(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0013】
[1] ゴム成分(A)、及び熱可塑性樹脂(B)を含む射出成形品であって、
(1)ゴム成分(A)が熱可塑性樹脂(B)中に分散している、
(2)ゴム成分(A)の線膨張係数が12.5×10
−5〜19×10
−5/℃である、
(3)該射出成形品表面の鮮映性が60〜100%、及び
(4)該射出成形品のノッチ付きシャルピー衝撃強さが5〜60kJ/m
2
の特徴を有する無塗装高鮮映耐衝撃射出成形品。
[2] ゴム成分(A)のゴム質重合体部分の質量平均粒子径が、0.1〜1.2μmである、[1]に記載の無塗装高鮮映耐衝撃射出成形品。
[3] 繊維摩擦試験によるL*値の増加率が60%以下である、[1]又は[2]のいずれかに記載の無塗装高鮮映耐衝撃射出成形品。
[4] 連続荷重式表面測定機における20g時抵抗値が3gf以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の無塗装高鮮映耐衝撃射出成形品。
[5] 表面粗さRaが0.02μm以下の金型を使用して射出成形する、[1]から[4]のいずれかに記載の無塗装高鮮映耐衝撃射出成形品の製造方法。
【0014】
本発明の射出成形品に含まれるゴム成分(A)は、ゴム質重合体からなるか、及び/又はゴム質重合体とグラフト成分とを含むグラフト共重合体からなる。
ゴム質重合体は、射出成形品に耐衝撃性を付与すると同時に、射出成形品の金型からの離形を助ける働きをする。また、熱可塑性樹脂(B)と組み合わせて用いることにより、射出成形品に耐衝撃性と鮮映性をともに付与する働きをする。ゴム質重合体としては、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどが挙げられる。具体的には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体及びエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0015】
このうち、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が、耐衝撃性の点で好ましく用いられる。
【0016】
ゴム質重合体は、均一な組成であっても良いし、異なる組成の重合体を含むものでも良く、また、連続的に組成が変化しているものでも良い。
【0017】
ゴム成分(A)が、グラフト成分を含むゴム質重合体の場合、グラフト成分は、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体、から選ばれる一種以上の単量体を含む重合体がゴム質重合体に結合したものであることが好ましい。なお、グラフト成分は、これらの単量体以外に、共重合可能な他の単量体を含んでいてよい。グラフト率は、好ましくは200%以下であり、より好ましくは50〜170%、さらに好ましくは60〜150%である。グラフト率をこの範囲とすることで、ゴム成分(A)の線膨張係数を12.5×10
−5〜19×10
−5/℃に制御することができる。
【0018】
グラフト率は、ゴム質重合体にグラフト共重合したグラフト成分のゴム質重合体の質量に対する、質量割合で定義できる。
ゴム成分(A)のグラフト率は、溶剤、例えばアセトンを用いて、射出成形品から溶剤可溶分を取り除き、溶剤不溶分としてゴム成分(A)を取り出し、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によりゴム成分及びその他の成分を分析し、その結果を元にして求めることができる。
【0019】
本発明の射出成形品中のゴム成分(A)は、熱可塑性樹脂(B)の連続相の中に分散した形態をとっている。その形状は、不定形、棒状、平板状、粒子状等をとりうるが、耐衝撃性の点から、より好ましいのは粒子状である。これらが熱可塑性樹脂(B)の連続相中に一つ一つが独立して分散する場合、いくつかの集合体が分散する場合のいずれもとりうるが、耐衝撃性の点で一つ一つが独立した方が好ましい。
【0020】
熱可塑性樹脂中に分散するゴム成分(A)に含まれるゴム質重合体の大きさは、質量平均粒子径として、射出成形品を製造する際の離型効果の点で0.1μm以上、及び射出成形品表面の鮮映性の点で1.2μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.15〜0.8μm、さらに好ましくは0.15〜0.6μm、特に好ましくは0.2〜0.4μmである。質量平均粒子径は、射出成形品から超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、超薄切片の任意の50μm×50μmの範囲について画像解析して求めることができる。
【0021】
なお、ここで質量平均粒子径とは、ゴム質重合体の形状が球状の場合はその直径に相当し、球状で無い場合は、最長径と最短径との平均値とする。
【0022】
ゴム成分(A)は、ゴム質重合体の場合はゴム分のみで構成されるが、グラフト成分を含むゴム質重合体の場合は、例えばゴム質重合体の内部で樹脂成分が相分離した、オクルージョンを含んだ構造のように、ゴム分と樹脂成分を含む不均一な構造体となっているような場合がある。オクルージョンを含む粒子の場合のゴム質重合体部分の質量平均粒子径は、オクルージョンを含めた状態で測定する。
【0023】
本発明の射出成形品において、ゴム成分(A)は射出成形品から取り出したとき、特定の線膨張係数を有することが必要である。ゴム成分(A)の線膨張係数は、12.5×10
−5〜19×10
−5/℃、好ましくは、12.5×10
−5〜17×10
−5/℃である。線膨張係数を19×10
−5/℃以下とすることで、優れた鮮映性を発現する射出成形品を得ることができる。また12.5×10
−5/℃以上とすることで、十分な耐衝撃性が得られる。
【0024】
ゴム成分の線膨張係数と射出成形品の鮮映性の関係は、次のように理解することができる。
【0025】
樹脂が成形される際には、溶融状態にある高温状態から、固体状となる温度に冷却されるが、その際、高温時に圧縮されて変形したゴム成分は、冷却の際、その変形を回復させようとする。この過程は、射出成形品の表面に影響を及ぼし、射出成形品の鮮映度が低下する。そこで、ゴム成分の線膨張係数を一定範囲とすることによりゴム成分を変形しにくくさせ、その結果鮮映度の低下を防ぐことが可能となるのである。
【0026】
ゴム成分(A)の線膨張係数の測定は、ゴム成分(A)を含む組成物や射出成形品からゴム成分(A)を単離し、測定すれば良い。
【0027】
射出成形品から、ゴム成分(A)を取り出すには、樹脂成分を溶解するが、ゴム成分を溶解しない溶媒を選択し、射出成形品から樹脂部分を溶解し、ゴム成分(A)を取り出せばよい。例えば、ゴム成分がポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等からなり、熱可塑性樹脂(B)が、ポリスチレン、MS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂等からなる場合には、溶媒としてはアセトンを用いることができる。射出成形品が上記以外のゴム質重合体や熱可塑性樹脂からなる材料を含む場合であっても、それぞれの組成から、適切な溶媒を選ぶことは容易に実施できる。
【0028】
ここで、ゴム成分(A)の線膨張係数を制御する方法について説明する。
ゴム成分(A)の線膨張係数は、以下の方法で、制御し、小さくすることができる。
1)ゴム成分(A)のグラフト率を高める、
2)ゴム成分(A)を構成するゴム質重合体の架橋度を高める、
3)ゴム成分(A)を構成するゴム質重合体のガラス転移温度(Tg)を高める。
【0029】
1)の方法によれば、ゴム質重合体の架橋度やTgに大きく依存せずに線膨張係数を制御することが可能となる。グラフト率は、ゴム成分(A)を調合する際にゴム質重合体の質量に対して、グラフト重合を行う単量体の質量を増減させることにより、調整することができる。
【0030】
一方、2)の方法でゴム成分(A)の線膨張係数を制御する場合は、ゴム質重合体の架橋度を示す指標として膨潤指数を用いるとよい。好ましい膨潤指数は10〜80%であり、より好ましくは15〜60%である。膨潤指数をこの範囲に調整することにより、ゴム成分(A)の線膨張係数を好ましい範囲に制御することが可能となる。膨潤指数の制御は、例えば乳化重合でゴム質重合体を製造する場合、重合温度を高くする、重合終了時の重合転化率を高める、重合中のモノマー/ポリマー濃度比を小さくして重合する、等の方法を採用することができ、このようにすると、膨潤指数が小さくなり、架橋度を高めることができる。さらに、架橋性のモノマー、例えばジビニルベンゼン等を共重合して使用することにより、膨潤指数を小さくすることもできる。
【0031】
3)の方法を採用する場合、ゴム質重合体のTgは、耐衝撃性の点から、好ましくは−100〜0℃程度のものが使用される。より好ましくは−20〜−90℃である。ゴム質重合体を構成する単量体の組成を調整してゴム質重合体のTgを上限の0℃に近づければ、線膨張係数を小さくすることが可能である。ゴム質重合体のTgを制御する方法としては、ゴム質重合体として共重合体を用い、共重合体の組成比を調整する方法が挙げられる。例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体の場合、ブタジエンを主体とするブロック部分のブタジエン比率を下げることにより、ゴム質重合体のTgを高めることができる。
【0032】
ゴム成分(A)の線膨張係数の制御には、上記1)〜3)の方法を単独で、又は組み合わせて使用することも可能である。このうち、グラフト率で制御する方法が、鮮映性と耐衝撃性のバランスがとりやすく、好ましい。
【0033】
本発明における熱可塑性樹脂(B)は、射出成形可能な樹脂であり、ゴム成分(A)と一緒に用いることにより、射出成形品に耐衝撃性と鮮映性を付与しうるものである。
さらに加えて、射出成形品に実用上必要な強度、硬さ、耐熱性をも付与できるものである。
このような熱可塑性樹脂としては、ゴム成分(A)との混和性の点から、非晶性の熱可塑性樹脂が好ましい。さらにこのうち、ガラス転移温度(Tg)が90〜300℃のものを選ぶことにより、実用上必要な強度、硬さ、耐熱性をも有する射出成形品を得ることができる。このような樹脂としては例えば、ポリスチレン、AS樹脂、メタクリル樹脂、MS樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエーテル樹脂、等を挙げることができる。これらは単独でも組み合わせて使用してもよい。
【0034】
なお、本発明における熱可塑性樹脂(B)は、その還元粘度(ηsp/c)が0.2〜1.5dl/gの範囲にあることが好ましい。より好ましくは0.3〜0.8dl/gである。還元粘度を0.2以上とすることで、耐衝撃性や強度が低下することもなく、また還元粘度を1.5以下とすることで十分な成形性を得ることができる。
【0035】
本発明の射出成形品において、ゴム成分(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計を100質量%とした場合、ゴム成分(A)の量は好ましくは20〜50質量%であり、より好ましくは25〜40質量%である。
【0036】
20質量%以上とすることは、耐衝撃性、および射出成形した際の成形品の型離れの点で好ましい。
【0037】
一方、ゴム成分(A)を50質量%以下とすることは、射出成形品の耐傷付き性の効果が発現しやすくなる点で好ましい。
【0038】
さらに、本発明において、熱可塑性樹脂(B)の組成と、ゴム成分(A)中のグラフト成分の組成を調整して相溶性を高めると、ゴム質重合体の分散状態が良好となり、射出成形品の耐衝撃性、鮮映性、耐傷つき性をバランス化することができる。熱可塑性樹脂(B)とゴム成分(A)中のグラフト成分の好ましい組み合わせの例を以下に示す。
【0039】
熱可塑性樹脂(B)がシアン化ビニル単量体を含む場合、ゴム成分(A)中のグラフト部分も、シアン化ビニル単量体を含む組成であることが好ましく、ゴム成分(A)中のグラフト成分、及び熱可塑性樹脂(B)におけるシアン化ビニル系単量体の量は、それぞれにおいて15質量%〜45質量%であることが好ましい。
【0040】
熱可塑性樹脂(B)が芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体からなる共重合体と、メタクリル系単量体とアクリル系単量体からなる共重合体との混合物の場合には、ゴム成分(A)中のグラフト成分、及び熱可塑性樹脂(B)におけるシアン化ビニル系単量体の量は、それぞれ15〜30質量%であることが好ましい。また、鮮映性の点から、アクリル系単量体の共重合体中のメタクリル酸メチル含量は75〜98質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは85〜98質量%である。
【0041】
熱可塑性樹脂(B)が芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体との共重合体であるか、又は芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体からなる3元共重合体である場合には、ゴム成分(A)中のグラフト成分、及び熱可塑性樹脂(B)におけるシアン化ビニル系単量体の量は、それぞれ30〜45質量%であることが好ましい。アクリル系単量体を含む場合には、鮮映性の点で、ゴム成分(A)中のグラフト成分、及び熱可塑性樹脂(B)におけるアクリル系単量体の量は、それぞれ5〜20質量%であることが好ましい。アクリル系単量体の存在は流動性を向上させるため、高鮮映な射出成形品が得易くなる。中でも特に、アクリル酸ブチルやメタクリル酸ブチルが好ましく使用される。
【0042】
本発明の射出成形品は、ゴム成分(A)、熱可塑性樹脂(B)以外の原材料として、摺動補助剤(C)を含有しても良い。摺動補助剤は、射出成形品表面に滑性を付与することを目的とするものである。摺動補助剤(C)の含有量はゴム成分(A)、熱可塑性樹脂(B)の合計質量に対し、0.05〜2質量%であることが耐衝撃性の点で好ましい。摺動補助剤(C)を含有することにより、繊維摩擦試験がさらに良好となる。
【0043】
摺動補助剤(C)としては、例えば脂肪族金属塩等の滑剤、ポリオレフィン類、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。
【0044】
脂肪族金属塩等としては、脂肪酸金属塩及びアミド基又はエステル基を有する滑剤が少なくとも1種以上配合されることが耐傷付き性の点で好ましい。
【0045】
脂肪酸金属塩とは、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛から選ばれる1種以上が含まれた金属と脂肪酸の塩である。
【0046】
具体的には、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム(モノ、ジ、トリ)、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ラウリン酸カルシウムであり、更に好ましくは、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛がある。
【0047】
特に好ましくはステアリン酸系の金属塩であり、具体的にはステアリン酸カルシウムが耐傷付き性の点で好ましい。
【0048】
ポリオレフィン類としては、エチレン、プロピレン、α−オレフィンなどの少なくとも1種以上から生成される組成物が挙げられ、これらは該組成物を原料に誘導された組成物も含む。
【0049】
具体的には、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン(高密度、低密度、直鎖状低密度)、酸化型ポリオレフィン、グラフト重合ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0050】
これらのうち、酸化型ポリオレフィンワックス、スチレン系樹脂をグラフトしたポリオレフィンが耐傷付き性の点で好ましく、更に好ましくは、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、アクリロニトリル−スチレン共重合体グラフトポリプロピレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体グラフトポリエチレン、スチレン重合体グラフトポリプロピレン、及びスチレン重合体グラフトポリエチレンである。
【0051】
ポリエステルエラストマーとしては、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物との重縮合、オキシカルボン酸化合物の重縮合ラクトン化合物の開環重縮合、或いはこれらの各成分の混合物の重縮合などによって得られるポリエステルが挙げられる。ホモポリエステル又はコポリエステルの何れを用いても良い。
【0052】
上記ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、及びこれらのジカルボン酸の混合物などが挙げられ、これらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体なども含まれる。また、これらのジカルボン酸化合物は、エステル形成可能な誘導体、例えば、ジメチルエステルのような低級アルコールエステルの形で使用することも可能である。本発明においては、これらのジカルボン酸化合物を単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
このうち、特にテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸及びドデカンジカルボン酸が重合性、色調及び耐衝撃性の点から好ましく用いられる。
【0054】
上記ジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブテンジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられ、これらのポリオキシアルキレングリコール及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0055】
上記オキシカルボン酸化合物としては、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸などが挙げられ、これらのアルキル、アルコキシ及びハロゲン置換体も含まれる。これらのオキシカルボン酸化合物は、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ポリエステルエラストマーの製造のために、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物を用いることもできる。
【0056】
ポリアミドエラストマーとしては、炭素数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又はm+nが12以上のナイロンmn塩などが挙げられ、ハードセグメント(X)としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナン酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノベルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸;カプロラクタムラウロラクタムなどのラクタム類、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11,6、ナイロン11,10、ナイロン12,6、ナイロン11,12、ナイロン12,10、ナイロン12,12などのナイロン塩が挙げられる。
【0057】
また、ポリオールなどのソフトセグメント(Y)としては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック又はランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとのブロック又はランダム共重合体などが挙げられる。
これらのソフトセグメント(Y)の数平均分子量は2.0×10
2〜6.0×10
3、好ましくは2.5×10
2〜4.0×10
3である。
【0058】
なお、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの両末端を、アミノ化又はカルボキシル化して用いてもよい。
【0059】
これらの摺動補助剤(C)の中では、耐傷付き性の点で特にステアリン酸系金属塩とワックス類を併用したものが良い。
【0060】
摺動補助剤(C)を添加する場合には、その相容性を向上させる目的で、酸変性或いはエポキシ変性した変性樹脂を混合してもよい。また、ゴム成分(A)、熱可塑性樹脂(B)の一部を、鮮映性を損なわない範囲で酸変性、エポキシ変性してもよい。このようなものとしては、例えば、熱可塑性樹脂(B)が芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体の中から選ばれる単量体の共重合体の場合、それらにカルボキシル基又はグリシジル基を含有したビニルモノマーを共重合させたものなどがあげられる。
【0061】
カルボキシル基を含有するビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸等の遊離カルボキル基を含有する不飽和化合物、無水マレイン酸、無水イタコン酸、クロロ無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物型カルボキシル基を含有する不飽和化合物等があげられるが、これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が耐傷付き性の点で好適である。
【0062】
グリシジル基を含有するビニルモノマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、メチルグリシジルメタクリレート等が挙げられるが、これらの中ではメタクリル酸グリシジルが耐傷付き性の点で好適である。
【0063】
さらに本発明の射出成形品においては、本発明の効果を損なわない範囲でホスファイト系、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系及びシアノアクリレート系の紫外線吸収剤及び酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系及び酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤及び可塑剤、モンタン酸及びその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイド及びエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニル=ホスファート)、テトラフェニル−m−フェニレンビスホスファート、フェノキシホスホリル、フェノキシホスファゼンなどのリン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤などの添加剤を原材料として用いてもよい。これらの含有量はそれぞれ0.05〜1質量%が耐候性の点で好ましい。
【0064】
意匠性を付与する目的で、公知の着色剤、例えば無機顔料、有機系顔料、メタリック顔料、染料を添加することも出来る。着色剤の中では、射出成形品の色を白、黒、赤、にするものが、射出成形品の意匠に、特に際立った高級感を付与するので、好ましく用いられる。
【0065】
無機顔料としては、例えば酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料などが挙げられる。
【0066】
有機顔料としては、例えばアゾレーキ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、等のフタロシアニン系顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料などが挙げられる。
【0067】
メタリック顔料としては、例えばリン片状のアルミのメタリック顔料、ウェルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック顔料用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属をメッキやスパッタリングで被覆したものなどが挙げられる。
【0068】
染料としては、例えばニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン/ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン/インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン/オキシケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料、等が挙げられる。
【0069】
これらの着色剤は、単体、或いは二種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0070】
これらの添加量は、色調の点で0.05〜2質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1.5質量%である。
【0071】
本発明の射出成形品は、鮮映性が60〜100%、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5〜60kJ/m
2である。鮮映性は、90〜100%が好ましく、95%以上がより好ましい。ノッチ付きシャルピー衝撃強さは、7〜50kJ/m
2が好ましく、8〜30kJ/m
2がより好ましい。
【0072】
鮮映性は、射出成形品の美感を感じさせるものであり、60%以上であると通常、優れた高級感をかもし出す。
【0073】
また、ノッチ付きシャルピー衝撃強さが5kJ/m
2以上で、家電、ゲーム機、自動車の内装材等で実用上問題なく使用できる。一方、60kJ/m
2以下とすることで、鮮映性との両立が容易となる。
【0074】
本発明の射出成形品は、無塗装かつ高鮮映であることを実現したものであるが、実用的には、日常の使用において通常行われる程度の、汚れの清掃・ふき取り等の行為により、鮮映性が低下しないことが必要である。ふき取り作業により鮮映性が低下するのは、射出成形品表面に細かい傷が生じるためである。鮮映性保持能力、すなわち耐傷付き性の尺度として、繊維摩擦試験を用いることができる。繊維摩擦試験とは、射出成形品表面を、ティッシュペーパーで擦り、傷付きの程度を判定する試験である。拭き取り荷重500g、ストローク60mm、スピード50mm/sec、往復回数20回での評価により、日常行われる射出成形品の清掃・ふき取りを再現することができる。本試験の前後において射出成形品表面のL*値の増加量が好ましくは60%以下であれば、日常の使用において実用上問題とならない。より好ましくは、L*値の増加量が30%以下であり、特に5%以下が好ましい。
【0075】
繊維摩擦試験において、射出成形品表面のL*値の増加量を好ましい範囲とするためには、ゴム成分(A)の線膨張係数を12.5×10
−5〜19×10
−5の範囲とし、熱可塑性樹脂(B)として硬度の高いものを選べば良い。硬度が高いものとしては、例えば、ロックウェル硬度がMスケールで40〜105が好ましく、更に50〜105が好ましい。
【0076】
好ましい熱可塑性樹脂(B)の例としては、例えば
i)芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体の中から選ばれる少なくとも2以上の単量体の共重合体
ii)硬度の高いポリカーボネート共重合体
iii)ポリフェニレンエーテル
等が挙げられる。これらの成分は、それぞれ単独で用いてもよいし複数で用いてもよい。
【0077】
上記の芳香族ビニル系単量体としてはスチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びp−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。なかでもスチレン及びα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは、1種又は2種以上用いることができる。
【0078】
シアン化ビニル系単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルなどが挙げられるが、なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。これらは、1種又は2種以上用いることができる。
【0079】
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル及び(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、(メタ)アクリル酸等が挙げられ、これらは単独又は二種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0080】
なお、アクリル系単量体がメタクリル酸メチルを含む場合、当該アクリル系単量体中のメタクリル酸メチルの含量は、鮮映性の点で80〜94質量%であることが好ましい。より好ましくは85〜91質量%である。
【0081】
熱可塑性樹脂(B)として芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体の中から選ばれる単量体の共重合体を用いる場合は、必要に応じて、共重合可能な他の単量体を共重合させたものを用いてもよい。共重合可能な他の単量体としては、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上用いることができる。中でも、N−フェニルマレイミドは他の物性を損なうことなく耐熱性を付与できる点で好ましい。
【0082】
ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ホモポリカーボネート、芳香族コポリカーボネートのいずれをも使用することができる。製造方法としては、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法や、二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法等を挙げることができる。ここで、上記2官能フェノール系化合物としては、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等であり、特に2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕等をベースとし、これに硬さを付与しうる官能基が導入された構造を有する化合物を用いることが好ましい。本発明において、2官能フェノール系化合物は、単独で用いてもよいし、或いはそれらを併用してもよい。
【0083】
ポリカーボネート樹脂は、単独で使用することができるが、前述した、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体の中から選ばれる少なくとも2以上の単量体の共重合体と併用するのが、熱可塑性樹脂(B)の硬度の点から好ましい。
硬度の高いポリカーボネート共重合体を用いる場合は、具体的には、例えば硬度の高い芳香族コポリカーボネートであれば、特開平8−183852に記載の共重合体等、すなわち、2種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から導かれる単位を含有するコポリカーボネートであって、下記式[I]で示される構成単位を50〜99モル%の量で含有するコポリカーボネートが使用できる。
【化1】
【0084】
ポリフェニレンエーテルを使用する場合、その製造方法は例えば、米国特許第3306874号明細書、同第3306875号明細書、同第3257357号明細書及び同第3257358号明細書、日本国特開昭50−51197号公報及び同63−152628号公報等に記載されている製造方法等を挙げることができる。すなわち、ポリフェニレンエーテルは、フェノール系化合物の酸化カップリングによって得られ、単独重合体、及び共重合体が含まれる。
【0085】
ポリフェニレンエーテルの具体的な例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類との共重合体(例えば、日本国特公昭52−17880号公報に記載されているような2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体や2−メチル−6−ブチルフェノールとの共重合体)のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。
【0086】
これらの中でも特に好ましいポリフェニレンエーテルは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、又はこれらの混合物である。
【0087】
熱可塑性樹脂(B)としては、これらの樹脂を、単独で、又は組み合わせて使用することができる。
【0088】
本発明の射出成形品において、耐傷付き性の効果を得るには、連続荷重式表面測定機における20g時抵抗値が、3gf以下となることが、より好ましい。さらに好ましくは2.5gf以下であり、2.0gf以下が最も好ましい。連続荷重式表面測定器による測定値を小さくするには、ゴム成分(A)の線膨張係数を小さくすることが有効である。
【0089】
また、本発明の射出成形品は、200℃以下の沸点を持つ揮発分の含有量が1500ppm以下であることが好ましい。揮発分の含有量が1500ppm以下であると、長期経過後であっても、鮮映性の低下が小さい。
【0090】
熱可塑性樹脂(B)やゴム成分に含まれる揮発分とは、樹脂やゴムに残留する原料モノマーや製造工程で使用される溶媒等であり、例えば、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体、等である。又は、沸点が200℃以下の成分を含有する添加剤等が挙げられる。
【0091】
本発明の射出成形品は、表面粗さ(Ra)が0.1以下が好ましい。射出成形品の表面粗さが小さいと、鮮映性が高くなりやすくなる。射出成形品の表面粗さは、金型の表面粗さ、および成形条件で変化する。例えば、金型の表面粗さが小さく、金型温度を高くし、成形圧力を下げると、射出成形品の表面粗さは小さくなる傾向にある。
【0092】
(ゴム成分(A)の製法)
ゴム成分(A)を構成するゴム質重合体の製造方法は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の方法が使用できる。このうち、粒子形状のゴム成分が得られ、その粒子径の制御が容易であることから、乳化重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法が好ましく用いられる。
【0093】
ゴム質重合体として、複数のTgを有する重合体を用いる場合は、異なる単量体組成のものを、多段階に分けて重合して製造することができる。乳化重合法を用い、多段重合により製造するのが好ましい。
【0094】
また、ゴム質重合体が、組成勾配を有する重合体の場合、単量体組成を連続的に変化させて重合することができる。例えば、乳化重合において、いわゆるパワーフィード法を用いて製造することができる。
【0095】
ゴム質重合体が、芳香族ビニル系単量体と、ジエン系ビニル単量体のブロック共重合体の場合、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体の場合は、溶液中でリビングアニオン重合により、製造することができる。
【0096】
グラフト成分を含むゴム質重合体を製造する方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の方法が使用できる。このうち、乳化重合にて製造する際には、熱によりラジカルを発生する熱分解型の開始剤や、レドックス型の開始剤を用いることができる。
【0097】
乳化重合法では、例えば別途乳化重合で得たゴム質重合体を使用し、さらにビニル単量体を乳化重合させる方法等を用いることができる。ここで得られたグラフト部分は、熱可塑性樹脂(B)と相溶するものが耐衝撃性の点で好ましい。
【0098】
なお、粒子状のゴム質重合体を製造した後、同一の反応器で連続的にグラフト重合を行っても良いし、ゴム粒子を一旦ラテックスとして単離したのち、改めてグラフト重合を行っても良い。
【0099】
具体的には、例えば、乳化重合で得たポリブタジエンラテックスに、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体から選ばれる単量体を1種、又は2種以上を、ラジカルを開始させたグラフト重合を得る方法が挙げられる。
上記1種又は2種以上の単量体としては、例えばスチレンとアクリロニトリル、スチレンとメタクリル酸メチル、スチレン、メタクリル酸メチル、及びアクリロニトリルからなる単量体等が挙げられる。ラジカル開始剤としては、ペルオキソ二硫酸塩、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の開始剤を使うことができる。
【0100】
溶液重合法を使用する場合は、ジエン系単量体をリビングアニオン重合して無架橋のゴム質重合体を得た後、これとスチレン単量体、又はスチレン−アクリロニトリル単量体を溶かし合わせて重合を行うことにより、ゴム成分と高Tgの樹脂成分の複合体を析出させて得る方法等を用いることができる。
【0101】
熱可塑性樹脂組成物(B)の製造方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の方法が挙げられる。芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体の中から選ばれる少なくとも2以上の単量体の共重合体を製造するには、ラジカル重合により製造するのが好ましい。
【0102】
次に、本発明の射出成形品の製法について説明する。
【0103】
本発明の射出成形品は、熱可塑性樹脂(B)を溶融してゴム成分(A)を混練して組成物を製造する工程、及び射出成形工程、により製造する。
【0104】
(ゴム成分(A)と熱可塑性樹脂(B)の混練方法)
ゴム成分(A)と熱可塑性樹脂(B)とは、例えば、オープンロール、インテシブミキサー、インターナルミキサー、コニーダー、二軸ローター付の連続混練機、押出機等の混和機を用いた溶融混練方法等により混練できる。単軸、又は二軸押出機が一般的に用いられる。
【0105】
ゴム成分(A)と熱可塑性樹脂(B)を溶融混練機に供給する方法は、全ての構成成分を同一の供給口に一度に供給しても良いし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給しても良い。例えば、投入口を2ヶ所有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口から熱可塑性樹脂(B)を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口からゴム成分(A)を供給して溶融混練する方法が挙げられる。
【0106】
また、ゴム成分(A)と熱可塑性樹脂(B)を同一の供給口から供給する場合、予め両者を混合した後、押出機ホッパーに投入して混練する方法が挙げられる。
【0107】
好ましい溶融混練温度は、熱可塑性樹脂(B)の種類によって異なるが、シリンダー設定温度で、例えばPPEなら290〜330℃、AS樹脂の場合は、180〜270℃程度である。
【0108】
また、押出機を用いる場合、シリンダー温度は、供給ゾーンを30〜200℃とし、溶融混練が行われる混練ゾーンの温度を、結晶性樹脂の場合は融点+30〜100℃、非晶性樹脂であればTg+60〜150℃の範囲とすることが好ましい。温度設定をこのように二段階とすることにより、ゴム成分(A)と熱可塑性樹脂(B)の混練がスムーズに行われ、射出成形品表面の鮮映性が一段と優れたものとなる。
【0109】
溶融混練時間は、0.5〜5分程度であることが好ましい。
【0110】
また、樹脂組成物を押出生産する際、射出成形機に供給する段階で、樹脂組成物中の200℃以下の沸点を持つ揮発分の含有量は1500ppm以下であることが好ましい。例えば、二軸押出機のシリンダーの中央部から押出機先端の間に設置されたベント孔から、減圧度−100〜−800hPaで揮発分を吸引するのが好ましい。
【0111】
押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、又はストランドを形成した後ペレタイザーで切断してペレット化することができる。ペレットの形状は、円柱、角柱、球状など、一般的な形状をとり得るが、円柱型が好適である。
【0112】
本発明の射出成形品は、射出成形機により成形される。射出成形としては、例えば、射出圧縮成形、窒素ガスや炭酸ガスなどによるガスアシスト成形、および金型温度を高温化にする高速ヒートサイクル成形などが挙げられる。これらは組み合わせて用いることができる。好ましくは、ガスアシスト成形、高速ヒートサイクル成形、およびガスアシスト成形と高速ヒートサイクル成形の組合せである。
【0113】
ここで言うガスアシスト成形とは、一般的に公知な窒素ガスや炭酸ガスを用いた射出成形であり、例えば特公昭57−14968号公報等のように樹脂を金型キャビティ内に射出した後に、成形体内部に加圧ガスを注入する方法や例えば特許3819972号公報等のように樹脂を金型キャビティ内に射出した後に、成形体の片面に対応するキャビティに加圧ガスを圧入する方法や、例えば特許3349070号公報等のように熱可塑性樹脂に予めガスを充填させ成形する方法が挙げられる。これらのうち、成形体の片面に対応するキャビティに加圧ガスを圧入する方法が好ましい。
本発明では、ヒケ、ソリ防止の保圧はガスアシストが好ましい。ヒケ、ソリ防止の保圧を樹脂で行う場合、金型温度が比較的高いため、バリが発生しやすくなると共に、保圧時間を長くしなければヒケやソリは防止できなくなる。
【0114】
ゴム成分(A)及び熱可塑性樹脂(B)、更にはその他の添加剤との混練物として、上記の如く製造したペレットを用い、射出成形機にかけて射出成形品を成形することができる。成形機の金型としては♯4000番手以上、好ましくは♯12000番手以上のヤスリで仕上げられた金型を使用する。金型の算術平均表面粗さRaは好ましくは0.02μm以下、より好ましくは0.01μm以下である。このようなRaの金型を用いることで、射出成形品表面の鮮映性を60%以上にすることが可能となる。
【0115】
金型の表面をこのようなものとする方法としては、特に制限はなく、ダイヤモンドヤスリ、砥石、セラミック砥石、ルビー砥石、GC砥石等により超音波研磨機或いは手作業で磨くことによって調整することができる。
【0116】
また、用いる金型の鋼材は40HRC以上の焼入れ焼き戻し鋼が好ましく、さらに好ましくは50HRC以上である。
【0117】
金型を磨く代わりに、クロムめっきした金型を用いてもよいし、上述のように磨いた金型にクロムめっきをした金型を用いてもよい。
【0118】
射出成形において金型温度は、鮮映性の点からゴム成分(A)と熱可塑性樹脂(B)との混練物のビカット軟化点付近にして成形を行うことが好ましい。具体的には、ISO 306に準拠したビカット軟化点の−25〜+20℃が好ましく、さらに好ましくは、−15〜+5℃である。この条件の場合、キャビティ表面への転写性が向上し、より鮮映性に優れた射出成形品を得ることが出来る。
【0119】
一般に、キャビティ表面温度を高くすると冷却までの時間が長くなるため、成形サイクルが長くなってしまう問題がある。そこで、キャビティ表面を短時間で加熱冷却する高速ヒートサイクル成形法を用いることが好ましい。これによって、鮮映性の向上と生産性を両立することが出来る。成形体表面の冷却速度は、成形体の鮮映性に大きく影響し、1〜100℃/秒で冷却されることが好ましい。更に、30〜90℃/秒が好ましく、特に40〜80℃/秒が好ましい。
【0120】
また、スチーム配管や電熱線を内蔵させた金型を用いて、金型温度を上下させる成形法や、超臨界のCO
2を用いた成形法も好ましく使用できる。
【0121】
射出成形時の樹脂(上記混練物)温度は、成形される樹脂に適した温度で成形されることが好ましい。例えば、ABS系樹脂、ゴム変性ポリスチレン等、及びメチルメタクリレート系樹脂の場合には、220〜260℃の樹脂温度が好ましく、ポリカーボネートを含む樹脂の場合には、260〜300℃の樹脂温度が好ましい。
【0122】
本発明の射出成形品は、耐傷性の点で射出速度が1〜50mm/sであることが好ましく、更に5〜30mm/sが好ましい。
本発明の射出成形品は、上記方法により製造されるが、熱可塑性樹脂(B)とゴム成分(A)の混練を促進し、ゴム成分(A)の熱可塑性樹脂中での分散状態を良好にする方法として、例えば、以下の方法を使用することができる。
【0123】
ゴム成分と熱可塑性樹脂を溶融混練するに当たり、例えばゴム成分がバルク状の場合、ゴム成分を予め微細化しておくのが好ましい。ゴム成分を微細化するには、ゴム成分(A)をTg以下の温度に冷却固化したものを細かく破砕する方法がある。Tg以下の温度に冷却するのは、例えば液体窒素、ドライアイス/アセトン溶媒、等を用いることができる。冷却されたゴム成分は、ミルに投入する、ハンマーで叩く、等により微細化することができる。
【0124】
また、ゴム成分(A)、熱可塑性樹脂(B)がともに乳化重合で得られるラテックスの場合、ラテックスの状態で混合した後、ポリマー分を凝集させ、混合物を取り出すことができる。
【0125】
ゴム成分(A)を熱可塑性樹脂(B)中に容易に分散させ、良好な分散体を得るための更なる方法としては、ゴム成分(A)の一部と熱可塑性樹脂(B)の相溶性を高める方法がある。相溶性を高める方法としては、以下が挙げられる。
【0126】
a)ゴム成分(A)として微粒子状のもの、たとえば、粉砕して得た微細化ゴムを用いる場合には、微細化ゴムの表面を熱可塑性樹脂でコートする方法、が挙げられる。例えば、熱可塑性樹脂の溶液に微細化ゴムを浸漬したのち、微細化ゴムを乾燥させることによりゴム表面をコートできる。ゴム成分(A)がグラフト成分を含まないゴム質重合体の場合に適用できる。
【0127】
b)ゴム成分(A)のゴム質重合体が共重合体ブロックの場合、ブロック部と熱可塑性樹脂(B)とが相溶性の高い組み合わせを用いる。例えば、ゴム成分(A)としてビニル芳香族単量体単位と共役ジエン系単量体単位の共重合体ブロックや、前記共重合体ブロックを水添して得られる水添共重合体ブロック、を用いる場合、熱可塑性樹脂(B)としてポリフェニレンエーテル樹脂単独、又はポリフェニレンエーテル樹脂とポリスチレン樹脂とのアロイ、又はポリスチレン樹脂を用いることができる。
【0128】
c)ゴム成分(A)と熱可塑性樹脂(B)の相溶化剤を添加する場合、相溶化剤としては、例えばビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体の共重合体ブロック、又は該共重合体ブロックの水添物が用いられる。
【0129】
d)ゴム成分(A)として、グラフト成分を含むゴム質重合体を用いる場合、相溶化剤を用いてグラフト成分と熱可塑性樹脂(B)の相溶性を高くすることにより、ゴム質重合体の分散が良好となる。
【0130】
本発明においては、a)〜d)の方法を、単独で、又は組み合わせて使用することができる。
【実施例】
【0131】
以下に実施例を示す。評価は次に示す方法に従って行った。
【0132】
(1)鮮映性試験
射出成形品表面の鮮映度を写像性測定装置(スガ試験機(株)、写像性測定装置ICM−10P型、スリット間隔1mm、反射角度45°)を用い測定した。カラープレート射出成形品のゲート側、非ゲート側の平均を求めた。結果は2回測定してその平均値を用いた。
【0133】
(2)ノッチ付きシャルピー衝撃試験
射出成形品から、縦8cm×横1cmの試験片を切り出した後、ISO179に従って、所定のサイズのノッチ加工を行った後試験を行った。試験の値は試験片5本の平均値を用いた。
(3)繊維摩擦試験
9cm×5cm×2.5mmの黒色の平板を試験片に用い、学振磨耗試験機を用いて繊維による射出成形品表面の連続摩擦作業を行った。繊維としてはティッシュペーパー((株)カミ商事 エルモアティシュー)を8枚重ね、これを3回折り重ねたものを使用した。拭き取り方向は繊維が裂け易い方向とし、拭き取りの荷重は500g、ストロークは60mm、スピードは50mm/sec、往復回数は20往復とした。
連続摩擦作業の前後で射出成形品表面のL*値を測定し、その変化量を確認した。
ここで、L*は明度指数であってCIE1976のL*、a*、b*表色系のL*であり、スガ試験機株式会社製 S&M COLOUR COMPUTER MODEL SM−5を用いて測定した。
【0134】
(4)連続荷重式表面測定試験
新東科学株式会社 HEIDON Type22を用いて測定した。針は先端が球形で、半径0.3mmのサファイア針を使用した。駆動速度は10mm/50秒、荷重の変化は1g/1秒とし、50秒後に50g荷重がかかる様に設定した。3回測定し、その平均値を結果として用いた。
【0135】
(5)質量平均粒子径の測定
射出成形品から60±2nmの極薄切片を切り出し、例えばブタジエンならオスミニウム酸を用いて染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。写真を画像解析ソフトで解析し、質量平均粒子径を得ることができる。なお、観察で質量平均粒子径を解析できない場合、ゴム成分(A)が熱可塑性樹脂(B)中に分散していないことを意味する。
【0136】
(6)射出成形品原料中の揮発分の測定
成形前原材料1kgを、3時間乾燥機にて乾燥した後秤量(秤量P)し、その後200℃で、10分間乾燥機にて乾燥後し、秤量した(秤量Q)。200℃以下の沸点を持つ揮発分は以下の式で求められる。
200℃以下の揮発分=(秤量Q−秤量P)/秤量P
【0137】
(7)組成分析
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(日本分光(株)製)を用いて分析した。
【0138】
(8)還元粘度
試料0.25gを2−ブタノン50mlにて溶解してサンプル溶液とし、30℃にてCannon−Fenske型毛細管中の流出時間を測定することで得た。
【0139】
(9)表面粗さ
(株)東京精密 surfcom570A−3D(表面粗さ・輪郭形状測定機)を使用して測定した。
【0140】
(10)ビカット軟化点
ISOダンベル試験片(厚み4mm)を用い、ISO306に従い測定した。
【0141】
(11)膨潤指数(スウェル・インデックス)
ゴム成分を25℃のトルエンに48時間浸漬させ、その後該ゴム成分を取り出し、少量のトルエンで洗浄した後、表面に付着しているトルエンを拭き取って質量(W1)を測定した。次に、60℃に設定した熱風乾燥器で30分乾燥し、その後60±2℃に調整された真空乾燥器で14時間乾燥した。さらにデシケータ内で30分放冷した後、該ゴム成分の質量(W2)を測定した。
求めたW1及びW2から次式により、膨潤指数(スウェル・インデックス)を求める。
膨潤指数(%)=[(W1−W2)/W2]×100
膨潤指数が大きいと、架橋度は小さいことになる。
【0142】
(12)アセトン不溶分の測定法
射出成形品に含まれるアセトン不溶分の含有量、及び線膨張係数は以下の方法により確認することができる。
乾燥した遠沈管を1サンプルにつき2本準備し、遠沈管はデシケーター中で15分以上放冷後、電子天秤で0.1mgまで精秤した。
射出成形品から約1gを切削し遠沈管に計量し、0.1mgまで精秤した。メスシリンダーでアセトン約20mlを採取し遠沈管に入れ、シリコーン栓をして振とう機で2時間振とうした。
振とう後、シリコーン栓に付着しているサンプルは、少量のアセトンを用いて遠沈管内へ落とす。2本の遠沈管を日立高速冷却遠心機のローターへ対角線上にセットした。遠心分離機を操作して、回転数20000rpmで60分間遠心分離した。遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し、上澄み液をデカンテーションした。
メスシリンダーでアセトン約20mlを採取し遠沈管に入れシリコーン栓をした後、振とう機で1時間振とうした。この操作をもう一度繰り返した後、回転数20000rpmで50分間遠心分離した。
遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し、上澄み液をデカンテーションした。2回目のデカンテーションと同様の操作をもう一度行った。
メスシリンダーでメタノール約20mlを採取した。回転数20000rpmで30分間遠心分離する。遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し上澄み液をデカンテーションした。80℃で30分間乾燥した後、130℃で30分間乾燥した。乾燥後デシケーター中で30分以上放冷した。十分に放冷後電子天秤で0.1mgまで精秤し、以下の式により算出した。
アセトン不溶分(質量%)
=[アセトン不溶分量(g)÷サンプル採取量(g)]×100
射出成形品が無機系不溶分を含んでいる場合は以下の式により算出する。
アセトン不溶分(質量%)=[(無機系不溶分を含むアセトン不溶成分(質量%)−無機系不溶分(質量%))/(100%−無機系不溶分(質量%))]×100
ここでの無機系不溶分とは、例えば着色顔料に用いられたチタン、ガラスファイバー、タルク、炭酸カルシウム等をいう。
【0143】
(13)線膨張係数の測定法
アセトン不溶分の線膨張係数測定試料は、(12)におけるデカンテーション後、沈殿物を乾燥させ、ここから無機物を取り除き、熱コンプレッション成形等で固めたものを用いた。線膨張係数の測定は、ASTM D696に従って行う。
【0144】
なお、本実施例で使用した摺動剤は以下の通りである。
・摺動補助剤(C−1):三洋化成工業(株)製 サンワックスE−250P(重量平均分子量1.0万、酸価20)
・摺動補助剤(C−2):ダウ・ケミカル日本(株)製 NUC3195
・摺動補助剤(C−3):品川化工(株)製 SAK−CS−PPT−1
【0145】
(ゴム成分(重合体)(A)の製造例1)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.28μm、固形分量=40質量%、膨潤指数41%)110質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部、及び脱イオン水25質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル12質量部、スチレンを48質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.5質量部、クメンハイドロパーオキシド0.15質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
【0146】
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させて重合体(A−1)を得た。ここでは同時に熱可塑性樹脂(共重合体)(B−1)も得られた。重合体(A−1)と共重合体(B−1)との割合は、70質量%と30質量%であった。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、重合体(A−1)はアクリロニトリル8.6質量%、ブタジエン57.1質量%、スチレン34.3質量%、グラフト率75.1%、線膨張係数16.0×10
−5/℃、共重合体(B−1)はアクリロニトリル20.1質量%、スチレン79.9質量%であり、また(B−1)の還元粘度は0.33dl/gであった。
【0147】
(ゴム成分(重合体)(A)の製造例2)
アクリロニトリル24質量部、スチレンを36質量部とした以外は重合体(A)の製造例1と同様にして重合体(A−2)69.9質量%、共重合体(B−2)30.1質量%を得た。組成分析の結果、重合体(A−2)は、アクリロニトリル17.1質量%、ブタジエン57.2質量%、スチレン25.7質量%、グラフト率74.8%、線膨張係数15.8×10
−5/℃、共重合体(B−2)は、アクリロニトリル39.9質量%、スチレン60.1質量%であり、また(B−2)の還元粘度は0.40dl/gであった。
【0148】
(ゴム成分(重合体)(A)の製造例3)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.28μm、固形分量=40質量%、膨潤指数41%)110質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.05質量部、及び脱イオン水45質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル24質量部、スチレンを36質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.05質量部、クメンハイドロパーオキシド0.3質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
【0149】
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させて重合体(A−3)を得た。ここでは同時に共重合体(B−3)も得られた。重合体(A−3)と共重合体(B−3)との割合は、87.9質量%と12.1質量%であった。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、重合体(A−3)はアクリロニトリル21.9質量%、ブタジエン45.5質量%、スチレン32.6質量%、グラフト率119.8%、線膨張係数13.9×10
−5/℃、共重合体(B−3)はアクリロニトリル39.8質量%、スチレン60.2質量%であり、また(B−3)の還元粘度は0.33dl/gであった。
【0150】
(ゴム成分(重合体)(A)の製造例4)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.31μm、固形分量=50質量%、膨潤指数40%)140質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.075質量部、及び脱イオン水5質量部を加え、気相部を窒素置換した後、50℃に昇温した。続いて、1時間かけて65℃まで昇温しながら、アクリロニトリル13.5質量部、スチレンを36.5質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.25質量部、クメンハイドロパーオキシド0.1質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
【0151】
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させて重合体(A−4)を得た。ここでは同時に共重合体(B−4)も得られた。重合体(A−4)と共重合体(B−4)との割合は、73.4質量%と26.6質量%であった。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、重合体(A−4)はアクリロニトリル8.6質量%、ブタジエン68.1質量%、スチレン23.3質量%、グラフト率46.8%、線膨張係数17.9×10
−5/℃、共重合体(B−4)はアクリロニトリル27.1質量%、スチレン72.9質量%であり、また(B−4)の還元粘度は0.38dl/gであった。
【0152】
(ゴム成分(重合体)(A)の製造例5)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.28μm、固形分量=50質量%、膨潤指数40%)140質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.1質量部、及び脱イオン水5質量部を加え、気相部を窒素置換した後、50℃に昇温した。続いて、1時間かけて65℃まで昇温しながら、アクリロニトリル13.5質量部、スチレンを36.5質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.3質量部、クメンハイドロパーオキシド0.05質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
【0153】
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させて重合体(A−5)を得た。ここでは同時に共重合体(B−5)も得られた。重合体(A−5)と共重合体(B−5)との割合は、65.1質量%と34.9質量%であった。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、重合体(A−5)はアクリロニトリル6.2質量%、ブタジエン77.1質量%、スチレン16.7質量%、グラフト率30.0%、線膨張係数19.4×10
−5/℃、共重合体(B−5)はアクリロニトリル27.0質量%、スチレン73.0質量%であり、また(B−5)の還元粘度は0.36dl/gであった。
【0154】
(ゴム成分(重合体)(A)の製造例6)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.28μm、固形分量=30質量部、膨潤指数41%)100質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.01質量部、及び脱イオン水45質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル18.9質量部、スチレンを51.1質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.01質量部、クメンハイドロパーオキシド0.5質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
【0155】
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させて重合体(A−6)を得た。ここでは同時に共重合体(B−6)も得られた。重合体(A−6)と共重合体(B−6)との割合は、85.7質量%と14.3質量%であった。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、重合体(A−6)はアクリロニトリル17.5質量%、ブタジエン35.0質量%、スチレン47.5質量%、グラフト率185.7%、線膨張係数12.2×10
−5/℃、共重合体(B−6)はアクリロニトリル27.1質量%、スチレン72.9質量%であり、また(B−6)の還元粘度は0.33dl/gであった。
【0156】
(ゴム成分(重合体)(A)の製造例7)
重合反応槽に、ポリブタジエンゴムラテックス(日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」にて測定した質量平均粒子径=0.28μm、固形分量=40質量部、膨潤指数18%)100質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.01質量部、及び脱イオン水45質量部を加え、気相部を窒素置換した後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温しながら、アクリロニトリル18.9質量部、スチレンを51.1質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.01質量部、クメンハイドロパーオキシド0.5質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水22質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、硫酸第一鉄0.004質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩0.04質量部を溶解してなる水溶液を4時間にわたり添加した。添加終了後1時間、重合反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させた。
【0157】
このようにして得られたABSラテックスに、シリコーン樹脂製消泡剤、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョンを添加した後、硫酸アルミニウム水溶液を加えて凝固させ、さらに、十分な脱水、水洗を行った後、乾燥させて重合体(A−7)を得た。ここでは同時に共重合体(B−7)も得られた。重合体(A−7)と共重合体(B−7)との割合は、58.6質量%と41.4質量%であった。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、重合体(A−7)はアクリロニトリル6.4質量%、ブタジエン68.3質量%、スチレン25.3質量%、グラフト率46.4%、線膨張係数12.9×10
−5/℃、共重合体(B−7)はアクリロニトリル20.1質量%、スチレン79.9質量%であり、また(B−7)の還元粘度は0.34dl/gであった。
【0158】
(ゴム成分(重合体)(A)の製造例8)
スチレン単量体80質量部にポリブタジエンゴム(日本ゼオン(株)社製:商品名Nipol1220SL、質量平均粒子径1.1μm、膨潤指数65%)を5質量部溶解した溶液に、エチルベンゼン14質量部、1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社製:商品名パーヘキサ3M)0.04質量部、αメチルスチレンダイマー0.20質量部及びフェノール系酸化防止剤(ELIOKEM製:商品名Wingstay L)0.05質量部を加えた原料液を、内容積6リットルの攪拌機付き第一反応槽に連続的に2リットル/時間にて供給し、第一反応槽出口の固形分濃度35%となるよう温度を調節し、液体から固体への相転換を完了させ粒子を形成させた。第一反応槽の攪拌数は90回転/毎分であった。更に、第一反応槽と同型、同容量の第二反応槽、第三反応槽にて、第二、第三反応槽出口の固形分濃度が各々55〜60%、68〜73%になるよう槽内温度を調整し、重合を継続させた。
【0159】
次いで、230℃の真空脱揮装置に送り未反応スチレン単量体及び溶媒を除去し、押出機にて造粒し、重合体(A−8)を得た。ここでは同時に共重合体(B−8)も得られた。重合体(A−8)と共重合体(B−8)との割合は、13.1質量%と86.9質量%であった。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、重合体(A−8)はスチレン61.8質量%、ポリブタジエン38.2質量%、グラフト率162%、線膨張係数12.7×10
−5/℃、共重合体(B−8)はスチレン100質量%であり、また(B−8)の還元粘度は0.55dl/gであった。
【0160】
(熱可塑性樹脂(共重合体)(B)の製造例1)
アクリロニトリル13質量部、スチレン52質量部、溶媒としてトルエン35質量部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部からなる混合物を、窒素ガスを用いてバブリングさせた後、特許第3664576号の実施例2に記載されたものと同様の二段傾斜パドル型(傾斜角度45度)攪拌翼を供えた内容積150lの反応槽に、スプレーノズルを用いて連続的に37.5kg/時間の速度で供給した。
【0161】
重合温度は130℃とし、反応槽内での反応液の充満率が70容量%を維持できるように、供給液量と同量の反応液を連続的に抜き出した。反応槽の液相部相当部分には温調のためのジャケットが設けられ、ジャケット温度は128℃であった。また、攪拌所要動力は4kW/m、重合転化速度は39.8wt%/hrであった。
【0162】
抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、生成した共重合体(B−9)をペレットとして回収した。
【0163】
(B−9)の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.8質量%、スチレン79.2質量%であった。また、還元粘度は0.75dl/gであった。
さらに、共重合体(B−9)のロックウェル硬度(Mスケール)を測定したところ81であった。
【0164】
(熱可塑性樹脂(共重合体)(B)の製造例2)
反応槽への供給液として、アクリロニトリル35質量部、スチレン35質量部、溶媒としてトルエン30質量部、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部を用い、温調ジャケット温度を130℃とした以外は、共重合体(B)の製造例1と同様の方法で、共重合体(B−10)を製造した。重合転化速度は31.5wt%/hrであった。
【0165】
抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、共重合体(B−10)をペレットとして回収した。
【0166】
(B−10)の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル40.6質量%、スチレン59.4質量%であった。また、還元粘度は0.58dl/gであった。
さらに、共重合体(B−10)のロックウェル硬度(Mスケール)を測定したところ90であった。
【0167】
(熱可塑性樹脂(共重合体)(B)の製造例3)
反応槽への供給液として、アクリロニトリル21質量部、及びスチレン47質量部、溶媒としてトルエン32質量部、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部を用い、温調ジャケット温度を129℃とした以外は、共重合体(B)の製造例1と同様の方法で、共重合体(B−11)を製造した。重合転化速度は39.3wt%/hrであった。
【0168】
抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、共重合体(B−11)はペレットとして回収した。(B−11)の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル29.8質量%、スチレン70.2質量%であった。また、還元粘度は0.65dl/gであった。
さらに、共重合体(B−11)のロックウェル硬度(Mスケール)を測定したところ83であった。
【0169】
(熱可塑性樹脂(共重合体)(B)の製造例4)
メタクリル酸メチル68.6質量部、アクリル酸メチル1.4質量部、エチルベンゼン30質量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン150ppm、及びn−オクチルメルカプタン1500ppmを添加し、均一に混合した。
【0170】
この溶液を内容積10リットルの密閉式耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度135℃、平均滞留時間2時間で重合した。この重合液を反応器に接続された貯槽に連続的に送り出し、重合体と未反応単量体及び溶液と分離し、重合体を押出機にて連続的に溶融状態で押出し、共重合体(B−12)のペレットを得た。
【0171】
この共重合体の還元粘度は、0.35dl/gであり、熱分解ガスクロ法を用いて組成分析したところ、メタクリル酸メチル単位/アクリル酸メチル単位=98.0/2.0(質量比)の結果を得た。さらに、樹脂組成物中のラウリン酸とステアリルアルコールを定量したところ、樹脂組成物100質量部当たり、それぞれ0.03及び0.1質量部との結果を得た。
さらに、共重合体(B−12)のロックウェル硬度(Mスケール)を測定したところ100であった。
【0172】
(熱可塑性樹脂(共重合体)(B)の製造例5)
反応槽への供給液として、アクリロニトリル31質量部、スチレン31質量部、ブチルアクリレート8質量部、溶媒としてトルエン30質量部、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.05質量部を用い、温調ジャケット温度を129℃とした以外は、共重合体(B)の製造例1と同様の方法で、共重合体(B−13)を製造した。重合転化速度は30.5wt%/hrであった。
【0173】
抜き出した反応液は、250℃、10mmHgの高真空に保たれた揮発分除去装置へ導入し、未反応単量体、有機溶剤を脱気回収し、共重合体(B−13)はペレットとして回収した。
【0174】
(B−13)の組成は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル39.1質量%、スチレン51.1質量%、ブチルアクリレート9.8質量%であった。また、還元粘度は0.42dl/gであった。
さらに、共重合体(B−13)のロックウェル硬度(Mスケール)を測定したところ82であった。
【0175】
(硬度の高いポリカーボネート共重合体(B−14)の製造例)
ニッケル(Ni)製撹拌翼を取り付けた500mlのガラスリアクター中に、1.1―ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン0.30モル、ビスフェノールA0.30モル、ジフェニルカーボネート0.67モルを入れ、N
2雰囲気下、180℃で30分間撹拌した。
【0176】
その後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの15%水溶液を、芳香族ジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して2.5×10
−4モルになる量、また水酸化ナトリウムを芳香族ジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して1×10
−6モルとなる量加えて、N
2雰囲気下、180℃で30分間、エステル交換反応を行なった。
【0177】
さらにその後、210℃に昇温して、圧力を徐々に200mmHgまで減圧して1時間、さらに240℃まで昇温して200mmHgで20分間、圧力を徐々に150mmHgまで減圧して20分間、さらに100mmHgまで減圧し20分間、15mmHgまで減圧して15分間反応させ、280℃に昇温し、最終的に0.5mmHgまで減圧して1.5時間反応させた。
生成したポリカーボネート共重合体の極限粘度[IV]を、塩化メチレン中(0.5dl/g)、20℃でウベローデ粘度計を用いて測定したところ、0.50dl/gであった。
【0178】
さらに、ポリカーボネート共重合体のロックウェル硬度(Mスケール)を測定したところ58であった。
【0179】
(ポリフェニレンエーテル(B−15)の製造例)
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた10Lのジャケット付き重合槽に500mL/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.099gの塩化第二銅2水和物、4.705gの35%塩酸、41.971gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、31.658gのジ−n−ブチルアミン、1264gのn−ブタノール、544gのメタノール、3792gのキシレン、136gの2,6−ジメチルフェノール、24gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ、反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。
また、貯蔵槽に窒素ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、貯蔵槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた5Lの貯蔵槽に、200mL/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、720gのメタノール、1224gの2,6−ジメチルフェノール、216gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、混合溶液を調合した。
次いで、激しく撹拌した重合槽へ、重合槽へ1000NmL/分の速度で酸素ガスをスパージャーより導入を始めると同時に、貯蔵槽から送液ポンプを用い、上記貯蔵槽内の混合溶液を21.6g/分の速度で逐次添加した。330分通気し、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。なお、酸素ガスを供給開始140分後ポリフェニレンエーテルが析出しスラリー状の形態を示し、スラリー形態を示しはじめる前に混合溶液の添加は終了した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。
酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の50%水溶液を11.5g添加し60分間重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。反応器の内温は40℃になるようコントロールした。
その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール6400gともに10L洗浄槽に入れ分散させ、30分間撹拌した後再度ろ過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。洗浄槽の内温は40℃になるようコントロールした。これを3回繰り返し、次いで140℃で150分真空乾燥しポリフェニレンエーテルを得た。
得られたポリフェニレンエーテルを0.1g、クロロホルムに溶解し、濃度0.5g/dlの溶液とし、還元粘度を測定したところ、0.55dl/gであった。
さらに、ポリフェニレンエーテルのロックウェル硬度(Mスケール)を測定したところ80であった。
【0180】
(実施例1)
重合体(A−1)21質量部、共重合体(B−1)9質量部、共重合体(B−9)20質量部、共重合体(B−12)50質量部を混合し、(B−1)成分、(B−9)成分及び(B−12)成分中に(A−1)成分を分散させた後、これを押出機ホッパーに投入し、二軸押出機(PCM−30、L/D=28、池貝鉄工(株)製)を使用して、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数150rpm、混練樹脂の吐出速度15kg/hrの条件で混練して樹脂組成物のペレットを得た後、樹脂温度250℃、および射出速度20mm/sで射出成形(東芝機械(株)製 EC100)を行い、平板10cm×10cm×3mmを作成した。金型は10000番手のヤスリにて、表面がRa0.01μmになるまで磨いたものを使用した。金型温度は80℃とした。
【0181】
(実施例2〜13、比較例1〜3)
表1記載の配合組成にて、実施例1と同様の方法でペレット、及び射出成形品を得た。
【0182】
(実施例14)
表1記載の配合組成にて、実施例1の射出速度を5mm/sとした以外、同様な方法でペレット、及び射出成形品を得た。
(比較例4)
表1記載の配合組成にて、実施例1と同様の方法でペレットを得た後、射出成形を行った。金型は3500番手のヤスリにて、表面がRa0.05μmになるまで磨いたものを使用した。金型温度は80℃とした。
【表1】
【表2】
【0183】
以上より、本発明の射出成形品では、無塗装で鮮映性が高く、かつ耐衝撃性・耐傷付き性に優れた効果が得られていることがわかる。