(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前眼房と虹彩角膜角と天然レンズとを備える眼のためのインプラントであって、このインプラントは、医療および美容目的のために虹彩の色を変えるために前記前眼房内の虹彩の上に延びるように構成されており、このインプラントは、
環状の非平面構造体を画定するように構成された、不活性、無毒および屈曲可能な材料を備えており、
前記環状の非平面構造体は、前記非平面構造体を貫通する開口部を有し、前記天然レンズを覆わないように構成されており、更に、前記眼内の前記虹彩上に埋め込められたときにほぼ前記虹彩角膜角まで延びるように構成されており、
前記環状の非平面構造体は不均一な厚みの複数の弧状断片を備えており、この弧状断片は支持用弧状断片および経路用弧状断片を備えており、各弧状断片は上面および底面を備えており、
前記弧状断片は、前記眼内の前記虹彩上に埋め込められたときに、
前記虹彩の上に所定距離離れて固定される経路用弧状断片によって形成され、前記開口部と連通することによって形成されている前記インプラントの下の体液の流れのための経路と、
前記虹彩と接触する支持用弧状断片によって形成される、前記経路のための支持構造体と、を画定し、
前記インプラントは更に、前記支持用弧状断片から延びており、前記虹彩角膜角で前記眼と係合することによって前記インプラントを所定の位置に保持するように構成された耳状突起と、を備えることを特徴とするインプラント。
前記眼内に埋め込まれたときに、前記虹彩から離れる方向に支持用弧状断片から立ち上がり、前記天然レンズをまたぐ人工レンズのための繋留点を前記インプラント上で提供するように構成された爪を更に備え、
前記爪には、前記インプラントの下の体液の流路を形成するための穴が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインプラント。
延出部を備える人工レンズを更に備えており、この延出部は、前記人工レンズを所定の位置に保持するために前記爪と係合し、前記人工レンズを前記弧状断片の前記上面から持ち上げるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のインプラント。
【背景技術】
【0002】
目の色を変えることが適切な治療となる医学的な状態は数多くある。これには、異色症を治すことや、アルビノの眼を日光による有害な影響から保護することや、欠損症、虹彩萎縮および虹彩分離症等の虹彩の疾患に対処することが含まれる。更に、美容の観点から眼の色を変えるニーズもある。
【0003】
人間の眼の前部にある開口部は瞳と呼ばれ、これは光が眼のレンズを通して網膜まで眼球に入光することを可能にするものである。瞳の大きさは虹彩によって制御される。虹彩は自然色を有しており、これが眼の色としてみなされる。
【0004】
前眼房での虹彩の覆いである眼内インプラントにおける既存の技術は特許文献1に人工の柔らかい虹彩絞りインプラントとして開示されている。この特許文献1の虹彩絞りは主要部を形成する平滑、柔軟、かつ屈曲可能な材料である。それと対照的に、本願のインプラントにおいてこれに対応する主要部はなく、なぜなら、それは、インプラントの性能に対して具体的かつ欠かせない改良を与える非平滑的なパターンで構成された、複数の非平面の弧状断片からなる構造体であるからである。
【0005】
特許文献1は、虹彩絞りを単一構造とするように主要部と一体形成される「フラップ部」を含むインプラントを開示している。特許文献1の「主要部」は「平滑」である。それと対照的に、本発明には主要部はなく、なぜなら、このインプラントは厚い支持用弧状断片および薄い経路用弧状断片において複数の不均一(非画一)構造かつ非平面の部品を備えているからである。これらの断片は厚みおよび目的が著しく異なり、非平面、非平滑および不均一(非画一)構造の構造体を画定している。
【0006】
本発明の弧状断片の機能的意義は、インプラントと虹彩との間の接触面を著しく減少させ、これによりインプラントと虹彩との間の摩擦に関係する術後炎症を減少させ、緑内障の可能性を減じ、かつ前眼房への色素細胞の落屑を防ぐことである。
【0007】
特許文献1と異なり、本発明の厚い支持用弧断片のみが、虹彩絞りの支持用弧断片から延びる耳状突起を有する。支持用弧状断片から延びるこれらの耳状突起は虹彩絞りの経路用弧状断片とは一体部分ではない。特許文献1と異なり、本発明において、支持用弧状断片と経路用弧状断片とは画一なものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
医学的および美容的目的のために虹彩の色を変化させるための眼内インプラントが開示される。このインプラントは、不活性、無毒、屈曲可能、および好ましくは流体の流れを透過することができる材料からなる。更に、虹彩上にフィットする環状の非平面構造体を画定するように構成されたこの材料は天然のレンズを覆わない。このインプラントはほぼ虹彩角膜角まで延びる。環状の非平面構造体は、2つの異なる種類の不均一な厚みの弧状断片からなる組立体である。これらの種類とは経路用弧状断片および支持用弧状断片である。経路用弧状断片はインプラント下での体液の流れのための経路を画定し、なぜなら、これらの経路用弧状断片は虹彩の上に所定距離離れた位置に支持されるからである。支持用弧状断片は虹彩と接触し、経路用弧状断片のために必要な支持を提供する。耳状突起が支持用弧状断片から延び、虹彩角膜角で眼と係合することによってインプラントを適所に保持するように構成されている。
【0010】
このインプラントは人工レンズを含んでいてもよく、この実施形態では好ましくは4つの爪が支持用弧状断片から立ち上がり、人工レンズの繋留部となる。この爪は任意の形態でよいが、2つの例は開放角の形状と閉ループの形状である。人工レンズは、所定の位置に人工レンズを保持して弧状断片の上面から人工レンズを持ち上げるために4つの延出部あるいは取付構造体を有する。この延出部は、爪と嵌合する閉じた穴であってもよく、あるいは、閉ループ形状の爪の周りに所定の位置にぱちんと嵌まる薄く切った穴もしくはピン状のものであってもよい。
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既存のインプラントは重大な医学的な問題が発生する可能性があり、それは少なくとも一部には、体液の流れに対する妨害と、インプラントと虹彩色素細胞との間の過剰な接触とに起因する。高眼圧症、虹彩炎、角膜浮腫、白内障、緑内障および感染症といったインプラント後の問題が失明の原因となる。報告された問題には、前眼房出血、眼圧の不制御、内皮細胞損失、水疱性角膜症および前部ブドウ膜炎が含まれ、小柱網および角膜内皮への永久的な損傷が残り得る。
【0012】
いくつかの既存の人工虹彩インプラントは、虹彩または虹彩遺残の前方の前眼房ではなく、後眼房内に埋め込まれるのみであり、なぜなら、角膜内皮への損傷の危険性および高眼圧の危険性が増すからである。
【0013】
無虹彩レンズの既存の技術は、患者が白内障を有していない場合であっても患者の水晶体の除去を必要とする。換言すれば、患者は白内障の手術を受ける必要がある。
【0014】
最小限の質量・大きさで虹彩を覆う前眼房内の眼内インプラントは、体液の流れを可能にし、かつ虹彩の表面との最小限の接触を有する。
【発明の効果】
【0015】
眼内インプラントは、異色症の治療や、アルビノの目を日光の有害な影響から保護することや、虹彩の疾患(例えば欠損症、著しい虹彩萎縮、虹彩分離症)への対処や、あるいは単純に美容目的において有用である。
【0016】
眼内インプラントのユニークな弧状断片は、虹彩上に経路を画定し、これにより虹彩との接触面を半分に減らすことができると同時に、体液の流れを可能にする。これらの弧状断片の構成はインプラントと虹彩との間の摩擦に起因する手術後の炎症を抑えることができる。摩擦面を減らすことによって、インプラントは前眼房内への色素細胞の落屑を最小限にする(落屑は後に小柱網の障害になり得、眼圧を高め、結果、緑内障になり得る)。これらの弧状断片は、前眼房を介して小柱網を通して眼から体液を排水するときに障害となる従来技術の本質的な問題も回避することができる。よって、本発明は続発性緑内障の可能性を減少させる。
【0017】
眼内インプラントの第1の実施形態は、矯正人工レンズを必要としない場合あるいは望まれない場合における治療のためのものである。この実施形態は非屈折性のものであり、よって、眼の天然のレンズを用いて障害のない視軸を必要とする医学的治療に対する解決策となる。無虹彩レンズに関する先行技術に対する本発明の最も重要な利点は、人間の水晶体が除去されないということである。よって、本発明はなんらかの理由による後の屈折部の除去を可能にする。
【0018】
眼内インプラントは前眼房内で支持され、この眼内インプラントの下で体液の流れを可能にするように構成されている。
【0019】
この眼内インプラントは他のインプラントよりも非常に薄く、このことは、インプラントの質量・大きさを減少させ、更に、眼に人工物を加えることによる副作用の可能性を減少させることを意味している。この眼内インプラントは、虹彩角膜角で所定の位置に保持され、角度の付いた構造に対し大きな圧力を生じさせることはない。
【0020】
眼内インプラントは永久的な医学的治療となるように設計されているが、所望であれば除去することもできる。
【0021】
この眼内インプラントはレンズを含んでいてもよく、有水晶体眼内レンズの利点には,角膜を削らないことが含まれ、問題が発生したときやレンズの強度を変更することが必要となった場合に埋め込んだレンズを除去することができる。そして眼の天然のレンズが損なわれずに残るため、焦点を変えるという患者の能力が失われない(もし年齢が40歳以下であり、老眼を有していないのであれば)。この新しい屈折の組み合わせは、乱視のための既存の治療よりも特に良く、眼の中に入れやすい。体液の流れのために穴を加えることによって、流れが閉塞されることによる合併症の問題が解決される。
【0022】
このインプラントの屈折レンズは、紫外線保護色で形成され、アルビノの眼における感受性過敏を治療し減少するために用いられ得る。アルビノは網膜色素細胞層にもメラニン色素を有していない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付の図面は本発明に係る眼内インプラントの好適な実施形態を示しており、図面内の符号は全体に亘って一貫している。
図2において新たな符号は200番台で付与されている。同様に、後続する各図面の符号は対応する図の番号で始まる一連の番号が付与されている。
【0024】
【
図1】
図1は、眼内インプラントの表面の平面で示しており、この面は眼に埋め込まれたときに虹彩と向き合うものである。
【
図2】
図2は、
図1の線2−2に沿った断面における眼内インプラントの立面図である。
【
図3】
図3は、
図1で示された眼内インプラント面の斜視図である。
【
図4】
図4は、眼の中の眼内インプラントの位置を示す垂直方向の眼の立面図である。
【
図5】
図5は、眼内インプラントの側断面図であり、任意の人工レンズを眼内インプラントに繋留するために用いられる開放形状の爪を示している。
【
図6】
図6は、
図5で示した爪に固定する閉じた穴を備える第1の角膜レンズである。
【
図7】
図7は、人工レンズを備える眼内インプラントの側面図である。
【
図8】
図8は、眼内インプラントの側断面図であり、任意の人工レンズを眼内インプラントに繋留するために用いられる閉ループ形状の爪を示している。
【
図9】
図9は、任意の人工レンズを眼内インプラントに繋留するために用いられるピン状部分を備える角膜レンズを備える第2のレンズの平面図である。
【
図10】
図10は、眼内インプラントの一部の上にある第2のレンズの一部の側面図である。
【
図11】
図11は、第3の人工レンズを備える眼内インプラントの側断面図である。
【
図13】
図13は、眼内インプラントを貫通する極小穴を示す拡大図である。
【
図14】
図14は、ぎざぎざの虹彩開口部を備えるインプラントの平面図である。
【
図15A】
図15Aは、人工レンズを支持するためのヘアピン状部品の断面図であり、このヘアピン状部品はこの下にあるインプラントの本体を保持するために、下方に折り曲げられた端部を有している。
【
図15B】
図15Bは、ヘアピン状部品の上にある本体を保持するために上方に折り曲げられた端部を備えるヘアピン状部品の断面図である。
【
図15C】
図15Cは、ヘアピン状部品の下にある本体にくさび状に固定するために角度を付けて折り曲げられた端部を備えるヘアピン状部品の断面図である。
【
図15D】
図15Dは、長形溝において本体を保持するための長形溝状に構成されたヘアピン状部品の断面図である。
【
図16】
図16は、アーチ形の高さを示す第5の人工屈折レンズの断面図である。
【
図17】
図17は、眼の表面の上でレンズを支持するためのヘアピン状部品を備える人工レンズを有する第1の代替インプラントの平面図である。
【
図18】
図18は、インプラントの本体の穴内に嵌合する突出部を備える人工レンズを有する第2の代替インプラントの平面図である。
【
図19】
図19は、縁部リングおよび人工屈折レンズを備える第3の人工インプラントの平面図である。
【
図20】
図20は、突出部と本体の嵌合穴を示す第2の代替インプラントの立面図である。
【
図21】
図21は、接着された人工レンズを備えるインプラントの立面図である。
【
図22】
図22は、コネクタを備える代替の縁部リングの平面図である。
【
図23A】
図23Aは、密着したピン継手を備える縁部リングの拡大部を示す平面図である。
【
図23B】
図23Bは、分離したピン継手を備える縁部リングの拡大部を示す平面図である。
【
図24】
図24は、支持用弧状断片を通る溝を示すインプラントの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の記載において添付の図面を参照しており、これらの図面は以下の記載の一部をなし、本発明のいくつかの実施形態を示すものである。本発明の図面および好適な実施形態は、本発明が多くの異なる形態における実施形態を可能にし、よって、他の実施形態も利用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく構造的かつ動作的な変更がなされることができる、という理解をもって提示される。
【0026】
図1〜
図3はいくつかの方向から見た眼内インプラントの好適な実施形態を示しており、
図4は、眼内への埋め込み(インプランテーション)後を示している。好適な実施形態は、眼(400)のためのインプラント(100)であり、この眼(400)は、前眼房(415)と、虹彩角膜角(410)と、天然レンズ(420)と、虹彩(405)と、瞳孔(101)と、を備えている。インプラント(100)は、医学的および美容的な目的のために、虹彩(405)の色を変えるために前眼房(415)内で虹彩(405)の上に延びるように構成されている。インプラントの両面は着色することができるが、好ましくは上面(すなわち虹彩(405)と接触しない面)のみが着色される。様々な虹彩開口部が可能であり、例えば、
図14はぎざぎざの虹彩穴(1410)を表している。
【0027】
インプラント(100)は、不活性、無毒、屈曲可能な材料を有しており、この材料は環状の非平面構造体を画定するように構成されており、本明細書ではインプラント(100)の本体としても呼ばれる。この材料は好ましくは親水性、アクリル性のシリコンまたはプラスチックであり、弾性、柔軟性および生体適合性を備える。ヘパリンによる眼内インプラントの表面への修飾は、手術後の炎症を減少させ生体適合性を高めることが知られている。従って、ヘパリンによる表面修飾をインプラントの生体適合性を高めるために行うことができる。
【0028】
この材料は任意には、眼(400)内の流体が通過することができる複数の極小穴を画定するように構成される。
図13は、
図11に表される眼内インプラントの一部(13)の拡大図であり、この眼内インプラントを通して体液が流れることができる極小穴(1310)を表している。これらの極小穴(1310)は、支持用弧状断片(105)および経路用弧状断片(110)の両方に眼内インプラント全体に存在する。
【0029】
環状非平面構造体は天然のレンズ(420)(以下、天然レンズ)を覆わないように構成されており、更に、眼(400)内の虹彩(405)の上に埋め込まれるときにほぼ虹彩角膜角(410)(虹彩角としても知られる)まで延びるように構成されている。よって、好適な実施形態において環状非平面構造体は、人間の眼球の瞳(421)に対応する中央開口部を有する。人間の眼球のためにこの中央開口部は直径通常3〜4ミリであり、好ましくは直径約3.5ミリである。
【0030】
環状非平面構造体は、中央開口部から縁部に向かって(すなわち中央開口部から放射状に離れる方向に)減少する不均一な厚み(201)を有する複数の弧状断片(105および110)を含む。弧状断片は支持用弧状断片(105)および経路用弧状断片(110)を含む。
【0031】
各弧状断片は上面および底面を有している。よって、支持用弧状断片上面(220)と、支持用弧状断片底面(221)と、経路用弧状断片上面(222)と、経路用弧状断片底面(223)とがある。上面という名称は、眼(400)に埋め込まれたときに、虹彩(405)から離れている側であることを一般に意味する。埋め込まれたときに、中央開口部の端部での虹彩(405)の表面から支持用弧状断片の底面(221)までの距離すなわちアーチ状の高さ(224)は典型的には約0.3〜0.5ミリである。このアーチ状の高さ(223)によって、眼(400)の前眼房(415)において虹彩(405)との解剖学的な適合性を有する。
【0032】
弧状断片は、眼(400)内の虹彩(405)の上に埋め込まれるときに、インプラント(100)下の体液の流れのための経路(212)(二重矢印によって示される)を画定し、この体液の流れは、虹彩(405)の上に一定距離置いて配置される経路用弧状断片(110)によって形成される。経路用弧状断片(110)は、虹彩角膜角で小柱網と瞳との間の体液の流れを比類なく可能にする。
【0033】
弧状断片は、眼(400)内の虹彩(405)上に埋め込まれるときに、虹彩(405)に接触する支持用弧状断片(105)によって形成される経路(212)のための支持構造体を画定するように構成される。虹彩(405)とのこうした接触は典型的には、虹彩角膜角(410)にて支持用弧状断片(105)の縁部近傍の領域に限定される。支持用弧状断片の底面(221)および経路用弧状断片の底面は埋め込められるときに虹彩(405)と向かい合う。
【0034】
各支持用弧状断片(105)は外方に(すなわち縁部に向かって)テーパーする薄い部分である。支持用弧状断片の最大厚(205)は中央開口部近傍で約0.16〜0.18ミリであることが好ましい。支持用弧状断片の最小厚(206)は縁部で約0.12〜0.14ミリであることが好ましい。
【0035】
各経路用弧状断片(110)は、好ましくはテーパーした異なる厚みを備える以外は、同様に構成される。経路用弧状断片の最大厚(210)は中央開口部近傍で約0.08〜0.12ミリであることが好ましい。経路用弧状断片の最小厚(211)は縁部が約0.06〜0.1ミリであることが好ましい。好ましくは、光彩角膜角(410)での光彩と経路用弧状断片(110)の底部の最小スペースは約0.04ミリである。
【0036】
環状の非平面構造体は、複数の耳状突起(115)を備えており、この耳状突起は、支持用弧状断片(105)から延びておりかつ光彩角膜角(410)で眼(400)と係合することによって所定の位置にインプラント(100)を保持するように構成されている。耳状突起(115)は好ましくは、上から見たときに三角形状を有し、インプラント(100)を眼(400)内の固定された位置において保持または安定させるためのものである。代替のものとしては半円または丸みを帯びた四角形状である。各耳状突起(115)は好ましくは0.12〜0.14ミリの厚みであり、眼(400)内において流体の流れを可能にするための極小穴を備えて構成されることが好ましい。耳状突起は支持用弧状断片(105)と同じ厚みであることが好ましい。三角の底辺の長さは好ましくは0.8〜1.0ミリであり、その高さあるいは支持用弧状断片(105)のほとんどを画定する円から延びる距離は好ましくは0.3〜0.5ミリである。耳状突起(115)は、互いからおよび経路用弧状断片(110)から等間隔に離間していることが好ましい。耳状突起(115)は好ましくは、光彩角膜角(410)の構造体への損傷を最小限にするために丸みを帯びた端部を備えて構成される。丸みを帯びた端部は鋭角ではなく、支持用弧状断片に対して鈍角を有するものである。
【0037】
耳状突起(115)は、適当に配置されるとき、角度の付いた構造体に対してストレスをほとんど生じさせず、なお、その薄く弾性があり柔らかい特性と相まってインプラントを所定の位置に一体化して保持する。耳状突起(115)は、複数の接点において眼組織からの圧力による力を安全に分散する。耳状突起(115)は、インプラントの上または下に生じ得る圧迫を避ける所望の位置(虹彩のすぐ上)においてインプラント(100)を保持するために最大限柔軟であるべきである。耳状突起(115)の端部までのインプラントの全径は好ましくは11.5〜13.5ミリである。よって、支持用弧状断片(105)のほとんどを画定する円の直径は好ましくは10.5〜12.5ミリの間である。
【0038】
図2に示すように、各経路用弧状断片(110)は各支持用弧部(105)よりも均一的に薄い。更に、経路用弧状断片(110)の底部は経路(212)を形成するために支持用弧部(105)の底部よりも上にある。
【0039】
図5、
図7および
図8は2つの態様の任意の爪を備えるインプラント(100)を記載している。
図5は、外方に向かう開放形状の爪(510)を記載しており、
図7および
図8は閉ループ形状の爪(710)を記載しており、眼内インプラントへの任意の追加物として人工レンズを固定するために使用される。任意の第1の人工レンズ(600)は外方に向かう開放形状の爪(510)と共に使用され、任意の第2の人工レンズ(700)は閉ループ形状の爪(710)と共に使用される。「外方」という用語は、天然レンズ(420)から離れる方向を概して指す。
【0040】
いずれの爪の態様においても、眼(400)に埋め込められたときには爪は虹彩(405)から離れる方向に支持用弧状断片(105)から立ち上がっており、インプラント(100)の上の天然レンズ(420)をまたぐ人工レンズのための繋留点を提供するように構成されている。
【0041】
閉ループ形状の爪の高さ(811)は好ましくは0.2〜0.6ミリの範囲である。閉ループ形状の爪の開口部の幅(812)は好ましくは約0.1ミリである。閉ループ形状の爪の開口部の高さ(813)は好ましくは約0.1〜0.3ミリの範囲である。
【0042】
図7は、任意の第2の人工レンズ(700)を備えるインプラント(100)を記載している。この実施形態は、際立った特徴として第2のレンズ延出部の足部(901)にピン状部分(911)を有する、任意の第2の人工レンズ(700)を含んでいる。第1のレンズの延出部の足部の幅(612)は好ましくは約0.35〜0.75ミリの範囲であり、第1のレンズの延出部の足部の長さ(613)は好ましくは約0.15〜0.5ミリの範囲である。
【0043】
任意の第1の人工レンズ(600)および任意の第2の人工レンズ(700)は屈折部品であり、すなわち、有水晶体眼内レンズであり、典型的にはレーシック(レーザー光線による角膜曲率形成術)手術では適していない高い屈折異常を修正するために使用されるものである。埋め込み可能なレンズは他の視力矯正処置が医学的に良い選択肢ではない場合(例えば、患者の角膜が薄い場合やジオプターが3.00〜20.00である場合)に必要とされることが多い。有水晶体眼内レンズを受けた患者によっては、レーシックは視力矯正に磨きをかけるために追跡治療として用いることができる。
【0044】
人工屈折レンズはヘアピン状部品(1540)(本明細書においてヘアピン具とも呼ばれる)も備えていてもよい。ヘアピン状部品(1540)は、インプラントを含む材料が柔らかくて薄く、その形状において付属要素なしにはアーチ状の高さ(1620)を維持することが容易ではない場合に必要とされる。従って、ヘアピン状部品(1540)は、PMMAや、透明なプラスチックであるポリ(メタクリル酸メチル)のようなより硬い材料から作られることが好ましい。
【0045】
ヘアピン状部品(1540)は、屈折レンズを備えるインプラントおよび屈折レンズを備えないインプラントに用いることができる。ヘアピン状部品(1540)は、アーチ状の高さ(1620)を維持することによって虹彩とインプラントの間の接触面を最小限にすることを助ける。よって、ヘアピン状部品(1540)はインプラントのアーチ状の高さ(1620)を維持するようになされており、ヘアピン状部品(1540)の数および形状は変わってもよい。
図15A、
図15B、
図15Cおよび
図15Dは、様々なヘアピン状部品(1540)を示している。
【0046】
ヘアピン状部品(1540)は、人工レンズを有するインプラントで用いられる場合、眼の表面の上で人工レンズを支持するために、インプラントに固定され係合される。
図17は、眼の上で第5の人工レンズ(1610)を支持するヘアピン状部品(1540)を備える第5の人工レンズ(1610)を有する第1の代替インプラント(1700)の平面図を示している。
図16は、第5の人工レンズ(1610)の立面図であり、眼の表面の上のレンズアーチ状の高さ(1620)が示されている。ヘアピン状部品(1540)とアーチ状の高さ(1620)との間の間隙は、瞳孔ブロックのリクスを最小限にするように体液の流れを可能にしている。
【0047】
各ヘアピン状部品は、人工レンズを有するインプラントと共に使用される場合、眼の表面の上に人工レンズを持ち上げるために必要な構造体を提供しかつインプラントの本体(1531)に取り付けられた人工レンズの一部である。
図15Aは、人工レンズを支持するための第1のヘアピン状部品(1510)の断面図であり、この第1のヘアピン状部品(1510)はこの下にインプラントの本体を保持するために下に折り曲げられた端部を有する。
図15Bは、第2のヘアピン状部品(1520)の側面図であり、第2のヘアピン状部品(1520)はこの上に本体を保持するために上に折り曲げられた端部を有する。
図15Cは、第3のヘアピン状部品(1530)の側面図であり、第3のヘアピン状部品(1530)はこの下に本体をくさび状に入れるために下に鋭角に曲げられた端部を備える。
図15Dは、第4のヘアピン状部品(1540)の側面図であり、長形溝(スロット)内にインプラントの本体を保持するように溝構造を備える。
【0048】
人工レンズを用いる実施形態のいずれにおいても、延出部は、人工レンズを所定の位置に保持するために爪と係合し、人工レンズをインプラントおよび虹彩の表面から持ち上げるように構成されている。これは
図10において示されており、これは支持用弧状断片(105)の上の任意の第2の人工レンズ(700)の一部の側面図である。第2のレンズの延出部の厚み(1011)は、好ましくは0.1〜0.3ミリの範囲である。第2のレンズの延出部の足部の長さ(1013)は好ましくは0.15〜0.5ミリの範囲である。第2のレンズの延出部の立ち上がりの距離(1012)は好ましくは0.25〜0.5ミリの範囲である。第2のレンズの延出部のフレームの距離(1014)は好ましくは約0.5ミリである。第2のレンズの延出部の高さ(1015)は好ましくは0.25〜0.5ミリの範囲である。
【0049】
好ましくは、
図6および
図9に示すように、互いに均等に離間した4つのレンズの延出部がある。屈折部分の直径は、非屈折部分の中央開口部の直径よりも大きい。非屈折部分および任意の人工レンズの両方は屈曲可能な生体適合性材料でもある。弧状断片の数および厚みは、例えば人工レンズを伴う用途あるいは伴わない用途に適合させるために変えることができる。
【0050】
図6および
図9に示す例示的なレンズにおいて、延出部は人工レンズを持ち上げるために立ち上がり部を備えている。すなわち、第1のレンズの延出部の立ち上がり部(602)は、任意の第1の人工レンズ(600)を持ち上げ、第2のレンズの延出部の立ち上がり部(902)は、任意の第2の人工レンズ(700)を持ち上げる。立ち上がり部は、人工レンズの下で体液の流れが自由にできるように穴を画定するように構成されている。任意の第1の人工レンズ(600)において、この穴(614)は第1のレンズの延出部の立ち上がり部(602)に表されている。任意の第2の人工レンズ(700)において、この穴(914)は第2のレンズの延出部の立ち上がり部(902)に表されている。
【0051】
インプラント(100)は柔軟であるため、約3.5ミリの長さの縁部角膜外科的切開によって眼内に容易に折り込まれ、挿入される。角膜はこの切開の長さのおかげで縫合する必要はない。これは非常に単純で、短く、安全かつ痛みの無い処置である。任意の第1の人工レンズ(600)が用いられる場合、非屈折部分を前眼房(415)内に適切に配置した後、屈折部分は屈曲可能であるため同じ切開部を通して挿入される。次に、好適な実施形態において4つの延出部のそれぞれが支持用弧状断片の上面(220)から立ち上がる爪に係合する。
【0052】
付加的な屈折部分(人工レンズとも呼ばれる)は、非屈折本体(インプラント(100)とも呼ばれる)の中央の高さで配置されることが好ましい。よって、人工レンズとインプラント(100)の組み合わせによって、外科医はこのユニットを容易に挿入することができる。外科医は、非屈折着色部(すなわちインプラント(100))を挿入した後、屈折部分(すなわち人工レンズ)を取り付けなくてもよい。本体(すなわちインプラント(100))が適切に位置決めされると、屈折部分も同時に位置決めされる。これらの態様は
図11および
図12に示されている。当然、屈折部(人工レンズ)は全ての態様において透明で着色されていないことが好ましい。経路用弧状断片の下の流れと組み合わさって経路用弧状断片の極小穴(1310)、あるいは孔は、最大限の自然な体液の流れをより可能にする。
【0053】
図11は第3の人工レンズ(1100)を備える眼内インプラントの側断面図である。これは眼内インプラントと、人工レンズを固定するために爪を使わない人工レンズとを一体式に組み合わせたものである。屈折部分(すなわち、第3の人工レンズ(1100))は、中央開口部と同じ高さにあり、その上でも下でもない。
【0054】
図12は、眼内インプラントを受け入れる長形溝(1210)を備えて構成される第4の人工レンズ(1200)の側断面図である。非屈折部分および屈折レンズを備えるこの形態は爪を有しない。
【0055】
人工レンズを使用する形態のいずれにおいても、眼内インプラントはこのインプラントが眼内の虹彩上に埋め込められるときに天然レンズを覆うように構成されている。
【0056】
図18は第6の人工レンズ(1830)を有する第2の代替インプラント(1800)の平面図である。第6の人工レンズ(1830)は、好ましくは直径約3.0ミリから約6.0ミリである。
図18は、第2の代替インプラント(1800)の代替本体(1820)における排水穴(1840)を示している。排水穴(1840)は好ましくは直径が極小であり、人間の目には見えない。
【0057】
図20にも示す第6の人工レンズ(1830)は突出部(2010)を有している。
図20は突出部(2010)のための嵌合穴(2020)も示している。突出部(2010)のための嵌合穴(2020)は第2の代替インプラント(1800)の代替本体(1820)にある。
図18は突出部および嵌合穴を特定しており、平面図において丸い点(1850)で表されている。突出部は人工レンズから延びており、突出部と嵌合し人工レンズを前記材料に固定するように複数の取付穴を画定するように本体(1820)が構成されている。
【0058】
インプラント(100)の全ての実施形態は縁部リング(1710)(リンバルリング(limbal ring)とも知られる)を使用してもよい。縁部リング(1710)は好ましくは、眼内インプラントの虹彩を囲む小さな黒いリングである。縁部リング(1710)は幅約2ミリまでであることが好ましく、虹彩を囲み虹彩の外縁を画定する。
【0059】
図19は縁部リング(1710)と第7の人工屈折レンズ(1910)とを備える第3の人工インプラントの平面図である。縁部リング(1710)は、人間の眼の前眼房(415)に配置することができる。縁部リング(1710)は好ましくは、流体が流れるように支持用弧状断片(105)および経路用弧状断片(110)を含む。これらは本体(1531)上でこれらに対応する支持用弧状断片(105)および経路用弧状断片(110)と嵌合する。
【0060】
縁部リング(1710)はこれを通して流体が流れることができる透過性部材からなっていてもよい。代替の実施形態において、類似するリングが瞳の周囲に使用されてもよく、この瞳のリングは屈折レンズでもよい。
【0061】
更なる代替の実施形態において、縁部リング(1710)は結膜の下に埋め込まれる。結膜はテノン嚢および強膜の上にある透明な膜である。好適な角膜と結膜の間のリングは局所麻酔によって結膜の下に容易に配置される。このような縁部リング(1710)は網膜締結材料からなり、なぜなら、係る材料は副作用がほとんどないか全くないと予想されるからである。結膜の下に不活性材料を配置する場合(網膜締結処置など)、これは安全、非炎症性、かつ永久的である。この種のインプラントは、眼を大きく見せるのに用いられるコンタクトレンズに類似するリスクがあることが予想される。
【0062】
結膜の下への埋め込みが好ましく、なぜならこの外科手術はめったに緑内障、眼内炎および他の副作用をもたらさないからである。結膜の下への埋め込みが好ましく、なぜなら虹彩と接触しない角膜と結膜の間のリングは、炎症や高眼圧のリスクを無くし、瞳孔拡張を妨げないからである。これは角膜損傷(例えば、浮腫、内皮細胞損失、眼内炎、前眼房における色素細胞分散、緑内障、白内障、更には光感受性過敏)のリスクを極めて低くする。
【0063】
縁部リング(1710)はインプラントを使用する患者が望む幅あるいは色でよい。これは天然の虹彩の色を際立たせるために用いることもできる。色のバリエーションは虹彩を大きく見せるものとして知られる。これは永久かつ安全なコンタクトレンズのようなものである。
【0064】
図21は、接着された人工レンズ(2110)を備えるインプラントの立面図であり、接着剤を用いて眼内インプラントに取り付けられている。排水穴(1840)が第2の代替本体(2120)に表われている。
【0065】
図22はピンコネクター(2210)を備える縁部リング(2200)の平面図である。円で囲んだ部分(23)が、ピンコネクター(2210)を備える縁部リング(2200)の一部を拡大する目的でこれを特定している。円で囲んだ部分(23)が
図23Aおよび
図23Bにおいて拡大図で表されている。ピンコネクター(2210)の2つの態様が示されている。短いピンコネクター(2310)が縁部リング(2200)の重なり合う2つの端部を密着結合によって互いに結合している。長いピンコネクター(2320)が、流体の流れを可能にするために重なり合う端部間に間隙を有する分離結合によって2つの端部を結合している。
【0066】
図23Aは密着したピン結合を備える縁部リングの拡大部を示す平面図である。
【0067】
図23Bは、分離したピン結合を備える縁部リングの拡大部を示す平面図である。
【0068】
インプラント(100)は任意の所望の瞳開口部および虹彩設計を受け入れるように作ることができる。例えば、それは最大限の瞳孔拡張を示すようにより幅広い瞳開口部を有していてもよい。インプラント(100)は典型的には、虹彩パターンとマッチし、人間の天然の目の色とブレンドするように色素色(例えば黒色の斑点伴う茶色)で印刷される。異なる形状、文字、記号等がインプラント上に印刷されてもよい。より幅の広い瞳開口部によって更に多くの流体の流れと、虹彩とのより少ない接触も可能となる。
【0069】
更に、インプラント(100)はこのインプラント(100)の任意の部分に他の複数の開口部を有していてもよく、これは、天然の虹彩の茶色の斑点が表われることを可能にし、インプラント(100)上での印刷デザインと調和させることができるインプラント設計の一部である。係る開口部はインプラント(100)を通しての流体の流れも向上させる。インプラント(100)上の色素はこれを通して天然の虹彩が表われることができるように透明でよい。インプラント(100)はこのインプラント(100)の後ろの天然の眼の色を用いて異なるデザインをなすために茶色の複数の筋を有していてもよい。
【0070】
図24は、支持用弧状断片(105)を通して溝(2420)(略環状溝)を備える第3の代替インプラント(2400)を示している。よって支持用弧状断片(105)は支持用弧状断片(105)を横切る溝を画定するように構成されている。両矢印(2410)は流体が流れる方向を示している。支持用弧状断片(105)を横切る各溝(2420)は、支持用弧状断片を横切る流体の流れを可能にする。更なる溝を追加すると、より虹彩との接触が少なくなり、炎症の可能性が低くなり、眼圧が低くなる。第3の代替態様(2400)は、インプラントがそれぞれ異なる数、サイズ、厚みの溝、異なる方向のヘアピン状部品もしくはリブを有し、更にはヘアピン状部品上に溝を有するバリエーションを有する概念を示している。
【0071】
図面を含む上記の実施形態は本発明の例であって、本発明の例示的説明をなすのみである。他の実施形態も当業者にとって自明であろう。よって、本発明の範囲は、記載した例ではなくむしろ添付の特許請求の範囲とこれらの均等物によって決定される。