(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793584
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ブレース貫通部切欠覆い蓋および窓枠
(51)【国際特許分類】
E06B 1/36 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
E06B1/36 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-20214(P2014-20214)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-148053(P2015-148053A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】591241718
【氏名又は名称】大和リース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】松田 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 正仁
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 達也
【審査官】
川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−170288(JP,A)
【文献】
特開2008−25786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレースが貫通した部材の表面におけるブレース貫通箇所の周囲を、前記部材に側縁から切り欠かれて埋部材により埋められたブレース入れ込み用の切欠の形成範囲に渡って覆うブレース貫通部切欠覆い蓋であって、
前記ブレースが挿通される挿通孔を有し前記部材の表面に貼られる孔明き化粧シートと、この孔明き化粧シートの裏面に施された粘着剤層と、前記孔明き化粧シートの裏面全体に前記粘着剤層を介し剥離可能に貼られた離型シートとでなり、前記孔明き化粧シートおよび前記離型シートの重なり部分に、外周縁から前記挿通孔に達して設けられた切れ目を有するブレース貫通部切欠覆い蓋。
【請求項2】
請求項1に記載のブレース貫通部切欠覆い蓋において、前記孔明き化粧シートが矩形状であって、長手方向の一端側に偏った位置に前記挿通孔があり、この挿通孔は、前記孔明き化粧シートの長手方向と直交する方向に長い楕円ないしトラック形状であるブレース貫通部切欠覆い蓋。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のブレース貫通部切欠覆い蓋において、前記部材が窓枠の枠材であるブレース貫通部切欠覆い蓋。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のブレース貫通部切欠覆い蓋を用いた窓枠であって、下方および上方の窓枠材のいずれか一方または両方に、ブレースを側縁から入れ込む切欠と、この切欠の最奥部をブレース貫通孔として残して前記切欠を埋める埋部材とを有し、前記切欠が設けられた前記窓枠材の表面の前記ブレース貫通孔の周囲を、前記切欠の形成範囲を含めて前記孔明き化粧シートで覆い、この孔明き化粧シートの表面は前記窓枠材の化粧面に似せた外観とし、前記ブレース貫通孔は、傾斜した前記ブレースが略隙間なく嵌まる形状としたブレース貫通窓枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の窓枠や天井材等の部材におけるブレースが貫通した箇所の周囲を、前記部材に側縁から切り欠かれて埋部材により埋められたブレース入れ込み用の切欠の形成範囲に渡って覆うブレース貫通部切欠覆い蓋、およびこれを用いた窓枠に関する。
【背景技術】
【0002】
事務所建物や仮設住宅等に用いられる鉄骨系プレハブ建物では、丸鋼等のブレースを設けた耐力壁が用いられることが多い。この耐力壁が配置された箇所に窓を設ける場合、窓枠内にブレースが貫通することになる。耐力壁の枚数は、建物強度の確保のために必要枚数設置する必要があるため、窓枠内にブレースが貫通することを回避しようとすると、間取りプランが制約されることになる。そのため、窓枠内にブレースが貫通することを避けられない場合がある。なお、ラーメン構造にするとブレースが不要であるが、柱や梁に重量鉄骨等が必要となるため、建物のコストが大幅に増大する。
【0003】
窓枠内にブレースが貫通する構造とする場合、窓枠は前記耐力壁の建込み後に設置されるため、既に張られたブレースを入れ込むための切欠を窓枠材に設け、ブレースを入れ込んで窓枠を設置した後に、前記切欠を埋木等の埋部材で塞ぐ。窓枠材のブレースの貫通孔におけるブレース周囲の隙間は、従来はコーキング材等で埋めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−339483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窓枠材の貫通孔におけるブレース周囲の隙間をコーキング材等で埋める処理は、コーキング材の乾燥を待つ養生期間が必要となる。また、コーキング材が目立たないようにするには、塗装等の処理が必要であり、手間が掛かる。
上記の課題は窓枠における課題であるが、天井面にブレースが室内から見える状態に貫通したり、据え付けの家具類の室内等から見える箇所にブレースが貫通する場合もあり、窓枠の場合と同様な課題がある。
【0006】
この発明の目的は、ブレースが貫通した部材の表面におけるブレース貫通箇所の周囲を、ブレース入れ込み用の切欠の形成範囲に渡り、簡単な施工で、迅速に、かつ見栄え良く化粧処理することができるブレース貫通部切欠覆い蓋、およびブレース貫通窓枠を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のブレース貫通部切欠覆い蓋は、ブレースが貫通した部材の表面におけるブレース貫通箇所の周囲を、前記部材に側縁から切り欠かれて埋部材により埋められたブレース入れ込み用の切欠の形成範囲に渡って覆うブレース貫通部切欠覆い蓋であって、
前記ブレースが挿通される挿通孔を有し前記部材の表面に貼られる孔明き化粧シートと、この孔明き化粧シートの裏面に施された粘着剤層と、前記孔明き化粧シートの裏面全体に前記粘着剤層を介し剥離可能に貼られた離型シートとでなり、前記孔明き化粧シートおよび前記離型シートの重なり部分に、外周縁から前記挿通孔に達して設けられた切れ目を有する。
【0008】
この構成のブレース貫通部切欠覆い蓋によると、ブレースを前記切れ目からブレース挿通孔に入れ、離型シートを剥がして孔明き化粧シートを前記ブレースが貫通した部材の表面に貼り付けることで、前記部材におけるブレース貫通箇所の周囲を、前記切欠の形成範囲に渡って覆うことができる。そのため、簡単な施工で、迅速にかつ見栄え良く化粧処理することができる。
【0009】
この発明のブレース貫通部切欠覆い蓋において、前記孔明き化粧シートが矩形状であって、長手方向の一端側に偏った位置に前記挿通孔があり、この挿通孔は、前記孔明き化粧シートの長手方向と直交する方向に長い楕円ないしトラック形状であっても良い。トラック形状は、一対の半円部分の両端間を直線で繋いだ形状を言う。
また、前記部材が窓枠の枠材であっても良い。
【0010】
孔明き化粧シートが矩形状であると、ブレース貫通孔の周囲と、前記切欠の形成範囲につき、無駄に広範囲を覆うことなく、必要部分を良好に覆うことができる。また、一端側に偏った位置に前記挿通孔があると、前記切欠の設けられた窓枠材等の表面を、前記切欠の開口縁からブレース貫通孔の周囲に渡って覆い、前記部材の前記切欠と反対側の部分は覆わず、必要範囲をより無駄なく覆うものとなる。
また、前記ブレースが丸鋼の場合、その傾斜の為に、窓枠等の部材の表面における断面形状が楕円状となり、その楕円の長軸は窓面に沿う方向となる。そのため、前記挿通孔が孔明き化粧シートの長手方向と直交する方向に長い楕円ないしトラック形状であると、前記ブレースの周囲を略隙間なく覆うことができ、より見栄え良く綺麗に化粧することができる。
【0011】
この発明のブレース貫通窓枠は、この発明の上記いずれかの構成のブレース貫通部切欠覆い蓋を用いた窓枠であって、下方および上方の窓枠材のいずれか一方または両方に、ブレースを側縁から入れ込む切欠と、この切欠の最奥部をブレース貫通孔として残して前記切欠を埋める埋部材とを有し、前記切欠が設けられた前記窓枠材の表面の前記ブレース貫通孔の周囲を、前記切欠の形成範囲を含めて前記孔明き化粧シートで覆い、この孔明き化粧シートの表面は前記窓枠材
の化粧面に似せた外観とし、前記ブレース貫通孔は、傾斜した前記ブレースが略隙間なく嵌まる形状としたものである。
この構成のブレース貫通窓枠よると、窓枠の内周面におけるブレースが貫通した箇所の周囲を、ブレース入れ込み用の切欠の形成範囲に渡り、簡単な施工で、迅速に、かつ見栄え良く化粧処理することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の建物の部材貫通面化粧シートは、ブレースが貫通した部材の表面におけるブレース貫通箇所の周囲を、前記部材に側縁から切り欠かれて埋部材により埋められたブレース入れ込み用の切欠の形成範囲に渡って覆うブレース貫通部切欠覆い蓋であって、
前記ブレースが挿通される挿通孔を有し前記部材の表面に貼られる孔明き化粧シートと、この孔明き化粧シートの裏面に施された粘着剤層と、前記孔明き化粧シートの裏面全体に前記粘着剤層を介し剥離可能に貼られた離型シートとでなり、前記孔明き化粧シートおよび前記離型シートの重なり部分に、外周縁から前記挿通孔に達して設けられた切れ目を有するため、ブレースが貫通した部材の表面におけるブレース貫通箇所の周囲を、ブレース入れ込み用の切欠の形成範囲に渡り、簡単な施工で、迅速に、かつ見栄え良く化粧処理することができる。
【0013】
この発明のブレース貫通窓枠は、この発明のブレース貫通部切欠覆い蓋を用いた窓枠であって、下方および上方の窓枠材のいずれか一方または両方に、ブレースを側縁から入れ込む切欠と、この切欠の最奥部をブレース貫通孔として残して前記切欠を埋める埋部材とを有し、前記切欠が設けられた前記窓枠材の表面の前記ブレース貫通孔の周囲を、前記切欠の形成範囲を含めて前記孔明き化粧シートで覆い、この孔明き化粧シートの表面は前記窓枠材
の化粧面に似せた外観とし、前記ブレース貫通孔は、傾斜した前記ブレースが略隙間なく嵌まる形状としたため、窓枠の内周面におけるブレースが貫通した箇所の周囲を、ブレース入れ込み用の切欠の形成範囲に渡り、簡単な施工で、迅速に、かつ見栄え良く化粧処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の一実施形態にかかるブレース貫通部切欠覆い蓋の平面図、断面図、および裏面図である。
【
図2】同ブレース貫通部切欠覆い蓋の切れ目広げ状態および一部剥離状態を示す図である。
【
図3】同ブレース貫通部切欠覆い蓋を貼る窓枠の施工過程を示す斜視図である。
【
図4】同窓枠の表面におけるブレース貫通部切欠覆い蓋が貼られた箇所を示す斜視図である。
【
図5】ブレース構造の耐力壁の一例を示す正面図である。
【
図8】同窓の窓枠におけるブレース貫通部分の拡大断面図および拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1に示すように、このブレース貫通部切欠覆い蓋1は、孔明き化粧シート2と、この孔明き化粧シート2の裏面に施された粘着剤層3と、前記孔明き化粧シート2の裏面全体に前記粘着剤層3を介し剥離可能に貼られた離型シート4とでなる。離型シート4は、孔明き化粧シート2と同じ平面形状とされている。孔明き化粧シート2には、ブレースが挿通される挿通孔5が設けられ、また孔明き化粧シート2および離型シート4の重なり部分に、外周縁から前記挿通孔5に達して切れ目6が形成されている。
【0016】
孔明き化粧シート2は、この例では四隅が円弧状とされた矩形状であって、長手方向の一端側に偏った位置に前記挿通孔5がある。前記切れ目6は孔明き化粧シート2の外周の長辺から直角に延びて設けられ、前記挿通孔5は、孔明き化粧シート2の短手方向についても、切れ目6の形成側の辺に近づくように偏っている。前記挿通孔5の形状は、孔明き化粧シート2の長手方向と直交する方向に長い楕円状、ないしはトラック形状とされている。
【0017】
孔明き化粧シート2の材質は、例えば樹脂製であり、その表面は、このブレース貫通部切欠覆い蓋1を貼る部材の表面に似せた外観とされる。例えば、このブレース貫通部切欠覆い蓋1を貼る部材が木目調であれば、その木目と同じ色および模様を持つ木目調とされ、またこのブレース貫通部切欠覆い蓋1を貼る部材がアルミ等の金属材であれば、その金属表面と同様な色および表面性状に見える金属材状表面とされる。孔明き化粧シート2の前記木目調や金属状の表面は、孔明き化粧シート2の素材の表面に直接に印刷等で施したものであっても、また孔明き化粧シート2の素材となるシートの表面に他の模様入りのシートを積層して施したものであっても良い。離型シート4は、樹脂製であっても、紙であっても良い。
【0018】
図2(A)に示すように、このブレース貫通部切欠覆い蓋1は、指で簡単に曲げられて、切れ目6を広げられる硬さとする。また、
図2(B)のように、離型シート4は、指で簡単に剥がせるようにする。
【0019】
図3は、このブレース貫通部切欠覆い蓋1を適用する箇所の概略形状を示す。同図は2本のブレース7,7が貫通した窓枠8を示す。2本のブレース7は、丸鋼等の鋼材からなり、窓枠8の中央で公差している。窓枠8は、上下の窓枠材8a,8bと、左右の窓枠材8c,8dとで矩形に枠組されている。この窓枠8は、建物に対してブレース7よりも後に施工されるため、各ブレース7,7を入れ込むための切欠9が、上下の窓枠材8a,8bに、一方の側縁から切り欠かれている。各切欠9は、埋木等の埋部材10により、切欠9の最奥部におけるブレース貫通孔9a(
図8(B))となる部分を残して埋められている。埋部材10は、例えば矩形の部材であり、切欠9に嵌め込んで接着剤等により固定される。
図3(A)の上側の窓枠材8aは、切欠9に埋部材10を設けた状態で、また下側の窓枠材8bは埋部材10を未取付の状態で示している。
【0020】
図3(B)の下部、および
図4は、ブレース貫通部切欠覆い蓋1を貼った状態を示す。ブレース貫通部切欠覆い蓋1は、切れ目6を広げてこの切れ目6からブレース7をブレース挿通孔5に入れ、離型シート4を剥がして孔明き化粧シート2を裏面の粘着剤層3の粘着力で窓枠材8a,8bの表面に貼り付ける。
【0021】
このように、窓枠材8a,8bのブレース貫通箇所の周囲を、切欠9の形成範囲に渡って覆うことができる。そのため、簡単な施工で、迅速にかつ見栄え良く化粧処理することができる。
孔明き化粧シート2は矩形状であるため、ブレース貫通孔の周囲と、切欠9の形成範囲につき、無駄に広範囲を覆うことなく、必要部分を良好に覆うことができる。また、一端側に偏った位置に前記挿通孔5があるため、切欠9の設けられた窓枠材8a,8bの表面を、切欠9の開口縁(窓枠材8a,8bの側縁)からブレース貫通孔の周囲に渡って覆い、また窓枠材8a,8bの前記切欠9と反対側の部分は覆わず、必要範囲をより無駄なく覆うものとなる。
また、ブレース9が丸鋼の場合、その傾斜の為に、窓枠材8a,8bの表面における断面形状が楕円状となり、その楕円の長軸は窓面に沿う方向となる。そのため、前記挿通孔5を孔明き化粧シート2の長手方向と直交する方向に長い楕円ないしトラック形状としたことにより、ブレース9の周囲を略隙間なく覆うことができ、より見栄え良く綺麗に化粧することができる。
【0022】
図5〜
図8は、耐力壁、およびこのブレース貫通部切欠覆い蓋1を貼った窓枠8の具体例を示す。
図5は、鉄骨系プレハブ建物の耐力壁12を示す。この耐力壁12は、左右2本の柱13,13の間に交差する2本のブレース7,7が張られている。2本の柱13,13の上端間には梁(図示せず)が接合されている。柱13および梁は、軽量鉄骨等からなる。ブレース7は丸鋼製である。この耐力壁12のブレース7,7が交差する部分に、
図6のように窓枠8が設けられる。窓枠8は例えば木製である。
図6の丸印Aで囲んだ箇所は、前記切欠9を設ける箇所を示す。
【0023】
図7に中間省略水平断面を示すように、窓枠8の屋外側に沿ってアルミ製等のサッシ13が設けられ、サッシ13に、引き違い戸形式の窓戸14が設置されている。窓枠8に、
図3と共に前述したと同様に、切欠9が設けられて各切欠9内にブレース7が納められ、切欠9はブレース7の挿通部分を除いて、埋木等の埋部材10で埋められている。
この窓枠8の上下の窓枠材8a,8bの表面に、
図3,
図4と共に前述したと同様に、
図1の例のブレース貫通部切欠覆い蓋1が貼られている。
【0024】
なお、上記実施形態では、孔明き化粧シート2の挿通孔5を楕円ないしトラック形状としたが、円形であっても良く、またブレース7が平鋼等の断面非円形である場合は、その断面形状に応じた形状、特にそのブレース7の周囲に隙間無く接する形状であることが望ましい。孔明き化粧シート2の外形は、矩形状に限らず、その他任意の形状としても良い。また、このブレース貫通部切欠覆い蓋1は、窓枠8に限らず、ブレースが突出した天井面や、ブレースが貫通した据え付けの家具に用いても良い。
【符号の説明】
【0025】
1…ブレース貫通部切欠覆い蓋
2…孔明き化粧シート
3…粘着剤層
4…離型シート
5…挿通孔
6…切れ目
7…ブレース
8…窓枠
8a〜8d…窓枠材
9…切欠
9a…ブレース貫通孔
10…埋部材