特許第5793513号(P5793513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793513
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】リン含有エポキシ樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/14 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   C08G59/14
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-552872(P2012-552872)
(86)(22)【出願日】2011年2月8日
(65)【公表番号】特表2013-519751(P2013-519751A)
(43)【公表日】2013年5月30日
(86)【国際出願番号】US2011000225
(87)【国際公開番号】WO2011100049
(87)【国際公開日】20110818
【審査請求日】2013年12月4日
(31)【優先権主張番号】61/303,890
(32)【優先日】2010年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マリンズ,マイケル,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チボー,レイモンド,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,マーク,ビー.
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−037857(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/114383(WO,A1)
【文献】 特開平02−252724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59
C08L 63
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化学式で表される化合物であるリン含有エポキシ樹脂であって:
(式I)
【化1】
(式中、各Zは、独立して式(II):
(式II)
【化2】

式(III):
(式III)
【化3】
又は式(IV):
(式IV)
【化4】
であり、;
各R及びRは、独立して水素若しくはアルキル成分であり、;
式(I)の化合物中のRは、脂環式ジラジカル、二環式脂肪族ジラジカル、又は6から30個の炭素を有する三環式脂肪族ジラジカルであり、;及び
各Y及びXは、独立して水素、1から20個の炭素原子を有する脂肪族成分又は6から20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素成分である)
前記リン含有エポキシ樹脂は、10:1から1:1の範囲内にあるエポキシ対リンのモル比を有する、リン含有エポキシ樹脂。
【請求項2】
式(I)の前記化合物中のRは、1,3−及び1,4−シクロヘキシリデンの混合物である、請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂。
【請求項3】
式(I)の前記化合物中のRは、二環式C10H14ジラジカルの混合物である、請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂。
【請求項4】
式(III)及び式(IV)におけるYは、三環式構造を形成する2−ビフェニル−2’−オキシである、請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂。
【請求項5】
式(III)の及び式(IV)におけるXは、メトキシである、請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂。
【請求項6】
前記リン含有エポキシ樹脂の総重量に基づいて2wt%(重量%)から20wt%の範囲内のリン含量を有する、請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂。
【請求項7】
請求項1に記載のリン含有エポキシ樹脂を製造するための方法であって、
フェノール及びジアルデヒドの縮合反応生成物をエポキシ化する工程によって少なくとも4のエポキシ官能化を備えるポリグリシジルエーテルを提供する工程、及び
前記ポリグリシジルエーテルとリン−水素成分を含有するリン化合物とを反応させる工程
を含む方法。
【請求項8】
前記ジアルデヒドは、シクロアルカンジカルボキシアルデヒドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リン化合物は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドである、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してエポキシ樹脂に、及び特にハロゲン非含有のリン含有エポキシ樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、産業用電子機器及び家庭用電化製品のどちらでも使用されているが、これは特に、エポキシ樹脂の耐薬品性、機械的強度及び電気的性質のためである。例えば、エポキシ樹脂は、電子機器において積層品、接着材料及び/又は絶縁材料、例えば層間絶縁フィルムとして使用することができる。これらの用途にとって有用であるためには、エポキシ樹脂は、特定の必要な物理的、熱的、電気的絶縁特性及び耐湿特性を提供する必要がある。例えば、電気的用途のために使用されるエポキシ樹脂については、高いガラス転移温度(Tg)を有することが有益である。
【0003】
しかしエポキシ樹脂は、引火性の可能性がある。従って、エポキシ樹脂に難燃性を付与するために様々なアプローチが企てられてきた。2つの主要なアプローチが難燃性を提供するために講じられている。第1のアプローチは、ハロゲン化合物を活用する。ハロゲン含有化合物は、一般に電子産業において電気及び電子組立体に難燃性を付与するために使用されてきた。例えば、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)は、エポキシ樹脂のための難燃剤として広範に使用されてきた典型的なハロゲン含有化合物である。ハロゲン含有化合物は効果的ではあり得るが、ハロゲン含有化合物は、電子部品の寿命末期における焼却中に有害物質が形成される可能性のために環境上の観点から望ましくないと一部には考えられている。第2のアプローチは、第1のアプローチの環境上の懸念に対応した、難燃性を付与するためにハロゲン非含有化合物が使用される「環境に優しい」アプローチである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の実施形態は、リン含有エポキシ樹脂であって、式(I):
(式(I))
【化1】
(式中、各Zは、独立して式(II):
(式II)
【化2】
の化合物、式(III):
(式III)
【化3】
の化合物、又は式(IV):
(式IV)
【化4】
の化合物である;
各R及びRは、独立して水素若しくはアルキル成分である;
式(I)の化合物中のRは、脂環式ジラジカル、二環式脂肪族ジラジカル、又は6から30個の炭素を有する三環式脂肪族ジラジカルである;及び
各Y及びXは、独立して水素、1から20個の炭素原子を有する脂肪族成分又は6から20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素成分である)の化合物のリン含有エポキシ樹脂を含んでいる。
【0005】
本開示の実施形態は、該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物も含んでいる。様々な実施形態のためには、該硬化性組成物は、1wt%(重量%)から4wt%の範囲内のリン含量を含むことができる。
【0006】
本開示の実施形態は、該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化エポキシも含んでいる。様々な実施形態のためには、該硬化エポキシは、150℃(摂氏温度)から200℃の範囲内のガラス転移温度(Tg)を有することができる。
【0007】
本開示の実施形態は、さらに該リン含有エポキシ樹脂を製造するための方法であって、フェノール及びジアルデヒドの縮合反応生成物をエポキシ化することによって少なくとも3の官能価を備えるエポキシ樹脂を提供する工程、及び該エポキシ樹脂とリン−水素成分を含有するリン化合物とを反応させる工程を含む方法を含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は、特に自己硬化性化合物として、及び/又は硬化エポキシを形成するための硬化性組成物中の成分として使用できるリン含有エポキシ樹脂を含んでいる。本開示のリン含有エポキシ樹脂は、硬化性組成物中において他のエポキシ樹脂とともに他のエポキシ樹脂を用いて形成された硬化エポキシの耐熱性(例えば、Td及び上記で考察したTg)を増加させるためにも使用することもできる。
【0009】
本開示のリン含有エポキシ樹脂は、一部には該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化エポキシのための難燃剤として作用しながら、ハロゲン非含有であるという利点も提供する。該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成されたそのような硬化エポキシは、電気積層板、インターコネクト基板、ビルドアップフィルム、ソルダーレジスト、鋳物及び接着剤を含む電子用途のために有用である、適切な熱的及び電気的特性を有することもできる。
【0010】
詳細には、本開示のリン含有エポキシ樹脂は、熱機械的特性の向上、例えば該硬化エポキシのガラス転移温度の上昇を提供することができる。
【0011】
本開示の改良点は、該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化エポキシのガラス転移温度(Tg)を、該リン含有エポキシ樹脂を少なくとも150℃の温度、及び好ましくは少なくとも170℃の温度を受ける中高温度範囲の用途のために使用できるように上昇させることを含むことができる。さらに、本開示のリン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物は、難燃性に加えて、他の望ましい物理的特性、例えば耐熱性も又提供できることがある。耐熱性を測定するための1つの方法は、1つのサンプルが一定速度で加熱されるときに硬化エポキシの5wt%(重量%)が分解する温度を決定することによって熱分解温度(Td)を測定する方法である。本開示のリン含有エポキシ樹脂は、少なくとも330℃のTdを備える硬化エポキシ樹脂を提供することができる。
【0012】
さらに、本開示のリン含有エポキシ樹脂は、10:1から1:1、より好ましくは6:1から2:1、及び最も好ましくは5:1から3:1の範囲に及び得るエポキシ対リンのモル比を有することができる。
【0013】
様々な実施形態のためには、そのようなリン含有エポキシ樹脂は、式(I):
(式I)
【化5】
(式中、各Zは、独立して式(II):
(式II)
【化6】
の化合物、式(III):
(式III)
【化7】
の化合物、又は式(IV):
(式IV)
【化8】
の化合物である;
各R及びRは、独立して水素若しくはアルキル成分であり、Rは、脂環式ジラジカル、二環式脂肪族ジラジカル、又は6から30個の炭素を含有する三環式脂肪族ジラジカルである、並びに各Y及びXは、独立して水素、1から20個の炭素原子を有する脂肪族成分、又は6から20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素成分である)の化合物によって提示することができる。様々な実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂は、リン−水素成分を含有するリン化合物をエポキシ樹脂と反応させる工程によって形成することができる。
【0014】
実施形態のためには、リン−水素成分を含有するリン化合物の例には、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(DOPO);1,3,2−ジオキサホスホリナン;2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−;1,3,2−ジオキサホスホリナン;1,3,2−ジオキサホスホラン;1,3,2−ジオキサホスホラン;2−オキサイド;5,5−ジメチル−;1,3,2−ベンゾジオキサホスホール;2−オキサイド;1,3,2−ベンゾジオキサホスホール;1,3,2−ジアザホスホリジン;1,3−ジメチル−;1,3,2−ジアザホスホリジン;1,3−ジメチル−及び2−オキサイドが含まれるがそれらに限定されない。実施形態のためには、DOPOは、本開示において使用される好ましいリン化合物である。
【0015】
実施形態のためには、R及びRは、場合により酸素を含有する飽和直鎖状又は分枝状一価炭化水素基であるアルキル成分であってよい。実施形態のためには、該アルキル成分は、1から20個の範囲内、好ましくは1から4個の範囲内の炭素原子を含むことができる。アルキル成分の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、並びにメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、イソ−プロポキシメチル及びブトキシメチルが含まれるがそれらに限定されない。
【0016】
実施形態のためには、Rのための脂環式ジラジカル、二環式脂肪族ジラジカル及び三環式脂肪族ジラジカルの例には、式(A):
(式A)
【化9】
の化合物、式(B):
(式B)
【化10】
の化合物、式(C):
(式C)
【化11】
の化合物、式(D):
(式D)
【化12】
の化合物、式(E):
(式E)
【化13】
の化合物、式(F):
(式F)
【化14】
の化合物、式(G):
(式G)
【化15】
の化合物、式(H):
(式H)
【化16】
の化合物、式(I):
(式I)
【化17】
の化合物、式(J):
(式J)
【化18】
の化合物、式(K):
(式K)
【化19】
の化合物、式(L):
(式L)
【化20】
の化合物、式(M):
(式M)
【化21】
の化合物である)の化合物及びそれらの混合物が含まれるがそれらに限定されない。実施形態のためには、Rは、好ましくは1,3−及び1,4−シクロヘキシリデン(例えば、式(B)及び(C)の化合物)の混合物又は二環式C1014ジラジカル類(例えば、式(F)、(G)及び(H)の化合物)の混合物であり、2つの転換経路の内の1つによって調製できる。第1の経路は、第1工程においてオレフィン−アルデヒドが形成され、その後にジアルデヒドの形成が続く2つの工程で進行するジエン類のヒドロホルミル化である。第2の経路は、下記の1つの特定実施例において示した、アクロレイン及びジエンのディールズ・アルダー反応によってオレフィン−アルデヒドが形成され、その後にヒドロホルミル化が行われる経路である。
【化22】
【0017】
当業者であれば認識できるように、これらのヒドロホルミル化は、ジアルデヒド類の異性体の混合物を生じさせる。次にジアルデヒド類は、フェノール類との縮合反応によって式I(式中、Zは水素である)の化合物に転換させることができる。
【0018】
式IIIの化合物中及び式IVの化合物中のX及びYの例は、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、フェニル、フェノキシ、−SH、チオメチル、チオエチル及びチオフェニルを含むことができるがそれらに限定されない。実施形態のためには、X及びYは、DOPO由来であってもよい。
【0019】
実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂は、リン−水素成分を含有するリン化合物、例えばDOPOを少なくとも3の官能価を備えるエポキシ樹脂と、フェノール及びジアルデヒドの縮合反応生成物をエポキシ化することによって反応させる工程によって形成される。実施形態のためには、フェノール及びジアルデヒドの縮合反応生成物をエポキシ化することによって形成されたエポキシ樹脂は、2以下、好ましくは約1.8以下、より好ましくは1.5以下、及び最も好ましくは1.3以下である多分散性(Mw/Mn;Mwは重量平均分子量と等しく、Mnは数平均分子量と等しい)を好ましくは有する。反応生成物の1分子当たりのヒドロキシル基の平均数は、4.0から6.0の範囲内、好ましくは4.5から5.0の範囲内であってよい。
【0020】
実施形態のためには、縮合において使用できるジアルデヒド類には、5から24個の範囲内、より好ましくは6から20個の範囲内、及び最も好ましくは6から15個の範囲内の炭素原子を有するシクロアルカンのジアルデヒド類が含まれるがそれらに限定されない。例には、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロドデカン、ノルボルナン、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン(飽和ジシクロペンタジエン)、ドデカヒドロ−4,9:5,8−ジメタノ−1H−ベンズ[f]インデン(飽和トリシクロペンタジエン)が含まれるがそれらに限定されない。例えば、縮合は、シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドをフェノールを用いて縮合する工程を含むことができる。実施形態のためには、シクロアルカンジカルボキシアルデヒドは、特定ジカルボキシアルデヒドの1つ又はそれ以上の異性体(位置異性体及び立体異性体を含む)を含むことができる。例えば、シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド異性体の場合には、シス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボキシアルデヒド、トランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボキシアルデヒド、シス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシアルデヒド及びトランス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシアルデヒドの内の1つ又はそれ以上を使用できる。しかし、シス及び/又はトランス−シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシアルデヒドを使用することも可能である。さらに、環状炭素原子の数及び/又は環状置換基の存在若しくは非存在、数及び/又はタイプが相違する2つ又はそれ以上のジカルボキシアルデヒド類の混合物、例えば1つ又はそれ以上のシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド異性体と1つ又はそれ以上のシクロオクタンジカルボキシアルデヒド異性体の混合物は、本開示の方法において使用できる。
【0021】
実施形態のためには、縮合は、ポリフェノール化合物の混合物を含むことのできる反応生成物を生成する。実施形態のためには、反応生成物は、ポリグリシジルエーテルを形成するためにエポクロロヒドリンと反応させる工程を含むがそれには限定されない方法を使用することによってエポキシ化される。実施形態のためには、反応生成物上のヒドロキシ基は、ポリグリシジルを生成するためにグリシジルエーテル基に転換される。エポキシ化は、4から10の範囲内、より好ましくは5から8の範囲内、及び最も好ましくは6から7の範囲内の官能価を有するポリグリシジルエーテルを生成する。実施形態のためには、グリシジルエーテル基に転換されるヒドロキシ基のパーセンテージは、ヒドロキシ基の数に基づいて少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、及びいっそうより好ましくは少なくとも99%又はそれ以上であってよい。
【0022】
実施形態のためには、縮合において使用されるフェノール化合物は、(未置換)フェノールであってよい。さらに、フェノールの芳香族環は、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、1から6個の炭素原子を有する未置換若しくは置換アルキル、5から8個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換シクロアルキル、1から6個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アルコキシ、3から6個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アルケニル、3から6個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アルケニルオキシ、6から10個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アリール、2から7個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アラルキル、6から10個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アリールオキシ、及び7から12個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アラルコキシを含むがそれらに限定されない1つ又はそれ以上の置換基を含むことができる。実施形態のためには、縮合において使用されたフェノール化合物対シクロアルカンジカルボキシアルデヒドのモル比は、4:1から20:1の範囲内、好ましくは5:1から15:1の範囲内及びより好ましくは6:1から12:1の範囲内であってよい。
【0023】
実施形態のためには、ポリグリシジルエーテルは、DOPOと反応させられて本開示のリン含有エポキシ樹脂を産生する。ポリグリシジルエーテルのエポキシ基の1つの部分は、該ポリグリシジルエーテルがDOPOと反応した時点にリン−水素成分と置換される。DOPOが導入されると、エポキシ樹脂の官能価は、DOPOの各分子がエポキシ基と反応するにつれて減少し、それにより硬化中の架橋結合のために該エポキシ基が除去される。このため、エポキシ樹脂と反応するDOPOの量が増加するにつれて、硬化エポキシ樹脂の架橋密度及びガラス転移温度はどちらも低下する可能性がある。対照的に、本開示は、4から10の範囲内、より好ましくは6から7の範囲内の官能価を有するポリグリシジルエーテルをDOPOと反応させるので、このため3より大きい官能価を維持することができ、該硬化エポキシの架橋密度を維持するとともにガラス転移温度を上昇させることを可能にする。従って、本開示のリン含有エポキシ樹脂は、現行のノボラック型エポキシ樹脂と比較して上昇したガラス転移温度を有することができる。
【0024】
ポリグリシジルエーテルとリン−水素成分を含有するリン化合物とを反応させる工程は、本開示のリン含有エポキシ樹脂を形成するので、難燃性材料の調製において有用にすることができる。本開示のリン含有エポキシ樹脂は、2wt%から20wt%の範囲内、より好ましくは4wt%から15wt%の範囲内、及び最も好ましくは5wt%から15wt%の範囲内のリン含量を有することができる。本開示の実施形態は、難燃性材料を必要とする、半導体包装用途、電気的及び電子的用途並びに複合材料用途を含む他の用途においても有用な可能性がある。さらに、該リン含有エポキシ樹脂は、臭素原子及びハロゲン原子を実質的にどちらも含有していない。
【0025】
様々な実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂とリン−水素成分を含有するリン化合物、例えばDOPOとの反応は、好ましくは水の非存在下で実施されるが(一般に、水は、該硬化性組成物の総重量に基づいて5wt%未満、より好ましくは3wt%未満、及び最も好ましくは1wt%未満で存在する)、これは水がDOPOと反応して発泡を誘発する傾向があり得るからである。水は、周知の方法、例えば乾燥空気若しくは窒素気流中、真空オーブン中で加熱する工程を使用して、又は有機液体、例えばヘキサン若しくはトルエンを使用した水の共沸除去によって除去することができる。これは、DOPO自体又は反応前の混合物上のどちらでも実施できる。
【0026】
本開示は、該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物も提供する。本開示の硬化性組成物は、該硬化性組成物の総重量に基づいて0.5wt%から5.0wt%の範囲内のリン含量を有することができる。本明細書に記載した本開示の硬化性組成物は、場合により少なくとも1つの硬化剤(「硬化剤」とも呼ばれる)及び/又は硬化促進剤を利用することもできる。適切な硬化剤の例には、アミン硬化剤、例えばジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド類、ポリアミノアミド類、ポリフェノール類、ポリマーチオール類、ポリカルボン酸及び無水物、例えばフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、メチルナド酸無水物(NMA)、ポリアゼライン酸ポリ無水物、コハク酸無水物並びにマレイン酸無水物スチレン−マレイン酸無水物コポリマーが含まれるがそれらに限定されない。さらに、フェノール系硬化剤、例えばフェノールノボラック類、クレゾールノボラック類及びビスフェノールAノボラック類も使用できる。硬化剤は、好ましくは該硬化性組成物の総重量に基づいて2wt%から80wt%の範囲内の量で使用される。
【0027】
硬化促進剤(又は触媒)には、置換若しくはエポキシ修飾イミダゾール類、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾールが含まれる。他の複素環アミン類、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBUとしても公知)及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBNとしても公知)も使用できる。トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びトリフェニルホスフィンを含むがそれらに限定されない第3級アミン類及びホスフィン類も使用できる。さらに、ホスホニウム塩類、例えばエチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート並びにアンモニウム塩、例えばベンジルトリメチルアンモニウムアセテート及びベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドも硬化促進剤として使用することができる。ハロゲン塩類(ヨウ化物、臭化物、塩化物及びフッ化物)も有用であるが、一般にはハロゲン非含有用途においては余り望ましくない。触媒は、好ましくは該硬化性組成物の総重量に基づいて0.05wt%から約2.00wt%の範囲内の量で使用される。
【0028】
実施形態のためには、該硬化剤対該リン含有エポキシの最適比率は、通常は当量比によって表示される。該硬化剤中での当量比は、エポキシ対反応性水素(−SH、−OH、−NH若しくは−COOH)又は無水物の1.00:1.00であってよい。本開示の硬化性組成物は、好ましくは1.20:1.00から1.00:1.20、より好ましくは1.10:1.00から1.00:1.10の範囲内、及び最も好ましくは1.10:1.00から1.00:1.05の範囲内の当量比で調製される。
【0029】
一般に、式(I)の該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された該硬化性組成物を本開示に従って硬化させる工程は、最初に均質な溶解物を得るために該硬化性組成物中の該リン含有エポキシ樹脂を溶融させる工程、又は該リン含有エポキシ樹脂を適切な溶媒中に溶解させる工程によって実施することができる。適切な溶媒の例には、アルコール類、例えばDowanol(商標)PM(The Dow Chemical Company)、ケトン類、例えばアセトン及び/又はメチルエチルケトン、エステル類及び/又は芳香族炭化水素類が含まれるがそれらに限定されない。実施形態のためには、溶媒は、該硬化性組成物の総重量に基づいて50wt%までの量で使用することができる。溶媒は、硬化の進行中又は終了時に蒸留又は単純な蒸発によって除去することができる。
【0030】
本開示の実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された該硬化性組成物は、少なくとも1つの組成成分を含むこともできる。様々な実施形態のためには、該硬化性組成物の組成成分は、本開示のリン含有エポキシ樹脂と反応性又は非反応性のいずれであってもよい。様々な実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂及び該組成成分を用いて形成された硬化性組成物は、結合し、混合し、及び次に本開示のリン含有エポキシ樹脂を少なくとも1つの該組成成分と反応させる工程によって得ることができる。そのような組成成分の例には、エポキシ樹脂、ポリエポキシド樹脂、シアネートエステル類、ジシアネートエステル類、ポリシアネートエステル類、シアネート芳香族エステル類、マレイミド樹脂、熱可塑性ポリマー、ポリウレタン類、ポリイソシアネート類、ベンゾキサジン環含有化合物、二重若しくは三重結合を含有する不飽和樹脂系及びそれらの組み合わせが含まれるがそれらに限定されない。
【0031】
追加の実施形態では、本開示の硬化性組成物は、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び少なくとも1つの反応性及び/又は非反応性熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。そのような熱可塑性樹脂の例には、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニルスルホン類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリビニリデンフルオリド、ポリエーテルイミド、ポリフタルイミド、ポリベンズイミダゾール、アクリル系、フェノキシ並びにそれらの組み合わせ又はブレンドが含まれるがそれらに限定されない。
【0032】
様々な実施形態のためには、本開示のリン含有エポキシ樹脂は、ハイブリッド架橋ネットワークを形成するために熱可塑性樹脂と混合することができる。本開示の硬化性組成物の調製は、当分野において公知の適切な混合手段であって、個別成分を乾式混合する工程、及び引き続いて最終製品を製造するために使用される押出機内で直接的に、又は別個の押出機内でプレミックスする工程のいずれかで溶融混合する工程を含む混合手段によって実施できる。
【0033】
熱の適用によって軟化又は溶融されると、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び該熱可塑性樹脂を用いて形成された該硬化性組成物は、従来技術、例えば圧縮成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、カレンダ加工、真空成形、熱成形、押出成形及び/又はブロー成形を単独で、又は組み合わせて使用して形成又は成形することができる。本開示のリン含有エポキシ樹脂及び該熱可塑性樹脂を用いて形成された該硬化性組成物は、さらに、フィルム、ファイバー、多層積層板若しくは押出シートに形成、紡糸又は延伸することができる、又は1つ又はそれ以上の有機若しくは無機物質と混ぜ合わせることができる。
【0034】
様々な実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂は、硬化性組成物中で他のエポキシ樹脂と組み合わせて、他のエポキシ樹脂から形成された硬化エポキシの耐熱性を増加させるために使用できる。使用される他のエポキシ樹脂は、少なくとも1つのエポキシ樹脂及び/又はポリエポキシド樹脂を含むことができ、このとき1つ又はそれ以上の該エポキシ樹脂及び1つ又はそれ以上の該ポリエポキシド樹脂の組み合わせが可能である。そのようなエポキシ樹脂の例には、ハロゲン非含有エポキシ、リン非含有エポキシ、臭素化エポキシ並びにリン含有エポキシ及びそれらの混合物、エポキシ官能性ポリオキサゾリドン含有化合物、脂環式エポキシ、グリシジルメタクリレート/スチレンコポリマー、並びに液状エポキシ樹脂及びテトラブロモビスフェノールA樹脂の反応生成物から選択されるエポキシ樹脂が含まれるがそれらに限定されない。さらに、フェノールノボラック類、クレゾールノボラック類、「トリスフェノール」(トリス−4−ヒドロキシベンゼンメタン)、ビスフェノールAノボラック類、ジシクロペンタジエンビスフェノール、1,1,2,2−テトラフェノールエタン、ヒドロキノン、リゾルシノール、カテコール、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラブロモビスフェノールA、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒドノボラック、ジシクロペンタジエン−ジメチルフェノールノボラック及びそれらの組み合わせのグリシジルエーテル類も使用できる。
【0035】
ルイス酸も、エポキシ樹脂を含む組成物中において使用することができる。ルイス酸は、例えば、亜鉛、スズ、チタン、コバルト、マンガン、鉄、シリコン、アルミニウム及びホウ素のハロゲン化物、酸化物、水酸化物及びアルコキシド類の内の1つ又は2つ又はそれ以上の混合物を含むことができる。そのようなルイス酸及びルイス酸の無水物の例には、ホウ酸、メタホウ酸、場合により置換されたボロキシン類(例えば、トリメトキシボロキシン、トリメチルボロキシン若しくはトリエチルボロキシン)、場合により置換されたホウ素の酸化物、ホウ酸アルキル、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化亜鉛(例えば、塩化亜鉛)及び相対的に弱い共役塩基を有する傾向がある他のルイス酸が含まれる。
【0036】
該リン含有エポキシ樹脂及び/又は該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物は、様々な製造品の調製において有用な可能性がある。従って本開示は、上記の組成物のプリプレグ並びに造形品、強化組成物、積層板、電気積層板、コーティング、成形品、接着剤、本開示の硬化若しくは部分硬化リン含有エポキシ樹脂又はリン含有エポキシ樹脂を含む組成物からの以下で記載する複合製品も含んでいる。さらに、本開示の組成物は、様々な目的のために乾燥粉末、ペレット、均質塊、含浸製品及び/又は化合物の形態で使用することができる。
【0037】
本開示の硬化性組成物には、広範囲の追加の添加物を加えることができる。これらの追加の添加物の例には、繊維強化剤、充填剤、顔料、色素、増粘剤、湿潤剤、潤滑剤、難燃剤などが含まれる。適切な繊維及び/又は粒子強化材料には、特にシリカ、アルミナ三水和物、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、金属酸化物、ナノチューブ、ガラス繊維、石英繊維、炭素繊維、ボロン繊維、Kevlar繊維及びTeflon繊維が含まれる。繊維及び/又は粒子状強化材料についてのサイズ範囲は、0.5nm(ナノメートル)から100μmを含むことができる。様々な実施形態のためには、繊維強化材料は、マット、クロス又は長繊維の形態で供給されることがある。
【0038】
該硬化性組成物の実施形態は、該硬化組成物の消炎能力を改良するために役立つ少なくとも1つの共力剤を含むこともできる。そのような共力剤の例には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、金属ホスフィネート類、例えばExolit(登録商標)OP−930(Clariantから入手可能)及びそれらの組み合わせが含まれるがそれらに限定されない。さらに、該硬化性組成物の実施形態は、接着促進剤、例えば改質オルガノシラン類(エポキシ化、メタクリル、アミノ)、アセチルアセトネート類、硫黄含有分子及びそれらの組み合わせも含むことができる。その他の添加物には、湿潤剤及び分散助剤、例えば改質オルガノシラン類、Byk(登録商標)900シリーズ及びW9010(Byk−Chemie GmbH)、改質フルオロカーボン類及びそれらの組み合わせ;脱泡添加剤、例えばByk(登録商標)A530、Byk(登録商標)A525、Byk(登録商標)A555及びByk(登録商標)A560(Byk−Chemie GmbH);表面改質剤、例えばスリップ剤及び光沢剤;離型剤、例えばワックス類;並びにその他の機能性添加物又はポリマー特性を改良するための事前反応製品、例えばイソシアネート類、イソシアヌレート類、シアネートエステル類、アリル含有分子又は他のエチレン性不飽和化合物、アクリレート類及びそれらの組み合わせを含むことができるがそれらに限定されない。
【0039】
様々な実施形態のためには、樹脂シートは、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は硬化性組成物から形成することができる。1つの実施形態では、複数のシートを一緒に結合して積層板を形成することができるが、このとき該シートは該樹脂シートの少なくとも1つを含んでいる。該リン含有エポキシ樹脂及び/又は該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物は、樹脂クラッド金属箔を形成するためにも使用できる。例えば、金属箔、例えば銅箔は、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物を用いてコーティングすることができる。様々な実施形態は、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は組成物を用いて積層基板をコーティングすることによって調製できる多層板も含んでいる。
【0040】
様々な実施形態のためには、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は硬化性組成物は、コーティング層又は接着剤層として基板に適用することができる。又は、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は組成物は、粉末、ペレットの形態で成形若しくは積層することができ、又は基板、例えば繊維強化剤中に含浸させることができる。次に本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は硬化性組成物は、熱の適用によって硬化させることができる。
【0041】
適正な硬化条件を提供するために必要な熱は、硬化性組成物を構成する組成成分の比率及び使用された組成成分の性質に左右される可能性がある。一般に、本開示の硬化性組成物は、それを25℃から250℃、好ましくは100℃から200℃の範囲内の温度で加熱することによって硬化させることができるが、硬化剤の存在若しくはその量、又は該硬化性組成物中の該組成成分のタイプによって異なる。加熱する工程のために必要な時間は60秒間から24時間であってよいが、このとき正確な時間は、該硬化性組成物が薄層コーティングとして、又は相対的に大きな厚さの成形品若しくは積層板として、又は繊維強化複合材料のため、特に、例えば非電導性材料に適用され、引き続いて該硬化性組成物を硬化させる場合には電気的及び電子的用途のためのマトリックス樹脂として使用されるかどうかに従って異なる。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は、本開示の範囲を例示するために提示されるが、それらに限定されない。
【0043】
材料
フェノール、The Dow Chemical Companyから入手可能。
シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド、参照により全体として本明細書に組み込まれる国際公開第2001007382号パンフレットに記載されたように調製。
紫外線色素、Durite(登録商標)SD−357B(テトラフェノールエタン)、Hexionから入手可能。
p−トルエンスルホン酸(PTSA)(0.207wt%)、Sigma Aldrichから入手可能。
ホウ酸、工業用(CAS番号10043−35−3)、Sigma Aldrichから入手可能。
メチルエチルケトン(MEK)、工業用、The Dow Chemical Companyから入手可能。
9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(DOPO)、Schill and Seilacherから入手可能。
触媒、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート(CAS番号35835−94−0)(メタノール中で固体含有率70%に希釈)、Alfa Aesarから入手可能。
硬化剤、Rezicure(商標)3026、SI Groupから入手可能。
硬化剤、Dowanol(商標)PM、The Dow Chemical Companyから入手可能。
溶媒、Dowanol(商標)PMA、The Dow Chemical Companyから入手可能。
溶媒、2−メチルイミダゾール(メタノール中で20wt%)、Sigma Aldrich社から入手可能。
重炭酸ナトリウム(NaHCO)、工業用、Sigma Aldrichから入手可能。
エポキシ樹脂、XZ92530、The Dow Chemical Companyから入手可能。
【0044】
試験方法
ガラス転移温度(Tg)
ガラス転移温度は、TA Instruments(デラウエア州ニューキャッスル)製のQ200示差走査熱量計上で測定した。サンプルの温度は、1分当たり10℃ずつ30℃から220℃へ上昇させた。Tg1は、一次転移の中点が第1温度傾斜上で観察される温度として報告される。温度は220℃で15分間に渡り一定に維持し、次に30℃で平衡させた。再び、サンプルの温度は1分当たり10℃ずつ30℃から220℃へ上昇させた。Tg2は、一次転移の中点温度として報告される。温度は220℃で15分間に渡り一定に維持し、次に30℃で平衡させた。サンプルの温度は、1分当たり20℃ずつ30℃から220℃へ上昇させた。Tg3は、一次転移の中点温度として報告される。
【0045】
熱分解温度(Td)
Tdは、TA Instruments(デラウエア州ニューキャッスル)製のQ5000 TGA上で測定した。Tdは、サンプル塊の5wt%が分解した温度として報告される。
【0046】
エポキシ当量(EEW)
EEWは、「Standard Test Method for Epoxy Content of Epoxy Resins」と題するASTM Dl652−04に従って決定した。
【0047】
UL−94垂直燃焼試験
長さ5cm(センチメートル)×幅1cm×厚さ1.5mm(ミリメートル)の8層積層板サンプルを製造し、105℃のオーブン内で分析前に8時間に渡って状態調節する。サンプルを垂直位置に支持し、サンプルの底部に火炎を当てる。第1の火炎を10秒間当て、次に燃え上がりが止まるまで遠ざけ、その時点でさらに10秒間に渡り第2の火炎を当て、その後遠ざける。5つのサンプルを製造して試験する。結果は、第1燃焼時間及び第2燃焼時間として報告し、UL94評価を決定する。第1燃焼時間は、第1火炎が遠ざけられた後に燃え上がりが停止するために要する時間(秒間)である。同様に、第2燃焼時間は、第2火炎が遠ざけられた後に燃え上がりが停止するために要する時間(秒間)である。
【0048】
実施例
フェノール及びシクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの縮合による反応生成物の形成
フェノール(598g(グラム)、6.36mol(モル))及びシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド(74.2g、0.53mol、1,3−及び1,4−異性体の混合物;フェノール基対アルデヒド基の比率は6:1に等しく、フェノール対シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドの当量比は3:1に等しい)は、一緒に1リットル(L)の5ツ首反応装置へ加えた。この混合液は、機械的攪拌器を用いて500毎分回転数(rpm)で攪拌し、50℃へ加熱した。50℃及び大気圧下でp−トルエンスルホン酸(PTSA)(計1.3959g、0.207wt%)を30分かけて6回に分けて加えた。温度は、PTSAの各添加毎に数℃ずつ上昇した。第6回のPTSAの添加後、温度制御装置を70℃に設定し、反応装置に真空を適用した。反応装置の圧力を徐々に低下させて、反応液から水を除去した。還流が停止したらすぐに、反応装置から排気し、水(48g)を加えた。水(79.0g)及び重炭酸ナトリウム(NaHCO、0.6212g)を加えてPTSAを中和した。反応内容物が室温に冷却された時点に、全内容物を2Lの分液漏斗に移した。メチルエチルケトン(500ミリリットル(mL))を2Lの分液漏斗に加え、内容物はPTSA塩を除去するために水で数回洗浄した。回転蒸発装置を用いて溶媒及び過剰のフェノールを除去し、反応生成物をアルミニウム箔上に注入した。紫外線分光光度分析により、118.64のヒドロキシル当量(HEW)が得られた。
【0049】
反応生成物のエポキシ化によるポリグリシジルエーテルの調製
上記で形成された反応生成物(上記の構造の100%テトラフェノールであるという前提に基づくと107.5g、0.22mol)、エピクロロヒドリン(414.08g、4.51mol;エポキシ基対フェノール基の比率はエピクロロヒドリン対ポリフェノール化合物の当量比である5.1:1.0に等しい)及びDowanol(登録商標)PM(79.4g、12.7wt%)を1.5Lの5ツ首反応装置に加えた。生じた溶液は、650rpmで攪拌しながら65℃へ加熱した。65℃に達したら、真空(28.5kPa(キロパスカル))を反応装置へ適用し、50wt% NaOH(72.9g)水溶液を4時間にわたって反応混合液に加えた。添加が完了したら、反応混合液を65℃でさらに15分間に渡り維持し、次に全反応装置内容物を濾過して副生成物の塩を除去した。濾液を2Lの分液漏斗に移し、この濾液にメチルエチルケトンを加え、生じた混合液を水で数回抽出して残留塩を除去した。その後、洗浄用液を回転蒸発装置上で濃縮して未反応エピクロロヒドリンを除去した。
【0050】
ポリグリシジルエーテルをDOPOと反応させることによるリン含有エポキシ樹脂(3.0wt% リン)の調製
ポリグリシジルエーテル(88.79g)を凝縮器、機械的攪拌器及び熱電対を装備した250mLの丸底フラスコに加え、50cc/分(立方センチメートル毎分)の流速の窒素パージ下で120℃へ加熱した。溶融したら、温度を125℃へ上昇させ、Durite(登録商標)SD−357B(1.39g)を加え、30分間攪拌した。この反応混合液を110℃へ冷却させ、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(DOPO、12.3g)を加え、完全に均質になるまで攪拌するに任せた。次にA−1触媒(125mg(ミリグラム))を加え、温度を上昇させ、30分間に渡り170℃で維持した。30分後、又別の12.3gのDOPを加え、完全に均質になるまで攪拌した。次にこの反応混合液を30分間攪拌すると、その後に均質混合液が形成された。
【0051】
ポリグリシジルエーテルをDOPOと反応させることによるリン含有エポキシ樹脂(2.7wt% リン)の調製
リン含有エポキシ樹脂(3.0wt% リン)の調製からの手順を繰り返したが、以下の変更を加えた:21.4gのDOPOを使用する。
【0052】
ポリグリシジルエーテルをDOPOと反応させることによるリン含有エポキシ樹脂(3.7wt% リン)の調製
リン含有エポキシ樹脂(3.0wt% リン)の調製からの手順を繰り返したが、以下の変更を加えた:31.2gのDOPO。
【0053】
実施例1から11の調製
実施例1から11は、以下の表1に記載の硬化性組成物を形成することによって調製した。リン含有エポキシ樹脂(192.69g)は、そのような量を保持できる容器に加えた。Dowanol(商標)PMA(53.6g)中のRezicure(商標)3026の50wt%溶液及びメタノール中の2−メチルイミダゾールの20wt%溶液をリン含有エポキシ樹脂を保持する容器に加えた。表1に提供した量は、Rezicure(商標)3026の溶媒(Dowanol(商標)PMA)及びメタノール中の2−メチルイミダゾールの溶液の量が計算上では無視されていることを意味する「固体含有率ベース」である。
【表1】
【0054】
実施例1から10の組成物を形成し、2時間に渡り攪拌した後に手描き(hand paint)サンプルを形成するガラス織物に塗布した。次に硬化剤の反応性を低下させるために手描きサンプルを80秒間の十分な時間に渡り170℃のオーブンに入れることによって、手描きサンプルを部分的に硬化させた。生じた「B段階」プリプレグを12インチ×12インチの正方形に切断した。8シートのプリプレグを積み重ね、200℃の温度及び23気圧(atm)(2,330kPa)を超える圧力で90分間を超える時間に渡って積層板サンプルをプレス成形した。実施例11は、Litzler Treater上でパイロット工場スケールへ規模を拡大して積層板サンプルを形成した。実施例1から11についての積層板サンプルの熱的特性を分析し、表2に示した。
【表2】
【0055】
比較例AからCの調製
比較例AからCは、エポキシ樹脂(XZ92530)及び硬化剤を用いて硬化性組成物を形成することによって作製した。表3に例示した配合及び量は、固体含有率ベースに基づいている。
【表3】
【0056】
比較例AからCの硬化性組成物を配合し、2時間に渡り攪拌した後に手描きサンプルを形成するガラス織物に塗布した。次に硬化剤の反応性を低下させるために手描きサンプルを80秒間の十分な時間に渡り170℃のオーブンに入れることによって、手描きサンプルを部分的に硬化させた。生じた「B段階」プリプレグは、12インチ×12インチの正方形に切断した。8シートのプリプレグを積み重ね、200℃の温度及び23atm(気圧)(2,330kPa)を超える圧力で90分間を超える時間に渡って積層板サンプルをプレス成形した。比較例AからCについての積層板サンプルの熱的特性を分析し、表4に示した。
【表4】
【0057】
熱的特性の分析
表2(実施例1から11)を表4(比較例AからC)と比較すると、本開示のリン含有エポキシ樹脂から形成されたサンプル積層板は、有意に高いTg値を生成することが明らかである。例えば、実施例1から4は、比較例A及びBより少なくとも20℃高いTgを生成し、実施例9及び10は比較例Cより少なくとも50℃高いTdを生成する。さらに、実施例及び比較例間の熱分解温度(Td)値は、本質的に変化しないままである。
【0058】
UL−94燃焼試験
実施例5から8についての積層板サンプルを用いて試験を5回実施した。各実施例を試験し、第1回燃焼時間(秒)、第2回燃焼時間(秒)及びUL−94判定は表5に示した。
【表5】
【0059】
表5から明らかなように、実施例5から8についての積層板サンプルについての各試験は、V−1のUL94を生じさせた。難燃剤を含まない場合は、これらのサンプルは、火炎への第1回曝露後に「取付け具まで燃焼」すると思われたので、「未評価」と指定されている。実施例5から8についてのV−1評価は、難燃剤、例えばリンが活性であることを示している。さらに、V−1評価は、一部の国々の一部の用途のために許容されている。
【0060】
実施例11(厚さ1.3から1.5mm)から調製した積層板サンプルについても、UL−94燃焼試験下で試験した。燃焼時間及びUL−94評価は、表6に示す。
【表6】
【0061】
実施例11についての結果は、有意に良好であり(より短い燃焼時間によって指示される)、本サンプルはV−0のより厳密な評点を達成する。V−0の評点は、米合衆国内での電子的用途のための1つの標準である。