【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は、特に自己硬化性化合物として、及び/又は硬化エポキシを形成するための硬化性組成物中の成分として使用できるリン含有エポキシ樹脂を含んでいる。本開示のリン含有エポキシ樹脂は、硬化性組成物中において他のエポキシ樹脂とともに他のエポキシ樹脂を用いて形成された硬化エポキシの耐熱性(例えば、Td及び上記で考察したTg)を増加させるためにも使用することもできる。
【0009】
本開示のリン含有エポキシ樹脂は、一部には該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化エポキシのための難燃剤として作用しながら、ハロゲン非含有であるという利点も提供する。該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成されたそのような硬化エポキシは、電気積層板、インターコネクト基板、ビルドアップフィルム、ソルダーレジスト、鋳物及び接着剤を含む電子用途のために有用である、適切な熱的及び電気的特性を有することもできる。
【0010】
詳細には、本開示のリン含有エポキシ樹脂は、熱機械的特性の向上、例えば該硬化エポキシのガラス転移温度の上昇を提供することができる。
【0011】
本開示の改良点は、該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化エポキシのガラス転移温度(Tg)を、該リン含有エポキシ樹脂を少なくとも150℃の温度、及び好ましくは少なくとも170℃の温度を受ける中高温度範囲の用途のために使用できるように上昇させることを含むことができる。さらに、本開示のリン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物は、難燃性に加えて、他の望ましい物理的特性、例えば耐熱性も又提供できることがある。耐熱性を測定するための1つの方法は、1つのサンプルが一定速度で加熱されるときに硬化エポキシの5wt%(重量%)が分解する温度を決定することによって熱分解温度(Td)を測定する方法である。本開示のリン含有エポキシ樹脂は、少なくとも330℃のTdを備える硬化エポキシ樹脂を提供することができる。
【0012】
さらに、本開示のリン含有エポキシ樹脂は、10:1から1:1、より好ましくは6:1から2:1、及び最も好ましくは5:1から3:1の範囲に及び得るエポキシ対リンのモル比を有することができる。
【0013】
様々な実施形態のためには、そのようなリン含有エポキシ樹脂は、式(I):
(式I)
【化5】
(式中、各Zは、独立して式(II):
(式II)
【化6】
の化合物、式(III):
(式III)
【化7】
の化合物、又は式(IV):
(式IV)
【化8】
の化合物である;
各R
1及びR
2は、独立して水素若しくはアルキル成分であり、Rは、脂環式ジラジカル、二環式脂肪族ジラジカル、又は6から30個の炭素を含有する三環式脂肪族ジラジカルである、並びに各Y及びXは、独立して水素、1から20個の炭素原子を有する脂肪族成分、又は6から20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素成分である)の化合物によって提示することができる。様々な実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂は、リン−水素成分を含有するリン化合物をエポキシ樹脂と反応させる工程によって形成することができる。
【0014】
実施形態のためには、リン−水素成分を含有するリン化合物の例には、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(DOPO);1,3,2−ジオキサホスホリナン;2−ヒドロキシ−5,5−ジメチル−;1,3,2−ジオキサホスホリナン;1,3,2−ジオキサホスホラン;1,3,2−ジオキサホスホラン;2−オキサイド;5,5−ジメチル−;1,3,2−ベンゾジオキサホスホール;2−オキサイド;1,3,2−ベンゾジオキサホスホール;1,3,2−ジアザホスホリジン;1,3−ジメチル−;1,3,2−ジアザホスホリジン;1,3−ジメチル−及び2−オキサイドが含まれるがそれらに限定されない。実施形態のためには、DOPOは、本開示において使用される好ましいリン化合物である。
【0015】
実施形態のためには、R
1及びR
2は、場合により酸素を含有する飽和直鎖状又は分枝状一価炭化水素基であるアルキル成分であってよい。実施形態のためには、該アルキル成分は、1から20個の範囲内、好ましくは1から4個の範囲内の炭素原子を含むことができる。アルキル成分の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、並びにメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、イソ−プロポキシメチル及びブトキシメチルが含まれるがそれらに限定されない。
【0016】
実施形態のためには、Rのための脂環式ジラジカル、二環式脂肪族ジラジカル及び三環式脂肪族ジラジカルの例には、式(A):
(式A)
【化9】
の化合物、式(B):
(式B)
【化10】
の化合物、式(C):
(式C)
【化11】
の化合物、式(D):
(式D)
【化12】
の化合物、式(E):
(式E)
【化13】
の化合物、式(F):
(式F)
【化14】
の化合物、式(G):
(式G)
【化15】
の化合物、式(H):
(式H)
【化16】
の化合物、式(I):
(式I)
【化17】
の化合物、式(J):
(式J)
【化18】
の化合物、式(K):
(式K)
【化19】
の化合物、式(L):
(式L)
【化20】
の化合物、式(M):
(式M)
【化21】
の化合物である)の化合物及びそれらの混合物が含まれるがそれらに限定されない。実施形態のためには、Rは、好ましくは1,3−及び1,4−シクロヘキシリデン(例えば、式(B)及び(C)の化合物)の混合物又は二環式C
10H
14ジラジカル類(例えば、式(F)、(G)及び(H)の化合物)の混合物であり、2つの転換経路の内の1つによって調製できる。第1の経路は、第1工程においてオレフィン−アルデヒドが形成され、その後にジアルデヒドの形成が続く2つの工程で進行するジエン類のヒドロホルミル化である。第2の経路は、下記の1つの特定実施例において示した、アクロレイン及びジエンのディールズ・アルダー反応によってオレフィン−アルデヒドが形成され、その後にヒドロホルミル化が行われる経路である。
【化22】
【0017】
当業者であれば認識できるように、これらのヒドロホルミル化は、ジアルデヒド類の異性体の混合物を生じさせる。次にジアルデヒド類は、フェノール類との縮合反応によって式I(式中、Zは水素である)の化合物に転換させることができる。
【0018】
式IIIの化合物中及び式IVの化合物中のX及びYの例は、ヒドロキシ、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、プロピル、プロポキシ、フェニル、フェノキシ、−SH、チオメチル、チオエチル及びチオフェニルを含むことができるがそれらに限定されない。実施形態のためには、X及びYは、DOPO由来であってもよい。
【0019】
実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂は、リン−水素成分を含有するリン化合物、例えばDOPOを少なくとも3の官能価を備えるエポキシ樹脂と、フェノール及びジアルデヒドの縮合反応生成物をエポキシ化することによって反応させる工程によって形成される。実施形態のためには、フェノール及びジアルデヒドの縮合反応生成物をエポキシ化することによって形成されたエポキシ樹脂は、2以下、好ましくは約1.8以下、より好ましくは1.5以下、及び最も好ましくは1.3以下である多分散性(Mw/Mn;Mwは重量平均分子量と等しく、Mnは数平均分子量と等しい)を好ましくは有する。反応生成物の1分子当たりのヒドロキシル基の平均数は、4.0から6.0の範囲内、好ましくは4.5から5.0の範囲内であってよい。
【0020】
実施形態のためには、縮合において使用できるジアルデヒド類には、5から24個の範囲内、より好ましくは6から20個の範囲内、及び最も好ましくは6から15個の範囲内の炭素原子を有するシクロアルカンのジアルデヒド類が含まれるがそれらに限定されない。例には、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロドデカン、ノルボルナン、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン(飽和ジシクロペンタジエン)、ドデカヒドロ−4,9:5,8−ジメタノ−1H−ベンズ[f]インデン(飽和トリシクロペンタジエン)が含まれるがそれらに限定されない。例えば、縮合は、シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドをフェノールを用いて縮合する工程を含むことができる。実施形態のためには、シクロアルカンジカルボキシアルデヒドは、特定ジカルボキシアルデヒドの1つ又はそれ以上の異性体(位置異性体及び立体異性体を含む)を含むことができる。例えば、シクロヘキサンジカルボキシアルデヒド異性体の場合には、シス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボキシアルデヒド、トランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボキシアルデヒド、シス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシアルデヒド及びトランス−シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシアルデヒドの内の1つ又はそれ以上を使用できる。しかし、シス及び/又はトランス−シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシアルデヒドを使用することも可能である。さらに、環状炭素原子の数及び/又は環状置換基の存在若しくは非存在、数及び/又はタイプが相違する2つ又はそれ以上のジカルボキシアルデヒド類の混合物、例えば1つ又はそれ以上のシクロヘキサンジカルボキシアルデヒド異性体と1つ又はそれ以上のシクロオクタンジカルボキシアルデヒド異性体の混合物は、本開示の方法において使用できる。
【0021】
実施形態のためには、縮合は、ポリフェノール化合物の混合物を含むことのできる反応生成物を生成する。実施形態のためには、反応生成物は、ポリグリシジルエーテルを形成するためにエポクロロヒドリンと反応させる工程を含むがそれには限定されない方法を使用することによってエポキシ化される。実施形態のためには、反応生成物上のヒドロキシ基は、ポリグリシジルを生成するためにグリシジルエーテル基に転換される。エポキシ化は、4から10の範囲内、より好ましくは5から8の範囲内、及び最も好ましくは6から7の範囲内の官能価を有するポリグリシジルエーテルを生成する。実施形態のためには、グリシジルエーテル基に転換されるヒドロキシ基のパーセンテージは、ヒドロキシ基の数に基づいて少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、及びいっそうより好ましくは少なくとも99%又はそれ以上であってよい。
【0022】
実施形態のためには、縮合において使用されるフェノール化合物は、(未置換)フェノールであってよい。さらに、フェノールの芳香族環は、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、1から6個の炭素原子を有する未置換若しくは置換アルキル、5から8個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換シクロアルキル、1から6個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アルコキシ、3から6個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アルケニル、3から6個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アルケニルオキシ、6から10個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アリール、2から7個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アラルキル、6から10個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アリールオキシ、及び7から12個の範囲内の炭素原子を有する未置換若しくは置換アラルコキシを含むがそれらに限定されない1つ又はそれ以上の置換基を含むことができる。実施形態のためには、縮合において使用されたフェノール化合物対シクロアルカンジカルボキシアルデヒドのモル比は、4:1から20:1の範囲内、好ましくは5:1から15:1の範囲内及びより好ましくは6:1から12:1の範囲内であってよい。
【0023】
実施形態のためには、ポリグリシジルエーテルは、DOPOと反応させられて本開示のリン含有エポキシ樹脂を産生する。ポリグリシジルエーテルのエポキシ基の1つの部分は、該ポリグリシジルエーテルがDOPOと反応した時点にリン−水素成分と置換される。DOPOが導入されると、エポキシ樹脂の官能価は、DOPOの各分子がエポキシ基と反応するにつれて減少し、それにより硬化中の架橋結合のために該エポキシ基が除去される。このため、エポキシ樹脂と反応するDOPOの量が増加するにつれて、硬化エポキシ樹脂の架橋密度及びガラス転移温度はどちらも低下する可能性がある。対照的に、本開示は、4から10の範囲内、より好ましくは6から7の範囲内の官能価を有するポリグリシジルエーテルをDOPOと反応させるので、このため3より大きい官能価を維持することができ、該硬化エポキシの架橋密度を維持するとともにガラス転移温度を上昇させることを可能にする。従って、本開示のリン含有エポキシ樹脂は、現行のノボラック型エポキシ樹脂と比較して上昇したガラス転移温度を有することができる。
【0024】
ポリグリシジルエーテルとリン−水素成分を含有するリン化合物とを反応させる工程は、本開示のリン含有エポキシ樹脂を形成するので、難燃性材料の調製において有用にすることができる。本開示のリン含有エポキシ樹脂は、2wt%から20wt%の範囲内、より好ましくは4wt%から15wt%の範囲内、及び最も好ましくは5wt%から15wt%の範囲内のリン含量を有することができる。本開示の実施形態は、難燃性材料を必要とする、半導体包装用途、電気的及び電子的用途並びに複合材料用途を含む他の用途においても有用な可能性がある。さらに、該リン含有エポキシ樹脂は、臭素原子及びハロゲン原子を実質的にどちらも含有していない。
【0025】
様々な実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂とリン−水素成分を含有するリン化合物、例えばDOPOとの反応は、好ましくは水の非存在下で実施されるが(一般に、水は、該硬化性組成物の総重量に基づいて5wt%未満、より好ましくは3wt%未満、及び最も好ましくは1wt%未満で存在する)、これは水がDOPOと反応して発泡を誘発する傾向があり得るからである。水は、周知の方法、例えば乾燥空気若しくは窒素気流中、真空オーブン中で加熱する工程を使用して、又は有機液体、例えばヘキサン若しくはトルエンを使用した水の共沸除去によって除去することができる。これは、DOPO自体又は反応前の混合物上のどちらでも実施できる。
【0026】
本開示は、該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物も提供する。本開示の硬化性組成物は、該硬化性組成物の総重量に基づいて0.5wt%から5.0wt%の範囲内のリン含量を有することができる。本明細書に記載した本開示の硬化性組成物は、場合により少なくとも1つの硬化剤(「硬化剤」とも呼ばれる)及び/又は硬化促進剤を利用することもできる。適切な硬化剤の例には、アミン硬化剤、例えばジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド類、ポリアミノアミド類、ポリフェノール類、ポリマーチオール類、ポリカルボン酸及び無水物、例えばフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、メチルナド酸無水物(NMA)、ポリアゼライン酸ポリ無水物、コハク酸無水物並びにマレイン酸無水物スチレン−マレイン酸無水物コポリマーが含まれるがそれらに限定されない。さらに、フェノール系硬化剤、例えばフェノールノボラック類、クレゾールノボラック類及びビスフェノールAノボラック類も使用できる。硬化剤は、好ましくは該硬化性組成物の総重量に基づいて2wt%から80wt%の範囲内の量で使用される。
【0027】
硬化促進剤(又は触媒)には、置換若しくはエポキシ修飾イミダゾール類、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾールが含まれる。他の複素環アミン類、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBUとしても公知)及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBNとしても公知)も使用できる。トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びトリフェニルホスフィンを含むがそれらに限定されない第3級アミン類及びホスフィン類も使用できる。さらに、ホスホニウム塩類、例えばエチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート並びにアンモニウム塩、例えばベンジルトリメチルアンモニウムアセテート及びベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドも硬化促進剤として使用することができる。ハロゲン塩類(ヨウ化物、臭化物、塩化物及びフッ化物)も有用であるが、一般にはハロゲン非含有用途においては余り望ましくない。触媒は、好ましくは該硬化性組成物の総重量に基づいて0.05wt%から約2.00wt%の範囲内の量で使用される。
【0028】
実施形態のためには、該硬化剤対該リン含有エポキシの最適比率は、通常は当量比によって表示される。該硬化剤中での当量比は、エポキシ対反応性水素(−SH、−OH、−NH若しくは−COOH)又は無水物の1.00:1.00であってよい。本開示の硬化性組成物は、好ましくは1.20:1.00から1.00:1.20、より好ましくは1.10:1.00から1.00:1.10の範囲内、及び最も好ましくは1.10:1.00から1.00:1.05の範囲内の当量比で調製される。
【0029】
一般に、式(I)の該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された該硬化性組成物を本開示に従って硬化させる工程は、最初に均質な溶解物を得るために該硬化性組成物中の該リン含有エポキシ樹脂を溶融させる工程、又は該リン含有エポキシ樹脂を適切な溶媒中に溶解させる工程によって実施することができる。適切な溶媒の例には、アルコール類、例えばDowanol(商標)PM(The Dow Chemical Company)、ケトン類、例えばアセトン及び/又はメチルエチルケトン、エステル類及び/又は芳香族炭化水素類が含まれるがそれらに限定されない。実施形態のためには、溶媒は、該硬化性組成物の総重量に基づいて50wt%までの量で使用することができる。溶媒は、硬化の進行中又は終了時に蒸留又は単純な蒸発によって除去することができる。
【0030】
本開示の実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された該硬化性組成物は、少なくとも1つの組成成分を含むこともできる。様々な実施形態のためには、該硬化性組成物の組成成分は、本開示のリン含有エポキシ樹脂と反応性又は非反応性のいずれであってもよい。様々な実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂及び該組成成分を用いて形成された硬化性組成物は、結合し、混合し、及び次に本開示のリン含有エポキシ樹脂を少なくとも1つの該組成成分と反応させる工程によって得ることができる。そのような組成成分の例には、エポキシ樹脂、ポリエポキシド樹脂、シアネートエステル類、ジシアネートエステル類、ポリシアネートエステル類、シアネート芳香族エステル類、マレイミド樹脂、熱可塑性ポリマー、ポリウレタン類、ポリイソシアネート類、ベンゾキサジン環含有化合物、二重若しくは三重結合を含有する不飽和樹脂系及びそれらの組み合わせが含まれるがそれらに限定されない。
【0031】
追加の実施形態では、本開示の硬化性組成物は、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び少なくとも1つの反応性及び/又は非反応性熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。そのような熱可塑性樹脂の例には、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニルスルホン類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリビニリデンフルオリド、ポリエーテルイミド、ポリフタルイミド、ポリベンズイミダゾール、アクリル系、フェノキシ並びにそれらの組み合わせ又はブレンドが含まれるがそれらに限定されない。
【0032】
様々な実施形態のためには、本開示のリン含有エポキシ樹脂は、ハイブリッド架橋ネットワークを形成するために熱可塑性樹脂と混合することができる。本開示の硬化性組成物の調製は、当分野において公知の適切な混合手段であって、個別成分を乾式混合する工程、及び引き続いて最終製品を製造するために使用される押出機内で直接的に、又は別個の押出機内でプレミックスする工程のいずれかで溶融混合する工程を含む混合手段によって実施できる。
【0033】
熱の適用によって軟化又は溶融されると、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び該熱可塑性樹脂を用いて形成された該硬化性組成物は、従来技術、例えば圧縮成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、カレンダ加工、真空成形、熱成形、押出成形及び/又はブロー成形を単独で、又は組み合わせて使用して形成又は成形することができる。本開示のリン含有エポキシ樹脂及び該熱可塑性樹脂を用いて形成された該硬化性組成物は、さらに、フィルム、ファイバー、多層積層板若しくは押出シートに形成、紡糸又は延伸することができる、又は1つ又はそれ以上の有機若しくは無機物質と混ぜ合わせることができる。
【0034】
様々な実施形態のためには、該リン含有エポキシ樹脂は、硬化性組成物中で他のエポキシ樹脂と組み合わせて、他のエポキシ樹脂から形成された硬化エポキシの耐熱性を増加させるために使用できる。使用される他のエポキシ樹脂は、少なくとも1つのエポキシ樹脂及び/又はポリエポキシド樹脂を含むことができ、このとき1つ又はそれ以上の該エポキシ樹脂及び1つ又はそれ以上の該ポリエポキシド樹脂の組み合わせが可能である。そのようなエポキシ樹脂の例には、ハロゲン非含有エポキシ、リン非含有エポキシ、臭素化エポキシ並びにリン含有エポキシ及びそれらの混合物、エポキシ官能性ポリオキサゾリドン含有化合物、脂環式エポキシ、グリシジルメタクリレート/スチレンコポリマー、並びに液状エポキシ樹脂及びテトラブロモビスフェノールA樹脂の反応生成物から選択されるエポキシ樹脂が含まれるがそれらに限定されない。さらに、フェノールノボラック類、クレゾールノボラック類、「トリスフェノール」(トリス−4−ヒドロキシベンゼンメタン)、ビスフェノールAノボラック類、ジシクロペンタジエンビスフェノール、1,1,2,2−テトラフェノールエタン、ヒドロキノン、リゾルシノール、カテコール、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラブロモビスフェノールA、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒドノボラック、ジシクロペンタジエン−ジメチルフェノールノボラック及びそれらの組み合わせのグリシジルエーテル類も使用できる。
【0035】
ルイス酸も、エポキシ樹脂を含む組成物中において使用することができる。ルイス酸は、例えば、亜鉛、スズ、チタン、コバルト、マンガン、鉄、シリコン、アルミニウム及びホウ素のハロゲン化物、酸化物、水酸化物及びアルコキシド類の内の1つ又は2つ又はそれ以上の混合物を含むことができる。そのようなルイス酸及びルイス酸の無水物の例には、ホウ酸、メタホウ酸、場合により置換されたボロキシン類(例えば、トリメトキシボロキシン、トリメチルボロキシン若しくはトリエチルボロキシン)、場合により置換されたホウ素の酸化物、ホウ酸アルキル、ハロゲン化ホウ素、ハロゲン化亜鉛(例えば、塩化亜鉛)及び相対的に弱い共役塩基を有する傾向がある他のルイス酸が含まれる。
【0036】
該リン含有エポキシ樹脂及び/又は該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物は、様々な製造品の調製において有用な可能性がある。従って本開示は、上記の組成物のプリプレグ並びに造形品、強化組成物、積層板、電気積層板、コーティング、成形品、接着剤、本開示の硬化若しくは部分硬化リン含有エポキシ樹脂又はリン含有エポキシ樹脂を含む組成物からの以下で記載する複合製品も含んでいる。さらに、本開示の組成物は、様々な目的のために乾燥粉末、ペレット、均質塊、含浸製品及び/又は化合物の形態で使用することができる。
【0037】
本開示の硬化性組成物には、広範囲の追加の添加物を加えることができる。これらの追加の添加物の例には、繊維強化剤、充填剤、顔料、色素、増粘剤、湿潤剤、潤滑剤、難燃剤などが含まれる。適切な繊維及び/又は粒子強化材料には、特にシリカ、アルミナ三水和物、酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、金属酸化物、ナノチューブ、ガラス繊維、石英繊維、炭素繊維、ボロン繊維、Kevlar繊維及びTeflon繊維が含まれる。繊維及び/又は粒子状強化材料についてのサイズ範囲は、0.5nm(ナノメートル)から100μmを含むことができる。様々な実施形態のためには、繊維強化材料は、マット、クロス又は長繊維の形態で供給されることがある。
【0038】
該硬化性組成物の実施形態は、該硬化組成物の消炎能力を改良するために役立つ少なくとも1つの共力剤を含むこともできる。そのような共力剤の例には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、金属ホスフィネート類、例えばExolit(登録商標)OP−930(Clariantから入手可能)及びそれらの組み合わせが含まれるがそれらに限定されない。さらに、該硬化性組成物の実施形態は、接着促進剤、例えば改質オルガノシラン類(エポキシ化、メタクリル、アミノ)、アセチルアセトネート類、硫黄含有分子及びそれらの組み合わせも含むことができる。その他の添加物には、湿潤剤及び分散助剤、例えば改質オルガノシラン類、Byk(登録商標)900シリーズ及びW9010(Byk−Chemie GmbH)、改質フルオロカーボン類及びそれらの組み合わせ;脱泡添加剤、例えばByk(登録商標)A530、Byk(登録商標)A525、Byk(登録商標)A555及びByk(登録商標)A560(Byk−Chemie GmbH);表面改質剤、例えばスリップ剤及び光沢剤;離型剤、例えばワックス類;並びにその他の機能性添加物又はポリマー特性を改良するための事前反応製品、例えばイソシアネート類、イソシアヌレート類、シアネートエステル類、アリル含有分子又は他のエチレン性不飽和化合物、アクリレート類及びそれらの組み合わせを含むことができるがそれらに限定されない。
【0039】
様々な実施形態のためには、樹脂シートは、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は硬化性組成物から形成することができる。1つの実施形態では、複数のシートを一緒に結合して積層板を形成することができるが、このとき該シートは該樹脂シートの少なくとも1つを含んでいる。該リン含有エポキシ樹脂及び/又は該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物は、樹脂クラッド金属箔を形成するためにも使用できる。例えば、金属箔、例えば銅箔は、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は該リン含有エポキシ樹脂を用いて形成された硬化性組成物を用いてコーティングすることができる。様々な実施形態は、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は組成物を用いて積層基板をコーティングすることによって調製できる多層板も含んでいる。
【0040】
様々な実施形態のためには、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は硬化性組成物は、コーティング層又は接着剤層として基板に適用することができる。又は、本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は組成物は、粉末、ペレットの形態で成形若しくは積層することができ、又は基板、例えば繊維強化剤中に含浸させることができる。次に本開示のリン含有エポキシ樹脂及び/又は硬化性組成物は、熱の適用によって硬化させることができる。
【0041】
適正な硬化条件を提供するために必要な熱は、硬化性組成物を構成する組成成分の比率及び使用された組成成分の性質に左右される可能性がある。一般に、本開示の硬化性組成物は、それを25℃から250℃、好ましくは100℃から200℃の範囲内の温度で加熱することによって硬化させることができるが、硬化剤の存在若しくはその量、又は該硬化性組成物中の該組成成分のタイプによって異なる。加熱する工程のために必要な時間は60秒間から24時間であってよいが、このとき正確な時間は、該硬化性組成物が薄層コーティングとして、又は相対的に大きな厚さの成形品若しくは積層板として、又は繊維強化複合材料のため、特に、例えば非電導性材料に適用され、引き続いて該硬化性組成物を硬化させる場合には電気的及び電子的用途のためのマトリックス樹脂として使用されるかどうかに従って異なる。