【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を備えた自動車用内燃機関及び請求項
4の特徴を備えたそのような内燃機関の調節装置を点検するための方法によって解決される。本発明の目的にかなった重要な発展形態を備える有利な実施形態は、その他の請求項に提示される。
【0009】
本発明の第一の様態は、少なくとも1つの調節装置を備えた自動車用内燃機関である。この調節装置を使用して、内燃機関の少なくとも1つの圧縮比が可変に調節可能である。
【0010】
本発明により、少なくとも1つの検出装置が設けられ、この検出装置を使用して、調節装置によって使用される作業量によって、又は圧縮比を調節するために使用される実測エネルギー量によって特徴づけられる少なくとも1つの信号が検出可能である。
【0011】
それによって、圧縮比を調節又は調整するための作業量又は使用される実測エネルギー量を、実測作業量として検出することが可能である。この検出によって、特に摩耗に関して調節装置の実際の状態を、高い品質と高い妥当性をもって調査することができる。従って、調節装置の現在の実際の状態を、より適切かつ極めて正確に判定することができる。これによって特に正確な自動車のオンボード診断(OBD、On Board Diagnostic)が可能である。結果として、起こり得る望ましくない機能不良が判定されるか、又は圧縮比を調節するための調節装置が期待される最適な機能を有していないか、もしくはもはや完全には有していないと判定されることもあり得るが、それにより、調節装置の摩耗がなければ可能であるかもしれない高い精度での圧縮比の調節はできないか、もしくはそれ以上調節できなくなる。
【0012】
調節装置の望ましくない状態、例えばその調節装置の望ましくない摩耗が検出されると、相応の対応策を行なうことができる。この処置の1つは、例えば、自動車の使用者、特に運転者が視覚的及び/又は音によって感じられる信号又はそれに類したもので通知される警告であってよい。それによって、自動車の使用者に、調節装置の望ましくない状態を知らせることができ、この使用者を整備工場に行くように促す、及び/又は調節装置のメンテナンス、修理及び/又は交換を行うように促すことができる。
【0013】
検知された調節装置の状態が望ましい状態であり、その状態において調節装置がその望ましい圧縮比調節機能を満たすことができる場合は、そのことも使用者に知らせることができる。
【0014】
代替又は追加の方法として、該当する調節装置の状態を内燃機関の記憶装置、特に検出装置の記憶装置に保存することが可能である。それにより、例えば調節装置の状態の時間的な推移を記録し、追跡することができる。
【0015】
例えばいわゆるマルチリンクエンジンとして形成されている、調節装置を備えた内燃機関では、内燃機関の作動中、特にこの内燃機関の負荷ポイントに応じて、場合によっては非常に高い調節力及び/又は調節モーメントが生じ、これらの力は、調節装置によって、詳細には例えばギヤユニット及び/又はアクチュエータを含む機構によって、圧縮比を調節又は調整するために加えられなければならない。この高い調節力及び/又は調節モーメントは、例えば圧縮比の調節のための作業量を特徴づけ、調節装置のための高い負荷となることがある。これにより、特に、内燃機関の非常に長い耐用年数にわたって調節装置が摩耗し、圧縮比を調節するための作業量がこの耐用年数にわたって高くなる可能性がある。すなわち、圧縮比の調節又は調整がスムーズに行なわれなくなる。
【0016】
このことは、調節装置がまったく又は少ししか摩耗していない状態と比べて、例えば調節装置の軸受、スプロケット及び/又は他の力伝達エレメント及び/又はトルク伝達エレメントにおいて摩耗がより高くなることから生じ得る。その結果、要求される調節ダイナミクス、つまり圧縮比を調節又は調整することが可能な速度を、調節装置がもはや満たすことができない可能性がある。場合により、調節装置の摩耗が特に強い場合は、調節装置の機能停止を引き起こすおそれがある。そのような機能停止は、適切な対応策が講じられないと、内燃機関の有害物質排出に悪影響を及ぼす場合もある。すなわち、このことは、内燃機関が望ましくない高い有害物質排出の可能性があることを意味する。
【0017】
本発明による内燃機関では、要求されている望ましい調節ダイナミクスを調節装置がもはや満たせなくなり、それによって望ましくない状態を有している場合は、調節装置が作動するのを回避することができる。このことが当てはまるのは、検出装置及び調節装置の状態の検知により、調節装置の調節ダイナミクスに悪影響を及ぼすおそれのある望ましくない状態及びそれによる摩耗の増加を検知することができる場合である。特に、例えば、調節装置が望ましくかつ要求されている調節ダイナミクスをまだ満たしているという限界状態を検知することができても、しかしながら、この場合は、この限界状態から出発して、ある程度の期間後には、調節装置が調節ダイナミクスをもはや満たせなくなる状態となることを推察することができる。
【0018】
これにより、望ましくかつ要求されている調節ダイナミクスを調節装置がもはや有することができない望ましくない状態に時間的に達する前に、及び特に時間的に機能停止が近づく前に、又は機能停止の可能性が高くなる前に、調節装置のメンテナンス及び/又は修理及び/又は必要に応じて交換を行うことができる。
【0019】
これに伴って、望ましくない有害物質排出の増加及び内燃機関の燃費の悪化が防止される。従って、この内燃機関は、その長い耐用年数にわたって圧縮比の調節により特に効率的にさまざまな動作点に適合し、それによって低燃費かつ低いCO
2排出量による作動が可能であることを保証することができる。
【0020】
本発明の有利な実施形態では、例えば内燃機関の制御装置及び/又は調整装置に割り当てられた検出装置を使用して、検出された信号をあらかじめ設定可能な基準値、基準信号又はそれに類したものと比較することができる。この基準値及び/又は基準信号(以下、代表して基準信号という用語のみを使用)は、その際、例えば検出装置の記憶装置内、詳細には特性マップ内に保存することができる。それにより、実測信号として検出された信号を基準信号と比較することが可能である。実測信号が基準信号から逸脱しているという比較結果が出て、例えばその偏差が、あらかじめ設定可能な限界値又はあらかじめ設定可能な限界信号を超えている場合、調節装置の望ましくない状態、例えば限界状態を推察することができ、この限界状態を検出することができる。この比較により、現在及び実際の調節装置の状態を特に正確かつ妥当性があるように検出することが可能になる。従って、調節装置のメンテナンス及び/又は修理及び/又は交換は、このことが本当に必要な場合にだけ、とくに行うことができる。不必要なメンテナンス作業及び/又は修理作業は、それによって防止される。
【0021】
調節装置にまだ摩耗がないか、又はごくわずかしかない場合は、検出された実測信号と比較する基準信号は、その際、同一の、あらかじめ設定可能な、定義された内燃機関の状態に当てはめられる。内燃機関がまだ新しい状態にある場合、この基準信号は、例えば、圧縮比が規定された状態に調節され、それに対する実測作業量が判定される形で判定される。すなわち基準信号は時間的に少なくともほぼ内燃機関及び/又は自動車の製造直後に検出又は判定される。同様に、基準信号が異なる種類の方法で検出又は判定されることも可能である。その際、基準信号が、例えば内燃機関の開発の範囲で判定及び/又は計算されるようにすることができる。それによって、特に正確に、例えば調節装置の摩耗の増加によって生じる望ましくない状態を推察することができる。
【0022】
本発明の特に有利な実施形態では、検出装置を用いて、少なくとも1つのトルク及び/又は少なくとも1つの時間的なトルク変化及び/又は少なくとも1つの力及び/又は少なくとも1つの時間的な力変化を、圧縮比を調節するための作業量を特徴づける信号として検出することができる。調節装置は例えば回転可能なシャフトを有している。
圧縮比の調節又は調整のために、例えばトルクが、調節装置のアクチュエータから、詳細には電気モーターから調整シャフトへと伝達される。例えばトルクセンサ及び/又は抵抗線ひずみ計装置を含む検出装置を使用して、この伝達されたトルクを少なくとも数量的に実測トルクとして検出することができ、このトルクは、圧縮比の調節又は調整のために必要であり、アクチュエータによって生成することができる。続いて、この実測トルクは、基準信号としての基準トルクと比較することができる。実測トルクが少なくとも数量的に基準トルクより大きい場合、このことから、例えば摩耗の増加と、それによる調節装置の該当する状態、詳細には限界状態とを推察することができ、これを調査することができる。
【0023】
追加又は代替の方法として、力及び/又はトルクを伝達するその他の伝達要素でも、圧縮比を調節するために検出を実施することが可能である。その際、圧縮比を調節又は調整するために、調節装置のこの伝達要素が、少なくとも実質的に並進で移動可能にすることもできる。その場合に、検出装置を使用して、例えば実測信号として力及び/又は時間的な力変化を検出することができ、これは圧縮比の調節のために、ひいては調節要素の運動のために加えられる。
【0024】
このことから、調節装置の非常に正確かつ妥当性の高い測定、評価及び診断が可能になるため、現在の調節装置の状態について判断を行うことができる。その際、例えば調節装置の摩耗及び/又は摩擦及び/又は特に伝達要素間における遊びの存在を推察することができる。結果として、オンボード診断の故障又は故障メッセージ並びに調節装置の望ましくない機能不良を防止するために、早期に対応策を講じることができる。
【0025】
本発明のもう1つの有利な一実施形態では、調節装置が圧縮比を調節するために少なくとも1つの電気モーターを含んでいる。電気モーターは例えば回転運動及び/又は並進運動が可能な可動部品を含み、これを使用して圧縮比の調節を行うことができる。その際、圧縮比を調節するために使用される実測エネルギー量を特徴づける信号として、電気モーターの電力消費量が検出装置を使用して検出可能になっている。同様に、電力消費量の時間的経過を信号として検出することもできる。電力消費量に基づいて、とりわけ確実かつ少なくともほぼ直接的に、調節装置に現在、実際に存在している、又は生じている状態を推察することができる。さらに、このことから、特に簡単かつ費用のかからない方法で少なくとも実質的に追加のセンサーなしに、状態を検知することができる。
【0026】
有利には、圧縮比の調節に使用される基準エネルギー量を、モデルに基づいて演算された電気モーターの電力消費量に応じて、計算装置を使って演算できるようにすることができる。このことにより、実際に存在している現在の調節装置の状態を、特に正確かつ妥当性があるように調査することが可能になるため、内燃機関の望ましくない高い有害物質排出量及び望ましくない高燃費を防止することが可能となる。その際、電力消費量の時間的推移も、モデルに基づいて演算することができる。
【0027】
内燃機関の状態を調べるため、例えば検出された電力消費量と、計算された電力消費量とが比較される。前述のように、この比較によって、実測エネルギー量が基準エネルギー量とは異なっており、この差異があらかじめ設定可能な限界値を上回っているか又は下回っていることが明らかになった場合、調節装置の望ましくない状態又は調節装置の限界状態を推察することができる。結果として、調節装置の機能停止及び/又は機能への望ましくない悪影響を防止し、必要に応じてメンテナンス作業及び/又は修理作業によってこれらを予防するために、適切な対応策を講じることができる。
【0028】
本発明の第二の様態は、自動車、詳細には乗用車の内燃機関の少なくとも1つの圧縮比を可変調節するための調節装置を点検する方法に関する。この方法では、調節装置の状態が調査される。
【0029】
本発明による方法は、圧縮比の調節のために使用される実測エネルギー量を特徴づける信号が、少なくとも1つの検出装置を使用して検出されることを特徴としている。さらに、実測エネルギー量は検出された信号に基づいて、少なくとも1つの計算装置を使用して算出される。その上、圧縮比の調節のために使用される基準エネルギー量が、内燃機関の少なくとも1つの物理的特性を模倣したモデルに基づいて計算される。本発明の第一の様態の有利な実施形態は、本発明の第二の様態の有利な実施形態とみなされ、又その逆も同様である。
【0030】
本発明による方法により、調節装置のより優れた点検が可能になり、実際に存在する現在の調節装置の状態を、特に正確かつ妥当性があるように調査することが可能になる。本発明による方法を使用して、この調節装置を、特に圧縮比を調節する機能に関して、迅速かつ低コストで点検することが可能である。
【0031】
調節装置の望ましくない状態がつきとめられるか、又はそのような状態がつきとめられ、その状態から出発して、将来の望ましくない状態が近いうちに調節装置に生じると予想される状態がつきとめられた場合には、調節装置がその望ましくない状態に至ること、及び/又は調節装置もしくはこの調節装置の少なくとも1つの伝達要素が機能不良になるか、又は故障することを防止するために、早期に適切な対応策を講じることができる。
【0032】
この場合、実測エネルギー量が基準エネルギー量と比較され、その際、この比較に基づいて調節装置の状態が判定される。それによって、内燃機関の実際に存在する現在の状態を特に正確に判定することが可能になる。加えて、このことから、特に簡単かつ費用のかからない方法で、わずかな部品数だけで状態を判定することができる。このことにより、内燃機関の重量並びに費用が特に少なく保たれる。
【0033】
実測エネルギー量が少なくとも数量的に基準エネルギー量より少ないことが比較によって示されると、このことから、例えば、調節装置に割り当てられた少なくとも1つの、圧縮比を調節するための力伝達要素及び/又はトルク伝達要素の機能不良又は故障が特定される。すなわち、実測エネルギー量が基準エネルギー量より少ない場合、調節装置の少なくとも1つの該当する伝達要素の故障又は機能不良が存在している確率は極めて大きい。
【0034】
例えばこの比較結果は、燃焼室に対するピストンの運動によって圧縮比を調節するため、調節装置の電気モーターなどによって使用される、圧縮比調節のための調節力及び/又は調節トルクが、内燃機関の燃焼室、詳細にはシリンダ内に配置されているピストンにまったく伝達されないか、又は不完全にしか伝達されないことを示している。故障又は機能不良の特定により、結果として機能不良から生じる、不適切に高い燃費及び/又は不適切に高い有害物質排出量を伴う内燃機関の作動を防止するために、相応の対応策を講じることができる。
【0035】
実測エネルギー量と基準エネルギー量とを比較して、実測エネルギー量が少なくとも数量的に基準エネルギー量よりも大きいことが判明した場合、摩擦の増大及び/又は調節装置の機能への別の悪影響を推察することができる。例えば、調節装置の少なくとも1つの伝達要素が動かなくなっているか、又はその他の形でその機能に悪影響が及んでいる。この場合も、内燃機関の望ましくない状態、詳細には望ましくない作動状態を防止するために、該当する対応策をとりわけ早期に開始することができる。
【0036】
調節装置の現在の状態の特に正確かつ妥当な判定のため、本発明の実施形態では、検出された信号と、あらかじめ設定可能なエネルギー量を調節装置に供給する際の調節要素の基準運動を特徴づける基準信号とを比較することができるようになっている。この基準信号は、例えば、調節装置の記憶装置に保存されており、少なくとも実質的にまったく摩耗していないか、又はごくわずかにしか摩耗していない調節装置での調整要素の運動を特徴づけている。
【0037】
例えば、この基準信号は、適切な検出装置などを使用して検出することにより、調節装置又は内燃機関の少なくとも製造直後に判定される。代替又は追加の方法として、内燃機関又は調節装置の開発中に基準信号が算出されるようにすることができる。従って、この方法では、あらかじめ設定可能なエネルギー量を調節装置に供給した場合の調節装置の運動が、基準運動と比較される。この基準運動は、調節装置がまったく摩耗していないか、又はごくわずかしか摩耗していない場合に生じる。
【0038】
実測信号としての信号と基準信号とを比較した結果、実測信号が基準信号とは異なっていることが判明した場合は、調節装置の機能不良及び/又は少なくともほぼ最適かつ望ましい機能に悪影響を及ぼす状況が調節装置に存在すると推察することができる。例えば、この状況は、前述したような、調節装置の摩耗による望ましくない高い摩擦であり得る。ここから、本発明による方法を使用することにより、調節装置の状態及び状態の時間的な進展を極めて正確かつ妥当性があるように調査できることは明らかである。
【0039】
本発明の特に有利な実施形態では、あらかじめ設定可能なエネルギー量の調節装置への供給によって生じる、対応する回転軸を中心とした、調節要素の回転運動、詳細には回転角度及び/又は回転速度を特徴づける信号が、信号(実測信号)として検知される。この場合、特に正確かつ妥当性があるように、調節装置の状態を推察することができる。その回転の結果、調節要素が有する回転速度及び/又は回転角度が、基準運動による回転速度及び/又は回転角度より小さい場合、このことは、基準運動に比べ調節装置の摩擦が増大し、それによって摩耗が増加しているという指標となる。従って、調節装置のさらなる摩耗を防止するか、又は摩耗を小さな範囲にとどめるため、特に早期に適切な対応策を導入し、実行することができる。それによって、調節装置が望ましくない状態に達するのを防止することができる。
【0040】
本発明の有利な実施形態では、圧縮比を調節するための作業量を特徴づける、調節要素の数値又は値の時間的変化が、信号として検知される。この数値又はこの値により、調節装置の状態を特に正確かつ妥当性があるように判定することができる。このことから、信号検出時に起こり得る検出装置の測定誤差も同定され、必要に応じて補正することができる。すなわち、本実施形態では非常に高い品質の信号が実現可能である。
【0041】
本発明の第二の様態の特に有利な実施形態では、圧縮比を調節するための調節装置に割り当てられた電気モーターの電力消費量の時間的な推移が、信号として検出される。ここでは電力消費量が作業量の尺度として使用される。このような方法により、特に簡単かつ低コストで、費用と取付けスペースが必要な追加のセンサーを用いることなく、信号を検出することが可能となり、そのようにして調節装置の状態を推察することができる。
【0042】
従って、本発明の特に有利な実施形態では、圧縮比を調節するための作業量を特徴づけている数値又は値の時間的な推移が、調節装置の静摩擦状態を特徴づけている第1の範囲と、調節装置の滑り摩擦状態を特徴づけている少なくとも1つの第2の範囲とに分けられるようになっている。
【0043】
この調節装置は、例えば少なくとも1つの伝達要素を含み、これを使って圧縮比を調節するための力及び/又はトルクが伝達可能である。圧縮比を調節するため、この伝達要素は、例えば少なくとも1つの軸受を介して回転運動及び/又は並進運動が可能なように、内燃機関又は調節装置の構成部品、詳細にはハウジングに支持されている。この軸受は、その際、2つの軸受部品を含むことができ、これらの軸受部品は伝達要素の相対運動を可能にするために構成部品又はハウジングに連動して動くことができる。
【0044】
2つの軸受部品のような、相対的に互いに静止状態にある2つの要素は、時間的にこの静止状態に続いて連動して動き、特に、これらの部品が潤滑油のような潤滑剤で潤滑できる場合、部品(軸受部品)が静止状態から相対運動に移行するためには、まず静摩擦状態に打ち勝つ必要があることを特徴とする。軸受部品の間に静摩擦が存在する静摩擦状態に打ち勝つと、軸受部品が連動して動く際に滑り摩擦状態が生じ、この状態では滑り摩擦が存在する。静摩擦状態に打ち勝ち、滑り摩擦状態に移行するために、いわゆる始動抵抗及び/又は始動トルクを加えることが必要である。静摩擦は滑り摩擦よりも大きいため、始動抵抗及び/又は始動トルクは少なくとも数量的に、(これらの軸受部品が一旦この相対運動に互いに移行している際に)軸受部品を相互の相対運動に保つために加えるべき力及び/又はトルクよりも大きい。
【0045】
このことが当てはまるのは、特に、潤滑剤によって、詳細には潤滑油によって潤滑された軸受、特に滑り軸受が、軸受部品として該当する軸受部品を備えている場合である。同様に、このことは、例えば、特に調節装置の2つのスプロケットの歯部が互いにかみ合っている場合に当てはまる。
【0046】
静摩擦状態で使用される調節力及び/又は調節トルクに応じて、及び時間的に後から生じる滑り摩擦状態での調節力及び/又は調節トルクに応じて、調節装置の状態に関する特に正確かつ信頼できる判断を行うことができるが、特に、滑り摩擦状態では少なくとも実質的に一定の調節力及び/又は調節トルクが生じ、これらは例えば大部分が摩擦力及び/又は摩擦トルクから成り、調節装置の状態に依存している。すなわち、それによって、実際に存在している現在の調節装置の状態を、特に正確かつ妥当に判定することができる。
【0047】
本方法のもう1つの有利な実施形態では、実測エネルギー量が基準エネルギー量と比較され、その際、この比較を使用して調節装置の状態が判定される。これにより、実際に存在している現在の内燃機関の状態を特に正確に判定することが可能になる。加えて、このことから、特に簡単かつ費用のかからない方法で、わずかな部品数だけで状態を判定することができる。このことは、内燃機関の重量並びに費用を特に少なく保つ。
【0048】
実測エネルギー量が少なくとも数量的に基準エネルギー量より少ないことが比較によって示されると、このことから、例えば、調節装置に割り当てられている少なくとも1つの、圧縮比を調節するための力伝達要素及び/又はトルク伝達要素の機能不良又は故障が特定される。すなわち、実測エネルギー量が基準エネルギー量より少ない場合、このことは、調節装置の少なくとも1つの該当する伝達要素の故障又は機能不良に由来している確率が極めて大きい。
【0049】
例えばこの比較結果は、圧縮比を調節するための調節力及び/又は調節トルクが、調節装置の電気モーターなどによって使用され、燃焼室内での燃焼室に対するピストンの運動によって、圧縮比を調節するため、内燃機関の燃焼室、詳細にはシリンダ内に配置されているピストンにはまったく伝達されないか、又は不完全にしか伝達されないことを示している。故障又は機能不良の特定により、結果として機能不良から生じる、不適切に高い燃費及び/又は不適切に高い有害物質排出量を伴う内燃機関の作動を防止するために、相応の対応策を講じることができる。
【0050】
実測エネルギー量と基準エネルギー量とを比較して、実測エネルギー量が少なくとも数量的に基準エネルギー量よりも大きいことが判明した場合、摩擦の増大及び/又は調節装置の機能への別の悪影響を推察することができる。例えば、調節装置の少なくとも1つの伝達要素が動かなくなっているか、又はその他の形でその機能に悪影響が及んでいる。この場合も、内燃機関の望ましくない状態、詳細には望ましくない作動状態を防止するために、該当する対応策をとりわけ早期に開始することができる。
【0051】
本発明の有利な実施形態では、この方法は、時間的に、作動している内燃機関の作動解除が行なわれた後に実施される。この場合は、例えば、内燃機関を制御及び/又は調整するための制御装置のいわゆるアフターランモードに関係している。このアフターランモードでは、内燃機関は特定の状態を有しており、この状態では内燃機関の燃焼室内で燃焼工程は進行せず、従って燃焼工程の結果生じる力及び/又はトルクも調節装置に作用しない。このことから、検出される信号は別の作用に影響されることはない。従って、検出される信号は、その他の影響を受けることなく、少なくともほぼ直接的に調節装置の状態を特徴づけている。しかし、本発明による方法は、調節装置の状態を特に正確かつ妥当に判定するために、内燃機関のその他の特定の状態でも実施可能であることは明らかである。
【0052】
従って、本発明による方法は、特に、内燃機関が燃焼していない惰行作動状態にある場合に実施することができる。このことは、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室で燃焼行程が進行していないことを意味している。しかし、この惰行作動状態では、自動車の少なくとも1つの回転する車輪によって内燃機関が駆動される。このことからも、燃焼室の燃焼行程から発生し得る影響、特に力及び/又はトルクは防止することができる。
【0053】
本発明の特に有利な実施形態では、内燃機関が駆動されていない作動状態にある場合に、この方法が実施される。これは、燃焼室内で燃焼行程が進行していないということを意味している。さらに、内燃機関は、例えば自動車の動いている車輪によっても駆動されない。これは、燃焼室内の、詳細にはシリンダ内のピストンが燃焼室に対して動いていないということを意味している。この駆動されていない作動状態は、例えば停止された内燃機関の作動状態である。しかし、この場合、本発明による方法を実施できるようにするには、内燃機関に割り当てられた構成部品、例えば、内燃機関及び/又は調節装置を制御及び/又は調整するための少なくとも1つの調整装置が少なくとも実質的に作動状態にあればよい。
【0054】
内燃機関が駆動されていない作動状態で本発明による方法を実施することは、燃焼行程から結果的に生じる影響、特に力及び/又はトルクからも、燃焼室に対する燃焼室内のピストンの運動からも、状態の判定又は状態の検出を特徴づけている信号は悪影響を受けないで済むという利点を備えている。それによって、実際に存在する現在の調節装置の状態を、特に正確かつ妥当性があるように判定することができる。
【0055】
誤測定及び調節装置状態の誤った推論はこれによって防止される。従って、調節装置の望ましくない状態を回避又は相殺するための前述の対応策は、特に必要に応じて、なおかつこの対応策が実際に必要である場合のみ、つまり調節装置が実際に対応策を行うような状態を有している場合にのみ実施され得る。
【0056】
自動車が停止状態にあるときにこの方法が実施される場合、このことは、自動車の運動から結果として生じる、特に調節装置の状態検知への悪影響も防止できるという利点を備えている。自動車の運動から結果として生じる影響とは、例えば、自動車及び特に内燃機関及び調節装置の構成部品コンポーネント及び/又はそれに類したものの相対運動、振動などである。これによって、調節装置の状態の特に正確な判定が、すべてのそれに伴う利点と共に可能である。
【0057】
あらかじめ設定可能な少なくとも1つのトリガーイベントにおいて本方法を実行することは、特に規定された条件で本方法が実施される限り有利である。
【0058】
有利には、本方法は調節装置の耐用年数にわたって複数回実施される。少なくともほとんど常に同じトリガーイベントにおいて本方法が実施される場合、それによって本方法を実施する時には、少なくともほとんど常に、少なくともほとんど同一かつ規定された条件と状態判定への影響とが存在していることを確実にすることができる。少なくとも複数のイベント、つまり本発明による方法によって得られた状態は、妥当性及び信頼性があるように互いに比較することができる。それによって、例えば調節装置の状態の時間的推移を、特定の期間にわたって判定し、保存し、記録し、評価することができる。
【0059】
本方法の別の工程では、内燃機関が燃焼している作動状態にある時に、本方法が実施されるようになっている。これは、燃焼行程が、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室内で、詳細にはシリンダ内で進行していることを意味している。
【0060】
内燃機関が燃焼している作動状態において本発明による方法を実施することにより、本方法は、規定された、従って周知の条件において実施される。これは、規定された周知の影響、特に燃焼行程から結果として生じる力及び/又はトルクが、調節装置とその状態の判定に対して作用することを意味する。この影響は周知であり、本方法を何度も実施する際にも常に少なくともほとんど同じであるため、状態を判定するために検知された信号の品質及び妥当性に悪影響は及ばない。むしろ検知された信号に基づいて、特に正確に、高い品質で、調節装置の状態を推察することができる。
【0061】
本発明の特に有利な実施形態では、内燃機関があらかじめ設定可能な速度域において、とりわけ、あらかじめ設定可能な速度で駆動される場合に、本方法が実施される。このことから、本方法は、内燃機関の、規定された周知の作動状態において実施され、この作動状態では調節装置の状態の判定に影響する効果が知られている。それに対応して、状態の判定には、少なくとも実質的に悪影響が及ばないため、特に正確に、かつ妥当性があるように調節装置の状態を推察することができる。あらかじめ設定可能な速度域は、例えば暖機状態の内燃機関のアイドル速度である。
【0062】
本発明のもう1つの有利な実施形態では、内燃機関があらかじめ設定可能な負荷範囲で、特にあらかじめ設定可能な負荷ポイントで駆動される場合、本方法が実施される。それによって、内燃機関は、特に規定された周知の作動状態で駆動され、この作動状態では調節装置の状態の判定に影響する効果が少なくとも実質的に周知である。従って、調節装置の状態を、特に正確かつ妥当な判定をすることができる。内燃機関の特定の作動状態では効果が周知であるため、これらの効果により測定誤差又は誤った結論が導き出されることはない。
【0063】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は以下の、好ましい具体例の記述によって及び図を使用して開示される。上述の特徴及び特徴の組み合わせ、並びに以下において図の説明中に挙げられた及び/又は図に単独で示された特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ提示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも、又は単独でも、本発明の枠を離れることなく使用可能である。