分子中に官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの好ましいものとしては、ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0030】
シリコーン系架橋剤としては、例えば一分子中に少なくとも2個のケイ素と水素とが結合した構造を有するポリオルガノシロキサンが挙げられる。この具体例としては、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキサン基末端封鎖ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)等が挙げられる。
【0031】
また、硬化触媒としては、通常白金系化合物が用いられる。この白金系化合物の例としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。
【0032】
(熱伝導性樹脂シートの作製)
本発明の熱伝導性樹脂シートは、有機マトリックスと本発明のセラミックス混合物を用い、例えば下記のようにして作製することができる。
まず、所定の割合の球状アルミナ粒子と、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子との混合物からなる本発明のセラミックス混合物を、適当な溶媒中に分散させてなる、濃度59〜80質量%程度のセラミックス混合物の懸濁液を調製する。
次いで、この懸濁液に、有機マトリックスを、該有機マトリックスとセラミックス混合物との合計に対し前記セラミックス混合物が30〜90体積%の割合で含まれるように加え、樹脂組成物を調製する。
有機マトリックスの主成分として、硬化性エポキシ樹脂を用いる場合には、この硬化性エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂用硬化剤と、必要に応じて用いられるエポキシ樹脂用硬化促進剤との混合物が有機マトリックスとなる。
また、有機マトリックスの主成分として、硬化性シリコーン樹脂を用いる場合には、付加反応型シリコーン樹脂と、シリコーン系架橋剤と、硬化触媒との混合物が有機マトリックスとなる。
【0033】
熱伝導性充填材として球状アルミナ粒子を単独で用いる場合、所望の熱伝導性を有する樹脂シートを得るには、有機マトリックス中に少なくとも50体積%、好ましくは80体積%以上の高充填が必要となる。しかし、本発明のセラミックス混合物は、球状アルミナ粒子と鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子との混合物であるため、球状アルミナ粒子を用いる場合より低充填で良好な熱伝導性を発揮させることができる。
より良好な熱伝導性を得るために、セラミックス混合物を、有機マトリックスとセラミックス混合物との合計に対し30〜90体積%含有させるが、70〜80体積%、又は75〜80体積%の割合で含有させることで、さらに優れた熱伝導率を有する熱伝導性樹脂シートが得られる。
なお、本発明において、セラミックス混合物、球状アルミナ粒子及び鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の体積基準の含有割合(体積%、体積分率)は、球状アルミナ粒子の比重(3.98)、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の比重(2.27)、及び使用する各種樹脂の比重から求めることができる。
【0034】
上記のようにして調製された樹脂組成物には、有機マトリックス及びセラミックス混合物以外に、必要に応じてその他添加剤を含むことができる。その他添加剤としては、例えば可塑剤、粘着剤、補強剤、着色剤、耐熱向上剤等が挙げられる。
【0035】
樹脂組成物は、通常のコーティング機等で、離型層付き樹脂フィルム等の離型性フィルム等の上に塗工され、遠赤外線輻射ヒーター、温風吹付け等によって乾燥されることにより、シート化される。
離型層としては、メラミン樹脂等が用いられる。また、樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が用いられる。
【0036】
一方、有機マトリックスが硬化性マトリックスである場合には、前記で得られた樹脂シートを、必要に応じて加圧下にさらに加熱処理して硬化させることにより、本発明の熱伝導性樹脂シートが得られる。
【0037】
このようにして得られた本発明の熱伝導性樹脂シートの厚さは、0.1〜10mmの範囲であることが好ましく、0.1〜0.3mmの範囲であることがより好ましい。
また、本発明の熱伝導性樹脂シートにおいては、好ましくは熱伝導率が3W/m・K以上、より好ましくは7W/m・K以上、さらに好ましくは9W/m・K以上である。
さらに、絶縁破壊特性の指標である絶縁破壊電圧は、1.0kV以上であることが好ましく、1.5kV以上であることがより好ましい。
本発明の熱伝導性樹脂シートは、その片面又は両面及びシート内に、作業性向上や補強目的でシート状、繊維状、網目状の部材を積層したり、埋没させたりして用いてもよい。
【0038】
このように得られた熱伝導性樹脂シートは、離型性フィルムから剥がし、あるいは、離型性フィルムを保護フィルムとした状態で、熱伝導性樹脂シートとしての使用に供するための製品の形とすることができる。
また、本発明の熱伝導性樹脂シートは、粘着性層を熱伝導性樹脂シートの上面または下面にさらに設けた構成としてもよく、これにより、製品使用時の利便性が高まる。
【0039】
本発明の熱伝導性樹脂シートは、例えばMPUやパワートランジスタ、トランス等の発熱性電子部品からの熱を放熱フィンや放熱ファン等の放熱部品に伝熱させるために使用され、発熱性電子部品と放熱部品の間に挟み込まれて使用される。これによって、発熱性電子部品と放熱部品間の伝熱が良好となり、発熱性電子部品の誤作動を著しく軽減させることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、球状アルミナ粒子及び鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の体積基準のD50、並びに各例で得られた熱伝導性樹脂シートの熱伝導率は、下記の方法により測定した。
【0041】
(1)球状アルミナ粒子及び鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の体積基準のD50の測定は粒度分布計を用いて行なった。鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子の場合は、シーラス社製、機種名「グラニュロメーター715」を用いて測定し、アルミナ粒子の場合は、ベックマンコールター社製、機種名「Multisaizer」を用いて体積基準のD50を測定した。
【0042】
(2)熱伝導性樹脂シートの熱伝導率
(株)アイフェイズ社製、機種名「アイフェイズ・モバイル」により、熱拡散率を測定し、それにそれぞれの樹脂シートの比熱と密度の理論値を掛けることにより算出した値である。
【0043】
実施例1〜3
(1)有機マトリックスとセラミックス混合物を含む樹脂組成物の調製
有機マトリックスとして、液状硬化性エポキシ樹脂[ジャパンエポキシレジン社製、商品名「jER828」、ビスフェノールA型、エポキシ当量184−194g/eq、25℃における比重1.17]100質量部と、硬化剤としてのイミダゾール[四国化成社製、商品名「2E4MZ−CN」]5質量部との併用物を用いた。また、セラミックス混合物として、球状アルミナ粒子[昭和タイタニウム社製、商品名「CB」]と、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子[昭和電工社製、商品名「UHP−1」、体積基準のD50が9μm、アスペクト比(L:r)が8:1(n=30)]との質量比79:21との混合物を用いた。
なお、球状アルミナ粒子としては、体積基準のD50が11μm(「A10S」と記すことがある)、28μm及び51μm(「A50S」と記すことがある)の3種のものをそれぞれ用いた。また、下記表1に示すとおり、D50が11μmの球状アルミナ粒子を用いた例を実施例1、D50が28μmの球状アルミナ粒子を用いた例を実施例2、D50が51μmの球状アルミナ粒子を用いた例を実施例3とした。
【0044】
ホモジナイザー用ステンレス製容器に、前記のセラミックス混合物100質量部と、メチルエチルケトン(MEK)45質量部を加え(A50Sを用いた場合)、ホモジナイザーで回転数5000rpmの条件で2分間撹拌・混合して、セラミックス混合物の懸濁液を調製した。(MEKはアプリケータで塗布可能な粘度に調整するために用いるため、それぞれの系によって量は異なる。よって以後はMEKの量に関する記載は割愛する。)
次いで、このセラミックス混合物の懸濁液に、前記の有機マトリックスを、該有機マトリックス中のセラミックス混合物の含有量が70体積%となるように加え、再びホモジナイザーで回転数5000rpmの条件で10分間撹拌混合して、樹脂組成物を調製した。
【0045】
(2)熱伝導性樹脂シートの作製
横10.5cm、縦13cmに切り取った離型フィルム上に、前記樹脂組成物をアプリケータにより、硬化膜厚が500μm以下となるように塗布したのち、40℃に設定した乾燥機の中に30分間静置して、溶媒のMEKを蒸発させて乾燥させ、3種のシート状樹脂組成物を得た。
次いで、この3種のシート状樹脂組成物を、それぞれ別の離型フィルムを介して、120℃、1MPaの条件で15分間圧着することにより、シート状樹脂組成物を硬化させ、3種の熱伝導性樹脂シートを作製した。
得られた3種の熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を測定した(30点の平均値)。その結果を、下記表1に示す。
【0046】
実施例4,5
実施例1(1)において、セラミックス混合物として、球状アルミナ粒子(前出)[体積基準のD50が28μm(実施例4)、51μm(実施例5)の2種]と、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子(前出)との質量比94:6との混合物を用い、セラミック混合物の含有量が全体の80体積%となるようにした以外は実施例1と同様な操作を行い、2種の熱伝導性樹脂シートを作製した。
得られた2種の熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0047】
実施例6
実施例1(1)において、セラミックス混合物として、球状アルミナ粒子(前出)[体積基準のD50が51μm]と、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子(前出)との質量比94:6との混合物を用い、セラミック混合物の含有量が全体の70体積%となるようにした以外は実施例1と同様な操作を行い、熱伝導性樹脂シートを作製した。
得られた熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0048】
実施例7
実施例1(1)において、セラミックス混合物として、球状アルミナ粒子(前出)[体積基準のD50が51μm]と、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子(前出)との質量比79:21との混合物を用い、セラミック混合物の含有量が全体の80体積%となるようにした以外は実施例1と同様な操作を行い、熱伝導性樹脂シートを作製した。
得られた熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
比較例1〜4
(1)有機マトリックスと球状アルミナ粒子を含む樹脂組成物の調製
実施例1(1)において、セラミックス混合物の代わりに、球状アルミナ粒子(前出)[体積基準のD50が11μm、21μm(「A20S」と記すことがある)、28μm、51μmの4種]のみを用いた以外は、実施例1(1)と同様にして、球状アルミナ粒子の懸濁液を調製した。
なお、下記表2に示すとおり、D50が11μmの球状アルミナ粒子を用いた例を比較例1、D50が21μmの球状アルミナ粒子を用いた例を比較例2、D50が28μmの球状アルミナ粒子を用いた例を比較例3、D50が51μmの球状アルミナ粒子を用いた例を比較例4とした。
【0051】
次いで、この球状アルミナ粒子の懸濁液に、有機マトリックスを、該有機マトリックス中の球状アルミナ粒子の含有量が80体積%になるように加えた以外は、実施例1(1)と同様な操作を行い、4種の樹脂組成物を調製した。
【0052】
(2)熱伝導性樹脂シートの作製
前記(1)で得た4種の樹脂組成物を用い、実施例1(2)と同様な操作を行い、4種の熱伝導性樹脂シートを作製した。
得られた4種の熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表1及び表2から分かるように、熱伝導性充填材としてセラミックス混合物を用いて得られた実施例1〜7の本発明の熱伝導性樹脂シートにおける熱伝導率は、セラミックス混合物の充填量がそれぞれ70体積%、80体積%において3.4〜10.2W/m・Kの範囲にある。
これに対し、熱伝導性充填材として球状アルミナ粒子のみを80体積%充填してなる比較例の熱伝導性樹脂シートは、熱伝導率が3.8〜4.7W/m・Kの範囲である。
【0055】
球状アルミナ粒子の体積基準のD50が28μm及び51μmの場合の実施例と比較例の熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を比べると、球状アルミナ粒子の体積基準のD50が28μmの場合で、熱伝導率は、実施例2及び4ではそれぞれ5.9W/m・K及び5.3W/m・Kであるのに対し、比較例3では3.3W/m・Kであり、実施例に比べてかなり低い。
【0056】
また、球状アルミナ粒子の体積基準のD50が51μmの場合で、熱伝導率は、実施例3及び7ではそれぞれ9.1W/m・K及び10.2W/m・Kであるのに対し、比較例4では4.7W/m・Kであり、実施例に比べて著しく低い。
このことから、球状アルミナ粒子と鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子との混合物である本発明のセラミックス混合物は、球状アルミナ粒子単独のものに比べて、熱伝導性充填材として優れていることが分かる。
【0057】
比較例5
(1)有機マトリックスと球状アルミナ粒子を含む樹脂組成物の調製
比較例2(1)と同様にして、球状アルミナ粒子の懸濁液を調製した。
次いで、この球状アルミナ粒子の懸濁液に、有機マトリックスを、該有機マトリックス中の球状アルミナ粒子の含有量が70体積%になるように加えた以外は、比較例2(1)と同様な操作を行い、樹脂組成物を調製した。
【0058】
(2)熱伝導性樹脂シートの作製
前記(1)で得た樹脂組成物を用い、比較例2(2)と同様な操作を行い、熱伝導性樹脂シートを作製した。得られた熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を測定した。その結果を下記表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
比較例6
(1)有機マトリックスと鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子を含む樹脂組成物の調製
実施例1(1)において、セラミックス混合物の代わりに、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子(前出)[体積基準のD50が9μm]のみを用いた以外は、実施例1(1)と同様にして、球状アルミナ粒子の懸濁液を調製した。
次いで、この球状アルミナ粒子の懸濁液に、有機マトリックスを、該有機マトリックス中の球状アルミナ粒子の含有量が70体積%になるように加えた以外は、実施例1(1)と同様な操作を行い、樹脂組成物を調製した。
【0061】
(2)熱伝導性樹脂シートの作製
前記(1)で得た樹脂組成物を用い、実施例1(2)と同様な操作を行い、熱伝導性樹脂シートを作製した。得られた熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を測定した。その結果を下記表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表3及び表4から分かるように、窒化ホウ素の代わりに小粒子径の球状アルミナを組み合わせたものや、窒化ホウ素だけでフィラーとしたものは、殆ど熱電伝導性の改善が見られないことが判った。
【0064】
比較例7
実施例3において、セラミックス混合物として、球状アルミナ粒子(前出)[体積基準のD50が51μm]と、鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子(前出)との質量比が97:3の混合物を用い、セラミック混合物の含有量が全体の70体積%となるようにした以外は実施例1と同様な操作を行い、熱伝導性樹脂シートを作製した。
得られた熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を測定した。その結果を下記表5に示す。
【0065】
【表5】
【0066】
表5から分かるように、窒化ホウ素の質量比が本願の下限値未満の3質量%のものは熱伝導率の改善があまり見られないことが判った。
【0067】
実施例8〜14及び比較例8〜11
(1)有機マトリックスとセラミックス混合物を含む樹脂組成物の調製
有機マトリックスとして、液状硬化性エポキシ樹脂[ジャパンエポキシレジン社製、商品名「エピコート828」、ビスフェノールA型]100質量部と、硬化剤としての1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール[四国化成社製、商品名「キュアゾール2PN−CN」]1質量部との併用物を用いた。また、セラミックス混合物として、下記表6に記載粒子を用いた。
【0068】
ホモジナイザー用ステンレス製容器に、前記のセラミックス混合物(下記表7に示す配合)と、メチルエチルケトン(MEK)101質量部を加え、ホモジナイザーで回転数5000rpmの条件で2分間撹拌・混合して、セラミックス混合物の懸濁液を調製した。
次いで、このセラミックス混合物の懸濁液に、前記の有機マトリックスを、該有機マトリックス中のセラミックス混合物の含有量が下記表6に示す量となるように加え、再びホモジナイザーで回転数5000rpmの条件で10分間撹拌混合して、樹脂組成物を調製した。
【0069】
(2)熱伝導性樹脂シートの作製
上記熱硬化性樹脂組成物の溶液に、上記熱硬化性樹脂組成物と同体積の、DRが5μmで粒子状の窒化珪素充填剤{SN−7:電気化学工業(株)}を添加し、予備混合した。この予備混合物をさらに、三本ロールにて混練し、上記熱硬化性樹脂組成物の溶液中に、上記充填剤を均一に分散させたコンパウンドを得た。
次に、上記コンパウンドを厚さ100μmの片面離型処理したポリエチレンテレフタレートシートの離型処理面上にドクターブレード法で塗布し、110℃で15分間の加熱乾燥処理をし、厚さが80μmでBステージ状態の熱伝導性樹脂シートを作製した。
次に、上記熱伝導性樹脂シートを120℃で1時間と160℃で3時間の加熱を行い、熱伝導性樹脂シートを作製した。
得られた熱伝導性樹脂シートの熱伝導率を実施例1等と同様にして測定した(30点の平均値)。その結果を、下記表6に示す。
【0070】
【表6】
【0071】
熱伝導性樹脂シートの絶縁破壊特性の評価
銅板(40×40×5mm3)とアルミニウム板(30×30×5mm3)の間に30×30mm2の接着面積で熱伝導性樹脂シートを接着した試験片を作製した。試験片をJIS C 2110の耐電圧試験方法に準拠して、規定電圧を1.5kV,規定時間を60秒として測定した。絶縁破壊しなかった場合を合格(○)とし、絶縁破壊した場合を不合格(×)とした。
なお、熱伝導性樹脂シートは、実施例1に準じて、下記表7に示す配合にて各種作製した。また、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シートの熱伝導率も測定した。結果を下記表7に示す。
【0072】
【表7】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のセラミックス混合物は、熱伝導性充填材として有用である。そして、この熱伝導性充填材を用いて得られた本発明の熱伝導性樹脂シートは、例えばMPUやパワートランジスタ、トランス等の発熱性電子部品からの熱を放熱フィンや放熱ファン等の放熱部品に伝熱させるために使用することができる。また、熱伝導性樹脂シートの絶縁破壊特性が良好であるため、電子機器等の小型化に伴う熱伝導性樹脂シート薄膜化に十分対応することができる。
【符号の説明】
【0074】
10・・・鱗片状六方晶窒化ホウ素粒子
L・・・長径
r・・・厚み
図1