(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パルス発生器は、前記皮膚侵入電極のそれぞれに約0.1〜10ヘルツのパルス列を与え、前記パルス列の各パルスは、約0.5〜10.0ミリ秒のパルス継続時間と、最大約2ミリアンペアの電流振幅と、によって特徴付けられる、請求項1に記載のシステム。
前記電流振幅は、パルス開始時には、前記パルス開始から最大でも約0.25ミリ秒以内に約0.5〜2ミリアンペアの最大電流振幅に達し、前記最大電流振幅は、前記パルス調整回路によって生成され、前記電流振幅は、その後、前記パルス継続時間の残り部分において、約5〜50パーセント低減される、請求項2に記載のシステム。
前記二相及び単相パルス電流は、前記皮膚表面電極において、且つ、前記皮膚侵入電極のそれぞれにおいて、非連続パターンの経皮電気神経刺激及び皮膚侵入電気神経刺激のかたちで電気無痛法を実施するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
前記パルス調整回路は、キャパシタと抵抗との並列接続、半導体である電界効果トランジスタ、デジタル信号プロセッサ、及びインダクタのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
前記皮膚侵入電極のそれぞれは、前記皮膚組織内のAδ神経線維及びC神経線維を標的とするように構成されていて、前記少なくとも1つの皮膚表面電極は、前記皮膚組織内のAβ神経線維を標的とするように構成されている、請求項1に記載のシステム。
前記皮膚侵入電極及び前記非導電性被覆のそれぞれにおける細菌の繁殖を低減する為に、前記皮膚侵入電極アレイの中又は上に、且つ、前記非導電性被覆の中又は上に注入されるか、層状に積み重ねられた抗菌剤を更に備える、
請求項1に記載のシステム。
前記皮膚侵入電極アレイ及び前記電極キャリアと結合された場合に、前記皮膚侵入電極及び前記電極キャリアのそれぞれにおいて細菌の繁殖を低減するように構成された消毒機構を更に備える、
請求項1に記載のシステム。
パルス発生器、皮膚組織内のAβ神経線維を標的とするように構成された少なくとも1つの皮膚表面電極、及び前記皮膚組織内のAδ神経線維及びC神経線維を標的とするように構成された皮膚侵入電極のアレイを備える電気療法システムの作動方法であって、
a)前記パルス発生器が、前記少なくとも1つの皮膚表面電極に対して、前記皮膚組織に通すために、パルス調整回路を介して、二相パルス電流を印加する第1印加ステップと、
b)前記パルス発生器が、前記第1印加ステップと共に、前記皮膚侵入電極のアレイのうちの少なくとも1つの皮膚侵入電極に対して、前記皮膚組織に通すために、単相パルス電流を、あるパターンで前記二相パルス電流と共に印加する第2印加ステップと、
c)前記パルス発生器が、前記二相パルス電流と前記単相パルス電流とを含む前記皮膚組織に通される組み合せられた出力を発生させるステップと、
d)前記ステップa)からc)を繰り返すステップと、
を含む方法。
前記パターンは、ランダムなパターン、位相ロックされたパターン、所定のパターン、及び順序立てたパターンのうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の方法。
前記パルス列中の各パルスのパルス開始時には、前記電流振幅が前記パルス開始から最大でも約0.25ミリ秒以内に約0.5〜2ミリアンペアの最大電流振幅に達し、前記電流振幅は、その後、前記パルス継続時間の残り部分において、約5〜50パーセント低減される、請求項20に記載の方法。
前記パルス発生器は、前記少なくとも1つの皮膚表面電極にパルス列を与え、前記パルス列は、バースト周波数が約0.1〜10ヘルツであり、前記バースト内のパルス列周波数が約50〜400ヘルツであり、前記少なくとも1つの皮膚表面電極のそれぞれ1つあたりのバースト継続時間が最大約100ミリ秒であり、パルス継続時間が約0.05〜0.3ミリ秒であり、電流振幅が最大約50ミリアンペアである、請求項23に記載の装置。
前記パルス発生器は、前記各皮膚侵入電極に約0.1〜10ヘルツのパルス列を与え、前記パルス列の各パルスは、約0.5〜10.0ミリ秒のパルス継続時間と、最大約2ミリアンペアの電流振幅と、によって特徴付けられ、前記電流振幅は、パルス開始時には、前記パルス開始から最大でも約0.25ミリ秒以内に約0.5〜2ミリアンペアの最大電流振幅に達し、前記最大電流振幅は前記パルス発生器によって生成され、前記電流振幅は、その後、前記パルス継続時間の残り部分において、約5〜50パーセント低減される、請求項23に記載の装置。
前記皮膚侵入電極アレイの中又は上に、且つ、前記非導電性被覆の中又は上に注入されるか、層状に積み重ねられて、前記皮膚侵入電極及び前記非導電性被覆のそれぞれにおける細菌の繁殖を低減する抗菌剤を更に備える、
請求項23に記載の装置。
前記二相及び単相パルス電流は、前記皮膚表面電極において、且つ、前記皮膚侵入電極のそれぞれにおいて、あるパターンの経皮電気神経刺激及び皮膚侵入電気神経刺激のかたちで電気無痛法を実施するように構成されている、請求項23に記載の装置。
前記パターンは、ランダムなパターン、位相ロックされたパターン、所定のパターン、及び順序立てたパターンのうちの少なくとも1つである、請求項28に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本発明の非限定的な実施形態を、例として、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図面を参照すると、
図1は、皮膚組織内の感覚神経を刺激する電気療法システム100の非限定的な一実施形態を示している。電気療法システム100は、多チャネルパルス発生器102と、電極キャリア104と、消毒兼再充電機構106と、を含んでいる。パルス発生器102は、電極キャリア104上に配置された皮膚侵入電極110(例えば、経皮電極)及び皮膚表面電極112(例えば、導電板電極)を介して、パルス電流を患者の皮膚に伝達するように構成された電気回路108を含んでいる。皮膚侵入電極110は、電気刺激を経皮的にAδ神経線維及びC神経線維に印加するように構成されており、皮膚表面電極112は、Aδ神経線維及びC神経線維に印加される電気刺激に先だって、且つ/又は、この電気刺激と時間的に一部重なり合って、電気刺激を経皮的にAβ神経線維に印加するように構成されている。そして、消毒兼再充電機構106は、処置実施の合間に、皮膚侵入電極110の皮膚侵入表面、電極キャリア104の皮膚接触表面、及び皮膚表面電極112における細菌の繁殖を低減するように機能する。消毒兼再充電機構106は又、処置実施の合間に、その消毒処理と並行して、又は消毒処理とは別に、パルス発生器102の電源114を再充電するように機能することが可能である。
多チャネルパルス発生器102
【0011】
図1に示したように、多チャネルパルス発生器102は、電気回路108、電源114、及びキーパッド116を含んでいる。電気回路108は、電圧変換器118、マイクロコントローラユニット(MCU)120、シフトレジスタ122、出力段124、及び電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)126を含んでいる。電圧変換器118は、電源114の電圧を約50ボルトまでブーストする電圧増倍回路(図示せず)に給電する1メガヘルツ発振器である。相補型金属酸化膜半導体(CMOS)ロジックをアナログに変換する任意の好適な電圧変換器118を用いてよい。MCU120は、キーパッド116の入力を監視し、シフトレジスタ122にタイミング系列を与え、EEPROM126に記憶されているファームウェアからの命令を実行する。MCU120は、PICベースであってよい。シフトレジスタ122は、出力パルスタイミングの計時に用いるロジックを出力段124に提供する。出力段124は、電源114の電圧を電極キャリア104に結合する一連のトランジスタを含んでいる。
【0012】
メモリ記憶は、EEPROM126により行われる。EEPROM126は、任意の好適な不揮発性メモリ装置であってよい。又、EEPROM126は、データロギング機能(図示せず)の為のメモリ記憶を行ってもよい。データロギング機能は、処置の使用、継続時間、振幅出力、及び他のユーザ/患者/被験者情報を記録することが可能であり、製造業者、臨床試験のスポンサー、又は処方医師がEEPROM126に照会して、その情報を取得することが可能である。パルス発生器102及びファームウェアの他の非限定的な構成も、本発明で使用してよい。そして、パルス発生器102の各構成要素は更に、内部フラッシュメモリを有するフィールドプログラマブルゲートアレイ(図示せず)に集積してよい。
【0013】
図1に示したように、電源114は、単4アルカリ電池(1.5ボルト)3本で構成され、チャネル当たり約5〜50ボルトを供給するが、電源114は、1つ以上の任意の従来型再充電可能電池であってよく、例えば、再充電可能なリチウムポリマー電池(図示せず)であってよい。電源114は又、他の任意の好適な電圧源であってもよく、例えば、従来のコンセントプラグ、太陽電池パネルなどであってよい。
【0014】
又、
図1に示したように、パルス発生器102と皮膚表面電極112との間に、パルス調整回路128が設けられている。パルス調整回路128は、電極キャリア104上に配置してよい。パルス調整回路128は、Aδ神経線維及びC神経線維を効果的に刺激する為に、皮膚侵入電極110の活性部分をより正確に位置決めすることを可能にする。Aδ神経線維及びC神経線維を効果的に刺激するのに十分な電圧勾配を皮膚侵入電極110が発生させるかどうかについては、幾つかの要因が作用する。例えば、負荷は、皮膚侵入電極110の、神経からの距離に応じて変化し、インピーダンスは、針の先端が神経に近づくにつれて小さくなり、患者の皮膚組織の抵抗/キャパシタンスは、患者ごとに異なる場合があり、又、同じ患者でも皮膚の場所が違えば異なる場合がある。従って、皮膚侵入電極110によって生成される電圧勾配は、予測不可能であり、皮膚侵入電極110の位置決めに強く依存する。
【0015】
負荷や皮膚の抵抗/キャパシタンスが様々であっても予測可能な電圧勾配を与える為に、パルス調整回路128を、患者の皮膚を通る電気経路に直列に配置して、Aδ神経線維及びC神経線維を効果的に刺激する所望の電圧勾配が維持されるようにしている。この電気経路を形成する為に、1つ以上の皮膚表面電極112を、皮膚侵入電極110とは逆の極性で用いることにより、皮膚表面電極112を、皮膚侵入電極110に対する集電器として動作させることが可能である。この構成では、パルス調整回路128は、皮膚表面電極112とパルス発生器102との間の戻り電気経路に配置される。代替として、1つ以上の皮膚侵入電極110を、他の皮膚侵入電極110に対する集電器として動作させることが可能である。
【0016】
パルス調整回路128は、所望の電圧勾配を維持する為に、皮膚侵入電極110と集電極とにまたがって一定の波形を維持する。好ましくは、パルス調整回路128は、患者の皮膚組織を通って伝達される波形を比較的矩形(例えば、
図17及び
図18)に近づけるように構成される。そして、パルス調整回路128は、一定波形を維持する為に、患者の皮膚組織のインピーダンス特性に基づいて、波形の電圧成分と電流成分との間の線形関係を維持する。但し、上述のように、皮膚組織の電気的特性は、患者ごとに、又は同じ患者の皮膚であっても場所ごとに、変化する可能性がある。従って、パルス調整回路128の特性も、変更が必要になる場合がある。
【0017】
図1では、パルス調整回路128を、キャパシタ130と抵抗132との並列接続として示したが、より複雑な回路を使用してもよい。例えば、パルス調整回路は、半導体である電界効果トランジスタ、デジタル信号プロセッサ、インダクタ、及び他の能動半導体部品を含んでよく、これによって、患者の皮膚組織の電気的特性が変化したときに患者の皮膚組織にまたがって所望の波形が維持されるように、パルス調整回路128の回路特性が調節可能であるようにしてよい。従って、パルス発生器102は、患者の皮膚組織にまたがる電圧及び電流の値を測定して患者の皮膚のインピーダンスを求める回路(図示せず)を含んでもよい。この測定値に基づいて、パルス発生器102内のデジタルコンピュータ(図示せず)を用いて、患者の皮膚組織のインピーダンスが変動しても、患者の皮膚にまたがって所望の波形が維持され、これによって所望の電圧勾配が維持されるように、パルス調整回路の各部品を自動的に調節することが可能である。代替として、患者は、パルス調整回路128の回路特性を手動で調節することが可能である。
【0018】
キーパッド116は、電気療法システム100の状態及び出力を表示するディスプレイを有する、任意の好適な患者入力用オペレータキーパッドであってよい。キーパッド116は、パルス発生器102のプログラミング及び機能を制御する為のユーザインタフェースを提供する。例えば、
図2に示すように、キーパッド116は、電気刺激出力の量を制御するプラス/マイナストグルキー200、電気刺激出力のレベルを表示する一連のLED202、及び電気療法システム100をオンオフする電源ボタン204を含んでよい。
【0019】
図2に示したように、パルス発生器102は、物理的に独立して設けられており、電極ケーブル206によって電極キャリア104と電気的に接続されている。ケーブルプラグアセンブリ208が、電極ケーブル208を介して、パルス発生器102を、皮膚表面電極112及び皮膚侵入電極110と着脱可能に接続するように設けられている。電気回路108の出力段124は、電極キャリア104上、又はパルス発生器102内に配置してよい。パルス発生器102は、電極キャリア104から物理的に独立して設けられている場合には、任意の好適な材料(例えば、ポリカーボネート/ABSブレンド)で作られたハウジングの中に構築されてよい。代替として、パルス発生器102は、電極キャリア104の背面に形成又は装着されてよい(例えば、
図13)。
【0020】
図2に示した電極キャリア104の実施形態は、皮膚侵入電極110の、3個からなる列を2つと、4個からなる列を2つ含んでおり、それぞれの間に、皮膚表面電極122の、3個からなる列を3つ散在させている。従って、電極キャリア104は、14個の皮膚侵入電極110と、9個の皮膚表面電極112と、からなるアレイを含んでいる。個々の皮膚侵入電極110のそれぞれ、及び個々の皮膚表面電極112のそれぞれは、電極110及び112のそれぞれを通って電流が伝達されるように、別々のチャネルを介してパルス発生器に電気的に接続されている。従って、
図2に示した実施形態では、多チャネルパルス発生器102は、少なくとも23チャネル(14個の皮膚侵入電極110のそれぞれに1チャネルずつと、9個の皮膚表面電極112のそれぞれに1チャネルずつ)を含んでいる。パルス発生器102は、実質的にいかなる数の電極110及び112並びに対応するチャネルについても、同様に構成可能である。
電極キャリア104
【0021】
電極キャリア104は、薄く、フレキシブルでありながら、伸び縮みはしないポリカーボネートで作られている。電極キャリア104は、ほぼフラットであるが、身体のほとんどの部位に当てることが可能であるように、皮膚組織に追従して形状自在である。電極キャリア104は、より剛性を与えるべく、さほど曲がらないポリマー材料で作ることも可能である。例えば、電極キャリア104は、プリント回路基板(PCB)であってよい。これは、電気刺激機器の組み立て及び製造において、且つ、電気療法の実施及び適用において、以前から知られているものである。
【0022】
図2〜
図5に示すように、皮膚侵入電極110のそれぞれは、ストップノジュール210に埋め込まれており、皮膚侵入部分212だけがストップノジュール210の環状表面から延びている。ストップノジュール210は、電極キャリア104の前面側と患者の皮膚との間のスペーサとして機能することにより、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212を患者の皮膚組織に向かって、より突出させている。ストップノジュール210は又、上方から圧力がかかったときに、丸い接触面が患者の皮膚と接触し、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212を、患者の皮膚の、その接触時点の位置より奥に侵入しないように止めることにより、皮膚侵入部分212が所定の深さだけ患者の皮膚に侵入することを可能にする。
【0023】
皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212が患者の皮膚に侵入する深さを制御するのに十分な丸さの接触面になるように、ストップノジュール210の断面の表面積は、約0.2〜25mm
2、好ましくは約3mm
2である。各ストップノジュール210の遠位末端は、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212が患者の皮膚に侵入する深さを制御する為の皮膚接触の最適量を与えるような凸形状であることが好ましい。例えば、ストップノジュール210の遠位末端は、ドーム状(例えば、
図2、3A、3B、及び4)、円錐状(例えば、
図3C及び3D)、又はほぼフラット(例えば、
図3E、3F、5、6A、及び6B)であってよい。ストップノジュール210の遠位末端が円錐状である場合、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212とストップノジュール210との間の角度αは、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212が患者の皮膚に侵入する深さを十分制御する為には、160°を超えないことが好ましい。これより角度αが大きいと、皮膚への侵入深さが大きくなる。
【0024】
各皮膚侵入部分212の断面の表面積は、皮膚を有意に損傷しない程度の圧力の作用で各皮膚侵入部分212が患者の皮膚に浸入するように、十分小さくなければならない。従って、皮膚侵入電極110の断面の表面積は、約0.065〜0.4mm
2でなければならない。皮膚の損傷を更に低減する為には、各皮膚侵入部分212の先端は、90°未満(好ましくは、45°未満)の角度で尖っていてよい。皮膚侵入部分212の先端は、完全に円錐状であってよく(例えば、
図2、3A、3C、3E、4、5、6A、及び6B)、或いは凸円錐/凹円錐状に尖っていてよく(例えば、
図7、14、及び15)、これらは、刃先(図示せず)を有していてよく、或いは、これらは、針又はピンの形状であってよい(例えば、
図3B、3D、及び3F)。
【0025】
皮膚侵入電極110は又、皮膚受容器に所望の刺激を与えるのに十分な程度まで患者の皮膚に侵入するように設計されている。より具体的には、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212は、Aδ神経線維及びC神経線維を活性化及び回復させる為に必要な高い電流密度を与えるように、十分に小さい、絶縁されていない「活性」表面積を有し、しかし、皮膚侵入部分212は、Aδ神経線維及びC神経線維の活性化及び回復が可能な皮膚侵入深さに達するように十分長い。従って、望ましい皮膚侵入深さに達する為に必要な全体長さの結果として、皮膚侵入部分212上の活性表面積が大きすぎる場合は、皮膚侵入部分212の、長さ方向の一部分を絶縁して、先端において小さな活性表面積だけが露出するようにすることが必要であろう(例えば、
図14及び
図15)。皮膚侵入部分212の活性長さは、約0.1〜0.5mmでなければならない。
【0026】
必要な皮膚侵入深さは、処置対象の皮膚のタイプ、及び標的となるAδ神経線維及びC神経線維の場所に依存する。そして、ストップノジュール210が皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212を患者の皮膚組織に向かって、より突出させる為、その所望の深さを達成する為に、ストップノジュール210及び皮膚侵入部分212を、様々な寸法の組み合わせで用いてよい。例えば、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212は、底面から先端までの長さが約0.1〜5.0mm(好ましくは、約0.2〜3.0mm)であってよく、ストップノジュール210は、底面から遠位末端までの高さが約0.1〜5.0mmであってよい。更に、所望の侵入深さの達成を支援する為に、ストップノジュール210の高さ及び断面の表面積の両方を、処置対象の皮膚組織の電極密度及び曲率に応じて変えてよい。
【0027】
ストップノジュール210は、非導電性材料(例えば、UV安定化ポリカーボネート/ABS)で作ることが可能であり、これにより、電流は、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212を介して患者の皮膚に伝達されるだけである。ストップノジュール210を導電性材料で作る場合は、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212をストップノジュール210から電気的に絶縁しなければならない。皮膚侵入電極110は、銀、白金などの貴金属、ステンレス鋼素材、所望の長さに切断及び整形された市販のステンレス鋼の皮下注射針、及びこれらの組み合わせから作ることが可能である。皮膚侵入電極110は更に、必要に応じて、導電性金属のめっきを施してよい。ストップノジュール210は、皮膚侵入電極110の周囲をモールドしたものであってよく、或いは、皮膚侵入電極110とは別に形成し、後から皮膚侵入電極110と組み合わせたものであってもよい。後者であれば、電極キャリア104において、皮膚侵入電極110を取り外して交換することが可能である。
【0028】
皮膚表面電極112は、皮膚組織に当てる為の粘着界面を有する、任意の好適な従来型皮膚表面電極であってよい。このような皮膚表面電極112は、従来、経皮電気神経刺激(TENS)を印加する際に使用するものとして知られている。皮膚表面電極112は、金属、炭化珪素、又は他の導電性ポリマーから作ることが可能である。皮膚表面電極112は、Aβ神経線維の活性化及び回復に必要な、より低い電流密度を与える為に、導電部分の直径が大きくなければならない。例えば、皮膚表面電極112は、表面積(又は、リンクされた行H’又は列V’(例えば、
図9及び10)の全体表面積)が100mm
2より大きくなければならない。皮膚表面電極112は、電気療法及び電気刺激の適用及び実施の間、皮膚侵入電極110又は他の皮膚表面電極112とは逆の極性の戻り電極又は集電極として動作可能である。
【0029】
皮膚侵入電極110のアレイは、非対称形の配列を含め、ほぼ任意の形状であってよく、100個以上の皮膚侵入電極110を含んでよい。このようなアレイは、複数の皮膚表面電極112を、電極キャリア104上の皮膚侵入電極110の間に散在させたり(例えば、
図2、4、及び5)、電極キャリア104上の皮膚侵入電極110の周囲を囲む枠のように(図示せず)配置したりして、含んでよい。皮膚表面電極112のサイズ及び間隔は、皮膚侵入電極110のアレイのサイズ及び皮膚侵入電極110の数に基づいて、皮膚侵入電極110に対して相対的に決めなければならない。
【0030】
図4及び
図5に示すように、皮膚侵入電極110は、刺激フィールドを形成する為に、電極キャリア104上において、互いに10mm以上の間隔を開けた、列V及び行Hによって定義される矩形配列として配置可能である。皮膚表面電極112は、電極キャリア104上において、皮膚侵入電極110の列V及び行Hの間に配置された列V’及び行H’によって定義される矩形配列として配置可能である。各皮膚表面電極112と、これに隣接する皮膚侵入電極110との間の水平方向の距離は、約1〜30mmであってよい。皮膚表面電極112が、皮膚侵入電極110と共に電極キャリア104上に配置されていない場合は、皮膚表面電極112が、皮膚侵入電極110のアレイを介して印加される電気刺激に対する集電器として動作するように、皮膚表面電極112を、皮膚侵入電極110のアレイと十分近い距離に位置決めしなければならない。そして、(例えば、
図4に示したように)皮膚侵入部分212を、ストップノジュール210から延ばして、患者の皮膚組織に向かって、より突出させる代わりに、(例えば、
図5に示したように)皮膚侵入部分212を、持ち上がった山部分506から延ばすことも可能である。
【0031】
図5では、電極キャリア104の、皮膚侵入電極104の各行Hの両側面に側壁500及び502が形成されており、これによって、谷部分504と山部分506とが形成されている。皮膚表面電極112は、側壁500及び502の間の谷部分504に配置されており、皮膚侵入電極110は、皮膚表面電極112の上方の山部分506に配置されている。従って、ストップノジュール210から皮膚侵入電極110が延びる場合(例えば、
図4)と全く同様に、電極キャリア104を、その背面から圧力をかけて患者の皮膚に当てると、山部分506に配置された皮膚侵入電極110が患者の皮膚の表面に向かって、より延びる。側壁500及び502は、曲がるように、伸縮自在な材料で構築してよく、電極キャリア104は、患者の身体の様々な湾曲部位(例えば、膝、肘、脚など)の皮膚組織に適合する。そして、側壁500及び502は、ほぼ直線状であってよく(例えば、
図5)、曲線状であってもよい(例えば、
図14)。
【0032】
図6及び
図7に示すように、電極キャリア104は、回路基板600と、これを囲む非導電性被膜602とを含んでいる。皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112は、非導電性被膜602内に配置されて、回路基板600と電気的に結合されている。回路基板600は、回路基板600上にスクリーン印刷されたパターン802及び804(
図8〜10)を介して、又は個々に絶縁されたワイヤを介して、又は他の任意の好適な電気的接続を介して、皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112をパルス発生器102と電気的に結合する。非導電性被覆602は、電極キャリア104を囲む基板パッドとして設けられ、電極キャリア104の、皮膚侵入電極110及び/又は皮膚表面電極112以外の何らかの導電素子から患者の皮膚に電流が流れ込まないようにしている。そして、回路基板600を非導電性被覆602で囲むことにより、回路基板600上に配置された全ての電気部品が、特定の消毒処理(例えば、煮沸やオートクレーブ処理)において損傷しないように保護される。
【0033】
非導電性被覆602は、集積回路及び集積回路部品を保護及び絶縁すること、並びに、電気刺激及び/又は電気療法の実施及び適用の間、皮膚組織に接触して使用されることに好適な、任意の非導電性熱可塑性エラストマ材料から作ることが可能である。好ましい材料は、皮膚組織にしなやかに追従する、クリーニング可能な低刺激性基板を作り出すものでなければならない。好ましい材料は又、電極キャリア104を煮沸したり、オートクレーブに入れて消毒したりできるように、高温に耐えうることが必要な場合もある。そのような材料としては、限定ではなく、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン(SEBS)ポリマーがある。
【0034】
図6A及び
図6Bに示したように、抗菌剤604を、非導電性被覆602上に層状に積み重ねるか(
図6A)、非導電性被覆602の中に注入して(
図6B)、皮膚侵入電極110及び電極キャリア104の他の皮膚接触面を囲む抗菌微小雰囲気を与えることが可能である。いずれの構成でも、皮膚侵入電極110には抗菌剤604が注入される。抗菌剤604は、消毒兼再充電機構106に加えて(又はこれの代わりに)細菌汚染を抑制、制御、除去、及び/又は阻止することが可能である。
図6Aでは、皮膚接触面の最上層が抗菌剤604の抗菌性を与えるが、
図6Bでは、皮膚侵入電極110を特に囲んでいる抑制ゾーンZに、抗菌性が集中している。後者の構成では、ストップノジュール210に抗菌剤604を注入できない為、抗菌剤604を皮膚侵入電極110の周囲に集中させることが重要である。抗菌剤604は又、皮膚表面電極112が、皮膚侵入電極110と共に電極キャリア104上に配置されているかどうかにかかわらず、皮膚表面電極112上に層状に積み重ねるか、皮膚表面電極112の中に注入することも可能である。
【0035】
抗菌剤604の組成においては、抗生物質活性を有することが示されている金属イオン(例えば、銀、銅、亜鉛、水銀、スズ、鉛、ビスマス、カドミウム、クロム、タリウムなどの各イオン)のいずれか、又は幾つかを用いてよい。抗菌剤604は、濃度組成のほとんどが銀であることが好ましく、これによって、電極110及び112は、それらを囲む絶縁構造物(例えば、ストップノジュール210及び非導電性被覆602)を汚染することなく、且つ、電気回路108の配線経路を汚染することなく、導電性であり続けることが可能である。
【0036】
図7に示したように、電極キャリア104は又、皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112が使い捨てインタフェース700に設けられた2ピース構成とすることが可能である。使い捨てインタフェース700は、非導電性材料から形成され、回路基板600に作用的に接続することが可能であり、回路基板600から切り離すことが可能である。即ち、皮膚接触面(即ち、電極キャリア104の前面及び皮膚表面電極112)及び電極キャリア104の皮膚侵入面(即ち、皮膚侵入電極110)を、消毒及び/又は入れ替えの為に回路基板600から容易に取り外すことができる。使い捨てインタフェース700を用いることは、回路基板600上の電子部品を消毒処理(例えば、煮沸やオートクレーブ処理)の際の損傷から保護する為の代替又は追加の安全措置を与える。使い捨てインタフェース700は又、回路基板600又は回路基板600の関連部品のいずれかの入れ替えまでを必要とすることなく、電極キャリア104の皮膚接触面及び皮膚侵入面を商業的に入れ替え可能とすることを可能にする。
【0037】
図7〜
図10に示すように、使い捨てインタフェース700内の各皮膚侵入電極110は、回路基板600上に配置された、対応する第1の電気的結合702を介して、回路基板600と電気的に結合可能である。従って、回路基板600は、回路基板600上に矩形アレイとして配置された、第1の電気的結合702のアレイを含んでおり、このアレイも列V及び行Hによって定義されていて、これは、使い捨てインタフェース700を回路基板600上に配置したときに、各皮膚侵入電極110が、それぞれの対応する第1の電気的結合702と個別に合致するように定義されている。同様に、皮膚表面電極112も使い捨てインタフェース700に設けられている場合、回路基板600は、第2の電気的結合800のアレイを含んでおり、このアレイも列V’及び行H’によって定義されていて、これは、使い捨てインタフェース700を回路基板600上に配置したときに、各皮膚表面電極112が、それぞれの対応する第2の電気的結合800と個別に合致するように定義されている。
図7に示した皮膚侵入電極110は、ストップノジュール210(例えば、
図4)内ではなく、電極キャリア104の山部分506(例えば、
図5)上に配置されているが、使い捨てインタフェース700は、いずれの構成でも構築可能である。
【0038】
使い捨てインタフェース700は又、皮膚表面電極112を、使い捨てインタフェース700上ではなく、回路基板600上に配置するかたちでも構築可能である。この構成では、使い捨てインタフェース700は、回路基板600上の皮膚表面電極112と位置合わせされた列V’及び行H’によって定義された開口(図示せず)を含み、これは、使い捨てインタフェース700を回路基板600上に配置したときに皮膚表面電極112が患者の皮膚と電気的に接触できるように定義されている。又、この構成では、皮膚表面電極112は、任意の好適な手法(例えば、はんだ付け)により、回路基板600に固定することが可能である。そして、さらに別の代替として、皮膚表面電極112を、使い捨てインタフェース700の前面の、皮膚侵入電極110の行間に接着によって取り付けることが可能であり、これによって、皮膚表面電極112を使い捨てインタフェース700に密着させることが可能であり、その後、使い捨てインタフェース700から剥がすことが可能である。これは、回路基板600上での第1の電気的結合702及びそれぞれに対応する電気的接続802の構成に、より多くの自由度を与えることを目的とするものである。この構成は又、電極キャリア104の、皮膚表面電極112以外の各種部品の全て(例えば、皮膚侵入電極、回路基板600、及び非導電性被覆602)が特定の消毒処理(例えば、煮沸やオートクレーブ処理)を受けるように構成されていて、皮膚表面電極112がその消毒処理を受けるように構成されていない場合に、皮膚表面電極112を剥がしてから、それ以外の電極キャリア104の各種部品を消毒処理にかけることを可能にするものである。状況によっては、電極キャリア104の特定部分を使い捨てにし、他の部分を使い捨てにしないほうが経済的な場合もある。
【0039】
皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112をパルス発生器102と電気的に連通させる為に、第1の電気的結合702及び第2の電気的結合800を、それぞれ別々の電気的接続802及び804を介して、パルス発生器102と電気的に接続して、別々の電極110及び112のそれぞれが個別に、パルス発生器102の別々のチャネルに接続されるようにする。代替として、皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112は、各皮膚侵入電極110が、同じ行Hにおいて隣接する皮膚侵入電極110と直列に結合され、各皮膚表面電極112が、同じ行H’において隣接する皮膚表面電極112と直列に結合されるように、構成可能である(例えば、
図9)。そして、更に別の代替として、皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112は、各皮膚侵入電極110が、同じ列Vにおいて隣接する皮膚侵入電極110と直列に結合され、各皮膚表面電極112が、同じ列V’において隣接する皮膚表面電極112と直列に結合されるように、構成可能である(例えば、
図10)。上述のように、行H内及び行H’内、或いは、列V内及び列V’内で結合することにより、H及びH’の各行、或いは、列V及びV’の各列に1つのチャネルを対応させることで、パルス発生器102が電極110及び112を操作する為に必要とするチャネルの数が減る。
【0040】
回路基板600上の個別の電気的結合702及び800のそれぞれは、1本の結束された電極ケーブル206を介してパルス発生器102に接続されており、電極ケーブル206は、電気刺激の印加に使用される、パルス発生器102の各チャネルに対応する絶縁ワイヤを含んでいる。付着機構806(例えば、インターロックファブリックや剥離紙付き両面粘着テープ)を皮膚侵入電極110間及び/又は皮膚表面電極112間に配置して、使い捨てインタフェース700を回路基板600に着脱自在に取り付けられるようにすることにより、使い捨てインタフェース700を回路基板600上に配置し、その後、回路基板600から剥がすことが可能になる。使い捨てインタフェース700は又、クリップやクランプのような機械的接続により、回路基板600に取り付けることも可能である。そして、皮膚侵入電極110が使い捨てインタフェース700の山部分506に配置されている場合には、皮膚侵入電極110をそれぞれの対応する第1の電気的結合702と電気的に結合する際の接触面積を増やす為の円形部分704(
図7)を含むように、皮膚侵入電極110を構成することが可能である。
【0041】
図11及び
図12に示すように、
図5に示した電極キャリア104の谷部分504に非導電性粘着ストリップ1100を貼り付けることにより、処置実施時に皮膚表面電極112及び電極キャリア104を患者の皮膚組織に粘着固定することを支援することが可能である。又、非導電性粘着ストリップ1100を、電極キャリア104の外側エッジに沿って配置することにより、粘着度を高めることも可能である(図示せず)。そして、皮膚侵入電極110と皮膚表面電極112との間にも、粘着ストリップを、
図8〜10に示した付着機構806と同様のパターンで配置することが可能である。これらの構成のそれぞれにおいては、非導電性粘着ストリップ1100は、皮膚表面電極112を覆わないように、且つ/又は、皮膚表面電極112から患者の皮膚への電気刺激の伝達を妨げないように配置しなければならない。その一方で、電極と皮膚との接触面における導電性をより均一にする為に、且つ、表面積導電性を高める為に、皮膚表面電極112を、導電性ゲル又はヒドロゲル又は他の従来型結合媒体(例えば、電流をほぼ遮らずに通すことが可能な非導電性接着剤)で覆わなければならない。結合媒体は、電極キャリア104の前面全体にわたって、隣接する皮膚表面電極112同士を互いに電気的に結合することにも用いてよい。
【0042】
使い捨てインタフェース700及び回路基板600は両方共、
図12に四角い穴として示した複数の通気孔1200を含むことが可能であり、これらは、電極キャリア104の前面側にある患者の皮膚を、電極キャリア104の背面側の雰囲気と流体連通させることにより、電極キャリア104が患者の皮膚の上に置かれている間(特に、患者が電気刺激及び/又は電気療法を受けている間)に患者の皮膚から放出される可能性がある水分や汗を換気によって外部に排出する。使い捨てインタフェース700及び回路基板600の両方を通る換気を促進する為に、使い捨てインタフェース700の通気孔1200は、使い捨てインタフェース700を回路基板600に取り付けたときに、回路基板600の対応する通気孔1200と位置が揃うように構成される。この位置合わせにより、電極キャリア104が患者の皮膚の上に置かれている間に患者の皮膚から放出される水分や汗を、通気孔1200から適切に外部に排出することが可能である。1ピース型の電極キャリア104(例えば、
図6A及び
図6B)では、通気孔1200は、電極キャリア104を貫通して延びているだけである。
【0043】
着用可能アプリケータ(図示せず)(例えば、身体の特定部位にフィットする衣服、ストラップ、ベルト、包帯、添え木、スタビライザ、サポータ、コルセット、ギプスなど)を用いて、電極キャリア104並びに電極110及び112の適切な位置決め及び配置を支援することが可能である。身体の様々な部位に対して治療が効果的であるような、電極キャリア104の解剖学的位置決めを行う為に、留め具(例えば、インターロックファブリック、ボタン、スナップ、ジッパーなど)を用いて、電極キャリア104を着用可能アプリケータと接続することが可能である。
【0044】
消毒兼再充電機構106
消毒兼再充電機構106は、皮膚侵入電極110の皮膚侵入面、並びに電極キャリア104及び皮膚表面電極112の皮膚接触面における細菌の繁殖を低減する為に、一般的な皮膚病原体(例えば、バクテリア胞子、かび、原生動物、ウィルス、酵母菌など)を不活性化するのに十分な時間及び強度の殺菌性放射線をそれらの面に当てる。好ましい一実施形態では、消毒兼再充電機構106は、殺菌性紫外光を用いて病原体の遺伝物質を損傷することにより、病原体の複製及びコロニー形成を阻止する。ほとんどのタイプの、感染を起こす病原菌の90%を不活性化するのに必要な線量は、約2〜6mJ/cm
2の範囲である。UV強度が約500〜1500μW/cm
2で照射時間が最大約1時間の線量であれば、病原菌のDNAを損傷することにより、病原菌を十分に不活性化することが可能であり、更には、病原菌の細胞過程を混乱させることにより、病原菌を破壊することが可能である。従って、消毒兼再充電機構106は、(電気刺激処置の実施の合間の)一日数回のセッションで合計一時間以上にわたり、最大約1000J/cm
2の殺菌性放射線を照射するように構成されている。
【0045】
図13に示すように、消毒兼再充電機構106は、上部ケーシング1300及び下部ケーシング1302がそれらの中に消毒チャンバ1304を形成しており、UV吸収性蓋1306で封鎖することが可能である。消毒チャンバ1304の内部には、殺菌性紫外光を発するUVランプ1308が配置されている。消毒チャンバ1304のサイズ及び寸法は、皮膚侵入電極110の皮膚侵入面、並びに電極キャリア104及び皮膚表面電極112の皮膚接触面の消毒に必要な量の殺菌性紫外光がそれらの面に当たるように、それらの面をUVランプ1308から適切な距離に位置決めすべく、適切に決定する。例えば、消毒チャンバ1304のサイズ及び寸法は、前面(即ち、患者の皮膚に対向して置かれる側)が下向きで、皮膚侵入電極110がUVランプ1308に向かって延びている状態で皮膚侵入電極110のアレイをチャンバ1304内で位置決めした場合に、UVランプ1308から皮膚侵入電極110の皮膚侵入面までの距離が約1〜5cmになるように、決定することが可能である。
図13では、電極キャリア104は、前面が下向きで、
図13を描いた位置からは向こう側になっていて、皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112が見えていない。そして、電極キャリア104の背面(即ち、患者の皮膚に対向しない側)だけが見えている。
【0046】
消毒兼再充電機構108の上部ケーシング1300と下部ケーシング1302との間に反射板1310を配置して、チャンバ1304の床面及び周囲面としてよい。反射板1310は、アルミニウム製であってよく、或いは、表面がアルミニウムであってよい。反射板1310及びその反射面は、紫外放射線に対する反射率が比較的高いことで知られる任意の好適な材料から作ることが可能である。
【0047】
消毒チャンバ1304は又、電極キャリア104を消毒兼再充電機構106内で適切に支持及び位置決めする為に、任意の好適な数のプラットフォーム1312(一部のみ図示)を含んでよい。プラットフォーム1312の位置、サイズ、及び寸法は、皮膚侵入電極110に対する殺菌性放射線の照射への干渉が最小限になるように、決定しなければならない。
【0048】
チャンバ1304及びUVランプ1308は、上述以外の構成であってもよい。例えば、UVランプ1308は、皮膚侵入電極110の上方に位置して、放射線を下向きに発してもよい。この構成では、皮膚侵入電極110は、チャンバ1304内において、電極キャリア104をスライドさせてチャンバ1304に出入りさせるスライドトレイ(図示せず)の上で、前面を上向きにして位置する。チャンバ1304は、様々な形状及びサイズの電極キャリア104(例えば、
図4及び
図5)が可能であるように、且つ/又は、消毒兼再充電機構106において一度に複数の電極キャリア104の照射及び/又は再充電が可能であるように、構築及び構成することも可能である。
【0049】
UVランプ1308は、必要なUVレンジの放射線を発生させるように構成された、任意の、整形又は非整形の市販の殺菌ランプであってよい。UVランプ1308の形状は、電極キャリア104と、電極キャリア104を囲む為に必要なチャンバ1304と、のサイズ及び形状に依存してよい。好ましい一実施形態では、UVランプ1308は、チャンバ1304内で位置決めされた時点では逆さまのU字になるように構成された、U字形の低圧水銀蒸気ランプであるが、ワット数が約2〜6ワット以上であって、殺菌性放射線を発するように構成された、任意の好適な市販UVランプを用いてよい。UVランプ1308から発せられる電磁放射線の波長は、約240〜280ナノメートルの範囲にあり、好ましくは、約254ナノメートルである。好ましい254ナノメートル及び他の既知の帯域の殺菌光を発生させることが可能な、中圧又は高圧の水銀蒸気ランプ、LED、又はレーザを用いてもよい。そして、複数のランプ、及び/又は、複数のタイプのランプを組み合わせて用いてもよい。
【0050】
殺菌性紫外光を用いて電極キャリア104を消毒することに加えて、又はその代替として、熱湯及び/又は蒸気を用いて電極プレート104を消毒してもよい。従って、消毒兼再充電機構106は、熱湯及び/又は蒸気をチャンバ1304に導入する部品を用いて構成してよい。この構成では、上部ケーシング1300及び蓋1306は、オートクレーブ医療機器に関係する高圧に耐える密封を維持する密封面(図示せず)を含んでよい。消毒兼再充電機構106は又、他の任意の好適な消毒機構を用いるように構成可能である。
【0051】
消毒兼再充電機構106の消毒態様は、外来患者が電気療法システム100を再利用できることを強化することを意図したものである。より具体的には、本発明の方法及び装置は、そのような消毒機能性を有することにより、医師が指示するかたちで外来患者が処置を行うように、可搬的に用いることが可能である。そして、電気療法システム100は、患者間で共用されることは意図していないが、共用された場合には、消毒兼再充電機構106は、環境要因から患者への病気の伝染の危険を最小限に抑えると共に、患者から患者への病気の伝染の危険を最小限に抑えることも可能である。
【0052】
消毒兼再充電機構106は、消毒機能に加えて、再充電ステーションとしても動作可能である。従って、
図13に示した消毒兼再充電機構106は、再充電用導体ペア1314を含んでおり、再充電用導体ペア1314は、電極キャリア104上の対応する再充電用導体ペア1316と結合してパルス発生器102の電源114(
図1)を再充電するように構成されている。
図13に示したように、パルス発生器102は、
図2に示したような、電気的に接続されているが物理的に独立している装置にあるのではなく、電極キャリア104上に配置されている。パルス発生器102は、電気的接続1318を介して再充電用導体1316に接続されている。導体1316及び電気的接続1318は、電極キャリア104の背面に配置されている為に、消毒兼再充電機構106の蓋1306にある導体1314との電気的連通が可能になっており、従って、パルス発生器102は、非使用時には、再充電の為に消毒兼再充電機構106と電気的に結合することが可能である。
【0053】
電極キャリア104及び消毒兼再充電機構106のサイズ及び形状、並びに、システム100の電源114(
図1)のタイプ及び再充電負荷によっては、導体1316及び電気的接続1318の、上述以外の構成も可能である。更に、消毒兼再充電機構106に加えて、独立した(即ち、消毒兼再充電機構106に組み込まれていない)電池充電ステーションを用いてよい。そして、パルス発生器102が、
図2に示したように、電極キャリア104に電気的に接続されながら、物理的には電極キャリア104から独立している場合には、消毒兼再充電機構106は、パルス発生器102と電極キャリア104とを電気的に連通させる電極ケーブル208(破線)を収容するように構成可能である。
【0054】
消毒兼再充電機構106の電子回路は、「E」で表されており、消毒兼再充電機構106の下部ケーシング1302に収容可能である。消毒兼再充電機構106は、幾つかの電子機能を有することが可能であり、これには、消毒及び/又は再充電の動作が何パーセント完了したかを患者に通知する表示出力が含まれる。消毒兼再充電機構106は又、消毒動作及び/又は再充電動作がいつ完了したかを表示する、独立した、1つ以上のインジケータを有してよい。消毒兼再充電機構106は、その機能性のそれぞれの為の電力を、従来のコンセントプラグ1320又は他の任意の好適な電源から受けてよい。
【0055】
電気療法
本発明の電気療法システム100は、皮膚の、薄いAδ神経線維及びC神経線維を標的としながら、同時にAβ神経線維を刺激して、それらのAδ神経線維及びC神経線維を刺激することからの嫌悪感をマスクすることを支援することにより、慢性疼痛の症状を一時的に緩和する。例えば、Aβ神経線維を標的とするTENSの使用をCFSと組み合わせることにより、CFSの刺激によるAδ神経線維及びC神経線維からの嫌悪感を緩和し、マスクすることを支援することが可能である。TENSとCFSとを組み合わせることは、異なるタイプの疼痛に対する身体の反応に基づいている。急性疼痛が知覚されると、その反応としての電気インパルスが、末梢神経及び脊髄を通って脳に伝達される。負傷した時点では、この信号が侵害的一次求心性神経線維によって脊髄後角に伝達される。侵害的一次求心性ニューロンは、Aδ神経線維及びC神経線維に属する。後角においては、且つ、脊髄又はその三叉神経類似体においては、二次ニューロンが引き継いで、その信号を視床に伝達し、最終的に大脳皮質に伝達する。触覚を伝えるAβ神経線維における入力は、脊髄及び上位中枢において皮膚侵害入力と相互に作用して疼痛の緩和を引き起こすことが知られている。従って、Aβ神経線維を標的とするTENSを行うことにより、CFSでAδ神経線維及びC神経線維を刺激することによって引き起こされる嫌悪感をマスクすることが可能であり、結果として、電気療法がより許容可能になって、慢性疼痛の症候性緩和を支援することになる。
【0056】
電気療法システム100は又、同様の方式で、ヒスタミン誘発の局所的かゆみに対する既知の処置に代わる効果的な処置を提供する。従って、皮膚表面電極112は、Aβ神経線維に電気刺激を印加するように構成し、皮膚侵入電極110は、Aδ神経線維及びC神経線維に電気刺激を印加するように構成する。パルス発生器は、皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112を介して患者の皮膚にパルス電流を伝達するように構成する。
【0057】
図14及び
図15は、それぞれ、患者の皮膚組織に当てる前と当てている間の皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112を示している。これらの図に描かれている各要素は、わかりやすいように誇張されている。
図14に示したように、電極キャリア104は、丸みのある側壁500及び502によって形成された谷部分504及び山部分506を含んでいる。皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212は、山部分506から延びていて、皮膚侵入部分212の長さに沿って絶縁材料1400で絶縁されており、これは、患者の真皮S3に対して露出している「有効」長さ部分の表面積が、Aδ神経線維及びC神経線維の活性化及び回復に必要な高い電流密度を与える為に十分小さくなるように絶縁されている。場合によっては、皮膚侵入部分212は、全部が真皮S3内に延びていなくても、Aδ神経線維及びC神経線維の活性化及び回復が可能である。但し、どのような場合でも、皮膚侵入部分212は、真皮S3より深くまでは延ばさないようにしなければならない。
【0058】
図15に示したように、電極キャリア104を患者の皮膚に当てると、電極キャリア104の非導電性被膜602が、皮膚組織の角質層S1(即ち、表皮S2の最上層)に当たる。この位置では、皮膚侵入電極110の皮膚侵入部分212は、角質層S1及び表皮S2を経て真皮S3まで侵入して延び、真皮S3で、Aδ神経線維及びC神経線維を標的とすることが可能である。谷部分504も圧縮されて、皮膚表面電極112が表皮S2の角質層S1と接触し、そこで、Aβ神経線維を経皮的に標的とすることが可能である。
【0059】
図15に示したように、患者の皮膚に皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112を適切に配置した状態では、いずれかの皮膚侵入電極110及び/又は皮膚表面電極112を通して電気刺激を発生させることが可能である。好ましくは、1つ以上の皮膚表面電極112を、電気刺激を発生させている皮膚侵入電極110及び/又は皮膚表面電極112に対する集電極として用いる。皮膚表面電極112を介して電気刺激を印加したときに同じ皮膚表面電極112に常に電流が流れるのを避ける為に、印加される電気刺激が通る皮膚表面電極112を交互に切り替えることを、集電極として使用される皮膚表面電極112を交互に切り替えることも含めて、パルス発生器102においてプログラムすることが可能である。皮膚表面電極112を介して電気刺激を印加しない場合は、全ての皮膚表面電極112を、皮膚侵入電極110から印加される電気刺激に対する集電極として使用してよい。
【0060】
皮膚表面電極112を介して印加される電気刺激は、隣接する皮膚侵入電極110を介して印加される電気刺激と位相ロックさせることが可能である。皮膚表面電極112を介して印加される電気刺激は、Aβ神経線維で生成される信号を発生させ、皮膚侵入電極110を介して印加される電気刺激は、Aδ神経線維及びC神経線維で生成される信号を発生させる。これら2つのタイプの電気刺激を位相ロックさせて、Aβ神経線維で生成される信号が、時間的に、Aδ神経線維及びC神経線維で生成される信号より先に、且つ/又は、この信号と一部重なり合って、患者の脊髄に到達するようにする。
【0061】
皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112のペア及び/又は他の組み合わせは、ランダムなパターン又は順序立てたパターンで連続的に活性化することが可能である。例えば、ランダムな非連続的パターンの電気刺激は、ランダムな皮膚侵入電極110、又は複数の皮膚侵入電極110の組み合わせに先だって、且つ/又は、これらの皮膚侵入電極110と時間的に一部重なり合って、皮膚表面電極112の1つ以上の列V’又は行H’を交互に活性化することにより、印加することが可能である。そして、順序立てた連続的パターンの電気刺激は、皮膚表面電極112及び皮膚侵入電極110の位相ロックされたペアを、電極キャリア104の一方の側(即ち、端)から始まり、電極キャリア104の他方の側へと進む順序で連続的に活性化することにより、印加することが可能である。
【0062】
非連続的パターンの電気刺激は、疼痛治療の為の電気無痛法の実施において治療効果のあるマッサージ刺激の感覚を引き起こす。そして、連続的パターンの電気刺激は、皮膚を掻くかマッサージする際に自然に起こる順次刺激を模擬するスイープ刺激の感覚を引き起こす。これは特に、慢性の疼痛又はかゆみに苦しむ患者の治療に有効である。これらのパターンは両方共、
図8において与えられているような皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112の構成により達成可能であり、
図8の構成では、皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112のそれぞれが、それぞれ個別の電気的結合800及び702を有しており、これによって、パルス発生器102の別々のチャネルを用いて、各皮膚侵入電極110及び各皮膚表面電極112を個別に制御することが可能である。
【0063】
非連続的パターン及び連続的パターンの電気刺激は、
図9又は
図10において与えられているような皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112の構成でも達成可能であり、これらの構成では、皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112がそれぞれ直列に接続されて、別々の行H及びH’、又は別々の列V及びV’を形成している。非連続的なパターンの電気刺激は、ランダムな列V又は行Hの皮膚侵入電極110に先だって、且つ/又は、これらの皮膚侵入電極110と時間的に一部重なり合って、皮膚表面電極112の1つ以上の列V’又は行H’を交互に活性化することにより、印加することが可能である。そして、連続的なパターンの電気刺激は、列V及びV’のペア又は行H及びH’のペアの皮膚侵入電極110及び皮膚表面電極112を、電極キャリア104の一方の側から始まり、電極キャリア104の他方の側へと進む順序で連続的に活性化することにより、印加することが可能である。
【0064】
皮膚表面電極112を用いて、患者の皮膚組織内のAβ神経線維を標的とすることが可能であり、これは、パルス継続時間T
1が約0.05〜0.30ミリ秒であって、パルス列周波数が約50〜400ヘルツであるパルス列からなる二相パルス電流を用いることにより、可能である。この二相パルス電流は、所定周期内の連続パルス列(例えば、1000ミリ秒にわたって、連続周波数100Hzで印加される、継続時間0.25ミリ秒の100個のパルス)として印加することが可能であり、或いは、所定周期にわたる複数のパルスバーストに分けて印加することが可能である。パルスのバーストとして印加する場合、二相パルス電流のバースト継続時間は最大約100ミリ秒であり、バースト周波数は約0.1〜10ヘルツである。この二相パルス電流の電流振幅は、最大約50ミリアンペアである。Aβ神経線維を標的とすることに用いる二相パルス電流の波形は、対称形であっても非対称形であってもよい。
【0065】
図16は、本発明において、皮膚表面電極112でAβ神経線維を標的とすることに用いることが可能な一例示的非対称二相波形1600を示す。この二相波形1600は、周期が1秒であり、これによって発生する電流は、パルス継続時間T
1が0.15ミリ秒であり、パルス間隔T
2が9.85ミリ秒であり、これによって形成されるパルスバーストは、バースト継続時間T
3が50ミリ秒であり、バースト間隔T
4が200ミリ秒である。バースト内のパルス列周波数は100ヘルツ(即ち、1秒あたり、継続時間10ミリ秒のパルスが100個)であり、バースト周波数は4ヘルツ(即ち、1秒あたり継続時間250ミリ秒のバーストが4個)である。
【0066】
皮膚侵入電極110を用いて、患者の皮膚組織内のAδ神経線維及びC神経線維を標的とすることが可能であり、これは、パルス継続時間T
1が約0.5〜10.0ミリ秒であって、パルス列周波数が約0.1〜10ヘルツであって、電流振幅が最大約2ミリアンペアである連続パルス列からなる単相パルス電流を用いることにより、可能である。C神経線維の回復には、パルス継続時間T
1が長いほど有効である。そして、異なる皮膚侵入電極110の間で単相パルス電流をずらすことにより、刺激の全体周波数を刺激フィールドにわたって増やすことが可能である。例えば、単相パルス電流の周波数が4Hzであるとすると、14個の皮膚侵入電極を有する電気療法システム100であれば、周波数が約56ヘルツ(即ち、4Hz×14電極=56Hz)の電気刺激を印加することが可能である。
【0067】
図17は、本発明において、皮膚侵入電極110で患者の皮膚組織内のAδ神経線維及びC神経線維を標的とすることに用いることが可能な個々の単相パルスの一例示的波形1700を示す。皮膚侵入電極110と皮膚表面電極112との間の戻り電気経路にあるパルス調整回路128の特性により、このパルスの波形1700は、ほぼ矩形波になる。この波形1700は、パルス継続時間T
1が1.0ミリ秒であり、電流振幅は、パルス開始以降、約0.8ミリアンペアから約1.2ミリアンペアまで変化する。電流振幅は、パルス開始から0.1ミリ秒未満の間に最大値になる。最大電流振幅は、約0.5〜2ミリアンペアであって、パルス開始から最大約0.25ミリ秒続くことが好ましい。そして、最大電流振幅は、パルス継続時間の残り部分において約5〜50パーセント減らすことが可能である。ミリアンペア単位の電流振幅は、ミリ秒単位の時間の関数として測定される。
【0068】
図18は、
図17に示した単相パルスの1秒分の列の一例示的波形1800を示す。パルス継続時間T
1は1.0ミリ秒であり、パルス間隔T
2は249ミリ秒であり、周波数は約4ヘルツ(即ち、1秒あたり4個のパルス)である。従って、単相パルス電流は、パルスバーストではなく連続パルス列として印加される。
【0069】
図19は、電気療法システム100が患者の皮膚に通すことが可能な電流の波形の一実施形態1900を示しており、ここでは、皮膚表面電極112によって印加される非対称二相波形1600と、皮膚侵入電極110によって印加される単相略方形波形の列1800との組み合わせを用いている。図示したように、波形1600及び1800は、皮膚侵入電極110で生成される個々の単相パルス1700が、皮膚表面電極112で生成される非対称二相波形1600と時間的に交互に発生するように、印加される。代替として、皮膚侵入電極110で生成される個々の単相パルス1700は、皮膚表面電極112で生成される非対称二相波形1600と時間的に一部重なり合うように印加することが可能であり、或いは、皮膚表面電極112で生成される非対称二相波形1600は、皮膚侵入電極110で生成される単相略方形波形1800より時間的に先に(且つ/又は時間的に後に)発生させることが可能である。波形1600及び1800のこれらの様々な組み合わせのそれぞれ、及びこれらの反復を、互いに組み合わせて用いることも可能である。図示した波形1600、1800、及び1900は、正しい縮尺では描かれておらず、個々の単相パルス1700のサイズは、わかりやすいように誇張されている。
【0070】
従って、皮膚表面電極112からの波形1600と、皮膚侵入電極110からの波形1800とが、患者の脊髄に同時に到達して所望のマスキング効果を発生させるようにする為には、波形1600及び1800の組み合わせを、
図19に示した波形1900に、より近づけることが必要になる場合がある。
【0071】
治療セッションにおいて、患者は、パルス発生器102を用いて、皮膚表面電極112による非対称二相波形1600の印加を開始することが可能である。そして、皮膚表面電極112による非対称二相波形1600の印加中に、患者は、皮膚侵入電極110による単相略方形波形1800の印加を徐々に開始することが可能である。患者は、治療セッションの最初の数分の間に、皮膚侵入電極110により印加される刺激を、パルス発生器のトグルキー200で段階的に大きくすることが可能であり、これによって、患者は、処置が行われるにつれて、それらのパルス電流によって快適なレベルに生成された信号に適応することが可能である。最終的には、これによって患者は、皮膚侵入電極110によるAδ神経線維及びC神経線維への刺激を、患者が別の方法で快適に達成しうるレベルより格段に高いレベルの快適さにすることが可能である。そして、患者がAδ神経線維及びC神経線維の刺激の知覚に適応するにつれて、皮膚表面電極112によるAβ神経線維の刺激の相対強度を、時間と共に減らすことが可能である。更に、患者が後続の治療セッションを続ける場合は、患者の、Aδ神経線維及びC神経線維の刺激への適応に応じてAβ神経線維の刺激の相対強度を変化(増減)させることが可能である。
【0072】
開示した方法のいずれかを用いた治療セッションが終わると、患者は、電気療法システム100の皮膚接触部分及び皮膚侵入部分を容易に消毒するか、安価で処分することが可能である。電極キャリア104は、患者が消毒兼再充電機構106に入れることにより、消毒して再使用することが可能である。患者は更に、電極キャリア104の皮膚接触面及び皮膚侵入面を湿らせる為に市販の洗剤、消毒剤、及び他の非残留洗浄剤を用いることにより、環境汚染物のリスクを最小限に抑えることが可能である。そして、各皮膚侵入電極110の表面を、強く揺さぶって洗い、最後に市販の殺菌ワイプ及びイソプロピルアルコールを用いてきれいに拭くことが可能である。この掃除した表面を乾燥させた後、電極キャリア104及び/又は使い捨てインタフェース700を、次の治療セッションまで消毒兼再充電機構106に保管することが可能である。代替として、患者は、使い捨てインタフェース700を取り外して廃棄し、市販の新しい滅菌済み使い捨てインタフェース700と取り替えることが可能である。
【0073】
当業者であれば、更なる利点や修正が容易に思い浮かぶであろう。従って、本発明は、そのより広い態様において、本明細書に図示及び記載された特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されない。従って、添付の特許請求の範囲及びこれらの等価物によって定義される一般発明概念の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことが可能である。