特許第5793586号(P5793586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5793586ポリエステル系樹脂組成物、該ポリエステル系樹脂組成物の製造方法、及び該ポリエステル系樹脂組成物を用いた成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793586
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】ポリエステル系樹脂組成物、該ポリエステル系樹脂組成物の製造方法、及び該ポリエステル系樹脂組成物を用いた成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20150928BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20150928BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20150928BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20150928BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08L75/04
   C08K5/29
   C08J3/20 B
   C08J3/22CFD
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-20609(P2014-20609)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-147839(P2015-147839A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2015年6月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】吉本 光彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 善宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 雄大
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−249801(JP,A)
【文献】 特開2000−256436(JP,A)
【文献】 特開2001−11151(JP,A)
【文献】 特開2002−3564(JP,A)
【文献】 特開2003−201442(JP,A)
【文献】 特開2011−94102(JP,A)
【文献】 特開2013−133445(JP,A)
【文献】 特開2013−193986(JP,A)
【文献】 特開2013−249456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00 − 67/08
C08G 18/00 − 18/87
C08K 5/00 − 5/59
C08L 75/00 − 75/16
C08J 3/00 − 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂(A)と、下記一般式(1)で表されるカルボジイミド化合物(B)とを含有するポリエステル系樹脂組成物であって、カルボジイミド化合物(B)の含有量が、ポリエステル系樹脂(A)及びカルボジイミド化合物(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜8質量部である、ポリエステル系樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rはイソシアネートと反応性を有する官能基を1つ有する化合物の残基を表し、Rは少なくとも1つの脂環構造を有する2価の脂肪族基を表す。ただし−N=C=N−はRの脂環構造に直接結合するものとする。Rはポリエステルジオールの2価の残基を表す。Xは下記一般式(2)〜(4)
【化2】

から選ばれる基を表す。mは1〜20の数を表し、nは1〜20の数を表し、pは1〜5の数を表す。複数のR、Xはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記ポリエステルジオールの数平均分子量が、1,000〜40,000である、請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項3】
前記Rが、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートの2価の残基である、請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド当量が、100〜1,000である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル系樹脂(A)が、ポリエチレンテレフタレー卜、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、及びポリヒドロキシアルカン酸から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項6】
前記イソシアネートと反応性を有する官能基を1つ有する化合物が、モノアルコール、モノフェノール、モノイソシアネート、又はモノアミンである、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエステル系樹脂(A)と、前記カルボジイミド化合物(B)とを溶融混練する、請求項1〜に記載のポリエステル系樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記カルボジイミド化合物(B)がペレット化されたものである、請求項に記載のポリエステル系樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物を用いて成形された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂と、カルボジイミド化合物とを含有するポリエステル系樹脂組成物、該ポリエステル系樹脂組成物の製造方法、及び該ポリエステル系樹脂組成物を用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、透明性、機械的強度、溶融安定性、耐溶剤性、及びリサイクル性に優れていることから、フィルム、シート等に広く利用されており、更に近年では、家電製品やOA機器の筐体等にも使用されている。
しかしながら、ポリエステル樹脂は、従来の汎用樹脂に比べて容易に加水分解される性質を有していることから、耐加水分解性を向上させることを目的として、カルボジイミド化合物を添加する手法が検討されている。
【0003】
カルボジイミド化合物をポリエステル樹脂に配合し、成型することにより、ポリエステル樹脂中のカルボキシル基や、高温で混練した際にエステル基の分解によって発生したカルボキシル基をカルボジイミド化合物が補足し、成型物の初期性能低下を抑制することができる。また、成型物中にカルボジイミド化合物が残存することで、成型物の耐久性も向上する。
【0004】
例えば、特許文献1には、不飽和ポリエステル樹脂用の耐加水分解安定剤として、特定の脂肪族又は芳香族カルボジイミド化合物等を主成分とすることを特徴とする不飽和ポリエステル樹脂用の耐加水分解安定剤が開示されている。
特許文献2には、ポリエステル系プラスチックの加水分解による開裂に対する安定剤として、カルボジイミド構造と、更にウレタン構造、尿素構造またはこれら双方の構造とを有し、25℃で固体であり、カルボジイミド構造が非芳香族炭素原子に結合しているカルボジイミドが開示されている。
特許文献3には、耐湿熱老化性に優れた脂肪族ポリエステル樹脂組成物を得ることを目的として、脂肪族ポリエステル樹脂、加水分解抑制剤、及び非反応性シリコーンを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物が開示されている。その中で、加水分解抑制剤としてカルボジイミド系化合物、可塑剤としてアジピン酸エステル等を用いる技術が開示されている。
特許文献4には、耐加水分解性と折り曲げ加工性とを両立することを目的として、数平均分子量が5,000〜30,000のポリエステルセグメントとポリカルボジイミドセグメントとがウレタン結合で連結された化学構造からなるポリエステル−ポリカルボジイミド共重合体及びこれを含有する接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−249801
【特許文献2】特開2000−256436
【特許文献3】特開2009−256405
【特許文献4】特開2013―75972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、ポリエステル樹脂の加水分解を抑制することができるが、溶融混練及び成型加工時に、ポリエステル樹脂中のカルボキシル基と、カルボジイミド基が急激に反応することにより、粘度の増加や、ゲル化が生じる場合があり、安定な成型物を作製することが困難な場合があった。
特許文献2の技術では、固体状のカルボジイミドを得ることができ、このカルボジイミドをポリエステル系プラスチックに添加することにより、低温での強度保持率を改善できるが、耐加水分解性が低く、高温高湿下における保管後の強度保持率が劣るという問題があった。
特許文献3の技術では、可塑剤を用いることで成型性を高めることができるが、フタル酸エステル等の一般的な可塑剤を用いると、添加量によっては成型体からのブリードアウトが生じる場合があり、成型物の物性の低下や、ブリードアウト物により環境、健康障害等が生じる問題があった。また、これらの可塑剤は、カルボキシル基との反応性を有しないため、カルボジイミド化合物の加水分解抑制効果を低下させる場合があり、改善が望まれていた。
特許文献4の技術では、耐加水分解性と折り曲げ加工性に優れる塗膜を得ることを目的としており、ポリエステル−ポリカルボジイミド共重合体を主成分とするため、適用できる用途が限られ、生産性及びコストについても更なる改善が望まれる場合があった。
本発明は、耐加水分解性及び耐ブリードアウト性に優れ、溶融粘度及び溶液粘度の大幅な上昇を招くことがない、ポリエステル系樹脂組成物、該ポリエステル系樹脂組成物の製造方法、及び該ポリエステル系樹脂組成物を用いた成形品を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル系樹脂に対して、特定のカルボジイミド化合物を特定の割合で配合することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記のポリエステル系樹脂組成物、該ポリエステル系樹脂組成物の製造方法、及び該ポリエステル系樹脂組成物を用いた成形品である。
【0008】
[1]ポリエステル系樹脂(A)と、下記一般式(1)で表されるカルボジイミド化合物(B)とを含有するポリエステル系樹脂組成物であって、カルボジイミド化合物(B)の含有量が、ポリエステル系樹脂(A)及びカルボジイミド化合物(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜8質量部である、ポリエステル系樹脂組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、R1はイソシアネートと反応性を有する官能基を1つ有する化合物の残基を表し、R2は少なくとも1つの脂環構造を有する2価の脂肪族基を表す。ただし−N=C=N−はR2の脂環構造に直接結合するものとする。R3はポリエステルジオールの2価の残基を表す。Xは下記一般式(2)〜(4)
【0011】
【化2】
【0012】
から選ばれる基を表す。mは1〜20の数を表し、nは1〜20の数を表し、pは1〜5の数を表す。複数のR2、Xはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0013】
[2]前記ポリエステルジオールの数平均分子量が、1,000〜40,000である、上記[1]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[3]前記R2が、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートの2価の残基である、上記[1]又は[2]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[4]前記カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド当量が、100〜1,000である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[5]前記ポリエステル系樹脂(A)が、ポリエチレンテレフタレー卜、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、及びポリヒドロキシアルカン酸から選ばれる1種以上である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
[6]前記ポリエステル系樹脂(A)と、前記カルボジイミド化合物(B)とを溶融混練する、上記[1]〜[5]に記載のポリエステル系樹脂組成物の製造方法。
[7]前記カルボジイミド化合物(B)がペレット化されたものである、上記[6]に記載のポリエステル系樹脂組成物の製造方法。
[8]上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物を用いて成形された成形品。
【0014】
本発明によれば、耐加水分解性及び耐ブリードアウト性に優れ、溶融粘度及び溶液粘度の大幅な上昇を招くことがない、ポリエステル系樹脂組成物、該ポリエステル系樹脂組成物の製造方法、及び該ポリエステル系樹脂組成物を用いた成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ポリエステル系樹脂組成物]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂(A)と、下記一般式(1)で表されるカルボジイミド化合物(B)とを含有するポリエステル系樹脂組成物であって、カルボジイミド化合物(B)の含有量が、ポリエステル系樹脂(A)及びカルボジイミド化合物(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜8質量部であることを特徴とする。
【0016】
【化3】
【0017】
式中、R1はイソシアネートと反応性を有する官能基を1つ有する化合物の残基を表し、R2は少なくとも1つの脂環構造を有する2価の脂肪族基を表す。ただし−N=C=N−はR2の脂環構造に直接結合するものとする。R3はポリエステルジオールの2価の残基を表す。Xは下記一般式(2)〜(4)
【0018】
【化4】
【0019】
から選ばれる基を表す。mは1〜20の数を表し、nは1〜20の数を表し、pは1〜5の数を表す。複数のR2、Xはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0020】
本発明のポリエステル系樹脂組成物が、耐加水分解性及び耐ブリードアウト性に優れ、溶融粘度及び溶液粘度の大幅な上昇を招くことがない理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明のポリエステル系樹脂組成物が含有する一般式(1)で表されるカルボジイミド化合物(B)は、ポリカルボジイミド基間にポリエステルセグメントを有するため、ポリカルボジイミド基間に適度な距離を付与することができ、これによって、溶融混練時の架橋反応による急激な粘度上昇を抑制できたと考えられる。
また、カルボジイミド化合物(B)は、ポリカルボジイミド基間にポリエステルセグメントを有することにより、ポリエステル系樹脂中におけるカルボジイミド化合物(B)の溶解性及び分散性を高めることができるため、溶融粘度及び溶液粘度の上昇を抑制すると共に、耐加水分解性及び耐ブリードアウト性に優れた成型物を得ることができたと考えられる。
更に、ポリカルボジイミドとして、特定の脂環構造を有するポリカルボジイミドを用いることにより、従来の脂肪族ポリカルボジイミドより低いカルボジイミド基濃度でも、優れた耐加水分解性を発揮することができたと考えられる。
【0021】
<ポリエステル系樹脂(A)>
ポリエステル系樹脂としては、エステル基を有する樹脂であれば特に制限することなく使用することができる。
このようなポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)、ポリブチレンサクシネート(以下、「PBS」ともいう)、ポリブチレンサクシネートアジペート(以下、「PBSA」ともいう)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、「PBAT」ともいう)、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」ともいう)、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリ乳酸(以下、「PLA」ともいう)、及びポリ酪酸等のポリヒドロキシアルカン酸(以下、「PHA」ともいう)から選ばれる1種以上を用いることができる。
これらの中でも、経済性、加工性の観点から、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、及びポリヒドロキシアルカン酸から選ばれる1種以上、より好ましくはポリエチレンテレフタレー卜である。
本発明のポリエステル系樹脂組成物中のポリエステル系樹脂(A)の含有量は、ポリエステル系樹脂組成物の耐加水分解性、溶融粘度、及び溶液粘度の観点から、好ましくは80〜99.9質量%、より好ましくは85〜99.8質量%、更に好ましくは90〜99.7質量%、より更に好ましくは95〜99.5質量%である。
【0022】
<カルボジイミド化合物(B)>
本発明に用いるカルボジイミド化合物(B)は、下記一般式(1)で表される。
【0023】
【化5】
【0024】
式中、R1はイソシアネートと反応性を有する官能基を1つ有する化合物の残基を表し、R2は少なくとも1つの脂環構造を有する2価の脂肪族基を表す。ただし−N=C=N−はR2の脂環構造に直接結合するものとする。R3はポリエステルジオールの2価の残基を表す。Xは下記一般式(2)〜(4)
【0025】
【化6】
【0026】
から選ばれる基を表す。mは1〜20の数を表し、nは1〜20の数を表し、pは1〜5の数を表す。複数のR2、Xはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい。
【0027】
(R1
一般式(1)中、R1はイソシアネートと反応性を有する官能基を1つ有する化合物(以下、「(a)成分」ともいう)の残基を表す。
本発明に用いるカルボジイミド化合物(B)は、残存する末端イソシアネートを末端封止剤である(a)成分で封止することにより、カルボジイミド化合物(B)のポリエステル系樹脂への相溶性向上や保存安定性を高めることができ、品質を向上することができると考えられる。
【0028】
〔末端封止剤;(a)成分〕
前記(a)成分としては、モノアルコール、モノフェノール、モノイソシアネート、モノアミン等が挙げられる。
前記モノアルコールとしては、メタノール、エタノール、シクロヘキサノール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
前記モノフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、ジメチルフェノール、ナフトール等が挙げられる。
前記モノイソシアネートとしては、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、n−、sec−或いはter−ブチルイソシアネート等の低級アルキルイソシアネート;シクロヘキシルイソシアネート等の脂環式脂肪族イソシアネート;フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート等が挙げられる。
前記モノアミンとしては、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の2級アミンが挙げられる。
これらの中でも、カルボジイミド化合物(B)のポリエステル系樹脂への相溶性向上や保存安定性を高める観点から、好ましくはモノアルコール又はモノイソシアネート、より好ましくはモノアルコール、更に好ましくはポリエチレングリコールモノメチルエーテル又はポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、より更に好ましくはポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0029】
(R2
一般式(1)中、R2は、少なくとも1つの脂環構造を有する2価の脂肪族基を表す。ただし−N=C=N−はR2の脂環構造に直接結合するものとする。
本発明に用いるカルボジイミド化合物(B)は、カルボジイミド基(−N=C=N−)が、脂環構造に直接結合することにより、カルボキシル基との反応性を高めることができ、従来の脂肪族ポリカルボジイミドより低いカルボジイミド基濃度でも、優れた耐加水分解性を発揮することができたと考えられる。
少なくとも1つの脂環構造を有する2価の脂肪族基としては、少なくとも1つの脂環構造を有するジイソシアネート(以下、「(b)成分」ともいう)の2価の残基が挙げられる。
【0030】
〔ジイソシアネート;(b)成分〕
前記(b)成分としては、例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル系樹脂組成物の耐加水分解性、溶融粘度、及び溶液粘度の観点から、好ましくはジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートである。
【0031】
(R3
一般式(1)中、R3はポリエステルジオール(以下、「(c)成分」ともいう)の2価の残基を表す。
本発明に用いるカルボジイミド化合物(B)は、R3としてポリエステルセグメントを有することにより、ポリエステル系樹脂との馴染みが良く、ポリエステル系樹脂中におけるカルボジイミド化合物(B)の溶解性及び分散性を高めることができるため、溶融粘度及び溶液粘度の上昇を抑えると共に、耐加水分解性及び耐ブリードアウト性を向上できたと考えられる。
【0032】
〔ポリエステルジオール;(c)成分〕
前記(c)成分としては、エステル基を有するジオールであれば特に制限されないが、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの重縮合により得られる化学構造からなるものが挙げられる。
多価カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スべリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ダイマー酸及びその水素添加物等の脂肪族二塩基酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族二塩基酸等の二塩基酸の1種以上を用いることが好ましい。
また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ダイマージオール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリーコル等の脂環式グリコール、キシリレングリーコル等の芳香環含有グリコール等のグリコールの1種以上を用いることが好ましい。
(c)成分の数平均分子量としては、ポリエステル系樹脂組成物の耐加水分解性、溶融粘度、及び溶液粘度の観点から、好ましくは1,000〜40,000、より好ましくは1,500〜35,000、更に好ましくは2,000〜30,000である。なお、数平均分子量は、ゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
【0033】
(m、n、p)
一般式(1)中、mは、ポリエステル系樹脂組成物の耐加水分解性、溶融粘度、及び溶液粘度の観点から、1〜20の数を表し、好ましくは2〜18、より好ましくは4〜16、更に好ましくは6〜15である。
一般式(1)中、nは、同様の観点から、1〜20の数を表し、好ましくは2〜18、より好ましくは4〜16、更に好ましくは6〜15である。
一般式(1)中、pは、同様の観点から、1〜5の数を表し、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3である。
【0034】
(カルボジイミド当量)
カルボジイミド化合物(B)のカルボジイミド当量(カルボジイミド基1mol当たりの化学式量)は、ポリエステル系樹脂組成物の耐加水分解安定性、溶融粘度、及び溶液粘度の観点から、好ましくは100〜1,000、より好ましくは150〜850、更に好ましくは200〜600である。
【0035】
(カルボジイミド化合物(B)の含有量)
前記カルボジイミド化合物(B)の含有量は、ポリエステル系樹脂組成物の耐加水分解性、溶融粘度、及び溶液粘度の観点から、ポリエステル系樹脂(A)及びカルボジイミド化合物(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜8質量部であり、好ましくは0.2〜7質量部、より好ましくは0.3〜6質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0036】
<カルボジイミド化合物(B)の製造方法>
本発明に用いるカルボジイミド化合物(B)は、公知の方法によって製造することができる。
例えば、
(i)ジイソシアネート(b)を触媒の存在下でカルボジイミド化反応してポリカルボジイミド(以下、「(d)成分」ともいう)を得て、次いで、(d)成分に、末端封止剤(a)及びポリエステルジオール(c)を添加して、共重合反応及び末端封止反応する方法、
(ii)ジイソシアネート(b)、ポリエステルジオール(c)、及び末端封止剤(a)を触媒の存在下で、カルボジイミド化反応、共重合反応、及び末端封止反応する方法、
(iii)ジイソシアネート(b)とポリエステルジオール(c)とを共重合反応させ、その後、末端封止剤(a)と触媒を添加して、カルボジイミド化反応及び末端封止反応を行う方法等が挙げられる。
これらの中でも、生産性の観点から、前記(i)の方法によって製造することが好ましい。
【0037】
(ポリカルボジイミド(d)の製造)
前記ポリカルボジイミド(d)は、ジイソシアネート(b)を、カルボジイミド化触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物等を用い、無溶媒又は不活性溶媒中で、カルボジイミド化反応に付することにより合成することができる。
前記カルボジイミド化触媒の具体例としては、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド等が挙げられる。これらの中でも工業的に入手の容易な3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドが特に好ましい。
前記カルボジイミド化反応の反応温度は、生産性の観点から、好ましくは70〜250℃、より好ましくは100〜230℃、更に好ましくは150〜200℃である。
前記カルボジイミド化反応の反応時間は、同様の観点から、好ましくは1〜50時間、より好ましくは10〜40時間、更に好ましくは20〜30時間である。
触媒の使用量は、使用する触媒の種類に応じて適宜決定できるが、好ましくはジイソシアネート(b)100質量に対して、0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.2〜1質量部である。
【0038】
(共重合反応)
前記共重合反応は、上記で得られたポリカルボジイミド(d)、末端封止剤(a)、及びポリエステルジオール(c)を加熱下で反応させることによって行うことができる。(d)成分と(a)成分と(c)成分を添加する順序に特に制限はないが、合成時の作業性の観点からは、(d)成分と(a)成分と(c)成分を同時に添加することが好ましく、副反応を抑制する観点からは、(d)成分と(a)成分を添加し、(d)成分と(a)成分の反応終了を確認した後に、(c)成分を添加することが好ましい。
ポリカルボジイミド(d)と、ポリエステルジオール(c)の混合比率は、得られるポリエステル系樹脂組成物の耐加水分解性、溶融粘度、及び溶液粘度の観点から、ポリカルボジイミド(d)の末端イソシアネート基のモル数と、ポリエステルジオール(c)が有する水酸基のモル数の比[NCO(d)/OH(c)]が、好ましくは1.20〜2、より好ましくは1.25〜2、更に好ましくは1.33〜2である。
前記共重合反応の反応温度は、生産性の観点から、好ましくは40〜250℃、より好ましくは90〜220℃、更に好ましくは130〜200℃である。
前記共重合反応の反応時間は、同様の観点から、好ましくは5分〜20時間、より好ましくは30分〜10時間、更に好ましくは1時間〜3時間である。
【0039】
得られたカルボジイミド化合物(B)は、ポリエステル系樹脂組成物の生産性の観点から、ポリエステル系樹脂(A)と溶融混合してマスターバッチ化、又はカルボジイミド化合物(B)成分のみでペレット化することが好ましく、カルボジイミド化合物(B)成分のみでペレット化することがより好ましい。ペレット化は、公知のペレタイザーによって、ペレット形状に加工することで行うことができる。
【0040】
<その他の成分>
ポリエステル系樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、充填剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0041】
<ポリエステル系樹脂(A)及びカルボジイミド化合物(B)の合計含有量>
本発明のポリエステル系樹脂組成物中のポリエステル系樹脂(A)及びカルボジイミド化合物(B)の合計含有量は、ポリエステル系樹脂組成物の加工性、耐加水分解性、溶融粘度、及び溶液粘度の観点から、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは92〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。
【0042】
[ポリエステル系樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリエステル系樹脂組成物の製造方法は、前記ポリエステル系樹脂(A)と、前記カルボジイミド化合物(B)とを溶融混練する方法である。
本発明の製造方法は、前記カルボジイミド化合物(B)を用いることにより、溶融混練時の粘度の大幅な上昇を抑えることができ、溶融混練時の作業性に優れるため、ポリエステル系樹脂組成物の生産性に優れていると考えられる。
溶融混練は加熱手段を備えた公知のミキサー等を用いて行うことができる。各材料をミキサーに投入する順序は特に制限はないが、ベースとなるポリエステル系樹脂(A)を先に投入して溶融した後に、カルボジイミド化合物(B)、及び必要に応じて加えるその他の成分を投入することが好ましい。
溶融混練の時間は、スクリューの形状や回転速度等により適宜決定することができ、通常1〜30分、好ましくは1〜10分、より好ましくは1〜5分である。また、溶融混練時の温度はベースとなるポリエステル系樹脂の種類により異なるが、通常150〜350℃程度であり、好ましくは200〜320℃、より好ましくは240〜300℃である。
【0043】
本発明の製造方法に用いるカルボジイミド化合物(B)は、ペレット化されていることが好ましい。
従来のポリカルボジイミド添加剤は、融点が低いために押出機へフィーダー等を用いて添加すると、投入口部分で溶融してしまい投入が困難になる場合があり、一方、粉末状ポリカルボジイミド添加剤をポリエステル系樹脂ペレットとドライブレンドして添加する場合、形状の違いからカルボジイミド添加剤が偏析してしまい濃度むらが生じてしまう場合があった。さらに、ポリカルボジイミド添加剤はポリエステル系樹脂との相溶性がやや劣るために低濃度で成型体中に均一に分散させることが困難である。
一方、本発明に用いるカルボジイミド化合物(B)は、ペレット化してポリエステル系樹脂とドライブレンドして成型体を加工することが可能となる。特に、分子量が大きいカルボジイミド化合物(B)は、高融点であるため、ペレット化が容易に可能となる。ペレット状のため偏析が起こりにくく、またポリエステルセグメントが分子内に存在することからポリエステル系樹脂との相溶性が良く、低濃度でもポリエステル系樹脂の成型体中に均一に分散させることができたと考えられる。
さらに、ポリエステル系樹脂に直接ドライブレンドで添加できることから、ポリエステル系樹脂の種類毎にマスターバッチを準備する必要が無く、製造工数を削減することが可能になるとともに、マスターバッチ化による熱履歴によって起こる失活(エステル系樹脂とカルボジイミドとの反応)を避けることができたと考えられる。
【0044】
[ポリエステル系樹脂組成物を用いた成形品]
本発明のポリエステル系樹脂組成物から成形品を得る場合、上述の溶融混練時に押出し成型、射出成型、ブロー成型等により成型してもよいし、一旦、マスターバッチ等にコンパウンド化して、その後、他の材料と溶融混練して成型を行ってもよい。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、いずれの成型方法においても、成型時に溶融粘度が大幅に上昇することがないため、作業性が良好である。また、本発明のポリエステル系樹脂組成物により成型された成形品は、耐加水分解性が良好であることから、強度等の諸性能に優れるものである。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
[評価項目]
(1)溶液粘度
溶融混練したポリエステル系樹脂組成物を130℃で4時間乾燥させ、乾燥後の樹脂0.15gを30mLのフェノール/テトラクロロエタン=1/1に溶解させ、キャノンフェンスケ粘度計を用いて30℃で測定した。単位は(dl/g)である。
【0047】
(2)MFR(溶融粘度)
溶融混練したポリエステル系樹脂組成物を130℃で4時間乾燥させ、溶融粘度測定器(株式会社上島製作所製 VR−4100)を用いて試験温度270℃、試験荷重2.16kgfでMFR(メルトマスフローレート)を測定した。単位は(g/10min)である。得られたMFR(g/10min)を溶融粘度の指標とした。MFR値が大きい程、溶融粘度が低いことを示す。
【0048】
(3)強度保持率(耐加水分解性試験)
溶融混練したポリエステル系樹脂組成物を、軟化点以上の温度で平板プレスし、厚み約300μmのシートを作製し、該シートから幅10mm長さ70mmの短冊シートを作製した。
次いで、引張試験機にて、作製した短冊シートの引張強度を測定した。さらに、作製した短冊シートを高度加速寿命試験装置(ESPEC社製 HAST CHAMBER EHS−210M)に入れ、121℃、100%RHの条件下で、24時間経過後と、40時間経過後にサンプルを取出し、引張試験機にて、短冊シートの引張強度を測定した。試験前、試験後それぞれ5枚ずつの引張強度の平均値を算出し、強度保持率(強度保持率(%)=[試験後の引張強度の平均値]/[試験前の引張強度の平均値]×100)を耐加水分解性の評価指標として求めた。
【0049】
(4)耐ブリードアウト性評価
溶融混練したポリエステル系樹脂組成物を、前記(3)強度保持率に記載の条件でプレスして得られたシートについて、ブリードアウトの有無を目視で確認した。
【0050】
合成例1(カルボジイミド化合物P1の合成)
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート100質量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)0.5質量部とを、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下185℃で24時間撹拌し、イソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを得た。
赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。NCO%を測定した結果3.78%であり、(−R2−N=C=N−)で表される構成単位の繰り返し単位数(以下、「重合度」ともいう)は9.0であった。
次いで、上記で得られたイソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを150℃まで加熱し、これにポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量208)7.9質量部、及びポリエステルジオール(東洋紡株式会社製「バイロン220」、分子量3,000)57.3質量部を加え、180℃まで加熱して撹拌しながら2時間反応させた。
赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認して、反応容器から取り出し、室温まで冷却し淡黄色透明なカルボジイミド化合物P1を得た。
【0051】
合成例2〜4(カルボジイミド化合物P2〜P4の合成)
合成例1において、原料組成、及び反応条件を表1に記載の条件に変えた以外は、合成例1と同様にして、カルボジイミド化合物P2〜P4を得た。
【0052】
合成例5(カルボジイミド化合物P5の合成)
合成例1において、反応条件、及び末端封止剤の種類を表1に記載する条件に変え、ポリエステルジオール(東洋紡株式会社製「バイロン220」、分子量3,000)を加えなかったこと以外は、合成例1と同様にして、カルボジイミド化合物P5を得た。
【0053】
合成例6(ペレット状カルボジイミド化合物P6の合成)
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート100質量部とカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)0.5質量部とを、還流管及び撹拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下185℃で28時間撹拌し、イソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを得た。赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2150cm-1前後のカルボジイミド基による吸収ピークを確認した。NCO%を測定した結果2.92%(重合度=12.0)であった。
次いで、上記で得られたイソシアネート末端ポリ4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを150℃まで加熱し、これにポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量208)6.1質量部を加え、180℃まで加熱して撹拌しながら1時間反応させた後に反応容器から取り出し、室温まで冷却し淡黄色透明なイソシアネート片末端4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドを得た。
次いで、上記イソシアネート片末端4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド90.6質量部とポリエステルジオール(東洋紡株式会社製「バイロン220」、分子量3,000)44.0質量部を二軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、ラボプラストミル)に供給し、180℃で溶融混練を行い、得られたストランドをペレタイザーにてペレット形状に加工することで、ペレット状カルボジイミド化合物P6を得た。
得られたペレット状カルボジイミド化合物P6は、赤外吸収(IR)スペクトル測定により波長2200〜2300cm-1のイソシアネート基の吸収が消失したことを確認した。
【0054】
合成例7(ペレット状カルボジイミド化合物P7の合成)
合成例6において、原料組成、及び反応条件を表1に記載の条件に変えた以外は、合成例6と同様にして、カルボジイミド化合物P7を得た。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1
PET樹脂(中国石化製)99.00質量部をラボミキサーにより270℃の条件下で溶融させた後、合成例1で得られたカルボジイミド化合物P1を1.00質量部加え、3分間混合して、ポリエステル系樹脂組成物を得た。得られたポリエステル系樹脂組成物の粘度特性を表2に示す。
【0057】
実施例2〜5、比較例1〜4
実施例1において、配合組成を、表2に記載の配合組成に変えた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル系樹脂組成物を得た。得られたポリエステル系樹脂組成物の粘度特性を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例6〜8、比較例5〜8
各実施例及び比較例で得られたポリエステル系樹脂組成物の耐加水分解性、及びブリードアウトの有無を確認した。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表2〜3より、本発明のポリエステル系樹脂組成物は、比較例と同等のカルボジイミド濃度であるにもかかわらず、いずれも溶融粘度及び溶液粘度の大幅な上昇がなく、耐加水分解性及び耐ブリードアウト性に優れていることがわかる。
一方、カルボジイミド化合物中にポリカーボネートジオールの残基を有するP4を含有する比較例1のポリエステル系樹脂組成物は、溶融粘度の上昇が著しかった。
また、カルボジイミド化合物中にジオール化合物の残基を有しないP5を含有する比較例2〜3、及びジイソシアネートとして脂肪族ジイソシアネートを用いたP3を含有する比較例4から得られたシート(比較例6〜8)は、実施例1〜2及び4から得られたシート(実施例6〜8)より耐加水分解性が劣っていた。