特許第5793614号(P5793614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793614
(24)【登録日】2015年8月14日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】神経順応を防止する神経刺激装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/365 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   A61N1/365
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-511481(P2014-511481)
(86)(22)【出願日】2012年5月16日
(65)【公表番号】特表2014-516692(P2014-516692A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012038094
(87)【国際公開番号】WO2012158766
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年1月15日
(31)【優先権主張番号】61/486,573
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン ジェイソン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ターンズ デイヴィッド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルーブル スティーヴン ビー
(72)【発明者】
【氏名】ヒンカピー オルドニェス ファン ガブリエル
【審査官】 毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0135248(US,A1)
【文献】 特表2009−513248(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0023090(US,A1)
【文献】 特開2011−050627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込み可能な医療装置(110)であって、
治療セッション中、神経刺激を送出するように構成された刺激出力回路(240)と、 1つ又は幾つかの一次パラメータ及び1つ又は幾つかの二次パラメータを含む複数の刺激パラメータの値を記憶するように構成された記憶装置(244,344)と、を有し、前記一次パラメータの各々は、神経刺激の有効性のために選択された値を有し、前記二次パラメータの各々は、神経刺激の有効性を維持すると共に神経順応を防止するように調整可能な値を有し、前記1つ又は幾つかの一次パラメータは、投与パラメータを含み、前記投与パラメータは、治療セッションのための神経刺激の全体投与量を特定し、且つ、前記治療セッション中に送出される電気パルスの数を表し、前記調整可能な値は、前記1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットを含み、前記複数の値セットの各々は、前記1つ又は幾つかの二次パラメータのうちの1つに与えられる1つ又は幾つかの値のセットであり、
更に、前記複数の刺激パラメータを使用して、神経刺激の送出を制御するように構成された制御回路(242,342)を有し、前記制御回路は、前記複数の刺激パラメータのうちの1つ又は幾つかを調整するように構成されたパラメータ調整器(346)を含み、前記パラメータ調整器は、治療セッションの各セッションにわたって、前記1つ又は幾つかの二次パラメータのための記憶された複数の値セットから1つ又は幾つかの値セットのサブセットを選択するように構成された二次パラメータ調整器(358)を含むことにより、前記1つ又は幾つかの二次パラメータが治療セッションにわたってランダムに調整され、
更に、前記刺激出力回路、前記記憶装置及び前記制御回路を包囲する埋込み可能なハウジング(112)を有する、医療装置。
【請求項2】
前記二次パラメータ調整器(358)は、治療セッションの各セッションの記憶された複数の値セットから1つ又は幾つかの値セットのサブセットの各値セットをランダムに選択するように構成される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
更に、神経刺激による1つ又は幾つかの生理的機能の調節程度を指示する1つ又は幾つかの生理的信号を感知するように構成された感知回路(350)と、
神経刺激による1つ又は幾つかの生理的機能の調節程度の実質的な減少によって指示される神経順応を検出するように構成された神経順応検出器(352)と、を有し、
前記二次パラメータ調整器(358)は、神経順応の指示の検出に応答して、前記1つ又は幾つかの二次パラメータを調整するように構成される、請求項1又は2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記二次パラメータ調整器(358)は、前記1つ又は幾つかの二次パラメータのための記憶された複数の値セットから値セットを選択し、選択された値セットを含む各治療セッションのための値セットのシーケンスを発生させ、各治療セッション中、前記1つ又は幾つかの二次パラメータを値セットのシーケンスに従って動的に調整するように構成される、請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記二次パラメータ調整器(358)は、選択された値セットの順番を前記値セットのシーケンス内でランダムにする、請求項4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記制御回路(242,342)は、デューティサイクルを使用して神経刺激の送出を制御するように構成され、前記デューティサイクルは、神経刺激を送出するオン期間と、神経刺激を送出しないオフ期間を含み、且つ、前記1つ又は幾つかの一次パラメータのうちのパラメータである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項7】
前記二次パラメータ調整器(358)は、ランプの継続時間を調整するように構成され、前記ランプの継続時間の間、刺激強度は、前記ランプがオン期間の開始時に終了するとき、ゼロから、オン期間のために特定される値まで徐々に増大し、前記ランプがオン期間の終了時に開始するとき、オン期間のために特定される値からゼロまで徐々に減少し、前記ランプの継続時間は、前記1つ又は幾つかの二次パラメータのうちのパラメータである、請求項6に記載の医療装置。
【請求項8】
前記二次パラメータ調整器(358)は、オフ期間に対するオン期間の比であるデューティサイクルを変化させることなしに、オン期間とオフ期間を調整するように構成され、オン期間及びオフ期間は各々、前記1つ又は幾つかの二次パラメータのうちのパラメータである、請求項6に記載の医療装置。
【請求項9】
前記制御回路(242,342)は、複数の治療セッションのうちの1つの治療セッションのための全体投与量を使用して、神経刺激の送出を制御するように構成され、前記治療セッションは、複数の部分に分割されるセッション継続時間を有し、全体投与量は、前記1つ又は幾つかの一次パラメータのうちのパラメータであり、
前記二次パラメータ調整器は、前記複数の部分の各部分がオン部分であるかオフ部分であるかを特定するオンオフパラメータを調整するように構成され、前記オン部分は、前記複数の部分のうちの刺激が送出される部分であり、前記オフ部分は、前記複数の部分のうちの刺激が送出されない部分であり、前記オンオフパラメータは、前記1つ又は幾つかの二次パラメータのうちのパラメータである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項10】
更に、神経刺激による1つ又は幾つかの生理的機能の調節程度を指示する1つ又は幾つかの生理的信号を感知するように構成された感知回路(350)と、
前記1つ又は幾つかの生理的信号を使用して、神経刺激の負の影響の指示を検出するように構成された負の影響検出器(354)と、を有し、
前記二次パラメータ調整器(358)は、負の影響の指示の検出に応答して、前記1つ又は幾つかの二次パラメータを調整するように構成される、請求項1又は2に記載の医療装置。
【請求項11】
前記パラメータ調整器(346)は、更に、前記1つ又は幾つかの一次パラメータを調整するように構成された一次パラメータ調整器(356)を有する、請求項1又は2に記載の医療装置。
【請求項12】
前記一次パラメータ調整器(356)は、前記1つ又は幾つかの一次パラメータの各々の値を予め定められた値に設定するように構成される、請求項11に記載の医療装置。
【請求項13】
更に、神経刺激による1つ又は幾つかの生理的機能の調節程度を指示する1つ又は幾つかの生理的信号を感知するように構成された感知回路(350)を有し、
前記一次パラメータ調整器(356)は、前記1つ又は幾つかの生理的信号を使用して、前記1つ又は幾つかの一次パラメータの各々の値を調整するように構成される、請求項11に記載の医療装置。
【請求項14】
前記二次パラメータ調整器(358)は、前記1つ又は幾つかの一次パラメータに対する調整に応答して、前記1つ又は幾つかの二次パラメータを調整するように構成される、請求項11に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119(e)の下で、2011年5月16日出願のHamann他の米国仮出願番号61/486,573「神経順応を防止する神経刺激を行うための方法及び装置」の優先権を主張するものであり、その開示内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本明細書は、全体的には神経刺激に関し、詳細には刺激パラメータを変えて神経刺激の有効性を維持しながら神経順応を防止する神経刺激システムに関する。
【背景技術】
【0003】
神経刺激は、種々の生理的機能を調節するため及び種々の疾患を治療するために施されてきた。例えば、心臓血管機能は、自律神経系の一部の神経信号によって調節される。心臓は、交感神経及び副交感神経の支配を受ける。これらの神経の神経作用は、特に心拍数、血圧、及び心筋収縮能を調整することが知られている。従って、神経刺激による当該神経作用の調節は、当該心臓血管機能の調節を可能にする。一例は、ひどい心不全又は心筋梗塞の患者の心臓機能の調節である。迷走神経に印加される電気刺激は、心拍数及び心筋収縮能を低減して、心周期の収縮期を長期化し、心周期の拡張期を短期化することが知られている。この迷走神経刺激の作用により、心筋リモデリングをコントロールすることができる。心筋リモデリングのような心疾患治療に加えて、限定されるものではないが、鬱病、神経性食欲不振症/過食症、膵臓機能、てんかん、高血圧、炎症性疾患、及び糖尿病を含む疾患治療に効果のある迷走神経刺激も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、患者への神経刺激の有効性は、所定の期間にわたって患者に施された後には低下する。この神経順応又は耐性は、神経再組織化(可塑性)又は末端器官反応性の減衰に起因する場合がある。神経可塑性は、新しい経験に応答した神経の構造、機能、及び組織の変化である。末端器官の刺激に対する反応性は、受容体ダウンレギュレーション、受容体の感受性低下、セカンドメッセンジャー系、細胞情報送出カスケード等に起因して低下する場合がある。従って、特に神経刺激が長期療法として印加される場合に、経時的な神経刺激の有効性を維持するというニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
神経刺激システムは、1つ又は幾つかの一次パラメータ及び1つ又は幾つかの二次パラメータを用いて、神経刺激を患者に送出する。1つ又は幾つかの一次パラメータは、神経刺激の有効性を維持するように制御される。1つ又は幾つかの二次パラメータは、患者の神経順応が進行するのを防止するように調整される。種々の実施形態では、1つ又は幾つかの二次パラメータの値は、神経刺激の送出の間、刺激パルスの一定の又は周期的なパターンに起因する神経順応を防止するように変えられる。
【0006】
1つの実施形態では、埋込み可能な医療装置は、刺激出力回路、記憶装置、制御回路、並びに刺激出力回路、記憶装置、及び制御回路を封入する埋込み可能なハウジングを含む。刺激出力回路は、治療セッションの間、神経刺激を送出する。記憶装置は、1つ又は幾つかの一次パラメータ及び1つ又は幾つかの二次パラメータを含む複数の刺激パラメータの値を記憶する。1つ又は幾つかの一次パラメータの各々は、神経刺激の有効性のために選択された値を有する。1つ又は幾つかの二次パラメータの各々は、神経刺激の有効性を維持すると共に神経順応を防止するように調整可能な値を有する。この調整可能な値は、1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットを含む。値セットの各々は、1つ又は幾つかの二次パラメータの1つに与えられる1つ又は幾つかの値セットである。制御回路は、複数の刺激パラメータを用いて、神経刺激の送出を制御する。制御回路は、複数のパラメータの1つ又は幾つかのパラメータを調整するパラメータ調整器を含む。パラメータ調整器は、治療セッションの各セッションのための1つ又は幾つかの二次パラメータの記憶された複数の値セットから1つ又は幾つかの値セットのサブセットを選択する二次パラメータ調整器を含み、1つ又は幾つかの二次パラメータは、治療セッションにわたってランダムに調整される調節される。
【0007】
1つの実施形態では、埋込み可能な医療装置を作動させる方法を提供する。複数の刺激パラメータの値を受取って記憶する。複数の刺激パラメータは、1つ又は幾つかの一次パラメータ及び1つ又は幾つかの二次パラメータを含む。1つ又は幾つかの一次パラメータの各々は、神経刺激の有効性を得るように選択された値を有する。1つ又は幾つかの二次パラメータの各々は、神経刺激の有効性を維持すると共に神経順応を防止するように調整可能な値を有する。この調整可能な値は、1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットを含む。値セットの各々は、1つ又は幾つかの二次パラメータの1つに与えられる1つ又は幾つかの値セットである。治療セッションの間、神経刺激を送出し、複数の刺激パラメータを用いて、送出を制御する。これは、治療セッションの各セッションの1つ又は幾つかの二次パラメータの記憶された複数の値セットから1つ又は幾つかの値セットのサブセットを選択すること、及び、治療セッションの間、1つ又は幾つかの二次パラメータを調整することを含む。サブセットを、治療セッションにわたって1つ又は幾つかの二次パラメータをランダムに調整することを可能にするように選択する。
【0008】
この発明の概要は、本出願の教示の一部の概観であり、本主題の排他的又は網羅的な取扱いであるように考えられるものではない。本主題に関する更なる詳細は、詳細説明及び特許請求の範囲に見出される。本発明の他の態様は、以下の詳細説明を読んで理解され、その一部を形成する図面を見ると当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びそれらの法律上の均等物によって定められる。
【0009】
全体的に、図面は、全体的に例示的に本明細書で説明する種々の実施形態を示す。図面は例示目的であり縮尺は通りではない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、神経刺激システム及び神経刺激システムが使用される環境の一部分の概略図である。
図2図2は、神経刺激回路の実施形態を示すブロックダイヤグラムである。
図3図3は、神経刺激回路の別の実施形態を示すブロックダイヤグラムである。
図4図4は、神経刺激システムの実施形態を示すブロックダイヤグラムである。
図5図5は、神経刺激のための方法の実施形態を示すフローチャートである。
図6図6は、神経順応を防止すると共に、特定のデューティサイクルのための神経刺激を制御する方法の実施形態を示すフローチャートである。
図7図7は、神経順応を防止すると共に、特定のデューティサイクルのための神経刺激を制御する方法の別の実施形態を示すフローチャートである。
図8図8は、神経順応を防止すると共に、特定された全体投与量のための神経刺激を制御する寳保の実施形態を示すフローチャートである。
図9図9は、神経順応に応答してパラメータを調整する方法の実施形態を示すフローチャートである。
図10図10は、負の影響の検出に応答してパラメータを調整する方法の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を構成して、本発明を実施できる特定の実施形態を例示的に示す添付の図面が参照される。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に説明されており、各実施形態を組み合わせること、他の実施形態を利用すること、及び本発明の精神及び範疇から逸脱することなく構造的、論理的、及び電気的な変更を行うことができることを理解されたい。以下の詳細な説明は実施例を提供し、本発明の範囲は請求項及びその法律上の均等物で定義される。
【0012】
本開示の「実施形態」、「1つの実施形態」、又は「種々の実施形態」は同じ実施形態である必要はなく、このような参照は1つ以上の実施形態を意図する。
【0013】
本明細書は、患者に神経刺激を送出して、神経刺激の有効性が神経順応によって実質的に弱められることを防止するように刺激パラメータを制御するシステム及び方法を説明する。神経順応は、実質的に一定のパルス周波数及び実質的に一定のデューティサイクルで連続的に又は周期的に送出される実質的に同じ電気刺激パルスといった、一定の又は周期的な刺激パターンの神経刺激に応じて進行する傾向にある。本システムは、1つ又は幾つかの他のパラメータを制御することで神経刺激の有効性を維持しながら、神経刺激の送出時に1つ又は幾つかの刺激パラメータの値を変えることで、このような一定の又は周期的なパターンを回避する。
【0014】
本明細書に説明するこの主題において、神経順応の「防止」は、刺激パルスの一定の又は周期的なパターンを回避することで検出される前に神経順応を回避又は軽減する試行、及び神経順応が発生するとその検出後に神経順応を軽減する試行を含む。種々の実施形態では、神経順応による障害で治療効能に問題が起きた場合、この防止は神経刺激治療の間の任意の時間に施すことができる。
【0015】
図1は、神経刺激システム100及びかかるシステム100が使用される環境の一部分を示す。図1は、神経102の一部分と、神経上に配置された刺激電極136を示し、刺激電極136により、神経102への神経刺激の送出を可能にする。種々の実施形態では、刺激電極136は、神経102の上に配置されてもよいし、神経刺激を神経102に送出するのに適した箇所に配置されてもよい。1つの実施形態では、神経102は、迷走神経及び頸動脈洞枝等の自律神経系の一部を表す。別の実施形態では、神経102は、脊髄又は脊髄神経の一部を表す。神経刺激治療は、制御された刺激を神経102に送出して、神経102によって制御される1つ又は幾つかの生理的機能を調節することによって施される。種々の実施形態では、システム100は、低駆出率の心不全、中間駆出率の心不全、心筋梗塞後、治療抵抗性高血圧、狭心症、不整脈、無呼吸、糖尿病、及び炎症等の異常状態を治療するのに使用される。種々の実施形態では、システム100は、神経刺激を患者の任意の神経に送出して、患者が神経順応を促進させることを防止すると共に、患者の生理的機能を調節するのに使用される。
【0016】
図示の実施形態では、システム100は、埋込み可能なリード130を介して電極136に電気的に結合された埋込み可能な医療装置110を含む。埋込み可能な医療装置110は、埋込み可能なハウジング112に包囲された神経刺激回路120と、埋込み可能なハウジング112に取付けられ且つ神経刺激回路120とリード130との間の接続を行うヘッダー114を含む。1つの実施形態では、埋込み可能な医療装置110は、神経刺激装置である。他の実施形態では、神経刺激回路120含む神経刺激装置に加えて、埋込み可能な医療装置110は、心臓ペースメーカー、心臓除細動器/除細動器、薬物送出装置、生物学的治療装置、及び任意その他の監視又は治療装置のうちの1つ又は幾つかを含む。これらの装置は、互いに相互作用する。例えば、神経作用を神経刺激回路120によって感知して、心臓刺激の必要性を指示し及び/又は心臓ペースメーカーからのペーシングパルスの送出のタイミングを制御する。同様に、心臓活動を心臓ペースメーカーよって感知して、神経刺激回路120からの神経刺激パルスの送出のタイミングを制御し、例えば、神経刺激を心周期又は呼吸サイクルに対して同期させる。リード130は、近位端132と、遠位端133と、近位端132と遠位端133との間を接続する細長い本体131を含む。近位端132は、埋込み可能な医療装置110に接続されるように構成される。遠位端133は、刺激電極136を含むか、そうでなければそれに接続される。種々のその他の実施形態では、刺激電極136は、神経刺激回路120から送出された電気刺激による神経102の活性化を可能にする任意の形態の電極を含む。
【0017】
神経刺激回路120は、神経刺激を、リード130を介して神経102に送出し、複数の刺激パラメータを使用して、神経刺激の送出を制御する。複数の刺激パラメータは、1つ又は幾つかのパラメータを含み、かかるパラメータの各々は、神経刺激の有効性を維持すると共に、神経順応を防止するために調整可能な値を有する。神経刺激を電気パルスとして送出するときのかかる1つ又は幾つかのパラメータの例は、デューティサイクルのオン部分の長さ、デューティサイクルのオフ部分の長さ、パルス振幅、パルス幅、周波数、パルス波形、及びデューティサイクルのオン部分の包絡線(振幅、幅等)を含む。神経刺激回路120の種々の実施形態を、図2及び3を参照して以下に説明する。
【0018】
システム100はまた、外部システム116を含み、外部システム116は、遠隔通信リンク118を介して埋込み可能な医療装置110と通信する。外部システム116は、医師又はその他の看護人又は患者等の使用者が埋込み可能な医療装置110の作動を制御し且つ患者及び/又は埋込み可能な医療装置110の状態を監視することを可能にする。
【0019】
図2は、神経刺激回路220の実施形態を示すブロックダイヤグラムである。神経刺激回路220は、神経刺激回路120の実施形態を表し、刺激出力回路240と、制御回路242と、記憶装置244を含む。刺激出力回路240は、治療セッション中、神経刺激を患者に送出する。1つの実施形態では、神経刺激の送出は、電気パルスの送出を含む。記憶装置244は、1つ又は複数の複数の刺激パラメータの値を記憶し、複数の刺激パラメータは、1つ又は幾つかの一次パラメータと、1つ又は幾つかの二次パラメータを含む。1つ又は幾つかの一次パラメータの各々は、神経刺激の有効性を維持するために選択された値を有する。1つ又は幾つかの二次パラメータの各々は、神経刺激の有効性を実質的に妥協することなしに神経順応を防止するように調整可能な値を有する。複数の刺激パラメータの記憶されている値は、1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットを含む。複数の値セットの各々は、1つ又は幾つかの値のセットであり、1つ又は幾つかの値の各々は、1つ又は幾つかの二次パラメータの1つに与えられる。制御回路242は、複数の刺激パラメータを使用して神経刺激の送出を制御し、パラメータ調整器246を含む。パラメータ調整器246は、複数のパラメータのうちの1つ又は幾つかのパラメータを調整する。種々の実施形態では、パラメータ調整器246は、複数の治療セッションの各セッションのための1つ又は幾つかの二次パラメータの記憶されている複数の値セットから1つ又は幾つかの値セットの異なるサブセットを選択する。選択は、種々のルールに従って行われ、かかるルールは、患者が神経刺激の送出に応答して神経順応を促進させることを防止するように決定される。
【0020】
1つの実施形態では、1つ又は幾つかの二次パラメータが治療セッションにわたってランダムに又は疑似ランダムに調整されるように、パラメータ調整器246は、複数の治療セッションの各セッションのための1つ又は幾つかの二次パラメータの記憶されている複数の値セットから1つ又は幾つかの値セットのサブセットを選択する。このことは、1つ又は幾つかの二次パラメータの値セットを記憶装置244にランダムな又は疑似ランダムな順番で記憶することによって達成されてもよいし、記憶装置244に記憶されている1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットから値セットをランダムに又は疑似ランダムに選択するようにパラメータ調整器246を構成することによって達成されてもよい。種々の実施形態のために、疑似ランダムは、例えば、本当にランダムであるわけではないが、神経順応の防止における潜在的な効果によってランダムに近似する仕方で配列された値の順番をいう。種々の実施形態では、本明細書で述べるように、ランダムは、本当のランダムを含んでいてもよいし、疑似ランダムを含んでいてもよい。
【0021】
種々の実施形態では、1つ又は幾つかの一次パラメータの各々は、有効性のために決定された及び/又は調整された値を有するパラメータである。1つの実施形態では、1つ又は幾つかの一次パラメータの各パラメータに、予め決定された値が与えられる。1つの実施形態では、パラメータ調整器246は、神経刺激の有効性を維持するために必要なときに1つ又は幾つかの一次パラメータの各パラメータを調整する。1つ又は幾つかの一次パラメータの1つ例は、治療セッションにわたって投与される神経刺激の全体投与量の測定である1つ又は幾つかのパラメータを含む。
【0022】
種々の実施形態では、1つ又は幾つかの二次パラメータは各々、神経刺激の有効性に実質的に影響を及ぼすことなしに実質的に調整される値を有するパラメータである。1つ又は幾つかの二次パラメータの値セットは各々、神経刺激の有効性を維持するように決定され、互いに実質的に異なっている。1つ又は幾つかの二次パラメータの1つの例は、パルス振幅及びパルス幅を含む。値セットは各々、予め定められた強度−継続時間曲線に基づいて選択されたパルス振幅値及びパルス幅値を含む。
【0023】
種々の実施形態では、本明細書で述べる種々の要素を含むシステム100の回路は、ハードウエアとソフトウエア(ファイヤーウォールを含む)の組合せを使用して実装される。種々の実施形態では、本明細書で述べる種々の要素を含む制御回路242は、1つ又は幾つかの特定の機能を実行するように構成された適用例に特有の回路又はかかる機能を実施するようにプログラムされた汎用目的の回路を使用して実装される。かかる汎用目的の回路は、限定するわけではないが、マイクロプロセッサ又はその一部分、マイクロコントローラ又はその一部分、及びプログリム可能な論理回路又はその一部分を含む。
【0024】
図3は、神経刺激回路320の実施形態を示すブロックダイヤグラムである。神経刺激回路320は、神経刺激回路120の別の実施形態を表し、刺激出力回路240と、感知回路350と、順応検出器352と、負の影響検出器354と、制御回路342と、記憶装置344を含む。
【0025】
感知回路350は、刺激出力回路240からの神経刺激の送出の1つ又は幾つかの効果を指示する1つ又は幾つかの生理的信号を感知する。1つの実施形態では、1つ又は幾つかの生理的信号のうちの少なくとも1つは、神経刺激による1つ又は幾つかの生理的機能の調節程度を指示する。かかる調節は、神経刺激を適用する1つ又は幾つかの神経、及び、1つ又は幾つかの組織を刺激する又はその他の制御を行う1つ又は幾つかの神経の応答によって引き起こされる。
【0026】
順応検出器352は、1つ又は幾つかの生理的信号を使用して神経順応の指示を検出する。1つの実施形態では、神経順応の指示は、神経刺激による1つ又は幾つかの生理的機能の調節程度の実質的な減少を含む。別の実施形態では、神経順応の指示は、パーセント又は絶対値としての刺激閾値の実質的な増大を含み、刺激閾値は、神経刺激に応答した1つ又は幾つかの生理的機能の検出可能な調節を引き起こす神経刺激の最小強度である。
【0027】
負の影響検出器354は、1つ又は幾つかの生理的信号を使用して、神経刺激の負の影響の指示を検出する。種々の実施形態では、負の影響は、神経刺激の意図しない効果である。1つの実施形態では、負の影響は、患者に有害であると考えられる意図しない効果である。
【0028】
記憶装置344は、記憶装置244の実施形態を表し、1つ又は幾つかの一次パラメータ及び1つ又は幾つかの二次パラメータを含む複数の刺激パラメータの値を記憶する。1つの実施形態では、1つ又は幾つかの二次パラメータの値セットが、1つ又は幾つかの二次パラメータの値セットの1つ又は幾つかのシーケンスとして記憶装置344に記憶される。1つ又は幾つかのシーケンスは各々、治療セッションのために発生させられる。1つの実施形態では、多数の治療セッションに使用される複数のかかるシーケンスが記憶される。治療セッションは、患者が神経刺激の連続的な又は間欠的な送出によって治療されるプログラムされた期間を含む。神経刺激の間欠的な送出は、神経刺激を送出する期間及び神経刺激を送出しない期間を含むようにプログラムされる。1つの実施形態では、治療セッションは、プログラムされたスケジュールに従ってタイミングがとられ、例えば、実質的に周期的に開始される。
【0029】
制御回路342は、制御回路242の実施形態を表し、複数の刺激パラメータを使用して神経刺激の送出を制御する。制御回路342は、パラメータ調整器246の実施形態を表すパラメータ調整器346を含み、複数の刺激パラメータのうちの1つ又は幾つかのパラメータを調整する。パラメータ調整器346は、一次パラメータ調整器356及び二次パラメータ調整器358を含む。
【0030】
一次パラメータ調整器356は、1つ又は幾つかの一次パラメータを調整する。1つの実施形態では、一次パラメータ調整器356は、1つ又は幾つかの一次パラメータの各々の値を予め定められた値に設定し、かかる定められた値は、例えば、外部システム116及び遠隔通信リンク118を介して使用者から受取った値である。1つの実施形態では、一次パラメータ調整器356は、1つ又は幾つかの生理的信号を使用して、1つ又は幾つかの一次パラメータの各々の値を調整し、例えば、神経刺激による1つ又は幾つかの生理的機能の特定された調節程度を、1つ又は幾つかの生理的信号によって指示されたように維持する。
【0031】
二次パラメータ調整器358は、1つ又は幾つかの二次パラメータを調整する。種々の実施形態では、二次パラメータ調整器358は、各治療セッションのために、記憶装置344に記憶されている1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットから1つ又は幾つかの値のサブセットを選択する。1つの実施形態では、二次パラメータ調整器358は、各治療セッションのために、記憶されている複数の値セットから1つ又は幾つかの値セットの各値セットをランダムに選択する。別の実施形態では、二次パラメータ調整器358は、複数の値セットをすべて予め定められた順番で循環させることによって、例えば、記憶装置344に記憶されている複数の値セットすべてを円形リストのように循環させることによって、1つ又は幾つかの値セットの各値セットを選択する。二次パラメータ調整器358は、治療セッションのための選択された1つ又は幾つかの値セットを使用して、1つ又は幾つかの二次パラメータを調整する。1つの実施形態では、二次パラメータ調整器358は、順応検出器352による神経順応の指示の検出に応答して、1つ又は幾つかの二次パラメータを調整する。1つの実施形態では、二次パラメータ調整器358は、負の影響検出器354による神経刺激の負の影響の指示の検出に応答して、1つ又は幾つかの二次パラメータを調整する。1つの実施形態では、二次パラメータ調整器358は、一次パラメータ調整器356による1つ又は幾つかの一次パラメータに対する調整に応答して、1つ又は幾つかの二次パラメータを調整する。
【0032】
種々の実施形態では、二次パラメータ調整器358は、各治療セッションの前、記憶装置344に記憶されている1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットから値セットを選択し、1つ又は幾つかの二次パラメータを、治療セッション全体のために選択された値セットに設定する。1つの実施形態では、二次パラメータ調整器358は、治療セッションの前、記憶装置344に記憶されている複数の値セットから値セットをランダムに選択する。別の実施形態では、二次パラメータ調整器358は、治療セッションの前、複数の値セットすべてを予め定められた順番で循環させることによって、例えば、記憶装置344に記憶されている複数の値セットすべてを円形リストとして循環させることによって、値セットを選択する。
【0033】
種々の実施形態では、二次パラメータ調整器358は、記憶装置344に記憶されている1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットから値セットを選択し、各治療セッションのための値セットのシーケンスを発生させる。値セットのシーケンスは、治療セッションの間、選択された値セットの各々を使用するように特定されたタイミングを有する選択されたセットを含む。1つの実施形態では、二次パラメータ調整器358は、記憶装置344に記憶されている複数の値セットから値セットをランダムに選択する。別の実施形態では、二次パラメータ調整器358は、複数の値セットすべてを予め定められた順番で循環させることによって、例えば、記憶装置344に記憶されている複数の値セットすべてを円形リストのように循環させることによって、値セットを選択する。別の実施形態では、二次パラメータ調整器358は、値セットのシーケンス内の選択された値セットの順番をランダムにする。二次パラメータ調整器358は、治療セッションの間、値セットのシーケンスに従って、1つ又は幾つかの二次パラメータを動的に調整する。
【0034】
種々の実施形態では、1つ又は幾つかの二次パラメータの値セットの1つ又は幾つかのあらかじめ定められたシーケンスは、記憶装置344に記憶され、二次パラメータ調整器358は、記憶されている1つ又は幾つかのあらかじめ定められたシーケンスからシーケンスを選択する。1つの実施形態では、二次パラメータ調整器358は、記憶されている複数のシーケンスからシーケンスをランダムに選択する。別の実施形態では、二次パラメータ調整器358は、複数のシーケンスすべてを予め定められた順番で循環させることによって、例えば、記憶装置344に記憶されている複数のシーケンスすべてを円形リストのように循環させることによって、シーケンスを選択する。二次パラメータ調整器358は、治療セッションの間、選択されたシーケンスを使用して、1つ又は幾つかの二次パラメータを動的に調整する。
【0035】
図4は、神経刺激システム400の実施形態を示すブロックダイヤグラムである。システム400は、システム100の実施形態を表し、1つ又は幾つかのリード430と、埋込み可能な医療装置410と、外部システム416を含み、外部システム416は、遠隔通信リンク118を介して埋込み可能な医療装置410と通信する。
【0036】
リード430は、システム400と神経刺激治療を受け入れる患者との間の治療インタフェースを構成する。種々の実施形態では、リード430は、神経刺激を患者に送出するのに適した1つ又は幾つかのリードを含み、リード130は、1つの例を示す。
【0037】
埋込み可能な医療装置410は、埋込み可能な医療装置110の実施形態を表し、神経刺激回路120と、埋込み式遠隔通信回路460を含む。埋込み式遠隔通信回路460は、埋込み可能な医療装置410が遠隔通信リンク118を介して外部システム416と通信することを可能にする。
【0038】
外部システム416は、外部システム116の実施形態を表し、外部遠隔通信回路462と、ユーザインタフェース464と、パラメータ発生器466を含む。外部遠隔通信回路462は、外部システム416が遠隔通信リンク118を介して埋込み可能な医療装置410と通信することを可能にする。ユーザインタフェース464は、使用者がシステム400の作動を制御すること及びシステム400から情報を取得することを可能にする。パラメータ発生器466は、複数の刺激パラメータの値を発生させ、かかる値は、埋込み可能な医療装置410に送信され、記憶装置244又は344に記憶される。図示の実施形態では、パラメータ発生器466は、値発生器468と、シーケンス発生器470を含む。
【0039】
値発生器468は、1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットを発生させる。1つの実施形態では、値発生器468は、予め定められた値セットを使用者からユーザインタフェース464又はデータインタフェースを介して受取る。別の実施形態では、値発生器468は、予め定められた基準にしたがって、値セットを発生させる。例えば、値発生器468は、1つ又は幾つかの一次パラメータの1つ又は幾つかの値を受取り、1つ又は幾つかの一次パラメータの受取った1つ又は幾つかの値及び予め定められた基準を使用して、値セットを発生させる。予め定められた基準は、値セットの各々が1つ又は幾つかの一次パラメータを、受取った1つ又は幾つかの値にほぼ維持し且つ1つ又は幾つかの値の各々を1つ又は幾つかの二次パラメータの特定された値範囲内に含むことを必要とする。1つの実施形態では、1つ又は幾つかの二次パラメータの各パラメータの値は、特定の増分で与えられ又は発生され、神経刺激の有効性が試験される。1つの実施形態では、神経刺激の有効性は、1つ又は幾つかの二次パラメータの異なる値セットを使用して、神経刺激に対する喉頭部応答を指示する筋電図(EMG)又は加速度計の信号を感知することによって試験される。他の実施形態では、神経刺激の有効性は、1つ又は幾つかの二次パラメータの異なる値セットを使用して神経刺激を送出したときの神経刺激の1つ又は幾つかの意図しない効果を監視することによって試験される。
【0040】
シーケンス発生器470は、1つ又は幾つかの二次パラメータの値セットの1つ又は幾つかのシーケンスを発生させ、必要なとき、シーケンスは、埋込み可能な医療装置410に記憶される。1つの実施形態では、シーケンス発生器470は、値発生器468から発生させた1つ又は幾つかの二次パラメータの値セットから値セットを選択し、選択された値セットの順番を決定する。種々の実施形態では、1つ又は幾つかの二次パラメータの値セットの1つ又は幾つかのシーケンスの各々は、実質的に周期的に繰返す同じ値セットを含まず、ランダムな順番で選択された値セット、疑似ランダムな順番で選択された値セット、又は、その他の実質的に非周期的な順番で選択された値セットを含む。
【0041】
図5は、神経刺激のための方法500の実施形態を示すフローチャートである。方法500は、システム100等のシステムを使用して神経の送出を行い、本明細書で述べるように、神経刺激の有効性を維持すると共に、神経順応を防止するための種々の実施形態を含む。
【0042】
510において、1つ又は幾つかの一次パラメータを、神経刺激の有効性を維持するために特定する。520において、1つ又は幾つかの一次パラメータの各パラメータの値又は値範囲を決定する。かかる値又は値範囲を、神経刺激の送出に対する患者の応答を監視することによって、実験的に決定してもよく、必要であれば治療セッション中又は治療セッションと治療セッションの間において、神経刺激の有効性を維持するように調整してもよい。
【0043】
530において、1つ又は幾つかの二次パラメータを、神経刺激の有効性に実質的に影響を及ぼすことなしに神経順応を防止するために特定する。540において、1つ又は幾つかの二次パラメータの各パラメータの値範囲を決定する。値範囲は、その範囲内でパラメータが変化したときに神経刺激の有効性が影響を実質的に受けないことを確認するために、実験的に試験される。
【0044】
550において、1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットを発生させる。かかる値セットは各々、1つ又は幾つかの二次パラメータの各パラメータの値を含み、実質的に互いに異なる。1つの実施形態では、発生させた複数の値セットから値セットを選択することによって、値セットの1つ又は幾つかのシーケンスを発生させる。560において、1つ又は幾つかの一次パラメータの値及び1つ又は幾つかの二次パラメータの値を、神経刺激回路120等の神経刺激回路内に記憶し、かかる神経刺激回路は、本明細書で述べる種々の実施形態を含む。
【0045】
570において、1つ又は幾つかの一次パラメータの値及び1つ又は幾つかの二次パラメータの値を、治療セッションのための神経刺激回路によって選択する。1つの実施形態では、このことは、1つ又は幾つかの二次パラメータの複数の値セットから1つ又は幾つかの値セットを選択することを含む。別の実施形態では、このことは、値セットの1つ又は幾つかのシーケンスから値セットのシーケンスを選択することを含む。
【0046】
580において、治療セッションの間、1つ又は幾つかの一次パラメータの選択された値及び1つ又は幾つかの二次パラメータの選択された値を使用して、神経刺激の送出を制御する。590において、治療セッションの間、神経刺激を神経刺激回路から送出する。
【0047】
図6は、神経順応を防止すると共に、特定されたデューティサイクルのための神経刺激を制御する方法600の実施形態を示すフローチャートである。1つの実施形態では、方法600は、システム100を使用して行われ、本明細書で述べる種々の実施形態を含む。方法600では、治療セッション中、神経刺激を特定されたデューティサイクルで送出する。各治療セッションは、複数の全期間を含み、全期間の各々は、オン期間とオフ期間の合計である。オン期間は、神経刺激を送出する期間である。オフ期間は、神経刺激を送出しない期間である。デューティサイクルは、全期間に対するオン期間の比であり、パーセントで表される。デューティサイクルはまた、オフ期間に対するオン期間の比であるデューティサイクル比として表されてもよい。神経刺激を電気パルスとして送出し、電気パルスが、治療セッションの特定された継続時間と特定されたパルス周波数を有するとき、デューティサイクルは、治療セッションの間に送出される電気パルスの数によって測定される治療セッションのための神経刺激の投与量を表す投与パラメータである。
【0048】
制限された範囲内においてオフ期間からオン期間への移行及び/又はオン期間からオフ期間への移行のためのランプが導入されるとき、ランプ継続時間が神経刺激の有効性に実質的に影響を及ぼさないことが観察される。ランプ継続時間は、神経刺激の強度がゼロからオン期間のために特定された値まで徐々に増加する期間、又は、神経刺激の強度がオン期間のために特定された値からゼロまで徐々に減少する期間である。1つの実施形態では、ランプは、オン期間の開始時に終了し、すなわち、オン期間の終了時に開始する。したがって、方法600において、1つ又は幾つかの一次パラメータは、デューティサイクル(又は、等しく、デューティサイクル比)を含む。1つ又は幾つかの二次パラメータは、ランプ継続時間を含む。種々の実施形態では、神経刺激の強度は、ランプ継続時間中、特定された変化分でステップ的に増大し又は減少する。
【0049】
610において、神経刺激の有効性を維持する神経刺激のデューティサイクルのための値を決定する。620において、治療セッションのためのランプ継続時間の値のシーケンスを決定する。ランプ継続時間の値は、制限された範囲内にあり、かかる範囲内において、ランプ継続時間は、神経刺激の有効性に実質的に影響を及ぼさない。種々の実施形態では、ランプ継続時間の値のシーケンスは、ランダムな順番、生地ランダムな順番、又は、その他の実質的に非周期的な順番で配列された値を含む。630において、治療セッションを開始する。640において、ランプ継続時間の値のシーケンスの第1の値を使用して、神経刺激を送出する。650において、神経刺激の特定された全体投与量が送出されていなければ、660において、ランプ継続時間の値のシーケンスの次の値を使用して、神経刺激を送出し続ける。650において、神経刺激の特定された全体投与量が送出されていれば、670において、治療セッションを終了する。
【0050】
図7は、神経順応を防止すると共に、特定されたデューティサイクルのための神経刺激を制御する方法700の実施形態を示すフローチャートである。1つの実施形態では、方法700は、システム100を使用して行われ、本明細書で述べる種々の実施形態を含む。方法700では、治療セッション中、神経刺激はまた、パラメータを有する特定されたデューティサイクルで送出され、かかるパラメータは、方法600のところで説明したように、全期間、オン期間、オフ期間、及びデューティサイクル(すなわち、デューティサイクル比)を含む。
【0051】
制限された範囲内において、特定されたデューティサイクルが維持されている限り、全期間の値が神経刺激の有効性に実質的に影響を及ぼさないことが観察される。換言すれば、オン期間とオフ期間の値は、全期間に対するオン期間の比(デューティサイクル)又はオフ期間に対するオン期間の比(デューティサイクル比)が維持される限り、神経刺激の有効性に実質的に影響を及ぼさない。したがって、方法700において、1つ又は幾つかの一次パラメータは、デューティサイクル(又は、それと等しくデューティサイクル比)を含む。1つ又は幾つかの二次パラメータは、オン期間及びオフ期間(又は、それと等しく、オン期間、オフ期間及び全期間のうちの任意の2つ)を含む。
【0052】
710において、神経刺激の有効性を維持するための神経刺激のデューティサイクルのための値を決定する。720において、治療セッションのためのオン期間及びオフ期間の値セットのシーケンスを決定する。値セットは、限定された範囲内にあり、かかる範囲内において、デューティサイクルが維持される限り、オン期間及びオフ期間は、神経刺激の有効性に実質的に影響を及ぼさない。種々の実施形態では、オン期間及びオフ期間のための値セットのシーケンスは、ランダムな順番、疑似ランダムな順番、又はその他の実質的に非周期的な順番で配列された値セットを含む。730において、治療セッションを開始する。740において、オン期間及びオフ期間のための値セットのシーケンスの第1の値を使用して、神経刺激を送出する。750において、神経刺激の特定された全体投与量が送出されていなければ、760において、オン期間及びオフ期間の値セットのシーケンスの次の値を使用して、神経刺激を送出し続ける。750において、神経刺激の特定された全体投与量を送出したら、770において、治療セッションを終了する。
【0053】
図8は、神経順応を防止すると共に、特定された全体投与量のための神経刺激を制御する方法800の実施形態を示すフローチャートである。1つの実施形態では、方法800は、システム100を使用して行われ、本明細書で述べる種々の実施形態を含む。方法800では、治療セッション毎に特定された投与量のための神経刺激を送出する。治療セッションは、特定された投与量を間欠的に投与することを可能にするのに十分に長いセッション継続時間を有する。1つの実施形態では、特定された投与量は、継続時間として表される。神経刺激を、治療セッションの特定の継続時間及び特定のパルス周波数を有する電気パルスとして送出するとき、継続時間としての特定された投与量は、治療セッションのための神経刺激の投与量を表す投与パラメータであり、かかる投与量は、治療セッションの間に送出される電気パルスの数によって測定される。
【0054】
神経刺激を間欠的に送出するとき、セッション継続時間は、複数のオン部分とオフ部分に分割される。オン部分は、神経刺激を送出する期間の一部分である。オフ部分は、神経刺激を送出しない期間の一部分である。限定された範囲内において、特定された投与量がオン部分の間に送出される限り、オン部分とオフ部分の配分は、神経刺激の有効性に実質的に影響しないことが観察される。したがって、方法800において、1つ又は幾つかの一次パラメータは、特定された投与量を含み、かかる投与量は、治療セッションのための神経刺激の全投与の測定である。セッション継続時間は、複数の部分に分割される。神経刺激が電気パルスを含む1つの実施形態では、特定の投与量は、神経刺激を送出する特定された全刺激継続時間である。1つ又は幾つかの二次パラメータは、部分継続時間パラメータと、オンオフパラメータを含む。部分継続時間パラメータは、複数の部分のうちの各部分の継続時間である部分継続時間を特定する。オンオフパラメータは、複数の部分のうちの各部分がオン部分であるかオフ部分であるかを特定する。
【0055】
810において、特定の投与量として使用すべき治療セッションのための神経刺激の全体投与量を決定する。820において、治療セッションを複数の時間部分に分割する。830において、全体投与量を送出するのに必要とされるオン部分の全数を決定する。840において、複数の時間部分のうちの各部分を、オン部分及びオフ部分の一方として割り当てる。種々の実施形態では、オン部分及びオフ部分は、ランダムに、疑似ランダムに、又はその他の実質的に非周期的に割り当てられる。換言すれば、オン部分は、セッション継続時間にわたって、ランダムな仕方で、疑似ランダムな仕方で、又はその他の実質的に非周期的な仕方で配分される。850において、治療セッションを開始する。860において、割り当てられたオン部分の間、神経刺激を送出する。870において、全体投与量を送出した後、治療セッションを終了する。
【0056】
図6図8を参照して、方法600、700、及び800において一次パラメータ及び二次パラメータとして使用される種々の刺激パラメータを、限定するわけではなく例示として説明する。方法600、700、及び800において、1つ又は幾つかのパラメータは、治療セッションのための神経刺激の全体投与量の測定を特定する。神経刺激を電気パルスとして送出し、電気パルスが、治療セッションの特定された継続時間及び特定されたパルス周波数を有するとき、神経刺激の全体投与量の測定は、デューティサイクル又は全体刺激継続時間として表され、治療セッションの間に送出される電気パルスの総数を表す。種々の実施形態では、1つ又は幾つかの一次パラメータは、神経刺激の有効性を維持するのに使用可能であると特定された任意のパラメータ及びその組合せを含み、1つ又は幾つかの二次パラメータは、神経刺激の有効性に実質的に影響を及ぼすことなしに神経順応を防止するのに使用可能であると特定された任意のパラメータ及びその組合せを含む。種々の実施形態では、1つ又は幾つかの二次パラメータは、1つ又は幾つかの一次パラメータの1つ又は幾つかの値を実質的に変化させない可変値に設定されてもよい。
【0057】
図9は、神経順応の検出に応答してパラメータを調整する方法900の実施形態を示すフローチャートである。1つの実施形態では、方法900は、システム100を使用して行われ、本明細書で述べる種々の実施形態を含む。方法900では、1つ又は幾つかの二次パラメータは、神経順応の検出に応答してだけ調整される。すなわち、神経順応の検出に応答して、方法600、700、及び/又は800が行われる。例えば、神経順応の検出によって、二次パラメータ調整器358を有効にする。
【0058】
910において、治療セッションのプログラムされたスケジュールに従って、神経刺激を送出する。920において、神経順応を検出している。930において、神経順応の検出に応答して、940において、1つ又は幾つかの二次パラメータの1つ又は幾つかの値を調整する。930において神経順応が検出されなければ、1つ又は幾つかの二次パラメータを調整することなしに、神経刺激を送出し続ける。
【0059】
図10は、負の影響の検出に応答してパラメータを調整する方法1000の実施形態を示すフローチャートである。1つの実施形態では、方法1000は、システム100を使用して行われ、本明細書で述べる種々の実施形態を含む。方法1000では、1つ又は幾つかの二次パラメータは、負の影響の検出に応答してだけ調整される。すなわち、負の影響の検出に応答して、方法600、700、及び/又は800を行う。例えば、負の影響の検出によって、二次パラメータ調整器358を有効にする。このことは、1つ又は幾つかの二次パラメータが、患者に有害な意図しない効果を生じさせる1つ又は幾つかの値に設定されている場合、安全に測定するシステム100を提供する。
【0060】
1010において、治療セッションのプログラムされたスケジュールに従って、神経刺激を送出する。1020において、負の影響を検出している。1030において、負の影響の検出に応答して、1040において、1つ又は幾つかの二次パラメータの1つ又は幾つかの値を調整する。1030において負の影響が検出されなければ、1つ又は幾つかの二次パラメータを調整することなしに、神経刺激を送出し続ける。
【0061】
上述した詳細な説明が例示であり、制限することを意図していないことを理解すべきである。上記説明を読んで理解することにより、他の実施形態が当業者に明らかになろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲を参照して、それによって与えられる均等の全範囲を加えて、決定されるべきである。
図1
図2
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